特許第5757679号(P5757679)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジーエヌ リザウンド エー/エスの特許一覧

特許5757679聴覚システムのための無線ネットワークプロトコル
<>
  • 特許5757679-聴覚システムのための無線ネットワークプロトコル 図000004
  • 特許5757679-聴覚システムのための無線ネットワークプロトコル 図000005
  • 特許5757679-聴覚システムのための無線ネットワークプロトコル 図000006
  • 特許5757679-聴覚システムのための無線ネットワークプロトコル 図000007
  • 特許5757679-聴覚システムのための無線ネットワークプロトコル 図000008
  • 特許5757679-聴覚システムのための無線ネットワークプロトコル 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5757679
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】聴覚システムのための無線ネットワークプロトコル
(51)【国際特許分類】
   H04W 56/00 20090101AFI20150709BHJP
   H04R 25/00 20060101ALI20150709BHJP
   H04W 52/02 20090101ALI20150709BHJP
【FI】
   H04W56/00 110
   H04R25/00 Z
   H04W52/02 110
【請求項の数】18
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2009-285618(P2009-285618)
(22)【出願日】2009年12月16日
(65)【公開番号】特開2010-220191(P2010-220191A)
(43)【公開日】2010年9月30日
【審査請求日】2011年4月11日
【審判番号】不服2013-25415(P2013-25415/J1)
【審判請求日】2013年12月25日
(31)【優先権主張番号】PA200801829
(32)【優先日】2008年12月22日
(33)【優先権主張国】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】503021401
【氏名又は名称】ジーエヌ リザウンド エー/エス
【氏名又は名称原語表記】GN RESOUND A/S
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペダルセン ブライアン ダム
【合議体】
【審判長】 水野 恵雄
【審判官】 吉田 隆之
【審判官】 加藤 恵一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/104308(WO,A1)
【文献】 特表2009−529841(JP,A)
【文献】 特開2008−302000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W
H04R
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の聴覚装置を備えている聴覚システムであって、
前記第1の聴覚装置は、
前記第1の聴覚装置と無線ネットワーク内の他の装置との間の無線データ通信のための第1の受信器と、
前記無線ネットワークのプロトコルに従って前記無線データ通信を制御するように適合された第1の通信制御装置とを有しており、
前記プロトコルに従って、
他の装置の第2の送信器は、フレーム内の複数のタイムスロットのうちの特定の1つのタイムスロットで無線データを送信するよう制御され、
前記第1の聴覚装置の前記第1の受信器は、繰り返して、活性化された時間枠ではデータの受信が可能とされ、不活性化された時間枠ではデータの受信が不可能とされ、
前記第1の通信制御装置は、前記データ送信用のタイムスロットと前記活性化された時間枠とが複数のフレームにわたる時間枠において無作為に同時に重なるようにするために、前記活性化された時間枠と前記不活性化された時間枠との合計時間を、一つのフレームの継続時間と異なるように調節することによって、前記第1の聴覚装置をネットワーク内の他の装置に対して同期させるようにさらに適合されており、
前記第1の聴覚装置は、無線データ通信のために第1の送信器をさらに有しており、
前記他の装置は、
前記無線ネットワーク内で、前記第1の聴覚装置と第2の聴覚装置との間の無線データ通信のための、第2の受信器および第2の送信器と、
前記無線ネットワークの前記プロトコルに従って、前記無線データ通信を制御するように適合されている第2の通信制御装置とを備えている、第2の聴覚装置であり、
前記ネットワーク内で、第1の聴覚装置と第2の聴覚装置が同期すると、
前記第1の通信制御装置と前記第2の通信制御装置は、前記ネットワーク内で同期データを交互に送信するように適合されており、それによって2つの主ネットワークが形成される、聴覚システム。
【請求項2】
前記第1の通信制御装置は、前記第1の聴覚装置が前記第2の聴覚装置からのデータの受信を行うと、前記活性化された時間枠と前記不活性化された時間枠の合計時間を一つのフレームの継続時間に等しく調整するようにさらに適合されている、請求項1に記載の聴覚システム。
【請求項3】
前記第1の通信制御装置は、前記データ送信用のタイムスロットと前記活性化された時間枠とが同時に重なるように、前記活性化された時間枠と前記不活性化された時間枠との合計時間を、前記一つのフレームの継続時間より長くなるように調節することによって、前記第1の聴覚装置を前記ネットワーク内の前記第2の聴覚装置に同期させるように適合されている、請求項1または2に記載の聴覚システム。
【請求項4】
前記第1の通信制御装置は、前記第1の受信器と前記第1の送信器を、複数の周波数チャネルのなかから選択されたチャネルで動作させるように制御するように適合されており、
前記第2の通信制御装置は、前記第2の受信器と前記第2の送信器を、複数の周波数チャネルのなかから選択されたチャネルで動作させるように制御するように適合されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の聴覚システム。
【請求項5】
前記第1の通信制御装置と前記第2の通信制御装置の各々は、前記第1の受信器と送信器そして前記第2の受信器と送信器のそれぞれが、周波数ホッピング方式によって動作するようにさらに適合されている、請求項に記載の聴覚システム。
【請求項6】
前記ネットワーク内の装置が、前記ネットワークの履歴に頼ることなく、任意の時点において前記ネットワークがどの周波数チャネルを使用するかを計算できるようにする、周波数ホッピングアルゴリズムが提供される、請求項に記載の聴覚システム。
【請求項7】
前記ネットワーク内で、前記第1の聴覚装置が前記第2の聴覚装置と同期する前に、
前記第1の通信制御装置は、第1の周波数ホッピングレートで周波数ホッピングを実行するように適合されており、
前記第2の通信制御装置は、前記第1と第2の聴覚装置が同時に同じ周波数でデータ通信を実行するために、前記第1の周波数ホッピングレートとは異なった第2の周波数ホッピングレートを実行するように適合されている、請求項4〜6のいずれか一項に記載の聴覚システム。
【請求項8】
前記ネットワーク内で、前記第1の聴覚装置が前記第2の聴覚装置と同期した後に、
前記第1と第2の通信制御装置は、同期周波数ホッピングを実行するように適合されている、請求項に記載の聴覚システム。
【請求項9】
前記第1の通信制御装置と前記第2の通信制御装置の少なくとも一つは、
受信器の活性化からデータの受信の実際の開始までの遅れ時間を測定し、
前記測定した遅れ時間に従って次の受信器の活性化を調節するように適合されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の聴覚システム。
【請求項10】
聴覚装置を含む無線ネットワーク内での複数の装置の間の通信方法であり、
それぞれの装置は、複数のタイムスロットのフレーム内のそれぞれのタイムスロットについてデータの無線送信に適合され、
フレーム内の複数のタイムスロットから選択された一つのタイムスロットで前記無線ネットワーク内に接続された第1の装置からデータを無線送信するステップと、
第2の装置において、活性化された時間枠ではデータ受信を可能とし、不活性化された時間枠ではデータ受信を不可能とするステップと、
前記データ送信のためのタイムスロットと前記活性化された時間枠とが複数のフレームにわたる時間枠において無作為に同時に重なるようにするため、前記活性化された時間枠と前記不活性化された時間枠との合計時間が、一つのフレームの継続時間とは異なるように調節することによって、前記無線ネットワーク内で、前記第2の装置を前記第1の装置に同期させるステップと、
前記無線ネットワーク内の前記第1と第2の装置から同期データを交互に送信し、それによって2つの主ネットワークを形成する、ステップ、
を備えている方法。
【請求項11】
前記第1の装置からのデータ受信後に、前記活性化された時間枠と前記不活性化された時間枠の合計時間を、一つのフレームの継続時間に等しくするように調節するステップをさらに備えている、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記活性化された時間枠と前記不活性化された時間枠との合計時間が、一つのフレームの継続時間より長くなるように調節される、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
データ送信は、複数の周波数チャネルで順次的に実行される、請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
データ送信は、周波数ホッピング方式によって実行される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記無線ネットワークで使用される次の周波数チャネルを、以前に使用された周波数チャネルの配列とは独立に計算するステップをさらに備える、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ネットワーク内で前記第2の装置が前記第1の装置との同期する前に、
前記第1の装置で第1の周波数ホッピングレートで周波数ホッピングを実行し、
前記第2の装置で第2の周波数ホッピングレートで周波数ホッピングを実行し、
前記第2の周波数ホッピングレートは前記第1の周波数ホッピングレートとは異なる、ステップをさらに備えている、請求項13〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
それらの装置が同期した後に、前記第1と第2の装置で同期周波数ホッピングを実行するステップをさらに備えている、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
受信器の活性化からデータ受信の実際の開始までの遅れ時間を測定し、
その後に、測定した遅れ時間に従って次の受信器の活性化を調節するステップをさらに備えている、請求項10〜17のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、聴覚装置を備えた聴覚システムに関する。その聴覚装置は、その聴覚装置と無線ネットワーク内の他の装置との間の無線データ通信のための受信器および送信器と、その無線ネットワークのプロトコルに従って無線データ通信を制御するように適合されている通信制御装置とを備える。特に本発明は、その聴覚装置を、無線ネットワーク内の他の装置と同期させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
国際特許公開WO2004/110099号は、プロトコルが簡潔であり、それゆえに、必要なコードの量が少なく、動作中の電力消費量が少ない通信プロトコルを有する、補聴器の無線ネットワークを開示する。さらに、その獲得時間(acquisition time)は短く、そしてその遅延(latency)も短い。
【0003】
その開示された補聴器は、複数の他の装置と通信するためにその補聴器を無線ネットワークと相互接続するためのトランシーバと、その通信プロトコルに従ってそのネットワークを通してのデータ交換を制御するように適合されている通信制御装置とを備える。
【0004】
開示されている一実施形態では、そのトランシーバと通信制御装置は、時分割多元接続(TDMA)方式 に従って動作する。時分割多元接続方式では、時間が番号付きタイムスロットに分割され、かつネットワーク内の異なる装置は、通信、例えばデータの受信を、それぞれ特定のタイムスロットにおいて行う。
【0005】
国際特許公開WO2007/104308号は、信号を無線受信する通信回路を備えた補聴器を開示する。その補聴器は、そのタイムスロットの前に必要なマージンをとって、ネットワークからのデータの受信を開始し、次いで第1のデータが実際に受信されるまでの遅れ時間(delay)、すなわち受信データフレームの開始が検出されるまでの遅れ時間を測定し、次いでその遅れ時間を記録する。タイムスロットが次に出現した時、受信の開始は、前のタイムスロットでの受信中に測定した遅れ時間に従って調節され、すなわち進められたり遅らされたりする。
【0006】
一般的に、聴覚装置では、例えば補聴器のようなものでは、ある限られた電力量だけが電源から利用できる。例えば、補聴器では、電力は、一般的には従来のZnO電池から供給される。
【0007】
しかしながら、無線通信回路は、データの受信中と送信中のいずれにおいても、かなりの電力量を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本無線ネットワークのプロトコルは、限られた電力供給能力を備える聴覚装置の中へ、そのような無線通信回路を組み入れることを可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、その第1の聴覚装置を備えている聴覚システムが提供される。その第1の聴覚装置は、無線ネットワーク内の他の装置との間で無線データ通信を行うための第1の受信器を有する。その第1の聴覚装置はさらに、その無線ネットワークのプロトコルに従って無線データ通信を制御するように適合された第1の通信制御装置を有していてもよい。その無線ネットワークのプロトコルに従って、他の装置の第2の送信器は、フレーム内の複数のタイムスロットのうちの特定の1つのタイムスロットにおいて、無線データを送信するように制御され、その第1の聴覚装置の第1の受信器は、繰り返して、活性化された(activated)時間枠(time period)内ではデータの受信が可能とされ、不活性化された(de-activated)時間枠内ではデータの受信が不可能とされる。好ましくは、その第1の通信制御装置は、さらに、データ送信用のタイムスロットと活性化された時間枠とが同時に重なるように、活性化された時間枠と不活性化された時間枠との合計時間が、一つのフレームの継続時間(duration)と異なるように、例えば長く調節することによって、その第1の聴覚装置をネットワーク内のもう一つの装置に同期させるように適合されている。
【0010】
第1の通信制御装置は、その第1の聴覚装置が他の装置からのデータ受信を行うと、活性化された時間枠と不活性化された時間枠の合計時間を、一つのフレームの時間に等しく調節するようにさらに適合されていてもよい。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、無線ネットワーク内の複数の装置の間の通信方法が提供される。この方法は、
フレーム内の複数のタイムスロットから選択された一つのタイムスロットで、その無線ネットワークに接続された第1の装置からデータを無線送信するステップと、
第2の装置について、活性化された時間枠内ではデータ受信を可能とし、不活性化された時間枠内ではデータ受信を不可能とするステップと、
データ送信のためのタイムスロットと活性化された時間枠とが同時に重なるようにするために、活性化された時間枠と不活性化された時間枠の合計時間が、一つのフレームの継続時間とは異なるように調節することによって、例えば長く調節することによって、その無線ネットワーク内で、その第2の装置を第1の装置に同期させるステップとを備えている。
【0012】
本聴覚システムと方法は、ネットワーク内の複数の装置、例えば、聴覚装置、遠隔制御器、調整装置、携帯電話、メディアプレーヤ、ヘッドセット、ドアベル、警報システム、テレコイルリプレイスメント(tele coil replacement)のような放送システム等々の相互接続を可能とする。
【0013】
その聴覚装置は、補聴器、耳鳴り緩和装置、耳鳴り治療装置、ノイズ抑制装置など、あるいは、そのような装置の二つかそれ以上の組み合わせであってもよい。
【0014】
聴覚装置の受信器と送信器は、ノルディックセミコンダクタ(Nordic Semiconductor)社のラジオチップ「nRF24l01」のようなラジオチップの中に備えられてよい。しかしながら、このタイプのラジオチップは、送信時と受信時の両方において、かなりの量の電流を消費する。従来のZnO電池は、ある限られた時間枠しか、概して1ミリ秒しか、必要な電流量を供給できるにすぎない。必要とされる電流量の連続供給は、デジタル信号処理回路が適切に動作することを停止する電圧以下に供給電圧を低下させる。さらに、ZnO電池は、通信中にラジオチップに電流を供給した後に、復旧するための時間を必要とする。一般的に、そのラジオチップのデューティサイクル、すなわち、ラジオのターンオン時間とターンオフ時間との合計時間に対するラジオのターンオン時間の百分率は、10%より小さく保持されなければならない。
【0015】
本ネットワークプロトコルによれば、ネットワーク内のすべての装置が、いつ送信し、いつ受信するかを知るために、ネットワーク内で装置は同期されている。さらに、受信と送信は、短いバーストで実行される。
【0016】
このように、本無線ネットワークプロトコルによれば、補聴器のような聴覚装置は、例えば従来のZnO電池によって十分に供給できる低い電力消費量でのデータ通信が可能となる。
【0017】
一実施形態では、受信器と通信制御装置は、周波数多様化方式あるいはスペクトラム拡散方式によって動作し、すなわち、その無線ネットワークで利用される周波数の範囲は、多数の周波数チャネルに分割され、そしてデータ通信は、送信がその周波数の範囲全体にわたって分配されるように、予め決められた方式によって、チャネルを切り換える。
【0018】
好ましくは、ネットワーク内の装置が、ネットワークの履歴に頼ることなく、任意の時点においてそのネットワークがどの周波数チャネルを使用するかを計算できるようにする、周波数ホッピングのアルゴリズムが提供される。例えば、現在の周波数チャネル番号に基づき、疑似乱数発生器が次の周波数チャネル番号を計算する。これはそのネットワーク内で、ある一つの新しい装置の同期を可能とし、例えば、その新しい装置は、そのネットワーク内で既に接続されている装置と同一の疑似乱数発生器を備えている。したがって、獲得中に現行の周波数チャネル番号を受信すれば、その新しい装置は、そのネットワーク内の他の装置と同じ次の周波数チャネル番号を計算する。
【0019】
スペクトラム拡散方式に従って動作しているネットワークでは、その通信はノイズに対して低い感度を有する。それは、ノイズは一般的に特定の周波数チャネルに存在しており、通信は、短い時間枠で、特定の周波数チャネルで実行され、その後、通信は別の周波数チャネルに切り換えられるからである。
【0020】
さらに、いくつかのネットワークが近接して共存してよい。例えば、2人以上の聴覚装置の使用者が、ネットワークの混信無しで、同じ部屋に居ることができる。というのは、2つのネットワークが1つの特定の周波数チャネルを同時に使う確率は非常に低いからである。同様に、その聴覚装置のネットワークは、同じ周波数バンドを使用する他の無線ネットワーク、ブルートゥース(Bluetooth(登録商標))ネットワーク、あるいは他の無線ローカルエリアネットワークと共存していてもよい。本発明による聴覚装置は、両耳補聴器システムに組み込まれることが好ましく、2つの補聴器は、例えば、オーディオ信号、信号処理パラメータ、信号処理プログラムの識別番号のような制御データ等々のようなデータのデジタル交換のために、無線ネットワークを通して相互接続され、任意に、他の装置、例えば遠隔制御装置のようなもの等と、相互接続される。
【0021】
ネットワーク内の装置の受信器と送信器は、時分割多元接続 (TDMA) のフレーム構造に従って動作してよく、ここで時間は、一組の番号付きのタイムスロットを備えているフレームに分割される。ネットワーク内の異なる装置は、それぞれ特定のタイムスロットで通信を行う。従って、ネットワーク内で接続されている時、それらの装置のフレームは同期されている。
【0022】
獲得(acquisition)とは、そのネットワーク内の他の装置とまだ同期されていない装置を同期させる過程である。確立されたネットワーク内では、一つの主装置が、同期のデータを、例えばリンク管理パッケージの中に含まれたデータを、ネットワーク内の他の装置、いわゆる従属装置らを主装置に同期させるために、規則正しく送信する。
【0023】
ネットワークは1つ以上の主装置を備えてよく、例えば2つの主ネットワーク内に2つの主装置があってよく、そこでは、一方の装置がある時間枠内で主装置として動作し、そして他方の装置は他の時間枠内で主装置として動作する。このように、一方の装置は、一方の時間枠内では主装置として、他方の時間枠内では従属装置として動作してもよい。例えば、両耳聴覚システムのような2つの聴覚装置を備えた聴覚システムでは、その2つの聴覚装置は、交互に、そのネットワークの主装置として動作してもよい。好ましくは、その主装置は聴覚装置である。それはその聴覚装置の使用者は、ネットワークを使用する時、その聴覚装置を常に携帯するからである。
【0024】
初期獲得は、新しいネットワークが確立される時に実行される。例えば二つの聴覚装置の電源が投入され、互いに同期を得るために獲得を実行し、それによってネットワークが確立する。それ以上の装置は、その聴覚装置によって実行された獲得と同様な方法で、もしくは異なる獲得方式に従って獲得を実行して、その確立されたネットワークに接続されてもよい。
【0025】
好ましくは、新しい装置は、ネットワークによって自動的に認識され、そしてそのネットワークと相互接続される。
【0026】
同期は、例えば、聴覚装置のターンオン、手動の同期の活性化で、自動的に周期的な同期の初期化、等で実行されてもよい。
【0027】
ネットワーク内のどの装置も、それ自身の識別番号、例えば32ビットの番号を有している。二人の使用者が、同一の識別を有する聴覚装置を所有する確率は無視できるので、世界で唯一の識別番号は必要ない。
【0028】
聴覚システムは、2.4GHzの産業科学医療用(ISM)のバンドで動作してもよい。そのISMバンドは、例えば1MHz のバンド幅の80個の周波数チャネルに分割されてよい。周波数ホッピングTDM方式が好ましい。獲得中、その周波数ホッピング方式は、より迅速に獲得するために、低減された数の周波数チャネル、例えば16チャネル以下、好ましくは4から8チャネル、を備えていてもよい。その周波数チャネルが低減された組のチャネルは、獲得チャネルである。好ましくは、その獲得チャネルは、ネットワークで利用されている周波数バンド内にわたって均等に分配される。
【0029】
1つのタイムスロットの継続時間は、例えば 1250μs(ブルートゥース(登録商標)の最小のスロットの長さの2倍)であってよい。そのスロットは0から255まで番号が付けられている。
【0030】
256個のスロット、つまり、スロット0からスロット255は、1つのフレームを構成する。フレームにも番号が付けられている。
【0031】
スロットの長さの選択に影響する要因として、システムに必要なより短い遅延およびヘッダとPLLロッキングに関する所望の小さいオーバーヘッドがある。好ましくは、スロットの長さは625μsの倍数であり、本発明によるプロトコルを、ブルートゥース(登録商標)対応の装置で実施し易くなる(すなわち阻害しない)。
【0032】
各スロット(スロット128を除く)は、特定の一装置による送信に使用され、ネットワーク内でのデータの衝突を防止する。どの従属装置も、スロット128で送信してよく、そのために、このスロットでは衝突が起こり得る。主装置は、タイミングの情報をスロット0で送信する。従属装置のスロットとフレームのカウンタは、ネットワークの主装置のそれぞれのカウンタと同期化される。
【0033】
装置は、データを送信するのに、1つまたは2つ以上のスロットを使用してよい。スロットは、与えられた装置の製造中に割り付けられてもよく、獲得中に動的に割りつけられてもよい。好ましくは、割り付け表は主装置に記憶される。
【0034】
獲得は、例えば、装置がスロット「0」のリンク管理パッケージを受信し、スロット「128」でそれに応答することが成功した時に、達成されてもよい。
【0035】
聴覚装置の電力消費をより低くするように、その聴覚装置の受信器と送信器は、活性化される。すなわち、例えばそれらに対応する各々のタイムスロットにおいてのみターンオンするように、めいめい受信や送信のために動作することができる。さらに、ビットレートは次のようなシステム内で増減することができる。すなわち、低ビットの転送レートが必要な場合、トランシーバは、その短い時間内だけ活性であればよい。このようにして電力が節約できる。
【0036】
装置がネットワークで動作できるように接続されるためには、そのタイミングが、ネットワーク内の他の装置に同期される必要があり、それによってそれらの装置の受信器と送信器の活性化(activation)と不活性化(deactivation)のタイミング、例えばターンオンとターンオフのタイミングが適切に同期され、そのネットワークに接続されている装置の間の通信が可能となる。
【0037】
新しい装置は、獲得方式によってネットワークの主装置に同期されてもよく、その新しい装置は、その受信器をネットワークのフレームレートとは異なるレートで活性化し、それによって、その後にその新しい装置の受信器が、ネットワークの主装置からの同期データの送信中に活性化されてもよい。その主装置からの同期データを受信すると、その新しい装置のフレームタイミングがネットワークのフレームタイミングと一致するように同期され、その結果、その新しい装置の受信器の活性化レートがそのフレームレートと一致するように調節される。
【0038】
この獲得方式は、実行中の電力消費が低く、そして速い。
【0039】
電力供給の制限の無い装置は、単にネットワークの主装置からの同期データが受信されるまで受信器を活性化したままに保持することによって、ネットワークに同期させることができ、同期データの受信が単一のフレームの継続時間内に得られる。そのような装置、例えば遠隔制御器、調整装置、携帯電話、メディアプレーヤ、ヘッドセット、ドアベル、警報システム、放送システム等は、獲得中にそれらのフレームレートを変える必要が無い。
【0040】
ネットワークプロトコルは、ネットワーク内2つ以上の主装置を受容することもできる。例えば、2つの聴覚装置は、交互にネットワークの主装置として動作してよく、それによって、一方の聴覚装置があるタイムスロットで主装置として動作し、そして他方の聴覚装置が他のタイムスロットで主装置として動作して、そしてはじめの聴覚装置は次のフレーム内の同じタイムスロットで再び主装置として動作する、という具合である。
【0041】
好ましくは、両耳聴覚装置では、左耳の聴覚装置と右耳の聴覚装置の両方がネットワークの主装置である。2つの主ネットワークでは、2つの主装置は、2つの装置のいずれがそのネットワークの主装置になるかを交渉する仕事から開放される。このように、プログラムコードの節約と電力消費の節約が、2つの主装置において得られる。
【0042】
周波数ホッピングを利用しているネットワークでは、装置の周波数ホッピングアルゴリズムもまた同期されねばならない。新しい装置は、獲得方式によってネットワークの主装置に同期されてもよく、ここでその新しい装置は、ネットワークの周波数ホッピングレートとは異なる周波数ホッピングレートで周波数ホッピングを実行し、それによってその後にその新しい装置によって受信に利用されている周波数チャネルが、ネットワーク主装置によって送信に利用されている周波数チャネルと少しの時間後に一致する。例えば、その主装置は、4個のチャネルの周波数チャネルジャンプの配列(sequence):A−B−C−Dを繰り返してよく、そして一方で、その新しい装置、例えば2つの主ネットワークの他の主装置は、獲得中に、その周波数チャネルの一つを再利用して、例えばチャネルAを再利用して:A−A−B−C−Dで繰り返し、それによって、その後に、その主装置とその新しい装置は、同じ周波数チャネルで通信する。
【0043】
同期すると、周波数ホッピングアルゴリズムは、獲得中よりも多くの周波数チャネルを含むより長い配列を発生する。
【0044】
タイミングを制御するのに用いられるクロック信号の精度には限りが有り、無線ネットワークに接続された様々の装置は、完璧な精度でそのタイムスロットを同期できない。例えばそのネットワーク内で受信する参加者は、いつ受信を開始するかを、送信する参加者と同意できないかもしれない。これは、いくらかのマージンが必要であることを意味し、つまり、聴覚装置のネットワーク回路は、各々のタイムスロットよりも長い時間枠の間、電源が供給される必要があることを意味する。
【0045】
より正確なタイミングによって電力消費は低くなるが、通常、この解決策は、嵩高の構成部品(水晶)を組み込む必要がある。
【0046】
しかしながら、この通信制御装置は、受信器の活性化から実際のデータ受信までの遅れ時間を測定するようにさらに適合されていてもよい。すなわち受信されたデータフレームの開始が検知されてもよく、そしてその遅れ時間は記録されてよい。タイムスロットが次に出現した時、受信の開始は、前のタイムスロットの受信中に測定した遅れ時間に従って調節されてよく、すなわち進められたり遅れさせられたりしてよい。このようにして受信器の活性化時間を減らすことにより、電力消費を低くする。
【0047】
本発明の上記およびその他の特徴と利点は、添付図面を参照して、その代表的な実施形態を詳細に説明することによって、当業者には、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】聴覚システム無線ネットワークを模式的に図示する。
図2】スロットとフレームを示す。
図3】同期しているスロットタイミングを図示する。
図4】2つの聴覚装置の2つの主のスロットタイミングを図示する。
図5】1つの聴覚装置の2つの主のスロットタイミングをより詳細に図示する。
図6】本発明によるトランシーバと通信制御装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明の代表的実施態様を示す添付図面を参照して、以下に本発明をより十分に説明する。しかし、本発明は、異なる形態で実施できるため、本明細書に記載されている実施態様に限定されるとみなすべきではない。むしろ、これらの実施形態は、この開示が全く完全なものであり、本発明の範囲を当業者に完全に伝達するために提供するものである。以下、同じ参照番号は全て同じ要素を意味する。
【0050】
聴覚装置無線ネットワークは、そのネットワーク内の複数の装置、聴覚装置、遠隔制御器、調整装置、携帯電話、メディアプレーヤ、ヘッドセット、ドアベル、警報システム、テレコイルリプレイスメント(tele coil replacement)のような放送システム等々の相互接続を可能とする。
【0051】
図示された例では、その受信器と通信制御装置は、周波数多様化方式あるいはスペクトラム拡散方式によって動作し、すなわち、そのネットワークで利用される周波数の範囲は、多数の周波数チャネルに分割され、そして送信は、送信がその周波数の範囲全体にわたって分配されるように、予め決められた方式によって、チャネルを切り換える。ネットワーク内の装置が、ネットワークの履歴に頼ることなく、任意の時点においてそのネットワークがどの周波数チャネルを使用するかを計算できるようにする、周波数ホッピングのアルゴリズム、例えば、現在の周波数チャネル番号に基づき、疑似乱数発生器が次の周波数チャネル番号を計算するアルゴリズム、が提供される。これはそのネットワーク内で、ある一つの新しい装置の同期を可能とし、例えば、その新しい装置は、そのネットワーク内で既に接続されている装置と同一の疑似乱数発生器を備えている。したがって、獲得中に現行の周波数チャネル番号を受信すれば、その新しい装置は、そのネットワーク内の他の装置と同じ次の周波数チャネル番号を計算する。好ましくは、ネットワーク内の1つの装置が、そのネットワークの主装置として動作する。そのシステム内の他の装置は、その主装置のタイミングに同期し、そして好ましくは、その主装置は聴覚装置である。それはその聴覚装置の使用者は、ネットワークを使用する時、その聴覚装置を常に携帯するからである。
【0052】
その通信がノイズに対して低い感度を有することは、スペクトラム拡散方式に従って動作するネットワークの利点である。それは、ノイズは一般的に特定の周波数チャネルに存在しており、通信は、短い時間枠で、特定の周波数チャネルで実行され、その後、通信は別の周波数チャネルに切り換えられることになるからである。
【0053】
さらに、いくつかのネットワークが近接して共存してよい。例えば、2人以上の聴覚装置の使用者が、ネットワークの混信無しで、同じ部屋に居ることができる。というのは、2つのネットワークが1つの特定の周波数チャネルを同時に使う確率は非常に低いからである。同様に、その聴覚装置のネットワークは、同じ周波数バンドを使用する他の無線ネットワーク、ブルートゥース(登録商標)ネットワーク、あるいは他の無線ローカルエリアネットワークと共存していてもよい。本発明による聴覚装置は、両耳聴覚システムに組み込まれることが好ましく、2つの聴覚装置は、例えば、オーディオ信号、信号処理パラメータ、信号処理プログラムの識別番号のような制御データ等々のようなデータのデジタル交換のために、無線ネットワークを通して相互接続され、任意に、他の装置、例えば遠隔制御装置のようなもの等と、相互接続される。
【0054】
ネットワーク内のどの装置も、それ自身の識別番号、例えば32ビットの番号を有している。二人の使用者が、同一の識別を有する聴覚装置を所有する確率は無視できるので、世界で唯一の識別番号は必要ない。
【0055】
好ましくは、新しい装置は、ネットワークによって自動的に認識され、そしてそのネットワークと相互接続される。
【0056】
図1は、左耳補聴器と右耳補聴器を有する両耳補聴器を備えている聴覚システムを模式的に図示しており、これらの補聴器は各々、無線ネットワークと接続するためのトランシーバと通信制御装置とを有しており、その無線ネットワークは、その2つの補聴器を相互接続し、かつこれらの補聴器とこの無線ネットワーク内の複数の他の装置とを相互接続する。図1に示す例では、ドアベル、携帯電話、コードレス電話、テレビセット、そして調整装置などもその無線ネットワークに接続されている。
【0057】
本発明の例示する実施形態は、 2.4GHzの産業科学医療用(ISM)のバンドで動作する。そのバンドは、バンド幅が1MHz の周波数チャネルを80個備えている。周波数ホッピングTDM方式を利用する。獲得中、その周波数ホッピング方式は、より迅速に獲得するために、低減された数の周波数チャネル、例えば16チャネル未満であり、好ましくは8チャネル、を有している。その周波数チャネルが低減された組のメンバーは、獲得チャネルである。好ましくは、その獲得チャネルは、ネットワークで利用されている周波数バンド内にわたって均等に分配される。
【0058】
そのプロトコルによると、図2に示したように、時間は、1250μs(ブルートゥース(登録商標)最小のスロットの長さの2倍)の長さを有する、いわゆるスロットに分割される。そのスロットは0から255まで番号が付けられている。
【0059】
256個のスロット、つまり、スロット0からスロット255は、1つのフレームを構成する。フレームにも番号が付けられている。
【0060】
スロットの長さの選択に影響する要因として、システムに必要なより短い遅延およびヘッダとPLLロッキングに関する所望の小さいオーバーヘッドがある。好ましくは、スロットの長さは625μsの倍数であり、本発明によるプロトコルを、ブルートゥース(登録商標)対応の装置で実施し易くなる(すなわち阻害しない)。
【0061】
各スロット(スロット128を除く)は、特定の一装置による送信に使用され、ネットワーク内でのデータの衝突を防止する。どの従属装置も、スロット128で送信してよく、そのために、このスロットでは衝突が起こり得る。主装置は、タイミングの情報をスロット0で送信する。従属装置のスロットカウンタとフレームカウンタは、ネットワークの主装置のそれぞれのカウンタと同期化される。
【0062】
装置は、データを送信するのに、1つまたは2つ以上のスロットを使用してよい。スロットは、与えられた装置の製造中に割り付けられてもよく、獲得中に動的に割りつけられてもよい。好ましくは、割り付け表は主装置に記憶される。
【0063】
時分割多元接続(TDMA)のフレーム構造によって、ネットワーク内の装置は、時間が、番号が付けられたタイムスロットに分割されている協調タイムスケジュールに従ってデータの送信と受信を行い、そしてネットワーク内の異なる装置は、それぞれ特定のタイムスロットで、例えばデータ受信といった通信を行う。補聴器の電力消費を低減するため、その補聴器のトランシーバは、そのタイムスロット内でのみターンオンされる。さらに、ビットレートは次のようなシステム内で増減することができる。すなわち、低ビットの転送レートが必要な場合、トランシーバは、その短い時間内だけ活性であればよい。このようにして電力が節約できる。
【0064】
装置がネットワークで動作できるように接続されるためには、そのタイミングが、ネットワーク内の他の装置に同期される必要があり、それによってそれらの装置の受信器と送信器のターンオンとターンオフのタイミングが適切に同期され、そのネットワークに接続されている装置の間の通信が可能となる。
【0065】
新しい装置は、獲得方式によってネットワークの主装置に同期されてもよく、その新しい装置は、その受信器をネットワークのフレームレートとは異なるレートでターンオンし、それによって、その後にその新しい装置の受信器が、ネットワークの主装置からの同期データの送信中にターンオンされてもよい。その主装置からの同期データを受信すると、その新しい装置のフレームタイミングがネットワークのフレームタイミングと一致するように同期され、その結果、その新しい装置の受信器のターンオンレートがそのフレームレートと一致するように調節される。
【0066】
このことはさらに図3に示されている。図3では、上方の図が、ネットワークの主装置の送信Txと受信Rxを図示しており、下方の図が、新しい装置の送信と受信を示している。Tfは、ネットワークのフレームレートを規定する主装置のフレームレートである。Toは、受信器のターンオンの継続時間である。図示された例では、同期データの送信の継続時間は To/2より少なく、そのため、新しい装置は、妥当な時間内に、同期データの受信のための受信器のターンオンと同期データ送信の十分な重なりが得られるようにするため、Tf−To/2のフレームレートで動作することができる。最悪の場合の同期のシナリオが図3に図示されており、ここでは、新しい装置の受信器(下方の図)が、主装置からの同期のデータの送信前に、ターンオフしている。この場合、送信と受信器のターンオンとの間の時間差は、1つのフレームの継続時間であるTfからToを差し引いたものに等しい。受信器のターンオンの時間窓(time window)は、同期データ送信Txに向かって、各新しいフレームについてTo/2だけ移動するので、同期が得られるまでに送信されるフレームの数は次のように得られる。
【0067】
【数1】
【0068】
したがって、同期が得られるまでに必要な時間は次のようになる。
【0069】
【数2】
【0070】
例えば、フレーム時間Tfが16ミリ秒であり、受信器のターンオン時間Toが1ミリ秒のネットワークにおいては、Tsync=480ミリ秒となる。
【0071】
電力供給の制限の無い装置は、単にネットワークの主装置からの同期データが受信されるまで受信器をターンオンしたままに保持することによって、ネットワークに同期させることができ、同期データの受信が単一のフレームTfの継続時間内に得られる。そのような装置、例えば、遠隔制御器、調整装置、携帯電話、メディアプレーヤ、ヘッドセット、ドアベル、警報システム、放送システム等は、獲得中にそれらのフレームレートを変える必要が無い。
【0072】
そのネットワークプロトコルはネットワーク内の2つの主装置を受容することもできる。これは、2つの聴覚装置の同期データの送Txと受信Rxを示す図4に図示されており、
2つの聴覚装置の両方が交互にネットワークの主装置として動作し、それによって、一方の聴覚装置があるフレームで主装置として動作し、そして他方の聴覚装置が次のフレームで主装置として動作して、そしてはじめの聴覚装置はそのまた次のフレームで再び主装置として動作する、という具合である。これはさらに図5に図示されており、ここでは、t=0からt=6の時間は、これ以降この配列が繰り返されるが、スーパーフレームと名付けられる。t=0からt=3までの時間は、フレームあるいは主フレームと名付けられる。その主フレームの中で、一方の主装置は、送信あるいはデータを要求する権利を有し、他方の主装置は同じ権利を、スーパーフレームの後半、すなわちt=3からt=6まで、において有する。したがって、図5に図示された例のフレームとタイムスロットは下記に示すとおりである。
【0073】
t=0からt=6: スーパーフレーム
t=0からt=3: フレーム ( 第1主装置の主フレーム )
t=3からt=6: フレーム ( 第1主装置の従属フレーム )
t=xからt=x+1: スロット ( x≠0 およびx≠3に対するデータスロット )
t=0からt=1: 第1主装置の同期スロット
t=3からt=4: 第2主装置の同期スロット
【0074】
好ましくは、両耳聴覚装置では、左耳の聴覚装置と右耳の聴覚装置の両方がネットワークの主装置である。2つの主ネットワークでは、2つの主装置は、2つの装置のいずれがそのネットワークの主装置になるかを交渉する仕事から開放される。このように、プログラムコードの節約と電力消費の節約が、2つの主装置において得られる。
【0075】
周波数ホッピングを利用しているネットワークでは、装置の周波数ホッピングアルゴリズムもまた同期されねばならない。新しい装置は、獲得方式によってネットワークの主装置に同期されてもよく、ここでその新しい装置は、ネットワークの周波数ホッピングレートとは異なる周波数ホッピングレートで周波数ホッピングを実行し、それによってその後にその新しい装置によって受信に利用されている周波数チャネルが、ネットワーク主装置によって送信に利用されている周波数チャネルと少しの時間後に一致する。例えば、その主装置は、4個のチャネルの周波数チャネルジャンプの配列(sequence):A−B−C−Dを繰り返してよく、そして一方で、その新しい装置、例えば2つの主ネットワークの他の主装置は、獲得中に、その周波数チャネルの一つを再利用して、例えばチャネルAを再利用して:A−A−B−C−Dで繰り返す。以下に、最悪の場合のシナリオにおける2つの聴覚装置の同期、すなわち獲得の3例を図示する。ここでは、一方の聴覚装置が、他方の聴覚装置が周波数チャネルAの使用を開始した時に、周波数チャネルAでの送信を完了している。
【0076】
N = 4:
1) A A B C D A A B C D A A
2) B C D A B C D A B C D A

N = 5:
3) A A B C D E A A B C D E A A B C D E A A
4) B C D E A B C D E A B C D E A B C D E A

N = 6:
5) A A B C D E F A A B C D E F A A B C D E F A A B C D E F A A
6) B C D E F A B C D E F A B C D E F A B C D E F A B C D E F A
【0077】
上記の例においては、同期するまでの期間の数 P は次のようになる。
P = (N - 2) N + N - 1
上式で N は、ジャンプ配列における周波数チャネルの数である。
【0078】
従って、下記のとおりとなる。
P (N = 4) = 11
P (N = 5) = 19
P (N = 6) = 29
P (N = 7) = 41.
【0079】
同期すると、周波数ホッピングアルゴリズムは、獲得中よりも多くの周波数チャネルを含むより長い配列を発生する。
【0080】
図6は本発明のトランシーバと通信制御装置のブロック図である。図6はまた、ユニットに出入りする主要なデータフローを示す。データを受信すると、RFチップインタフェイス1は、配置構成(configuration)のために、RFチップにSPI指令を送る。そのRFチップインタフェイスは、RFチップからデータストリームを受信する。
【0081】
相関器2は、シンクワード(sync word)から、スロットとフレームのタイミングを抽出し、それによって残りの受信チェーン(receive chain)が同期化できる。このタイミングに基づき、ヘッダ抽出ブロック3が、パッケージのヘッダを分析して、スロット数とパッケージの長さを抽出する。ヘッダのどのようなエラーも報告される。データの逆白色化(de-whitening)ブロック4は、パッケージのデータを逆白色化する。次にそのデータは、直列/並列変換ブロック5によって、並列の16ビットに変換される。そのパッケージのデータは、データバッファインタフェイス7によって、内部データバッファ6の中に記憶される。その結果、そのデータは、周辺バス(peripheral bus)を通して DSPインタフェイス8を経由して、 DSPにアクセス可能である。CRCチェックもまた、パッケージデータ9に実行できる。すべての内部配置構成の登録およびヘッダのチェックの結果、CRCのエラー等は、DSPインタフェイスを通してアクセス可能である。スロットとフレームのカウンタ10 は、多数のハードウェアタイマ11と同様に提供される。
【0082】
制御装置状態機械(controller state machine)12は、ベースバンドエンジン(base band engine)の全タイミングに応答可能である。
【0083】
Gold符号発生器13 は、シンクワードをプログラムするのに使用される Gold符号を発生して、ソフトウェアにハードウェア補助(hardware assistance)を提供する。
【0084】
送信する際、そのRFチップインタフェイス1は、配置構成のために、RFチップにSPI指令を送る。
【0085】
DSPは、データのパッケージを、DSPインタフェイス 8を経由してデータバッファ6、7に書く。そのパッケージのデータは、データCRC発生ブロック9を経由して計算されたCRCを有している。次いで、結合されたペイロード(payload)とCRCのデータは、5で直列変換され、4で白色化(whitening)される。パッケージのヘッダはヘッダ発生ブロック3によって作られ、そのデータに追加される。完成されたパッケージは、RFチップインタフェイス1によって、RFチップに送られる。
【0086】
本発明の好ましい実施態様とみなされるものを説明してきたが、本発明から逸脱することなく各種の変更と変形を実行できることは、当業者にとって、明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6