(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基材の表面には電極パターンが配置されており、前記基材を貼り付ける工程は、前記かさ上げ対向部と前記基材とによって前記電極パターンの一部を挟み込むようにして行なわれる、請求項1または2に記載のMEMSデバイスの製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法のフローチャートである。
【
図2】本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法によって製造することを目指すMEMSデバイスの斜視図である。
【
図3】本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法によって製造することを目指すMEMSデバイスの平面図である。
【
図4】
図3におけるIV−IV線に関する矢視断面図である。
【
図5】本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法の中で、SOI基板の第1シリコン層をパターニングした後の状態の平面図である。
【
図6】
図5におけるVI−VI線に関する矢視断面図である。
【
図7】
図5におけるVII−VII線に関する矢視断面図である。
【
図8】本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法の中で、エッチング後の状態での、
図6に示した断面と同じ断面の断面図である。
【
図9】本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法の中で、エッチング後の状態での、
図7に示した断面と同じ断面の断面図である。
【
図10】本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法の中で、基材を貼り付けた後の状態の断面図である。
【
図11】
図10に示した構造体を第2シリコン層の側から見た図である。
【
図12】本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法によって得られたMEMSデバイスの斜視図である。
【
図13】
図12におけるXIII−XIII線に関する矢視断面図である。
【
図14】本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法によって得られたMEMSデバイスの平面図である。
【
図15】本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法の中で形成する支持梁部の第1の変形例を示す平面図である。
【
図16】本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法の中で形成する支持梁部の第2の変形例を示す平面図である。
【
図17】本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法の中で形成する支持梁部の第3の変形例を示す平面図である。
【
図18】本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法の中で形成するかさ上げ対向部の変形例を示す平面図である。
【
図19】
図18におけるかさ上げ対向部を拡大した部分的斜視図である。
【
図20】本発明に基づく実施の形態2におけるMEMSデバイスの断面図である。
【
図21】本発明に基づく実施の形態2におけるMEMSデバイスの第1の変形例の平面図である。
【
図22】本発明に基づく実施の形態2におけるMEMSデバイスの第2の変形例の平面図である。
【
図23】本発明に基づく実施の形態2におけるMEMSデバイスの第3の変形例の平面図である。
【
図24】参考技術に基づくMEMSデバイスとしての共振器の斜視図である。
【
図25】参考技術に基づくMEMSデバイスとしての共振器の平面図である。
【
図26】参考技術に基づくMEMSデバイスとしての共振器の断面図である。
【
図27】参考技術に基づくMEMSデバイスの製造方法の中で用意されるSOI基板の断面図である。
【
図28】参考技術に基づくMEMSデバイスの製造方法の中で第1シリコン層がパターニングされた後の状態の平面図である。
【
図29】
図28におけるXXIX−XXIX線に関する矢視断面図である。
【
図30】参考技術に基づくMEMSデバイスの製造方法の中で中間絶縁層演奏が等方的にエッチング除去された後の状態の断面図である。
【
図31】参考技術に基づくMEMSデバイスの製造方法の中で用意される基材の平面図である。
【
図32】
図30に示した構造体を
図31に示した基材の主表面に貼り付けた状態の断面図である。
【
図33】参考技術に基づくMEMSデバイスの製造方法の中で第2シリコン層を研磨した後の状態の断面図である。
【
図34】参考技術に基づくMEMSデバイスの製造方法の中で梁状部の一部が第2シリコン層に固着した状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明をなす上で発明者らはまず、MEMSデバイスの構造として、平坦な主表面を有する基材と、前記主表面から離隔するようにして前記基材に相対的に固定され、側方に延在する浮き構造体と、前記主表面に固定され、前記浮き構造体から離隔しつつ、前記浮き構造体の一部の領域に対して前記主表面に近い側から対向しているかさ上げ対向部とを備える構造を想定した。これを以下、「参考技術」というものとする。この参考技術は、上述した本発明の目的を達成するためにひとまず考えられるものである。このような条件を満たす構造は、たとえばMEMSデバイスが共振器である場合にありうるが、共振器以外のMEMSデバイスにおいても同様の要件を満たす構造が求められうる。
【0016】
MEMSデバイスが共振器である場合を例にとって、参考技術に基づく構造の具体例を説明する。この構造を
図24、
図25、
図26に示す。
図25は
図24に示した構造の平面図であり、
図26は
図25におけるXXVI−XXVI線に関する矢視断面図である。MEMSデバイスとしての共振器901は、平坦な主表面20aを有する基材20と、主表面20aから離隔するようにして基材20に相対的に固定され、側方に延在する浮き構造体としての振動部2と、主表面20aに固定され、振動部2から離隔しつつ、振動部2の一部の領域2vに対して前記主表面20aに近い側から対向しているかさ上げ対向部5とを備える。共振器901は、主表面20a上に電極パターン4を備える。電極パターン4は引出配線7と外部接続端子8とを含む。共振器901は、基礎シリコン層21と中間絶縁層22と高架シリコン層23とを備える。共振器901は振動部2を取囲む外壁部9を備える。外壁部9は切欠き部10を有する。かさ上げ対向部5は間隙6を介して振動部2の領域2vに対向している。かさ上げ対向部5は、領域2vに上下方向の振動を生じさせるためのブロックである。電極パターン4はかさ上げ対向部5と振動部2との間に電圧を印加するためのものである。かさ上げ対向部5と振動部2との間に電圧が印加されることによって領域2vに上下方向の振動が生じ、この振動が振動部2の全体に伝わり、振動部2の中のいくつかの領域においてはねじり振動が生じる。
【0017】
MEMSデバイスとして上述の共振器を製造する場合を想定し、その製造方法について説明する。まず
図27に示すようなSOI基板100を用意する。SOI基板100は第1シリコン層101と中間絶縁層102と第2シリコン層103とを含む。SOI基板100の第1シリコン層101をパターニングして、
図28、
図29に示す構造を得る。
図29は
図28におけるXXIX−XXIX線に関する矢視断面図である。第1シリコン層101から形成された基本パターン510は中央の開口部を横切るように梁状部14を有する。さらにこの構造のうち中間絶縁層102を等方的にエッチング除去することによって
図30に示す構造体を得る。
図31に示すように主表面20aに電極パターン4が形成された基材20を用意する。
図30に示した構造体を
図31に示す基材20の主表面20aに貼り付ける。貼り付けた後の様子を
図32に示す。第2シリコン層103を研磨することによって所望の厚みにまで薄くする。さらに第2シリコン層103をパターニングする。こうして
図33に示す構造が得られる。第1シリコン層101は基礎シリコン層21となり、中間絶縁層102は中間絶縁層22となり、第2シリコン層103は高架シリコン層23となっている。第2シリコン層103をパターニングする際には、第2シリコン層103から振動部2が浮き構造体として形成されるが、同時に梁状部14のうちの不用部分も除去され、梁状部14の一部がかさ上げ対向部5となって残る。さらにいくつかの工程を施すことによって、
図25、
図26に示す構造を得る。
【0018】
上述したMEMSデバイスの製造方法においては、SOI基板をエッチング加工して途中段階として
図30に示す構造を得ることが予定されているが、この状態では梁状部14と第2シリコン層103との間に生じた間隙にエッチング液が入り込む。このエッチング液の表面張力によって梁状部14が第2シリコン層103の表面に吸引されてたわみうる。梁状部14がたわんだことによって、
図34に示すように、梁状部14の一部区間が第2シリコン層103に接触し、そのまま固着してしまう場合がある。
【0019】
梁状部14の一部が第2シリコン層103に一旦固着してしまえば、その後の工程を施しても固着した状態が持続される。これはすなわち、最終製品としてのMEMSデバイスにおいて浮き構造体の下側に確保されるべき間隙6が閉じた状態をもたらし、MEMSデバイスとして正常に機能しなくなる。
【0020】
そこで、本発明は、発明者らが想定した参考技術において発明者らが自ら見出した問題点を解消することをさらに進んだ目的とする。すなわち、MEMSデバイスにおいて浮き構造体とかさ上げ対向部との間で本来確保されるべき間隙が閉じた状態となってしまう不良の発生率を低減するためのMEMSデバイスおよびその製造方法を提供することをさらに進んだ目的とする。
【0021】
(実施の形態1)
(構成)
図1〜
図14を参照して、本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法について説明する。このMEMSデバイスの製造方法のフローチャートを
図1に示す。本実施の形態におけるMEMSデバイスの製造方法は、平坦な主表面を有する基材と、前記主表面から離隔するようにして前記基材に相対的に固定され、側方に延在する浮き構造体と、前記主表面に固定され、前記浮き構造体から離隔しつつ、前記浮き構造体の一部の領域に対して前記主表面に近い側から対向しているかさ上げ対向部とを備える、MEMSデバイスを製造する方法であって、第1シリコン層と第2シリコン層とで中間絶縁層を挟み込むように積層されたSOI基板を用意する工程S1と、前記第1シリコン層をパターニングして、外枠部と、前記かさ上げ対向部と、前記かさ上げ対向部と前記外枠部の3以上の箇所とをそれぞれ接続する支持梁部とを形成する工程S2と、前記中間絶縁層のうち前記かさ上げ対向部と前記第2シリコン層との間に位置する部分をエッチング除去することによって前記かさ上げ対向部と前記第2シリコン層とが互いに離隔した状態を作り出す工程S3と、前記第1シリコン層の前記外枠部および前記かさ上げ対向部に対して一括して被覆するように基材を貼り付ける工程S4と、前記第2シリコン層をパターニングすることによって前記浮き構造体を形成し、さらに前記支持梁部のうち前記浮き構造体に覆われていない領域を除去することによって、前記支持梁部を分断して前記かさ上げ対向部を孤立させる工程S5とを含む。以下に詳しく説明する。
【0022】
ここで製造しようとするMEMSデバイスは、平坦な主表面を有する基材と、前記主表面から離隔するようにして前記基材に相対的に固定され、側方に延在する浮き構造体と、前記主表面に固定され、前記浮き構造体から離隔しつつ、前記浮き構造体の一部の領域に対して前記主表面に近い側から対向しているかさ上げ対向部とを備えるものである。したがって、
図2に示す共振器201も該当する。共振器201の平面図を
図3に示す。
図3におけるIV−IV線に関する矢視断面図を
図4に示す。
【0023】
共振器201の場合は、平坦な主表面20aを有する基材20と、主表面20aから離隔するようにして基材20に相対的に固定され、側方に延在する浮き構造体としての振動部2と、主表面20aに固定され、前記浮き構造体から離隔しつつ、前記浮き構造体の一部の領域に対して前記主表面に近い側から対向しているかさ上げ対向部5とを備える。ただし、本実施の形態における製造方法によって製造した場合、
図3、
図4に示したとおりの形状に出来上がるわけではなく、この製造方法を用いた痕跡として、かさ上げ対向部5と同層においてかさ上げ対向部5の他に若干の余分な凸部が残る。ただし、余分な凸部があるとはいえ、上述の条件を満たした構造のMEMSデバイスが得られることには相違ない。この余分な凸部については詳しくは後述する。
図3、
図4はあくまで目標とする形状を示している。
【0024】
本実施の形態におけるMEMSデバイスの製造方法によれば、まず、最初に、工程S1として、
図27に示したように、第1シリコン層101と第2シリコン層103とで中間絶縁層102を挟み込むように積層されたSOI基板100を用意する。
【0025】
次に、工程S2として、前記第1シリコン層101をパターニングして、
図5に示すように、外枠部15と、かさ上げ対向部5と、かさ上げ対向部5と外枠部15の3以上の箇所とをそれぞれ接続する支持梁部16とを形成する。かさ上げ対向部5は本来独立したブロックであるが、この時点ではまだ独立していない。
図5に示した例の場合、かさ上げ対向部5は支持梁部16によって外枠部15の6ヶ所と接続されている。この例では、説明の便宜のため、かさ上げ対向部5は支持梁部16より幅が若干大きくなっているが、かさ上げ対向部5と支持梁部16とは同じ幅であってもよい。その場合、かさ上げ対向部5と支持梁部16との境目は外観上は特定しにくくなるが、各々の果たす役割の観点からは区別することができる。
図5におけるVI−VI線に関する矢視断面図を
図6に示す。
図5におけるVII−VII線に関する矢視断面図を
図7に示す。
【0026】
次に、工程S3として、中間絶縁層102のうちかさ上げ対向部5と第2シリコン層103との間に位置する部分をエッチング除去することによってかさ上げ対向部5と第2シリコン層103とが互いに離隔した状態を作り出す。その結果、
図6に示した断面は
図8のように変化する。
図7に示した断面は
図9のように変化する。すなわち、かさ上げ対向部5および支持梁部16はそれぞれ幅が細いので、かさ上げ対向部5および支持梁部16の下側においては回りこんだエッチング媒体によって中間絶縁層102が完全に除去され、その結果、かさ上げ対向部5および支持梁部16はいずれも第2シリコン層103から離隔した状態となっている。一方、外枠部15は幅が広いので、中間絶縁層102が完全に除去されることはない。外枠部15の下側では中間絶縁層102は周縁部が除去されるのみである。
【0027】
次に、工程S4として、
図10に示すように、第1シリコン層101の外枠部15およびかさ上げ対向部5に対して一括して被覆するように基材20を貼り付ける。ただし、工程S4の前に必要に応じて第1シリコン層101にトンネル31を予め設けておく。工程S4の前に、基板20の主表面20aには予め電極パターン4を形成しておく。電極パターン4は引出配線7と外部接続端子8とを含む。
図10に示した構造体を第2シリコン層103の側から見たところを
図11に示す。第2シリコン層103はまだパターニングされていないので全面に存在するが、その背後には、第1シリコン層101で既に形成されたかさ上げ対向部5および支持梁部16が隠れている。
【0028】
次に、第2シリコン層103を研摩して所望の厚さとする。さらに、工程S5として、第2シリコン層103をパターニングすることによって浮き構造体としての振動部2を形成し、さらに支持梁部16のうち浮き構造体に覆われていない領域を除去することによって、支持梁部16を分断してかさ上げ対向部5を孤立させる。こうして
図12に示す共振器202が得られる。第1シリコン層101であった層からは基礎シリコン層21が形成され、第2シリコン層103であった層からは高架シリコン層23が形成されている。中間絶縁層102であった層からは中間絶縁層22が形成されている。共振器202は目標とした共振器201とは細部において異なるが、MEMSデバイスとして目指した形状の要件は備えており、共振器202が得られれば十分である。
【0029】
図12におけるXIII−XIII線に関する矢視断面図を
図13に示す。共振器202の平面図を
図14に示す。
図13は、
図14におけるXIII−XIII線に関する矢視断面図にも相当する。
図13に示すように高架シリコン層23の外形は基礎シリコン層21の外枠部15の外形にほぼ一致している。高架シリコン層23、中間絶縁層22および基礎シリコン層21の積層体によって振動部2の外側を取囲む部分は外壁部9を構成している。工程S5におけるパターニングにおいては、第2シリコン層103のうち除去する部分においてはその下側にある第1シリコン層101も除去されるが、第2シリコン層103のうち残す部分の下側にある第1シリコン層101は除去されない。したがって第1シリコン層101で形成されている支持梁部16は、全てが除去されるのではなく浮き構造体としての振動部2によって覆われていない部分が除去されるのみである。したがって、
図14に示すように支持梁部16の一部が痕跡ブロック17として残っている。
図14では、かさ上げ対向部5の周囲に合計6個の痕跡ブロック17が残っている。
【0030】
(作用・効果)
本実施の形態では、基板表面と振動部材下面とが十分に狭い間隙で対向した構造を有し、容易に製造可能なMEMSデバイスとすることができる。また、工程S2においてパターニングする際にかさ上げ対向部5を形成するだけでなく外枠部の3以上の箇所とそれぞれ接続する支持梁部16をも形成するので、工程S3によってかさ上げ対向部5が第2シリコン層103から離隔して浮いた状態となったとき、かさ上げ対向部5は外枠部の3以上の箇所とつながった支持梁部16によって支持されており、第2シリコン層103から浮いた姿勢を十分な強度で維持することができる。
【0031】
図28に示したようにかさ上げ対向部5が一直線状の支持部材によって外枠部の2ヶ所に接続されて支持されるに過ぎなかった場合は、この一直線状の支持部材がたわみやすく、たわんだ結果としてかさ上げ対向部5が第2シリコン層103に当接するおそれがあったが、本実施の形態では、かさ上げ対向部5は3以上の箇所とつながるようにして支持梁部16によって支持されているので、エッチング液の表面張力などによりかさ上げ対向部5を第2シリコン層103に向けて変位させようとする力が作用してもこれに対抗するだけの十分な強度があり、かさ上げ対向部5が第2シリコン層103に当接することを防止することができる。
【0032】
したがって、MEMSデバイスにおいて浮き構造体とかさ上げ対向部との間で本来確保されるべき間隙が閉じた状態となってしまう不良の発生率を低減することができる。
【0033】
本実施の形態では、
図5に示したように、支持梁部16が外枠部の6ヶ所と接続し、支持梁部16同士がX,Y方向にそれぞれ延在して広がっている例を示した。しかし、支持梁部の配置パターンはこれに限らず、たとえば
図15に示すように、支持梁部16iがかさ上げ対向部5の互いに対向する2辺からそれぞれの方向に向かって延在した先で2つに分かれることによって結果的にY字状に広がって外枠部の合計4ヶ所と接続されているものであってもよい。
図16に示すように、支持梁部16jの開く角度が大きくなっていてもよい。
図16に示した例では全体としてH字形状に近くなっている。
図17に示すように、支持梁部16kが2本ずつ平行となって完全にH字状に延在しているものであってもよい。ただし、いずれの場合も支持梁部が電極パターンと重ならないように配慮する必要がある。そのためには、たとえば電極パターンは支持梁部の延在する位置を避けて敷設すればよい。外枠部の接続箇所は4ヶ所に限らず3ヶ所であってもよく、5ヶ所以上であってもよい。接続箇所が多いほど、かさ上げ対向部は安定する。
【0034】
(研磨する工程)
本実施の形態におけるMEMSデバイスの製造方法としては、上述したように、かさ上げ対向部を孤立させる工程S5の前に、第2シリコン層を研磨する工程を含むことが好ましい。この構成を採用することにより、第2シリコン層の初期厚みを十分厚くしておくことができる。第2シリコン層が十分に厚ければ、工程S1〜S4を行なう際のSOI基板の強度を十分に確保することができる。必要な加工を行なって、SOI基板を基材に接合した後で、研磨によって第2シリコン層を所望の厚みにすることができる。
【0035】
(電極パターン)
本実施の形態におけるMEMSデバイスの製造方法としては、
図10に示したように、基材の表面には電極パターンが配置されており、基材を貼り付ける工程S4は、かさ上げ対向部と基材とによって電極パターンの一部を挟み込むようにして行なわれることが好ましい。この構成を採用することにより、電極パターンとかさ上げ対向部とを電気的に接続することができ、電極パターンを通じてかさ上げ対向部を所望の電位とすることが可能となる。
【0036】
(複数の貫通孔)
かさ上げ対向部には、厚み方向に貫通するように複数の貫通孔を設けておくことが好ましい。一例として
図18ではかさ上げ対向部5cに複数の貫通孔18が設けられている。かさ上げ対向部5cを拡大した斜視図を
図19に示す。複数の貫通孔18はかさ上げ対向部5cを厚み方向にそれぞれ完全に貫通している。複数の貫通孔18はマトリックス状に配列されている。貫通孔18はここでは4×3の合計12個配列されている例を示しているが、実際には数十個、数百個単位で配列されていてよい。
【0037】
このようにかさ上げ対向部に複数の貫通孔を設けた構成を採用することにより、MEMSデバイスの製造方法の工程S3においてエッチング液がこれらの貫通孔を通じてかさ上げ対向部の裏側に循環しやすくなるので、工程S3においてかさ上げ対向部の背後の中間絶縁層を完全に除去することがより確実となる。特に、かさ上げ対向部の面積が大きい場合には、このような貫通孔を設けておくことは効果的である。
【0038】
かさ上げ対向部を浮き構造体に対する振動付与のための電極として用いる場合、かさ上げ対向部の上面に複数の貫通孔を設けたことによる表面積の減少が電極としての機能に影響を及ぼさないかという点が問題となる。この点については、各貫通孔の径を十分小さくしておけば、かさ上げ対向部に一定電位を与えたときには、フリンジ効果によって、かさ上げ対向部の上面は電気的にはあたかも貫通孔がない面であるかのように振舞うので、問題とならない。
【0039】
かさ上げ対向部に限らず、支持梁部の途中にも厚み方向に貫通するように複数の貫通孔を設けておいてもよい。
【0040】
(実施の形態2)
(構成)
図20を参照して、本発明に基づく実施の形態2におけるMEMSデバイスについて説明する。本実施の形態におけるMEMSデバイスは、実施の形態1で説明したMEMSデバイスの製造方法によって得ることができる。本実施の形態におけるMEMSデバイスの一例として、
図12〜
図14に示した共振器202を挙げることができる。本実施の形態におけるMEMSデバイスの構造を説明するために共振器202の断面図を
図20に示す。
図20は
図13と同じ断面図であるが、本実施の形態の説明のためにいくつかの符号を書き加えたものである。
【0041】
本実施の形態におけるMEMSデバイスとしての共振器202は、平坦な主表面20aを有する基材20と、主表面20aから離隔するようにして基材20に相対的に固定され、側方に延在する浮き構造体としての振動部2と、主表面20aに固定され、前記浮き構造体から離隔しつつ、前記浮き構造体の一部の領域2vに対して主表面20aに近い側から対向しているかさ上げ対向部5とを備える。浮き構造体としての振動部2の投影領域内に、かさ上げ対向部5以外に、かさ上げ対向部5と同じ層で形成され、かさ上げ対向部5からは分離した状態の部材である痕跡ブロック17が、かさ上げ対向部5から見てそれぞれ異なる3以上の方向に配置されている。共振器202の場合、
図14に破線で示したように痕跡ブロック17が6個配置されている。痕跡ブロック17は、製造途中でかさ上げ対向部の厚み方向の変位を抑制するために設けた支持梁部の一部が残ったものであるので、結果的には、支持梁部の本数に応じた数の部材が浮き構造体の陰に配置されることとなる。
【0042】
図20においては痕跡ブロック17は表示していないが、
図20のように断面を見た場合、より正確には、かさ上げ対向部5の左右の紙面奥側に痕跡ブロック17も見えることとなる。
【0043】
基礎シリコン層21に形成されたトンネル31の外側の端を塞ぐように絶縁膜34が配置されている。ただし、絶縁膜34は、振動部2を上から覆うように蓋材(図示せず)を取り付けることによって、外壁部9によって囲まれる領域を振動部2とともに密封する場合にトンネル31を通じた空気の侵入を防ぐために設けるものである。このような密封は振動部2が配置された空間を真空に維持するために行なわれるものである。外壁部9によって囲まれる領域を真空として蓋材と絶縁膜34とを設置すれば振動部2は真空中に保持されることとなる。一方、上述のような蓋材を取り付ける予定がない場合は絶縁膜34は設けなくてもよい。たとえば共振器202全体を真空中に設置する場合などは、蓋材や絶縁膜34を設けなくても振動部2を真空中に保持することができる。
【0044】
(作用・効果)
本実施の形態におけるMEMSデバイスは、実施の形態1で説明したMEMSデバイスの製造方法によって容易に作製することができる。したがって、基板表面と振動部材下面とが十分に狭い間隙で対向した構造を有し、容易に製造可能なMEMSデバイスとすることができる。また、MEMSデバイスにおいて浮き構造体とかさ上げ対向部との間で本来確保されるべき間隙が閉じた状態となってしまう不良の発生率を低減することができ、信頼性の高いMEMSデバイスとすることができる。
【0045】
なお、本実施の形態では、理解を容易にするために、いくつかの変形例を示す。たとえば、
図15に示した例の支持梁部の配置パターンを用いて作製した場合、得られるものは、
図21に示すように痕跡ブロック17iがかさ上げ対向部5から見てそれぞれ異なる4つの方向に配置された構造の共振器203となる。
図16に示した例の場合、
図22に示すように痕跡ブロック17jが配置された構造の共振器204となる。
図17に示した例の場合、
図23に示すように痕跡ブロック17kが配置された構造の共振器205となる。
【0046】
本実施の形態におけるMEMSデバイスは、前記かさ上げ対向部と、前記基材との間に電極パターンの一部が挟み込まれているものであることが好ましい。すなわち、
図10に示した構成を備えていることが好ましい。この構成を採用することにより、電極パターンとかさ上げ対向部とを電気的に接続することができ、電極パターンを通じてかさ上げ対向部を所望の電位とすることが可能となる。電極パターンは複数の金属層による積層体としてもよい。電極パターンが積層体である場合は、積層体のうちの一部の金属層のみがかさ上げ対向部と基材との間に挟み込まれる構成としてもよい。
【0047】
なお、実施の形態2では、MEMSデバイスが共振器である例を示したが、本発明の適用対象としてのMEMSデバイスは、共振器に限らず他の種類のMEMSデバイスであってもよい。
【0048】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。