特許第5757968号(P5757968)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5757968画像読取装置およびそれを備えた画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5757968
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】画像読取装置およびそれを備えた画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/00 20060101AFI20150716BHJP
   H04N 1/10 20060101ALI20150716BHJP
   H04N 1/107 20060101ALI20150716BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20150716BHJP
   G03B 27/62 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
   H04N1/00 D
   H04N1/10
   G03G15/00 550
   G03B27/62
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-32894(P2013-32894)
(22)【出願日】2013年2月22日
(65)【公開番号】特開2014-165571(P2014-165571A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085501
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 静夫
(74)【代理人】
【識別番号】100128842
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 温
(74)【代理人】
【識別番号】100134821
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 信行
(72)【発明者】
【氏名】藤村 武志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健大
【審査官】 橋爪 正樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−219339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
H04N 1/04− 1/207
G03G15/00
G03B27/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
読取対象の原稿が載置される載置部材と、
前記載置部材に対して開閉可能に取り付けられ、閉じられることによって前記載置部材に載置された原稿を押える押え部材と、
前記載置部材または前記押え部材に配置され、前記押え部材が開けられるときには所定方向の一方側に向かって移動して前記載置部材と前記押え部材との間の領域に突出し、前記押え部材が閉じられるときには前記所定方向の一方側とは逆の他方側に向かって移動する可動体と、
前記可動体が挿入され、前記可動体の前記所定方向への移動をガイドするガイド穴と、
前記可動体の前記所定方向の位置を検知するためのセンサーと、を備え、
前記可動体は、前記所定方向に延びる3つ以上の溝部を有し、
前記可動体の3つ以上の溝部のうちガイド溝とされる1つまたは2つの溝部と対向する前記ガイド穴の内周部分に内方に突出したガイド突起が形成されており、
前記ガイド溝とされる溝部以外の溝部と対向する前記ガイド穴の内周部分には前記ガイド突起が形成されていないことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記可動体は、前記所定方向の一方側または他方側から見たときの形状が十字形状となるように形成されていることによって前記所定方向に延びる4つの溝部を有し、
前記可動体の4つの溝部のうち互いに対角の位置関係となっている2つの溝部が前記ガイド溝となるように、前記ガイド溝とされる2つの溝部とそれぞれ対向する前記ガイド穴の2つの内周部分に前記ガイド突起が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記可動体は、金型によって成形された樹脂成形品であり、
前記ガイド溝とされる2つの溝部以外の溝部の内面のうち互いに平行な一対の面は、金型のパーティング面と接することによって成形された面であることを特徴とする請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記ガイド溝とされる2つの溝部の各溝形状が互いに異なっており、
前記ガイド突起は、それぞれ、対向する前記ガイド溝の溝形状に沿った突出形状とされていることを特徴とする請求項2または3に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記ガイド穴の開口縁と係合する係合体が前記可動体の前記所定方向の一方側の先端に設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記係合体は、前記可動体の本体部分に収束する方向に弾性変形することを特徴とする請求項5に記載の画像読取装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の画像読取装置を備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿を押えるための押え部材を有する画像読取装置およびそれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原稿を読み取って原稿の画像データを生成する画像読取装置が知られており、たとえば、複合機などの画像形成装置に装着される。画像読取装置には、原稿を載置するための載置部材、原稿に光を照射する光源、および、原稿で反射された反射光を光電変換して電荷を蓄積するラインセンサーなどが備えられる。また、通常、載置部材には、原稿を押えるための押え部材が載置部材に対して開閉可能に取り付けられる。
【0003】
このような画像読取装置では、原稿の読み取りに先立って、載置部材に載置された原稿のサイズ検知を行う場合がある。ここで、原稿のサイズ検知を行うとき、押え部材を完全に開けたままでは、光源からの光の多くが外部に漏れてユーザーが眩しく感じるという不都合が生じる。一方で、押え部材を完全に閉じてしまうと、押え部材の押え面に白色マットが配置されていることで、原稿の存在する部分と存在しない部分との境界を正確に読み取ることができなくなってしまう。
【0004】
このため、従来の画像読取装置では、押え部材の開閉状態(押え部材の傾倒角度)を検知するための開閉検知機構が載置部材に設けられている(たとえば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1では、押え部材の開閉に応じて上下方向に移動する可動体(アクチュエーター)、可動体の上下方向への移動をガイドするガイド穴(貫通穴)、可動体の上下方向の位置を検知するための透過型の光センサーなどによって開閉検知機構が構成されている。そして、可動体および光センサーの各配置位置は、押え部材の傾倒角度が予め定められた所定角度になったときに、可動体の被検知部分(センサーにより検知される部分)が光センサーの検知領域(発光部と受光部との間の光路)を遮光するように調整されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−104880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の開閉検知機構では、ガイド穴に可動体が挿入されることで、可動体が傾かないように保持される。すなわち、可動体がガイド穴の内周面に接しながら上下方向に摺動する。これにより、可動体の移動方向を所望の方向(上下方向)とすることができる。
【0008】
しかしながら、特許文献1の開閉検知機構では、可動体が確実に保持されているとは言えない。具体的には、特許文献1の開閉検知機構では、可動体が自身の中心軸回りに回転することがある。このように可動体が回転すると、可動体の被検知部分の上下方向への移動経路が光センサーの検知領域から外れるという不都合が生じる。この場合には、押え部材の傾倒角度が予め定められた所定角度になったとしても、可動体の被検知部分が光センサーの検知領域を遮光しなくなる。
【0009】
なお、可動体の回転を抑制するため、上下方向に延びる溝部(または突起部)を可動体に形成するとともに、上下方向に延びる突起部(または溝部)をガイド穴の内周面に形成し、溝部および突起部を互いに係合させることが考えられる。しかし、このようにすると、可動体の摺動面(ガイド穴の内周面に接する面)が増加するので、可動体の上下方向への摺動性が低下してしまう(可動体が上下方向にスムーズに移動しない)。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、押え部材の開閉に応じて摺動する可動体の位置を検知することで押え部材の開閉状態を判別する構成において、可動体の摺動性を低下させることなく可動体を確実に保持することが可能な画像読取装置およびそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の画像読取装置は、読取対象の原稿が載置される載置部材と、載置部材に対して開閉可能に取り付けられ、閉じられることによって載置部材に載置された原稿を押える押え部材と、載置部材または押え部材に配置され、押え部材が開けられるときには所定方向の一方側に向かって移動して載置部材と押え部材との間の領域に突出し、押え部材が閉じられるときには所定方向の一方側とは逆の他方側に向かって移動する可動体と、可動体が挿入され、可動体の所定方向の移動をガイドするガイド穴と、可動体の所定方向の位置を検知するためのセンサーと、を備えている。そして、可動体は、所定方向に延びる3つ以上の溝部を有し、可動体の3つ以上の溝部のうちガイド溝とされる1つまたは2つの溝部と対向するガイド穴の内周部分に内方に突出したガイド突起が形成されており、ガイド溝とされる溝部以外の溝部と対向するガイド穴の内周部分にはガイド突起が形成されていない。
【0012】
本発明の構成では、押え部材の開閉に応じて可動体が所定方向に移動する(可動体がガイド穴の内周面に接しながら所定方向に摺動する)ようになっている。そして、可動体の所定方向の位置を検知するためのセンサーが設けられている。このため、センサーの出力に基づき、押え部材の開閉状態(傾倒角度)を判別することができる。
【0013】
ここで、本発明の構成では、可動体の3つ以上の溝部のうち1つまたは2つの溝部をガイド溝とするため、ガイド溝とされる溝部と対向するガイド穴の内周部分に内方に突出したガイド突起を形成している。このため、ガイド溝とガイド突起とが係合する。したがって、可動体が所定方向に摺動するときに、可動体が自身の中心軸回りに回転しないように可動体を確実に保持することができる。そして、このように可動体の保持を確実に行うことができれば、可動体の被検知部分(センサーにより検知される部分)の所定方向への移動経路がセンサーの検知領域から外れることはない。
【0014】
さらに、この構成では、ガイド溝とされる溝部以外の溝部と対向するガイド穴の内周部分にはガイド突起を形成していない。このため、可動体が所定方向に摺動するときに、可動体のガイド溝とされる溝部はガイド穴の内周面(ガイド突起)と接するが、可動体のガイド溝とされる溝部以外の溝部はガイド穴の内周面と接しない。これにより、可動体にガイド溝を形成し、その可動体のガイド溝と係合するガイド突起をガイド穴に形成したとしても、可動体の摺動面(ガイド穴の内周面と接する面)の増加を抑制することができる。したがって、可動体の所定方向への摺動性は低下しない(可動体が所定方向にスムーズに摺動する)。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、押え部材の開閉に応じて摺動する可動体の位置を検知することで押え部材の開閉状態を判別する構成において、可動体の摺動性を低下させることなく可動体を確実に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態による画像読取装置を備えた画像形成装置の概略図
図2】本発明の一実施形態による画像読取装置の押え部材が開けられたときの図
図3図2に示した画像読取装置の押え部材の傾倒角度が所定角度になったときの図
図4図2に示した画像読取装置に設置される開閉検知ユニット(可動体を有する可動部材やガイド穴を有する保持部材などで構成されるユニット)の斜視図
図5図4に示した開閉検知ユニットを所定方向から見たときの平面図
図6図4に示した開閉検知ユニットの可動体が所定方向の一方側(上側)に移動したときの図
図7図4に示した開閉検知ユニットの可動体が所定方向の他方側(下側)に移動したときの図
図8図4に示した開閉検知ユニットの可動体およびガイド穴を所定方向から見たときの平面図
図9図4に示した開閉検知ユニットの可動体を所定方向から見たときの平面図(金型のパーティング面と接することによって成形された面の位置を説明するための図)
図10】本発明の一実施形態の変形例を説明するための図(1つの溝部がガイド溝とされる場合の図)
図11】本発明の一実施形態の変形例を説明するための図(ガイド溝とされる2つの溝部の各溝形状が互いに異なっている場合の図)
図12】本発明の一実施形態の変形例を説明するための図(可動体の先端に係合体を設けた場合の図)
図13】本発明の一実施形態の変形例を説明するための図(可動体の先端に係合体を設けた場合の図)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の画像読取装置を備えた画像形成装置について、モノクロ複合機を例にとって説明する。
【0018】
(画像形成装置)
図1に示すように、本実施形態の画像形成装置100は、画像形成装置100の本体上方に配置された画像読取装置200を備える。なお、画像読取装置200の構成については、後に詳細に説明する。
【0019】
画像形成装置100の本体には、給紙部103、用紙搬送部104、画像形成部105および定着部106が備えられている。
【0020】
給紙部103は、用紙Pを収容する用紙カセット31を有し、その用紙カセット31内に収容された用紙Pを用紙搬送路40に供給する。給紙部103には、用紙カセット31内に収容された用紙Pを1枚ずつ引き出すためのピックアップローラー32が設けられている。さらに、給紙部103には、用紙カセット31内から引き出される用紙Pの重送を抑制しつつ用紙Pを用紙搬送路40に供給するための給紙ローラー対33も設けられている。この給紙ローラー対33は、互いに対向配置される給紙ローラーおよび分離ローラーを含む。
【0021】
用紙搬送部104は、搬送路40に供給された用紙Pを搬送路40に沿って搬送し、画像形成部105および定着部106を経由して排出トレイ41に導く。この用紙搬送部104は、搬送路40に回転可能に設置された搬送ローラー対42を複数含む。複数の搬送ローラー対42のうちの1組はレジストローラー対43であり、用紙Pを画像形成部105の手前で待機させ、画像形成部105でのトナー像の形成にタイミングを合わせて画像形成部105に送り出す。
【0022】
画像形成部105は、画像読取装置200の読み取りによって得られた原稿の画像データなどに基づきトナー像を形成し、そのトナー像を用紙Pに転写する。画像形成部105は、感光体ドラム51、帯電装置52、露光装置53、現像装置54、転写ローラー55およびクリーニング装置56を含む。
【0023】
画像形成時には、感光体ドラム51が回転駆動し、その感光体ドラム51の表面を帯電装置52が所定電位に帯電させる。また、露光装置53は、露光用の光ビームLを出力する発光素子(図示せず)を有し、その発光素子を点消灯させつつ感光体ドラム51の表面を走査露光する。これにより、感光体ドラム51の表面に静電潜像を形成する。現像装置54は、感光体ドラム51の表面に形成された静電潜像にトナーを供給して現像する。
【0024】
転写ローラー55は、感光体ドラム51の表面に圧接して回転可能となっている。そして、レジストローラー対43がタイミングを計り、転写ローラー55と感光体ドラム51とのニップ部に用紙Pを進入させる。これにより、感光体ドラム51の表面のトナー像が用紙Pに転写される。この後、クリーニング装置56は、感光体ドラム51の表面に残留するトナーなどを除去する。
【0025】
定着部106は、用紙Pに転写されたトナー像を加熱・加圧して定着させる。この定着部106は、発熱源を内蔵する定着ローラー61と、定着ローラー61に圧接される加圧ローラー62とを含む。そして、トナー像が転写された用紙Pは、定着ローラー61と加圧ローラー62との間を通過することで、加熱・加圧される。これにより、用紙Pにトナー像が定着され、印刷が完了する。
【0026】
(画像読取装置)
画像読取装置200は、読取対象の原稿が載置される載置部材1を備える。載置部材1は、画像読取装置200のフレーム上方に嵌め込まれたコンタクトガラス2を含む。そして、画像読取装置200による原稿の読み取りは、コンタクトガラス2の表面に載置された原稿に対して行われる。
【0027】
画像読取装置200のフレーム内部には、ランプ3、複数のミラー4、レンズ5およびラインセンサー6などが設けられている、ランプ3は、コンタクトガラス2に載置された原稿に光を照射する。そして、原稿で反射された反射光(ランプ3からの光)は、ミラー4で反射され、レンズ5に導かれる。レンズ5は、反射光を集光し、集光した反射光をラインセンサー6に入射させる。ラインセンサー6は、主走査方向(図1の紙面に対して垂直な方向)に向けてライン状に並ぶ複数の光電変換素子を有するCCDからなる。そして、ラインセンサー6は、原稿で反射された反射光を入射すると、ライン単位で画素毎に光電変換して電荷を蓄積するとともに、蓄積電荷に応じてアナログ信号を出力する。ラインセンサー6から出力されるアナログ信号は、デジタルの画像データに変換される。
【0028】
また、ランプ3およびミラー4は、主走査方向と直交する副走査方向(コンタクトガラス2の表面に平行な方向)に移動可能な移動枠7によって支持される。そして、ランプ3およびミラー4は、原稿の読み取り時に、副走査方向に移動する。これにより、コンタクトガラス2に載置された原稿の読み取りが行われる。
【0029】
なお、原稿の読み取りは、画像読取装置200に設けられた読取制御部によって制御される。そして、画像読取装置200によって読み取られた原稿の画像データは、画像形成装置100の全体制御を行う主制御部に転送され、各種画像処理が施される。
【0030】
さらに、画像読取装置200は、載置部材1(コンタクトガラス2)に載置された原稿を押えるための押え部材8を備える。押え部材8は、載置部材1に対して開閉可能に取り付けられている。
【0031】
具体的には、図2に示すように、載置部材1の本体背面側に回転軸1aが設けられ、その回転軸1aに回動可能に押え部材8が取り付けられている。したがって、押え部材8は、本体正面側の部分を自由端として、本体正面側の部分を上下方向に振るようにして回動し、載置部材1(コンタクトガラス2)に対して開閉の姿勢をとる。これにより、押え部材8が閉じられると、押え部材8とコンタクトガラス2とが重なり、コンタクトガラス2が押え部材8によって完全に覆われる。このため、コンタクトガラス2に載置された原稿を読み取るときに、その原稿を押え部材8によって押えることができる。なお、押え部材8のうちのコンタクトガラス2と対向する部分には、白色マット8aが配置されている。
【0032】
また、画像読取装置200(読取制御部)は、原稿の読み取り前に、載置部材1に載置された原稿のサイズ検知を行う。原稿のサイズ検知は、ランプ3からの光を原稿に照射し、その反射光を受けたイメージセンサー6の出力に基づき原稿が存在する部分と存在しない部分との境界を読み取ることによって行われる。
【0033】
このよに、原稿のサイズ検知を行うときには、ランプ3を点灯させる。したがって、押え部材8を完全に開けたままでは、ランプ3からの光の多くが外部に漏れてユーザーが眩しく感じるという不都合が生じる。一方で、押え部材8を完全に閉じてしまうと、白色マット8aを原稿として認識し、原稿の存在する部分と存在しない部分との境界を正確に読み取ることができない。
【0034】
このため、載置部材1には、押え部材8の開閉状態(傾倒角度)を検知するための開閉検知ユニットDUが設けられている。たとえば、開閉検知ユニットDUは、載置部材1の本体背面側の部分(押え部材8の回動支点である回動軸1aの近傍部分)に配置されている。そして、開閉検知ユニットDUは、押え部材8のコンタクトガラス2に対する傾倒角度が予め定められた所定角度になったとき(図3の状態になったとき)、押え部材8の傾倒角度が所定角度になったことを示す信号を出力する(オンを示すHレベルの信号を出力する)。
【0035】
これにより、画像読取装置200(読取制御部)は、開閉検知ユニットDUの出力に基づき、押え部材8の傾倒角度が所定角度になったことを検知する。そして、画像読取装置200(読取制御部)は、押え部材8の傾倒角度が所定角度になったことを検知すると、原稿のサイズ検知を実行する。なお、所定角度というのは、たとえば、約35°である。すなわち、開閉検知ユニットDUは、押え部材8が完全に閉じられる前に出力レベルを変化させる(押え部材8が完全に閉じられる前に原稿のサイズ検知が実行される)。
【0036】
(開閉検知ユニット)
まず、開閉検知ユニットDUの全体構成について説明する。開閉検知ユニットDUは、図4および図5に示すように、可動部材10および保持部材20を含む。
【0037】
可動部材10は、保持部材20によって保持されているとともに、Z方向に移動可能となっている。具体的には、可動部材10は、保持部材20の後述するガイド穴21の内周面に接しながらZ方向に摺動する柱状の可動体11を有し、その可動体11がガイド穴21に挿入されていることによって保持されている。これにより、可動部材10のZ方向への移動は、保持部材20(ガイド穴21)によってガイドされる。なお、Z方向というのは、原稿が載置される載置面であるコンタクトガラス2の表面に対して垂直な方向であり、本発明の「所定方向」に相当する。
【0038】
可動体11は、Z方向に直線的に延びている。そして、可動体11のZ方向の一端11aは、押え部材8が開けられた状態(図2の状態)において、コンタクトガラス2の表面に対してZ方向の一方側(押え部材8側)に突出している。言い換えると、載置部材1と押え部材8との間の領域に突出している。このため、押え部材8が閉じられるときには、可動体11の一端11aが押え部材8によってZ方向の他方側(一方側とは反対側)に押圧された状態(図3の状態)となり、可動部材10がZ方向の他方側に向かって移動する。そして、押え部材8が再び開けられるときには、可動体11の一端11aに対する押圧が徐々に解除されていき、可動部材10がZ方向の一方側に向かって移動する。
【0039】
また、可動体11のZ方向の他端11b(一端11aの反対側の端部)は、コンタクトガラス2の表面に対してZ方向の他方側に位置している。この可動体11の他端11bには、後述するセンサー24による検知に利用される検知片12が形成されている。すなわち、検知片12は、押え部材8が開閉されると、可動体11と共にZ方向に移動する。なお、検知片12は、可動体11の他端11bに一体化されたものであってもよいし、可動体11の他端11bに後付けされたもの(可動体11とは別部材)であってもよい。
【0040】
保持部材20は、Z方向に貫通するガイド穴21を有する。このガイド穴21には、可動体11がZ方向に摺動可能に挿入される。そして、保持部材20は、可動部材10を保持しつつ、可動部材10のZ方向への移動をガイドする(可動体11がガイド穴21の内周面に接しながらZ方向に摺動する)。また、保持部材20には、可動部材10をZ方向の一方側に引っ張るための引張りバネ23が取り付けられている。引張りバネ23の一端は保持部材20に係合し、引張りバネ23の他端は可動部材10(検知片12)に係合している。このため、可動部材10は、常に、引張りバネ23によってZ方向の一方側に引っ張られた状態となっている。このため、可動部材10は、可動体11の一端11aが押え部材8によって押圧されたときにはZ方向の他方側に移動するが、可動体11の一端11aが押圧されていないときにZ方向の他方側に移動することはなく、Z方向の一方側の所定位置に移動する。
【0041】
また、保持部材20には、センサー24が取り付けられている。このセンサー24は、たとえば、透過型光センサーであり、発光部および受光部を有する。そして、センサー24は、発光部と受光部との間の光路(検知領域)が遮光されたときと遮光されていないときとで出力を変化させる。
【0042】
センサー24の検知領域は、押え部材8の開閉に応じてZ方向に移動する検知片12の移動経路に位置している。すなわち、センサー24は、可動部材10のZ方向の位置を検知するためのセンサーである。具体的には、図6に示すように、押え部材8が開けられているときには検知片12によってセンサー24の検知領域が遮光され、図7に示すように、押え部材8の傾倒が所定角度になったときに検知片12がセンサー24の検知領域を遮光しなくなるように調整される。これにより、センサー24の出力に基づき、押え部材8の傾倒角度が所定角度になったか否かを検知することができる。なお、押え部材8の傾倒角度が所定角度になったときに、検知片12によってセンサー24の検知領域が遮光されるように構成してもよい。
【0043】
次に、可動体11およびガイド穴21について詳細に説明する。
【0044】
図8に示すように、可動体11は、Z方向の一方側から見たときの形状が十字形状となるように形成されている(Z方向と直交する方向に沿って切断したときの断面形状が十字形状となるように形成されている)。これにより、可動体11は、Z方向に延びる4つの溝部11aを有していることになる。そして、4つの溝部11aのうち、互いに対角の位置関係となっている2つの溝部11aがガイド穴21の内周面と接するガイド溝11Gとされる。
【0045】
なお、可動体11は、Z方向の一方側から見たときの形状が十字形状となるように形成されているため、Z方向に延びる4つのリブ11bを有していることになる。そして、可動体11は、Z方向の一方側から見ると、4つのリブ11bが交わる中心点で直交する2本の線分L1(X方向に延びる線)および線分L2(Y方向に延びる線)のそれぞれに対して対称な形状となっている。すなわち、Z方向の一方側から見ると、4つの溝部11aの各溝形状は全て同じである(ガイド溝11Gとされる2つの溝部11aの各溝形状が互いに同じである)。
【0046】
ガイド穴21は、Z方向の一方側から見ると、その開口形状(内周形状)が多角形状となるように開口されている。ただし、ガイド穴21の内周面のうち、ガイド溝11Gとされる2つの溝部11aとそれぞれ対向する2つの内周部分21aが内方に突出している(2つの内周部分21aにガイド突起21Gが形成されている)。すなわち、内方に突出した2つの内周部分21aは、互いに対角の位置関係となっている。
【0047】
内方に突出した2つの内周部分21aは、それそれ、ガイド溝11Gとされる2つの溝部11aのうち対向する溝部11aの溝形状に沿った突出形状に形成されている。したがって、内方に突出した2つの内周部分21aの各突出形状は互いに同じである。そして、内方に突出した2つの内周部分21aは、それそれ、ガイド溝11Gとされる2つの溝部11aのうち対向する溝部11aに入り込んでいる。これにより、ガイド溝11Gとされる2つの溝部11aは、それぞれ、ガイド穴21の内周面(内方に突出した2つの内周部分21a)に接する。すなわち、内方に突出した2つの内周部分21aは、可動体11をガイドするガイド突起21Gとして機能する。
【0048】
一方で、ガイド穴21の内周面のうち2つの内周部分21a以外の内周部分は、内方に突出していない(ガイド溝11Gとされる2つの溝部11a以外の溝部11aと対向するガイド穴21の内周部分にはガイド突起21Gが形成されていない)。このため、ガイド溝11Gとされる2つの溝部11a以外の残りの溝部11aは、ガイド穴21の内周面には接しない。なお、4つのリブ11bの各先端については、ガイド穴21の内周面に接する。
【0049】
ところで、可動部材10は、金型(互いに分割された一対の型)によって成形された樹脂成形品である。そして、金型の可動体11を成形する部分は、図9に示すようなパーティングラインPLに沿って分割されている。このため、ガイド溝11Gとされる2つの溝11a以外の残りの溝部11aの内面のうち互いに平行な一対の面11Sは、金型のパーティング面と接することによって成形されることになる。なお、保持部材20も、金型によって成形された樹脂成形品である。
【0050】
本実施形態の画像読取装置200(画像形成装置100)は、上記のように、読取対象の原稿が載置される載置部材1と、載置部材1に対して開閉可能に取り付けられ、閉じられることによって載置部材1に載置された原稿を押える押え部材8と、載置部材1に配置され、押え部材8が開けられるときにはZ方向の一方側(上側)に向かって移動して載置部材1と押え部材8との間の領域に突出し、押え部材8が閉じられるときにはZ方向の一方側とは逆の他方側(下側)に向かって移動する可動体11と、可動体11が挿入され、可動体11のZ方向の移動をガイドするガイド穴21と、可動体11のZ方向の位置を検知するためのセンサー24と、を備えている。そして、可動体11は、Z方向に延びる4つの溝部11aを有し、可動体11の4つの溝部11aのうちガイド溝11Gとされる2つの溝部11aとそれぞれ対向するガイド穴21の2つの内周部分21aにガイド突起21Gが形成されており、ガイド溝11Gとされる2つの溝部11a以外の残りの溝部11aと対向するガイド穴21の内周部分にはガイド突起21Gが形成されていない。
【0051】
本実施形態の構成では、押え部材8の開閉に応じて可動体11がZ方向に移動する(可動体11がガイド穴21の内周面に接しながらZ方向に摺動する)ようになっている。そして、可動体11のZ方向の位置を検知するためのセンサー24が設けられている。このため、センサー24の出力に基づき、押え部材8の開閉状態(傾倒角度)を判別することができる。
【0052】
ここで、本実施形態の構成では、可動体11の4つの溝部11aのうち2つの溝部11aをガイド溝11Gとするため、ガイド溝11Gとされる2つの溝部11aとそれぞれ対向するガイド穴21の2つの内周部分21aにガイド突起21Gを形成している。これにより、ガイド溝11Gとガイド突起21Gとが係合する。したがって、可動体11がZ方向に摺動するときに、可動体11が自身の中心軸回りに回転しないように可動体11を確実に保持することができる。そして、このように可動体11の保持を確実に行うことができれば、可動体11の被検知部分(可動体11の他端11bに形成された検知片12)のZ方向への移動経路がセンサー24の検知領域から外れることはない。
【0053】
さらに、この構成では、ガイド溝11Gとされる2つの溝部11a以外の溝部11aと対向するガイド穴21の内周部分にはガイド突起21Gを形成していない。このため、可動体11がZ方向に摺動するときに、可動体11のガイド溝11Gとされる2つの溝部11aはガイド穴21の内周面(ガイド突起21G)と接するが、可動体11のガイド溝11Gとされる2つの溝部11a以外の溝部11aはガイド穴21の内周面と接しない。これにより、可動体11にガイド溝11Gを形成し、その可動体11のガイド溝11Gと係合するガイド突起21Gをガイド穴21に形成したとしても、可動体11の摺動面(ガイド穴21の内周面と接する面)の増加を抑制することができる。したがって、可動体11のZ方向への摺動性は低下しない(可動体11がZ方向にスムーズに摺動する)。
【0054】
このように、本実施形態の構成では、可動体11の摺動性を低下させることなく可動体11を確実に保持することができる。
【0055】
また、本実施形態では、上記のように、Z方向の一方側から見たときの可動体11の形状が十字形状とされている。これによって、可動体11は、Z方向に延びる4つの溝部11aを有する。そして、可動体11の4つの溝部11aのうち互いに対角の位置関係となっている2つの溝部11aがガイド溝11Gとされている。すなわち、ガイド穴21の内周面のうちガイド溝11Gとされる2つの溝部11aとそれぞれ対向する2つの内周部分21aにガイド突起21Gが形成されている。このように構成すれば、可動体11をバランス良くガイドすることができる。
【0056】
また、本実施形態では、上記のように、可動体11は、金型によって成形された樹脂成形品である。そして、ガイド溝11Gとされる2つの溝部11a以外の残りの溝部11aの内面のうち互いに平行な一対の面11Sは、金型のパーティング面と接することによって成形された面である。ここで、金型のパーティング面と接することによって成形された各面11Sにはバリが発生し易いので、各面11Sを摺動面とした場合には可動体11のZ方向への摺動性が悪くなる。このため、ガイド溝11Gとされる2つの溝部11a以外の残りの溝部11aの各面11Sを金型のパーティング面と接することによって成形された面としている。これにより、可動体11のZ方向への摺動性をより向上させることができる。
【0057】
なお、本実施形態では、上記のように、金型によって成形された樹脂成形品を保持部材20としている。このような保持部材20を成形するための金型には、ガイド穴21を成形するための柱状部分が設けられている。ここで、仮に、ガイド穴21の開口形状を可動体11の形状に沿った十字形状にする場合には、ガイド穴21を成形するための柱状部分の形状も十字形状にしなければならないので、ガイド穴21を成形するための柱状部分の肉厚が小さくなって金型の強度が低下する。しかし、本実施形態では、ガイド穴21の開口形状を図8に示した形状としている。したがって、ガイド穴21を成形するための柱状部分の肉厚を大きくすることができるので、金型の強度が高まる。
【0058】
今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0059】
たとえば、上記実施形態の構成では、載置部材1に開閉検知ユニットDUを配置したが、押え部材8に開閉検知ユニットDUを配置してもよい。
【0060】
また、上記実施形態の構成では、可動体11に4つの溝部11aを形成したが、可動体11に形成する溝部11aの形成数が3つであってもよいし、5つ以上であってもよい。
【0061】
また、上記実施形態の構成では、4つの溝部11aのうち互いに対角の位置関係となる2つの溝部11aをガイド溝11Gとして機能させたが、図10に示す変形例のように、4つの溝部11aのうち1つの溝部11aのみをガイド溝11Gとして機能させてもよい。この場合、ガイド突起21G(ガイド穴21の内周面のうち内方に突出した内周部分21a)の形成数も1つとなる。
【0062】
また、上記実施形態の構成では、Z方向から見たときの可動体11の形状を2本の線分L1およびL2のそれぞれに対して対称としたが、図11に示す変形例のように、可動体11の形状を線分L2に対して非対称としてもよい。具体的には、図11に示す変形例では、ガイド溝11Gとされる2つの溝部aの各溝形状が互いに異なっている。そして、ガイド穴21の内周面のうち内方に突出した2つの内周部分21a(ガイド突起21G)は、それぞれ、ガイド溝11Gとされる2つの溝部11aのうち対向する溝部11aの溝形状に沿った突出形状とされている。これにより、組み立て作業時(可動体11をガイド穴21に挿入するとき)に、ガイド溝11Gとされる2つの溝部11aの向き(すなわち、検知片12の向き)が間違って挿入されることがない。
【0063】
また、上記実施形態の構成において、図12および図13に示す変形例のように、可動体11のZ方向の一端11a(押え部材8側に突出する先端)にフック13を設けてもよい。なお、フック13は、本発明の「係合体」に相当する。
【0064】
フック13は、可動体11の一端11aに連結された一対の係合片13aを含み、その一対の係合片13aの開放端がガイド穴21の開口縁よりも外側に食み出るようにハの字状に形成されている。これにより、可動体11の一端11aがZ方向の他方側(ガイド穴21に潜り込む方向)に移動すると、ガイド穴21の開口縁にフック13が係合する。したがって、可動体11がガイド穴21から抜けてしまうことがない。
【0065】
さらに、フック13(一対の係合片13a)は、可動体11の本体部分に収束する方向(A方向)に弾性変形する。これにより、可動体11の一端11aにフック13を設けたとしても、組み立て作業時にフック13(一対の係合片13a)をA方向に弾性変形させつつ可動体11をガイド穴21に押し込むことにより、容易に可動体11をガイド穴21に挿入することができる。そして、可動体11の一端11aがガイド穴21から突出すると、フック13の形状が復元するので、一対の係合片13aの開放端がガイド穴21の開口縁よりも外側に食み出る。すなわち、可動体11がガイド穴21から抜けないようになる。
【符号の説明】
【0066】
1 載置部材
8 押え部材
11 可動体
11a 溝部
11G ガイド溝
13 フック(係合体)
21 ガイド穴
21a 内周部分
21G ガイド突起
24 センサー
100 画像形成装置
200 画像読取装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13