【実施例】
【0033】
以下に、本発明の実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、本明細書において特に断わらない限り、部及び%はそれぞれ重量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。重量部及び重量%を示す。
【0034】
〈実験1:アクリルエマルジョン系粘着剤を用いた粘着シート〉
キャスト塗工紙の製造
[実施例1]
1級カオリン70部、柱状炭酸カルシウム30部、ポリアクリル酸ソーダ系分散剤0.2部を添加し、カウレス分散機を用いて水に分散し、固形分濃度60%の顔料スラリーを調製した。この顔料スラリーに消泡剤としてトリブチルフォスフェート0.2部、接着剤としてアンモニアを用いて溶解したカゼイン水溶液(固形分濃度18%)6部及びブタジエン含有量が55%であるスチレン・ブタジエン系共重合体ラテックス21部を加え、離型剤としてステアリン酸カルシウム2部、ノニオン系乳化剤0.6部を配合し、最後に水及びアンモニアを加えて固形分濃度48%、pH10.0のキャスト塗工液を調製した。
【0035】
また、凝固液として、絶乾当たりギ酸カルシウム100%に対し酸化亜鉛を40%、ギ酸41%を配合し、離型剤としてワックスエマルジョン0.3部及びノニオン系乳化剤0.2部添加し、最終的に固形分濃度15%のギ酸カルシウムを主成分とする凝固液を調製した。
【0036】
また、鏡面ドラムにはステアリン酸(炭素数17)を塗布し、バフ研磨を行った。
上記の方法により調製した塗工液を用い、坪量110g/m
2の中性原紙(広棄樹晒しクラフトパルプ単独配合、填料として炭酸カルシウムを原紙重量の5%含有)の片面に、乾燥塗工量が21g/m
2となるように塗工液をロールコータで塗工し、次いで凝固液に接触させて塗工層を凝固させた。次いで、直径750mmのプレスロールと表面温度105℃、直径3000mmの鏡面ドラム(キャストドラム)にプレス圧130kg/cmで圧接・乾燥し、塗工層を乾燥している間に、キャスト塗工面の反対面に表面サイズ剤(スチレン系ポリマー:SS2710、星光PMC社製)を乾燥塗布量が0.7g/m
2となるようにロール塗布して乾燥した後、テークオフロールでキャストドラムから剥離して粘着シート用キャスト塗工紙を製造した。
【0037】
[実施例2]
実施例1において、キャスト塗工面の反対面に耐水化剤(変性ポリアミド系樹脂:スミレーズレジンSPI−106N、住友化学社製)を用いた以外は、実施例1と同様に粘着シート用キャスト塗工紙を製造した。
【0038】
[実施例3]
実施例1において、キャスト塗工面の反対面に耐水化剤(変性アミン樹脂:スミレーズレジンSPI−102A、住友化学社製)を乾燥塗布量が0.9g/m
2となるようにした以外は、実施例1と同様に粘着シート用キャスト塗工紙を製造した。
【0039】
[比較例1]
実施例1において、キャスト塗工面の反対面に薬液を塗布しなかった以外は、実施例1と同様に粘着シート用キャスト塗工紙を製造した。
【0040】
[比較例2]
実施例1において、キャスト塗工面の反対面に紙力増強剤(両性アクリル性樹脂:ポリストロン678、荒川化学工業社製)を用いた以外は、実施例1と同様に粘着シート用キャスト塗工紙を製造した。
【0041】
[比較例3]
実施例1において、キャスト塗工面の反対面に紙力増強剤(ポリビニルアルコール:PVA217、クラレ社製)を乾燥塗布量が0.9g/m
2となるようにした以外は、実施例1と同様に粘着シート用キャスト塗工紙を製造した。
【0042】
粘着シートの製造
上記粘着シート用キャスト塗工紙を、温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下で24時間調湿した。その後、上記キャスト塗工紙にアクリルエマルジョン系粘着剤層を設けて、粘着シートを製造した。具体的には、アクリルエマルジョン系強粘着剤(BPW5175、東洋インキ製造社製)を乾燥後の塗布量が16g/m
2になるように剥離紙(SP−8K、リンテック社製)上に設け、さらに粘着剤面に別の剥離紙(SP−8LK、リンテック社製)を貼り合わせて得た両面テープを用い、その両面テープの片面の剥離紙を剥がし、両面テープの粘着剤面をキャスト塗工紙のキャスト面の裏側に貼り付けて粘着シートを製造した。
【0043】
粘着性評価
JIS−Z−0237の常態粘着力の測定方法に準拠し、下記の二つの条件で調整した後の粘着力をそれぞれ測定した(単位:N/25mm)。すなわち、上記粘着シートを、温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下で24時間調湿した後(条件1)、または、温度60℃、湿度95%RHの雰囲気下に3日間調湿した後に温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下で24時間さらに調湿した後(条件2)、粘着シートのもう一方の剥離紙を剥がし、粘着剤面をステンレス板(SUS360)またはポリエチレン板にそれぞれ貼り付けた。次いで、貼り付け直後、貼り付けてから温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下で24時間調湿した後、における粘着力を測定し、条件1と条件2の粘着力を比較した。
【0044】
【表1】
【0045】
表1に結果を示す。実施例1〜3の粘着シート用キャスト塗工紙は、エマルジョン系強粘着剤を用いた粘着シートの基材として用いた際に、良好な粘着力を有し、また、比較例1〜3に比べて、条件1における粘着力と条件2における粘着力の差が少なく、粘着力の低下を抑制することができたといえる。特に、本発明のキャスト塗工紙を用いると、高温高湿条件で放置した場合に粘着性の低下を大きく抑制することができた。
【0046】
〈実験2:アクリル溶剤系粘着剤を用いた粘着シート〉
キャスト塗工紙の製造
[実施例4]
実施例1において、キャスト塗工の後に、表面サイズ剤(アニオン性スチレン系樹脂:ポリマロン1308−20、荒川化学工業社製)を乾燥塗布量が0.9g/m
2となるようにブレード式のラボ用塗工機を用いてキャスト塗工面の反対面に、塗布・乾燥して粘着シート用キャスト塗工紙を製造した。
【0047】
[実施例5]
実施例4において、キャスト塗工面の反対面に表面サイズ剤(スチレン系樹脂:ポリマロンNI、荒川化学工業社製)を乾燥塗布量が0.7g/m
2となるようにした以外は、実施例4と同様に粘着シート用キャスト塗工紙を得た。
【0048】
[比較例4]
実施例4において、キャスト塗工面の反対面に薬液を塗布しなかった以外は、実施例4と同様に粘着シート用キャスト塗工紙を得た。
【0049】
[比較例5]
実施例4において、キャスト塗工面の反対面に紙力増強剤(両性アクリル性樹脂:ポリストロン678、荒川化学工業社製)を乾燥塗布量が0.7g/m
2となるようにした以外は、実施例4と同様に粘着シート用キャスト塗工紙を得た。
【0050】
[比較例6]
実施例4において、キャスト塗工面の反対面に湿潤紙力増強剤(カチオン性エポキシ系樹脂水溶液:アラフィックス251S、荒川化学工業社製)を乾燥塗布量が1.0g/m
2となるようにした以外は、実施例4と同様に粘着シート用キャスト塗工紙を得た。
【0051】
粘着シートの製造
上記粘着シート用キャスト塗工紙を、温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下で24時間調湿した。その後、上記キャスト塗工紙にアクリル溶剤系粘着剤層を設けて、粘着シートを製造した。具体的には、アクリル溶剤系強粘着剤(PA−T1、リンテック社製)を乾燥後の塗布量が20g/m
2になるように剥離紙(SP−8K、リンテック社製)上に設け、さらに粘着剤面に別の剥離紙(SP−8LK、リンテック社製)を貼り合わせて得た両面テープを用い、その両面テープの片面の剥離紙を剥がし、両面テープの粘着剤面をキャスト塗工紙のキャスト面の裏側に貼り付けて粘着シートを製造した。
【0052】
粘着性評価
実験1と同様にして粘着シートの粘着力を測定し、条件1と条件2の粘着力を比較した。
【0053】
【表2】
【0054】
表2に結果を示す。実施例4・5の粘着シート用キャスト塗工紙は、アクリル溶剤系強粘着剤を用いた粘着シートの基材として用いた際に、良好な粘着力有し、また、比較例4〜6に比べて、条件1における粘着力と条件2における粘着力の差が少なく、粘着力の低下を抑制することができたといえる。特に、本発明のキャスト塗工紙を用いると、比較例に対して、高温高湿条件で放置した時に粘着性の低下を大きく抑制することができた。