(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のストレーナタイプのフィルタやフィルタエレメントを用いる技術は、オイルポンプの上流に設けられるもので、油圧回路内でオイルポンプから吐出されたオイルからコンタミ等を直接除去するものではない。したがって、オイルポンプ内やその直上流で混入したコンタミ等を除去することはできない。
また、自動変速機の場合、油圧回路には、様々なバルブを組み込んだバルブボディを有するコントロールバルブユニットが装備されるが、バルブボディ内等に、オイルに混入したコンタミやエアを除去するフィルタを直接装備すれば、各バルブに供給する直前でオイルに混入したコンタミやエアを除去することができ、確実にオイル管理ができ、また、フィルタをコンパクトに付設することができる。
【0006】
しかし、上記のストレーナタイプを用いる技術では、小さなコンタミを除去するためには、網の目の大きさ(メッシュサイズ)を小さく(細かく)することが必要であり、メッシュサイズを小さくすると、流路抵抗の増大を招き圧力損失が大きくなるので、これにも限度がある。したがって、ストレーナタイプのフィルタは、初期混入の加工残留バリのような比較的大きなコンタミの除去のためには有効であるが、比較的小さなコンタミの除去には適さない。
【0007】
また、上記の濾紙等のフィルタエレメントを用いる技術では、小さなコンタミを除去することはできるが、流路抵抗の増大を招き圧力損失が大きくなるため、オイルポンプの下流に設けることは困難である。また、このタイプのフィルタは、小型化には適さず、油圧回路内への組み込みは困難であり、バルブボディへの組み込みは極めて困難である。しかも、小型化するほど、エレメント交換を頻繁に実施することが必要になり、実用上の課題も多い。
【0008】
特に、近年、変速機の油圧回路内からのオイルのリーク低減のために、油圧回路各部のクリアランスが縮小される傾向にあり、オイルのリークに伴う比較的小さなコンタミの排出も少なく、また、ソレノイドバルブのソレノイドも小型化傾向にあり、この場合、推力を大きくできないため、オイル内に残留する比較的小さなコンタミに起因して、ソレノイドバルブに渋りが発生することが懸念され、オイルに混入した小さなコンタミの除去が要求されている。
【0009】
また、無段変速機(CVT)の場合、構造上オイル中にエアが混入しやすく、オイル中のエアの混入率が高まると、調圧がばらついて、油振(油圧振動)の原因になることが懸念され、無段変速機の場合、オイルに混入したエアの除去が要求される。
本発明は、かかる課題に鑑みて創案されたもので、オイル内に混入した小さなコンタミを変速機の油圧回路内で除去できるようにした、オイルフィルタ装置を提供すること、また、バルブボディへの組み込みが可能なオイルフィルタ装置を提供すること、さらには、オイル内に混入したエアを変速機の油圧回路内で除去できるようにした、オイルフィルタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記の目的を達成するために、本発明のオイルフィルタ装置は、油圧回路に介装され、円筒状油路と、前記円筒状油路の一端の側面に設けられ前記円筒状油路に螺旋状にオイルを進入させる入口と、前記円筒状油路の中間部若しくはそれよりも他端側の外周部に設けられ前記円筒状油路内の螺旋流によって外周側に遠心分離された質量がオイルよりも大きい混入物を排出する混入物出口と、前記円筒状油路の他端の内周部に連通して設けられ前記円筒状油路内の螺旋流によって前記混入物を遠心分離されたオイルを排出するオイル出口と、を備え
、前記円筒状油路は、前記一端から前記他端に行くに従って流路面積が縮小されていると共に、内部に円柱状空間を有するケースと、前記円柱状空間内に軸方向に可動に内装され、前記一端から前記他端に行くに従って縮径するテーパ状の内周面を有する外筒部材と、前記ケースに固定されると共に前記外筒部材の内方に間隙を存して同軸的に挿入され、前記外筒部材の前記内周面に対向し前記一端から前記他端に行くに従って前記内周面に接近する円筒形状の外周面を有する内筒部材と、前記外筒部材を前記一端へ向けて付勢する弾性部材と、を備え、前記円筒状油路は、前記外筒部材の前記内周面と前記内筒部材の前記外周面とにより区画されて形成されていることを特徴としている。
【0012】
(
2)さらに、前記内筒部材の前記一端側に形成された第1端壁部と、前記外筒部材の前記他端側に形成された第2端壁部と、前記第1端壁部と前記外筒部材の前記一端側の先端部との間に形成された第1空間と、前記第2端壁部と前記内筒部材の前記他端側の先端部との間に形成された第2空間と、前記ケースの前記第1空間に面する側壁に、前記円筒状油路の周方向にオイルが流れ込むように配向(流入方向が設定)されて形成された第1開口と、前記外筒部材の軸方向中間部に、前記外筒部材の内外を連通するように形成された貫通穴と、前記貫通穴に連通するように前記ケースの側壁に形成された第2開口と、前記内筒部材の内側に前記他端側から前記一端側に延びるように形成されたオイル流路と、前記ケースの側壁に前記オイル流路と連通するように形成された第3開口と、を備え、前記入口は前記第1開口により構成され、前記混入物出口は、前記貫通穴及び前記第2開口により構成され、前記オイル出口は
、前記第3開口により構成されていることが好ましい。
【0013】
(
3)さらに、前記外筒部材の前記第2端壁部に前記一端側に延びるように突設され、前記オイル流路の内部に配設された管状部と、前記内筒部材の内周面と前記管状部の外周面とにより区画されて形成されて、前記円筒状油路内のオイルの螺旋流が螺旋状を保ちながら前記他端側から前記一端側に流通する第2円筒状油路と、前記円筒状油路内及び前記第2円筒状油路内の螺旋流によって内周側に遠心分離されたエアを排出するエア出口と、前記混入物及び前記エアを遠心分離されたオイルを排出する前記オイル出口と、を備えていることが好ましい。
【0014】
(
4)さらに、前記内筒部材の内周面は、前記他端から前記一端に行くに従って縮径するテーパ状に形成され、前記第2円筒状油路は、前記他端から前記一端に行くに従って流路面積が縮小されていることが好ましい。
(
5)また、車両用自動変速機の油圧回路に介装されたバルブユニットに内装され、前記入口にはライン圧の油路が接続され、前記オイル出口には前記バルブユニットに装備されたソレノイドバルブの元圧の油路が接続され、前記混入物出口には前記バルブユニットに装備されたスプールバルブの油路が接続されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
(1)本発明のオイルフィルタ装置によれば、円筒状油路の一端の側面に設けられた入口から、円筒状油路内に進入したオイルは、円筒状油路内で螺旋状に流れるため、オイルにオイルよりも重いコンタミ等の混入物が含まれていると、混入物は、螺旋流によって外周側に遠心分離されて、一部のオイルと共に混入物出口から排出される。一方、混入物を遠心分離されたオイルはオイル出口から排出される。これにより、ストレーナタイプのメッシュフィルタや濾紙等を用いたフィルタエレメントのように、大きな圧力損失を招くことなく、比較的小さな混入物までもオイルから分離することができる。また、円筒状油路と、オイルをこの円筒状油路に旋回成分を与えて進入させるという簡素な構造なので、小型化も容易であり、バルブボディ内に組み込むことも可能である。
【0016】
また、円筒状油路の流路面積が、その一端から他端に行くに従って縮小されて
いるので、オイルの旋回流が下流に進むにしたがって速度を増すことになり、遠心分離作用を強めることができる。
さらに、円柱状空間を有するケース内に軸方向に可動に内装され、一端から他端に行くに従って縮径するテーパ状の内周面を有する外筒部材と、ケースに固定されると共に外筒部材の内方に間隙を存して同軸的に挿入され、外筒部材の内周面に対向し一端から他端に行くに従って接近する円筒形状の外周面を有する内筒部材と、外筒部材を一端へ向けて付勢する弾性部材と、を備え、円筒状油路を、外筒部材の内周面と内筒部材の外周面とにより区画形成
しているので、入口から進入するオイルの量が増大すれば、円筒状油路内の油圧が上昇して、弾性部材の付勢力に抗して外筒部材を他端側に移動させる。これにより、一端から他端に行くに従って縮径するテーパ付き円筒形状に形成された外筒部材の内周面は、内筒部材の外周面と距離を拡大しながら油圧の上昇が抑えられる。
【0017】
この結果、外筒部材は、円筒状油路内の油圧による外筒部材を他端側に移動させる力が弾性部材の付勢力とバランスする可動方向位置となり、流入するオイルの量に応じた流路面積が確保されるので、円筒状油路内に送り込まれるオイルの量が少なければ、円筒状油路の流路面積が縮小しオイルの旋回流の流速を確保して遠心分離作用を得ることができ、円筒状油路内に送り込まれるオイルの量が多ければ、相応分だけ円筒状油路の流路面積が拡大し、円筒状油路内でのオイルの旋回流の流速を確保し遠心分離作用を得るようにしながら、大きな圧力損失の発生を回避することができる。
【0018】
(
2)内筒部材の一端側に形成された第1端壁部と外筒部材の一端側の先端部との間に形成された第1空間に面するケースの側壁に第1開口を形成し、第1開口により入口を構成すれば、オイルはケースの第1開口からまず第1空間に進入するが、第1開口は円筒状油路の周方向にオイルが流れ込むように配向されているので、オイルは螺旋流となって円筒状油路内を進む。
【0019】
第2端壁部と内筒部材の他端側の先端部との間に第2空間を形成し、外筒部材の軸方向中間部に貫通穴を形成し、この貫通穴に連通するようにケースの側壁に第2開口を形成し、貫通穴及び第2開口により混入物出口を形成すると、円筒状油路内を進んだ旋回流の外周側では、オイルの一部が貫通穴及び第2開口からなる混入物出口から排出される。円筒状油路内を進む旋回流はオイル内の混入物を外周側に遠心分離するので、遠心分離された混入物は一部のオイルと共に混入物出口から排出される。
【0020】
また、内筒部材の内側に他端側から一端側に延びるようにオイル流路を形成し、ケースの側面にオイル流路と連通するように第3開口を形成し、オイル流路及び第3開口によりオイル出口を構成すれば、遠心分離により混入物が除去されたオイルは、オイル流路及び第3開口からなるオイル出口から排出される。
このようにして、ケースの第1開口から内部の円筒状油路内に進んだオイルは、遠心分離され、混入物は一部のオイルと共にケースの第2開口から排出され、混入物を除去されたオイルはケースの第3開口から排出されるので、例えば、第1〜3開口をケースの一側に並べて配置することで、本装置をバルブボディに容易に組み込むことが可能になる。
【0021】
(
3)外筒部材の第2端壁部に前記一端側に延びるように突設した管状部をオイル流路の内部に配設し、内筒部材の内周面と管状部の外周面とにより他端側から一端側に流通する第2円筒状油路を区画形成し、円筒状油路内及び第2円筒状油路内の螺旋流によって内周側に遠心分離されたエアを排出するエア出口を設け、オイル出口から混入物及びエアを遠心分離されたオイルを排出すれば、内周側に遠心分離されたエアは一部のオイルと共にエア出口から排出され、オイルに混入したエアを除去することができる。
【0022】
(
4)内筒部材の内周面が、他端から一端に行くに従って縮径するテーパ状に形成され、第2円筒状油路が、他端から一端に行くに従って流路面積が縮小されていれば、第2円筒状油路内においてもオイルの旋回流が下流に進むにしたがって速度を増すことになり、遠心分離作用を強めることができる。
(
5)車両用自動変速機の油圧回路に介装されたバルブユニットに内装すれば、本装置をコンパクトに組み付けることができ、入口にはライン圧の油路を接続すれば、高圧のライン圧を利用して遠心分離作用を得ることができる。また、オイル出口にはバルブユニットに装備されたソレノイドバルブの元圧の油路を接続すれば、遠心分離により比較的小さな混入物(或いは混入物及びエア)が除去されたオイルがソレノイドバルブの元圧の油路に導入されるので、ソレノイドバルブに渋りが発生するおそれが解消される。また、混入物出口にはバルブユニットに装備されたスプールバルブの油路を接続すれば、スプールバルブは混入物の影響の少ないので、バルブの不具合を招くことなく、オイルを有効に利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
なお、本実施形態では、オイルフィルタ装置が、自動変速機のコントロールバルブユニットに装備されたバルブボディに組み込まれているものを例示するが、本発明にかかるオイルフィルタ装置は、変速機のみならず油圧回路であれば有効であり、これに限定されるものではない。
【0025】
〔装置構成〕
まず、本オイルフィルタ装置の構成を説明する。
図1に示すように、バルブボディ本体(アッパボディ)1の一部には、円柱状空間10aを内部に備えたケース部(ケース)10が形成されており、このケース部10の円柱状空間10a内には、外筒部材20が軸方向に可動に装備され、内筒部材30が軸方向に固定されて装備され、外筒部材20と内筒部材30との間に一端(図中、左端)から他端(図中、右端)にオイルが流通する円筒状油路(第1円筒状油路)52が形成されている。
【0026】
また、バルブボディ本体1の底面(図中、下面)には、セパレートプレート3を挟んで、バルブボディカバー(ロアボディ)2が結合している。
バルブボディカバー2が結合するケース部10の底面(図中、下面)を構成する側壁及びセパレートプレート3には、第1開口11,第2開口12,第3開口13,第4開口14が形成されている。バルブボディカバー2には、これらの第1開口11,第2開口12,第3開口13,第4開口14と対応して、第1油路41,第2油路42,第3油路43,第4油路44が区画形成されている。
【0027】
外筒部材20は、その基端の端壁部(第2端壁部)21と円柱状空間10aの端壁部10cとの間に介装されたバネ(弾性部材)5によって、その先端側(円筒状油路52の一端側)に向けて付勢されている。なお、ここでは、バネ5としてコイルスプリングを例示するが、バネ(弾性部材)の種類はこれに限定されない。
また、内筒部材30は、その基端の端壁部(第1端壁部)31の鍔状の外周部31bを、円柱状空間10aの端部(円筒状油路52の一端側)に形成された段部10dに当接した状態で、スナップリング8によって係止されている。
【0028】
円柱状空間10aは、バルブボディ本体1の一端(図中、左端)に開口しており、この開口からバネ5,外筒部材20及び内筒部材30が円柱状空間10aの内部に挿入された後、蓋部材4によってかかる開口が閉塞されるが、ここでは、蓋部材4と内筒部材30の端壁部31との間にバネ6を圧縮状態で介装し、バルブボディ本体1,セパレートプレート3及びバルブボディカバー2に形成されたスリット7aに抜け止めプレート7を挿入することにより、バネ6の弾性反力を利用して蓋部材4を固定している。
【0029】
外筒部材20は、外筒本体22の基端に端壁部21が形成されて構成され、外筒本体22は、円柱状空間10aを区画形成する円筒状内壁面10bに摺接する円筒状外周面22aと、先端(円筒状油路52の一端側)から基端(円筒状油路52の他端側)に行くに従って縮径するテーパ付き円筒形状の内周面(テーパ状内周面)22bを有している。また、外筒部材20の軸心部分(外筒本体22の内部)には、管状部25が端壁部21から突設されている。管状部25には、円筒状外周面25aと円筒状内周面25bとが備えられる。なお、円筒状内壁面10b,円筒状外周面22a,円筒状外周面25a,及び円筒状内周面25bは、いずれも真円筒状である。
【0030】
内筒部材30は、端壁部31から内筒本体32が突設されて構成され、内筒本体32は、外筒本体22のテーパ状内周面22bと離隔して対向する円筒状(真円筒状)の外周面32aと、先端(円筒状油路52の他端側)から基端(円筒状油路の一端側)に行くに従って縮径するテーパ付き円筒形状の内周面(テーパ状内周面)32bを有している。外筒部材20の管状部25は、内筒部材30の軸心に同軸に配置されている。
【0031】
外筒本体22のテーパ状内周面22bと内筒本体32の外周面32aとの間に、円筒状油路52が形成されている。
また、内筒本体32のテーパ状内周面32bと管状部25の外周面25aとの間には、第2円筒状油路54が形成されている。
外筒部材20の外筒本体22の先端部23と内筒部材30の端壁部31の内壁面31aとの間は一定以上離隔しており、端壁部31と外筒部材20の先端部23との間には、空間(第1空間)51が形成されている。空間51は外筒部材20の軸方向移動に応じて軸方向に拡縮する。第1油路41及び第1開口11はこの空間(第1空間)51に臨んでおり、第1油路41内のオイルは、第1開口11から空間51内に進入可能になっている。これらの第1開口11及び空間51により、オイルを円筒状油路52に進入させる入口が構成される。
【0032】
内筒部材30の内筒本体32の先端部33と外筒部材20の端壁部21の内壁面21aとの間も一定以上離隔しており、端壁部21と内筒部材30の先端部33との間にも、空間(第2空間)53が形成されている。空間53も外筒部材20の軸方向移動に応じて軸方向に拡縮する。
外筒部材20の外筒本体22の端壁部21の近くで第2開口12及び第2油路42に対応する箇所の外周には、第2開口12に連通する溝部24aが形成され、外筒部材20の外筒本体22の中間部には、外筒本体22の内外を貫通するように溝部24aと連通する貫通穴24が形成されている。また、円柱状空間10aには溝部24aと第2開口12とを連通する環状溝10eが形成される。したがって、空間53内のオイルの一部は、貫通穴24から溝部24a,環状溝10e及び第2開口12を通じて第2油路42に排出可能になっている。
【0033】
管状部25の先端部26は外筒部材20の先端部23と一致した軸方向位置に構成され、内筒部材30の端壁部31の中空部内において、内筒部材30の端壁部31の外壁面31bから一定以上離隔しており、空間(第3空間)55が形成されている。空間55も外筒部材20の軸方向移動に応じて軸方向に拡縮する。
また、空間55は、内筒部材30と蓋部材4との間でバネ6を収容する空間56、及び、管状部25の内部空間(円筒状内周面25b内の空間)57と連通している。さらに、管状部25の内部空間57は、外筒部材20の端壁部21と円柱状空間10aの端壁部10cとの間でバネ5を収容する空間58と連通している。
【0034】
そして、第3開口13及び第3油路43は空間56に臨んでおり、空間55内のオイルの一部は、空間56,第3開口13を通じて第3油路43に排出可能になっている。
さらに、第4開口14及び第4油路44は空間58に臨んでおり、空間55内のオイルの一部は、管状部25の内部空間57,空間58,第4開口14を通じて第4油路44に排出可能になっている。
【0035】
ところで、第1油路41と空間51との間に設けられる第1開口11は、
図2に示すように、円筒状油路52の軸心線、即ち、外筒部材20及び内筒部材30の軸心線に対して偏心した方向、特に、空間51及び円筒状油路52の周方向にオイルが流れ込むように配向されて形成されている。したがって、空間51内に進入したオイルは、
図3に示すように、円筒状油路52内を螺旋状に一端から他端に進む。
【0036】
このとき、円筒状油路52の外周を区画する外筒本体22のテーパ状内周面22bによって、円筒状油路52の一端の空間51から、円筒状油路52の中間部若しくはそれよりも他端側の空間53に向けて流路断面積が次第に縮小するので、オイルの螺旋流SF1は次第に加速するようになっている。
この螺旋流の旋回成分によって、オイル内に混入しているオイルよりも重いコンタミ等の混入物(以下、コンタミという)はオイルの螺旋流SF1の外周側に遠心分離されるので、コンタミは、貫通穴24から溝部24a,環状溝10e及び第2開口12を通じて第2油路42に一部のオイルと共に排出されるようになっている。これらの空間53,貫通穴24,溝部24a,環状溝10e及び第2開口12により、コンタミを含んだオイルを排出するコンタミ出口(混入物出口)が構成される。
【0037】
そして、この加速したオイルの螺旋流SF1の残部は空間53から第2円筒状油路54に進入するが、円筒状油路52内で加速されることもあり、第2円筒状油路54に進入するオイルは、旋回成分を有しており、
図3(b)に示すように、螺旋状に第2円筒状油路54内を進む。
このときも、第2円筒状油路54の外周を区画する内筒本体32のテーパ状内周面32bによって、第2円筒状油路54の一端の空間53から他端の空間55に向けて流路断面積が次第に縮小するので、オイルの螺旋流SF2は次第に加速するようになっている。
【0038】
この螺旋流SF2の旋回成分によって、オイル内に混入しているオイルよりも軽いエアは、
図4に示すように、オイルの螺旋流SF2の内周側に遠心分離されるので、エアは、空間55の内周側に連通する管状部25の内部空間57から空間58,第4開口14を通じて第4油路44に一部のオイルと共に排出されるようになっている。これらの空間57,空間58,第4開口14により、エアを含んだオイルを排出するエア出口が構成される。
【0039】
そして、コンタミ及びエアの多くを除去されたオイルは、空間55から空間56,第3開口13を通じて第3油路43に排出されるようになっている。これらの空間56,第3開口13により、コンタミ及びエアを遠心分離により除去されたオイルを排出するオイル出口が構成される。
なお、第1油路41は図示しないオイルポンプで加圧され調圧されたライン圧のオイルを供給する油路に接続され、第2油路42はオイル内のコンタミ及びエアの混入にあまり影響されないスプール系のバルブへオイルを供給する油路に接続され、第3油路43はオイル内のコンタミの混入影響の大きいソレノイドバルブへオイルを供給する油路に接続され、第4油路44はエアと余剰オイルを排出するエア&ドレン回路や潤滑用油路に接続されている。
【0040】
〔作用及び効果〕
本発明の一実施形態にかかるオイルフィルタ装置は、上述のように構成されるので以下のような作用及び効果が得られる。
まず、オイルポンプで加圧され調圧されたライン圧のオイルが第1油路41に導入されると、第1開口11から空間51内に進入する。第1開口11からのオイルは、空間51及び円筒状油路52の周方向に流れ込むので、空間51から円筒状油路52内に進入したオイルは、
図3に示すように、円筒状油路52内を螺旋状に一端から他端に進む。
【0041】
この螺旋流の旋回成分によって、オイル内に混入しているオイルよりも重いコンタミはオイルの螺旋流SF1の外周側に遠心分離され、コンタミは、小さいものも含めて、貫通穴24から溝部24a,環状溝10e及び第2開口12を通じて第2油路42に一部のオイルと共に排出される。
特に、本実施形態では、円筒状油路52の外周を区画する外筒本体22のテーパ状内周面22bによって、円筒状油路52の一端の空間51から他端の空間53に向けて流路断面積が次第に縮小するので、オイルの螺旋流SF1は次第に加速するため、螺旋流の旋回成分による遠心分離作用をより確実に得ることができる。
【0042】
そして、オイルの螺旋流SF1の残部は空間53から第2円筒状油路54に進入するが、第2円筒状油路54に進入するオイルも、旋回成分を有しており、
図3(b)に示すように、螺旋状に第2円筒状油路54内を進む。
この螺旋流SF2の旋回成分によって、オイル内に混入しているオイルよりも軽いエアはオイルの螺旋流SF2の内周側に遠心分離され、エアは、空間55の内周側に連通する管状部25の内部空間57から空間58,第4開口14を通じて第4油路44に一部のオイルと共に排出される。
【0043】
このときも、第2円筒状油路54の外周を区画する内筒本体32のテーパ状内周面32bによって、第2円筒状油路54の一端の空間53から他端の空間55に向けて流路断面積が次第に縮小するので、オイルの螺旋流SF2は次第に加速するため、螺旋流の旋回成分による遠心分離作用をより確実に得ることができる。
そして、コンタミ及びエアの多くを除去されたオイルは、空間55から空間56,第3開口13を通じて第3油路43に排出される。
【0044】
こうして、小さいものも含んだコンタミ及びエアの多くを除去されたオイルは、第3油路43に接続されたソレノイドバルブへオイルを供給する油路に供給されるので、オイル内のコンタミ及びエアの混入影響の大きいソレノイドバルブには、コンタミ及びエアの多くを除去されたオイルが供給されて、ソレノイドバルブに渋りが発生する恐れを解消することができる。また、オイル中のエアの混入率が高まると、調圧がばらついて油振(油圧振動)の原因になるが、このようなおそれも回避できる。したがって、構造上オイル中にエアが混入しやすい無段変速機(CVT)に特に有効である。
【0045】
また、コンタミを含んだオイルは、第2油路42からオイル内のコンタミの混入にあまり影響されないスプール系のバルブへ供給されるので、バルブの不具合を招くことなく、オイルを有効に利用することができる。
さらに、エアを含んだオイルは、第4油路44からエア&ドレン回路のほかに潤滑用油路にも送られるので、この点でもオイルを有効に利用することができる。
【0046】
ところで、本実施形態にかかる装置では、外筒部材20が可動であり、且つ、円筒状油路52の外周を区画する外筒本体22のテーパ状内周面22bが下流側に向かって縮径しているので、円筒状油路52に進入するオイルの流量が増大すると、オイルがテーパ状内周面22bを通じて外筒部材20を下流側(
図1,3中、右側)に押し込むため、円筒状油路52の流路断面積が増大すると共に円筒状油路52のオイルの圧力が低下し、オイルの圧力とバネ5の付勢力とがバランスした状態となる。
【0047】
逆に、円筒状油路52に進入するオイルの流量が減少すると、オイルがテーパ状内周面22bを下流側に押し込む力が弱まり、バネ5の付勢力によって外筒部材20のテーパ状内周面22bが上流側(
図1,3中、左側)に戻され、円筒状油路52の流路断面積が減少すると共に円筒状油路52のオイルの圧力が上昇し、オイルの圧力とバネ5の付勢力とがバランスした状態となる。
したがって、円筒状油路52内では、オイルは常に一定範囲の圧力状態となり、旋回流SF1の流速が過剰に低下することはなく、常に遠心分離作用を得ることができる。
【0048】
第2円筒状油路54の外周を区画する内筒本体32のテーパ状内周面32bも下流側に向かって縮径しているので、外筒部材20が上記のように円筒状油路52内の圧力バランスで移動すると、第2円筒状油路54の流路断面積も変化する。つまり、円筒状油路52に進入するオイルの流量が増大し外筒部材20が下流側(
図1,3中、右側)に押し込まれると、第2円筒状油路54の流路断面積が増大し、逆に、円筒状油路52に進入するオイルの流量が減少し外筒部材20が上流側(
図1,3中、左側)に戻されると、第2円筒状油路54の流路断面積が減少する。
したがって、円筒状油路52内及び第2円筒状油路54内では、オイルは常に一定範囲の圧力状態となり、旋回流SF1,SF2の流速が過剰に低下することはなく、常に遠心分離作用を得ることができる。
【0049】
例えば、
図5〜
図8は円筒状油路52を中心に円筒状油路52に進入するオイルの流量による動作を説明する図である。
図5は円筒状油路52に進入するオイルの流量が比較的少ない場合を示し、外筒部材20が円筒状油路52の上流側に位置し、外筒部材20とケース部10の一端内壁との距離S1が比較的大きくなっている。円筒状油路52の流路断面積に対応する径方向距離d11及び第2円筒状油路54の流路断面積に対応する径方向距離d21は比較的小さい。
【0050】
このときの空間51,53,55,58の各油圧のレベルをP1,P2,P3,P4で示すと、
図8(a)に実線で示すように、空間51内の油圧P1は円筒状油路52内での圧力損失によって空間53内では油圧P2に低下し、その後、空間53内の油圧P2は第2円筒状油路54内での圧力損失によって空間55内では油圧P3に低下し、その後、ドレン排出されるオイルは空間55から空間58に進む際の管状部25の内部空間57等での圧力損失によって空間58内では油圧P4に低下する。
【0051】
図6は
図5に示す状態から円筒状油路52に進入するオイルの流量が増大した状態を示し、オイルの流量が増大すると、外筒部材20が円筒状油路52のやや下流側に移動し、外筒部材20とケース部10の一端内壁との距離S2は小さくなる(S1>S2)。各部の圧力P1,P2,P3,P4が、
図8(b)に実線で示す状態から2点鎖線で示すように上昇する(網掛け領域参照)。このため、外筒本体22のテーパ状内周面22bが下流側に押し込まれ、円筒状油路52の流路断面積に対応する径方向距離d12及び第2円筒状油路54の流路断面積に対応する径方向距離d22が増大し始める。
【0052】
図7は
図6に示す状態から外筒本体22のテーパ状内周面22bが下流側に押し込まれて、オイルの圧力とバネ5の付勢力とがバランスした状態を示す。この状態では外筒部材20が円筒状油路52の下流側にさらに移動し、外筒部材20とケース部10の一端内壁との距離S3はさらに小さくなる(S2>S3)。円筒状油路52の流路断面積に対応する径方向距離d13及び第2円筒状油路54の流路断面積に対応する径方向距離d23は何れも増大し、各部の圧力P1,P2,P3,P4は、
図8(c)に実線で示す状態を経て2点鎖線で示す状態に落ち着く。
【0053】
したがって、エンジン駆動のオイルポンプのように流量が大きく変化するオイルポンプに対しても、オイルポンプの広い作動域で過剰な圧力損失を招くことなく遠心分離によるフィルタ効果を得ることができる。
また、本装置は、ストレーナタイプのメッシュフィルタや濾紙等を用いたフィルタエレメントのように、大きな圧力損失を招くことがなく、比較的小さなコンタミまでもオイルから分離することができる上、円筒状油路52と、オイルをこの円筒状油路52に旋回成分を与えて進入させるという簡素な構造なので、小型化も容易であり、バルブボディ1内に組み込むことも容易である。
【0054】
〔その他〕
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、この実施形態を適宜変更して或いは一部を採用して実施することができる。
例えば、上記実施形態では、テーパ状内周面22b,32bの採用によって特有の効果を得ているが、テーパ状内周面22b,32bは一部に採用するか或いは採用せずに真円筒面などを用いてもよい。
また、上記実施形態では、外筒部材20を可動にしたがこれも必須ではない。
さらに、外筒部材20に管状部25を設け、エア抜きも可能にしているがこれも必須ではなく、コンタミ除去のみを採用してもよい。