特許第5757979号(P5757979)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーインスツル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5757979-半導体装置パッケージ 図000002
  • 特許5757979-半導体装置パッケージ 図000003
  • 特許5757979-半導体装置パッケージ 図000004
  • 特許5757979-半導体装置パッケージ 図000005
  • 特許5757979-半導体装置パッケージ 図000006
  • 特許5757979-半導体装置パッケージ 図000007
  • 特許5757979-半導体装置パッケージ 図000008
  • 特許5757979-半導体装置パッケージ 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5757979
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】半導体装置パッケージ
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/50 20060101AFI20150716BHJP
   H01L 23/28 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
   H01L23/50 H
   H01L23/28 A
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-154937(P2013-154937)
(22)【出願日】2013年7月25日
(62)【分割の表示】特願2007-195494(P2007-195494)の分割
【原出願日】2007年7月27日
(65)【公開番号】特開2013-243394(P2013-243394A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2013年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154863
【弁理士】
【氏名又は名称】久原 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100123685
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 信行
(72)【発明者】
【氏名】門井 聖明
【審査官】 小川 将之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−285662(JP,A)
【文献】 特開昭62−183548(JP,A)
【文献】 特開平11−163210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/50
H01L 23/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップと、前記半導体チップと電気的に接続されたリードフレームと、前記半導体チップを含む前記リードフレームの一部を封止樹脂により封止する樹脂パッケージを有する半導体パッケージにおいて、前記リードフレームがその表面に、フィラーが入り込むことが可能な1層からなる網を複数重ねた多層からなる網目構造を有することを特徴とする半導体装置パッケージ。
【請求項2】
前記多層からなる網目構造内の封止樹脂に含まれるフィラー含有量が前記多層からなる網目構造外の封止樹脂に含まれるフィラー含有量より少ないことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置パッケージ。
【請求項3】
前記多層からなる網目構造内の封止樹脂の弾性率が前記多層からなる網目構造外の封止樹脂の弾性率より小さいことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置パッケージ。
【請求項4】
前記リードフレームのワイヤーボンディング接続部が前記多層からなる網目構造をしていないことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置パッケージ。
【請求項5】
前記多層からなる網目構造が立体的であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置パッケージ。
【請求項6】
前記多層からなる網目構造の各層のメッシュの大きさが前記封止樹脂に含まれるフィラーの平均粒子径よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の半導体装置パッケージ。
【請求項7】
前記多層からなる網目構造は、網目がずれて配置されることで、重ね合わせたことにより出来上がるメッシュの大きさは前記各層のメッシュの元の大きさより小さくなっていることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置のパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
リードフレームと電気的に接続された半導体チップなどの超小型の電子装置を樹脂モールディングした半導体装置パッケージが知られている。図6に示す典型的な半導体装置パッケージの構造では、半導体チップ101がリードフレーム102の一部である中央ダイパッド部107の上に配置され、接着樹脂層で接合されている。半導体チップ101とリードフレーム102とはボンディングワイヤ103で電気的に接続されている。半導体チップ101およびリードフレーム102を覆って、エポキシ樹脂とフィラーなどからなる樹脂パッケージ本体104が成形され、成形された樹脂パッケージ本体104の中に半導体チップ101およびリードフレーム102が封入される。リードフレーム102の一部は樹脂パッケージ本体104の外まで延びて外部リード105となり外部回路との接続端子に利用される。
【0003】
このような半導体装置パッケージが有している問題点の一つは、樹脂とリードフレームとの界面に沿って内部に水分が進入し、電気的絶縁性の低下などの悪影響が生じることである。図7に示すように、外部リード105と樹脂パッケージ本体104との界面106を通じて水分が進入する。この進入した水分は、リードフレーム102に沿って内部へと浸透する。この水分の作用で、樹脂パッケージ本体104とリードフレーム102との界面に、剥離が生じる。その結果、外界に存在するイオン性その他の腐食性汚染物質が進入することになる。このような水分及び汚染物質の進入は、半導体チップのパッド腐食による早期不良を誘発することになる。
【0004】
樹脂とリードフレーム界面での水分進入の原因としては、樹脂とリードフレームとの間の剥離が上げられる。リードフレームが使用環境より受ける応力で変形するときに、樹脂がリードフレームの変形に追従できないのがこの剥離の要因の1つであり、樹脂に含まれるフィラー(シリカ)の含有により樹脂の弾性率が高くなってしまうためである。図8は従来技術のリードフレーム近傍のフィラーの様子を示す模式断面図である。フィラーはほぼ一様に分布している。
【0005】
リードフレーム102と樹脂パッケージ本体104の間の密封不良のほかにも、樹脂パッケージ本体104とリードフレーム102の中央ダイパッド部107の背面との界面における接着不良という問題がある。このような接着不良により、特に電子装置パッケージが多湿環境に露出される場合に、図7に示すようリードフレーム102と樹脂パッケージ本体104との間で発生する剥離部分108に水分が溜まることとなる。この水分は、電子装置パッケージがボード装着などの処理工程で高温処理されたときに、蒸気になって膨張を起こし、パッケージクラックを引き起こすことになる。
【0006】
リードフレームに対する樹脂パッケージ本体の接着力を向上させて樹脂パッケージ製品の品質と信頼性を改善するために、リードフレームの表面に種々の処理を施すことが提案されている。従来知られているこの種の処理は、銅からなるリードフレーム表面をプラズマによる処理を行ったりする技術である。既存のプラズマ洗浄方法は一般的には、半導体チップ101とリードフレーム102などの組立後で樹脂パッケージ本体104の成形工程の前に施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−167686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のプラズマ洗浄方法では、上向き露出面に対しては効果があるが、中央ダイパッド部107の背面などと樹脂パッケージ本体104との間の接着力を促進させるにはあまり効果的ではない。また、上記方法では、接着樹脂層とリードフレーム間の接着力を促進させる効果もあまりない。しかも、プラズマ処理はバッチ処理を行う必要があるため、非経済的であり、連続化された樹脂パッケージ生産組立工程には適用が困難である。
【0009】
一方、リードフレーム102の表面にブラックオキシドやブラウンオキシド、錫酸化物/有機シランなどの表面処理層を形成する方法は、パッケージ内部に対する処理では大変有利であるが、パッケージ外部においては多くの問題を引き起こす。例えば、樹脂成形工程において、成形樹脂の低分子量部分がリードフレーム102の表面に流出する問題がある。これはいわゆる「樹脂ブリード」と呼ばれ、外部リードの表面を電気的に絶縁化してしまう。そこで、従来は、パッケージを印刷回路基板などに接続するために、外部リードの表面に錫や半田によるめっきを行う前に、樹脂ブリードを除去していた。樹脂ブリード自体は、通常の化学的あるいは機械的方法で除去できる。ところが、ブラックオキシドなどの表面処理層の上に樹脂ブリードが発生すると、両者の相互作用によって付着性が非常に強い膜が形成されてしまい、容易には除去できなくなってしまう。リードフレームやパッケージを損傷せずに前記表面処理層の樹脂ブリードを完全に除去することは極めて困難である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る半導体装置パッケージは、リードフレームと樹脂パッケージ本体との接合面の一部を網目構造としているので、この接続面の接触面積が増大しリードフレームと樹脂パッケージ本体との接合性を向上できる。しかも、網目構造を立体的にすることでリードフレームと樹脂が接合面も立体的になるので飛躍的に接合性が向上する。
【0011】
しかも、できあがった網目構造のメッシュを樹脂に含まれるフィラーの平均粒子径より小さくすることで、リードフレームの表面近傍に到達するフィラーを減らし、リードフレーム近傍における樹脂の弾性率を変化させることで半導体装置パッケージの使用環境より受ける応力で変形するリードフレームに樹脂が追従することができるので、密着性が向上する。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる半導体装置パッケージ、前記網目構造の形成によって、半導体チップがリードフレームと樹脂パッケージ本体との接合性を大幅に向上させることができる。しかも、樹脂に含まれるフィラーの分布をリードフレーム近傍で変化させることができ樹脂とリードフレーム接続面の密着の信頼性を向上することになる。その結果、リードフレームと樹脂パッケージ本体との一体接合面の剥離が生じにくく、水分や汚染物質の浸入やそれに伴う各種の弊害を防止して、電子装置パッケージの品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例となる半導体装置パッケージ
図2図1におけるA−A´線断面図
図3】本発明のリードフレーム近傍のフィラーの様子を示す模式断面図
図4】本発明のリードフレームの重ねあわせの説明図
図5】本発明の他の実施例を表すリードフレームの図
図6】従来の技術の半導体装置パッケージ
図7】従来技術の半導体装置パッケージの断面図
図8】従来技術のリードフレーム近傍のフィラーの様子を示す模式断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図1乃至5に基づいて説明する。
【0015】
図1に本発明の第一の実施例を示す。半導体装置パッケージ4は、半導体チップ1が、銅材からなるリードフレーム2の中央のダイパッド9上に配置され、接着樹脂層で接合されている。半導体チップ1とリードフレーム2とはボンディングワイヤ3で電気的に接続されている。半導体チップ1およびリードフレーム2を覆って、エポキシ樹脂などからなる樹脂パッケージ本体4が成形され、成形された樹脂パッケージ本体4の中に半導体チップ1およびリードフレーム2が封入されている。リードフレーム2の一部は樹脂パッケージ本体4の外まで延びて外部リード5となり外部回路との接続に利用される。重要な点はここで用いたリードフレーム2が網目構造を有していることである。
【0016】
樹脂パッケージ本体4を構成する樹脂材料としては、ノボラックエポキシ樹脂が使用できる。それ以外にも、通常の電子IC パッケージ産業で使用されているような樹脂材料、例えばエポキシシリコン等が使用される。その他のポリエステル樹脂やシリコン樹脂も使用される。
【0017】
リードフレーム2は、中央に半導体チップ1を接合する矩形板状のダイパッド9を有する。ダイパッド9はアームによりリードフレームレールにつながっている。
【0018】
図2はリードフレーム部をA−A´で切断した模式断面図である。リードフレーム2は表面に網目構造11を有しているので、樹脂で封止すると樹脂とリードフレーム2の接続面は構造的に強固な密着となり、樹脂とリードフレーム接続面の剥離が生じにくくなる。
【0019】
図3に第二の実施例を示す。本発明の網目構造は封止樹脂に含まれるフィラー10の平均粒子径より小さい網目の構造を有する。網目のメッシュが使用する封止樹脂に含まれるフィラー10の平均粒子径より小さくなることで、フィラーの径が大きいものは網目構造の中に入り込まなくなる。したがってリードフレーム表面近傍で封止樹脂に含まれるフィラーの量と径を変化させることができ、リードフレーム網目構造部11の封止樹脂弾性率を下げることができる。したがって、外力によるリードフレームの変形に対して封止樹脂がリードフレームの変形に追従することで封止樹脂とリードフレーム接続面の剥離が生じにくくなる。
【0020】
図4に第三の実施例を示す。リードフレームの網目構造が2層以上重ねた構造を有する。これにより各層の網目のメッシュがフィラー10の標準粒子径より大きくても、重ね合わせたことにより出来上がる網目のメッシュは小さくなり任意の粒子径に対しメッシュの大きさを設計できる。さらに網目構造を2層以上の多層に重ねることで樹脂がリードフレーム内部に入り込み構造的により強固な結びつきとなり封止樹脂とリードフレームの接合面の剥離が生じにくくなる。
【0021】
図5に第四の実施例を示す。リードフレームは半導体チップと電気的に接続するためにワイヤーボンディングされる。特にリードフレーム側の接続部はワイヤーをこすり付けるようなウェッジボンディングになる。したがって、これらのボンディング箇所に網目構造による凹凸があると場合によってはワイヤーボンディングの接続強度が低下する。そこでリードフレームのワイヤーボンディングする部分12を網目構造とせずに平らにすることによってワイヤーボンディング3の接続強度を維持することができる。
【符号の説明】
【0022】
1 半導体装置
2 リードフレーム
3 ワイヤーボンディング
4 樹脂パッケージ本体
5 外部リード
9 ダイパッド
10 フィラー
11 リードフレーム網目構造部
12 リードフレーム上のワイヤーボンディングする部分
101 半導体装置
102 リードフレーム
103 ワイヤーボンディング
104 樹脂パッケージ本体
105 外部リード
106 外部リードと樹脂パッケージ本体との界面
107 中央ダイパッド部
108 リードフレームと樹脂パッケージ本体との間で発生する剥離部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8