(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
反応室に又は2つ以上の反応室の第一の反応室に、少なくとも部分的に、アルカノールと硫酸とを含有する水を供給することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
反応生成物を、少なくとも1つの予備精製及び少なくとも1つの主精製に供し、その際、該反応生成物から、予備精製に際して蒸留により十分に、製造されるメタクリル酸アルキルエステルよりも低沸点を有する低沸点不純物及びその水との共沸混合物が除去され、かつ主精製の場合に十分に、製造されるメタクリル酸アルキルエステルよりも高沸点を有する高沸点の不純物が除去されることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
低沸点の不純物を1つ以上の熱交換器において凝縮に供し、該凝縮物を相分離に供し、そして該凝縮物の水相を、少なくとも1つの反応室中に返送することを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、メタクリル酸アルキルエステル並びに多くの化学的合成方法の範囲において使用でき、種々の再処理生成物をもたらしうる後続生成物の製造方法並びに前記方法の実施のための装置に関する。
【0002】
メタクリル酸アルキルエステルの製造のためには、既に長い間知られ、広く実施されていた方法が存在する。メタクリル酸アルキルエステルは、例えばオリゴマーもしくはポリマー化合物の製造の範囲において使用され、その際、相応して得られるオリゴマーもしくはポリマーの生成物は多くの対象物において、特にまた多くの日常消費物において見出される。
【0003】
非常に様々なメタクリル酸アルキルエステルの製造方法の広い普及と、かかる化合物の多量の所要量に基づき、相応の方法は、通常、得られた生成物量が高くなるよう規模決定されている。この理由から、公知の方法の最適化は、非常に様々な製造方法の開発に際して注目を浴びている。既に、公知の方法の範囲における僅かな改善は、製造される生成物の多量に基づき、例えば製造方法でのエネルギー消費の低下のために、又は製造方法の範囲で必要なリソースの保護のためにかなりの利点に寄与することがある。
【0004】
本発明は、ここで、本願に記載されるメタクリル酸アルキルエステルの製造方法の範囲において、多くの位置で水が使用され、その際、この水が通常は、その都度の利用目的を通過した後に廃棄へと供給されねばならないという問題点を前提としている。従って、本発明の課題は、メタクリル酸アルキルエステルの製造方法における原料としての水の使用を最適化して、水の消費量ができる限り減少させ、方法の範囲で使用される水をできる限り様々な位置で該方法内で種々の方法の構成要素の範囲内で使用できるようにすることである。
【0005】
更に、本発明は、改善された水循環の範囲で生成物品質を高めることを目的とするものである。
【0006】
本発明の要旨
本発明は、反応生成物としてメタクリル酸アルキルエステルを製造する方法であって、
a. 1つ以上の反応室で、メタクリル酸アミド、水、硫酸及び少なくとも1種のアルカノールを含有する反応混合物をエステル化反応に供し、
b. 粗製の反応生成物を、少なくとも1つの精留塔において分離作業に供し、
c. 該分離に供された反応生成物を、1つ以上の熱交換器において凝縮させ、
d. 凝縮物を、少なくとも1つの分離装置において有機相と水相とに分離し、
e. 該有機相を水で洗浄して、洗浄された有機相と洗浄水とを得て、そして場合により、
f. 分離された水相を、前記洗浄水と一緒に、再び少なくとも1つの反応室に返送する
方法に関する。
【0007】
反応室としては、例えば1つのタンク又は2、3、4もしくはそれ以上のタンクのカスケードを使用することができる。本発明の更なる一実施態様の範囲においては、該反応室又は2つ以上の反応室の第一の反応室に、少なくとも部分的に、アルカノールと硫酸とを含有する水を供給する。
【0008】
反応室中の温度は、例えば約90〜約120℃に調整でき、そして該反応混合物から、1つ以上の反応室から蒸気状の反応生成物を抜き出し、それを次いで、例えば精留塔を介して分離作業に供し、1つ以上の熱交換器において凝縮させ、そして凝縮物として引き続き水で洗浄し、その際、こうして得られた洗浄水と反応生成物とを相分離によって分離し、再び少なくとも1つの反応室に返送する。
【0009】
本発明による方法は、例えば以下の工程:
a. 少なくとも1つの反応室から、水、アンモニウム塩、反応生成物、固体及び硫酸(消費された酸)を含有する混合物を抜き出す工程、
b. 該混合物を、少なくとも1つの浮選容器に供給し、そこで浮選によって十分に固体を除去する工程、
c. 浮選容器に、反応生成物が該混合物から蒸気相へと移送されるように蒸気を吹き込む工程、
d. 少なくとも水及び反応生成物を含有する蒸気相を、少なくとも1つの熱交換器中で冷却して、水と反応生成物を含有する後凝縮物が生ぜしめる工程、及び
e. 該後凝縮物を、少なくとも1つの反応室に返送する工程
を含む。
【0010】
幾つかの場合には、少なくとも1つの熱交換器の内側が、予備精製段階の精留塔からの凝縮物の洗浄からの洗浄水で噴霧され、かつその場合に例えば該熱交換器において後凝縮物と洗浄水とからなる混合物が生じ、それを少なくとも1つの反応室に返送することができる場合に好ましいことが明らかとなった。
【0011】
しばしば、反応生成物を、少なくとも1つの予備精製及び少なくとも1つの主精製に供し、その際、該反応生成物から、予備精製に際して蒸留により十分に、製造されるメタクリル酸アルキルエステルよりも低沸点を有する低沸点不純物が除去され、かつその水との共沸混合物が除去され、かつ主精製の場合に十分に、製造されるメタクリル酸アルキルエステルよりも高沸点を有する高沸点の不純物が除去される場合に良好な結果がもたらされる。
【0012】
低沸点の不純物は、その際例えば、1つ以上の熱交換器において凝縮に供することができ、その際、該凝縮物は、相分離に供することができ、そして該凝縮物の水相は、例えば少なくとも1つの反応室に返送することができる。
【0013】
本発明によれば、同様に、幾つかの場合において、少なくとも1つの反応室にメタクリル酸アミド及び濃硫酸を充填する場合に好ましいと判明した。
【0014】
本発明によれば、例えば、2、3もしくは4つのタンクのカスケードを反応室として使用することができる。
【0015】
本発明の更なる一実施態様の範囲において、反応混合物中に存在する水は、少なくとも60質量%までは、1つ以上の後続の方法の構成要素:
a. 粗製の反応生成物を、第一の分離作業の後に水で洗浄して、引き続き水相を相分離によって分離すること、
b. 反応生成物を消費された酸から水蒸気で追い出し、引き続きこうして得られた反応生成物と水蒸気とからなる混合物を凝縮させること、
c. 低沸点の不純物及びその水との共沸物を粗製の反応生成物から蒸留により分離し、分離された不純物を凝縮させ、該凝縮物と水とを混合し、分離された水相を相分離によって分離すること
に由来する。
【0016】
本発明による方法は、更に、1つ以上の以下の方法の構成要素:
a. アセトンシアンヒドリンをアセトンと青酸とから製造すること;
b. アセトンシアンヒドリンを精留塔中で精製すること;
c. 該アセトンシアンヒドリンを反応させてメタクリル酸アミドを得ること;
を含む。
【0017】
同様に、本発明の対象は、メタクリル酸アルキルエステルの製造のための装置であって、少なくとも
a. メタクリル酸アミド、水、硫酸及びアルカノールを含有する反応混合物をエステル化反応に供することができる1つ以上の反応室、
b. 該反応生成物を分離作業に供することができる少なくとも1つの精留塔、
c. 該分離作業に供された反応生成物を凝縮することができる1つ以上の熱交換器、
d. 該凝縮物を水で洗浄できる少なくとも1つの洗浄塔、
e. 得られた洗浄水を反応生成物から相分離によって分離できる少なくとも1つの分離装置、及び
f. 分離された水相を再び少なくとも1つの反応室に返送できる分離装置と少なくとも1つの反応室との間の少なくとも1つの流体伝達的な接続部
を含む装置である。
【0018】
本発明による装置は、更に、少なくとも:
a. 粗製の反応生成物から、メタクリル酸アルキルエステルより低沸点を有する不純物と、その水との共沸物を除去することができる少なくとも1つの蒸留塔;
b. 蒸気状の分離された不純物並びにその水との共沸物を凝縮させて凝縮物を形成させることができる少なくとも1つの熱交換器;
c. 該凝縮物を水と混合する少なくとも1つの水用の供給導管;
d. 凝縮物の水相と有機相とを分離することができる少なくとも1つの分離装置;及び
e. 水相と少なくとも1つの反応室との間の少なくとも1つの流体伝達的な接続部;
f. エステル化反応からの消費された酸から、少なくとも部分的に固体を除去することができる少なくとも1つの容器(浮選容器);
g. 浮選容器と反応室との間の少なくとも1つの流体伝達的な接続部;
h. 浮選容器から出てくる蒸気状の物質の凝縮のための少なくとも1つの熱交換器;
i. 分離装置中で得られた水相を熱交換器の内部に供給することを可能にする、分離装置と熱交換器の間の少なくとも1つの流体伝達的な接続部;
j. 熱交換器と少なくとも1つの反応室との間の少なくとも1つの流体伝達的な接続部;
を含むことができる。
【0019】
本発明は、更に、メタクリル酸アルキルエステルを少なくとも部分的に基礎とするポリマーの製造方法であって、以下の工程:
a. メタクリル酸アルキルエステルを本発明による方法に従って製造する工程;
b. 該メタクリル酸アルキルエステルと、場合によりコモノマーを、例えばラジカル重合によって重合させる工程;
c. 該メタクリル酸アルキルエステルを後処理する工程;
を含む方法に関する。
【0020】
さらに、本発明は、本発明による方法によって得られるメタクリル酸アルキルエステルを、繊維、フィルム、塗料、成形材料、成形体、紙用助剤、皮革助剤、凝固剤及び穿孔助剤の製造のために用いる使用並びに本発明による方法に従って得られるメタクリル酸アルキルエステルを基礎とする繊維、フィルム、塗料、成形材料、成形体、紙用助剤、皮革助剤、凝固剤及び穿孔助剤に関する。
【0021】
発明の詳細な説明
"反応室"とは、本発明の範囲においては、本発明によるエステル化反応を行うことができる空間を意味する。反応室は、例えばタンク、フラスコ、ループ型反応器などであってよい。その際、エステル化反応が該反応室内で連続的にもしくは回分式に行われるかは重要ではない。
【0022】
エステル化反応とは、本文の範囲においては、反応生成物がメタクリル酸アルキルエステルである反応を表す。;好ましくは、エステル化反応とは、本文の範囲においては、メタクリル酸と、直鎖状もしくは分枝鎖状のC
1〜C
22−モノアルカノール、好ましくは1、2、3もしくは4個の炭素原子をアルキル基中に有し、かつ1つのOH基を有するアルカノールとの反応を表す。
【0023】
"粗製の反応生成物"とは、本発明の範囲においては、反応の実施の範囲で反応室から抜き出される物質混合物を表す。本発明の好ましい一実施態様の範囲においては、"粗製の反応生成物"とは、反応の範囲で反応室として使用された1つ以上のタンクから、各々の再処理もしくは精製の前に抜き出すことができるその物質混合物を表す。
【0024】
"精留塔"とは、本文の範囲においては、複数のトレイ物質分離に適した内部取付物もしくは充填物を有する塔であって、粗製の反応生成物が分離作業に供される塔を表す。分離作業とは、その際、反応室から取り出された粗製の反応生成物を、キャリヤーとして適した水蒸気と一緒に、1つ以上の塔トレイを介して後精製し、こうして実質的に水、メタクリル酸アルキルエステル及びアルコールと、より高沸点を有する化合物又は塔中で優勢な条件の範囲で蒸気相で塔から排出されない化合物との分離が達成される作業を表す。
【0025】
"蒸気相"とは、本発明の範囲においては、気体状物質又は2つ以上の気体状の物質からなる混合物であって、場合によりなおも液相の割合を含んでよい混合物を表す。
【0026】
"洗浄塔"とは、本発明の範囲においては、粗製の反応生成物を分離作業後に水で洗浄できる装置を表す。例えば、好適な洗浄塔は、粗製の反応生成物を分離作業の後に向流において水と接触させることができる装置である。かかる作業に際して、例えば形成されたメタクリル酸アルキルエステルは、相分離の後に有機相として再処理することができる。
【0027】
本発明は、特に、メタクリル酸アミドを加水分解してメタクリル酸を得て、それを同時にエステル化して、メタクリル酸エステルを得ることに関する。前記反応は、1つ以上の反応室において行うことができ、該反応室は実質的に反応に適切に任意に選択することができる。特に、加熱式の、例えば蒸気によって加熱されるタンクが適していると判明した。多くの場合において、エステル化を、反応室として少なくとも2つの連続したタンク中で、例えばまた3もしくは4もしくはそれ以上の連続したタンク中で実施することが好ましいと見なされる。その際に、メタクリル酸アミドの溶液は、タンク中に、あるいは2つ以上のタンクを含むカスケードの第一のタンク中に供給される。
【0028】
しばしば、本発明によれば、相応のエステル化反応を、反応室として2つ以上のタンクのカスケードをもって行うことが好ましい。以下に、従ってもっぱら前記の別形が引き合いにだされる。
【0029】
ここに記載される方法の範囲において、例えば本文に記載されるアミド化反応から得られるアミド溶液を、第一のタンク中に供給することができる。該タンクは、例えば蒸気で加熱される。供給されるアミド溶液は、一般に高められた温度を有する、例えば約100〜約180℃の温度を有し、それは上記説明のアミド化反応からのアミド溶液の排出温度に相当する。前記のタンクに、更に、エステル化のために使用できるアルカノールが供給される。
【0030】
基本的に、ここで、1〜約22個の炭素原子を有し、直鎖状もしくは分枝鎖状の、飽和もしくは不飽和であってよい任意のアルカノールが適しており、その際、メタノールが特に好ましい。同様に、このアルカノールは、メタクリル酸エステルと一緒に使用することができ、これは特にエステル交換の場合がそれである。
【0031】
該タンクには、更に水が充填されるので、全体としてタンク中の水濃度は、約13〜約26質量%、特に約18〜約20質量%が占めている。その際、本発明によれば、反応室に、例えばアルカノール又は2つ以上のアルカノールからなる混合物と硫酸を含有する水を供給する場合に好ましいことがある。アルカノールとしては、エステル化反応の範囲において反応混合物中に存在するアルカノールが適している。
【0032】
アミド化溶液とアルカノールの量は、アミドとアルカノールとの全モル比が約1:1.4〜約1:1.6を占めるように調節される。アルカノールは、タンクカスケードに、第一の反応器においてモル比約1:1.1〜約1:1.4であり、後続の反応段階において全アミド流に対してモル比約1:0.05〜約1:0.3に設定されるように分配することができる。エステル化に供給されるアルカノールは、"新たなアルカノール"から、並びに後処理段階の再循環流からのアルカノールから、そして必要であればまた、生産装置の下流プロセスの再循環流からも構成されてよい。
【0033】
第一のタンクを水で充填することは、基本的に、任意の起源からの水を、この水が、エステル化反応もしくは後続の方法工程に悪影響を及ぼし得る内容物を有さない場合にタンクに供給するという趣旨で行うことができる。例えば、タンクには脱塩水もしくは井戸水を供給してよい。しかし本発明の範囲においては、反応室としてのタンクに、部分的に水と、例えばメタクリル酸もしくはメタクリル酸エステルの精製の際に生ずる有機化合物との混合物を供給することで行われる。ここに説明される方法の更なる一実施態様の範囲においては、該タンクは、少なくとも約50質量%の割合で、例えば少なくとも約60質量%もしくは少なくとも約70質量%もしくは少なくとも約80質量%もしくは少なくとも90質量%の割合で、少なくとも水及びかかる有機化合物からなる混合物で充填される。
【0034】
2つ以上のタンクのカスケードをエステル化反応の範囲において使用する場合に、生成する蒸気状のもしくは気体状の物質(両方の用語はここでは同義に使用される)を、特にメタクリル酸エステルを、基本的にそれぞれのタンクから個々に取り出し、精製に供給することができる。しかしながら、かなりの場合に、2つ以上のタンクのカスケードの場合に気体状の生成物を第一のタンクからまず第二の反応タンクへと供給するが、該気体状の化合物は第一のタンクから直接的に精製に供給しないことが好ましいと見なされる。この方法様式は、第一のタンクにおいてしばしば激しい気泡形成に、高価な装置的な消泡によって対処する必要がないという利点を与える。気体状物質を第一のタンクから第二のタンクへとカスケード化する場合に、第一のタンクで形成された、場合により連行される気泡は、容易に第二のタンクの反応室へと一緒に入る。そこで一般に気泡形成は明らかに低いので、装置的に消泡する必要はない。
【0035】
第一のタンク後に配置された第二のタンクは、一方で第一のタンクの溢れを収容するが、他方で、それは、気体状の第一のタンクで形成された又は第一のタンクに存在する物質と一緒に供給される。第二のタンク及び場合により後続のタンクは、同様にメタノールで充填される。この場合に、タンクとタンクとのメタノール量は、それぞれ前方に存在するタンクに対して少なくとも10%だけ高まることが好ましい。第二のタンク中の、並びに更なるタンク中での水濃度は、第一のタンクのそれとは異なってよいが、しばしばその濃度差は僅かである。
【0036】
水濃度の調節は、例えば既にプロセス循環に存在する水の供給と、反応室からの水の排出を介して可能である。この関連で、本発明によれば、粗製反応生成物をキャリヤーとして水蒸気によって反応室から追い出すことができ、引き続き精留塔において分離作業に供することができ、その際、水と有機化合物、特にメタクリル酸アルキルエステルの混合物が分離され、そこから再び水を前記のように回収できることが好ましい。
【0037】
第二のタンク中で生成する排出蒸気は、該タンクから排出され、そして蒸留塔もしくは精留塔の塔底部に導入される。
【0038】
エステル化を3つ以上のタンクのカスケードで実施する場合に、第二のタンクの溢れのそれぞれは、第三のタンクに移送され、並びに第三のタンクの溢れは、場合により第四のタンクへ移送される。更なるタンクは、同様に蒸気加熱される。好ましくは、タンク3と、場合により4中の温度は、約120℃〜約140℃に調節される。
【0039】
タンクから発生する排出蒸気は、蒸留塔もしくは精留塔に導入することができ、その際、導入は好ましくは塔の下方領域で行われる。該排出蒸気は、キャリヤー蒸気、メタクリル酸エステル及びアルカノールからの共沸混合物を含み、かつ使用されるアルカノールに応じて、約60〜約120℃、例えば約70〜約90℃の温度をメタノールの使用に際して有する。蒸留塔において、メタクリル酸エステルは、気体状で、より高い温度で沸騰する排出蒸気成分から分離される。高沸点成分(主にメタクリル酸、ヒドロキシイソ酪酸エステル及び水)は、第一の反応タンクに返送される。形成されたメタクリル酸エステルは、塔頂部で抜き出すことができ、そして熱交換器又は2つ以上の熱交換器のカスケードを介して冷却することができる。幾つかの場合に、メタクリル酸エステルの冷却を少なくとも2つの熱交換機を介して行い、その際、水を用いる第一の熱交換器は、凝縮と、約60℃から約30℃までの温度への冷却を実施し、一方で、第二のブライン冷却される熱交換器は、約5℃から約15℃までの冷却を行う場合に有効であると実証された。水冷された凝縮物から、部分流を、塔の濃度制御のために、該塔に還流として入れることができる。しかしながら、同様に、形成されたメタクリル酸エステルを2つより多くの熱交換器のカスケードを介して冷却することも可能である。その際、例えば、まず冷却を2つのカスケード接続された水冷式の熱交換器を介して行い、引き続き相応のブライン冷却式の熱交換器を介して更なる冷却を達成することが可能である。
【0040】
ここで、例えば、ここで説明された方法の範囲において、形成されたメタクリル酸エステルは、気体状の状態で、第一の熱交換器を介して水冷によって冷却することができる。凝縮された物質も、凝縮されていない物質も、引き続き第二の熱交換器に更に導き、そこで更なる凝縮を水冷によって行う。この位置で、例えば気体状の物質は、別々のブライン冷却式の熱交換器に移送することができる。このブライン冷却式の熱交換器中の凝縮物を、引き続き蒸留物流に入れ、一方で、残留する気体状の物質を更に利用でき、又は廃棄へと供給することができる。第二の水冷式の熱交換器からのメタクリル酸エステル−凝縮物は、ここで水もしくはブラインで冷却される熱交換器中で、15℃未満の温度に、好ましくは約8〜約12℃の温度に冷却される。この冷却段階は、形成されたメタクリル酸エステルが、相応の冷却段階を行わない場合よりも明らかに低いギ酸含有量を有することに導く。冷却された凝縮物は、引き続き相分離器に移送される。ここで、有機相(メタクリル酸エステル)は水相と分離される。水の他に更に、蒸留段階からの有機化合物、特にアルカノール及び場合により他の不純物の含量を有する水相は、基本的に任意に更に使用することができる。しかし既に上述したように、この水と有機化合物の混合物を、再びエステル化プロセスに返送し、そこで第一の反応タンクへの供給を行うことが好ましいことがある。
【0041】
分離された有機相は、洗浄器中に供給される。そこで、メタクリル酸エステルは脱塩水で洗浄される。この方法工程は、特に、後続の工程で変色がもたらされうる化合物を十分に生成物から除去できるという利点を提供する。分離された水相であって、水と有機化合物、特にアルカノール及び場合により他の不純物の混合物を含有する相を、再び基本的には任意に更に使用することができる。しかし、経済的観点では、水相を再びエステル化工程に返送し、そこで例えば第一のタンクに供給することが好ましい。
【0042】
メタクリル酸エステルは、強い重合傾向を有するので、多くの場合には、メタクリル酸のエステル化の範囲においては、かかる重合を防ぐために配慮がなされる場合に好ましい。
【0043】
メタクリル酸もしくはメタクリル酸エステルの製造のためのプラントにおいては、重合は、しばしば、メタクリル酸もしくはメタクリル酸エステルが一方で僅かな流動速度を有するため、局所的な静止帯域が形成され、そこで長い時間にわたってメタクリル酸もしくはメタクリル酸エステルと重合抑制剤との継続的な接触を起こすことができ、その結果として重合に導きうる場合に行われる。
【0044】
相応の重合挙動を回避するために、物質流の最適化を、一方でメタクリル酸エステルもしくはメタクリル酸の流動速度が系中のできる限り全ての位置で、静止帯域の数が最小限となるほど高いという趣旨で実施することが好ましいことがある。更に、メタクリル酸もしくはメタクリル酸エステルの流れは、好適な安定剤と、重合が十分に抑制されるように混合されることが好ましいことがある。
【0045】
この目的のために、ここで示される方法の範囲において、基本的に、物質流を、できる限り僅かな重合しか該系自体で行われないように混合することができる。このために、特にメタクリル酸もしくはメタクリル酸エステルが蒸留の間にもしくはその後に高い濃度で存在するプラントの一部に、相応の安定剤を供給する。
【0046】
ここで、例えば蒸留塔の塔頂部で、そこで排出されるメタクリル酸エステルの流れに安定剤を供給することが合理的であると見なされる。更に、メタクリル酸もしくはメタクリル酸エステルが約20℃より高い温度で、好ましくは約20〜約120℃の範囲の温度で循環されるそのプラント部分に、メタクリル酸エステル中の安定剤の溶液を噴霧することが好ましいと見なされる。ここで、例えば熱交換器中で生ずる凝縮物の一部を、好適な安定剤と一緒に、そこで塔頂部に、その内側で恒常的に安定化されたメタクリル酸エステルもしくは安定化されたメタクリル酸で噴霧されるように蒸留塔の塔頂部に返送される。それは、好ましくは、塔頂部に、メタクリル酸もしくはメタクリル酸エステルの重合が懸念される静止帯域が形成され得ないように行われる。熱交換器自体には、相応して同様に、メタクリル酸もしくはメタクリル酸エステルの安定化された溶液が、ここでも静止帯域の形成に至り得ないように吹き込まれる。
【0047】
更に、ここで説明される方法の範囲における利点としては、例えば一酸化炭素を含有する排ガスを、前方にあるプロセスから、特にアミド化反応から、蒸気と一緒にエステル化プラントに導く場合に示される。このようにして、固体物質としてもしくは液体として分離できる化合物のガス混合物の改めての統合が行われる。他方で、これは中心位置で回収され、そして更なる利用もしくは廃棄に供給することができる。
【0048】
エステル化の範囲と、引き続き予備精製の範囲で得られたMMAもしくは得られたメタクリル酸エステル又は得られたメタクリル酸は、引き続き更なる処理に供給される。該エステル化から、残りの残留物として、希釈された硫酸が得られ、それは同様に更なる利用に供給することができる。
【0049】
エステルもしくは酸の予備精製
ここで説明された方法の範囲において、本発明の対象は、後続の方法の構成要素において記載されるメタクリル酸もしくはメタクリル酸エステルの予備精製のための方法との関連で使用することができる。ここで、基本的に粗製のメタクリル酸もしくは粗製のメタクリル酸エステルは、できる限り純粋な生成物に至らしめるために更なる精製に供される。かかる更なる方法の構成要素である精製は、例えば一段階であってよい。しかしながら、多くの場合には、かかる精製は、少なくとも2段階を含み、その際、ここに記載した第一の予備精製において、生成物の低沸点成分が除去される場合に好ましいと判明した。このために、粗製メタクリル酸エステルもしくは粗製メタクリル酸は、まず、低沸点成分及び水を分離できる蒸留塔に移送される。このために、粗製のメタクリル酸エステルを蒸留塔に供給し、その際、その添加は、塔のほぼ上半分で行われる。塔底物は、蒸気によって、例えば約50〜約120℃の壁温度が達成されるように加熱される。該精製は、真空下で実施される。塔内の圧力は、エステルの場合に、好ましくは約100〜約600ミリバールである。塔内の圧力は、酸の場合に、好ましくは約40〜約300ミリバールである。
【0050】
塔頂部で、低沸点成分が取り出される。特に、これは、例えばエーテル、アセトン及びメチルホルミエートであってよい。該排出蒸気は、引き続き1つ以上の熱交換器を介して凝縮される。その際、例えば幾つかの場合に、まず凝縮を、直列接続された2つの水冷式の熱交換器を介して実施することが有効であると実証された。しかし同様に、この場所で1つだけの熱交換器を使用することも可能である。該熱交換器は、好ましくは流速の増大のために、かつ定常相の形成を回避するために、垂直状態で運転される。水冷式の熱交換器もしくは水冷式の複数の熱交換器に後接続されているのは、ブライン冷却式の熱交換器であってよいが、2つ以上のブライン冷却式の熱交換器のカスケードが後接続されていてよい。熱交換器のカスケードにおいては、排出蒸気が凝縮され、安定剤が供給され、例えば相分離器に供給される。該排出蒸気が水も含有しうるので、場合により生ずる水相は、廃棄されるか、又は更なる使用に供給される。更なる利用としては、例えばエステル化反応への返送、例えば上述のエステル化反応への返送が考えられる。この場合に、水相は、好ましくは第一のエステル化タンクへと返送される。
【0051】
分離された有機相は、還流として塔頂部に供給される。有機相の一部は、再び熱交換器頂部と塔頂部の噴霧のために供給することができる。分離された有機相が、安定化剤と混合されている相である場合に、一方で静止帯域の形成が効果的に抑制される。他方で、安定剤の存在は、分離された排出蒸気の重合傾向を更に阻止する。
【0052】
熱交換器から得られた凝縮物流は、更に、好ましくは、相分離器において十分な分離作用を達成できるように脱塩水と混合される。
【0053】
熱交換器カスケードで凝縮後に残留する気体状の化合物は、好ましくは減圧発生器としての蒸気エゼクターによって、もう一度、1つ以上の更なる熱交換器を介して凝縮に供することができる。その際に、経済的観点では、係る後凝縮の範囲において、気体状の物質のみが予備精製から凝縮されない場合に好ましいことが明らかになった。ここで、例えば、メタクリル酸エステルの主精製から生ずる更なる気体状物質をかかる後凝縮に供することが可能である。かかる方法様式の利点は、例えば、主精製段階の範囲において凝縮されなかったメタクリル酸エステルの割合を、予備精製の範囲内で、もう一度、相分離器を介して精製塔へと移送できることにある。ここで、例えば、収率最大化を行えることと、できる限り低いメタクリル酸エステルの損失が生ずることが保証される。更に、前記の更なる熱交換器の設計と運転の好適な選択によって、この熱交換器を出る排ガスの粗製、特に低沸点物の含有量を調節することができる。
【0054】
メタクリル酸エステルの予備精製の範囲での水の供給に基づき、エステル化における含水率と、粗製メチルメタクリレート中の低沸点成分の濃度は、全体として連続的に高めることができる。それを回避するために、該系に供給される水の一部を、好ましくは連続的に該系から排出することが好ましいことがある。この排出は、基本的に、例えば予備精製において該系に水を供給する規模で行うことができる。相分離器で分離される水相は、通常は、有機内容物の含量を有する。従って、この水を、有機物質の前記含量を利用する廃棄物の形に供給することが好ましいことがある。
【0055】
ここで、例えば、このように有機物質で負荷された水を、硫酸分解法の範囲で燃焼室に混合することが好ましいことがある。酸化可能な内容物に基づき、ここでその発熱量は、少なくとも部分的になおも利用できる。更に、ここでできる限り高価な、有機物質で負荷された水の廃棄は回避される。
【0056】
メタクリル酸エステルの高度な精製
メタクリル酸エステルの高度な精製のために、予備精製されたメタクリル酸エステルを更なる蒸留に供する。その際、該粗製メタクリル酸エステルから、蒸留塔を用いてその高沸点成分を分離し、純粋なメタクリル酸エステルが得られる。このために、該粗製メタクリル酸エステルは、当業者に公知のように、蒸留塔の下半分に導入される。
【0057】
蒸留塔は、基本的に、当業者に好適であると見なされる任意の実施態様に相当しうる。しかしながら、得られた生成物の純度のために、多くの場合には、1つ以上の充填物を有する蒸留塔で行うことが好ましいと判明した。それらは、以下のものにほぼ相当する:
一方で、塔内で、メタクリル酸エステルが導通する導管中と同様に、できる限り僅かにいわゆる"デッドスペース"が形成されることが望ましい。該デッドスペースは、比較的長いメタクリル酸エステルの滞留時間をもたらし、それが重合を促進する。これは、再び、高価な生産の中断をもたらし、ポリマーと付加される相応の部分の精製をもたらす。デッドスペースの形成は、とりわけ、塔の設計によっても、好適な運転様式によっても、それが、常に塔の、特に充填物などの塔内部取付物の恒常的なフラッシングが達成されるほど十分な量の液体で負荷することによって対処することができる。ここで、該塔は、塔内部取付物の噴霧のために設計された噴霧装置を有してよい。更に、該塔内部取付物は、互いにもしくは塔と、遮断された接着シームを介して結合されていてよい。係る接着シームは、少なくとも約2つの、好ましくは少なくとも約5つの、特に好ましくは少なくとも約10個の中断部を1mの接着シーム長に有する。この中断部の長さは、これが少なくとも約10、好ましくは少なくとも約20、特に好ましくは少なくとも約50%の、一般に95%以下の接着シーム長を成すように選択することができる。他の構造上の措置は、塔内部領域で、特にメタクリル酸エステルと接触される領域において、全表面の、特に塔内部取付物の全ての表面の約50%未満の、好ましくは約25%未満の、特に好ましくは約10%未満が水平に延びていることにある。ここで、例えば塔の内部に合流するノズルは、円錐形もしくは斜面で構成されていてよい。更に、1つの措置は、塔の運転の間に、塔底部に存在する量の液状のメタクリル酸エステルを、できる限り少なく保持し、他方でこの量の過剰加熱が、中程度の温度及び大きな蒸発面にもかかわらず蒸発の間に回避されることにある。この場合に、液体量が、塔底部において、塔中でメタクリル酸エステルの全量の約0.1〜15%、好ましくは約1〜10%の範囲となることが好ましいことがある。この段落で提案された措置は、メタクリル酸の蒸留でも使用することができる。
【0058】
メタクリル酸エステルの精製の範囲においては、その高沸点成分は、生成物の蒸留によって分離される。このために、塔底部を蒸気で加熱する。塔底温度は、その際、好ましくは約50〜約80℃、特に約60〜約75℃であり、約120℃未満の壁温度である。
【0059】
塔底部で生ずる材料は、好ましくは連続的に排出され、1つの熱交換器もしくは複数の熱交換器のカスケードを介して、約40〜約80℃、好ましくは約40〜約60℃、特に有利には約50〜60℃の範囲に冷却される。
【0060】
主にメタクリル酸エステル、ヒドロキシイソ酪酸エステル、メタクリル酸及び安定剤成分を含有する前記材料は、引き続き貯蔵容器を介して、例えば廃棄され、又は別方面の使用に供される。多くの場合に、塔底部で得られる材料はエステル化反応に返送される場合に、好ましいと見なされる。例えば、その際に、塔底部からの材料を、第一のタンクに返送する。そのことから、できる限り経済的な様式で、かつできる限り高い収率に関して、塔底部で得られる高沸点化合物をエステル化反応に返送することは好ましい。
【0061】
塔頂部で、蒸留により精製されたメタクリル酸エステルを取り出し、1つの熱交換器もしくは2つ以上の熱交換器のカスケードを介して冷却する。その際、排出蒸気の熱を、水冷式の熱交換器もしくはブライン冷却式の熱交換器又は両方の組み合わせに排出することができる。幾つかの場合に、蒸留塔からの排出蒸気を、水冷により運転される2つ以上の並列接続された熱交換器に移送することが有効であると判明している。水冷式の熱交換器からの凝縮されていない部分を、例えば1つのブライン冷却式の熱交換器もしくは2つ以上のブライン冷却式の熱交換器であって直列もしくは並列に配置されていてよいものに導入することができる。該熱交換器から得られた凝縮物は、回収容器に導通され、ポンプによって更なる1つの熱交換器又は2つ以上の更なる熱交換器のカスケードを介して緩衝容器に供給される。凝縮物流は、その際、例えば、1もしくは2つの水冷式の熱交換器及び1もしくは2つのブライン冷却式の熱交換器のカスケードを介して、約0〜約20℃、好ましくは約0〜約15℃、特に好ましくは約2〜10℃の範囲の温度に冷却される。
【0062】
該凝縮物流から、部分流を取り出し、それを塔頂部を介して蒸留塔へと返送する。凝縮物流の蒸留塔への供給は、その際、基本的に任意の様式で、例えば供給機を介して行うことができる。しかし、凝縮物流の一部を塔頂の上方で排出蒸気導管に供給し、例えば噴霧導入することが好ましいことがある。更に、この供給によって安定剤を塔頂部に入れることが好ましい。
【0063】
塔中への返送が予定される凝縮物の更なる部分流は、例えば排出蒸気導管への導入前に分岐させ、直接的に塔頂部に導入することができる。ここでも、この供給によって安定剤を塔頂部に入れることが好ましい。塔頂部への導入は、その際、例えば、塔頂部の内側で凝縮物を、メタクリル酸エステルの重合を行うことができる静止帯域が塔頂部内に形成されないように噴霧するように行うことができる。更に、該塔に返送される凝縮物部分流に、重合回避のために安定剤を供給する場合に好ましいことがある。そのことは、例えば、塔頂部の噴霧のために予定される凝縮物部分流に、相応量の重合抑制剤を安定剤として供給することによって行うことができる。その際に、幾つかの場合に、凝縮物部分流を、安定剤の添加後であって、塔頂部に入る前に、好適な混合装置、好ましくは静的混合機を通過させて、できる限り均一な安定剤の分布を凝縮物部分流に達成する場合に好ましいと見なされる。
【0064】
精製方法の範囲内で生ずる凝縮できない気体状の物質は、例えば廃棄に供される。
【0065】
緩衝容器中に存在する粗製生成物は、ブライン式冷却器によって、約0〜約20℃の温度、好ましくは0〜約15℃の温度、特に約2〜10℃の範囲の温度に保持される。
【0066】
場合により更なる不純物を生成物から除去し、そして純粋なメタクリル酸エステルに至らしめるために、該生成物を、さらに吸着による精製段階に供することができる。その際、例えば、純粋生成物を全体でもしくは純粋生成物の少なくとも一部を、モレキュラーシーブによって更に精製する場合に有効であると実証された。特に酸性の不純物、特に製造方法において形成されたギ酸は、簡単に生成物流から除去することができる。その際に、更に幾つかの場合に、生成物流を、吸着による精製段階の通過後に、なおも1つ以上のフィルタを通過させて、場合により生成物中に含まれる固体を除去する場合に有効であると実証されている。
【0067】
後処理の範囲において生ずる物質流は、主に重合可能な化合物を含む。本文の範囲で既に多く記載されるように、静止帯域の形成を抑えるために、ここに記載される方法の場合にも、メタクリル酸エステルと接触されるプラントの部分に恒常的にメタクリル酸エステルを流通させる場合に好ましいことが判明している。ここに説明される方法の更なる実施態様の範囲において、従って、メタクリル酸の部分流を、緩衝容器後であるが、吸着による精製段階の前で取り出して、蒸留塔に由来する排出蒸気を収容する熱交換器をフラッシングする。
【0068】
精製段階の範囲において得られた生成物を、引き続き約−5℃〜約20℃の範囲で、好ましくは約0〜約15℃の範囲で、特に有利には約2〜10℃の範囲で精製段階から取り出す。
【0069】
消費された酸のストリッピング
ここで説明される方法の範囲においては、例えば、該方法で生ずる消費された硫酸を精製に供して、引き続き再びプロセスに返送することが合理的なことがある。その際、例えばエステル化から得られる消費された硫酸を有する流れは、浮選容器中で蒸気と一緒に吹き込むことできる。その際、得られた固体の少なくとも一部は、液体の表面に堆積されることがあり、その際、この堆積された固体を循環させることができる。排出蒸気は、引き続き熱交換器、好ましくは水冷式の熱交換器中で冷却し、エステル反応へと返送される。
【0070】
その際、幾つかの場合には、熱交換器中での腐食の低下のためと、冷却作用の更なる改善のために、エステル化の範囲において製造されたメタクリル酸エステルの精製に際して洗浄によって得られる、水と有機化合物との混合物を、熱交換器へと、該熱交換器の頂部がこの混合物で噴霧されるように導入する場合に好ましいと見なされる。腐食低下作用と、熱交換器中での酸の冷却の他に、この措置は、更なる利点を有する。エステルに由来する材料(水と大部分がメタノールからなる混合物)を、この方法に由来するメタクリル酸及びメタクリル酸エステルと一緒に、エステル化プロセスに返送する。ストリッパ中で、上記の浮選によって酸と固体の混合物が得られる。これは、その分離の後に、更なる任意の使用もしくは廃棄に供される。例えば、得られた混合物を分解プラント中で燃焼させ、それにより再び硫酸を生成させ、プロセスで使用されるエネルギーの一部を回収することも可能である。
【0071】
そのストリッピングで生ずる凝縮できない気体状の化合物は、任意の更なる使用に供給されるか、又は廃棄される。
【0072】
ここに記載される、固体を消費された酸から除去するためのプラント並びにエステル化プロセスからの材料をまさにこのプロセスに返送するためのプラントは、運転信頼性の理由から、例えば二回実行することができる。ここで、2つ以上の浮選容器が、時間的にずらして使用することができる。この容器中で固体が沈殿されうるので、それぞれの浮選容器を使用せずに除去することが好ましい。
【0073】
更に、本発明は、本発明による方法によって得られたメタクリル酸もしくは本発明による方法によって得られたメタクリル酸エステルを、繊維において、フィルムにおいて、塗料において、成形材料において、成形体において、紙用助剤において、皮革助剤において、凝固剤において、及び穿孔助剤において用いる使用に関する。さらに、本発明は、本発明による方法によって得られるメタクリル酸もしくは本発明による方法によって得られるメタクリル酸エステルを基礎とする、繊維、フィルム、塗料、成形材料、成形体、紙用助剤、皮革助剤、凝固剤及び穿孔助剤に関する。
【0074】
以下に、種々の方法の構成要素を説明するが、それらは、基本的に単独でもしくは2つ以上の上述の方法の構成要素からなる集合として本発明と組み合わせることができる。場合により、本文の範囲において説明された方法の構成要素が、組み合わされて全体としてメタクリル酸のエステルの製造方法又はメタクリル酸の製造方法となるように、本発明と組み合わされる場合に好ましことがある。しかしながら、大抵は好ましい効果は、本発明の対象をそのままで他の周囲状況で使用するかもしくは本願で説明された方法の構成要素の一部とのみ組み合わせる場合に達成できることも指摘される。
【0075】
アセトンシアンヒドリンの製造
この方法の構成要素において、アセトンシアンヒドリンは、一般に公知の方法(例えばウールマンの工業化学事典第4版第7巻(Ullmanns Enzyklopaedie die technischen Chemie,4.Auflage,Band 7)を参照)に従って製造される。しばしば、その際、反応相手としてアセトン及び青酸が使用される。反応は、発熱反応である。前記反応の範囲において形成されるアセトシアンヒドリンの分解に抵抗するために、通常は、反応熱を好適な装置によって排出する。該反応は、その場合に基本的に、回分法もしくは連続法として行うことができ、連続様式が好ましい場合には、該反応は、しばしば、相応して取り付けられているループ型反応器中で行われる。
【0076】
高い収率で所望の生成物をもたらす様式の主たる特徴は、しばしば、十分な反応時間で、反応生成物を冷却し、かつ反応の平衡を反応生成物の方向へと動かすことにある。更に、該反応生成物は、好ましい全収率のために、後の後処理において出発物質へと分解することを防止するために、しばしば相応の安定剤と混合される。
【0077】
反応相手であるアセトンと青酸の混合は、基本的に実質的に任意の様式で行うことができる。混合の様式は、特に、不連続な様式、例えばバッチ式反応器での様式か、連続的な様式、例えばループ型反応器での様式のどちらが選択されるかに依存する。
【0078】
基本的に、アセトンを、洗浄塔を有する受容器を介して反応へと供給することが好ましいことがある。アセトンと青酸を含有する排気を導くガス抜き導管を、ここで例えば前記の受容器中に導くことができる。前記受容器に接続されている洗浄塔において、該受容器から出て行く排気をアセトンで洗浄することができ、それによって青酸はその排気から除去され、プロセスへと返送することができる。このために、例えば前記受容器から反応へと導入されるアセトン量の一部は、部分流で、冷却器を介して、好ましくはブライン冷却器を介して、洗浄塔の塔頂へと導かれ、こうして所望の結果が達成される。
【0079】
生産されるべき最終生成物の量の程度に応じて、アセトンを、1つだけよりも多くの受容器から反応へと供給することが好ましいことがある。その際、該2つ以上の受容器の各々は、相応の洗浄塔を有してよい。しかしながら、多くの場合には、該受容器の1つが相応の洗浄塔を備えているだけで十分である。しかしながら、この場合に、しばしば、相応する排気を導く導管であってアセトン及び青酸を輸送しうる導管が、前記の受容器あるいは洗浄塔を介して導かれることに意義がある。
【0080】
前記受容器中でのアセトンの温度は、基本的に、実質的に任意の範囲内であってよいが、それは、相応の温度で液体の状態で存在する場合に限る。しかしながら、好ましくは、前記受容器中の温度は、約0℃〜約20℃である。
【0081】
洗浄塔において、洗浄のために使用されるアセトンは、相応の冷却器を介して、例えばブラインを用いるプレート型冷却器を介して、約0〜約10℃の温度に冷却される。洗浄塔へ入る際のアセトンの温度は、従って、好ましくは例えば、約2℃〜約6℃である。
【0082】
反応の範囲において必要とされる青酸は、液状形もしくは気体形のいずれかで該反応に導入されうる。それは、例えばBMA法もしくはアンドリュッソー(Andrussow)法からの粗製ガスであってよい。
【0083】
シアン化水素は、例えば液化させることができ、例えば相応の冷却ブラインを使用することによって液化させることができる。液化された青酸の代わりに、コークス炉ガスを使用することができる。ここで、例えばシアン化水素を含有するコークス炉ガスは、炭酸カリウムでの洗浄の後に、連続的に向流で、10%の水を含有するアセトンで洗浄され、かつアセトンシアンヒドリンへの反応は、塩基性触媒の存在下で2つのカスケード接続されたガス洗浄塔で実施することができる。
【0084】
更なる一実施態様においては、シアン化水素及び不活性ガスを含有するガス混合物、特にBMA法もしくはアンドリュッソー法からの粗製ガスとアセトンとを、塩基性触媒及びアセトンシアンヒドリンの存在下で気−液−反応器中で反応させることができる。
【0085】
ここに記載される方法の範囲においては、好ましくはBMA粗製ガス又はアンドリュッソー粗製ガスが使用される。上述の通常のシアン化水素の製造方法から得られるガス混合物は、そのままでも又は酸洗浄の後にも使用することができる。メタン及びアンモニアから実質的に青酸及び水素が形成されるBMA法からの粗製ガスは、一般に、22.9容量%のHCN、71.8容量%のH
2、2.5容量%のNH
3、1.1容量%のN
2、1.7容量%のCH
4を含有する。公知のアンドリュッソー法においては、メタン及びアンモニア及び空気酸素から青酸及び水が形成される。アンドリュッソー法からの粗製ガスは、酸素源として酸素が使用された場合に、一般に、8容量%のHCN、22容量%のH
2、46.5容量%のN
2、15容量%のH
2O、5容量%のCO、2.5容量%のNH
3及びそれぞれ0.5容量%のCH
4とCO
2を含有する。
【0086】
酸洗浄されていないBMA法もしくはアンドリュッソー法からの粗製ガスを使用する場合に、該粗製ガス中に含まれるアンモニアは、しばしば、反応用の触媒として作用する。該粗製ガス中に含まれるアンモニアは、しばしば、触媒として必要とされる量を超過し、従って安定化のために使用される硫酸の高い損失をもたらしうるので、かかる粗製ガスは、しばしば、そこからアンモニアを排除するために酸洗浄に供される。しかし、かかる酸洗浄された粗製ガスが使用される場合には、その際に、好適な塩基性触媒を触媒量で反応器へと添加せねばならない。原則的に、その場合に、公知の無機もしくは有機の塩基性化合物が触媒として機能しうる。
【0087】
気体形もしくは液状形のシアン化水素あるいはシアン化水素を含有する混合物及びアセトンは、連続的な操作様式の範囲においては、連続的にループ型反応器へと供給される。該ループ型反応器は、その際、アセトンを供給するための少なくとも1つの手段もしくは2つ以上のかかる手段、液状もしくは気体状の青酸の供給のための少なくとも1つの手段もしくは2つ以上のかかる手段、並びに触媒の供給のための少なくとも1つの手段を含む。
【0088】
触媒としては、基本的に、任意のアルカリ性化合物、例えばアンモニア、苛性ソーダ液もしくは苛性カリ液であって、アセトン及び青酸のアセトンシアンヒドリンへの反応を触媒しうる化合物が適している。しかし、触媒として、有機触媒、特にアミンが使用される場合に、好ましいことが判明している。例えば、第二級アミンもしくは第三級アミン、例えばジエチルアミン、ジプロピルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミンなどが適している。
【0089】
記載される方法の構成要素の範囲において使用できるループ型反応器は、更に、なおも少なくとも1つのポンプもしくは2つ以上のポンプと、少なくとも1つの混合装置もしくは2つ以上のかかる混合装置とを有する。
【0090】
ポンプとしては、基本的には、ループ型反応器における反応混合物の循環を保証するのに適したあらゆるポンプが適している。
【0091】
混合装置としては、可動エレメントを有する混合装置も、また、固定された流動抵抗が予定される、いわゆる静的混合機も好適である。静的混合機を使用する場合には、例えば少なくとも約10バール、例えば少なくとも約15バール又は少なくとも約20バールの運転時過圧を、運転条件下で実質的な機能的制限無く可能にする混合機が適している。相応の混合機は、プラスチックもしくは金属から成っていてよい。プラスチックとしては、例えばPVC、PP;HDPE、PVDF、PFAもしくはPTFEが適している。金属製混合機は、例えばニッケル合金、ジルコニウム、チタンなどから成っていてよい。同様に、例えば方形混合機が適している。
【0092】
触媒の添加は、好ましくはループ型反応器において、ポンプの後で、かつループ型反応器中に存在する混合エレメントの前で行われる。触媒は、記載される反応の範囲において、例えば、全反応が、最大で8のpH値で、特に最大で約7.5もしくは約7のpH値で進行する量で使用される。反応に際してのpH値が、約6.5〜7.5の範囲内、例えば約6.8〜約7.2の範囲内で変動する場合に好ましいことがある。
【0093】
記載される方法の範囲において、ポンプの後でかつ混合装置の前でループ型反応器中に触媒を添加する代わりに、該触媒をアセトンと一緒にループ型反応器中に供給することも可能である。かかる場合には、ループ型反応器への供給前に、アセトンと触媒を相応して混合させるように努めることが好ましいことがある。相応の混合は、例えば可動部を有する混合機の使用によって又は静的混合機の使用によって行うことができる。
【0094】
記載される方法の範囲において運転様式としてループ型反応器中での連続的な操作様式が選択される場合に、反応混合物の状態を、逐一のもしくは継続的な分析によって調査することが適切なことがある。そのことは、場合により、反応混合物中の状態変化にも迅速に対応できるという利点を提供する。更に、ここで例えば、反応相手は、収率損失を最小限にするために、できる限り正確に配量することができる。
【0095】
相応の分析は、例えば反応器ループにおけるサンプル採取によって行うことができる。好適な分析方法は、例えばpH測定、発熱性測定又は好適な分光分析法による反応混合物の組成測定である。
【0096】
特に、転化率制御、品質面及び安全性の範囲において、しばしば、反応混合物中の転化率を、該反応混合物から排出される熱を測定し、理論上放出される熱と比較することが有効であると実証されている。
【0097】
実際の反応は、ループ型反応器の好適な選択に際して、基本的に、該ループ型反応器内部に配置された管系において行うことができる。しかしながら、該反応は発熱反応なので、収率損失を回避するために、十分な冷却あるいは反応熱の十分な排出を顧慮するべきである。該反応を、熱交換器内で、好ましくは管束型熱交換器内で行われる場合に、しばしば好ましいと見なされる。生産されるべき生成物量に応じて、相応の熱交換器の容量は様々に選択することができる。大工業的な方法のためには、特に、約10m
3〜約40m
3の容量を有する熱交換器が特に適していると見なされる。好ましくは使用される管束型熱交換器は、液体が流過するジャケット内に液体が流過する管束を有する熱交換器である。管直径、充填物密度などに応じて、両方の液体間での熱伝達を、相応して調節することができる。記載される方法の範囲においては基本的に、反応混合物を熱交換器へと管束自体の中で導き、そして反応を該管束内部で行い、その際、熱を、該管束からジャケット液体へと放出させるという趣旨で該反応を行うことが可能である。
【0098】
しかしながら同様に、反応混合物を熱交換器のジャケットに導き、一方で、冷却のために使用される液体を管束内部で循環させることが実践的であり、かつ多くの場合に合理的であると見なされる。その際、多くの場合には、反応混合物を、より高い滞留時間を達成し、かつ流動抵抗を介した、好ましくはそらせ板を介したより良好な完全混和のために、ジャケット内で分配した場合に好ましいと見なされる。
【0099】
ジャケットの容量と管束の容量との比率は、その際、反応器の設計に応じて、約10対1〜約1対10であってよく、好ましくはジャケットの容量は、管束の容量(管の内容量に対する)よりも大きい。
【0100】
反応器からの熱放出は、相応の冷却剤で、例えば水で、反応温度がコリドー内で約25℃〜約45℃、特に約30℃〜約38℃、特に約33℃〜約35℃であるように調整される。
【0101】
ループ型反応器から、連続的に生成物が排出される。該生成物は、上述の反応温度の範囲内の温度、例えば約35℃の温度を有する。該生成物は、1つ以上の熱交換器を介して、特に1つ以上のプレート型熱交換器を介して冷却される。その際、例えばブライン冷却が使用される。冷却後の生成物の温度は、約0〜10℃、特に1〜約5℃であることが望ましい。生成物は、有利には緩衝機能を有する貯蔵容器中に移送される。更に、貯蔵容器中の生成物は、例えば貯蔵容器から、好適な熱交換器への、例えばプレート型熱交換器への部分流の恒常的な排出によって更に冷却し、あるいは好適な貯蔵温度に保つことができる。該貯蔵容器において後反応を行えることは十分に可能である。
【0102】
生成物を貯蔵容器に返送することは、基本的に任意の様式で行うことができる。しかしながら、幾つかの場合に、生成物を、貯蔵容器内で相応の貯蔵された生成物の完全混和が行われるように、1つ以上のノズルからなるシステムを介して貯蔵容器へと返送することが好ましいということが明らかになった。
【0103】
貯蔵容器から、更に、連続的に、生成物は安定化容器へと排出される。そこで、該生成物は、好適な酸と、例えばH
2SO
4と混合される。その際、触媒は失活され、該反応混合物は、約1〜約3のpH値に、特に約2のpH値に調整される。酸としては、特に硫酸が適しており、例えば約90〜約105%の、特に約93〜約98%のH
2SO
4の含有率を有する硫酸が適している。
【0104】
安定化された生成物は、安定化容器から取り出され、精製段階に移送される。その際、取り出された安定化された生成物の一部を、例えば、容器の十分な完全混和が1つ以上のノズルからなる系によって保証されるように、安定化容器に返送することができる。
【0105】
ACH−後処理
本発明との関連で使用できる更なる方法の構成要素の範囲においては、前方に位置する工程で、例えばアセトンと青酸との反応から得られたアセトンシアンヒドリンは、蒸留による後処理に供される。その際、安定化された粗製アセトンシアンヒドリンは、相応の塔を介して低沸点成分が分離される。好適な蒸留方法は、例えば1つの塔のみを介して行うことができる。しかし同様に、粗製アセトンシアンヒドリンの相応の後精製の範囲において、2つ以上の蒸留塔の組合せを、流下薄膜型蒸発器と組み合わせて使用することも可能である。更に、2つ以上の流下薄膜型蒸発器もしくは2つ以上の蒸留塔を互いに組み合わせることもできる。
【0106】
粗製アセトンシアンヒドリンは、一般に、約0〜約15℃の温度で、例えば約5〜約10℃の温度で貯蔵から蒸留へと至る。基本的に、粗製アセトンシアンヒドリンは、直接的に塔へと導入することができる。しかしながら、幾つかの場合に、少なくとも粗製の冷却されたアセトンシアンヒドリンが、熱交換器を介して、既に蒸留により精製された生成物の一部の熱を受け取る場合に有効であると実証された。従って、本願記載の方法の更なる実施態様の範囲において、粗製アセトンシアンヒドリンは、熱交換器を介して約60〜80℃の温度に加熱される。
【0107】
アセトンシアンヒドリンの蒸留による精製は、10個より多いトレイを有する蒸留塔を介してもしくは2個以上の相応の好適な蒸留塔のカスケードを介して行われる。塔底物の加熱は、好ましくは蒸気で行われる。塔底温度は、140℃の温度を超過しない場合に好ましいことが明らかとなり、良好な収率及び良好な精製は、塔底温度が約130℃以下又は約110℃以下である場合に達成できる。温度の表示は、その際、塔底物の壁温度に対するものである。
【0108】
粗製のアセトンシアンヒドリンは、塔の上三分の一において塔本体に供給される。蒸留は、好ましくは減圧下で、例えば約50〜約900ミリバールで、特に約50〜約250ミリバールで、かつ良好な成果をもって50〜約150ミリバールで実施される。
【0109】
塔頂部では、気体状の不純物、特にアセトン及び青酸が取り出され、分離された気体状の物質は、熱交換器もしくは2個以上の熱交換器のカスケードを介して冷却される。この場合に、好ましくは温度約0〜約10℃でブライン冷却が使用される。その際、気体状の排出蒸気の内容物は、凝縮するための設備に入れられる。第一の凝縮段階は、例えば常圧で行うことができる。しかしながら、前記の第一の凝縮段階を減圧下で、好ましくは蒸留の範囲で優勢な圧力で行うことは同様に可能であり、かつ幾つかの場合には好ましいものと見なされる。凝縮物は、冷却された回収容器中に転送され、そこで約0〜約15℃の温度で、特に約5〜約10℃の温度で回収される。
【0110】
第一の凝縮段階の範囲において、凝縮されない気体状の化合物は、真空ポンプを介して真空室から取り出される。この場合に、基本的に任意の真空ポンプを使用できる。しかしながら多くの場合に、その構造に基づきガス流中に液状の不純物の侵入はもたらされない場合に好ましいと見なされる。好ましくは、ここで従って例えば、乾式に運転される真空ポンプが使用される。
【0111】
ポンプの圧力側に漏れ出るガス流は、更なる熱交換器に導かれ、それは好ましくはブラインによって約0〜約15℃の温度で冷却される。その際に凝縮された内容物は、同様に、既に真空条件下で得られた凝縮物を収容する回収容器に回収される。真空ポンプの圧力側で行われる凝縮は、例えば熱交換器によって、しかしまた2つ以上の直列的並列的に配置された熱交換器のカスケードを用いても実施できる。この凝縮段階の後に残留物気体状物質は、排出され、そして任意の更なる利用、例えば熱的利用に供される。
【0112】
回収された凝縮物は、同様に任意に更に使用することができる。しかしながら、経済的観点で、該凝縮物をアセトンシアンヒドリンの製造のための反応に返送することは、更に好ましいものと見なされる。それは、好ましくは1つ以上の、ループ型反応器への到達が可能な位置で行われる。凝縮物は、アセトンシアンヒドリンの製造を妨害しない限り、基本的に任意の組成を有してよい。多くの場合に、大部分の凝縮物の量は、しかし、例えば約2:1〜約1:2のモル比で、しばしば約1:1の比率で、アセトンと青酸とから成る。
【0113】
蒸留塔の塔底部から得られるアセトンシアンヒドリンは、まず、第一の熱交換器を介して、供給される冷えた粗製アセトンシアンヒドリンによって約40〜約80℃の温度に冷却される。引き続き、アセトンシアンヒドリンは、少なくとも1つの更なる熱交換器を介して、約30〜約35℃の温度に冷却され、そして場合により中間貯蔵される。
【0114】
アミド化
しばしばメタクリル酸もしくはメタクリル酸のエステルの製造において予定されている更なる方法の構成要素の範囲において、アセトンシアンヒドリンは加水分解に供される。その際、種々の温度段階で、一連の反応後に生成物としてメタクリルアミドが形成される。
【0115】
該反応は、当業者に公知のようにして、濃縮された硫酸とアセトンシアンヒドリンとの間の反応によってもたらされる。該反応は発熱反応なので、好ましくは反応熱は該系から排出される。
【0116】
該反応は、またここで再び、回分法もしくは連続法で実施することもできる。後者が、多くの場合に好ましいと見なされる。該反応を連続法の範囲で実施する限りは、ループ型反応器の使用が有効であると実証される。該反応は、例えば1つだけのループ型反応器中で行うことができる。しかし、該反応を2つ以上のループ型反応器のカスケードで実施する場合に好ましいことがある。
【0117】
好適なループ型反応器は、記載される方法の範囲においては、アセトンシアンヒドリンの1つ以上の供給位置、濃縮された硫酸の1つ以上の供給位置、1つ以上のガス分離器、1つ以上の熱交換器及び1つ以上の混合機を有する。
【0118】
アセトンシアンヒドリンを硫酸により加水分解してメタクリルアミドとすることは、既に記載したように発熱反応である。該反応の範囲で生ずる反応熱は、しかし少なくとも十分に該系から取り出さねばならない。それというのも、反応に際して温度が高まると収率が下がるからである。確かに、基本的に、相応の熱交換器を使用して、反応熱の迅速かつ全面的な排出を達成することができる。しかしながら、該熱交換器での相応の交換のために十分な熱伝達が必要なので、該混合物が極めて冷却されすぎるという欠点も伴うことがある。温度が下がると混合物の粘度も激しく下がるので、一方でループ型反応器中での循環が困難になり、他方で、該系から反応エネルギーを十分に排出することがもはや保証できなくなる。
【0119】
更に、反応混合物の低すぎる温度は、熱交換器での反応混合物の内容物の結晶化をもたらすことがある。それによって、熱伝達は更に粗悪になり、それによって明らかな収率減退が記録されることとなる。更に、ループ型反応器は、最適な量の反応物を充填できないので、全体的に方法効率に問題がある。
【0120】
本方法の実施態様の範囲において、アセトンシアンヒドリンの流れから、一部の、好ましくは約2/3ないし約3/4の体積流量が第一のループ型反応器に供給される。好ましくは、第一のループ型反応器は、1つ以上の熱交換器、1つ以上のポンプ、1つ以上の混合エレメント及び1つ以上のガス分離器を有する。第一のループ型反応器を通過する循環流は、好ましくは約100〜450m
3/hの、好ましくは200〜400m
3/hの、更に好ましくは約250〜35m
3/hの範囲である。第一のループ型反応器に続く少なくとも1つの更なるループ型反応器において、循環流は、好ましくは約40〜450m
3/h、好ましくは50〜400m
3/hの範囲、更に好ましくは約60〜350m
3/hの範囲である。更に、熱交換器にわたる温度差としては、約1〜10℃が好ましく、その際、約2〜7℃が特に好ましい。
【0121】
アセトンシアンヒドリンの供給は、基本的に任意の位置でループ型反応器へと行うことができる。しかしながら、混合エレメント、例えば可動部を有する混合機もしくは静的混合機への供給を行う場合に好ましいと見なされる。硫酸の供給は、好ましくはアセトンシアンヒドリンの添加前に行われる。しかし、他にも同様に、硫酸を任意の位置でループ型反応器へと供給することも可能である。
【0122】
ループ型反応器中の反応物の比率は、過剰の硫酸が存在するように制御される。硫酸の過剰は、内容物のモル比に対して、第一のループ型反応器において、約1.8:1〜約3:1であり、かつ最後のループ型反応器において、約1.3:1〜約2:1である。
【0123】
幾つかの場合に、係る過剰な硫酸でループ型反応器中の反応を行うことが好ましいと見なされる。ここで例えば硫酸は、溶剤として用いられ、該反応混合物の粘度を低く保持し、それによって高い反応熱の排出と反応混合物の低い温度を保証することができる。そのことは、明らかな収率上の利点をもたらしうる。該反応混合物中の温度は、約90〜約120℃である。
【0124】
熱排出は、1つ以上の熱交換器によってループ型反応器中で保証される。その際、熱交換器が好適なセンサを冷却出力の調節のために有し、こうして反応混合物の激しすぎる冷却を上述の理由から防ぐことが好ましいものと見なされる。ここで、例えば、熱伝達を、1もしくは複数の熱交換器で点状にもしくは連続的に測定し、そしてそれに熱交換器の冷却出力を適合させることが好ましいことがある。そのことは、例えば冷却剤自体を介して行うことができる。また同様に、反応物の添加の相応の変更によって、かつより多くの反応熱の生成によって、相応の反応混合物の加熱を達成することもできる。両方の手法の組み合わせも考慮できる。ループ型反応器は、更に、少なくとも1つのガス分離器を有することが望ましい。該ガス分離器を介して、一方でループ型反応器から、連続的に形成された生成物が取り出される。他方で、該反応の範囲において形成されたガスは、ここで反応室から抜き出すことができる。ガスとして、主に一酸化炭素が形成される。ループ型反応器から取り出された生成物は、好ましくは第二のループ型反応器に移送される。この第二のループ型反応器では、第一のループ型反応器中の反応によって得られた硫酸とメタクリル酸アミドを含む反応混合物を、残りのアセトンシアンヒドリンの部分流と反応させる。この場合に、第一のループ型反応器からの過剰の硫酸もしくは過剰な硫酸の少なくとも一部は、アセトンシアンヒドリンと反応して、更にメタクリル酸アミドを形成する。2つ以上のループ型反応器での反応の実施は、第一のループ型反応器中での硫酸の過剰に基づいて、反応混合物のポンプ圧送可能性と、それによる熱伝達性と、最後に収率が改善されるという利点を有する。第二のループ型反応器においては、再び、少なくとも1つの混合エレメント、少なくとも1つの熱交換器及び少なくとも1つのガス分離器が配置されている。第二のループ型反応器中の反応温度は、同様に、約90〜約120℃である。
【0125】
反応混合物のポンプ圧送可能性、熱伝達性及びできる限り低い反応温度の問題は、それぞれの更なるループ型反応器において、第一のループ型反応器と全く同じようにある。従って、好ましくは、第二のループ型反応器は、冷却出力を相応のセンサによって制御できる熱交換器を有する。
【0126】
アセトンシアンヒドリンの供給は、更に、好適な混合エレメント中で、好ましくは静的混合機中で行われる。
【0127】
第二のループ型反応器のガス分離器から、生成物が取り出され、そして反応を完全なものとしかつメタクリル酸アミドの形成のために、約140〜約180℃の温度に加熱される。
【0128】
その加熱は、好ましくは、最大温度が、できる限り短い時間の間だけ、例えば約1分〜約30分の時間にわたって、特に約2〜約8分もしくは約3〜約5分の時間にわたって達成されるように実施される。そのことは、基本的に任意の装置において、かかる温度の達成のために、そのように短い時間にわたり行うことができる。例えば、エネルギー供給は、連続的な経路で電気エネルギーによってもしくは蒸気によって行うことができる。しかしながら同様に、エネルギーを電磁線、例えばマイクロ波によって供給することが可能である。
【0129】
種々の場合に、加熱工程を、2段階以上の螺旋管の配置を有する、好ましくは少なくとも二重の反転配置で存在してよいものを有する熱交換器中で実施することが好ましいものと見なされる。その際、反応混合物は、迅速に、約140〜180℃の温度に加熱される。
【0130】
該熱交換器は、例えば1つ以上のガス分離器と組み合わせることができる。ここで、例えば、反応混合物を、熱交換器中の第一の螺旋管を出た後にガス分離器に導くことが可能である。その際に、例えば反応の間に生成した気体状の成分を反応混合物から分離することができる。同様に、反応混合物を、第二の螺旋管を出た後にガス分離器で処理することが可能である。更に、両方の位置で、第一の螺旋管を出た後でも、第二の螺旋管を出た後でも、反応混合物をガス分離器で処理することが好ましいものと見なされる。
【0131】
こうして得られるアミド溶液は、一般に100℃より高い温度、通常は約140〜180℃の温度を有する。
【0132】
アミド化の範囲において生ずる気体状の化合物は、基本的に任意のように廃棄されるか、又は更なる処理に供給される。しかし、幾つかの場合には、相応のガスを1つの輸送導管で、連続的にか、又は必要であれば場合により圧力をもって、例えば蒸気圧をもって吹き込み、こうして更なる輸送ができるように一緒にする場合に好ましいことがある。
【0133】
上述の事項を、以下で、制限されない図面をもとに例示的に説明する。