(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法のフローチャートである。
【
図2】本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法によって得られるMEMSデバイスとしての共振器の斜視図である。
【
図4】
図3におけるIV−IV線に関する矢視断面図である。
【
図5】本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法の第1の説明図である。
【
図6】
図5におけるVI−VI線に関する矢視断面図である。
【
図7】本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法の第2の説明図である。
【
図8】本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法の第3の説明図である。
【
図9】本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法の第4の説明図である。
【
図10】本発明に基づく実施の形態2におけるMEMSデバイスの製造方法の第1の説明図である。
【
図11】
図10におけるかさ上げ対向部の近傍の拡大斜視図である。
【
図12】本発明に基づく実施の形態2におけるMEMSデバイスの製造方法によって得られるMEMSデバイスとしての共振器の平面図である。
【
図13】本発明に基づく実施の形態2におけるMEMSデバイスの製造方法の他の例の途中で第1シリコン層に対して行なわれるパターニングの説明図である。
【
図14】本発明に基づく実施の形態2におけるMEMSデバイスの製造方法の他の例で得られるMEMSデバイスとしての共振器の平面図である。
【
図15】本発明に基づく実施の形態2におけるMEMSデバイスの製造方法のさらに他の例の途中で第1シリコン層に対して行なわれるパターニングの説明図である。
【
図16】本発明に基づく実施の形態2におけるMEMSデバイスの製造方法のさらに他の例で得られるMEMSデバイスとしての共振器の平面図である。
【
図17】参考技術に基づくMEMSデバイスの一例としての一般的な共振器の斜視図である。
【
図19】
図18におけるXIX−XIX線に関する矢視断面図である。
【
図21】共振器を製造するためにSOI基板の第1シリコン層をパターニングした後の状態の平面図である。
【
図22】
図21におけるXXII−XXII線に関する矢視断面図である。
【
図23】共振器を製造するために中間絶縁層をエッチング除去して得られる構造体の断面図である。
【
図24】共振器を製造するために主表面に電極パターンが形成された基材の平面図である。
【
図25】共振器を製造するために
図23に示した構造体と
図24に示した基材とを貼り合わせた構造の断面図である。
【
図26】第2シリコン層をパターニングした後の状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明をなす上で発明者らはまず、MEMSデバイスの構造として、平坦な主表面を有する基材と、前記主表面から離隔するようにして前記基材に相対的に固定され、側方に延在する浮き構造体と、前記主表面に固定され、前記浮き構造体から離隔しつつ、前記浮き構造体の一部の領域に対して前記主表面に近い側から対向しているかさ上げ対向部とを備える構造を想定した。これを以下、「参考技術」というものとする。この参考技術は、上述した本発明の目的を達成するためにひとまず考えられるものである。このような条件を満たす構造は、たとえばMEMSデバイスが共振器である場合にありうるが、共振器以外のMEMSデバイスにおいても同様の要件を満たす構造が求められうる。
【0016】
MEMSデバイスが共振器である場合を例にとって、参考技術に基づく構造の具体例を説明する。この構造を
図17、
図18、
図19に示す。
図18は
図17に示した構造の平面図であり、
図19は
図18におけるXIX−XIX線に関する矢視断面図である。MEMSデバイスとしての共振器901は、平坦な主表面20aを有する基材20と、主表面20aから離隔するようにして基材20に相対的に固定され、側方に延在する浮き構造体としての振動部2と、主表面20aに固定され、振動部2から離隔しつつ、振動部2の一部の領域2vに対して前記主表面20aに近い側から対向しているかさ上げ対向部5とを備える。共振器901は、主表面20a上に電極パターン4を備える。電極パターン4は引出配線7と外部接続端子8とを含む。共振器901は、基礎シリコン層21と中間絶縁層22と高架シリコン層23とを備える。共振器901は振動部2を取囲む外壁部9を備える。外壁部9は切欠き部10を有する。かさ上げ対向部5は間隙6を介して振動部2の領域2vに対向している。かさ上げ対向部5は、領域2vに上下方向の振動を生じさせるためのブロックである。電極パターン4はかさ上げ対向部5と振動部2との間に電圧を印加するためのものである。かさ上げ対向部5と振動部2との間に電圧が印加されることによって領域2vに上下方向の振動が生じ、この振動が振動部2の全体に伝わり、振動部2の中のいくつかの領域においてはねじり振動が生じる。
【0017】
MEMSデバイスとして上述の共振器を製造する場合を想定し、その製造方法について説明する。まず
図20に示すようなSOI基板100を用意する。SOI基板100は第1シリコン層101と中間絶縁層102と第2シリコン層103とを含む。SOI基板100の第1シリコン層101をパターニングして、
図21、
図22に示す構造を得る。
図22は
図21におけるXXII−XXII線に関する矢視断面図である。第1シリコン層101から形成された基本パターン510は、のちに外壁部9の基礎シリコン層21となる予定の部分(以下「外枠部」15という。)を含んでいる。基本パターン510は外枠部15に取り囲まれた中央の開口部を横切るように梁状部14を有する。さらにこの構造のうち中間絶縁層102を等方的にエッチング除去することによって
図23に示す構造体を得る。すなわち、梁状部14の下側にあった中間絶縁層102は完全に除去され、その結果、梁状部14は第2シリコン層103から浮いた構造となる。
【0018】
図24に示すように主表面20aに電極パターン4が形成された基材20を用意する。
図23に示した構造体を
図24に示す基材20の主表面20aに貼り付ける。貼り付けた後の様子を
図25に示す。第2シリコン層103を研磨することによって所望の厚みにまで薄くする。さらに第2シリコン層103をパターニングする。こうして
図26に示す構造が得られる。第1シリコン層101は基礎シリコン層21となり、中間絶縁層102は中間絶縁層22となり、第2シリコン層103は高架シリコン層23となっている。第2シリコン層103をパターニングする際には、第2シリコン層103から振動部2が浮き構造体として形成されるが、同時に梁状部14のうちの不用部分も除去され、梁状部14の一部がかさ上げ対向部5となって残る。さらにいくつかの工程を施すことによって、
図18、
図19に示す構造を得る。
【0019】
図22に示した構造から
図23に示した構造に移行する際には、上述したように中間絶縁層102が等方的にエッチングされる。このエッチングでは、梁状部14の下側にあった中間絶縁層102を除去し、梁状部14を浮かせることが目的であるが、同時に外枠部15の下側にある中間絶縁層102もある程度除去される。
【0020】
梁状部14では梁状部14自体が平面的に見れば帯状の部分であって幅が狭いので、梁状部14の下側においては両側から入り込むエッチング液によって中間絶縁層102は完全に除去されるが、外枠部15ではある程度の幅があるので、外枠部15の下側においてはエッチング液が両側から入り込んだとしても中間絶縁層102が完全に除去されるわけではなく、
図23に示したように、外縁部がある程度除去されるのみに留まる。
【0021】
しかし、梁状部14の幅が大きい場合、梁状部14の第2シリコン層103から確実に浮かせるためには、中間絶縁層102のエッチング時間を長くすることが必要となる。梁状部14の幅が大きい場合にもエッチング時間を長くすることが必要となる。エッチング時間が長くなれば、外枠部15の下側において中間絶縁層102の除去が進行する時間がその分だけ長くなり、外枠部15の下側の中間絶縁層102の外縁部が除去される深さは大きくなる。中間絶縁層102の外縁部があまりに深く除去されると、得られるMEMSデバイスの強度が低下して正常な動作が行なえなくなったり、中間絶縁層が本来残っているべき部分に残らなくなったりしてしまう。
図17に示した共振器901の例でいえば、中間絶縁層22が延在する範囲が狭くなりすぎて高架シリコン層23の剥離をもたらすおそれがある。
【0022】
そこで、本発明は、発明者らが想定した参考技術において発明者らが自ら見出した問題点を解消することをさらに進んだ目的とする。すなわち、浮き構造体の周辺の中間絶縁層を残したい部分において中間絶縁層が過度に除去されないようなMEMSデバイスおよびその製造方法を提供することをさらに進んだ目的とする。
【0023】
(実施の形態1)
(製造方法)
図1〜
図9を参照して、本発明に基づく実施の形態1におけるMEMSデバイスの製造方法について説明する。このMEMSデバイスの製造方法のフローチャートを
図1に示す。本実施の形態におけるMEMSデバイスの製造方法は、平坦な主表面を有する基材と、前記主表面から離隔するようにして前記基材に相対的に固定され、側方に延在する浮き構造体と、前記主表面に固定され、前記浮き構造体から離隔しつつ、前記浮き構造体の一部の領域に対して前記主表面に近い側から対向しているかさ上げ対向部とを備える、MEMSデバイスを製造する方法であって、第1シリコン層と第2シリコン層とで中間絶縁層を挟み込むように積層されたSOI基板を用意する工程S1と、前記第1シリコン層をパターニングして、外枠部と前記かさ上げ対向部とを形成し、かつ、前記かさ上げ対向部には厚み方向に貫通する1以上の貫通孔を形成する工程S2と、前記中間絶縁層のうち前記かさ上げ対向部と前記第2シリコン層との間に位置する部分をエッチング除去することによって前記かさ上げ対向部と前記第2シリコン層とが互いに離隔した状態を作り出す工程S3と、前記第1シリコン層の前記外枠部および前記かさ上げ対向部に対して一括して被覆するように基材を貼り付ける工程S4と、前記第2シリコン層をパターニングすることによって前記浮き構造体を形成し、さらに前記支持梁部のうち前記浮き構造体に覆われていない領域を除去することによって、前記支持梁部を分断して前記かさ上げ対向部を孤立させる工程S5とを含む。以下に詳しく説明する。
【0024】
ここで製造しようとするMEMSデバイスは、平坦な主表面を有する基材と、前記主表面から離隔するようにして前記基材に相対的に固定され、側方に延在する浮き構造体と、前記主表面に固定され、前記浮き構造体から離隔しつつ、前記浮き構造体の一部の領域に対して前記主表面に近い側から対向しているかさ上げ対向部とを備えるものである。このMEMSデバイスの一例としての共振器を
図2に示す。
図2に示した共振器201の平面図を
図3に示す。
図3におけるIV−IV線に関する矢視断面図を
図4に示す。
【0025】
共振器201の場合は、平坦な主表面20aを有する基材20と、主表面20aから離隔するようにして基材20に相対的に固定され、側方に延在する浮き構造体としての振動部2と、主表面20aに固定され、前記浮き構造体から離隔しつつ、前記浮き構造体の一部の領域に対して前記主表面に近い側から対向しているかさ上げ対向部5とを備える。
【0026】
本実施の形態におけるMEMSデバイスの製造方法によれば、まず、最初に、工程S1として、
図20に示したように、第1シリコン層101と第2シリコン層103とで中間絶縁層102を挟み込むように積層されたSOI基板100を用意する。
【0027】
次に、工程S2として、第1シリコン層101をパターニングして、
図5に示すように、外枠部15と、梁状部14とを形成する。梁状部14の途中の一部の区間は、のちにかさ上げ対向部5となる予定の部分である。かさ上げ対向部5はこの時点ではまだ独立していない。かさ上げ対向部5は梁状部14の一部である。
図5においては長方形で囲まれた部分がかさ上げ対向部5である。
図5に示した例では梁状部14は一定幅となっているが、梁状部14のうちかさ上げ対向部5となる部分の幅が他の部分の幅より大きくなっていてもよい。梁状部14には貫通孔18が多数設けられている。貫通孔18は1以上であればよく、多ければ多いほど好ましい。
図5におけるVI−VI線に関する矢視断面図を
図6に示す。
【0028】
次に、工程S3として、中間絶縁層102のうちかさ上げ対向部5と第2シリコン層103との間に位置する部分をエッチング除去することによってかさ上げ対向部5と第2シリコン層103とが互いに離隔した状態を作り出す。このエッチングは等方的に行なわれる。このエッチングの結果、
図6に示した断面は
図7のように変化する。
【0029】
梁状部14の下側においては、エッチング媒体によって中間絶縁層102が完全に除去され、その結果、梁状部14はいずれも第2シリコン層103から離隔した状態となっている。一方、外枠部15は幅が広いので、中間絶縁層102が完全に除去されることはない。外枠部15の下側では中間絶縁層102は周縁部が若干除去されるのみである。
【0030】
図24に示したように、主表面20aに所定の電極パターン4が形成された基材20を予め用意しておく。電極パターン4は、引出配線7と外部接続端子8とを含む。
【0031】
次に、工程S4として、
図8に示すように、第1シリコン層101の外枠部15およびかさ上げ対向部5に対して一括して被覆するように基材20を貼り付ける。この時点では、第2シリコン層103はまだパターニングされていないので全面に存在する。さらに、第2シリコン層102を研摩して所望の厚さとする。
【0032】
さらに、工程S5として、第2シリコン層102をパターニングすることによって浮き構造体としての振動部2を形成し、さらに支持梁部16のうち浮き構造体に覆われていない領域を除去することによって、梁状部14を分断してかさ上げ対向部5を孤立させる。
【0033】
こうして
図9に示す構造となる。さらにトンネル31の出口を絶縁膜34(
図3、
図4参照)で塞ぐ。
【0034】
こうして
図2に示した共振器201が得られる。この時点で断面は
図4に示したとおりとなる。第1シリコン層101であった層からは基礎シリコン層21が形成され、第2シリコン層103であった層からは高架シリコン層23が形成されている。中間絶縁層102であった層からは中間絶縁層22が形成されている。
【0035】
図2に示すように、高架シリコン層23、中間絶縁層22および基礎シリコン層21の積層体によって振動部2の外側を取囲む部分は外壁部9を構成している。工程S5におけるパターニングにおいては、第2シリコン層103のうち除去する部分においてはその下側にある第1シリコン層101も除去されるが、第2シリコン層103のうち残す部分の下側にある第1シリコン層101は除去されない。したがって第1シリコン層101で形成されている梁状部14は、全てが除去されるのではなく浮き構造体としての振動部2によって覆われていない部分が除去されるのみである。したがって、
図3に破線で示すように梁状部14の一部が痕跡ブロック17として残っている。
図3に示した例では、かさ上げ対向部5を挟むように合計2個の痕跡ブロック17が残っている。
【0036】
(作用・効果)
本実施の形態におけるMEMSデバイスの製造方法では、基板表面と振動部材下面とが十分に狭い間隙で対向した構造を有し、容易に製造可能なMEMSデバイスとすることができる。また、梁状部14に1以上の貫通孔18が設けられているので、工程S3のエッチングの際、エッチング媒体は、梁状部14の両端から梁状部14の下側に回り込むだけでなく、梁状部14の平面的に見た内側部分においても貫通孔18を通じて梁状部14の下側に回り込むことができる。したがって、梁状部14の下側の中間絶縁層102は速やかに除去され、エッチングに要する時間は短く抑えられる。エッチングに要する時間が短く抑えられるので、外枠部15における中間絶縁層102の除去の進行の程度は、
図7に示したように小さく抑えることができる。したがって、本実施の形態におけるMEMSデバイスの製造方法では、外枠部15、すなわち、浮き構造体の周辺の中間絶縁層を残したい部分において中間絶縁層が過度に除去されないようにすることができる。
【0037】
本実施の形態で示したように、第1シリコン層101をパターニングする工程S2では、外枠部15およびかさ上げ対向部5の他に外枠部15とかさ上げ対向部5とを接続する支持部を同時に形成し、この支持部は、厚み方向に貫通する1以上の貫通孔を有するように形成することが好ましい。ここでいう支持部とかさ上げ対向部5とを合わせたものが前述の梁状部14である。梁状部14のうちかさ上げ対向部5以外の部分が支持部である。このように工程S2のパターニングの際にかさ上げ対向部5と同時に支持部をも形成することとすれば、かさ上げ対向部5がこの後の工程で第2シリコン層103から浮いた構造となっても支持部によって支持することができるので、好都合である。
【0038】
本実施の形態で示したように、第1シリコン層101をパターニングする工程S2においては、支持部にも1以上の貫通孔を形成することが好ましい。
図5では、そのようになっている。
図5においては、梁状部14のうちのかさ上げ対向部5だけでなく他の部分すなわち支持部にも1以上の貫通孔を形成している。しかし、梁状部14のうちかさ上げ対向部5にのみ1以上の貫通孔を形成し、他の部分すなわち支持部には貫通孔を形成しないこととしても、本発明による一定の効果を得ることができる。
【0039】
(実施の形態2)
(製造方法)
図10〜
図12を参照して、本発明に基づく実施の形態2におけるMEMSデバイスの製造方法について説明する。実施の形態1では、工程S2で第1シリコン層101をパターニングした際に
図5に示すようなパターンを形成したが、本実施の形態では、
図10に示すようなパターンを形成する。
図10におけるかさ上げ対向部5cの近傍を拡大して斜めから見たところを
図11に示す。
【0040】
本実施の形態では、工程S2においてパターニングする際にかさ上げ対向部5cを形成するだけでなく外枠部の3以上の箇所とそれぞれ接続する支持梁部16をも形成する。支持梁部16の各々は「外枠部とかさ上げ対向部とを接続する支持部」に相当する。かさ上げ対向部5cに比べて支持梁部16は細くなっている。この例では、かさ上げ対向部5cに1以上の貫通孔18が設けられているが、支持梁部16には貫通孔は設けられていない。
【0041】
本実施の形態におけるMEMSデバイスの製造方法は、この後、工程S3〜S5を行なうという点では、実施の形態1と同じである。
【0042】
工程S3によってかさ上げ対向部5cが第2シリコン層103から離隔して浮いた状態となったとき、かさ上げ対向部5cは外枠部の3以上の箇所とつながった支持梁部16によって支持されているので、第2シリコン層103から浮いた姿勢を十分な強度で維持することができる。
【0043】
工程S5の後に、
図12に示す共振器202を得ることができる。ただし、工程S5の後にトンネル31の出口を絶縁膜34で塞いである。かさ上げ対向部5cを取り囲むように6個の痕跡ブロック17が残っている。ただし、絶縁膜34は、振動部2を上から覆うように蓋材(図示せず)を取り付けることによって、外壁部9によって囲まれる領域を振動部2とともに密封する場合にトンネル31を通じた空気の侵入を防ぐために設けるものである。このような密封は振動部2が配置された空間を真空に維持するために行なわれるものである。外壁部9によって囲まれる領域を真空として蓋材と絶縁膜34とを設置すれば振動部2は真空中に保持されることとなる。一方、上述のような蓋材を取り付ける予定がない場合は絶縁膜34は設けなくてもよい。たとえば共振器202全体を真空中に設置する場合などは、蓋材や絶縁層34を設けなくても振動部2を真空中に保持することができる。
【0044】
(作用・効果)
本実施の形態におけるMEMSデバイスの製造方法では、基板表面と振動部材下面とが十分に狭い間隙で対向した構造を有し、容易に製造可能なMEMSデバイスとすることができる。また、かさ上げ対向部5cに1以上の貫通孔18が設けられているので、工程S3のエッチングの際、エッチング媒体は、かさ上げ対向部5cの両端からかさ上げ対向部5cの下側に回り込むだけでなく、かさ上げ対向部5cの平面的に見た内側部分においても貫通孔18を通じてかさ上げ対向部5cの下側に回り込むことができる。したがって、かさ上げ対向部5cの下側の中間絶縁層102は速やかに除去され、エッチングに要する時間は短く抑えられる。エッチングに要する時間が短く抑えられるので、外枠部15における中間絶縁層102の除去の進行の程度は、小さく抑えることができる。
【0045】
本実施の形態では、支持梁部16には貫通孔18が設けられていないが、支持梁部16はかさ上げ対向部5cに比べて細く形成されているので、たとえ支持梁部16に貫通孔18がなくても、支持梁部16の下側の中間絶縁層102の除去は速やかに完了している。個々の支持梁部16は細くなっていることによって支持強度は小さくなっているが、支持梁部16の本数が多くなっているので、全体としては支持梁部16によってかさ上げ対向部5cを十分に支持することができる。
【0046】
(他の例)
ここでは、かさ上げ対向部5cにのみ貫通孔18を設け、支持梁部16には貫通孔18が設けない例を示したが、本発明の適用はこのような例に限らない。他の例として、工程S2で第1シリコン層101をパターニングした際に、
図13に示すように、支持梁部16とかさ上げ対向部5cとの両方に貫通孔18を設けてもよい。その場合、
図14に示す共振器203を得ることができる。共振器203においては、かさ上げ対向部5cの周囲を取り囲むように6個の痕跡ブロック17が配置されている。各痕跡ブロック17にも貫通孔18が残っている。
【0047】
この例では、第1シリコン層101をパターニングする工程S2において、支持部としての支持梁部16にも1以上の貫通孔を形成している。このようにすれば、より好ましい。なぜなら、支持部としての支持梁部においてもエッチング媒体が下側に入り込みやすくなり、その結果、エッチングに要する時間が短縮されるからである。
【0048】
実施の形態2のように支持部として支持梁部を多く設けることとすれば、エッチングによってかさ上げ対向部が第2シリコン層から浮いた状態となった後も、十分な強度でかさ上げ対向部を支持することができる。したがって、かさ上げ対向部が第2シリコン層に不所望に固着することを防止することができる。その結果、浮き構造体とかさ上げ対向部との間で本来確保されるべき間隙が閉じた状態となってしまう不良の発生率を低減することができる。
【0049】
ここでは、
図10、
図13に示したように、支持梁部16が外枠部の6ヶ所と接続し、支持梁部16同士がX,Y方向にそれぞれ延在して広がっている例を示した。しかし、支持梁部の配置パターンはこれに限らず、さまざまなパターンが考えられる。支持梁部16が外枠部に接続する箇所は6ヶ所に限らず3ヶ所以上の任意の数であってもよい。接続箇所が多いほど、かさ上げ対向部は安定する。
【0050】
(さらに他の例)
工程S2で第1シリコン層101をパターニングした際に、
図15に示すように、支持梁部16とかさ上げ対向部5cとの両方に貫通孔18を設けてもよい。その場合、
図16に示す共振器204を得ることができる。共振器204においては、かさ上げ対向部5cの周囲を取り囲むように4個の痕跡ブロック17が配置されている。各痕跡ブロック17にも貫通孔18が残っている。
【0051】
(貫通孔)
上記各実施の形態で説明した1以上の貫通孔18はかさ上げ対向部を厚み方向にそれぞれ完全に貫通している。各例においては、貫通孔18はマトリックス状に配列されているものとして図示したが、マトリックス状とは限らない。貫通孔18の個数も図示したものに限らず、もっと多くても少なくてもよい。
【0052】
たとえば
図10では、かさ上げ対向部5c内に貫通孔18が4×3の合計12個配列されている例を示しているが、実際には数十個、数百個単位で配列されていてよい。
【0053】
このようにかさ上げ対向部などに複数の貫通孔を設けた構成を採用することにより、MEMSデバイスの製造方法の工程S3においてエッチング液がこれらの貫通孔を通じてかさ上げ対向部の裏側に循環しやすくなるので、工程S3においてかさ上げ対向部の背後の中間絶縁層を完全に除去することがより確実となる。特に、かさ上げ対向部の面積が大きい場合には、このような貫通孔を設けておくことは効果的である。
【0054】
かさ上げ対向部を浮き構造体に対する振動付与のための電極として用いる場合、かさ上げ対向部の上面に複数の貫通孔を設けたことによる表面積の減少が電極としての機能に影響を及ぼさないかという点が問題となる。この点については、各貫通孔の径を十分小さくしておけば、かさ上げ対向部に一定電位を与えたときには、フリンジ効果によって、かさ上げ対向部の上面は電気的にはあたかも貫通孔がない面であるかのように振舞うので、問題とならない。
【0055】
(実施の形態3)
(構成)
図2〜
図4を参照して、本発明に基づく実施の形態3におけるMEMSデバイスについて説明する。本実施の形態におけるMEMSデバイスは、実施の形態1で説明したMEMSデバイスの製造方法によって得ることができる。本実施の形態におけるMEMSデバイスの一例として、
図12〜
図14に示した共振器202を挙げることができる。
【0056】
本実施の形態におけるMEMSデバイスとしての共振器201は、平坦な主表面20aを有する基材20と、主表面20aから離隔するようにして基材20に相対的に固定され、側方に延在する浮き構造体としての振動部2と、主表面20aに固定され、前記浮き構造体から離隔しつつ、前記浮き構造体の一部の領域2vに対して主表面20aに近い側から対向しているかさ上げ対向部5とを備える。かさ上げ対向部5は、厚み方向に貫通する1以上の貫通孔18を有する。
【0057】
(作用・効果)
本実施の形態におけるMEMSデバイスは、実施の形態1で説明したMEMSデバイスの製造方法によって容易に作製することができる。したがって、このMEMSデバイスを製造する際には、外枠部15、すなわち、浮き構造体の周辺の中間絶縁層を残したい部分において中間絶縁層が過度に除去されないようにすることができ、信頼性の高いMEMSデバイスとすることができる。
【0058】
なお、上記各実施の形態では、MEMSデバイスが共振器である例を示したが、本発明の適用対象としてのMEMSデバイスは、共振器に限らず他の種類のMEMSデバイスであってもよい。
【0059】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。