(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5757941
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】ハニカム体の被覆方法
(51)【国際特許分類】
C04B 41/85 20060101AFI20150716BHJP
B28B 11/00 20060101ALI20150716BHJP
B01D 46/00 20060101ALI20150716BHJP
F26B 11/08 20060101ALI20150716BHJP
C04B 35/645 20060101ALI20150716BHJP
C04B 38/00 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
C04B41/85 C
B28B11/00
B01D46/00 302
F26B11/08
C04B35/64 302
C04B38/00 303Z
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-513174(P2012-513174)
(86)(22)【出願日】2010年5月25日
(65)【公表番号】特表2012-528070(P2012-528070A)
(43)【公表日】2012年11月12日
(86)【国際出願番号】US2010036053
(87)【国際公開番号】WO2010138500
(87)【国際公開日】20101202
【審査請求日】2013年5月23日
(31)【優先権主張番号】12/474,889
(32)【優先日】2009年5月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】フレッチャー,トニア エイチ
(72)【発明者】
【氏名】ナップ,カレン ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ラング,ガブリエル エル
(72)【発明者】
【氏名】リスジトイスキュ,ウィリアム ピー
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ,レベッカ エル
(72)【発明者】
【氏名】スクワイア,ゲーリー ジー
【審査官】
小川 武
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−043851(JP,A)
【文献】
特開2005−199179(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/117621(WO,A1)
【文献】
特開2002−095911(JP,A)
【文献】
特開2006−205526(JP,A)
【文献】
国際公開第03/078121(WO,A1)
【文献】
国際公開第2008/066766(WO,A1)
【文献】
米国特許第03616070(US,A)
【文献】
特開昭63−197580(JP,A)
【文献】
特開平06−298563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/645,38/00−38/10,41/85
B28B 11/00
F26B 11/08
B01D 46/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハニカム体の外表面にセラミック被覆を施す方法であって、
縦軸を中心にハニカム体を回転させながら、前記ハニカム体の前記外表面にセラミック又はセラミック形成成分を含む被覆材料から成る第1の層を施すステップ、及び
セラミック又はセラミック形成成分を含む被覆材料から成る少なくとも1つの追加層を前記第1の層の上に施すステップ、
を有し、
前記追加層を施す前に、前記第1の層の少なくとも一部が少なくとも部分的に硬化され、
前記第1の層を施すステップ、前記第1の層の硬化、および前記少なくとも1つの追加層の1つの追加層を施すステップが、並行して行われることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記硬化処理が、前記第1の層の少なくとも一部を乾燥させて該層から液体成分を除去することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記各々の層の厚さが2.5mm未満であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記各々の層の厚さが0.1mm以上1mm以下であることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記被覆材料が、セラミック又はセラミック形成成分の縣濁液、セラミック又はセラミック形成成分のペースト、セラミック又はセラミック形成成分の発泡性混合物、及びセラミック又はセラミック形成成分のテープ成形シートから成る群より選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、米国出願第12/474,889号(出願日:2009年5月29日)の優先権を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明はハニカム体の被覆方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
大型のセラミックハニカム体の外表面に強度及び寸法精度を向上さるための平坦な被覆面を得るために、外部セラミック被覆、即ち「表皮」を施すことがよく行なわれている。表皮は、一般に、指定された直径要件を満足するハニカムマトリックス体が機械加工され後に施され、ほとんどの場合、マトリックス体が焼成され最終結晶構造及び強度が得られた後に施される。施工された表皮は、乾燥処理のような追加製造工程又は被覆品を再焼成して表皮材料を焼結又は反応焼結させる処理によって硬化される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は製造中及び使用中において損傷に強く、製造における乾燥及び/又は焼成ステップに起因する亀裂が少ない高強度の表皮が被覆された、改良型ハニカム体を製造する方法を開示するものである。このような特性は表皮の多層化によって得られる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の方法の実施の形態は、ハニカムマトリックスのようなハニカム体の外表面にセラミック被膜を施す方法である。この方法は(i)セラミック又はセラミック形成成分を含む被覆材料から成る第1の層を施すステップ、及び(ii)セラミック又はセラミック形成成分を含む被覆材料から成る少なくとも1つの追加層を第1の層の上に施すステップを有し、(iii)少なくとも1つの追加層を施す前に、第1の層の少なくとも一部を少なくとも部分硬化させることを特徴とする方法である。
【0006】
概して言えば、本開示した方法に基づく硬化処理は、例えば、第1の層の少なくとも一部を赤外線放射、マイクロ波放射、対流加熱、又はこれ等の組合せに晒すことにより、第1の層又はその一部を加熱することを含んでいる。特定の実施の形態において、硬化処理は第1の層の少なくとも一部を乾燥させることにより、層から、例えば、水媒体のような液体成分を除去することを含んでいる。乾燥処理は前記加熱方法の1つ又は組合せによる加熱によって促進される。
【0007】
一部の実施の形態において、被膜処理の間ハニカム体を回転させることによって、ハニカム体に多層被覆を施す本発明の方法が促進される。ハニカム体は対向する第1及び第2の端面、及び第1端面と第2端面との間に延びる外側面を有し、第1及び第2の端面に延びる縦軸の周囲に配置されている。縦軸を中心にハニカム体を回転させながら被覆材料を外側面に噴霧することにより、被覆材料の第1の湿潤層が形成される。第1の層又は後続層を施すために縦軸を中心にハニカム体を360°又はそれ以上回転させることができる。次に、後続の湿潤層を形成する前に、第1の湿潤層が少なくとも部分的に乾燥される。これ等の方法の別の特定の実施の形態において、第1の湿潤層を少なくとも部分的に乾燥させる間も、縦軸を中心にハニカム体が回転される。
【0008】
被覆材料の層を噴霧するステップ及び乾燥するステップを様々にアレンジすることができる。一部の実施の形態において、第1の湿潤層を乾燥又は部分乾燥させるステップの前に、被覆材料を噴霧するステップが終了する。別の実施の形態において、被覆材料を噴霧するステップと乾燥させるステップとが並行して行われる。後者の例は、縦軸を中心にハニカム体を回転させ、被覆材料の第1の層の一部を第1の回転弧に対応する外表面の第1の部分に施すステップ、及び被覆材料の第1の層の別の部分を第2の回転弧に対応する外表面の第2の部分に施すと同時に外表面の第1の部分の第1の層を加熱するステップを有している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
添付図面を参照しながら、以下に本発明の方法を更に説明する。
【
図1】本発明によって製造された被覆ハニカム体の概略斜視図。
【
図3a】ハニカム体に多層被覆を施す様子を示す概略図。
【
図3b】ハニカム体に多層被覆を施す様子を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ハニカム体又はハニカムマトリックスに表皮層を施す従来の方法は所謂「ドクターブレード」と呼ばれる方法である。この方法によれば、被覆混合物の固体及び液体原料を釣り合わせて塑性セメントが調製され、それが塗布され板又はブレードによって平坦にされる。ハニカム体はセラミック形成成分から成る乾燥成形されたものであっても、セラミック形成成分が強固なモノリシック・セラミック材料に変換される焼成成形からなるものであってもよい。通常、セメントを塗布する間、ハニカム体を回転させることによって、適切な厚さの平坦層が形成される。次に、このようにして塗布されたセメント被覆を乾燥して非結合水が除去される。この場合、適度な温度で数時間、例えば、65℃で4時間加熱することが好ましい。時により、ハニカム体及び被覆を焼成して、被覆、あるいは被覆及びハニカム体をモノリシックなセメント体又は被覆とされる。
【0011】
このような被覆の塗布及び乾燥工程には幾つかの欠点がある。よく発生する問題として、塗布工程においてハニカムマトリックスに対する被覆混合物の接着力が弱いこと、及び乾燥又は焼成工程において表皮亀裂が生じるという問題がある。別の問題として、表皮の厚さが不均一であること、塗布工程においてセメントが無駄になること、並びに塗布工程後及び使用中において表皮フレーク又は表皮チップとして剥がれる原因となる乾燥被覆の強度不足の問題がある。
【0012】
本出願が開示するハニカム体の被覆、即ち、表皮は、焼成後のハニカム体に対しても有効であるが、特に未焼成のハニカムマトリックスに対し有用である。表皮はマトリックスの焼成温度において焼結セラミック表皮に変わる原材料混合物から成るシート、ペースト、又は懸濁液を用いて、多重薄層又はベニヤとして未焼成マトリックスに施される。このように、1回の焼成工程によって、未焼成マトリックスが強固なセラミックマトリックスに変わると共に、ペースト又は懸濁被覆材料がマトリックス側面の外周を囲む亀裂がなく、チップ耐性のあるセラミック表皮に変わる。
図1は薄いベニヤ又は層14a、14b、14cから成るセラミック表皮14が施された外表面13を有する円筒形のハニカムマトリックス12から成る被覆ハニカム基体10の実縮尺又は実寸ではない概略図である。基体10のチャネル16のようなハニカムチャネルがマトリックス12の中心軸12aに対し平行に配列されている。
本発明の方法によるハニカムの表皮に用いられる膜、ペースト、又は縣濁液に含められるセラミック原材料の割合は、様々なフィルターマトリックス材料に対し有用であるよう選択される。施された被覆の強度及び接着力を確保すると共に/又は焼成被覆の熱膨張がマトリックスの熱膨張に適合するよう調整するための追加成分が選択される。例えば、焼成するとコージライトセラミックに変換可能な割合の粘土、タルク、及びアルミナから成る乾燥未焼成ハニカムマトリックの場合、被覆組成はタルク、粘土、シリカ、及びアルミナの混合物とメチルセルロースのような有機バインダー及び/又はポリエチレン・オキシドバインダー、並びに水のような媒体成分とを組み合わせたものから成ることができる。この混合物を被覆として未焼成マトリックの側面に施し、マトリックスと共に約1400℃で焼成することにより、マトリックス及び被覆の両方がコージライトに変化する。
【0013】
本開示した方法によって施される被覆又は表皮における表皮亀裂及びその他の欠陥を低減するため、表皮は薄い層又はベニヤとして形成される。本発明の方法の実施の形態において、硬化される前の各薄層又はベニヤの厚さは2.5mm未満、例えば、0.1mm以上1mm以下である。被覆材料がセラミック又はセラミック形成成分から成る発泡性混合物やテープ成形シートである実施の形態同様、被覆材料がセラミック又はセラミック形成成分から成る縣濁液又はペーストである実施の形態が有益であり、良好な結果が得られる。
【0014】
本発明による前記被覆材料はいずれもハニカム製品の改良に有益であるが、被覆材料が縣濁液であり、その材料の少なくとも1つの層が、ハニカム体に縣濁液をカスケード又は噴霧することによって施される方法が、経済的に製造する上において特に適している。実施の形態には、少なくとも1つの被覆材料層を施す間、軸を中心にハニカム体を回転させる方法を含んでいる。また、例えば、加熱により乾燥又はハニカム体に接着させるために、少なくとも1つの被覆材料層を硬化させる間、軸を中心にハニカム体を回転させる方法も含んでいる。従って、本発明は以下の説明に限定されることを意図するものではないが、特に前記のような実施の形態について説明する。
【0015】
前記のように、本発明の方法は、概して言えば、被覆製剤の多数の薄層又はベニヤをハニカムマトリックスに施すことによって表皮を形成するものである。そのため、層を形成するために選択された材料の組成、粘度、及び/又は塑性に応じてベニヤ層を施す様々な方法が使用可能ではあるが、縣濁被覆製剤をマトリックスに噴霧又はカスケードすることによって都合よく所望の薄いベニヤを形成することができる。噴霧及び/又はカスケートによって可能である適切なベニヤ層の厚さは0.1から1mmの範囲であるが、必要があれば2.5mmまでとすることができる。
【0016】
前記のように、別の被覆方法にはマトリックスの外面にテープ成形被覆材料の薄い塑性シートを施す方法や発泡被覆製剤の層を噴霧する方法がある。特に、塑性テープを施す場合、テープを施す前にマトリックスを予熱又は湿潤させることによりハニカムマトリックスの表面に対する層の接着力が向上する。
【0017】
マトリックスの表面に多数の薄い被覆層を噴霧する本発明の方法の実施の形態において、通常、噴霧した層を部分乾燥又は完全に乾燥させてから別の層が噴霧される。適切な乾燥方法には赤外線加熱、マイクロ波加熱、温風循環、又はこれ等の組合せがある。本発明の方法の効果には、(i)乾燥亀裂の減少、(ii)表皮チップのような他の被覆欠陥の減少、(iii)表皮材料の有効利用(iv)表皮とマトリックスとの接着力の向上、及び/又は(v)製品の外観の向上がある。
【0018】
各層を乾燥させてから別の層を施すことが、乾燥又は焼成における積層被覆の亀裂を防止する上で特に有効である。例えば、ホットエアガン、赤外線放射、及び/又は無線周波又はマイクロ波加熱によって、薄いペースト層又は縣濁層を乾燥させることができる。薄い噴霧層を急速乾燥させる上において、赤外線放射乾燥が特に有効である。
【0019】
噴霧によって、ハニカムマトリックスにベニヤ層を施すのに適した装置を
図2に概略示す。図示のように、装置20は円筒形のハニカムマトリックス12に接触し、装置内において回転を支持するよう配列された水平方向に対向するスピンドル24a及び24bを支持する支持フレーム22を有している。装置20内において、マトリックス12は図示の向きに配置され、電動機26が起動されると、スピンドル24aによって軸12aを中心にマトリックス12が、例えば、矢印25の方向に回転できるよう、マトリックスのハニカムチャネル16及び中心軸12aが水平方向においてスピンドルに位置合わせされる。
【0020】
マトリックス12が軸12aを中に回転されると、その側面に一定量の縣濁被覆製剤が噴霧されるよう配置された1つ以上の噴霧ヘッド28もフレーム22に支持されている。フレーム22は赤外線放射源30のような加熱手段も支持することができる。赤外線放射源30は、マトリックス12の側面に放射エネルギーを放射して、噴霧ヘッド28によってその表面に堆積された被覆材料を乾燥させるよう配置されている。
【0021】
一連の薄い被覆層の1つを堆積させる際、精密噴霧ヘッドによってマトリック12に縣濁ベニヤが施されている間、マトリックスを360°又はそれ以上回転させることができる。縣濁液によって比較的厚い層が形成される場合には、1回転された後乾燥される。施された層がマトリックスに施される最初の層の場合、例えば、スポンジ、ブラシ、又はドクターブレードを用いてその層をマトリック上に押し広げ、平坦化することによってマトリックス表面の開口チャネル又は同様の大きな窪みを埋めることが有益である。
【0022】
各々の被覆が施されるとき又はその後、赤外線放射源が起動され、このようにして形成された湿潤層が少なくとも部分乾燥された後、別の湿潤層が施される。希望する場合には、堆積中又はすべての薄層が堆積された後、更に回転させてマトリックスを加熱及び乾燥させることができる。縣濁液をカスケード塗布する場合には、噴霧ヘッド28を制御放出縣濁液タンクに代えるだけでよい。
【0023】
図3a及び3bは、
図2のハニカムマトリックス12から成るハニカム体に湿潤被覆層を施すと同時に部分乾燥させる例示的な工程を示す図である。
図3aはマトリックスの側面13に薄い被覆層14bが施される間における(すべての層について手順は同じであるが、この例では既に施され乾燥された薄い被覆層14aの上に施される間における)、ハニカムマトリックス12の端面を示す概略図である。
層14bのような薄い被覆層を施すため、層14bの一部が外表面13の第1の部分に堆積される間、縦回転軸12aを中心にマトリックス12が第1の回転孤だけ矢印A方向に回転される。堆積方法は精密噴霧ヘッド28から被覆材料を供給する方法である。第1の回転孤の大きさ及びそれに伴ってこの工程において被覆される外表面13の部分の大きさは、概略
図3aの矢印Aの長さで示される大きさである。
次いで、
図3bにおいて、被覆層14bの第1の部分によって外表面13の第1の部分が被覆された後、外表面13の別の部分が被覆層14bの第2の部分によって覆われる。この場合も堆積は精密噴霧ヘッド28によるものであって、軸12aを中心にマトリックス12が第2の回転孤にわたり回転されるにつれて実施されるものである。第2の回転孤の大きさ及びこの工程において被覆される外表面13の別の部分の大きさは、概略
図3bの矢印Bの長さで示される大きさである。
【0024】
図3bの矢印Bで示す外表面13の部分に対する被覆層14bの第2の部分の堆積と同時に、
図3bの矢印Aで示す外表面13の第1の部分に配された被覆層14bの第1の部分が加熱される。加熱は赤外線放射源30によるものであり、外表面13の第1の部分に配された層14bの部分が少なくとも部分乾燥される。外表面13が噴霧によって完全に被覆され、被覆層14bが乾燥されるまで、このように連続する回転孤の回転が続けられ、任意として追加の被覆層が同様に施される。
図3a及び3bに示す、ハニカム体の被覆と乾燥を同時に行う方法には様々なやり方があり、その選択は、他の条件もあるが、被覆材料の調製、熱源の効率、及び被覆材料から除去される液相材料の量に依存する。これ等の方法の特定の実施の形態には、第1の回転孤が360°未満、例えば、図示のように略90°である実施の形態が含まれている。必要条件ではないが、被覆される外表面13の第1及び第2の部分、従って、施される薄い被覆層の第1及び第2の部分が、
図3a及び3bに示すように、直接隣接している。被覆と乾燥とを同時に行う実施の形態の別の例には、第1の回転孤が180°である実施の形態、及び第1と第2の回転弧の合計が360°である実施の形態が含まれている。
【0025】
特に、別の層を堆積する前に、施された被覆層を乾燥させるために、被覆材料の堆積が中断される実施の形態において、1つ以上の薄層を噴霧する間、縦軸を中心にハニカム体が360°以上回転されることがしばしばある。例えば、回転速度が速く且つ/又は施される噴霧縣濁液層が非常に薄い場合、縦軸を中心にハニカム体が少なくとも540°回転される。
【0026】
様々な噴霧角度で動作する多数のヘッドを含む、2つの精密噴霧ヘッド以外のヘッドによって、ハニカム体の外表面に被覆材料を噴霧できることは、図面及びこれまでの説明から明らかである。選択した噴霧装置及び動作モードをプログラムして、様々な寸法及びハニカムマトリックス構成を有する特定のハニカム体の被覆に容易に適応させることができる。
【0027】
限定ではなく説明を意図した以下の実施例によって、本明細書に開示した方法を更に説明する。
【実施例】
【0028】
以下の手順に従って、いずれもコージライト組成物であるハニカムマトリックス及び平坦で実質的に欠陥のないセラミック表皮を備えたセラミックハニカム品を製造した。まず、幾何学的回転軸に平行なハニカムチャネルを有する直径約30cm、長さ約25cmの円筒形ハニカムマトリックスを用意した。マトリックスは焼成すると反応焼結コージライトハニカム構造体になる割合の粘度、タルク、及びアルミナから成る組成の乾燥未焼成押出しハニカム成形体から成っている。
【0029】
まず、前記直径のマトリックスになるまで、ハニカム成形体の表面を研削して余分な表面材料を除去した。次に、このマトリックスを多層被覆するための被覆縣濁液を用意した。被覆縣濁液は乾燥無機粉末、メチルセルロース・バインダー、及び水媒体の混合物から成る組成を有している。無機粉末の混合物は11.7重量部の水和カオリン粘土、40.6重量部のタルク、18.6重量部の含水アルミナ、14.7重量部のか焼アルミナ、及び14.4重量部のシリカ粉末を含んでいる。無機粉末成分を1重量部のメチルセルロース・バインダーと完全に混合した後、粘度約20パスカルセカンドの噴霧可能な液体濃度になるまで純水を加えて縣濁液を調製した。粉末の粒子寸法を約400メッシュ以下、例えば、平均の粒子寸法を38μmとして噴霧特性を向上させた。
【0030】
次に、高圧ガスとして100psi(689500Pa)の圧縮空気を用いるスプレーガンを使用してハニカムマトリックスの外表面に縣濁液を噴霧した。概して言えば、30〜200psi(206850〜1379000Pa)の空気圧及び5〜30パスカルセカンドの縣濁液粘度が噴霧を行う上において同等に有効である。
【0031】
前記のようにして、被覆縣濁液の最初の層を施した後、6kWの放射源から赤外線を1分30秒放射して乾燥させた。この加熱により約70%の遊離水が被覆から除去された。乾燥被覆の厚さは約0.5mmであった。
噴霧された被覆の厚さ及びその他の要因応じ、よりパワーの高い又は低い、例えば、3〜25kWの範囲の赤外線を放射して乾燥させることができる。乾燥時間に影響するその他の要因には被覆するマトリックスの寸法(直径及び長さ)、被覆に含まれている媒体の量、及び加熱される被覆の組成がある。
【0032】
乾燥処理の後、同じ噴霧及び赤外線加熱処理によって、第2の被覆を施し乾燥させた。これによって積層された被覆の平均の厚さは約1mmであった。各々の厚さが約0.5mmである、この方法による2〜4の被覆層を堆積させることにより、乾燥亀裂が殆ど又は全くない接着性のある乾燥被覆が得られた。
【0033】
本発明の方法が幅広いハニカム体構造及び組成に適用可能であり、例えば、現在固体及び/又はガス状汚染物質のろ過又は燃焼機関の排気ガスの処理に使用されているハニカム製品に対し平坦で接着性があり殆ど欠陥のない積層被覆又は表皮の施工に容易に適応させることができることは前記説明及び実施例から明白である。本発明の方法を適応させることには、支持するハニカム体と同時にかかる被覆を焼成して耐久性の高い被覆ハニカム製品を製造すると共に、製造工程を簡略化して全体の製造コストを低減することを含んでいる。添付クレームの精神及び範囲を逸脱せずに、当業者は本発明の特定の方法のこれ等及びその他の改良及び変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0034】
10 被覆ハニカム基体
12 マトリックス
12a マトリックスの中心軸
13 外表面
14 セラミック表皮
16 チャネル
22 支持フレーム
24a、24b スピンドル
26 電動機
28 噴霧ヘッド
30 赤外線放射源