【実施例1】
【0015】
以下、実施例を示す図に従って本発明を説明する。
先ず、本発明に係るタンク孔開けシステムにより孔が形成されるタンクとしての車輛用燃料タンク1を説明すると、
図1に示すように車輛用燃料タンク1は樹種が異なる複数枚の合成樹脂シートを積層接着又は積層融着した合成樹脂製で、その上面には該車輛用燃料タンク1に装着される、例えばゲージや各種センサ、燃料ポンプ等の各種部品に応じた個数の部品取付け部3が一体に設けられる。
【0016】
上記部品取付け部3は所要の外径及び高さで外周面に雄ねじ3aが旋設され、上面が上面板3bで閉鎖された筒状部3cとして形成される。そして上記上面板3bの中央部には所要深さで、中央部に後述するホルダ41の下部が挿入可能な内径の貫通孔3dが予め形成された凹所3eが設けられる。そして孔としての開口5は上記上面板3bを筒状部3cの内周面に沿って切除して形成される。
【0017】
図2乃至
図4に示すように、タンク孔開けシステムは上記上面板3bに開口5を形成するタンク孔開けユニット7及び上面板3bから接離された切断片3fをタンク孔開けユニット7から取り外す切断片取外しユニット9から構成される。上記タンク孔開けユニット7は、例えば少なくとも三次元方向へ移動制御される産業用ロボットのアーム(いずれも図示せず)の先端部に取付けられ、アームを移動制御して部品取付け部3に開口5を形成する。
【0018】
上記タンク孔開けユニット7の本体(図示せず)にはスピンドル11が回転可能に軸支され、該スピンドル11には本体に設けられた電動モータ13の回転軸が駆動連結される。上記スピンドル11は電動モータ13の駆動により所要の回転数で回転される。
【0019】
上記スピンドル11には回転体15が固定され、該回転体15にはスピンドル11を回転中心として放射方向へ延出する刃物取付けアーム17が設けられる。該刃物取付けアーム17の先端部には上記スピンドル11の軸線と一致する図示する下方へ延出する刃先を有した切断刃19が取付けられる。該切断刃19は切断抵抗を低減するため、上面板3bに対して刃が直交するようにセットされる。
【0020】
なお、上記刃物取付けアーム17と反対側の回転体15にはバランサ部材15aが取付けられ、スピンドル11を中心に刃物取付けアーム17側と反対側の重量が一致するように調整される。
【0021】
上記回転体15の中心部にはスピンドル11に一致する軸線を有した連結回転体21が軸受23を介して回転可能に軸支される。該軸受23としてはスラスト方向及びラジアル方向の双方の荷重を受けるアンギュラ軸受が適している。
【0022】
上記連結回転体21の下部には固定盤25が軸線方向へ所要の間隔をおいて配置され、該固定盤25及び連結回転体21は軸線周りに適宜の間隔をおいて配置された複数本(本例では、3本とする。)の固定ロッド27により固定される。
【0023】
固定盤25には電動モータ29が固定される。該電動モータ29の出力軸は固定盤25に中心部に設けられた貫通孔25aを挿通して軸線下方へ突出され、該出力軸には送りねじ31が軸線を一致させて固定される。
【0024】
上記固定盤25の外周側には上下方向に軸線を有して下方へ突出する複数本(本例では、3本とする。)の支持軸33の上部が周方向へ等間隔に固定される。各支持軸33には可動部材としての可動盤35が上下方向へ摺動可能に支持され、各支持軸33の下端部は可動盤35に対して抜け止めされる。
【0025】
上記可動盤35の上面中央部には上下方向に軸線を有したナット部材37が設けられ、該ナット部材37には上記送りねじ31の下部が噛合わされる。上記可動盤35は電動モータ29の駆動に伴って回転する送りねじ31により昇降される。
【0026】
また、可動盤35の下面中央部には支持円筒部39が設けられ、該支持円筒部39の中空部39a内にはホルダ41の軸部41aが摺動するように支持される。該ホルダ41は支持円筒部39の中空部39a内に装着された圧縮ばね等の弾性部材43の弾性力により軸線下方へ摺動するように付勢される。
【0027】
上記ホルダ41の下部には上下方向へ延出する複数本(本例においては、3本とする。)の空隙部41bが周方向へ等間隔に形成され、各空隙部41b内には二椀状の揺動アーム45がそれぞれ配置される。各揺動アーム45の上部は上記ホルダ41に対して軸47を中心に揺動可能に支持され、各揺動アーム45の一方腕部45aは空隙部41bから外側へ突出するように構成される。
【0028】
そして各一方腕部45aの先端部は一端部が上記可動盤35の下部に軸支されたリンクアーム49の他端部に対し、軸51を介して回動可能に軸支される。また、各揺動アーム45の他方腕部45bは先端部に係止爪部45cが設けられる。各揺動アーム45は可動盤35に対してホルダ41が弾性部材43の弾性力により軸線下方へ付勢されることによりそれぞれの係止爪部45cが互いに離間する方向(拡径方向)へ揺動される。
【0029】
上記切断片取外しユニット9は上記タンク孔開けユニット7によるタンク孔開け位置の側方に配置され、切断された切断片3fをタンク孔開けユニット7から取り外す。該切断片取外しユニット9は切断片3fの外径に応じた間隔をおいて対向し、切断片3fの集積位置に至る長さで傾斜配置された一対のシュータ53と、該シュータ53の上方位置に応じたフレーム55に対して上下方向に軸線を有したエアーシリンダ等の係合解除部材57とから構成される。
【0030】
該係合解除部材57の作動ロッド57aは上記ホルダ41の下端面より小さい外径で、係合解除部材57の非作動時には上記シュータ53の搬送面より下方に位置される。
【0031】
次に、上記のように構成されるタンク孔開けシステムによる作用を説明する。
先ず、タンク孔開けユニット7において可動盤35は送りねじ31の下部にナット部材37が噛合い、下方側へ移動されている。この状態においてホルダ41は弾性部材43の弾性力により軸線下方へ付勢されていると共に各揺動アーム45はそれぞれの係止爪部45cが互いに離間する拡径方向へ揺動されている。(
図5参照)
【0032】
上記状態のタンク孔開けユニット7を移動制御して車輛用燃料タンク1における部品取付け部3の貫通孔3dに対してホルダ41が互いに軸線を一致させた状態で上方に位置される。次に、上記状態にてタンク孔開けユニット7を貫通孔3dに向かって移動してホルダ41の下部を貫通孔3d内に挿入させる。
【0033】
ホルダ41の係止爪部41cが貫通孔3dに内周面を摺接する際に、各揺動アーム45は係止爪部41cが互いに近づく方向へ揺動される。このとき、揺動アーム45に対して一方腕部45a及びリンクアーム49を介して連結された可動盤35が弾性部材43の弾性力に抗して軸線下方へ移動し、揺動アーム45の上記揺動を可能にする。(
図6参照)
【0034】
そしてタンク孔開けユニット7が更に軸線下方へ移動して係止爪部41cが貫通孔3dの下端を通過すると、各揺動アーム45は上記可動盤35の下動により付勢された弾性部材43の弾性力により各係止爪部41cが互いに遠ざかる方向へ揺動し、各係止爪部41cを貫通孔3d周縁の凹所3e下面側に位置させる。このとき、可動盤35は揺動アーム45の上記揺動及び弾性部材43の弾性力により軸線上方へ移動される。また、互いに遠ざかる方向へ移動した各係止爪部41cは貫通孔3d周縁の凹所3e下面に対して非当接状態に保たれる。(
図7参照)
【0035】
上記状態にて電動モータ29を駆動制御して送りねじ31を回転し、これに噛合うナット部材37を介して可動盤35を軸線上方へ移動し、各係止爪部41cを貫通孔3d周縁の凹所3e下面に当接させて切断片3fに相当する部分を上方へ持ち上げる。このとき、ホルダ41は弾性部材43の弾性力により軸線下方へ付勢されるため、各揺動アーム45の揺動状態が保たれる。(
図8参照)
【0036】
上記状態にて電動モータ13を回転駆動してスピンドル11を中心に切断刃19を回動しながらタンク孔開けユニット7を軸線下方へ移動制御し、切断刃19を上面板3bに圧接して切断を開始させる。このとき、電動モータ29の回転駆動が継続されるため、可動盤35が軸線上方へ移動し、貫通孔3d周縁の凹所3e下面に圧接する各係止爪部41cによる切断片3fに相当する部分の持ち上げ状態が保たれる。
【0037】
そして切断中期または終期においては、切断の進展により切断箇所の肉厚が薄くなり、切断片3fに相当する部分が切断抵抗により撓んだり、振動したりして切断抵抗になり、切断屑が余分に排出される恐れが発生する。本例においては、上記したように駆動制御される電動モータ29による送りねじ31の回転により可動盤35を軸線上方へ移動して切断片3fに相当する部分を上方へ持ち上げ、該部分の撓みや振動を低減し、切断時の切断抵抗が増大するのを防止する。(
図9参照)
【0038】
上記切断の進展に伴って上面板3bから切断片3fが切断されると、継続して回転駆動される電動モータ29により送りねじ31を回転して可動盤35を軸線上方へ移動してホルダ41を上方へ持ち上げることにより貫通孔3d周縁の凹所3e下面に係止する各係止爪部41cにより切断片3fを上方へ持ち上げて上面板3bから離脱させる。(
図10参照)
【0039】
上記切断後においては、タンク孔開けユニット7を移動制御してホルダ41に保持された切断片3fをシュータ53の上面に当接し、かつホルダ41の下端面に対して作動ロッド55aを一致させる。この状態にて係合解除部材57を作動してホルダ41の下端面に当接する作動ロッド55aを軸線上方へ移動してホルダ41を弾性部材43の弾性力に抗して軸線上方へ押し上げると、各揺動アーム45はホルダ41の上動に伴ってそれぞれの係止爪部45cが互いに近づく方向へ揺動して貫通孔3d周縁の凹所3e下面に対する係合が解除される。これにより切断片3fはホルダ41から抜け出して自重落下して貫通孔3d内に作動ロッド55aが挿入される。(
図11参照)
【0040】
この状態でタンク孔開けユニット7を軸線上方へ移動すると共に作動ロッド55aを復動すると、切断片3fは作動ロッド55aから抜け出してシュータ53上に移載された後、該シュータ53の傾斜により集積位置へ滑動して排出される。
【0041】
上記説明は、タンク孔開けユニット7のホルダ41を貫通孔3d内に挿入して各係止爪部45cを貫通孔3d周縁の凹所3e下面側に位置させた後に、電動モータ29を駆動制御して可動盤35を軸線上方へ移動し、各係止爪部41cを貫通孔3d周縁の凹所3e下面に当接させて切断片3fに相当する部分を上方へ持ち上げる構成としたが、本発明にあっては上面板3bに対する切断の進展状況、即ち切断刃19の回動数により切断終期に達した時に電動モータ29を駆動制御して可動盤35を軸線上方へ移動し、各係止爪部41cを貫通孔3d周縁の凹所3e下面に当接させて切断片3fに相当する部分を上方へ持ち上げて該部分の撓みや振動を低減する構成としてもよい。