特許第5757658号(P5757658)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5757658
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】多本線巻線装置及び多本線巻線方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/06 20060101AFI20150709BHJP
【FI】
   H01F41/06 A
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2011-151687(P2011-151687)
(22)【出願日】2011年7月8日
(65)【公開番号】特開2013-21051(P2013-21051A)
(43)【公開日】2013年1月31日
【審査請求日】2014年4月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227537
【氏名又は名称】日特エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121234
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 利明
(72)【発明者】
【氏名】武藤 憲一
(72)【発明者】
【氏名】原 英男
【審査官】 池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−124313(JP,A)
【文献】 特開2010−158100(JP,A)
【文献】 特開2007−080921(JP,A)
【文献】 特開2008−148406(JP,A)
【文献】 特開2008−270309(JP,A)
【文献】 特開2002−165423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻芯(13)を軸回りに回転させてノズル(30)の孔(30a)を通過して繰出された線材(11)を前記巻芯(13)の外周に巻付ける巻回機構(20)と、この巻回機構(20)による巻回と同期して前記ノズル(30)又は前記巻芯(13)を巻芯(13)軸方向へ移動させる送り機構(60)とを備えた巻線装置において、
前記ノズル(30)の軸と前記巻芯(13)の軸に平行な平面内で前記ノズル(30)を傾転させるノズル傾転機構(90)と、
このノズル(30)の傾転角が前記巻回機構(20)による前記巻芯(13)への巻回時に前記送り機構(60)によるノズル(30)又は巻芯(13)の送りにより前記線材(11)に与えられる傾斜角と一致するように前記ノズル傾転機構(90)を制御する制御機構と、
を備え、
前記ノズル(30)の孔(30a)の形状が前記ノズル(30)の軸と前記巻芯(13)の軸に平行な平面内で複数本の線材(11)が一列に並べられて通過可能な長円状又は長方形状を成して形成され、
傾転状態で前記複数本の線材(11)が並んで繰出される前記ノズル(30)の先端縁の少なくとも一部が前記巻芯(13)に沿うように切り欠いて形成され
前記ノズル(30)の近傍に前記巻芯(13)を支持するガイド部材(34)が設けられ
ことを特徴とする多本線巻線装置。
【請求項2】
ガイド部材(34)がノズル(30)を挟む一対の壁材(34a,34b)を有し、前記一対の壁材(34a,34b)の端縁に巻芯(13)を収容して支持する凹溝(34c〜34e)がそれぞれ形成された請求項1記載の多本線巻線装置。
【請求項3】
ノズル(30)を軸回りに回転させて反転させるノズル反転機構(80)を備え、送り機構(60)がノズル(30)又は巻芯(13)を巻芯(13)軸方向へ往復移動可能に構成された請求項1又は2記載の多本線巻線装置。
【請求項4】
ノズル(30)を軸方向に往復移動させるノズル可動機構(85)を備え、前記ノズル可動機構(85)は巻芯(13)から遠ざけていた前記ノズル(30)を前記巻芯(13)に近づけて前記ノズル(30)の先端縁(30b〜30d)の少なくとも一部を前記巻芯(13)又は前記巻芯(13)に既に巻付けられた線材(11)に接触可能に構成された請求項1ないし3いずれか1項に記載の多本線巻線装置。
【請求項5】
ノズル(30)の孔(30a)を通過して繰出された線材(11)を巻芯(13)外周に巻回するとともに、この巻回と同期して前記ノズル(30)又は巻芯(13)を前記巻芯(13)の軸方向へ移動させて、前記巻芯(13)外周に前記線材(11)を整列巻きする巻線方法において、
前記ノズル(30)の孔(30a)の形状を前記ノズル(30)の軸と前記巻芯(13)の軸に平行な平面内で複数本の線材(11)が一列に並べられて通過可能な長円状又は長方形状を成すように形成するとともに、
前記複数本の線材(11)が繰出される前記ノズル(30)の先端縁の少なくとも一部を切り欠いて形成し、
前記ノズル(30)の軸と前記巻芯(13)の軸に平行な平面内で前記ノズル(30)を傾転させることにより、前記巻芯(13)への巻回時に前記ノズル(30)又は巻芯(13)の送りにより前記複数本の線材(11)に与えられる傾斜角と一致する傾転角を前記ノズル(30)に与え、
かつ前記ノズル(30)の先端縁の切り欠き(30b〜30d)の少なくとも一部を前記巻芯(13)に沿わせてから、前記整列巻きを行う
ことを特徴とする多本線巻線方法。
【請求項6】
巻線時にノズル(30)の先端縁の切り欠き(30b〜30d)の少なくとも一部を巻芯(13)又は前記巻芯(13)に既に巻付けられた線材(11)に接触させる請求項5記載の多本線巻線方法。
【請求項7】
ノズル(30)又は巻芯(13)を巻芯(13)軸方向へ往復移動させて、前記巻芯(13)外周に複数本の線材(11)を複数層に亘って整列巻きする巻線方法であって、前記ノズル(30)又は前記巻芯(13)の往動時と復動時で前記ノズル(30)を反転させる請求項5又は6記載の多本線巻線方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の線材を巻芯外周に整列巻きする多本線巻線装置及び多本線巻線方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の線材を巻芯外周に整列巻きする技術として、その線材の数に応じた複数のノズルやプーリを用い、それら複数のノズル又はプーリからそれぞれ繰出される複数の線材を、軸回りで回転する巻芯の外周に巻回する巻線装置が知られている(例えば、特許文献1及び2参照。)。これらの巻線装置は、巻芯を回転させる手段の他に、複数のノズル又はプーリを回転させ又は移動させる別の手段を備え、その別の手段により複数のノズル又はプーリを回転させ又は移動させることにより、それらのノズル又はプーリからそれぞれ繰出される複数の線材間における隙間を無くして、それら複数の線材を巻芯に隙間無く整列に巻付けるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−198955号公報(段落番号[0006]〜[0013]、図10
【特許文献2】特開2009−33887号公報(段落番号[0009]〜[0022]、図5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の巻線装置では、線材の数に応じた複数のノズルやプーリを用いているので、例えば、線材の数が2本以上の例えば10本のように、比較的多くの線材を巻芯の外周に同時に整列巻きするような場合には、そのノズルやプーリの数が線材の数に比例して増加し、それらを別々に回転させ又は移動させる手段も増加して、得られる装置が複雑化し、それとともに装置自体の単価が押し上げられる不具合がある。
【0005】
また、線材の本数が増えてその数に比例してノズルやプーリの数が増加すると、それらが互いに干渉することを避けるために、その増加したノズルやプーリの巻芯からの距離は拡大する傾向がある。すると、そのノズルやプーリから繰出された線材が巻芯に達するまでの間に幅方向にずれる量も拡大し、隣接する線材との距離が変化することにより整列巻きが困難になる不具合がある。
【0006】
特に、巻芯が細くて比較的長いようなものであって、その巻芯がその長さ故に湾曲等するようなものである場合には、そのノズルやプーリから繰出された線材が巻芯に達するまでの間にずれる程度も拡大して、そのような巻芯への整列巻は更に困難になる。そして、このような湾曲するような巻芯では、その端部と中央部分では湾曲の程度も異なることから、隣接する線材までの距離のばらつきもその中央部分と端部とでは異なることになり、巻芯の全長に渡って均一に複数の線材を整列巻きすることは著しく困難になる傾向にあった。
【0007】
本発明の目的は、例え巻芯が細くて比較的長いようなものであっても、比較的多くの線材を巻芯の外周に比較的容易に整列巻きし得る多本線巻線装置及び多本線巻線方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の多本線巻線装置は、巻芯を軸回りに回転させてノズルの孔を通過して繰出された線材を巻芯の外周に巻付ける巻回機構と、この巻回機構による巻回と同期してノズル又は巻芯を巻芯軸方向へ移動させる送り機構とを備える。
【0009】
その特徴ある構成は、ノズルの軸と巻芯の軸に平行な平面内でノズルを傾転させるノズル傾転機構と、このノズルの傾転角が巻回機構による巻芯への巻回時に送り機構によるノズル又は巻芯の送りにより線材に与えられる傾斜角と一致するようにノズル傾転機構を制御する制御機構と、を備え、ノズルの孔の形状がノズルの軸と巻芯の軸に平行な平面内で複数本の線材が一列に並べられて通過可能な長円状又は長方形状を成して形成され、傾転状態で複数本の線材が並んで繰出されるノズルの先端縁の少なくとも一部が巻芯に沿うように切り欠いて形成されたところにある。
【0010】
この多本線巻線装置では、ノズルの近傍に巻芯を支持するガイド部材を設けることが好ましく、このガイド部材はノズルを挟む一対の壁材を有し、一対の壁材の端縁に巻芯を収容して支持する凹溝をそれぞれ形成することが更に好ましい。そして、ノズルを軸回りに回転させて反転させるノズル反転機構を備え、送り機構がノズル又は巻芯を巻芯軸方向へ往復移動可能に構成されることも好ましい。また、ノズルを軸方向に往復移動させるノズル可動機構を備える場合、そのノズル可動機構は巻芯から遠ざけていたノズルを巻芯に近づけてノズルの先端縁の少なくとも一部を巻芯又は巻芯に既に巻付けられた線材に接触可能に構成されたものであることが好ましい。
【0011】
本発明の多本線巻線方法は、ノズルの孔を通過して繰出された線材を巻芯外周に巻回するとともに、この巻回と同期してノズル又は巻芯を巻芯の軸方向へ移動させて、巻芯外周に線材を整列巻きする方法である。
【0012】
その特徴ある点は、ノズルの孔の形状をノズルの軸と巻芯の軸に平行な平面内で複数本の線材が一列に並べられて通過可能な長円状又は長方形状を成すように形成するとともに、複数本の線材が繰出されるノズルの先端縁の少なくとも一部を切り欠いて形成し、ノズルの軸と巻芯の軸に平行な平面内でノズルを傾転させることにより、巻芯への巻回時にノズル又は巻芯の送りにより複数本の線材に与えられる傾斜角と一致する傾転角をノズルに与え、かつノズルの先端縁の切り欠きの少なくとも一部を巻芯に沿わせてから、整列巻きを行うところにある。
【0013】
この多本線巻線方法では、巻線時にノズルの先端縁の切り欠きの少なくとも一部を巻芯又は巻芯に既に巻付けられた線材に接触させることが好ましく、ノズル又は巻芯を巻芯軸方向へ往復移動させて、巻芯外周に複数本の線材を複数層に亘って整列巻きする場合には、ノズル又は巻芯の往動時と復動時でノズルを反転させることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の多本線巻線装置及び多本線巻線方法では、ノズルの孔の形状がノズルの軸と巻芯の軸に平行な平面内で複数本の線材が一列に並べられて通過可能な長円状又は長方形状を成して形成されているので、そのノズルの孔を貫通する複数本の線材は、そのノズルの先端縁から並んだ状態で繰出されることになる。そして、ノズル傾転機構により、ノズルに巻芯上での線材の傾斜角に等しい傾転角を与えることにより、並んで繰出された複数の線材を、ノズルから真っ直ぐに繰出された状態で、そのまま巻芯に巻回することができる。また、傾転状態で複数本の線材が並んで繰出されるノズルの先端縁を切り欠いて、その巻芯に沿わせたので、複数の線材が繰出されるノズルの先端縁と巻芯の距離を複数の線材間で均一にすることができ、そのノズルから繰出された線材が巻芯に達するまでの間にずれてそれらの線材間に隙間が生じること、又はその隙間が拡大するようなことを防止することができる。よって、比較的多くの線材を巻芯の外周に比較的容易に整列巻きすることができる。
【0015】
特に、この巻線時にノズルの先端縁の切り欠きの少なくとも一部を巻芯に近づけて接触させれば、巻芯が細くて比較的長いようなものであって、その巻芯がその長さ故に湾曲等するようなものであっても、その巻芯が線材に引っ張られてノズル側に湾曲するような事態は回避され、ノズルから並んで繰出された複数の線材を、その並んだ状態で直ちに巻芯に巻線することができる。
【0016】
また、ノズルの近傍に巻芯を支持するガイド部材を設ければ、巻芯が湾曲等するようなものであっても、その巻線時に巻芯が撓んで湾曲するような事態を確実に防止できる。よって、本発明では、例え巻芯が細くて比較的長いようなものであっても、比較的多くの線材を巻芯外周に比較的容易に整列巻きすることが可能になる。
【0017】
更に、本発明の多本線巻線装置及びその巻線方法では、巻芯の外周に複数本の線材を複数層に亘って整列巻きする場合であっても、ノズル反転機構によりノズルを反転させることにより、その巻線時にノズルの先端縁の切り欠きを巻芯に容易に沿わせることができる。そして、送り機構によりノズル又は巻芯を往復移動させることにより、下層のコイルの上に上層のコイルのための巻線を行うことが可能になり、複数層に亘る高精度の整列巻きを容易に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明実施形態の多本線巻線の状態を示す斜視図である。
図2】そのガイド部材に支持された巻芯に一層目の巻線が成されているノズルの上面図である。
図3】その一層目の上に二層目の巻線が成されている図2に対応するノズルの上面図である。
図4】その二層目の上に更に三層目の巻線が成されている図2に対応するノズルの上面図である。
図5】そのノズルの孔に通過して繰出された複数の線材を示すノズルの断面図である。
図6】そのノズルの先端とガイド部材を示す図10のA部拡大上面図である。
図7】そのノズルの先端部分を示す拡大斜視図である。
図8】そのノズルが傾転して一層目の巻線が成されている状態を示す上面図である。
図9】そのノズルが傾転して二層目の巻線が成されている状態を示す上面図である。
図10】そのノズルが巻芯に対して直交する状態を示す上面図である。
図11】そのノズル周囲の正面図である。
図12】本発明実施形態の多本線巻線装置を示す正面図である。
図13】その多本線巻線装置の上面図である。
図14】その多本線巻線装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図12図14に示すように、本発明の多本線巻線装置10は、線材供給機構14から繰出される複数の線材11(図14)を巻芯13の外周に整列巻きするものであって、図における巻芯13としては、断面が円形であって比較的細くかつ長いピン状のものが使用される場合を示す。なお、この巻芯13は、断面が円形のものに限るものではなく、断面が方形のものであっても良い。ここで、互いに直交するX、Y、Zの3軸を設定し、X軸が水平前後方向、Y軸が水平横方向、Z軸が垂直方向に延び、Y軸方向に巻芯13が張設されるものとして本発明の多本線巻線装置10について説明する。
【0021】
図12及び図13に示すように、本発明の多本線巻線装置10は、比較的長いピン状の巻芯13をY軸方向に引っ張って、その軸回りに回転させ、後述するノズル30を介して繰出される線材11(図14)を、その巻芯13の外周に巻付ける巻回機構20を備える。この実施の形態における巻回機構20は、巻芯13の一端を咬持する固定チャック装置21と、その固定チャック装置21とY軸方向に離間して設けられY軸方向に延びる巻芯13の他端を咬持する可動チャック装置22とを備える。この固定及び可動チャック装置21,22はそれぞれ同一のものを用いることができ、これらのチャック装置21,22としてはメカニカルチャックであるドリルチャックやコレットチャックが例示される。図ではドリルチャックが用いられる場合を例示する。
【0022】
固定チャック装置21は基台10aに設けられた固定軸受け23に枢支され、可動チャック装置22は可動軸受け24に枢支される。可動軸受け24はチャック移動機構26を介して基台10aに取付けられ、このチャック移動機構26としては流体圧シリンダ等の各種のアクチュエータが例示される。図ではエア圧シリンダからなるチャック移動機構26を示し、その移動機構26の可動台26aに可動軸受け24が取付けられる場合を例示する。このエア圧シリンダからなるチャック移動機構26は圧縮エアの供給の有無により可動台26aを巻芯13の延長方向であるY軸方向に移動可能に構成され、可動台26aとともに可動軸受け24を移動させて可動チャック装置22を固定チャック装置21から遠ざけることにより巻芯13を引っ張り、その巻芯13を固定チャック装置21と可動チャック装置22の間に張設可能に構成される。
【0023】
また、この巻回機構20は、張設された巻芯13を回転させて線材供給機構14(図14)からノズル30を介して繰出される複数の線材11を、その巻芯13に巻付ける巻芯回転手段を備える。図における回転手段は図示しないコントローラからの指令により回転駆動するチャック用サーボモータ27,28であり、図2に示すように、固定軸受け23と可動軸受け24の双方にサーボモータ27,28がそれぞれ設けられる。それぞれのチャック用サーボモータ27,28の回転軸とそれぞれのチャック装置21,22との間にはベルト27a,28aが架設され、制御機構であるコントローラからの指令によりそれぞれのチャック用サーボモータ27,28が駆動してそれらの回転軸が回転すると、ベルト27a,28aを介してそれぞれのチャック装置21,22が同期して同方向に回転し、巻芯13を捩ることなく回転可能に構成される。
【0024】
固定及び可動チャック装置21,22には複数の線材11を巻回可能なリール29がそれぞれ設けられる。このリール29は同一構造であって、これらのリール29はコ字状の取付部材29bを介して固定及び可動チャック装置21,22にそれらのチャック装置21,22と同軸にそれぞれ設けられる。そして、これらのリール29には、巻芯13が挿通可能な中央孔が中心軸にそれぞれ形成され、その中央孔に挿通された巻芯13の一端を可動チャック装置22が、その他端を固定チャック装置21がそれぞれ咬持するように構成される。なお、図示しないが、この取付部材29bにはノズル30を介して繰出される複数の線材11の先端が固定可能に構成される。リール29の側壁には、このリール29に巻回された複数の線材11を巻芯13側に引き出す複数の切り欠き29aが形成される。図12及び図13では切り欠き29aが4箇所形成されたリール29を示す。
【0025】
このようなリール29を固定及び可動チャック装置21,22にそれぞれ取付けることにより、巻芯回転手段であるサーボモータ27,28により固定及び可動チャック装置21,22が回転すると、これらのリール29はそれらの固定及び可動チャック装置21,22とともに回転し、ノズル30から繰出される複数の線材11を巻回し、その後に切り欠き29aからその複数の線材11を巻芯13側に引き出し得るように構成される。
【0026】
図12図14に示すように、本発明の巻線装置10は、巻回機構20による線材11の巻回と同期してそのノズル30又は巻芯13を巻芯軸方向へ移動させる送り機構60を備える。この実施の形態における送り機構60は、ノズル30を移動させるものであり、主移動機構61とその主移動機構61に設けられた副移動機構71とを備える。基台10aには巻芯13に沿ってY軸方向に延びる縦壁10bが設けられ、主移動機構61はその縦壁10bに設けられる。具体的に、縦壁10bの巻芯13に臨む前面には上下に所定の間隔を空けて一対の主レール62,62がその全長に設けられる。縦壁10bのY軸方向における両端には主枢支台63,63が設けられ、一対の主レール62,62の間に主ネジ軸64がその両端が主枢支台63,63に枢支されて設けられる。一対の主レール62,62には主可動板66が一対の主レール62,62の長手方向に移動可能に設けられ、その主可動板66には主ネジ軸64に螺合する主ネジ部材67(図14)が固定される。一方の主枢支台63には図示しないコントローラにより制御される主駆動モータ68が取付けられ、この主駆動モータ68の回転軸に主ネジ軸64が連結される。そして、この主駆動モータ68が駆動して主ネジ軸64が回転すると、それに螺合する主ネジ部材67が主可動板66と共に一対の主レール62,62に沿って長手方向に移動可能に構成される。
【0027】
副移動機構71は、主移動機構61における主可動板66に設けられる。具体的に、主可動板66の巻芯13に臨む前面には上下に所定の間隔を空けて一対の副レール72,72が主可動板66の全長に設けられる。主可動板66のY軸方向における両端には副枢支台73,73が設けられ、一対の副レール72,72の間に副ネジ軸74がその両端が副枢支台73,73に枢支されて設けられる。一対の副レール72,72には副可動板76が一対の副レール72,72の長手方向に移動可能に設けられ、その副可動板76には副ネジ軸74に螺合する副ネジ部材77(図14)が固定される。一方の副枢支台73には図示しないコントローラにより制御される副駆動モータ78が取付けられ、この副駆動モータ78の回転軸に副ネジ軸74が連結される。そして、この副駆動モータ78が駆動して副ネジ軸74が回転すると、それに螺合する副ネジ部材77が副可動板76と共に一対の副レール72,72に沿って長手方向に移動可能に構成される。
【0028】
図10図11及び図14に示すように、送り機構60における副可動板76には、ノズル反転機構80、ノズル可動機構85及びノズル傾転機構90を介して、ノズル30が取付けられる。ノズル傾転機構90は、ノズル30の軸と巻芯13の軸に平行な平面内、この実施の形態ではX−Y平面内でそのノズル30を傾転させるものであって、副可動板76の巻芯13に臨む前面に水平に取付けられた水平基板91と、その水平基板91の上面にZ軸を中心に回転可能に取付けられた円板92を備える。水平基板91には、図示しないコントローラにより制御されてその円板92を回転させる円板回転モータ93が設けられ、この円板回転モータ93を駆動させることにより、図8に示すようにその円板92を正転させ、又は図9に示すように逆転させて、その円板92を所望の位置に停止可能に構成される。この円板92の回転によりノズル30もともに回転するので、円板回転モータ93を制御する図示しないコントローラは、そのノズル30の傾転角が巻回機構20による巻芯13への巻回時に、送り機構60によるノズル30又は巻芯13の送りにより線材11に与えられる傾斜角と一致するようにノズル傾転機構90を制御する制御機構を構成する。
【0029】
図10及び図14に示すように、ノズル可動機構85は、その円板92に径方向に延びて設けられた軸方向伸縮アクチュエータであり、このノズル可動機構85であるアクチュエータは、円板92の回転中心から径方向に延びて設けられたハウジング86と、そのハウジング86の端部に設けられて図示しないコントローラにより制御されるサーボモータ87と、ハウジング86内部に設けられそのサーボモータ87により回動駆動されるボールねじ88と、このボールねじ88に螺合してハウジング86に沿って平行移動する従動子89(図14)等によって構成される。そして、このサーボモータ87が駆動してボールねじ88が回転すると、それに螺合する従動子89がハウジング86に沿って移動し、図14の実線矢印で示すように移動してノズル30を巻芯13から遠ざけ、又は遠ざけられていたノズル30を破線矢印で示すように移動して巻芯13に近づけるように構成される。
【0030】
図10図11及び図14に示すように、ノズル反転機構80は、中央に丸孔81a(図14)が形成されてその丸孔81aの中心軸がノズル可動機構85であるアクチュエータの軸方向に平行になるようにその従動子89に立設された立板81と、その立板81の巻芯13に臨む側であって丸孔81aの中心軸又はそれに平行な軸を中心として回転可能に設けられたドーナツ状の回転部材82とを備える。立板81には、図示しないコントローラにより制御されてその回転部材82を回転させる反転モータ83が設けられ、この反転モータ83を駆動させることにより、その回転部材82を正転させてその回転部材82を360度回転させて反転させ、又は反転状態の回転部材82を360度逆転させて、元の正転状態に戻すことができるように構成される。
【0031】
ノズル30は、ノズル反転機構80におけるドーナツ状の回転部材82に、その回転部材82から巻芯13に延び、かつその中心軸を回転部材82の中心軸と同軸になるように設けられる。そして、前述した巻回機構20は、このノズル30の先端縁であって、複数の線材11が繰出される孔30a(図11)に臨む位置に、ピン状の巻芯13が位置するようにその巻芯13のZ軸方向の高さが調整して作られる。
【0032】
図7図10及び図11に示すように、この実施の形態におけるノズル30は、ドーナツ状の回転部材82に重合するリング状の台板31と、この台板31の中央の孔31aを跨いだ両側に立設された一対の脚部32,32と、その一対の脚部32,32の突出端を連結するように設けられたノズル本体33とを備える。図7に示すように、この実施の形態におけるノズル本体33は、一対の脚部32,32の突出端を基端が連結する基台部33aと、その基台部33aの突出端の両側に設けられて複数の線材11を繰出す孔30aのY軸方向における幅を決定する一対の幅部材33b,33cと、その基台部33aに重なる蓋部材33dとを有する。蓋部材33dの基台部33aに対抗する側には、線材11の外径より僅かに深い溝33h(図6)が長手方向に延びてその全長に形成され、この蓋部材33dを基台部33aに重ねることにより、この溝33hが基台部33aにより覆われて複数の線材11を繰出す孔30aが形成される。
【0033】
具体的に、ノズル本体33を構成する基台部33aと、一対の幅部材33b,33cと、蓋部材33dにより包囲された方形状の孔30aが、複数の線材11を繰出すノズル30の孔30aを形成し、その孔30aの形状は、ノズル30の軸と巻芯13の軸に平行な平面内で複数本の線材11がY軸方向に一列に並べられて通過可能な長方形状を成して形成される(図1)。ここで、複数の線材11とは、線材11の数が2本以上であることを意味し、例えば、図5に示すように線材11が10本のように比較的多い場合も含むものである。そして、蓋部材33dに形成された溝33hの深さが複数の線材11を繰出す孔30aのZ軸方向における厚さを決定するように構成される。
【0034】
図5に示すように、一対の幅部材33b,33cは、その孔30aの出口において互いに対向する面が平行になるように形成される。そして、この一対の幅部材33b,33cにより決定される孔30aのY軸方向における幅を一定にするとともに、幅が一定の範囲をX軸方向に所定の長さ形成し、この孔30aに間隔を空けて挿通された複数の線材11を、この孔30aの一対の幅部材33b,33cで挟まれる出口において、その幅方向に整列させて互いに密着させるように構成される。
【0035】
図7に示すように、巻芯13に巻回される複数の線材11は、立板81の丸孔81a(図10)及び回転部材82の内側を挿通して一対の脚部32,32の間を通過し、ノズル本体33に形成された孔30aを貫通して巻芯13に案内され、この孔30aを貫通する複数本の線材11は、そのノズル30の先端縁から並んだ状態で繰出されるように構成される。ここで、図に示された符号33eは、その蓋部材33dを基台部33aに取付けるためのネジ部材33eを示し、符号33f,33gは一対の幅部材33b,33cを基台部33aの所定の位置に正確に位置決めするための位置決め用ピン33f,33gを示す。
【0036】
また、図6に詳しく示すように、このノズル30の巻芯13に臨む先端、即ちノズル本体33の先端は、その中心軸を巻芯13に直交させてX軸に平行にした状態(図10の状態)で、その巻芯13に対して傾斜するような斜めの切り欠き30b,30c,30dが形成される。この実施の形態では、巻芯13に三層に亘って巻線が成される場合を示し、ノズル30の先端縁には、ノズル30の中心軸に対する角度が互いに異なる3種類の切り欠き30b,30c,30dが形成される場合を示す。第一切り欠き30bは、線材11の巻芯13への第一層の巻回時にノズル30の送りにより複数本の線材11に与えられる傾斜角α(図2)と一致する傾転角αをノズル30に与えた場合に、その巻芯13と平行になるように形成される。第二切り欠き30cは、線材11の二層目の巻線時にノズル30の送りにより複数本の線材11に与えられる傾斜角β(図3)と一致する傾転角βをノズル30に与えた場合に、その巻芯13と平行になるように形成される。第三切り欠き30dは、線材11の三層目の巻線時にノズル30の送りにより複数本の線材11に与えられる傾斜角γ(図4)と一致する傾転角γをノズル30に与えた場合に、その巻芯13と平行になるように形成される。
【0037】
図2図4に示すように、巻線が複数の層に亘って成される場合に、上層の巻線は下層の巻線時に比較して線材11が巻回される直径が拡大し、一回巻付けられる間に繰出される量が増加することから、ノズル30の送りにより複数本の線材11に与えられる傾斜角は徐々に減少する。このため、下層の巻線である第一層の巻線時の巻芯13に平行な第一切り欠き30bより第二層の巻線時の巻芯13に平行な第二切り欠き30cの傾斜角度の方が小さく(α>β)、第三切り欠き30dの方が更に小さくなる(β>γ)ように形成される。そして、図6に詳しく示すように、第一切り欠き30bと第三切り欠き30dをノズル30の先端縁における両側に形成し、第二切り欠き30cをそれらの中間に形成して、その第二切り欠き30cに孔30aが開口するように構成される。これにより、ノズル30の先端縁は全体として山形を成して巻芯13側に膨出するように形成される。そして、ノズル傾転機構90による円板回転モータ93を駆動させて、その円板92を正転又は逆転させることにより生じるノズル30の傾転状態における巻線時には、図2図4に示すように、ノズル30の先端縁に形成された切り欠き30b,30c,30dの少なくとも一部が巻芯13に沿うように構成される。
【0038】
図10図11及び図14に示すように、ノズル30を傾転させる円板92には、このノズル30の近傍に巻芯13を支持するガイド部材34が設けられる。この実施の形態におけるガイド部材34には、ノズル30を挟むような一対の壁材34a,34bが形成される。このガイド部材34は円板92に昇降装置35を介して取付けられ、図11に示すように、この昇降装置35は、円板92に上面視でノズル30に直交するように設けられた四角形のフレーム36を備える。このフレーム36には、中央にZ軸方向上方に回転軸を延ばしたサーボモータ37が設けられ、そのサーボモータ37の両側には、Z軸方向に伸びる延びる一対の移動シャフト38,38が軸方向に摺動自在に貫通支持されている。そして、ガイド部材34の両端が一対の移動シャフト38,38の上端に支持され、サーボモータ37の回転軸には図示しないネジ軸が固定される。ガイド部材34には、ネジ軸と螺合する雌ねじ軸39が取付けられ、図示されない制御手段(例えばコンピュータ)により制御されたサーボモータ37によりネジ軸が回転駆動されると、雌ねじ軸39とともにガイド部材34は、円板92に対してZ軸方向に昇降するように構成される。
【0039】
図11に示すように、ガイド部材34は一点鎖線で示す上昇状態で、一対の壁材34a,34bがノズル本体33を両側から挟むように構成される。図1及び図6に示すように、その一対の壁材34a,34bの端縁には、上昇状態で巻芯13を収容して支持する凹溝34c,34d,34eがそれぞれ形成される。巻芯13に三層に亘って線材11を巻線するこの実施の形態では、各層の巻線時にノズル30を傾転させた状態で、巻芯13を収容する三種類の凹溝34c,34d,34eが形成される。これらの凹溝34c,34d,34eは、断面がV字状を成し、その内の第一凹溝34cは、巻芯13に一層目の巻線を行うための線材11の巻回時にノズル30の送りにより複数本の線材11に与えられる傾斜角α(図2)と一致する傾転角αをノズル30に与えた場合に、その巻芯13を収容して支持するように形成される。第二凹溝34dは、線材11の二層目の巻線時にノズル30の送りにより複数本の線材11に与えられる傾斜角β(図3)と一致する傾転角βをノズル30に与えた場合に、その巻芯13を収容して支持するように形成される。第三凹溝34eは、線材11の三層目の巻線時にノズル30の送りにより複数本の線材に与えられる傾斜角γ(図4)と一致する傾転角γをノズル30に与えた場合に、その巻芯13を収容して支持するように形成される。
【0040】
一方、図11の実線で示すように、そのガイド部材34が実線矢印で示すように下降すると、そのガイド部材34における一対の壁材34a,34bはノズル本体33より下方に位置し、一対の壁材34a,34bにノズル本体33が干渉することなくノズル反転機構80によるノズル30の実線矢印で示すような正転、又は破線矢印で示すような反転が可能になるように構成される。
【0041】
図14に示すように、複数の線材11を繰出す線材供給機構14は、複数の線材11が別々に巻回されて蓄えられた複数のドラム12と、それらのドラム12から繰出された線材11に別々に所定の張力を付与する複数のテンション装置40とを備える。このテンション装置40はY軸方向に重合するように複数設けられ、図14にはその内の2台のテンション装置40を具体的に示すものである。これらのテンション装置40は、それぞれ同一構造であり、その内の一つを代表して説明すると、このテンション装置40は、支柱41を介して設けられたケーシング42と、そのケーシング42のY軸方向における側面に設けられた繰出し制御プーリ43、ガイドプーリ44及びテンションバー45とを備える。線材11が巻付けられたドラム12は、繰出し制御プーリ43近傍のケーシング42に設置される。ドラム12から繰出された線材11は繰出し制御プーリ43に導かれ、この繰出し制御プーリ43に巻付けられた後、ガイドプーリ44によりその方向を転換されてテンションバー45の先端における線状材ガイド45aに導かれる。線状材ガイド45aに導かれた線材11はその線状材ガイド45aからノズル30に供給される。
【0042】
繰出し制御プーリ43は、ケーシング42内に収容された繰出し制御モータ46に直結される。テンションバー45は、基端の回動軸45bを支点として回動可能となっている。この回動軸45bの回動角度は、ケーシング42内に収容され回動軸45bに取付けられた回動角度検出手段としてのポテンショメータ47により検出される。ポテンショメータ47の検出出力は図示しないコントローラに入力され、コントローラからの制御出力が繰出し制御モータ46に接続される。
【0043】
また、テンションバー45の回動軸45bと線状材ガイド45aとの間の所定位置には、テンションバー45の回動方向に付勢力を与える付勢手段としての弾性部材であるスプリング48が取付けられる。このスプリング48によってテンションバー45には回動角度に応じた弾性力が及ぼされる。図示しないコントローラは、回動角度検出手段であるポテンショメータ47により検出された回動角度が所定の角度となるように繰出し制御モータ46を制御するように構成される。従って、このテンション装置40では、スプリング48によりテンションバー45を介して複数の線材11に張力を与えて、そのテンションバー45が所定の角度になるように繰出し制御プーリ43が回転して、所望の張力が付与された線材11を繰出し可能に構成される。
【0044】
一方、この多本線巻線装置10は、ノズル30を巻芯軸方向へ移動させる送り機構60と同期して、そのノズル30とともにこれら複数のテンション装置40を巻芯軸方向へ移動させる搬送機構51を備える。この実施の形態における搬送機構51は、主移動機構61に沿って基台10aに設けられた一対の搬送レール52,52を備える。一対の搬送レール52,52の間には搬送ネジ軸54が中心軸を中心に回転可能に設けられる。一対の搬送レール52,52には従動台56が一対の搬送レール52,52の長手方向に移動可能に設けられ、その従動台56には搬送ネジ軸54に螺合する搬送ネジ部材57が固定される。複数のテンション装置40が設けられた支柱41は従動台56に立設され、搬送ネジ軸54は、図示しないサーボモータにより回転可能に構成される。そして、そのモータが駆動して搬送ネジ軸54が回転すると、それに螺合する搬送ネジ部材57が従動台56と共に一対の搬送レール52,52に沿って長手方向に移動し、送り機構60によるノズル30を巻芯軸方向へ移動と同期して、これら複数のテンション装置40をそのノズル30とともに巻芯軸方向へ移動可能に構成される。
【0045】
次に、このような巻線装置を用いた本発明の多本線巻線方法について説明する。
【0046】
本発明の多本線巻線方法は、巻芯13を回転させてノズル30の孔30aを通過して繰出された複数の線材11を巻芯13外周に巻回するとともに、この巻回と同期してノズル30又は巻芯13を巻芯13の軸方向へ移動させて、巻芯13外周に線材を整列巻きする巻線方法である。その前提とするノズル30の孔30aの形状は、ノズル30の軸と巻芯13の軸に平行な平面内で複数本の線材11が一列に並べられて通過可能な長円状又は長方形状を成すように形成される。それとともに、複数本の線材11が繰出されるノズル30の先端縁の少なくとも一部を切り欠いて形成する。
【0047】
そして、本発明の多本線巻線方法では、実際の巻線にあって、ノズル30の軸と巻芯13の軸に平行な平面内でノズル30を傾転させることにより、巻芯13への巻回時にノズル30又は巻芯13の送りにより複数本の線材11に与えられる傾斜角と一致する傾転角をノズル30に与え、かつノズル30の先端縁の切り欠き30b〜30dの少なくとも一部を巻芯13に沿わせてから、整列巻きを行うことを特徴とする。
【0048】
具体的手順として、この実施の形態では、比較的細くて長いピン状の巻芯13を使用するので、実際の巻線に際してその巻芯13を張設する。それには、先ず、巻芯13の一端を固定チャック装置21に咬持させ、その後巻芯13の他端を可動チャック装置22に咬持させる。巻芯13の他端を可動チャック装置22に咬持させる際に、チャック移動機構26の可動台26aを固定チャック装置21側に近づけておく。そして、巻芯13の他端を可動チャック装置22に咬持させた後、図12の破線矢印で示すように、チャック移動機構26の可動台26aを可動軸受け24とともに移動させ、可動軸受け24に枢支された可動チャック装置22を固定チャック装置21から遠ざけることにより巻芯13を引っ張り、その巻芯13を固定チャック装置21と可動チャック装置22の間に張設させる。
【0049】
次に、ノズル30から繰出される複数の線材11の先端を可動チャック装置22におけるリール29の取付部材29bに取付け、図14の実線矢印で示すように、ノズル可動機構85によりノズル30を巻芯13から遠ざけた状態で送り機構60によりノズル30を移動させ、複数の線材11の繰出し端部を可動チャック装置22と同軸に設けられたリール29に対峙させる。図12に示すように、その状態で巻芯回転手段によりそのリール29を可動チャック装置22とともに回転させることによりノズル30から繰出される複数の線材11をリール29に巻回させる。その後、送り機構60によりノズル30を移動させ、ノズル30から繰出される複数の線材11をリール29の側壁に形成された切り欠き29aから巻芯13側に引き出す。このノズル30をリール29に対峙させる際、及び複数の線材11を切り欠き29aから巻芯13側に引き出す際に生じるノズル30の移動は、送り機構60の主として副移動機構71により行われる。具体的には、副移動機構71の副駆動モータ78を駆動して副ネジ軸74を回転させ、副可動板76をノズル30と共にY軸方向に移動させることにより行われる。その後、図1に示すように、張設された巻芯13を正転させてノズル30から繰出される複数の線材11を巻芯13の外周に巻付けるけれども、これと同期してノズル30を巻芯13の軸方向へ移動させて、巻芯13外周に線材11を整列巻きする。
【0050】
この実施の形態では、先ず、ノズル30の複数の線材11の繰出し端部を巻芯13の一端に対峙させる。それと同時に、ノズル30の軸と巻芯13の軸に平行な平面内でノズル30を傾転させ、ノズル30の送りにより複数本の線材に与えられる傾斜角と一致する傾転角をノズル30に与える。このノズル30の傾転は、ノズル傾転機構90により行われ、図8に示すように、その円板回転モータ93を駆動させることにより、その円板92を正転又は逆転させて、図1及び図2に示すように、ノズル30の送りにより複数本の線材11に与えられる傾斜角αとノズル30が一致した状態でその円板92を静止させることにより行う。
【0051】
そして、線材11の巻芯13への巻線時には、ノズル30の先端縁の切り欠き30b〜30dの少なくとも一部を巻芯13に沿わせる。この実施の形態では、巻芯13に三層に亘る巻線を施すことから、各層の巻線時のノズル30の傾斜角度に等しい切り欠き30b〜30dがノズル30の先端縁に形成されているので、この一層目の巻線時にはその内の第一切り欠き30bを巻芯13に沿わす。これは、ノズル可動機構85により行われ、ノズル30を傾転させた後に、図14の破線矢印で示すように、遠ざけられていたノズル30の先端縁を巻芯13に近づけることにより行われる。即ち、ノズル可動機構85のサーボモータ87によりボールねじ88を回動駆動し、そのボールねじ88に螺合して移動する従動子89とともに、そのノズル30を軸方向に移動させることにより、ノズル30の先端縁を巻芯13に近づける。そして、図1及び図2に示すように、この場合の巻線時に、ノズル30の先端縁の巻芯13に平行な切り欠き30b〜30dの少なくとも一部、即ち、この第一層の巻線では、その内の第一切り欠き30bを巻芯13に接触させる。
【0052】
また、この巻線の際、ガイド部材34を昇降装置35により上昇させ、この上昇状態のガイド部材34の一対の壁材34a,34bによりノズル本体33を両側から挟む。そして、その一対の壁材34a,34bの端縁に形成された凹溝34cにより、巻芯13を収容して支持する。巻芯13に三層に線材を巻線するこの実施の形態では、巻芯13に一層目の巻線を行うための線材11の巻回時に、その巻芯13を収容して支持する第一凹溝34cを形成しているので、ガイド部材34を上昇させることにより、図1に示すように、その第一凹溝34cに巻芯13を進入させて支持させる。
【0053】
そして、この状態で整列巻きを行う。この整列巻きにあっては、巻回機構20により固定チャック装置21と可動チャック装置22をそれぞれ同期して回転させ、それらに咬持されてそれらの間に張設された巻芯13を回転させる。この巻芯13の回転とともに、その回転に比例したピッチ分の速度で送り機構60により、ノズル30を可動チャック装置22側から固定チャック装置21側に向かってY軸方向に移動させる。即ち、巻芯13を一回転させる間に、その巻芯13の軸方向に一列に並べられた複数の線材の全体の幅P(図1)に対応した送りがノズル30に与えられる。これによりノズル30から繰出された複数の線材11は巻芯13に螺旋状に巻付けられ、その一列に並べられた複数の線材11が、その巻芯13に既に巻付けられた線材11に隣接して巻付けられるいわゆる整列巻きが成される、なお、このノズル30のY軸方向の移動は、送り機構60の主として主移動機構61により行われる。具体的には、主移動機構61の主駆動モータ68を駆動して主ネジ軸64を回転させ、主可動板76をノズル30が設けられた副移動機構71と共にY軸方向に移動させることにより行われる。
【0054】
この整列巻きで、複数の線材11にはテンション装置40により所定の張力が付与され、ノズル30の孔30aを貫通する複数本の線材11は、そのノズル30の先端縁から並んだ状態で繰出されることになる。そして、図1及び図2に示すように、ノズル30には予め巻芯13上での線材11の傾斜角αに等しい傾転角αが与えられているので、並んで繰出された複数の線材11を、ノズル30から真っ直ぐに繰出された状態で、そのまま巻芯13に巻回することができる。また、傾転状態で複数本の線材11が並んで繰出されるノズル30の先端縁を切り欠いて、その巻芯13に沿わせたので、複数の線材11が繰出されるノズル30の先端縁と巻芯13の距離を複数の線材11間で均一にすることができ、そのノズル30から繰出された複数の線材11が巻芯13に達するまでの間に別々にずれるようなことを防止することができる。よって、巻芯13を一回転させる間に一列に並べられた複数の線材の全体の幅P(図1)に対応した送りをノズル30に与えることにより、その一列に並べられた複数の線材の最側部に位置する線材11が、その巻芯13に既に巻付けられた線材11に重なり合ったりするようなことは回避される。これにより、巻芯13に線材11を径方向に重ねることなく、かつ軸方向に隙間を空けることなく巻回するいわゆる整列巻きが可能になる。
【0055】
特に、図1に及び図2に示すように、この巻線時にノズル30の先端縁の切り欠きの少なくとも一部を巻芯13に近づけて接触させるので、ノズル30から並んで繰出された複数の線材11を、その並んだ状態で直ちに巻芯13に巻線することができる。また、巻芯13が細くて比較的長いようなものであって、その巻芯13がその長さ故に湾曲等するようなものであっても、ノズル30の先端縁を巻芯13に接触させることにより、その巻芯13が線材11に引っ張られてノズル30側に湾曲するような事態を回避することもできる。よって、それら複数の線材11に歪みやねじれが生じるようなことはなく、巻芯13外周上で隣接する線材11の側部が、互いに重なり合ってしまったり、接触して互いに削り合ってしまったりすることは防止され、高精度の整列巻きを容易に実行することができる。
【0056】
ここで、この実施の形態では、巻芯13が細くて比較的長いようなものであって、その巻芯13がその長さ故に湾曲等するようなものである場合を説明しているけれども、本発明では、そのノズル30の近傍に巻芯13を支持するガイド部材34を設けたので、その巻線時に巻芯13が撓んで湾曲するような事態を防止できる。特に、このガイド部材34は、ノズル30を挟む一対の壁材34a,34bを有しているので、そのノズル30から並んだ状態で繰出される複数の線材11が巻付けられる巻芯13部分の両端を、その壁材34a,34bの端縁に形成された凹溝34cが収容して支持するので、巻芯13の線材11が巻付けられる部分が撓むようなことを確実に防止できる。よって、本発明では、例え巻芯13が細くて比較的長いようなものであっても、比較的多くの線材11を巻芯13の外周に比較的容易に整列巻きすることが可能になる。
【0057】
そして、巻芯13の全長又は所望の範囲に整列巻きが成された段階で巻芯13の回転とノズル30の移動を停止させる。次に、ノズル可動機構85によりノズル30を巻芯13から再び遠ざけるとともに送り機構60によりノズル30をY軸方向に移動させ、複数の線材11の繰出し端部である先端を固定チャック装置21と同軸に設けられたリール29に対峙させる。そのとき、ノズル30から繰出される複数の線材11をリール29の側壁に形成された切り欠き29aからリール29の外周に引き入れる。その状態で巻回機構20によりそのリール29を固定チャック装置21とともに回転させることによりノズル30から繰出される複数の線材11をそのリール29に巻回させて終端とする。このノズル30から繰出される複数の線材をリール29の外周に引き入れる際に生じるノズル30のY軸方向の移動は、送り機構60の主として副移動機構71により行われ、これにより、一層目の巻線を終了させる。
【0058】
この実施の形態では、三層に亘って巻線が成される場合であるので、次に二層目の巻線を開始する。この二層目の巻線は、一層目の整列巻きが終了してその終端をリール29に巻回した後、送り機構60によりノズル30を移動させ、複数の線材11を再びリール29から引き出して巻芯13に再び対峙させる。この複数の線材11の引き出す際に生じるノズル30の移動は、送り機構60の主として副移動機構71により行われる。この二層目の巻線にあっては、図3の一点鎖線矢印で示すように、ノズル30の移動方向は一層目の巻線時と逆方向となるので、この二層目の巻線では、ノズル30を反転させる。このノズル30の反転は、ノズル可動機構85(図14)及びノズル反転機構80(図11)により行われ、ノズル可動機構85は、サーボモータ87によりボールねじ88を回動駆動して、その従動子89をノズルと共に巻芯13から遠ざける。そして、図11の実線で示すように、昇降装置35によりガイド部材34を下降させて、そのガイド部材34における一対の壁材34a,34bをノズル本体33より下方に位置させる。この状態でノズル反転機構80により回転部材82を図7及び図11の実線矢印で示すように正転させ、それによりノズル30を反転させる。
【0059】
ノズル30を反転させた後又はそれと同時に、図9に示すようにノズル30の軸と巻芯13の軸に平行な平面内でノズル30を傾転させ、ノズル30の送りにより複数本の線材に与えられる傾斜角β(図3)と一致する傾転角βをノズル30に与える。このノズル30の傾転は、前述したようにノズル傾転機構90により行う。更に、ノズル30の複数の線材11の繰出し端部を巻芯13の一端に対峙させ、ノズル30の先端縁の切り欠き30b〜30dの少なくとも一部を巻芯13に沿わせる。これは、図14におけるノズル可動機構85により遠ざけられていたノズル30の先端縁を破線矢印で示すように巻芯13に近づけることにより行われ、この二層目の巻線時にはその内の第二切り欠き30cを巻芯13に沿わす(図3)。このように、ノズル30を反転させることにより、上層の巻線時にあっても、傾転状態のノズル30の先端縁を巻芯13に容易に沿わすことができる。このとき、図3に示すように、この二層目の巻線時に、その内の第二切り欠き30cを巻芯13に既に巻回された一層目の線材11に接触させることが好ましい。
【0060】
また、この二層目の巻線にあっては、ガイド部材34を昇降装置35により再び上昇させ、この上昇状態のガイド部材34の一対の壁材34a,34bによりノズル本体33を両側から挟むとともに、その一対の壁材34a,34bの端縁に形成された第二凹溝34dにより、第一層目の巻線が成された巻芯13を収容して支持させる。この状態から巻芯13を回転させ、これとともに、送り機構60によりノズル30を、その回転に比例したピッチ分の速度で固定チャック装置21側から可動チャック装置22側に向かってY軸方向に移動させる。図3に示すように、これにより複数の線材11はノズル30を介して繰出されて、巻芯13に既に巻付けられた一層目の線材の上に更に巻付けられて二層目の整列巻きが成される。
【0061】
そして、巻芯13の全長又は所望の範囲に二層目の整列巻きが成された段階で巻芯13の回転とノズル30の移動を再び停止させる。そして、一層目の整列巻きが成された時と同様な手順により、ノズル30の先端を可動チャック装置22に取付けられたリール29に対峙させ、そのノズル30から繰出される複数の線材11を切り欠き29aからリール29の外周に引き入れる。その状態でそのリール29を回転させることによりノズル30から繰出される複数の線材11をそのリール29に巻回させて終端とし、二層目の巻線を終了させる。
【0062】
その後、更に三層目の巻線を開始するけれども、この三層目の巻線にあっても、ノズル可動機構85及びノズル反転機構80により、ノズル30を再び反転させる。その後又はそれと同時に、ノズル30の軸と巻芯13の軸に平行な平面内でノズル30を傾転させ、ノズル30の送りにより複数本の線材に与えられる傾斜角と一致する傾転角をノズル30に与え、第三切り欠き30dを巻芯13に沿わす。そして、図4に示すように、この三層目の巻線時にも、その第三切り欠き30cを巻芯13に既に巻回された二層目の線材11に接触させる。また、この三層目の巻線にあっては、ガイド部材34の一対の壁材34a,34bの端縁に形成された第三凹溝34eにより、第一及び第二層目の巻線が成された巻芯13を収容して支持させる。
【0063】
この状態から巻芯13を回転させ、これとともに、送り機構60によりノズル30を、その回転に比例したピッチ分の速度で固定チャック装置21側から可動チャック装置22側に向かってY軸方向に移動させる。これにより複数の線材11はノズル30を介して繰出されて、巻芯13に既に巻付けられた二層目の線材11の上に更に巻付けられて三層目の整列巻きが成される。そして、巻芯13の全長又は所望の範囲に三層目の整列巻きが成された段階で巻芯13の回転とノズル30の移動を停止させる。そして、一層目の整列巻きが成された時と同様な手順により、その後ノズル30の先端をリール29に対峙させ、そのリール29を回転させることによりノズル30から繰出される複数の線材11をそのリール29に巻回させて終端とし、三層目の巻線を終了させる。
【0064】
所望の巻線が成された後には、整列巻きされたコイルを巻芯13から取り外す。この取り外しにあっては、巻芯13の張設を解除させた状態で行われる。具体的には、図12の一点鎖線矢印で示すようにチャック移動機構26の可動台26aを可動軸受け24とともに移動させ、可動軸受け24に枢支された可動チャック装置22を固定チャック装置21に近づける。この状態で可動チャック装置22による巻芯13の他端の咬持を解除する。同様にして、固定チャック装置21による巻芯13の一端の咬持を解除し、巻回機構20から巻芯13とともにその巻芯13に整列巻きされたコイルを取り外し、巻芯13に整列巻きされた複数本の線材からなるコイルから巻芯13を抜き出して取り出す。これにより、複数の線材11が三層に亘って均一なピッチで整列巻きされたコイルを得る。
【0065】
このように、本発明の多本線巻線装置及びその巻線方法では、送り機構60によりノズル30を往復移動させて、巻芯13の外周に複数本の線材11を複数層に亘って整列巻きする場合であっても、ノズル反転機構80によりノズル30を反転させることにより、ノズル30の往動時及び復動時の巻線時の双方において、ノズル30の先端縁の切り欠き30b〜30dを巻芯13に沿わせることができる。その状態で、送り機構60がノズル30を実際に往復移動させることにより、下層のコイルの上に上層のコイルのための巻線を行うことが可能になる。そして、ノズル30の先端縁の少なくとも一部をその巻芯13又は巻芯13に既に巻付けられた線材11に接触させれば、その巻芯13が線材11に引っ張られてノズル30側に湾曲するような事態を回避することができ、複数層に亘る高精度の整列巻きを容易に実行することができる。
【0066】
なお、上述した実施の形態では、固定及び可動チャック装置21,22により巻芯13両端を支持して引っ張る場合を説明したが、巻芯が撓んだり座屈するおそれのないものであれば、この巻芯13を張設することを必要としない。この場合の巻芯13はその一方のみを支持するようなものであっても良い。
【0067】
また、上述した実施の形態では、巻線後の巻芯13に整列巻きされた複数本の線材からなるコイルから巻芯13を抜き出すような場合を説明したが、巻芯がコイルと共に製品を成すようなものであれば、この巻芯13をコイルから抜き出すことを必要としない。この場合の巻芯13はコイルと共に製品の一部を成すものとなる。
【0068】
また、上述した実施の形態では、固定及び可動チャック装置21,22により張設したピン状の巻芯13を用いて説明したけれども、その巻芯13を更に細いものとする場合には、ワイヤやピアノ線又はステンレス鋼線等を巻芯として用いても良い。特にガイド部材34を設けることにより巻芯13が撓むことを有効に防止しうるので、例えば、内径が0.4mmのような比較的細いコイルを得る場合にあっては、その巻芯13として例えば太さが0.38mmの細いピアノ線等を用いることにより、このような比較的細いコイルを得ることも可能になる。
【0069】
また、上述した実施の形態では、巻回機構20による巻回と同期してノズル30を巻芯13軸方向へ移動させる送り機構送り機構60を説明したが、この送り機構は、巻回機構20による巻回と同期して巻芯13を巻芯13軸方向へ移動させるようなものであっても良い。
【0070】
また、上述した実施の形態では、巻芯13に対して線材11を三層に亘って巻線する場合を説明したが、これに限るものではなく、図示しないが、単一層からなるコイルや二層からなるコイル、又は四層以上に亘って巻線が成されたコイルを得るようにしても良い。
【0071】
また、上述した実施の形態では、各層の巻線終了時に一旦リール29に線材11を巻回させる場合を説明したが、各層の巻線終了時に線材11をリール29の外周に引き入れることなく上層目の整列巻きを開始しても良い。この場合であっても、その上層における線材11の巻回時にノズル30又は巻芯13の送りにより複数本の線材11に与えられる傾斜角と一致する傾転角をノズル30に与え、かつノズル30の先端縁の切り欠きの少なくとも一部を巻芯13に沿わせてから、整列巻きを行うことにより、複数層に亘る高精度の整列巻きを容易に実行することができる。
【0072】
また、上述した実施の形態では、巻回機構20から巻芯13とともにその巻芯13に整列巻きされたコイルを取り外す場合を説明したけれども、巻芯13が湾曲可能な例えば線状材であれば、巻芯13の一方の端部における咬持を解除した状態で、その端部から、その巻芯13に巻回された線材11からなるコイルを他端側に移動させてその巻芯13から取り外すようにしても良い。
【0073】
また、上述した実施の形態では、ガイド部材34に断面がV字状の凹溝が3本形成される場合を説明したが、この凹溝は、巻芯13を収容して支持し得る限り、その断面はV字状でなくてその他の形状、例えば方形状や半円状を成すようなものであっても良く、その本数は3本に限られず、複数層に亘る巻線から成るコイルを得る場合には、その層数に比例して、巻芯13を支持し得る凹溝の本数を増減させることが好ましい。
【0074】
また、上述した実施の形態では、複数の線材11を繰出すノズル30の孔30aとして、基台部33aと、一対の幅部材33b,33cと、蓋部材33dにより包囲された長方形状を成す場合を説明したが、このノズル30の孔30aは、複数の線材11を並んだ状態で繰出し得る限り、長方形でなく、その形状が長孔であっても良い。
【0075】
更に、上述した実施の形態では、線材11をリール29に引き入れる際、及びその線材11を巻芯13側に引き出す際に生じるノズル30の移動を、送り機構60の主として副移動機構71により行われる場合を説明したが、これらの動作を送り機構60の主移動機構61により行うようにしても良く、ノズル30の移動の全てがその主移動機構61により行うことが可能であれば、この副移動機構71は設けなくても良い。
【符号の説明】
【0076】
10 多本線巻線装置
11 線材
13 巻芯
20 巻回機構
30 ノズル
30a 孔
30b〜30d 切り欠き
34 ガイド部材
34a,34b 壁材
34c〜34e 凹溝
60 送り機構
80 ノズル反転機構
90 ノズル傾転機構
図1
図2
図3
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図5
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図10
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