(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
撹拌室の内面に面した撹拌エレメントの表面の表面法線(法線ベクトル)が撹拌室の表面に対して実質的に垂直であるように前記撹拌機の前記撹拌エレメントが設計されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の装置。
複数の撹拌エレメントが、軸の軸線に沿って互いに隣接した、前記軸から半径方向に突出した複数の円弧状のインペラであり、軸の中心から横方向に放射状に延びた部分と、インペラに当接した円弧状エッジとを有する、前記インペラのための複数の支持エレメントを有し、該支持エレメントが軸に沿って軸方向に配置されており、前記円弧状のインペラが、該円弧状のインペラに当接した前記支持エレメントの円弧状エッジの半径と同じ半径を有しており、前記インペラの半径と、前記支持エレメントの前記円弧状エッジの半径とが、軸の長さに沿って拡大している、請求項1から4までのいずれか1項記載の装置。
前記撹拌エレメントは、軸の長さに沿って互いに上下に配置された、前記軸に設けられた対応するオリフィスを貫通したロッド状撹拌羽根である、請求項1から4までのいずれか1項又は9記載の装置。
撹拌室の内面に面しかつ前記軸から外方に面した撹拌エレメントの面が螺旋を形成するように、前記ロッド状撹拌羽根が軸の長さに沿って互いに上下にかつ互いに対して角度を成して配置されている、請求項1から4までのいずれか1項又は9又は10記載の装置。
前記ロッド状撹拌羽根は、軸の長さに沿って互いに上下に配置されておりかつ、少なくとも1つの、実質的に鉛直方向に向けられた、ロッド状の結合エレメントによって互いに結合されている、請求項9から11までのいずれか1項記載の装置。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】撹拌室壁部の下側部分に設けられた出口を備えた本発明の撹拌装置を示す図である。
【
図2】撹拌室の底部に設けられた出口を備えた本発明の撹拌装置を示す図である。
【
図3】寸法が拡大しているインペラの3つのグループを有する本発明の撹拌機を示す図である。
【
図4】2つ以上の開放角度を有する撹拌室の構成を示す図である。
【
図5】
図3の撹拌機に配置されたインペラ羽根のグループの部分的な平面図である。
【
図6】
図5のインペラのグループの部分的な斜視図である。
【
図7】本発明の装置と、結合エレメントによって結合された撹拌エレメントを備えたロッド状の撹拌エレメントを備えた撹拌機とを示す図である。
【
図8】撹拌エレメントが軸の太くなった部分である、異なるタイプの撹拌機を示す図である。
【
図9】本発明の装置と、ロッド状撹拌エレメントを備えた撹拌機とを示す図である。
【
図10】撹拌エレメントが軸の太くなった部分でありかつ羽根エレメントを装備されている、本発明の装置を示す図である。
【0011】
発明の短い説明
本発明の目的は、撹拌効果を改良する、溶融ガラスを撹拌するための装置を提供し、さらに、撹拌装置の運転中に処理パラメータを変更することである。これは、撹拌機及び撹拌装置において、撹拌機の速度に加え、鉛直方向の移動が、(せん断応力等の)撹拌パラメータを変化させ、撹拌されている溶融ガラスの流れが、入口管から撹拌室を通って出口管へ達する間に加速されることによって達せられ、これにより、シュリーレンの厚さがさらに減じられる。
【0012】
この目的は、以下に定義するような溶融ガラスを撹拌するための装置によって達成される:
1.溶融ガラスを撹拌するための装置であって、
実質的に鉛直方向に向けられた撹拌室を有し、該撹拌室は少なくとも1つの円錐又は少なくとも1つの円錐の部分の内部形状を有しており、
前記撹拌室の上端部に配置された入口を有し、
前記撹拌室の下端部に配置された出口を有し、
前記撹拌室内に配置された撹拌機を有し、該撹拌機が、
(a)実質的に鉛直方向に向けられた、回転可能でかつ軸方向可動な軸、及び
(b)該軸の軸線に沿って互いに隣接した、前記軸から外方へ延びた複数の撹拌エレメントを有しており、
(c)押退け半径R
bladeを規定した円形領域を各撹拌エレメントが押し退けかつ前記軸のそれぞれの長さの位置における撹拌室がR
bladeよりも大きな内側半径R
wallを有するように、前記複数の撹拌エレメントが軸に沿って軸方向に配置されている形式のものにおいて、
前記円形領域の前記半径R
bladeと、対応する撹拌エレメントの寸法とが、軸の長さに沿って前記軸の下部から前記軸の上部に向かって拡大しており、前記軸は撹拌室の円錐形と実質的に同軸であり、撹拌エレメントは前記軸から半径方向に撹拌室の壁部の近くまで突出していることを特徴とする、溶融ガラスを撹拌するための装置。
【0013】
2.押退け容積Vを規定する撹拌室を溶融ガラスが流過する際に速度Sで撹拌室内の撹拌機の回転を行うように撹拌機の軸にトルクTを与えるモータを有し、前記溶融ガラスは粘度ηを有し、
撹拌室内の個々の位置における前記撹拌エレメントのそれぞれについて以下の関係が満たされるようにS、T、V、R
blade、R
wall、及びηが選択される:
(STV/η)
0.5>=5.0kg/s
Sはラジアン毎秒での撹拌機の速度、Tはニュートンメートルでの撹拌機を回転させるために撹拌機の軸に与えられるトルク、Vはm
3での撹拌機によって規定された押退け容積、ηはkg/m・sでの溶融ガラスの粘度、及び
(2πηNR
blade)/(R
wall−R
blade)<=3.5・10
-3N/m
2
η及びNは上に定義されるとおりであり、R
wallは軸に取り付けられた個々の撹拌エレメントの位置における撹拌室の内径であり、R
bladeは軸に取り付けられた撹拌エレメントの最大直径であり、R
wall及びR
bladeはメートルで示される、1に記載の溶融ガラスを撹拌するための装置。
【0014】
3.撹拌室の内面が複数の溝を有し、該溝は好適には前記軸の回転軸線に対して実質的に垂直である、1又は2に記載の装置。
【0015】
4.撹拌室の内面に面した撹拌エレメントの面の面法線(法線ベクトル)が撹拌室の面に対して実質的に垂直であるように前記撹拌機の前記撹拌エレメントが設計されている、1から3までのいずれか1つに記載の装置。
【0016】
5.複数の撹拌エレメントが、軸の軸線に沿って互いに隣接した、前記軸から半径方向に突出した複数の円弧状のインペラであり、軸の中心から横方向に放射状に延びた部分と、インペラに当接した円弧状エッジとを有する、前記インペラのための複数の支持エレメントを有し、該支持エレメントが軸に沿って軸方向に配置されており、前記円弧状のインペラが、該円弧状のインペラに当接した前記支持エレメントの円弧状エッジの半径と同じ半径を有しており、前記インペラの半径と、前記支持エレメントの前記円弧状エッジの半径とが、軸の長さに沿って増大している、1から4までのいずれか1つに記載の装置。
【0017】
6.支持エレメントが軸上に螺合させられている、4から5までの1つ以上に記載の装置。
【0018】
7.インペラが、軸の同じ長さにおいて同じ半径のインペラのグループとして配置されている、1から6までの1つ以上に記載の装置。
【0019】
8.インペラのグループが、2つ、3つ、又は4つのインペラから成る、7に記載の装置。
【0020】
9.各インペラの近位端部が軸に係止されている、5から8までのいずれかに記載の装置。
【0021】
10.平面図で実質的に円形の円弧形状を形成するように2つの隣接するインペラ羽根が結合されている、5から9までのいずれかに記載の装置。
【0022】
11.隣接し合うインペラ羽根が互いに反対方向に湾曲されている、5から10までのいずれかに記載の装置。
【0023】
12.2つの隣接し合うインペラ羽根が、平面図で実質的にだ円形又は長円形の円弧形状を形成するように接合されている、5から12までのいずれかに記載の装置。
【0024】
13.支持部材が軸に対して垂直に配置されている、1から12までのいずれかに記載の装置。
【0025】
14.鉛直方向で見た場合に支持部材が互いに重なり合っており、これにより押退け容積内でのガラスの直接の下方への流れを妨げるようになっている、1から13までのいずれかに記載の装置。
【0026】
15.押退け容積が円錐の一部の形状に形成されている、1から14までのいずれか1つに記載の装置。
【0027】
16.隣接し合うインペラ羽根が互いに反対方向に湾曲させられている、1から15までのいずれかに記載の装置。
【0028】
17.インペラ羽根が、インペラ羽根の厚さを貫通する複数の孔を有するか、又はインペラ羽根が、インペラの外面に複数の溝を有する、1から12までのいずれかに記載の装置。
【0029】
18.前記撹拌エレメントがロッド状撹拌羽根である、1から4までのいずれか1つに記載の装置。
【0030】
19.前記撹拌エレメントは、軸の長さに沿って互いに上下に配置された、前記軸に設けられた対応するオリフィスを貫通したロッド状撹拌羽根である、1から4までのいずれか1つ又は19に記載の装置。
【0031】
20.前記ロッド状撹拌羽根が、軸の長さに沿って互いに上下に配置されている、1から4までのいずれか又は18又は19に記載の装置。
【0032】
21.撹拌室の内面に面した撹拌エレメントの面が螺旋を形成するように、前記ロッド状撹拌羽根が軸の長さに沿って互いに上下にかつ互いに対して角度を成して配置されている、20に記載の装置。
【0033】
22.前記ロッド状撹拌羽根は、軸の長さに沿って互いに上下に配置されておりかつ、少なくとも1つの、実質的に鉛直方向に向けられた、ロッド状の結合エレメントによって互いに結合されている、20に記載の装置。
【0034】
23.前記撹拌エレメントが軸の太くなった部分を有する、1から4までのいずれか1つに記載の装置。
【0035】
24.前記太くなった部分が、円筒形、円錐形、球形、半球形、円錐台形、ベル形、及びこれらの組合せから成るグループから選択されている、1から4までのいずれか1つ又は23記載の装置。
【0036】
25.前記太くなった部分の外側に少なくとも1つの羽根エレメントが取り付けられている、1から4までのいずれか1つ又は23又は24に記載の装置。
【0037】
26.前記太くなった部分の外側に複数の羽根エレメントが取り付けられている、23に記載の装置。
【0038】
27.溶融ガラスを均質化する方法において、
1から15までのいずれか1つに記載の装置を提供し、
撹拌室に溶融ガラスを流過させ、
溶融ガラスが撹拌室を流過しながら該撹拌室内で撹拌機を回転させるために撹拌機の軸にトルクを加えることを特徴とする、溶融ガラスを均質化する方法。
【0039】
28.少なくとも毎秒1オンス(28.34g)の速度で前記溶融ガラスを撹拌室に流過させる、27に記載の方法。
【0040】
29.溶融ガラスのために配置された撹拌機であって:
a.実質的に鉛直方向に向けられた、回転可能でかつ軸方向可動な軸と、
b.軸の軸線に沿って互いに隣接した、前記軸から外方へ延びた複数の撹拌エレメントとを有し、
c.前記複数の撹拌エレメントが、押退け半径R
bladeを有する円形領域を各撹拌エレメントが押し退けるように、軸に沿って軸方向に配置されている形式のものにおいて、前記円形領域の前記半径R
bladeと、対応する撹拌エレメントの寸法とが、軸の長さに沿って前記軸の下部から前記軸の上部に向かって拡大していることを特徴とする、溶融ガラスのために配置された撹拌機。
【0041】
30.複数の撹拌エレメントが、軸の軸線に沿って互いに隣接した、前記軸から半径方向に突出した複数の円弧状のインペラであり、該インペラのための複数の支持エレメントを有し、該支持エレメントが、軸の中心から横方向に放射状に延びた部分を有しかつインペラに当接した円弧状エッジを有しており、前記支持エレメントが軸に沿って軸方向に配置されており、前記円弧状のインペラが、該インペラに当接させられた前記支持エレメントの円弧状エッジの半径と同じ半径を有している形式のものにおいて、前記インペラの半径と、前記支持エレメントの前記円弧状エッジの半径とが、軸の長さに沿って拡大していることを特徴とする、29に記載の溶融ガラスのための撹拌機。
【0042】
31.支持エレメントが軸上に螺合させられている、29又は30に記載の溶融ガラスのための撹拌機。
【0043】
32.インペラが、軸の同じ長さにおいて同じ半径のインペラのグループとして配置されている、29から31までの1つ以上に記載の溶融ガラスのための撹拌機。
【0044】
33.インペラのグループが、2つ、3つ、又は4つのインペラから成る、32に記載の溶融ガラスのための撹拌機。
【0045】
34.各インペラの近位端部が軸に係止させられている、29から33までの1つ以上に記載の溶融ガラスのための撹拌機。
【0046】
35.平面図で実質的に円形である円弧形状を形成するように2つの隣接するインペラが接合されている、29から34までの1つ以上の記載の溶融ガラスのための撹拌機。
【0047】
36.隣接し合うインペラ羽根が互いに反対方向に湾曲させられている、29から35までの1つ以上に記載の溶融ガラスのための撹拌機。
【0048】
37.平面図で実質的にだ円形又は長円形の円弧形状を形成するように、2つの隣接し合うインペラ羽根が接合されている、29から36までの1つ以上に記載の溶融ガラスのための撹拌機。
【0049】
38.支持部材が軸に対して垂直に配置されている、29から37までの1つ以上に記載の溶融ガラスのための撹拌機。
【0050】
39.鉛直方向で見た場合に支持部材が互いに重なり合っており、これにより、押退け容積内でのガラスの直接の下方への流れを妨げるようになっている、29から38までのいずれかに記載の溶融ガラスのための撹拌機。
【0051】
40.押退け容積が円錐の一部の形状に形成されている、29から39のいずれかに記載の溶融ガラスのための撹拌機。
【0052】
41.インペラ羽根が、該インペラ羽根の厚さを貫通する複数の孔を有するか、又はインペラ羽根が、該インペラ羽根の外面に設けられた複数の溝を有する、29から40までのいずれかに記載の溶融ガラスのための撹拌機。
【0053】
42.前記撹拌エレメントがロッド状の撹拌羽根である、29に記載の溶融ガラスのための撹拌機。
【0054】
43.前記撹拌エレメントが、軸の長さに沿って互いに上下に配置された前記軸に設けられた対応するオリフィスを貫通した、ロッド状の撹拌羽根である、29から42までのいずれかに記載の溶融ガラスのための撹拌機。
【0055】
44.前記ロッド状の撹拌羽根が、軸の長さに沿って互いに上下に配置されている、29又は42から43の1つ以上に記載の溶融ガラスのための撹拌機。
【0056】
45.前記軸から外方に面した撹拌エレメントの面が螺旋を形成するように、前記ロッド状の撹拌羽根が、軸の長さに沿って互いに上下にかつ互いに対して角度を成して配置されている、44に記載の溶融ガラスのための撹拌機。
【0057】
46.前記ロッド状の撹拌羽根が、軸の長さに沿って互いに上下に配置され、かつ少なくとも1つの実質的に鉛直方向に向けられたロッド状の結合エレメントによって互いに結合されている、44に記載の溶融ガラスのための撹拌機。
【0058】
47.撹拌エレメントが、軸の太くなった部分を有する、29に記載の溶融ガラスのための撹拌機。
【0059】
48.太くなった部分が、円筒形、円錐形、球形、半球形、円錐台形、ベル形、及びこれらの組合せから成るグループから選択された形状を有する、29又は47に記載の溶融ガラスのための撹拌機。
【0060】
49.少なくとも1つの羽根エレメントが、前記太くなった部分の外側に固定されている、29又は47から48に記載の溶融ガラスのための撹拌機。
【0061】
50.複数の羽根エレメントが前記太くなった部分に固定されている、29又は47から49に記載の溶融ガラスのための撹拌機、23の装置。
【0062】
したがって、本発明は、全体として装置が記載された1から26のいずれか1つにおいて上に定義された溶融ガラスのための撹拌機、及び1から26のいずれかの装置を有するガラスを均質化する方法にも関する。
【0063】
発明の詳細な説明
本発明の装置は、実質的に鉛直方向に向けられた撹拌室を有しており、この撹拌室は、少なくとも1つの円錐又は少なくとも1つの円錐の一部の内部形状を有している。直径は、撹拌室の下部から撹拌室の上部に向かって拡大しているので、撹拌室の底部での直径は、上部での直径よりも小さい。撹拌室は、撹拌室の上端部に配置された入口を有している。液体ガラスは、適切な装置において溶融させられた後に前記入口から撹拌室に導入され、通常は、本発明の装置に進入する前に清澄室を通過する。
【0064】
このような清澄室は、一般的に公知であり、例えば、米国特許出願公開第2010/0126225号明細書及び米国特許第7490487号明細書に記載されている。これらの米国明細書は、全ての有益な目的のために参照することによって本明細書に記載されたものとする。撹拌室は、溶融ガラスを撹拌及び均質化した後にこの溶融ガラスを取り出すための、各撹拌室の下端部に配置された出口を有している。本発明によれば、撹拌室は内径R
wallを有しており、この内径は、撹拌室の下部から撹拌室の上部へ拡大しており、つまり、半径は撹拌室の出口から入口に向かって拡大している。撹拌室は、少なくとも1つの開放角度を有するように円錐形に成形されており、この開放角度は、本発明の撹拌室の横断面において、前記撹拌室の側壁が円筒形から外方へ逸れていく角度を規定している。この角度は通常、1度以上であるが、45度以下である。特に、角度は4.5度〜35度、又は5度〜25度、又は7度〜17.3度であり、それぞれ所望のせん断応力、回転速度、ガラス粘度等に適合させられるべきである。
【0065】
撹拌室が少なくとも1つの開放角度を有しておりかつ、少なくとも1つの円錐にしたがって成形されているということは、撹拌室の開放角度は撹拌室の全高にわたって同じである必要はなく、変化していてもよく、その結果、撹拌エレメントの適宜の直径を有する撹拌機を必要とし、例えばこの撹拌エレメントはインペラ及び支持エレメントである。
【0066】
出口は異なる形式で設計することができる。1つの形式では、撹拌室の半径R
wallは減少し、ある点で、管(
図2)のように出口に移行しており、別の好適な実施の形態においては、出口は、溶融ガラスの流れ方向が変化させられるように設計されており、例えば、出口管は、撹拌室の側部に接続されており、これにより、出口(
図1)を通過する時にガラスの流れを異なる方向に強制する。撹拌室内には撹拌機が配置されており、この撹拌機は運転中に回転する。運転中、溶融ガラスは好適には重力によって撹拌室を通過し、好適には回転する撹拌機によって撹拌室を通って搬送されず、つまり、撹拌機の役割は主に、溶融ガラスを撹拌及び均質化することであり、推進することではない。
【0067】
撹拌室内に配置された撹拌機は、実質的に鉛直方向に向けられた、回転可能な、軸方向に可動な軸を有する。本発明によれば、軸は回転可能及び軸方向可動である。軸の横断面は、円形、だ円形、三角形、正方形、五角形又は多角形であってよく、管状、つまり中空であっても、塊状であってもよい。軸は、2つの異なる材料から形成されていてもよく、例えば、中央の材料が、異なる材料によって被覆されていてもよく、中央の安価な材料が、例えばより高い耐腐食性を有するより高価な材料によって被覆されていてよい。
【0068】
本発明の装置の運転中、軸は適切な手段、例えばモータによって回転させられ、撹拌室内の溶融ガラスが混合され、選択的に出口に向かって移動させられてよい。
【0069】
撹拌機をより効率的にするために、撹拌機には、軸の軸線に沿った互いに隣接した、前記軸から外方へ延びた複数の撹拌エレメントが装備されているべきであり、前記複数の撹拌エレメントは、各撹拌エレメントが、押し退けられる半径R
bladeを規定する円形領域を押し退ける。前記軸のそれぞれの長さの位置において、撹拌室は、R
bladeよりも大きな内壁R
wallを有しており、前記円形領域の前記半径R
bladeと、対応して、撹拌エレメントの寸法とは、軸の長さに沿って前記軸の下部から前記軸の上部に向かって拡大しており、軸は、撹拌室の円錐と実質的に同軸であり、撹拌エレメントは、前記軸から半径方向に撹拌室の壁部の近くまで突出している。
【0070】
運転中の撹拌パラメータを適合させるために、撹拌機の速度を変化させることができる。本発明の利点は、軸の軸方向移動によってさらに運転中に処理パラメータを変化させることができるということである。撹拌室が円錐形であるので、軸方向移動は、撹拌室と撹拌機との間の距離を増大(又は減少)させる。撹拌機が上方へ移動させられて撹拌機と撹拌室との間の距離が増大させると、溶融ガラスに加えられるせん断が減少され、撹拌機が下方へ移動させられて撹拌機と撹拌室との間の距離が減じられると、溶融ガラスに加えられるせん断が増大される。望まれるならば、撹拌機の速度を同時に増減させることができる。
【0071】
処理パラメータのこの変化は、装置を様々な製品に適応させるために、又は溶融ガラスの粘度を変化させるために用いることができ、この場合、製品が交換された場合に処理パラメータが適応させられるか、又は最適な結果への様々な処理パラメータのよりよい調節を達成することができる。しかしながら、撹拌機の軸方向移動は、例えば運転中に軸方向移動を周期的に又は非周期的に行うことによって、通常運転中に混合を改良するために用いることもできる。
【0072】
本発明の撹拌機及び装置が部分的に又は全体的に曝される溶融ガラスは1000℃をはるかに超えるので、本発明の撹拌機及び装置を形成する材料がこのような高温に耐えることができなければならないことが明らかである。このような材料は、耐火性材料、特にタンタル、ニオビウム、タングステン、モリブデン、イリジウム、ロジウム、パラジウム及びプラチナである。上記のように、撹拌室、撹拌機又は撹拌機の部分は、2つの異なる材料から形成されていてもよく、例えば、中央の材料が、異なる材料によって被覆されていてよく、中央の安価な材料が、例えばより高い耐腐食性を有するより高価な材料によって被覆されていてもよい。例えば、撹拌機及び/又は装置の部分をモリブデンから形成した後、プラチナを含む別の耐火金属で被覆することができる。モリブデンコアは撹拌機に形状及び機械的強度を提供するのに対し、プラチナ外側層は、耐摩耗性及び耐腐食性を提供する。別の実施の形態において、撹拌機のコアは全体がプラチナ又は、プラチナ−ロジウム合金等のプラチナ合金から形成されていてよい。プラチナは、高い融点、耐腐食性及び加工性により、ガラス撹拌用途のためには望ましい耐火金属である。最も好適なものは、ODS(酸化物拡散強化型)プラチナ、プラチナ−ロジウム合金又はこれらの組合せである。酸化物拡散強化型プラチナは好適な材料であり、特に、ジルコニア拡散強化型プラチナが好適であるが、例えばイットリア拡散強化型プラチナも適している。これらの材料の準備は公知であり、例えば全ての有益な目的のために参照することによって本明細書に組み込まれる欧州特許第1781830号明細書及び欧州特許第1295954号明細書に記載されている。装置の部分は、セラミックから形成され、プラチナによって被覆されていてもよい。例えば、撹拌室は、プラチナから形成し、支持体としてセラミック材料に埋め込むことができる。
【0073】
しかしながら、プラチナ、又はプラチナ−ロジウム合金も、高温撹拌プロセス中の侵食に耐えることができない。撹拌機の摩耗を減じるために、撹拌エレメントが、撹拌機の外面に複数の溝を形成していると有利である。これらの変更は、撹拌機の表面に溶融ガラスの静的又は準静的な層を形成する。特に、撹拌エレメントの遠位端部は、その外面に溝又は穴を有していてよい。好適には、溝は、溝を有する表面上のガラスの流れに対して垂直であるが、撹拌エレメントの設計に応じて変化してよい。溝は粘性溶融ガラスを捕らえ、撹拌エレメントの端部上に静的又は準静的なガラスの層を形成する。慣用の撹拌機において使用される滑らかな表面は、表面の、流れに関連する侵食につながるのに対し、本発明による溶融ガラスの静的な層は、撹拌エレメントの表面上にガラスの保護層を形成するという効果を有し、これにより、インペラの表面上のガラスの流れを減じることによって撹拌エレメントの侵食を減じる。溝の配置は、周期的であっても非周期的であってもよい。溝は、矩形であってよく、溝を規定する鋭い角を有してもよいし、丸み付けられた角及び/又は円弧状又は屈曲した壁部を有していてもよい。溝の寸法は変化していてもよく、つまり溝の幅が変化する。撹拌エレメントは、摩耗を減じるための全ての又は幾つかの変更を含んでよく、例えば、溝の一部は非周期的又は周期的であり、変化する幅及び変化する溝壁部形状を有していてよい。
【0074】
それと組み合わせて、又はそれの代わりに、国際公開第2008/0088432号に記載のように摩耗を減じるために撹拌機の部分にイリジウム層を提供することができる。それと組み合わせて、又はそれの代わりに、前記溝又は前記イリジウム層が提供されてもよい。本発明の装置において、撹拌室の内面は好適には複数の溝を有しており、前記溝は好適には前記軸の回転軸線に対してほぼ垂直である。これも撹拌機の摩耗を減じる。
【0075】
これらの手段を、以下に説明する本発明の実施の形態において適用することもできる。
【0076】
発明の別の実施の形態において、撹拌機の前記撹拌エレメントは、撹拌室の内面に面した撹拌エレメントの表面に対する表面法線(法線ベクトル)が撹拌室の表面に対して実質的に垂直であるように設計されている。言い換えれば、撹拌エレメントは必ずしも撹拌室の形状に適合されておらず、撹拌室壁部と撹拌エレメントの外側エッジとの間に直接接触が生じないように長さが調節されていれば十分である。しかしながら、発明の完全な利益を得るためには、撹拌エレメントの外側エッジが撹拌室の壁部の内面に対して平行になるように傾斜させられていると好適であり、この傾斜のためには、外側エッジは撹拌室の対応する部分と同じ開放角度で傾斜させられている必要がある。
【0077】
要するに、上記の本発明の撹拌機のうちの1つは、軸の中心から最も離れた撹拌機の部分よりも僅かに大きな寸法を有する円錐形の撹拌室内に配置されている。
【0078】
撹拌室が円錐形であることにより、撹拌機の軸方向移動(すなわち上昇又は加工)は、運転中に撹拌装置の撹拌パラメータを変更するために用いることができる。さらに、撹拌室の円錐形はまた、漏斗と同様の形状であることにより、溶融ガラスを加速させ、これにより筋又はシュリーレンの厚さを減じる。
【0079】
好適には、上記の溶融ガラスを撹拌するための装置はさらに、撹拌室内で撹拌機を回転させるために撹拌機の軸にトルクTを提供するモータを有する。撹拌機は、押退け容積Vを規定する撹拌室を溶融ガラスが流過するときに速度Sで回転し、溶融ガラスは粘度ηを有し、S、T、V、R
blade、R
wall及びηは、撹拌室内のそれぞれの位置における前記撹拌エレメントのそれぞれに対して以下の関係が満たされるように選択される:
(STV/η)
0.5>=5.0kg/s (関係1)
この場合、Sはラジアン毎秒での撹拌機の速度であり、Tはニュートン・メートルでの、撹拌機を回転させるために撹拌機の軸に加えられるトルクであり、Vはm
3での、撹拌機によって規定された押退け容積であり、ηはkg/m・sでの溶融ガラスの粘度である;また、
(2πηNR
blade)/(R
wall−R
blade)<=3.5・10
-3N/m
2 (関係2)
この場合、η及びNは上に定義したとおりであり、R
wallは、軸に取り付けられたそれぞれの撹拌エレメントの位置における撹拌室の内径であり、R
bladeは軸に取り付けられた撹拌エレメントの最大直径であり、R
wall及びR
bladeはメートルで示される。
【0080】
両関係は好適には、撹拌機のそれぞれの部分、又は軸に取り付けられたそれぞれの撹拌エレメントについて満たされる。関係1は、最大化すべき撹拌機のスループットの基準である。関係2は、撹拌機に加えられるせん断力の基準であり、ガラスの寿命を短縮させかつ汚染を増大させる撹拌機の過剰な摩耗を回避するために最大化すべきである。
【0081】
通常、回転速度Sは、毎分約6〜60回転、特に毎分約6〜30回転、さらに特定すれば毎分約12〜16回転である。ガラスの粘度ηは通常、約100〜6000ポアズ、特に約1000〜3000ポアズである。
【0082】
発明の1つの特定の実施の形態において、複数の撹拌エレメントは、軸の軸線に沿って互いに隣接した、前記軸から半径方向に突出した複数の円弧状のインペラと、中心から横方向に放射状に延びた部分及びインペラに当接した円弧状エッジを有する前記インペラのための複数の支持エレメントとであり、前記支持エレメントは軸に沿って軸方向に配置されており、前記円弧状インペラは、該円弧状インペラに当接した前記支持エレメントの円弧状エッジの半径を有し、両方の前記インペラの半径と、前記支持エレメントの前記円弧状エッジの半径とは、軸の下部から軸の上部に向かって軸の長さに沿って増大している。この実施の形態において、支持エレメントは適切な手段によって軸に固定されている。この適切な手段は、十分な安定化を提供し、かつ撹拌機の運転中に支持エレメントにかかる力に対する十分な抵抗を提供する。例えば、支持エレメントは、軸上に螺合させられ、支持エレメントに固定することができる。支持エレメントは、軸と一緒に鋳造されるか、軸に溶接されるか、又は軸と一緒に一部品として切断されてもよい。
【0083】
インペラは好適には、軸の同じ長さにおいて、同じ半径のインペラのグループとして配置されている。インペラは、単独で、例えば螺旋階段の様なパターンで配置されることもできるが、複数のインペラが同じ高さに配置されていることが好ましい。インペラのこのようなグループは、好適には2つ、3つ又は4つのインペラから成る。通常、それぞれのインペラの近位端部は軸に係止されている。同じ方向に湾曲した隣接するインペラ羽根によって既に良好な混合が提供されるが、インペラ羽根が反対方向に湾曲させられていると好ましい。
【0084】
この実施の形態(反対方向に湾曲させられたインペラ羽根)において、反対方向に湾曲させられた2つの隣接するインペラ羽根が、平面図において実質的に円形である円弧形状を形成するように接合されている場合、撹拌機の安定性を改良することは有利である。隣接するインペラの寸法は変化してよいので、2つの接合されたインペラ羽根の半径が変化することも可能であり、これにより、2つの隣接するインペラ羽根が、平面図において実質的にだ円形若しくは長円形である円弧形状を形成するように接合されている撹拌機を提供する。
【0085】
本発明によれば、支持部材が軸に対して垂直に配置される場合、すなわち支持エレメントの表面法線が軸の長さに対して平行である場合が好適である。しかしながら、プロペラ状のジオメトリを生じるように支持部材が傾斜させられていることもでき、この場合、支持エレメントの表面法線は軸の長さに対して平行ではなく、これにより、支持部材は、撹拌されたガラスを撹拌機の底部の方向へ押し付けるか又は撹拌されたガラスを撹拌機の上部の方向へ引き上げる。このような場合、軸の長さに沿った隣接する高さにおける支持部材は傾斜させられていてよく、これにより、支持部材は、ガラスを互いに反対方向に移動させるように、すなわち上側の高さの支持部材が溶融ガラスを下方へ押し付けるのに対し、下側の高さの支持部材は溶融ガラスを上方へ引き上げるようになっている。これは撹拌機が溶融ガラスを一方向に促進することを防止すると同時に、溶融ガラスにおける乱流を増大して均質化を高める。
【0086】
本発明による撹拌機において、支持部材を鉛直方向に見たときにこれらの支持部材は好適には重なり合っており、これにより、押退け容積内でガラスが直接に下方へ流れることを妨げている。あまり好適ではない択一例では、支持部材は重なり合っていなくてもよく、これによりガラスの下方への流れを許容するか、又はガラスの下方への流れを許容するために特に孔又は切欠を有していてよい。
【0087】
前記インペラの半径と、軸の長さに沿って増大する前記支持エレメントの前記円弧状エッジの半径とにより、撹拌機の押退け容積は円錐の一部のように形成されている。支持部材のみならず、撹拌機のインペラ羽根も傾斜させることができる。本発明によれば、インペラ羽根は好適には傾斜させられており、これにより、インペラ羽根の表面法線(法線ベクトル)が実質的に撹拌室の表面に対して垂直であり、すなわち、インペラ羽根の表面は撹拌室の内面に対して平行である。
【0088】
発明のさらに別の実施の形態において、前記撹拌エレメントはロッド状撹拌羽根である。運転中に溶融ガラスから力を受けたときに曲がらないように、ロッドは十分な剛性を有する必要がある。通常、このような撹拌エレメントの太さは軸の太さを超えず、特にロッド状撹拌エレメントの太さは軸よりも小さい。択一的に、ロッド状撹拌エレメントが軸よりも太く、軸に螺合させられるか又は軸に螺合させられているかのように取り付けられることももちろん可能である。ロッド状撹拌エレメントの横断面は軸と同じであるか又は軸と異なることができる。横断面は通常、円形、だ円形、三角形、又は多角形、例えば矩形、五角形又は六角形である。好適には、横断面は軸の横断面と同じであり、円形である。撹拌エレメントは適切な手段によって軸に固定されており、この適切な手段は、十分な安定性と、撹拌機の運転中に支持エレメントに掛かる力に対する十分な耐性とを提供する。例えば、撹拌エレメントは、軸と一緒に鋳造されるか、軸に溶接されるか、又は軸と一緒に一部材として切断することができる。撹拌エレメントは、軸に沿って互いに上下に配置された前記軸に設けられた対応するオリフィスを貫通したロッド状撹拌エレメントであってもよい。
【0089】
この実施の形態の別の態様では、前記ロッド状撹拌羽根は軸の長さに沿って互いに上下に配置されている。この実施の形態が選択される場合、撹拌部材を鉛直方向に見たときに撹拌部材は互いに重なり合わず、したがって、押退け容積内でガラスが直接に下方へ流れることを妨害することに余り適していないが、それにもかかわらず、採用することができる撹拌エレメントの数が多いので、依然として溶融ガラスの良好な均質化を提供する。通常、約2〜10、特に3〜8、又は4〜7のロッド状撹拌エレメントが軸に取り付けられる。
【0090】
選択的に、前記ロッド状撹拌エレメントは、軸の長さに沿って互いに上下に配置されており、かつ少なくとも1つの、実質的に鉛直方向に向けられたロッド状結合エレメント、通常は2つのこのような結合エレメントによって互いに結合されている。ロッド状撹拌エレメントは軸に対して直交するように取り付けられてよいが、軸に対して傾斜して取り付けられてもよい。特に、約3〜7個のロッド状撹拌羽根が軸の長さに沿って互いに上下に配置されかつそれぞれの側に1つずつ設けられた2つの結合エレメントによって互いに結合され、撹拌エレメントは軸に対して傾斜して取り付けられている(
図7a,7b)。
【0091】
撹拌部材を鉛直方向で見たときにこれらの撹拌部材は互いに重ならず、ひいては撹拌部材は、押退け容積内のガラスの直接の下方への流れを妨害するためにはあまり適していないという効果は、この実施の形態の別の態様によって扱われることができ、前記ロッド状撹拌羽根は軸の長さに沿って互いに上下に配置されかつ互いに対して角度を成して配置されており、これにより、撹拌室の内面に面した撹拌エレメントの表面は螺旋を形成しており、これにより、螺旋階段と同様のパターンを連想させる。この場合、押退け容積のより大きな領域は撹拌エレメントによってカバーされ、これにより、直接の下方への流れはより顕著に損なわれる。撹拌エレメントが互いに対してねじられる角度は、エレメントの数と、押退け容積とに依存し、概して10度〜45度、特に20〜40度又は25〜35度である。典型的には、6つの撹拌エレメントの場合、30度をうまく用いることができる。
【0092】
押退け容積内の直接の下方への流れを有効に妨害するために、発明のさらに別の実施の形態を用いることができる。この別の実施の形態では、撹拌エレメントは、軸の太くなった部分を有する。
【0093】
ロッド状撹拌エレメントの横断面は、軸と同じであるか又は軸と異なることができるが、好適には同じであり、ただし軸の太さは変化している。横断面は通常、円形、だ円形、三角形、又は多角形、例えば矩形、五角形又は六角形である。好適には、横断面は軸と同じであり、円形である。太くなった部分は、様々な形式で軸に固定することができ、太くなった部分は、軸と一緒に鋳造されるか、軸に溶接されるか、又は軸と一緒に一部材として切断されてよい。太くなった部分は中空部分であってもよい。太くなった部分は、円筒形、円錐形、球形、半球形、円錐台形、ベル形、及びこれらの組合せから成るグループから選択された形状を有してよい。
【0094】
この実施の形態において、ガラス流は、太くなった部分の周囲を流れさせられる。好適には、少なくとも1つの羽根エレメントは前記太くなった部分の外側に固定されており、特に複数の羽根エレメントは前記太くなった部分の外側に固定されている。これらのエレメントは適切な手段によって太くなった部分に固定されており、前記適切な手段は、十分な安定性と、撹拌機の運転中に支持エレメントにかかる力に対する十分な耐性とを提供する。羽根エレメントは、軸と一緒に鋳造されるか、軸に溶接されるか、又は軸と一緒に一部材として切断されてもよい。特に、これらの羽根エレメントは、例えば矩形の金属シートの一片であり、表面上に規則的なパターンで配置されてよく、例えば羽根エレメントの列は、互いの間に空隙を備えるように配置される。好適には、隣り合う列は、羽根エレメントが、隣の列の羽根エレメントの間の空隙に向かい合うように配置されるように、配置される。前記羽根エレメントの横断面は通常は矩形であるが、円形、だ円形、三角形、又は多角形、例えば二次(quadratic)、五角形又は六角形であることもできる。上記のように、本発明は、一方では円錐形の撹拌室を特徴とし、他方では前記撹拌室内に配置されかつ撹拌室の円錐形状に適合されるように成形された撹拌機を特徴とする、溶融ガラスを均質化するための装置に関する。
【0095】
その結果、本発明は、上記の溶融ガラスのための撹拌機にも関する。
【0096】
本発明は、溶融ガラスを均質化する方法であって、
前記溶融ガラスを撹拌するための装置を提供し、
撹拌室に溶融ガラスを流過させ、
溶融ガラスが撹拌室を流過するときに撹拌室内で撹拌機を回転させるために撹拌機の軸にトルクを加える、溶融ガラスを均質化する方法に関する。本発明によるこの方法において、前記溶融ガラスは、少なくとも毎秒1オンス(28.34g)、好適には少なくとも毎秒約2オンス(54.34g)、又は毎秒約少なくとも50gの速度で撹拌室を流過する。
【0097】
図面の詳細な説明
図1は、入口1と、出口2と、軸3と、撹拌室4と、撹拌エレメント(ここではインペラとして示されている)5と、開放角度7と、羽根8とを備えた、本発明による、溶融ガラスを混合するための装置を示している。インペラ5は軸3に取り付けられており、羽根8はインペラ5と結合されて、撹拌機6を形成している。軸3は回転可能でかつ軸方向に可動であり、撹拌室は、撹拌室の側部に出口2を有しており、直径は、撹拌室の下部において減じられている。
【0098】
図2は、入口1と、出口2と、軸3と、撹拌室4と、撹拌エレメント(ここではインペラとして示されている)5と、開放角度7と、羽根8とを備えた、本発明による、溶融ガラスを混合するための装置を示している。インペラ5は軸3に取り付けられており、羽根8はインペラ5と結合されて、撹拌機6を形成している。軸3は回転可能でかつ軸方向に可動であり、撹拌室は、撹拌室の底部に出口2を有しており、直径は、撹拌室の下部において減じられている。
【0099】
図1及び
図2には、撹拌室の異なる実施の形態を有する、本発明の撹拌装置が示されている。撹拌装置は、溶融ガラス供給部(図示せず)と、円錐形の撹拌室4との間に延びた入口管1を有する。入口1と撹拌室4とは、電気加熱巻線によって包囲されていてよく、過剰な熱損失を防止するように断熱されていてよい。撹拌されて均質化された溶融ガラスは、撹拌室4から出口2を通じて排出され、この出口は、図示していないが、加熱手段、好適には電気加熱エレメントによって包囲されていてもよい。出口2の直径は、ガラスの粘度、撹拌室4内に配置された撹拌機6の特定の形式、撹拌機の回転速度、撹拌室の内壁寸法に対する撹拌機の直径に応じて、溶融ガラスを流れさせるために最も適していると考えられる寸法を有していてよい。
【0100】
撹拌室4内に回転可能に配置された撹拌機6は、あらゆる数の形状をなしてよい。最も効率的な撹拌機が、全ての運転条件のための最良の撹拌機ではない場合があることが分かった。溶融ガラスの完全な均質化は、ガラスの全体が、ガラスの様々な部分が互いに関して漸進的にせん断される乱流のゾーンを通過させられる場合にのみ得ることができ、筋及び不均質性は減衰され、ガラス全体に分散させられる。所望の結果は、円錐形の撹拌室にガラスを通過させることによって最もよく得ることができ、前記撹拌室には、長手方向に延びた撹拌機が配置されており、この撹拌機の最大直径は、撹拌室の直径よりも僅かに小さいだけである。好適には、撹拌機6は、撹拌室4内に同心状に配置されている。つまり、撹拌機6の回転軸線は撹拌室4の長手方向中心軸線と一致している。インペラ5は、インペラ5の表面が内壁に対して実質的に平行になるように傾斜させられており、撹拌室4の壁部を示す傾斜した線に対して平行なこの構成における撹拌機6のインペラ5の末端エッジによって認識されることができる。混合装置の有効性は、撹拌機6の回転速度によっても影響される。つまり、機器のガラス容量(溶融ガラスの流過速度によって測定される)は、その寸法だけによって決定されるのではなく、内部に配置された撹拌機の回転速度によって決定される。装置出口が狭窄されている場合やガラス粘度が高い場合のように、装置を通る溶融ガラスの流量が低く保たれるならば、比較的小さな毎分回転数の回転速度が、ガラスを適切に混合しかつ円筒壁部に沿ったガラスの下方への流れの連続性を動的に断絶するためには十分である。他方では、出口が拡大されかつ流量が増大されるので、撹拌作用の速度も、所望のガラス品質の製造のための動的条件を維持するように増大されなければならない。
【0101】
図3は本発明による撹拌機300を示している。撹拌機300は軸304を有し、かつ軸の長さに沿って配置された円弧状のインペラのグループ301,302及び303をそれぞれ有する。インペラの直径は軸の長さに沿って増大している。インペラは撹拌機300においては傾斜させられていない。
図3においてインペラによって覆われた支持エレメント305は点線で示されている。インペラ301,302,303の高さはこの実施の形態では直径に関連して変化している。
【0102】
図4は、2つ以上の開放角度を有する撹拌室400の構成を示している。撹拌室300は、入口402と、底部に設けられた出口403とを有する。撹拌室300には、軸401とインペラ羽根404とを有する本発明の撹拌機(概略的に示している)が装備されている。撹拌室400は側壁を有する。側壁のうちの一部は急傾斜であり、したがって小さな開放角度(405)を有しており、また側壁の別の一部は、より大きな開放角度を有している。
【0103】
図5において、インペラ301,302,303のそれぞれのグループはこの実施の形態において3つのインペラ羽根のセット、例えばインペラ羽根528〜530を有する。インペラ羽根は、反対方向で湾曲させられた3つのインペラ羽根531〜533の同様のセットに隣接して配置されている。インペラのグループの数、及びグループ毎のインペラ羽根の数は必要に応じて変化してよい。例えば、
図1又は
図2の撹拌装置は、インペラの4つ以上又は2つ以下のグループを有してよい。インペラ羽根528〜533のそれぞれは、この実施の形態において軸304の回転軸線に対して平行な主表面領域を有する(インペラ羽根の主表面領域が撹拌室側壁に対して平行である
図1及び
図2の撹拌機とは対照的である)。それぞれの主表面領域は円弧状であり、幾つかの実施の形態では少なくとも円筒の一部分から成る。それぞれのインペラ羽根528〜533は軸304に適切に係止させられた一方の端部(近位端部)も有しており、それぞれのインペラ羽根は反対方向に湾曲させられたインペラ羽根に係止させられており、これによりインペラに剛性を提供している。つまり、平面図で見て実質的に円形の円弧形状を形成するように、2つのインペラ羽根は結合されている。
図3及び
図5に示された本発明の典型的な実施の形態によれば、それぞれのインペラセット若しくはグループ301,302,303は、平面図で見て実質的に円形の円弧形状513,515及び517を形成するように結合された、インペラの3つの対を有する。それぞれのインペラにさらに剛性を付加しかつインペラの撹拌作用をさらに促進するために、ディスクセグメントの形態の堅く固定された支持エレメント534〜539が設けられていてよい。支持エレメント534〜539は軸304の軸線に対して垂直に配置されており、インペラ羽根の内側の湾曲に従っており、鉛直方向で見た場合に互いに重なり合っている。これにより、撹拌機によって占められた円錐形体積内でのガラスの直接の下方への流れを妨げる。認識されるように、撹拌機300の回転中、幾つかのインペラセットのインペラ羽根がガラスを外方へ押し出すのに対して、残りのセットのインペラ羽根はガラスを内方へ引き込み、これによりガラスを完全に混合する。要するに、撹拌機によってガラスに付与される動きは、ガラスが完全に混合されるだけでなく、さらに、円筒形側壁に沿った下方へのガラスの流れが、壁部領域に沿って生じた圧力によって提供される、このような流れに対する動的ダムによって、有効に妨げられるようになっている。
【0104】
国際公開第2008/088432号において、撹拌機のインペラ羽根の外面が高い応力を受けることが認識されている。この応力は部分的に、撹拌装置を流過する溶融ガラスの粘度と、インペラ羽根と撹拌室壁部との小さな公差とから生じる。インペラ527の最も外側の部分が撹拌プロセス中に最も高い応力を受けるが、(撹拌機の回転方向に関して)撹拌機の前方に面した表面及びインペラに隣接した壁部分も高い応力を受けることが知られている。これらの部分には好適には、上記の孔又は溝等の摩耗を減じるための手段が設けられているか、又はイリジウム又はイリジウム合金(例えばイリジウム−ロジウム合金)等のより高い耐摩耗性の材料でめっきされていてよい。
【0105】
図6は、撹拌機300の301,302,303等のインペラのグループの異なる斜視図を示している。
図6は、軸304と、支持部材634,636,637,639と、インペラ羽根628,629,631,632と、平面図で見た実質的に円形の円弧形状を形成するように結合されたインペラの対613及び615とを示している。
【0106】
図7aは、軸711と、撹拌エレメント730とを有する撹拌機710を示している。撹拌エレメント730は、互いに上下に配置されかつ軸の長さに沿って傾斜して取り付けられかつ2つの結合エレメント720によって互いに結合されたロッド状撹拌羽根である。
【0107】
図7bは、モータ745と、軸750と、ロッド状撹拌エレメント770とを備えた混合装置740を示している。ロッド状撹拌エレメント770は、互いに上下に配置されており、かつ2つの結合エレメント775によって互いに結合されている。結合エレメント775は、それぞれの側に1つずつ、撹拌室内に配置されている。撹拌室の撹拌室壁部755は上側部分において円筒形であり、撹拌室壁部760は下側部分において円錐形である。溶融ガラス785は、撹拌室の上側部分に設けられた入口780を通じて導入され、撹拌室の下側部分に設けられた出口765を通じて排出される。
【0108】
図8aは、軸20と、太くなった部分である撹拌エレメントとを備えた撹拌機を示している。前記太くなった部分は、2つの円筒形セグメント16.1及び16.2から成る。
【0109】
図8bは、軸20と、太くなった部分である撹拌エレメントとを備えた撹拌機を示している。前記太くなった部分は、1つの円筒形セグメント16.3と、半球形の1つのセグメント16.4と、軸20と結合された1つの円錐台形のエレメント16.5とから成る。
【0110】
図8cは、軸20と、太くなった部分である撹拌エレメントとを備えた撹拌機を示している。前記太くなった部分は、軸20と結合された1つの円錐台形セグメント16.6と、円錐形セグメント16.7とから成る。
【0111】
図8dは、軸20と、太くなった部分である撹拌エレメントとを備えた撹拌機を示している。前記太くなった部分は、軸20と結合された1つの円錐台形セグメント16.8と、半球形の1つのセグメント16.9とから成る。
【0112】
図8eは、軸20と、太くなった部分である撹拌エレメントとを備えた撹拌機を示している。前記太くなった部分は、より幅広の側において互いに結合された2つの円錐台形セグメント16.10及び16.11から成り、一方の円錐台形セグメントはより狭幅の側において軸20と結合されている。
【0113】
図9aと、
図9aにおける線9b−9bに沿った断面図としての
図9bとは、軸950とロッド状撹拌エレメント970とを備えた混合装置940を示している。ロッド状撹拌エレメント970は、軸の長さに沿って互いに上下に配置されており、かつ撹拌室の内面に面した撹拌エレメントの面が螺旋971を形成するように互いに対して角度を成して配置されている。ロッド状撹拌エレメント970は、撹拌室壁部955を備えた撹拌室961内に配置されている。撹拌室は、上部において円筒形であり、撹拌室壁部960は下部において円錐形である。溶融ガラス985が、撹拌室の上部に設けられた入口980を通じて導入され、撹拌室の下部に設けられた出口965を通じて排出される。
【0114】
図10は、軸1050と、撹拌エレメント1070とを有する混合装置1040を示している。撹拌エレメント1070は軸の太くなった部分であり、円筒形の部分と円錐台形の部分とが組み合わされた形状を有する。撹拌エレメント1070には羽根エレメント1075が装備されている。撹拌エレメント1070は、撹拌室内に配置されており、撹拌室1061は、上部において円筒形であり、撹拌室壁部1060は下部において円錐形である。溶融ガラス1085は、撹拌室の上部に設けられた入口1080を通じて導入され、撹拌室の下部に設けられた出口1065を通じて排出される。
【0115】
当業者に明白であるように、公知のその他の撹拌機設計がこの明細書の開示に関連して用いられてもよい。択一的な撹拌機設計は、撹拌機の回転方向に関して所定の角度にパドルを有するヘリカルスクリュー及び撹拌機を有する設計を含むが、これに限定されない。本明細書で引用された優先権文献及び全てのレファレンス又は文献は全ての有効な目的のために引用したことにより本明細書に記載されたものとする。