【実施例1】
【0015】
本実施例のプリンタ1は、
図1に示すように、本体側ケース2(固定部)と、オープンケース3(可動部)と、プラテンローラ4(搬送円筒体)と、プラテンユニットケース5(支持部)と、ヘッドユニット6を含んで構成される。プラテンローラ4は、
図2に示すように、プラテンユニットケース5の前方かつ下方に位置している。ヘッドユニット6は、
図1に示すように本体側ケース2側に配置されている。
【0016】
オープンケース3は、本体側ケース2に対して
図1中左後方に位置する図示しない回動中心を有する図示しない回動部及び回動部を含む図示しない下部ケースを介して保持されており、オープンケース3は回動中心の周りに回動可能に本体側ケース2に対して連結されている。オープンケース3は、
図1中上側に回動された状態である開状態と、下側に回動されて本体側ケース2に固定され係合された状態である閉状態とが選択可能とされる。
【0017】
本体側ケース2は、
図3の上側図に示すように、例えば亜鉛ダイキャスト等の金属板材を適宜折り曲げ、打ち抜き等のプレス加工することにより構成されるものである。オープンケース3は例えばステンレス合金等の金属板材を適宜折り曲げることにより上下方向に垂直な平板状に構成されるものである。
【0018】
プラテンユニットケース5は、
図3の下側図に示すように、例えばポリカーボネート等の樹脂板を適宜成型することにより構成された、左右方向に延びて、上下方向に対して垂直な平面部と左右方向に垂直な左右一対の脚部を有するものである。平面部の前方端の左方端及び右方端よりに左右一対の突片5aを一体的に形成している。なお突片5aの左右両側には、上述した折り返し部3aの穴部3aaの左右両側に位置する部分に対応する凹部5abが形成される。
【0019】
図2に示したプラテンローラ4は、ここでは図示しないレシートや、チケット等の被印字媒体を被印字媒体が巻回されてなる巻回体から印字部へと搬送する機能を具備している。プラテンローラ4は、プラテンユニットケース5に回転自在に支持されて、搬送用伝達ギヤ4bは閉状態においては図示しない搬送用駆動ギヤを介して本体側ケース2側のプラテン用モータに駆動結合される。
【0020】
本実施例のプリンタ1においては、可動刃の駆動機構である切断用駆動ギヤ及び切断用伝達ギヤと可動刃保持部を含む。プラテンユニットケース5側に配置される図示しない可動刃を、切断用伝達ギヤを介して駆動する図示しない切断用駆動ギヤは、本体側ケース2に配置される。
【0021】
閉状態においては、本体側ケース2に配置された切断用駆動ギヤと、プラテンユニットケース5に配置された切断用伝達ギヤは噛み合っており、切断用駆動ギヤの左右方向側方には切断用駆動ギヤを駆動する切断用モータが配置されている。プラテンユニットケース5においては、切断用伝達ギヤに切断用駆動ギヤから伝達された駆動力に基づいて、図示しない可動刃を進退移動させる図示しない可動刃保持部が配置されている。
【0022】
つまり、本実施例1のプリンタ1の内部構造においては、切断用モータと切断用駆動ギヤ及び搬送用モータと搬送用駆動ギヤが本体側ケース2側に配置され、切断用伝達ギヤと可動刃保持部及び搬送用伝達ギヤ4bはプラテンユニットケース5側に配置されて、所謂クラムシェルタイプが採用されている。
【0023】
開状態においては、プラテンユニットケース5は、オープンケース3の回動により本体側ケース2から離隔する方向に跳ね上げられており、搬送用駆動ギヤと搬送用伝達ギヤの駆動結合と切断用駆動ギヤと切断用伝達ギヤの駆動結合はともに解除される。
【0024】
ここでは図示しない固定刃は閉状態において、可動刃の下面にその上面が当接されかつ図示しないスプリングにより付勢されるように本体側ケース2側に配置されており、固定刃の後方にはプラテンローラ4が配置されて、プラテンローラ4の前方には、ヘッドユニット6が配置されている。被印字媒体はヘッドユニット6とプラテンローラ4の間と、可動刃と固定刃との間から出口に至るまでのパスを経由する。
【0025】
ヘッドユニット6は閉状態において被印字媒体に印字を行う機能を具備しており、印字部を構成する。プラテンユニットケース5及びオープンケース3は、プラテンユニットケース5をオープンケース3に対して回動中心の径方向に摺動自在に拘束する拘束手段5a+3aaを含む。
【0026】
この拘束手段5a+3aaは、プラテンユニットケース5及びオープンケース3のうち一方、ここでは、プラテンユニットケース5の一部をなす突片5a(係合部)、と他方であるオープンケース3の一部をなす折り返し部3aに形成された穴部3aa(被係合部)とにより構成される。穴部3aaは折り返し部3aの前方向に指向する部分に回動中心の径方向に指向する形態にて設けられて、突片5aを径方向に挿通するものである。
【0027】
これとともに、本実施例1のプリンタ1における本体側ケース2においては、オープンケース3を閉状態とした場合にプラテンローラ4の回動中心の延在方向の両端に位置する支軸4aを収納する、
図1中左下側に示す吹出円内に示されるような、左右一対の凹溝状の収納部2aを本体側ケース2が含んでいる。なお、上述した吹出円内に示す図は、プラテンローラ4の軸方向に垂直で支軸4a及び収納部2aを含む断面を示している。
【0028】
さらに、本実施例1のプリンタ1における本体側ケース2は、オープンケース3を本体側ケース2に対して閉状態とする前段階にてプラテンローラ4の左右一対の支軸4aを収納部2aへ案内する案内手段を含んでいる。
【0029】
この案内手段は、オープンケース3を開状態から閉状態に移行させるにあたっての支軸4aの上述した回動中心を中心とする円弧状の移動軌跡に対して下方から上方に向けて徐々に傾斜角を大きくして曲面状をなす傾斜面2bにより構成される。
図1中の吹出円内に示すように、傾斜面2bは左右一対の収納部2aのそれぞれの前後方向の両側に、下方から上方に開口するハの字状に形成される。回動中心が後方に位置することから、前方側の傾斜面2bは後方側の傾斜面2bよりも上側にオフセットさせている。
【0030】
本実施例1のプリンタ1においては、支軸4aが収納部2aに収納されてオープンケース3が閉状態とされた場合には、支軸4aをロックする図示しないロックアームと、閉状態から開状態へと移行する場合にロックアームのロックを解除する図示しないオープンレバーをも含む。
【0031】
本実施例1においては、突片5aは、
図4の左側図及び
図5に示すように穴部3aaに対して、上下方向に遊びを有して係合される。すなわち突片5aの上下方向の厚みよりも、穴部3aaの上下方向の寸法を大きく設定する。
【0032】
加えて、本実施例1においては、
図3に示すように、支持部4aのオープンケース3に対する径方向の摺動量を制限する制限手段3b+5bを含んでいる。この制限手段3b+5bは、
図4の右側図及び
図5に示すように、プラテンユニットケース5及びオープンケース3の一方であるオープンケース3から他方ここでは下方に向けて突出するボス3b(突部)と、プラテンユニットケース5及びオープンケース3の他方であるプラテンユニットケース5が含むボス3bに対応する孔部5bとにより構成される。
【0033】
さらに、ボス3bは、
図4右側図及び
図5に示すように、孔部5bに挿通される部分よりも下方に突出する方向側に孔部5bよりも外形寸法の大きい頭頂部3baを有する。また、ボス3bの根元と頭頂部3baとの間の上下方向の寸法が、孔部5bの深さ寸法すなわち、プラテンユニットケース5を構成する板材の厚みよりも大きいこととしている。
【0034】
ボス3bは、オープンケース3の一部をバーリング又はダボにより下方に向けて円柱状に突出させた後、この円柱状の円柱状部分を組立段階にて孔部5bに挿通させて、円柱状部分の下端部に対して
図3に示す埋込部3cを下方から打ち込み埋設することにより、頭頂部3baを含み、かつ、頭頂部3baよりもさらに径の大きい平面縁部3bbを含んで構成される。
【0035】
本実施例1のプリンタ1においては、
図6に示すように、オープンケース3がプラテンユニットケース5に対して回動中心の径方向外側つまり前方向に相対的に移動した場合には、突片5aの穴部3aaからの前方への突出量が大きくなり、
図5に示す孔部5bの内壁の後端がボス3bに当接するまで、オープンケース3のプラテンユニットケース5に対する径方向外側つまり前方への摺動が許容される。
【0036】
また、本実施例1においては、
図7に示すように、オープンケース3がプラテンユニットケース5に対して回動中心の径方向内側つまり後方向に相対的に移動した場合には、突片5aの穴部3aaからの突出量が小さくなり、
図5に示す孔部5bの内壁の前端がボス3bに当接するまで、オープンケース3のプラテンユニットケース5に対する径方向内側つまり後方への摺動が許容される。
【0037】
すなわち、本実施例1によれば、拘束手段5a+3aaの具備する摺動許容機能と制限手段3b+5bの摺動量制限機能の双方ひいては傾斜面2bの案内機能に基づいて、プラテンケース3とプラテンユニットケース5との径方向つまりは前後方向の相対的な移動を適切に許容して、プラテンローラ4の支軸4aの本体側ケース2側の収納部2aに対しての相対位置に誤差が生じた場合においても、その誤差を許容し吸収して、閉状態への移行時に支軸4aを収納部2aに確実かつ円滑に収納して、ユーザの操作性及び操作フィーリングを高めて、顧客満足度を高めることができる。
【0038】
さらに、本実施例1においては、拘束手段5a+3aaと制限手段3b+5bの双方が上述したように、上下方向に遊びを有した構造を有しているので、
図5に示すように、オープンケース3に対してプラテンユニットケース5が左右方向を中心に相対的に回転した場合でも、この回転を所定の限度内にて許容することができる。
【0039】
より詳しくは、
図5中の左側図に示すように、プラテンユニットケース5が時計回りに回転した場合には、プラテンユニットケース5の突片5aが穴部3aaの下端面に当接し、プラテンユニットケース5の後端がオープンケース3の下面に当接するまで、回転が許容される。
【0040】
同様に、
図5中の右側図に示すように、プラテンユニットケース5が反時計回りに回転した場合には、プラテンユニットケース5の突片5aが穴部3aaの上端面に当接し、プラテンユニットケース5の後端部がオープンケース3の頭頂部3baの平面縁部3bbに当接するまで、回転が許容される。
【0041】
また、本実施例1のプリンタ1においては、支軸4aの収納部2aに対する回動中心の径方向における相対位置に誤差が生じた場合に、突片5aと穴部3aaにより構成される拘束手段5a+3aaの具備する径方向の摺動許容機能に基づいて、この誤差を拘束手段5a+3aaが吸収することとしている。つまり、従来技術のように回動中心を構成する図示しない下部ケースとオープンケース3との間に位置する図示しない回動部が、誤差を吸収するための径方向に長い長円形状部を具備する必要を無くすことができる。
【0042】
従って、本来誤差を吸収するにあたって必ずしも適切でない回動部において、誤差を吸収させる機能を具備させる構成を廃することができる。長円形状部を回転部が有する従来技術においては、オープンケース3を閉状態から開状態として、オープンケース3が本体側ケース2の含むロックアームや収納部2aによるプラテンローラ4の支軸4aの拘束が解除された状態では、長円形状部の長径方向の保持力の低下を招く。
【0043】
従来技術では、長円形状部の長径方向に重力が作用する場合などにおいて、オープンケース3が意図しないスライド動作を行ってしまい、ユーザに違和感を与えることが生じていたが、本実施例1のプリンタ1においては、このような違和感をユーザに与えることを防止することができる。つまり、本実施例1によれば、ユーザへ違和感を与えることを防止して、顧客満足度を高めることができる。
【0044】
さらに、本実施例1のプリンタ1によれば、拘束手段5a+3aaを、それぞれプリンタ1が本来具備している部品である、プラテンユニットケース5及びオープンケース3の一方及び他方の一部により構成しているので、摺動を許容するための新たな部品の追加を不要なものとすることができる。
【0045】
加えて、本実施例1のプリンタ1によれば、制限手段3b+5bをも、それぞれプリンタ1が本来具備している部品である、プラテンユニットケース5及びオープンケース3の一方及び他方の一部により構成しているので、摺動量を制限するための新たな部品の追加を不要なものとすることができる。
【0046】
加えて、本実施例1のプリンタ1においては、プラテンローラ4の支軸4aを収納部2aに確実に収納して、開状態から閉状態への移行を円滑に行うことができるので、閉状態において、被印字媒体の搬送、被印字媒体への印刷、可動刃及び固定刃を含む切断部による被印字媒体の切断の一連の動作を安定的にかつ良好に行うことができる。
【0047】
なお上述した実施例1に示したプリンタ1においては、
図8の左側図に示すように、可動部であるオープンケース3とともに回動中心回りに回動するプラテンユニットケース5が可動刃7とプラテンローラ4を含み、本体側ケース2がヘッドユニット6と固定刃8及びスプリング9を含む構成としている。この組合せを便宜上TypeAと呼ぶ。
【0048】
この組合せは、
図8の右側図に示すように適宜変更することができる。つまり、プラテンユニットケース5側に固定刃8とスプリング9を含ませ、本体側ケース2側に可動刃7とヘッドユニット6を含ませる、TypeBとすることもできる。
【0049】
また、上述した実施例1においては、拘束手段5a+3aaを前側に位置させ、制限手段3b+5bを後側に位置することとしているが、これを前後逆の位置関係とすることももちろん可能である。
【0050】
さらに、折り返し部3aが穴部3aaを具備して、穴部3aaが被係合部を構成することは必須ではなく、例えば、折り返し部3aの直角状の折り返し部分を一箇所から二箇所としてコの字形状を形成し、コの字形状の下方側面つまり前方から後方に向かう部分を形成させて、突片5aを下方から折り返し部3a自体に支持させて、折り返し部3a自体を被係合部とすることも可能である。
【0051】
上述した実施例1のプリンタ1においては、開状態から閉状態への移行時と、閉状態から開状態への移行時のユーザの操作フィーリングを向上させたが、閉状態における、プラテンユニットケース5の挙動についても安定させることができる。以下、それについての実施例2について述べる。
【実施例2】
【0052】
以下、実施例2のプリンタ1が含む技術思想について
図9及び
図10を用いて説明する。
図9に示すように、切断部を構成する可動刃7に対して、固定刃8はスプリング9により上方向に付勢されてその可動刃7に対向する面が可動刃7に対して当接されている。このスプリング9の有する付勢力により、
図10中の左側図に示すように、可動刃7と固定刃8の相対位置関係が適切に確保される場合には、被印字媒体の切断性が向上される。
図10の左側図の示す状態をモード1と称する。
【0053】
ところが、スプリング9の上端の上方向への変位が振動や外力の付与等の外乱により大きくなりすぎる場合には、
図10中の右上図に示すモード2の状態となり、モード2においては、可動刃7が反時計回りに回転され、可動刃7を含むプラテンユニットケース5も反時計回りに回転される。固定刃8は時計回りに回転される。
【0054】
モード2に示されるように、スプリング9の上端の上方向への変位が大きすぎると、スプリング9の付勢力を発生させるための撓み量が小さくなり、固定刃8の刃圧が弱くなり被印字媒体の切断性の低下を招く。また、切断動作時における可動刃7の刃先と固定刃8の刃先の接触を招き、これも被印字媒体の切断性の低下を招く。
【0055】
これとは逆に、スプリング9の上端の上方向への変位が振動や外力の付与等の外乱により小さくなりすぎる場合には、
図10中の右下図のモード3の状態となり、可動刃7が時計回りに回転され、可動刃7を含むプラテンユニットケース5も時計回りに回転される。固定刃8は反時計回りに回転される。
【0056】
モード3に示されるように、スプリング9の上端の上方向への変位が小さすぎると、スプリング9の付勢力を発生させるための撓み量が大さくなり、固定刃8の刃圧が強くなるが、可動刃7の刃先が下方に指向することになり、切断時において被印字媒体を倒し易くなり、やはり被印字媒体の切断性の低下を招く。
【0057】
そこで、本実施例2のプリンタ1においては、閉状態においてプラテンユニットケース5と本体側ケース2との相対位置関係を規制する規制手段として
図11に示すようなストッパ5c+2c、5d+2dを設ける。これらのストッパ5c+2c、5d+2dは、支軸4aすなわちプラテンローラ4の周方向において周上二箇所に設置される。
【0058】
周上二箇所に設置されたストッパ5c+2c、5d+2dのうち、プラテンローラ4よりも
図11中右側つまり前後方向の後方側に位置する回動中心に対して反対側に位置するストッパ5c+2cが、スプリング9の付勢力が減少する方向のプラテンユニットケース5の回転を規制する。
【0059】
同様に、周上二箇所に設置されたストッパ5c+2c、5d+2dのうち、プラテンローラ4よりも回動中心側に位置するストッパ5d+2dが、スプリング9の付勢力が増加する方向のプラテンユニットケース5の回転を規制する。
【0060】
ストッパ5c+2cを構成する当接面5cをプラテンユニットケース5の下端部が含むとともに、同じくストッパ5c+2cを構成する当接面5cに閉状態において当接される被当接面2cを本体側ケース2側の一部が構成する。当接面5c及び被当接面2cはプラテンローラ4の同一直径上に形成され、周方向にほぼ垂直に形成される。
【0061】
ストッパ5d+2dを構成する当接面5dをプラテンユニットケース5の後上端部が含むとともに、同じくストッパ5d+2dを構成する当接面5dに閉状態において当接される被当接面2dを本体側ケース2側の一部が構成する。当接面5d及び被当接面2dについてもプラテンローラ4の同一直径上に形成され、周方向にほぼ垂直に形成される。
【0062】
本実施例2のプリンタ1においては、開状態から閉状態に移行した後の、プラテンユニットケース5のオープンケース3に対する、プラテンローラ4及び支軸4a回りの挙動をストッパ5c+2c、5d+2dの回転規制機能により安定させ、
図10の左側図に示したモード1から右側図のモード2又はモード3への移行又は状態遷移を禁止して、常にモード1を保持することができ、被印字媒体の正常な切断を確保することができる。
【0063】
上述した実施例1及び実施例2において、可動刃7の形態を工夫することにより、さらに被印字媒体の切断性を高めることができる。以下それについての実施例3について述べる。
【実施例3】
【0064】
以下に実施例3の技術思想に関連させて一般的な可動刃の構成について述べる。従来技術においては、一般に、被印字媒体が相対的に薄い形態の場合には、切断動作における可動刃の移動方向に対して、可動刃の被印字媒体に接触する面つまり刃面は、移動方向に垂直に形成される。被印字媒体が相対的に厚い形態の場合には、可動刃の被印字媒体に接触する面つまり刃面は、移動方向に傾斜してかつ固定刃に対向する対向面が反対側の非対向面に対して移動方向に長くなるように形成される。
【0065】
特に後者の被印字媒体が厚い場合の、刃面を移動方向に対して傾斜させる形態の可動刃は、可動刃の製造工程において、母材を傾斜させた状態で保持して研磨加工又はシェービング加工を行う必要があるため、製造工程が煩雑となりコストアップを招く。
【0066】
そこで、本実施例3のプリンタ1に用いる可動刃7については、被印字媒体Pの切断性を高めることと、コストダウンの双方を目的として、
図12に示すような形態としている。
図12に示す可動刃7においては、可動刃7の刃先7aaがR研磨により構成されるとともに、可動刃7の固定刃8に対向する対向面と反対側の非対向面7aにR研磨が施されて、刃先7aaが構成される。
【0067】
本実施例3の可動刃7を構成するにあたっては、
図12に示した、板厚t1の平板状の母材を例えば旋盤等の平面状の台座に載置した状態で、
図13に示すように、R加工用の円筒状の砥石を、母材の縁部に対して砥石の中心軸線を平行として、R加工を行う。この場合において、中心軸と縁部を一致させるか母材から離隔する側にオフセットさせても、中心部を縁部よりも母材よりにオフセットさせてもよい。
【0068】
このことにより、刃先7aaに、R加工部のみを具備させること、または、R加工部と、母材のなす平面と平行なストレート部との双方を具備させることの双方を適宜選択可能なものとしている。
【0069】
本実施例3のプリンタ1に用いられる可動刃7によれば、刃先7aaの厚みを薄くすることを、上述した円筒状の砥石により行うことができ、一般に安価な円筒状の砥石を用いて、かつ、母材を傾けた状態で保持する作業を廃することにより、製造設備の低廉化を図り、製造工程をより簡単なものとして、コストダウンを図ることができる。
【0070】
加えて、本実施例3においては、
図13に示すように、刃先7aaの厚みt2を薄くした上で、母材の厚みt1に対して所定の比率を有して被印字媒体Pの切断に適切な値を確保することをより容易なものとすることができる。すなわち、可動刃7の刃先7aaに被印字媒体Pの切断においては必須ではない鋭利性を具備させてしまうことをも防止することができる。これにより、作業安全性と製品としての品質をより高めることができる。
【0071】
上述した実施例3においては、R加工を応用した可動刃7について述べたが、これ以外にも板材の積層に基づいて可動刃7を構成することもできる。以下、これについての実施例4について述べる。
【実施例4】
【0072】
本実施例4のプリンタ1において用いられる可動刃7は、
図14に示すように、可動刃7の刃先7aaが刃板71と補強板72との積層により構成されるとともに、補強板72は可動刃7の可動方向において刃板71よりも短く厚み方向において厚く設定され、刃板71が補強板72に対して刃先7aa側に突出させることにより構成されている。
【0073】
この積層の方法については種々の方法を採用することができるが、可動刃7及び固定刃8が例えば
図15に示す左右方向にほぼV字形状を有する形態で、左右一対の接合箇所にて、刃板71に補強板72を接合して積層する場合には、
図16に示すような手法を用いることができる。
図16は、
図15を左右方向に垂直かつ接合箇所を含む断面にて可動刃7を示している。
【0074】
すなわち、
図16に示すように、可動刃7の製造にあたっては、刃板71が補強板72側に突出する突起71aをダボ又はバーリングにより具備させるとともに、補強板72に突起71aを挿通させる挿通孔72aを設けて、突起71aを挿通孔72aに挿通させた後、突起71aの上側の頂部に断面内において三角形状を有するほぼ円錐形状の埋設部71bを上方から圧力を付与して埋設することにより突起71aの外周面を補強板72の挿通孔72aの内周面にカシメるとともに、挿通孔72aよりも外径の大きな抜け止め部71cを一体的に形成することにより、刃板71を補強板72に接合するものとしている。
【0075】
本実施例4のプリンタ1に用いられる可動刃7によれば、刃先7aaの厚みを薄くすることを、上述したような比較的単純な積層工程及び接合工程により実現することができ、製造工程をより簡単なものとして、コストダウンを図ることができる。なお、上述した接合手法に換えて、接着剤や粘着剤による接合や溶接による接合を用いてもよい。
【0076】
加えて、本実施例4においても、刃先7aaの厚みを薄くした上で、可動刃7の全体厚みに対して所定の比率を有して被印字媒体Pの切断に適切な値を確保することをより容易なものとすることができる。つまり、可動刃7の刃先7aaに被印字媒体Pの切断においては必須ではない鋭利性を具備させてしまうことを防止することができ、これにより、作業安全性と製品としての品質をより高めることができる。
【0077】
さらに、本実施例4においては、実施例3に比べても、研磨等の特殊加工をも不要とすることができる。一般に刃材71を構成するSK材やSKH材は高価であるため、刃材71を薄化することで、材料単価の低減をも図ることができ、かつ、補強板72については、通常のSUS材や亜鉛鋼板等の比較的安価な材料を用いることができる。これにより、可動刃7に用いられる原材料費を低減してコストダウンを図ることができる。
【0078】
実施例3及び実施例4において示した可動刃7は、プラテンユニットケース5を回動中心の径方向に摺動可能として、プラテンローラ4の支軸4aの閉状態への移行時の収納部2aへの収納性を確保した実施例1のプリンタ1や、閉状態においてプラテンユニットケース5の左右方向を中心とした回転挙動を規制した実施例2のプリンタ1と併せて用いることで、被印字媒体Pの切断性を飛躍的に高めることができる。
【0079】
但し、実施例3及び実施例4において示した可動刃7は、上述したプラテンローラ4の支軸4aの収納性を確保した実施例1のプリンタ1や、プラテンユニットケース5の回転を規制した実施例2のプリンタ1と併せて実施されることは必須ではなく、通常のプリンタに単独で適用されても、被印字媒体Pの切断性を高めるとともに、作業安全性を高め、製品の品質を高めることができる。
【0080】
以上本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明は上述した実施例に制限されることなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形および置換を加えることができる。