特許第5757763号(P5757763)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5757763キャスト塗工紙の製造方法及びそれを用いた粘着シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5757763
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】キャスト塗工紙の製造方法及びそれを用いた粘着シート
(51)【国際特許分類】
   D21H 27/00 20060101AFI20150709BHJP
   D21H 19/36 20060101ALI20150709BHJP
   C09J 7/04 20060101ALI20150709BHJP
【FI】
   D21H27/00 A
   D21H19/36 A
   C09J7/04
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-77378(P2011-77378)
(22)【出願日】2011年3月31日
(65)【公開番号】特開2012-211409(P2012-211409A)
(43)【公開日】2012年11月1日
【審査請求日】2013年10月2日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 充利
(74)【代理人】
【識別番号】100141265
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 有紀
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】松井 忠視
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】西本 政典
(72)【発明者】
【氏名】竹本 貴司
(72)【発明者】
【氏名】鉄本 卓也
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 弘晃
【審査官】 長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−107321(JP,A)
【文献】 特開平08−100156(JP,A)
【文献】 特開平09−111198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J7/00−7/04
D21B1/00−1/38
D21C1/00−11/14
D21D1/00−99/00
D21F1/00−13/12
D21G1/00−9/00
D21H11/00−27/42
D21J1/00−7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着シート用キャスト塗工紙の製造方法であって、
顔料および接着剤を含む塗工液を原紙の片面に塗工し、湿潤状態にある塗工層をキャストドラムの鏡面に圧接および乾燥させてなり、塗工層をキャストドラムの鏡面に圧接および乾燥させている間に、表面サイズ剤および耐水化剤から選択される粘着力低下抑制剤をキャスト塗工面の反対面に塗布することを含み、
表面サイズ剤が、スチレン・マレイン酸系サイズ剤、スチレン・アクリル共重合体系サイズ剤、スチレンアクリルエマルジョン系サイズ剤、アクリル系共重合体系サイズ剤、アクリルエマルジョン系サイズ剤、オレフィンマレイン酸樹脂系サイズ剤、ウレタン系サイズ剤、AKD・ASA系サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤またはロジンエステル系サイズ剤から選択され、
耐水化剤が、ホルムアルデヒド、グリオキザール、ジアルデヒドデンプン、変性ポリアミド系樹脂、変性アミン樹脂、尿素・ホルムアルデヒド樹脂、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド尿素ホルムアルデヒド樹脂、ケトン樹脂、ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂、グリセロールポリグリシジルエーテル樹脂、炭酸アンモニウムジルコニウム、硫酸亜鉛またはホウ砂から選択される、上記方法。
【請求項2】
粘着力低下抑制剤の塗布量が0.1〜2.0g/mである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記原紙が中性原紙である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの方法によって製造した粘着シート用キャスト塗工紙。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかの方法によって粘着シート用キャスト塗工紙を製造し、そのキャスト塗工紙の粘着力低下抑制剤を塗工した面に粘着剤層を付与することを含む、粘着シートの製造方法。
【請求項6】
請求項5の方法によって製造された粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャスト塗工紙およびその製造方法、またそれを用いた粘着シートに関する。特に本発明は、粘着ラベル用途に適したキャスト塗工紙、および、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
キャスト塗工紙と呼ばれる強光沢塗工紙は、原紙の表面に顔料および接着剤を主成分とする水性塗料を塗工してキャスト塗工層を設け、湿潤状態にあるキャスト塗工層を加熱した金属製の鏡面仕上げ面(ドラム)に圧接し、乾燥することにより製造される。
【0003】
一般にキャスト塗工紙の製造方法は、3つに大別することができ、(1)湿潤状態の塗工層を直接加熱された鏡面仕上げ面に圧接して光沢仕上げするウェットキャスト法(直接法)、(2)湿潤状態の塗工層をゲル(凝固)状態にしてから加熱された鏡面仕上げ面に圧接して光沢仕上げするゲル化キャスト法(凝固法)、(3)湿潤状態の塗工層を一旦乾燥した後、再湿潤により可塑化して加熱された鏡面仕上げ面に圧接するリウェットキャスト法(再湿潤法)が知られている。
【0004】
これらのキャスト塗工紙製造法は、いずれもキャスト塗工層が湿潤または可塑状態にあるうちに加熱した鏡面仕上げ面に圧接し、乾燥させることによって、鏡面のような高い光沢度を有する塗工層を得る点で共通している。そして、このように高い光沢度を有するキャスト塗工紙は、出版用、商業印刷用、粘着ラベル紙用、包装・パッケージ用などに使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したようにキャスト塗工紙は、塗工面の光沢度が高いため、ラベル用途に使用されることがある。特に、キャスト塗工面と反対面に粘着剤層を設けて、粘着シートとして使用される場合がある。
【0006】
しかし、キャスト塗工紙を基材として粘着シートを製造した場合、長期間経過した際に粘着剤の粘着力が低下するという技術課題があり、特に、キャスト塗工紙の原紙として中性紙を使用した場合に粘着力が低下する傾向が顕著であった。
【0007】
このような状況に鑑み、本発明の課題は、キャスト塗工紙のキャスト面と反対面に粘着剤を設けた場合に、粘着シートの粘着力の低下を抑制する技術を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題について鋭意検討を重ねた結果、キャスト塗工紙のキャスト塗工面とは反対面に、表面サイズ剤および耐水化剤から選択される粘着力低下抑制剤を塗工することによって、粘着シートとした際に粘着力の低下を抑制できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
これに限定されるものではないが、本発明は以下の発明を包含する。
(1) 顔料および接着剤を含む塗工液を原紙の片面に塗工し、湿潤状態にある塗工層をキャストドラムの鏡面に圧接および乾燥させてなるキャスト塗工紙の製造方法であって、表面サイズ剤および耐水化剤から選択される粘着力低下抑制剤をキャスト塗工面の反対面に塗工することを含む、上記方法。
(2) 塗工層をキャストドラムの鏡面に圧接および乾燥させている間に粘着力低下抑制剤を塗工する、(1)に記載の方法。
(3) 粘着力低下抑制剤の塗工量が0.1〜2.0g/mである、(1)または(2)に記載の方法。
(4) 前記原紙が中性原紙である、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5) (1)〜(4)のいずれかの方法によって製造したキャスト塗工紙。
(6) (1)〜(4)のいずれかの方法によってキャスト塗工紙を製造し、そのキャスト塗工紙の粘着力低下抑制剤を塗工した面に粘着剤層を付与することを含む、粘着シートの製造方法。
(7) (6)の方法によって製造された粘着シート。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、粘着シートにした場合であっても粘着シートの粘着力の低下を抑制することができるキャスト塗工紙を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
粘着力低下抑制剤
本発明は、顔料および接着剤を含む塗工液を原紙の片面に塗工し、湿潤状態にある塗工層をキャストドラムの鏡面に圧接および乾燥させてなるキャスト塗工紙の製造方法であって、表面サイズ剤および耐水化剤から選択される粘着力低下抑制剤をキャスト塗工面の反対面に塗布する方法である。
【0012】
本発明において、表面サイズ剤および耐水化剤から選択される粘着力低下抑制剤をキャスト塗工面の反対面に塗工することによって、粘着シートとした際に粘着力の低下が抑制される理由の詳細は明らかでなく、本発明は以下の推測に拘束されるものではないが、キャスト塗工紙と粘着層との間に、上記粘着力低下抑制剤を塗布することによって、粘着シートの基材であるキャスト塗工紙と粘着剤との相互作用が抑制される結果、粘着力の低下が抑制されるものと推測される。本発明者は、キャスト塗工紙を基材として粘着シートを製造する場合、基材であるキャスト塗工紙が酸性紙であるときよりも中性紙であるときの方が粘着力が低下する傾向が大きいことを見出しており、酸性紙の製造に用いられる硫酸バンドなどの紙中成分が粘着力の低下に関与していると考えられるが、その詳細は明らかでない。
【0013】
本発明において表面サイズ剤とは、紙表面に塗工(外添)して用いられるサイズ剤のことであり、これに限定されるものではないが、スチレン・マレイン酸系サイズ剤、スチレン・アクリル共重合体系サイズ剤、スチレンアクリルエマルジョン系サイズ剤、アクリル系共重合体系サイズ剤、アクリルエマルジョン系サイズ剤、オレフィンマレイン酸樹脂系サイズ剤、ウレタン系サイズ剤、AKD・ASA系サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、ロジンエステル系サイズ剤などを具体的に挙げることができる。サイズ剤のイオン性は、カチオン系、アニオン系、ノニオン系のいずれでもよい。
【0014】
本発明において用いられる耐水化剤とは、印刷時や使用時に必要な耐水性を付与するために通常用いられる薬品であり、具体的には、ホルムアルデヒド、グリオキザール、ジアルデヒドデンプン、変性ポリアミド系樹脂、変性アミン樹脂、尿素・ホルムアルデヒド樹脂、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド尿素ホルムアルデヒド樹脂、ケトン樹脂、ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂、グリセロールポリグリシジルエーテル樹脂、炭酸アンモニウムジルコニウム、硫酸亜鉛、ホウ砂、サチンホワイトなどの例を挙げることができる。
【0015】
本発明においては、粘着シートの粘着力低下抑制剤として、表面サイズ剤および/または耐水化剤をキャスト塗工面の反対面に塗布するが、その塗工量は特に制限されない。しかし、粘着力の観点から塗布量は、0.1g/m以上であることが好ましく、0.3g/m以上であることがより好ましく、0.5g/m以上であることがさらに好ましい。また、粘着力の観点から塗布量は、3.0g/m以下であることが好ましく、2.5g/m以下であることがより好ましく、2.0g/m以下であることがさらに好ましい。
【0016】
本発明において、粘着力低下抑制剤をキャスト塗工面の反対面に塗布する際の塗布方式は特に限定されず、公知の塗布方法によることができる。具体的な塗布方式としては、ブレード方式、ロッド方式、エアナイフ方式、ゲートロール方式などのフィルムトランスファー方式、カーテン方式、スプレー方式、サイズプレス方式、ロール式などを挙げることができる。
【0017】
本発明において、粘着力低下抑制剤を塗布するタイミングは特に限定されないが、キャスト塗工層を塗工して、鏡面ドラム(キャストドラム)に圧接・乾燥している間、あるいは鏡面ドラムに圧接・乾燥した後の段階で行うことが好ましい。また、鏡面ドラム(キャストドラム)に圧接・乾燥している間に粘着力低下抑制剤を塗布することが、別途乾燥装置を設ける必要がなく、製造装置をコンパクトにすることができる生産効率の点で有利である。
【0018】
本発明において上述の粘着力低下抑制剤を塗布する場合、それらを水などの適当な溶媒に溶かした溶液として塗布してもよく、粘着力低下抑制剤が液体の場合はそのまま希釈せずに塗布してもよい。塗布液の粘性を調整するのが容易であり、また、付加的な薬品を添加することも容易であることから、本発明においては粘着力低下抑制剤を含む塗布液を用いて塗布することが好ましい。
【0019】
粘着シート
本発明の粘着シート用キャスト塗工紙は、キャスト塗工層が設けられた面の反対面に粘着剤が付与されて、粘着(接着)シートとして使用される。本発明において使用される粘着剤に特に限定はなく、公知の粘着剤を使用することができる。使用する粘着剤の例としては、ポリアミド系粘着剤、ポリイミド系粘着剤、α−オレフィン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤などのホットメルト樹脂粘着剤、エポキシ樹脂系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シアノアクリレート系粘着剤などの反応硬化性樹脂粘着剤、アクリル系粘着剤、酢酸ビニル系粘着剤、ゴム系粘着剤などの溶剤系粘着剤、エチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョン系粘着剤、アクリルエマルジョン系粘着剤などの水系粘着剤を好適に挙げることができる。また、本発明の粘着シート用キャスト塗工紙に粘着剤層を付与する方法は特に限定されず、公知の方法によることができる。
【0020】
1つの態様において本発明は、上述のように製造したキャスト塗工紙に粘着剤層を付与することをさらに含む、粘着シートの製造方法である。また別の観点から本発明は、キャスト塗工層、原紙層、粘着力低下抑制剤層、粘着剤層をこの順に有する粘着シートである。
【0021】
キャスト塗工
本発明においてキャスト塗工の方式は特に限定されず、ウェットキャスト法(直接法)、ゲル化キャスト法(凝固法)、リウェットキャスト法(再湿潤法)のいずれでキャスト塗工層を設けてもよい。一般に、直接法と比較して、凝固法や再湿潤法は、鏡面ドラムの温度を高くすることができるため、高速で操業できるため、好ましい。
【0022】
一般にキャスト塗工液は、顔料と接着剤を含んでなるが、本発明のキャスト塗工紙に用いる顔料としては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、クレー、デラミネーテッドクレー、タルク、水酸化アルミニウム、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、シリカ、サチンホワイト、プラスチックピグメント等、一般の塗工紙用顔料の1種または2種以上が適宜使用することができる。白紙面感、白紙光沢度の点から顔料100重量部に対して、炭酸カルシウムやカオリンを30重量部以上用いることが好ましい。
【0023】
また、キャスト塗工層に用いる接着剤としては、澱粉、変性澱粉、カゼイン、大豆蛋白、プロテイン等の天然系接着剤、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、アクリルエマルジョンラテックス、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体ラテックス、ポリビニルアルコール等の合成系接着剤等の一般に水性系塗被組成物に使用される各種の天然及び合成接着剤の1種または2種以上が適宜組み合わされて使用することができる。接着剤の使用量は、顔料100重量部に対して5〜50重量部が好ましく、10〜30重量部がより好ましい。
【0024】
キャスト塗工層中には、顔料、接着剤以外に必要に応じて分散剤、耐水化剤、防腐剤、界面活性剤、染料、消泡剤、流動変性剤等の各種助剤を適宜配合することもできる。
本発明においてキャスト塗工紙は一般的な方法で製造することができる。本発明のキャスト塗工紙を得るためには、直接法、凝固法、再湿潤法などによることができ、白紙面感、白紙光沢度の点からは、凝固法を用いることが好ましい。また、再湿潤法や凝固法によってキャスト塗工紙を製造する場合、それぞれ再湿潤液や凝固液を使用する。再湿潤液としては、特に限定されるものではなく、例えばポリエチレンエマルジョン、脂肪酸石鹸、ステアリン酸カルシウム、マイクロクリスタリンワックス、界面活性剤、ロート油等の離型剤を0.01〜3重量%程度含有した水溶液、エマルジョン等常の再湿潤液が用いられる。また、アルカリやヘキサメタ燐酸ソーダ等の燐酸塩、尿素、有機酸等を乾燥塗工層の可塑化を促進させるために併用することも可能である。さらに、消泡剤、耐水化剤、防腐剤、印刷適性向上剤など、通常の塗工紙要塗料組成物に配合される各種助剤を適宜使用することができる。また凝固液には、ギ酸、ホウ酸、イタコン酸、リンゴ酸、アクリル酸等の塩類(カルシウム塩やアンモニウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩等)が用いられる。また適宜各種離型剤、界面活性剤、染料定着剤、耐水化剤が併用することも可能である。
【0025】
本発明において、原紙上にキャスト塗工液を塗工するためには、上述のキャスト塗工液を、エアーナイフコーター、ブレードコーター、ブラシコーター、ロールコーター、サイズプレス等の適当な塗工装置によって原紙上に塗工するが、塗工量は、原紙の片面あたり固形分として1〜40g/mが好ましく、10〜30g/mがより好ましく、10〜25g/mがさらに好ましい。
【0026】
キャスト塗工層を原紙に塗工した後、湿潤状態のキャスト塗工層を加熱した鏡面ドラムであるキャストドラムに圧接、乾燥して、キャスト塗工紙を得ることができる。本発明においては、キャストドラムその他の条件は適宜決定することができる。
【0027】
また、本発明においてキャスト塗工紙の原紙は、特に限定されるものではなく、一般にキャスト塗工紙分野で使用される酸性紙あるいは中性紙を好適に使用することができる。上述したように、原紙として中性紙を用いた場合に粘着シートの粘着性が低下しやすいところ、本発明によれば粘着性の低下を効果的に抑制できるため、原紙として中性紙を用いると本発明の効果をより大きく享受することができ、好ましい。なお、本発明において中性紙とは、JIS P 8133に規定される紙面pHが6.0〜9.0の紙を言う。
【0028】
本発明のキャスト塗工紙の原紙に用いる原料は特に制限されず、公知のパルプ原料、填料、製紙用薬品を使用することができる。パルプ原料としては、例えば、未晒針葉樹パルプ(NUKP)、未晒広葉樹パルプ(LUKP)、晒針葉樹パルプ(NBKP)、晒広葉樹パルプ(LBKP)等の化学パルプ;ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)等の機械パルプ等を使用することができる。また、古紙からなる古紙パルプを使用することも可能であり、例えば、雑誌古紙、チラシ古紙、オフィス古紙等から製造される離解・脱墨古紙パルプ、離解・脱墨・漂白古紙パルプ等が挙げられる。本発明では、これらの中から1種又は2種以上を適宜選択して使用することができる。
【0029】
また、通常、原料パルプを混合して抄紙原料(紙料スラリー)を調製するが、当該原料パルプには、例えば、内添サイズ剤、紙力増強剤、紙厚向上剤、歩留向上剤等の通常の製紙工程で配合される種々の添加剤を、その種類及び配合量を適宜調整して内添することができる。
【0030】
さらに、原紙を抄造する抄紙機も特に限定されず、例えば、長網方式、ツインワイヤー方式、ギャップフォーマー方式、丸網方式、ヤンキー方式など各方式を適宜用いることができる。
【0031】
原紙の坪量は、40〜220g/m程度のものを好適に使用することができ、50〜180g/m程度がより好ましく、60〜130g/m程度が粘着シート用途としてさらに好ましい。なお、原紙の片面または両面には必要に応じて、キャスト塗工層を設ける前に、澱粉などのクリアー塗工液や顔料塗工液を予め予備塗工しても良い。
【0032】
本発明のキャスト塗工紙は、キャスト塗工面と反対面に接着剤が設けられた場合に、接着力の低下が効果的に抑制されるため、粘着シート用のキャスト塗工紙として特に好適である。
【実施例】
【0033】
以下に、本発明の実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、本明細書において特に断わらない限り、部及び%はそれぞれ重量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。重量部及び重量%を示す。
【0034】
〈実験1:アクリルエマルジョン系粘着剤を用いた粘着シート〉
キャスト塗工紙の製造
[実施例1]
1級カオリン70部、柱状炭酸カルシウム30部、ポリアクリル酸ソーダ系分散剤0.2部を添加し、カウレス分散機を用いて水に分散し、固形分濃度60%の顔料スラリーを調製した。この顔料スラリーに消泡剤としてトリブチルフォスフェート0.2部、接着剤としてアンモニアを用いて溶解したカゼイン水溶液(固形分濃度18%)6部及びブタジエン含有量が55%であるスチレン・ブタジエン系共重合体ラテックス21部を加え、離型剤としてステアリン酸カルシウム2部、ノニオン系乳化剤0.6部を配合し、最後に水及びアンモニアを加えて固形分濃度48%、pH10.0のキャスト塗工液を調製した。
【0035】
また、凝固液として、絶乾当たりギ酸カルシウム100%に対し酸化亜鉛を40%、ギ酸41%を配合し、離型剤としてワックスエマルジョン0.3部及びノニオン系乳化剤0.2部添加し、最終的に固形分濃度15%のギ酸カルシウムを主成分とする凝固液を調製した。
【0036】
また、鏡面ドラムにはステアリン酸(炭素数17)を塗布し、バフ研磨を行った。
上記の方法により調製した塗工液を用い、坪量110g/mの中性原紙(広棄樹晒しクラフトパルプ単独配合、填料として炭酸カルシウムを原紙重量の5%含有)の片面に、乾燥塗工量が21g/mとなるように塗工液をロールコータで塗工し、次いで凝固液に接触させて塗工層を凝固させた。次いで、直径750mmのプレスロールと表面温度105℃、直径3000mmの鏡面ドラム(キャストドラム)にプレス圧130kg/cmで圧接・乾燥し、塗工層を乾燥している間に、キャスト塗工面の反対面に表面サイズ剤(スチレン系ポリマー:SS2710、星光PMC社製)を乾燥塗布量が0.7g/mとなるようにロール塗布して乾燥した後、テークオフロールでキャストドラムから剥離して粘着シート用キャスト塗工紙を製造した。
【0037】
[実施例2]
実施例1において、キャスト塗工面の反対面に耐水化剤(変性ポリアミド系樹脂:スミレーズレジンSPI−106N、住友化学社製)を用いた以外は、実施例1と同様に粘着シート用キャスト塗工紙を製造した。
【0038】
[実施例3]
実施例1において、キャスト塗工面の反対面に耐水化剤(変性アミン樹脂:スミレーズレジンSPI−102A、住友化学社製)を乾燥塗布量が0.9g/mとなるようにした以外は、実施例1と同様に粘着シート用キャスト塗工紙を製造した。
【0039】
[比較例1]
実施例1において、キャスト塗工面の反対面に薬液を塗布しなかった以外は、実施例1と同様に粘着シート用キャスト塗工紙を製造した。
【0040】
[比較例2]
実施例1において、キャスト塗工面の反対面に紙力増強剤(両性アクリル性樹脂:ポリストロン678、荒川化学工業社製)を用いた以外は、実施例1と同様に粘着シート用キャスト塗工紙を製造した。
【0041】
[比較例3]
実施例1において、キャスト塗工面の反対面に紙力増強剤(ポリビニルアルコール:PVA217、クラレ社製)を乾燥塗布量が0.9g/mとなるようにした以外は、実施例1と同様に粘着シート用キャスト塗工紙を製造した。
【0042】
粘着シートの製造
上記粘着シート用キャスト塗工紙を、温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下で24時間調湿した。その後、上記キャスト塗工紙にアクリルエマルジョン系粘着剤層を設けて、粘着シートを製造した。具体的には、アクリルエマルジョン系強粘着剤(BPW5175、東洋インキ製造社製)を乾燥後の塗布量が16g/mになるように剥離紙(SP−8K、リンテック社製)上に設け、さらに粘着剤面に別の剥離紙(SP−8LK、リンテック社製)を貼り合わせて得た両面テープを用い、その両面テープの片面の剥離紙を剥がし、両面テープの粘着剤面をキャスト塗工紙のキャスト面の裏側に貼り付けて粘着シートを製造した。
【0043】
粘着性評価
JIS−Z−0237の常態粘着力の測定方法に準拠し、下記の二つの条件で調整した後の粘着力をそれぞれ測定した(単位:N/25mm)。すなわち、上記粘着シートを、温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下で24時間調湿した後(条件1)、または、温度60℃、湿度95%RHの雰囲気下に3日間調湿した後に温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下で24時間さらに調湿した後(条件2)、粘着シートのもう一方の剥離紙を剥がし、粘着剤面をステンレス板(SUS360)またはポリエチレン板にそれぞれ貼り付けた。次いで、貼り付け直後、貼り付けてから温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下で24時間調湿した後、における粘着力を測定し、条件1と条件2の粘着力を比較した。
【0044】
【表1】
【0045】
表1に結果を示す。実施例1〜3の粘着シート用キャスト塗工紙は、エマルジョン系強粘着剤を用いた粘着シートの基材として用いた際に、良好な粘着力を有し、また、比較例1〜3に比べて、条件1における粘着力と条件2における粘着力の差が少なく、粘着力の低下を抑制することができたといえる。特に、本発明のキャスト塗工紙を用いると、高温高湿条件で放置した場合に粘着性の低下を大きく抑制することができた。
【0046】
〈実験2:アクリル溶剤系粘着剤を用いた粘着シート〉
キャスト塗工紙の製造
[実施例4]
実施例1において、キャスト塗工の後に、表面サイズ剤(アニオン性スチレン系樹脂:ポリマロン1308−20、荒川化学工業社製)を乾燥塗布量が0.9g/mとなるようにブレード式のラボ用塗工機を用いてキャスト塗工面の反対面に、塗布・乾燥して粘着シート用キャスト塗工紙を製造した。
【0047】
[実施例5]
実施例4において、キャスト塗工面の反対面に表面サイズ剤(スチレン系樹脂:ポリマロンNI、荒川化学工業社製)を乾燥塗布量が0.7g/mとなるようにした以外は、実施例4と同様に粘着シート用キャスト塗工紙を得た。
【0048】
[比較例4]
実施例4において、キャスト塗工面の反対面に薬液を塗布しなかった以外は、実施例4と同様に粘着シート用キャスト塗工紙を得た。
【0049】
[比較例5]
実施例4において、キャスト塗工面の反対面に紙力増強剤(両性アクリル性樹脂:ポリストロン678、荒川化学工業社製)を乾燥塗布量が0.7g/mとなるようにした以外は、実施例4と同様に粘着シート用キャスト塗工紙を得た。
【0050】
[比較例6]
実施例4において、キャスト塗工面の反対面に湿潤紙力増強剤(カチオン性エポキシ系樹脂水溶液:アラフィックス251S、荒川化学工業社製)を乾燥塗布量が1.0g/mとなるようにした以外は、実施例4と同様に粘着シート用キャスト塗工紙を得た。
【0051】
粘着シートの製造
上記粘着シート用キャスト塗工紙を、温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下で24時間調湿した。その後、上記キャスト塗工紙にアクリル溶剤系粘着剤層を設けて、粘着シートを製造した。具体的には、アクリル溶剤系強粘着剤(PA−T1、リンテック社製)を乾燥後の塗布量が20g/mになるように剥離紙(SP−8K、リンテック社製)上に設け、さらに粘着剤面に別の剥離紙(SP−8LK、リンテック社製)を貼り合わせて得た両面テープを用い、その両面テープの片面の剥離紙を剥がし、両面テープの粘着剤面をキャスト塗工紙のキャスト面の裏側に貼り付けて粘着シートを製造した。
【0052】
粘着性評価
実験1と同様にして粘着シートの粘着力を測定し、条件1と条件2の粘着力を比較した。
【0053】
【表2】
【0054】
表2に結果を示す。実施例4・5の粘着シート用キャスト塗工紙は、アクリル溶剤系強粘着剤を用いた粘着シートの基材として用いた際に、良好な粘着力有し、また、比較例4〜6に比べて、条件1における粘着力と条件2における粘着力の差が少なく、粘着力の低下を抑制することができたといえる。特に、本発明のキャスト塗工紙を用いると、比較例に対して、高温高湿条件で放置した時に粘着性の低下を大きく抑制することができた。