特許第5757978号(P5757978)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5757978ガスタービン用のマルチコーンタイプの予混合バーナ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5757978
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】ガスタービン用のマルチコーンタイプの予混合バーナ
(51)【国際特許分類】
   F23R 3/28 20060101AFI20150716BHJP
   F23R 3/20 20060101ALI20150716BHJP
   F23R 3/30 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
   F23R3/28 B
   F23R3/20
   F23R3/30
【請求項の数】7
【外国語出願】
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-144329(P2013-144329)
(22)【出願日】2013年7月10日
(65)【公開番号】特開2014-16148(P2014-16148A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2014年1月6日
(31)【優先権主張番号】12175639.9
(32)【優先日】2012年7月10日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503416353
【氏名又は名称】アルストム テクノロジー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】エニオ パスカロット
(72)【発明者】
【氏名】フランクリン マリー ジェナン
(72)【発明者】
【氏名】ヤーン ヘラート
【審査官】 佐藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−014635(JP,A)
【文献】 特開2012−037234(JP,A)
【文献】 特開平08−226649(JP,A)
【文献】 特開平08−042357(JP,A)
【文献】 特開平04−320711(JP,A)
【文献】 特開平11−223306(JP,A)
【文献】 特開2002−130676(JP,A)
【文献】 米国特許第06702574(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23R 3/00−7/00
F02C 1/00−9/58
Thomson Innovation
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービン用のマルチコーンタイプの予混合バーナ(10)であって、中心バーナ軸線(11)を中心にして配置されかつ下流方向に開放した仮想の、軸方向に延びた共通の円錐(15)の部分である複数のシェル(16a〜16d)を備え、前記部分は、隣接するシェル(16a〜16d)の各対の間に接線方向スロット(17)が形成されるように前記バーナ軸線(11)に対して垂直方向にずらされている、ガスタービン用のマルチコーンタイプの予混合バーナ(10)において、
前記仮想の共通の円錐(15)が、軸方向で変化する円錐角を有し、
前記仮想の共通の円錐(15)の前記円錐角は、下流方向で増大しており、
前記仮想の共通の円錐(15)の前記円錐角の変化は、前記中心バーナ軸線(11)を中心にして前記共通の円錐(15)をねじることによって形成されていることを特徴とする、ガスタービン用のマルチコーンタイプの予混合バーナ(10)。
【請求項2】
ねじられた前記共通の円錐(15)の表面領域は、子午線(20)を、中心バーナ軸線(11)を中心にして回転させることによって生ぜしめられ、前記子午線(20)の一方の端部は、前記中心バーナ軸線(11)を中心にして他方の端部に対して所定のねじれ角(14)だけ回転させられており、それぞれの前記子午線(20)に沿って前記仮想の共通の円錐(15)を切断することによってシェル(16a〜16d)が形成されている、請求項記載の予混合バーナ。
【請求項3】
前記ねじれ角(14)は、30°以上である、請求項記載の予混合バーナ。
【請求項4】
前記ねじれ角(14)は、60°以上である、請求項記載の予混合バーナ。
【請求項5】
前記共通の円錐(15)は、4つの等しい部分もしくはシェル(16a〜16d)に分割されている、請求項1からまでのいずれか1項記載の予混合バーナ。
【請求項6】
各シェル(16a〜16d)には、それぞれのシェルの軸方向のエッジに沿って延びた予混合ガスチャネル(19a〜19d)が設けられており、これにより、ガスを、前記予混合ガスチャネル(19a〜19d)からガス噴射孔を通じて、隣接するスロット(17)を通ってシェル(16a〜16d)の配列の内部に入る空気の流れ内へ噴射することができる、請求項1からまでのいずれか1項記載の予混合バーナ。
【請求項7】
前記予混合ガスチャネル(19a〜19d)はそれぞれ、円筒状である、請求項記載の予混合バーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンの技術に関する。本発明は、請求項1の前提部によるガスタービン用のマルチコーンタイプの予混合バーナに関する。
【背景技術】
【0002】
過去20年以上の間、短いが有効な予混合ゾーンを備えるバーナ(いわゆるEVバーナ:環境的に優しいV字形バーナ)が、極めて低いNOxレベルで、本出願人の複数のガスタービンにおいて提供されてきた。これに加え、予混合技術の3つの態様の開発が成功しており、これらの態様は、以下のようなガスタービン機関に展開させられてきた。すなわち、シーケンシャルEVバーナ、すなわち、第1の高圧タービンの排ガスを再熱するために、高温排出流への天然ガス及び油の予混合を提供する技術と、低いNOxエミッションで予混合火炎において合成ガスを燃焼させるために使用されるMBtu EVバーナと、燃焼前に液体燃料を予備蒸発および予混合させ、水を噴射せずに極めて低いNOxエミッションでこの液体燃料を燃焼させることができるアドバンスドEVバーナ(AEV)と、である。
【0003】
欧州特許出願公開第0851172号明細書は、液体燃料および/または気体燃料で燃焼室を作動させるための、ダブルコーン(2つの円錐)タイプの典型的なEVバーナを開示しており、この場合、この目的のために必要とされる燃焼用空気は、接線方向空気入口ダクトを通じてバーナの内部空間に方向付けられる。流れのこの方向付けは、内部空間において旋回流を生じ、この旋回流は、バーナの出口において逆流ゾーンを生ぜしめる。そこに形成される火炎前面を安定させるために、バーナを形成するそれぞれの区分ボディには、少なくとも1つのゾーンが設けられており、このゾーンには、旋回流内へ補足空気を噴射するための入口開口が設けられている。この噴射により、区分ボディの内壁には膜が形成され、この膜は、火炎が区分ボディの内壁に沿ってバーナの内部空間内へ逆火し得るのを防止する。
【0004】
欧州特許出願公開第2423597号明細書は、ダブルコーンバーナの形式の別の典型的なEVバーナを示しており、このEVバーナは、他方の中に一方がはめ込まれて配置された2つの部分円錐シェルを有し、これらのシェルは、これらのシェルの間に空気入口ダクトを形成しており、この空気入口ダクトを通って外部からの燃焼用空気が予混合バーナの円錐形の内部空間に流入する。燃焼用空気の流れ方向に対して横方向に延びた噴射開口の穴の直線的な列が、空気入口ダクトの外壁に配置されおり、これらの穴を通じて、気体燃料が、この気体燃料に対して横方向に流れる燃焼用空気内へ噴射される。
【0005】
独国特許出願公開第19545310号明細書は、外側円錐ケーシングおよび内側円錐ケーシングを備えた中空の円錐体から成る別の予混合バーナを開示している。少なくとも2つの入口ダクトは、内側円錐ケーシングに対して接線方向に延びており、直線的な円錐ケーシング線に沿って位置決めされている。形成された部分シェルの部分円錐軸線は、同じ円錐軸線に位置している。予混合バーナは、燃焼用空気を旋回させるための入口ダクトを含む少なくとも2つ、たとえば4つの部分に分割されている。燃料ノズルは、液体燃料を噴射するために円錐先端部に配置されている。
【0006】
直線的な円錐を備える現在のEVおよびAEVバーナのための主な設計パラメータは、出口直径、スロット幅および円錐角である。これらのパラメータは、任意の通過流量および圧力損失の場合に、渦崩壊がバーナ出口のより近くで生じるように選択される。制限は、スワール強度が、バーナ軸線の近くにおける渦崩壊のための臨界スワール強度に達するまで、軸線に沿って線形に増大するということである。これは、これらのパラメータにより、バーナ長さおよびバーナエンベロープが予め設定されることを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0851172号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第2423597号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第19545310号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、公知の予混合バーナの欠点を回避し、中央再循環気泡の高い安定性を有し、ひいては火炎前面の軸方向振動が減じられた、マルチコーンタイプの予混合バーナを提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、長いランスなどのにぶい物体(bluff body)を有することなく安定した燃焼を達成するための可能性を提供する予混合バーナを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これらの課題およびその他の課題は、請求項1による予混合バーナによって得られる。
【0011】
本発明による予混合バーナは、中心バーナ軸線を中心にして配置されかつ下流方向に開放した、仮想の、軸方向に延びた共通の円錐の部分である複数のシェルを備え、前記部分は、隣接するシェルの各対の間に接線方向スロットが形成されるように前記部分が前記バーナ軸線に対して垂直に配置されている。
【0012】
前記仮想の共通の円錐は、軸方向で変化する円錐角を有することを特徴とする。
【0013】
発明の1つの実施の形態によれば、仮想の共通の円錐の円錐角は下流方向で増大している。
【0014】
特に、仮想の共通の円錐の円錐角の変化は、中心バーナ軸線を中心にして前記共通の円錐をねじることによって生ぜしめられる。
【0015】
特に、ねじられた共通の円錐の表面積は、中心バーナ軸線を中心にして子午線を回転させることによって生ぜしめられ、子午線の一方の端部は、中心バーナ軸線を中心にして他方の端部に対して所定のねじれ角だけ回転させられ、シェルは、それぞれの子午線に沿って前記仮想の共通の円錐を切断することによって形成される。
【0016】
特に、ねじれ角は30°以上である。
【0017】
特に、ねじれ角は60°以上である。
【0018】
発明の別の実施の形態によれば、共通円錐は、4つの等しい部分もしくはシェルに分割されている。
【0019】
発明の別の実施の形態によれば、シェルのそれぞれには、それぞれのシェルの軸方向のエッジに沿った延びた予混合ガスチャネルが設けられており、これにより、ガスを、前記予混合ガスチャネルからガス噴射孔を通じて、隣接するスロットを通ってシェルの配列の内部に進入する空気の流れへ噴射することができる。
【0020】
特に、前記予混合ガスチャネルはそれぞれ円筒状である。
【0021】
ここで、添付の図面を参照しながら様々な実施の形態によって本発明をさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】60°のねじれ角を有する、発明の1つの実施の形態による予混合バーナのための仮想円錐を形成するための基本的な幾何学的要素を示す図である。
図2図1の要素によって形成されたベル状の仮想円錐を示す図である。
図3】4つの別個のシェルへの、図2の仮想円錐の分割を示しており、シェルは、次いで、バーナ軸線に対して垂直方向にずらされる。
図4】それぞれのバーナランスを備えた、図3による現実のシェルの実際の組み合わせを示す図である。
図5】それぞれのシェル間スロットに配置された予混合ガスチャネルを備えた、図4のバーナ構成を示す図である。
図6】3つの異なるねじれ角、すなわち0°(A)、30°(B)および60°(C)の場合のバーナ構成を、それぞれの比較表の形式で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図5は、本発明の1つの実施の形態による予混合バーナ10の構成を示す。予混合バーナ10は、中心バーナ軸線11に沿って延びるスワーラ配列を有する。スワーラ配列は、バーナランス18を備え、このバーナランス18の下流方向には4つのシェル16a〜16dが続いている。シェルは、円錐形であり、軸線11に対して垂直方向にずらされており、軸線11に関して90°回転対称に配置されている。隣接するシェルの各対の間にはスロット17が設けられており、このスロット17を通って空気はシェル配列の内部に進入することができる。各シェルの長手方向エッジに沿って延びた予混合ガスチャネル19a〜19cは、一連の穴(図示せず)を通じて、スロット17に進入する空気流に気体燃料を噴出し、これにより、空気と燃料との予混合を開始する。
【0024】
十分に軸方向のアプローチ流により空気流の流入角を改良するために、本発明は、バーナ子午線平面に形成されているのではなく、バーナ子午線平面に対して傾斜させられた直線的な予混合ガスチャネル19a〜19cを用いる。
【0025】
直線的なガスチャネル19a〜19dを傾斜させることによって、EVタイプバーナシェルの全ての表面線は、ねじられ、元の円錐形状からベル型形状へ変化する。
【0026】
図1図4を参照すると、このねじれは、以下のように説明することができる。シェル16a〜16dの形状を提供するために、図1に示されたようなジオメトリから始める。このジオメトリでは、バーナヘッド12(バーナの上流端部)は、小さな直径を有しかつバーナ軸線11に対して垂直に向けられかつバーナ軸線11と同軸の、第1の円によって表される。バーナ出口13(バーナの下流端部)は、より大きな直径を有しかつバーナ軸線11に対して垂直に向けられかつバーナ軸線11と同軸の、第2の円によって表される。典型的な子午線20は、この場合、その上流端部がバーナ軸線11を中心にして下流端部に対してねじれ角14だけねじられている。ねじれ角14はこの例では60°である。
【0027】
この場合、ねじられた子午線20は、バーナ軸線11を中心にして回転させられており、これにより、ねじられかつひいてはベル状の仮想円錐15を形成する(図2)。
【0028】
次いで、図2の仮想円錐15は4つの別個のシェル16a〜16dに分割され、これらのシェルは、バーナ軸線11を中心として90°ごとに分配された4つのスロット17を開放させるように、それぞれバーナ軸線に対して垂直方向にずらされる(図3)。
【0029】
図4は、再び4つのシェル16a〜16dを示しているが、この場合、シェルは、ある厚さを有し、軸線11からある半径において切断されている。また、バーナのヘッドおよび燃料ランス18の最後の部分も図4に示されている。
【0030】
図5は、4つの円筒状の予混合ガスチャネル19a〜19cが取り付けられた4つのシェル16a〜16dから成るバーナスワーラを示す。シェル16a〜16dおよびガスチャネル19a〜19cの両方は、バーナ軸線11からある半径において切断されている。ガスチャネル19a〜19cは、傾斜した子午線に沿って向けられており、長手方向スロット17を通って進入するガスおよび空気の良好な予混合を達成するために管に沿って多数のガス噴射孔を有する。
【0031】
バーナシェル16a〜16dのベル形状は、バーナの下流部分におけるよりも、バーナの上流部分においてより小さな円錐角を有する。これは重要な革新的特徴である。なぜならば、この特徴は、バーナ軸線11に沿ってバーナスワール数を変化させるからである。より小さな円錐角は、上流バーナ部分におけるより低いスワール数につながるのに対し、下流におけるより大きな円錐角は、そこでより高いスワール数を生じる。
【0032】
これは、以下の結果を生じる。
【0033】
直線的な円錐を備えた現在のEVおよびAEVバーナの場合の主な設計パラメータは、出口直径、スロット幅および円錐角である。これらのパラメータは、任意の通過流量および圧力損失の場合に、渦崩壊がバーナ出口の近くで生じるように選択される。その制限は、スワール強さがバーナ軸線の近くの渦崩壊のための臨界スワール強さに達するまで、スワール強さが軸線に沿って線形に増大しているということである。これは、これらのパラメータにより、バーナ長さおよびバーナ包絡線が予め設定されることを意味する。
【0034】
これに対して、実際の発明は、軸線に沿ったスワール強さの、一定に増大する勾配を有する。これは、渦崩壊のための臨界スワール強さが、直線的な円錐を備えたEVおよびAEVバーナと比較して、より強いスワール強さ勾配によって達成されることを意味し、これは、より強い空力的な保持力による、軸方向渦崩壊位置のよりよい固定を意味する。この設計により、直線的な円錐を備えた現在の設計と比較して、任意の通過流量および圧力損失の場合に、より短いバーナレイアウトを提供することも可能である。
【0035】
さらに、長いランスなどのにぶい物体を有することなく安定した燃焼を達成する可能性は、バーナヘッドにおいて極めて上流でドライオイルを噴射し、したがって、燃料オイルが、点火される中央再循環ゾーンに入るまでにバーナ軸線に沿って蒸発するための十分な時間を有することを可能にする。
【0036】
図1図5の例は、60°の仮想円錐のねじれ角を有するシェル構成を示している。しかしながら、その他のねじれ角が用いられてよい。図6は、比較表の形式で、バーナ構成と、3つの異なるねじれ角、すなわち0°(A)、30°(B)および60°(C)の場合のその結果とを示している。ねじれ角14が増大すると、仮想の円錐15のベル形状は、ますます明白になることが容易に見て取れる。
【符号の説明】
【0037】
10 予混合バーナ
11 軸線
12 バーナヘッド
13 バーナ出口
14 ねじれ角
15 仮想円錐(ねじられた、ベル状の)
16a〜16d シェル(仮想円錐の部分)
17 スロット
18 バーナランス
19a〜19d 予混合ガスチャネル
20 子午線
図1
図2
図3
図4
図5
図6