(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記プロセッサは、前記患者と共通の所望の人口統計を伴う複数の異なる対象の過去のデータを含む受信者操作特性解析のサブセットを利用するようにプログラムされている請求項1または2のシステム。
前記空間的位置についての前記受信者操作特性解析の結果は、前記複数の異なる位置についての受信者操作特性曲線の下の面積を反映する値を含む請求項8〜10のいずれかの方法。
前記受信者操作特性解析の結果として含まれる受信者操作特性曲線の下の面積を反映する前記値は、前記臨床データが収集された前記複数の異なる位置に対応する位置に現れる色で表現される請求項11の方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
いくつかの用語が単なる利便性のためにここで用いられるが、これら用語は本発明の限定のためではない。ここで使用される関連用語は、図面を参照することにより最適に理解され、図面において同じ数字は同じまたは類似の事項を特定するために使用される。さらに、図面には、いくつかの特徴がいくらか概略的な形態で示されているであろう。
【0019】
複数の要素に関する「少なくとも1つ」という句は、もしここで使用される場合、ここでは、これら要素の1つ、または2以上の要素の組み合わせを意味する。たとえば「第1の部品と第2の部品の少なくとも1つ」という句は、本応用において、第1の部品、第2の部品、または、第1の部品と第2の部品を意味する。同様に、「第1の部品、第2の部品および第3の部品の少なくとも1つ」という句は、本応用において、第1の部品、第2の部品、第3の部品、第1の部品と第2の部品、第1の部品と第3の部品、第2の部品と第3の部品、または第1の部品と第2の部品と第3の部品を意味する。
【0020】
図1は、医学的検査の一部として対象に対する検査を行うためのシステム7を説明する実施形態を示す。ここに示すように、システム7は、眼科分野において使用される画像化技術を実行する光コヒーレンストモグラフィ(OCT)システムであり、たとえば、網膜(より具体的には、神経線維層、神経節細胞層(GCL)、神経節細胞層と内網状層(GCL+)、神経線維層と神経節細胞層と内網状層(神経節細胞複合体またはGCCとしても知られる)などの眼10の部分の断面像を生成する。本開示では、対象となる方法および装置を明確に説明するために、システム7の例示として、網膜厚を測定するためのOCTシステムを用いているが、本開示はそれに限定されないと理解されるべきである。システム7は、医学的検査の一部として対象の異なる空間的位置に関するデータを生成する任意の画像化装置または他のそのような診断装置を含んでいてよい。たとえば、システム7は、本開示の範囲から逸脱しない限りにおいて、内部器官、筋肉、神経、血管、骨などの被検体の異なる部分に関するデータを取得するための、コンピュータトモグラフィ(CT)モダリティ、磁気共鳴画像化(MRI)モダリティ、超音波モダリティなどを含んでいてよい。
【0021】
一般に、OCTは、低コヒーレンス広帯域光源12からの光を眼10の部分に照射することと、眼10の当該部分の断層像を生成するために反射光を観察することとを含む。光源12からの光は、ビームスプリッター、ファイバーカプラなどの光アダプター14により2つに分割され、サンプル部分16は、経路17に沿って眼10に向かって進行し、参照部分18は、経路19に沿ってミラー20などの参照反射器に向かって進行する。サンプル部分16と参照部分18は少なくとも部分的に反射され、それらの反射成分は光アダプター14により合成され、合成された反射光の強度または他の量(たとえば波長、反射光の僅かな部分など)が検出器21によって検出され、検出器21は、コンピュータ25により受信される検出量を示す信号を送信するために動作的に接続されている。サンプル部分16の進行距離が参照部分18の進行距離のコヒーレント長に含まれるとき、反射され合成された光の強度に影響する光干渉パターンが形成される。合成された反射光の強度は、サンプル部分16により照明される眼10の部分の特性(たとえば、組織の後方散乱、偏光など)により変化する。そして、合成された反射光の強度に基づいて眼10の照明部分のそのような特性に関する情報が決定され、眼10の照明部分を表す画像データ(または他の方法でそれに関する画像データ)を生成するために用いられる。
【0022】
眼10に対するサンプル部分16の進入深度は、タイムドメインでは、参照部分18のトランスミッター22のミラー20からの距離Dを変化することによって制御される。一方、周波数ドメインでは、進入深度は、距離Dの設定(距離Dは、固定でもよいし、たとえば各患者の特定の眼の形状および/または衝動性眼球運動を相殺するために可変でもよい)と、広帯域光源または或る周波数帯にわたる光源12の波長掃引(たとえば、所定期間にわたる周波数の反復的、連続的な変化)とによって制御される。合成された反射光に対してフーリエ解析を施すことは、異なる周波数で反射された光と、眼10の異なる深さで反射された光とを関連付ける。
【0023】
一定の進入深度を有するサンプル部分16は、眼10の内部の関心領域
24(たとえば黄斑、視神経乳頭など)にわたる異なる空間的位置27(
図2)を様々な異なる向き(
図1に破線で示す)で照明するためのトランスミッター11(ミラー、レンズなど)の調整を介して反射されてよい。
図2は、
図1に示す線2−2に沿う眼10の断面図の平面への投影図と、関心領域24内における異なる空間的位置27の配置の例として関心領域24に重畳表示されるグリッド(格子)28とを示す。
図2中の眼10の投影図は、眼10の後部における内向きの表面34を含むが、
図2に示す眼10の内部に向かう視界のための基準枠を提供する虹彩30および瞳孔32が破線で示されている。換言すると、眼10の後部における内向き表面34は、この表面34を眼の前部を通して観察することによって視認される。グリッド28は、検査のための表面34の関心領域をオーバーレイするのに適した寸法(たとえば、行および列の数、幅および高さなど)を有してよく、また、
図2に示す投影図より小さくても、投影図より大きくても、投影図に対して所望の他の寸法でもよい。さらに、グリッド28は、眼内の関心領域24に対しシステム7によって投影される必要はなく、
図2に示された異なる空間的位置27の配置の例を単純に提供するものでよい。
【0024】
関心領域24内に位置する空間的位置27にて反射された光の強度の決定を、ここでは「Aスキャン」と呼ぶ。Aスキャンは、特定の位置27内に進む光のサンプル部分16(
図1)の軸方向(つまり眼10の深さ方向)に配列された眼10内の複数の特徴に対応する反射光の強度を検出することを含む。光の反射部分により伝搬される情報は、その空間的位置27についての軸方向に沿うサンプル部分16が経由する構造を示す。このスキャンは、関心領域24内の他の空間的位置27について反復され、グリッド28における同じ垂直列の他の空間的位置27となりうる。空間的位置27について実行されたAスキャンから得られる情報が収集的に組み合わされることにより、「Bスキャン」と呼ばれる関心領域24の断面像が形成される。複数のBスキャンを組み合わせることにより3次元ボリュームを作成することも可能である。眼科的な目的において、Aスキャンについての関心領域24の具体例は、角膜から網膜に広がる領域を含んでよく、また、Bスキャンは、眼10の内側縁から外側縁に広がる領域と、角膜から網膜に広がる領域とを含んでよい。しかしながら、他の実施形態では、眼10の全長(多くの患者について約25mm)より短い約2〜3mmの長さを有する関心領域24内のAスキャンを形成するデータを利用してよい。
【0025】
AスキャンおよびBスキャンのデータは、診断用にここで説明されるような解析が可能なタイプのデータの2つの具体例であるが、これらはそのようなデータの全てを構成するものではない。たとえば、他のタイプのデータは、いわゆるCスキャンを収集的に形成するデータを含んでよい。電荷結合素子(CCD)カメラなどの撮像装置は、眼10内の関心領域の正面画像(en face image)を取得することに利用され、当該領域の全視野的な照明に利用される。結果として生じるCスキャンは、たとえば
図2に示されているような2次元平面に配置された関心領域に対応するデータから形成され、上述したような分離的、連続的スキャンの部分として収集されたデータを組み合わせる電気機械的な横スキャン処理の必要を排除する。段階的な参照ミラーの調整および正面画像の連続的な記録により、関心領域の3次元的表現の作成が可能となる。
【0026】
Cスキャンを生成する多くの非OCTシステム(たとえば走査型レーザ検眼鏡)、および、ここで説明されるような解析が可能な眼10の医学的検査に用いられる他のデータ収集も存在する。さらに、たとえば、層厚の代わりに信号強度などの特性を示すそのような他のデータの図表的な表現を評価および提供するために、このデータ視覚化技術を任意的に適用することもできる。しかし、簡潔さのために、そしてこのデータ視覚化の方法および装置を明確に説明するために、OCT技術を介して収集されたAスキャン、Bスキャンまたはそれらの組み合わせの表現および解析を具体例として用いる。
【0027】
関心領域24を形成する組織の物理的寸法の決定または他の定量化のために、Aスキャン、Bスキャンまたはそれらの組み合わせを解析することができる。眼科分野で用いられるOCTシステムの例を再度参照し、眼10の網膜内層の厚さ(サンプル部分16の軸方向における)を、AスキャンおよびBスキャンの一方または双方を用いて測定できる。たとえば、網膜内層の厚さを決定するために、AスキャンまたはBスキャンに表れる異なる網膜内層の境界の間の差を利用することができる。
【0028】
関心領域24の第1の層における異なる空間的位置27(
図2)のそれぞれについて、検出器21により検出された合成された反射光の強度(または他の量)が、
図1に示すコンピュータ25に送信される。コンピュータ25は、ハードドライブなどの非一時的コンピュータ読み取り可能媒体に記憶されたコンピュータ実行可能な指示を実行するためのプロセッサを有し、このハードドライブに記憶されたデータベースに、検出された強度を格納する。データベースは、検出器21により検出された強度の値のそれぞれを、対応する光が反射された関心領域24内の異なる空間的位置27のそれぞれにリンク付けまたは他の関連付けして格納するよう構成されている。たとえば、異なる空間的位置27のそれぞれからの反射光の強度値を、グリッド28に対応するエントリを有するアレイに格納することができる。
図3は、
図2に示すグリッド28により定義された空間的位置27のそれぞれに対応するエントリを有するアレイ36の具体例を示す。換言すると、アレイ36は、n列(column)およびm行(row)を有するn×mアレイである:ここで、nおよびmは、独立に選択可能な任意の整数である。この実施形態によれば、グリッド28についてもn列およびm行に任意に分割することができ、その交差位置は異なる空間的位置27を確立する。アレイ36のセルは、同じ配列を有するグリッド28の対応する空間的位置27からの反射光の強度値を格納するように配列されている。たとえば、空間的位置38からの反射光の強度値を、
図3の値a
11として格納することができる。同様に、空間的位置40からの反射光の強度値を値
a12として格納し、以下同様とすることができる。このように、アレイは、所与の組織深度についてのAスキャンの強度値を表現することができる。
【0029】
同様に、関心領域24に対する光のサンプル部分16の異なる軸方向浸透深度について、異なる空間的位置27からの反射光の強度値を別のアレイに格納することができる。この別のアレイは、グリッド28内に同様に配列されたセルに対応する強度値を格納する各セルを有する、アレイ36と類似のものであってよい。各Aスキャンについて異なる空間的位置27からの強度値を格納するために、異なるアレイを用いることも可能である。コンピュータ25は、複数のアレイ内のデータを用いて、Bスキャンを生成することができ、また、異なる空間的位置27での層厚を決定することができる。
【0030】
上記のように、強度値を示すデータはCスキャン(眼10内の所定深度における2次元平面)に対応して分類されて格納されるが、そのような分類は任意である。このデータ視覚化方法および装置により利用されるデータを、所望の分類で、またはランダムに、非一時的コンピュータ読み取り可能媒体に記憶することができる。
【0031】
図4に示すように、Bスキャンから決定された異なる空間的位置27のそれぞれにつき算出された層厚を、厚さアレイ44に格納し配列することができる。さらに、アレイ44のセルに格納される厚さ値t
11〜t
nmを、グリッド28(
図2)の同様の配列の空間的位置27のそれぞれにつき決定された層厚に対応付けることができる。換言すると、厚さ値t
11は空間的位置38(
図2)での層厚に対応し、厚さ値t
12は空間的位置40(
図2)での層厚に対応する。
【0032】
図5に示すように、コンピュータ25は、ROCアレイ50など、受信者操作特性(ROC)解析に関するデータを任意の方法で記憶したり、少なくとも通信ネットワークを介してこれにアクセスしたりすることができる。ROCアレイ50は、上記の厚さアレイ44に類似の複数の厚さアレイそれぞれに実行されたROC解析の結果として生成されるデータを含むが、次のいずれかとしてそれぞれ独立に実証された異なる対象からのデータが取り込まれる:特定の疾患、病気、障害または症状を患っていること;または、特定の疾患、病気、障害または症状を患っていないこと。以下、特定の疾患、病気、障害または他の症状は、一般に「症状」として参照される。
【0033】
しかし、特定の症状を対象が患っているか決定するために、医学的検査の2つの可能な結果がある:つまり、対象がその症状を患っている、または患っていない。眼科においては、緑内障または多発性硬化症などの症状を患っている対象は、典型的には、症状の進行とともに薄化する眼内の特徴部位の層厚に起因する、組織の萎縮の凹凸パターンを呈する。しかし、そのような症状についての検査結果は、しばしば、呈されている萎縮の度合いや広がりに依存する。よって、その症状を伴う患者とその症状を伴わない患者とを明確に区別する輝線カットオフ層厚(bright line cutoff layer thickness)が無いことがある。たとえば緑内障を伴う対象を緑内障を伴わない対象から区別する努力において特定される層厚の閾値(limit)は、真に緑内障を患っているいくつかの対象を実際に正しく特定するであろう。実際に緑内障を有する対象の網膜厚が層厚の閾値未満である場合、この結果を真の陽性(true positive、TP)が発生したという。そのような厚さの閾値についても、現実に緑内障を患っていないいくつかの対象をそれらの網膜厚に基づき正確に特定するであろう:この結果は、真の陰性(true negative、TN)と考えられる。
【0034】
しかしながら、層厚は緑内障診断で考慮されるただの1つのファクタであり、それ自体で確定的なものではないので、厚さの閾値が、緑内障を有しない対象を緑内障を有するものとする誤診断を生じることもあるであろう。そのような対象については、緑内障を患っていないにも関わらず、網膜厚が層厚の閾値未満であり、偽陽性(false positive、FP)との結果につながる。逆に、厚さの閾値が、緑内障を有する対象を緑内障を有しないものとする(つまり、緑内障を有するにも関わらず、その対象の網膜厚が層厚の閾値を超える)誤診断を生じることもあるであろう。これは、偽陰性(false negative、FN)との結果につながる。厚さアレイ44のデータを解釈するためにROCアレイ50のデータを利用することは、測定された網膜厚の閾値に対する比較のみに基づく検査よりも、網膜厚に基づく緑内障の検査の確度を向上させることができる。
【0035】
図5のROCアレイ50の複数のセルに配置された複数のROC値R
nmは、或る症状(本例では緑内障)を有することが知られている複数の異なる対象およびその症状を有しないことが知られている複数の対象についての厚さアレイ44に配置されたデータに基づいて決定される。網膜厚の値が緑内障についての仮の結果TP、TN、FPまたはFNにつながるかどうか決定するための対象の実際の状態を考慮して、グリッド28により確立されたような関心領域24内の所与の空間的位置27(
図2)についての網膜厚の値が対象ごとに解析される。表1は、複数の異なる対象(対象1〜10)についての厚さアレイ44のセル(1,1)内に配置された網膜厚の値a
11の例を示す。この網膜厚は、各対象の眼10内の関心領域24内の空間的位置38(
図2)にて測定される。本例において緑内障を有する対象と緑内障を有しない対象とを区別するカットオフとして、層厚の閾値100μmが仮定される。網膜厚が100μm未満の場合には対象が緑内障を有すると考えられ、網膜厚が100μm以上の場合には対象が緑内障を有しないと考えられる。各対象が実際に緑内障を患っているかどうか(つまり、対象が実際に緑内障を有すると独立に決定された場合には「Actual Result」=Y、対象が実際に緑内障を有しないと独立に決定された場合には「Actual Result」=N)、そして、各対象についての網膜厚単独に基づく検査の仮の結果についても作表されている。表1は、異なる対象についての共通の空間的位置における網膜厚を示す。
〔表1〕
【0036】
ROCアレイ50に含まれるデータの妥当性を向上させるために、データが考慮される複数の異なる対象を、所望のデモグラフィック(人口統計的な個体群)のみを含むようフィルタリングすることができる。たとえば、早期段階の緑内障を有する対象を診断する補助として動作するために、表1に配置されたデータを、早期段階の緑内障を有する対象に対応するデータに限定することができる。一般に、緑内障を有する対象を診断するために、たとえば視神経乳頭の様子および視野検査の測定値の双方が用いられる。視神経乳頭の評価はいくぶん主観的であるが、視野検査の結果は客観的であり、デシベルスケールの平均偏差(MD)として得られる。たとえば0〜−6dBの間のMD(または、おそらく上限なく−6dBより高いMD)は「早期の」緑内障と考えることができ、たとえば−6〜−12dBの間のMDは「中度の」緑内障と考えることができ、−12dBより低いMDは「進行した」または「重度の」緑内障と考えることができる。もちろん、これらMDの範囲は例示であり、複数の症状を区別するために任意に変更することができる。他の実施形態によれば、中度の群および進行した群をまとめて1つの群とすることができる。さらに、他の実施形態では、早期段階の緑内障の群が2つの部分に分割される:−3〜−6dBが「早期」に割り当てられ、−3dBより高い部分が「超早期」(または、おそらく緑内障が疑われる患者であり、未だ患者ではない)とされる。同様に、年齢、他の独立に実証される症状、またはそれらの任意の組み合わせに基づいて、対象をフィルタリングすることができる。
【0037】
他の実施形態によれば、ROC演算が行われる前に、ROCアレイ50についての値を算出するために用いられる厚さアレイ44に配置された異なる対象のデータを正規化することができる。この正規化の一部として、ROC値R
nmを増加させるために、緑内障を有しない複数の対象における網膜厚の分散を最小化することができ、それによりROCアレイ44の能力を向上させて、緑内障を有する対象と有しない対象とを最適に区別する眼10内の特定の位置27を特定することができる。たとえば、ROC演算を行う前に、各対象の眼の物理的特徴に基づいて、データの正規化を用いてROCアレイ50を生成することができる。次のうち少なくとも1つのサイズおよび/または位置に基づいて、各対象の網膜厚データを正規化することができる:視神経乳頭、中心窩、血管、弓状の神経線維層、眼の他の部位、それらの任意の組み合わせ。他の実施形態では、特徴的なランドマークのサイズおよび/または位置に基づいて、厚さアレイ44(
図4)に含まれる厚さデータに対応する特定の位置27(
図2)を変換または正規化することができる。たとえば、黄斑領域における環状の神経節細胞層(GCL)構造のサイズに基づいて正規化を行うことができる。各対象についてAスキャンが行われた特定の位置27が環状のGCL構造に対しておおよそ同じ位置に配置されるように、異なる対象それぞれに特有の空間的変換を行うことができる。ROC演算の一部としてデータが利用される前に各対象のデータに施すことが可能な正規化の他のタイプは、中心窩と視神経乳頭との間の角度、網膜内の神経節細胞および内網状層の半径などに基づいてよい。たとえばROC演算を行うために用いられる角度や半径の測定値などの情報は、異なる座標系に変換されることによって恩恵を受ける(たとえばデカルト座標から極座標への変換)。実行可能な正規化の他の実施形態では、画像またはその画像の部分領域(1つまたは複数のランドマークに関係するもの)にわたり算出された平均の大きさに基づいて調整されるOCTスキャンによる厚さ(または他の)測定値の大きさが要求される。そのような正規化処理は、パターン標準偏差(PSD)に基づいてよい。
【0038】
複数の異なる対象についての厚さアレイ44は、対象の右眼または左眼に実施されたOCTスキャンに対して任意にしたがってよい。異なる対象の左眼から収集されたデータ
に対応する厚さアレイ44は、現在の対象の左眼のOCTスキャンを具体的に評価することに用いられるROCアレイ50を生成するために任意に用いられてよい。
【0039】
他の実施形態によれば、複数の異なる対象の左眼について厚さアレイ44に収集されたデータは、そのアレイのミラーイメージを作成するために縦軸について任意に反映されて(reflected)よい。このとき、反映アレイ(reflected array)は、ROCアレイ50を生成するために、複数の異なる対象の右眼から収集されたデータが配置される厚さアレイ44とともに用いられてよい。
【0040】
アレイ36内の値、厚さアレイ44のそれぞれ、またはそれらの組み合わせを、他の実施形態による各対象の眼内のランドマークの位置と所定の関係を有する所望の空間的位置27に対応付けることができる。スキャン範囲内の或る特定されたランドマークに基づいて、所望の空間的位置27を各スキャンの基準の中心に配置することができる。たとえば、視神経乳頭、中心窩または他の構造的特徴をアレイ空間内のあらかじめ決められた位置に配置させるために、アレイ36および/または厚さアレイ44を、n,mについて移動させたり(X/Y方向への移動)、所望のセルの周りをまたは全体として回転させたりすることができる。そのような動作は、それ以外の場合に生じる可能性がある分散を最小化するための他の機会を提供する。他の実施形態によれば、たとえば、実際のスキャンの寸法またはスキャン位置のキャリブレーションまたは微調整に、眼軸長などの眼の測定を用いてもよい。換言すると、スキャンされる各眼の特定されたサイズに基づいて、スキャンの寸法が各眼の特定の割合をカバーするようにできる。
【0041】
さらに他の実施形態によれば、正規化および変換のために実行された特定の動作を、アレイに含まれるデータの座標変換によって任意に置換してもよい。たとえば、アフィン変換は、視神経乳頭中心、中心窩または他の特徴などを含む特定されたランドマークに任意の方法で基づく、スキャン単位で実行可能な変換の一例である。アフィン変換は、直線を保存し(つまり、当初にライン上に位置する全ての点は、変換後にもライン上に位置する)、直線上に位置する点の間の距離の比率を保存する。しかしながら、非線形変換についても、可能な手段により視神経乳頭中心、中心窩または他の特徴などを含む特定のランドマークに基づいて、スキャン単位で実行することが可能である。
【0042】
完全なデータセットの例が表1に配置され示されている。考慮されている特定の位置27での厚さ測定が欠けている対象は存在しない。しかし、所与の対象について特定位置でのデータ測定が行われない例や、記録された値が明らかに誤った異常値(たとえば、他の値と比べて大きさのオーダが大きい)であるような例がありうる。そのような異常な値を、現在の予期される値と異なるように、ROC演算において考慮することができる。眼10内の所与の特定位置27に対する厚さ測定値が、対象の実質的な数の厚さアレイ44から常に欠ける場合、その所与の特定位置27についてのROC演算を行わないようにしてよい。他の実施形態によれば、ここで説明されたROC演算をそのような所与の特定位置について実行してよいが、その特定位置27での厚さ測定値が使用可能な対象の数をそのような演算で考慮することができる。このサンプルサイズは、緑内障を有すると独立に診断された対象と、緑内障を有しないと独立に診断された対象とについて特に言及することができる。サンプルサイズを、ROC値(ひいては、緑内障診断におけるそのような値の有用性)に影響する重み計数として任意の方法で用いることができる。
【0043】
他の実施形態において、厚さデータのダウンサンプリングを行うことにより、厚さアレイ44のサイズ(つまり、n、mとして選択された整数)がOCTスキャンにより収集された全てのデータが配置されたアレイのサイズよりも小さくなる(たとえば部分集合になる)ようにしてよい。ダウンサンプリングとしては、たとえば、解析に含まれる多数の使用可能なデータ点の1つを選択することを含む単純なダウンサンプリングや、平均化処理または中央値、分位点を取る処理などデータ点の群に対する演算の実行のような、様々な形態のいずれかを適用することができる。たとえば、OCTスキャンにより、x列およびy行のアレイを得ることができる。xおよびyの少なくとも1つの値は、それぞれ、nおよびmの少なくとも1つの値より小さい。さらに、ROCアレイ50についても同じことが言える。ROCアレイ50は、ROCアレイ50を生成するために用いられる厚さアレイ44が記憶しているデータよりもサイズが小さくてよい(つまり、列数および/または行数が少なくてよい)。そのような実施形態では、厚さアレイ44内のデータの部分集合としてROCアレイ50を生成することが可能である。他の実施形態によれば、OCTスキャン画像データ自体がダウンサンプリングされていてよい。そのような実施形態では、Aスキャンおよび/またはBスキャンを形成するために記憶されたOCTデータの周波数は、OCTシステムが実際にサンプルを収集する周波数よりも任意に低くてよい。たとえば、解析のために必要とされる詳細レベルに応じて、OCTシステムが実際にサンプルを収集する周波数をファクタ2でダウンサンプリングすることで、収集されたサンプルが1つおきに、Aスキャンおよび/またはBスキャンに含まれるために記憶される。他の実施形態として、OCTデータの集合やグループを平均化することにより、または、そのような集合やグループを代表する中央値や他の顕著な値や任意の分位点を計算することにより、個々におよび別々に利用される、これら集合やグループを構成するOCTスキャンデータのそれぞれの実例を必要とすることなく、OCTスキャンデータを任意にダウンサンプリングすることができる。
【0044】
任意にフィルタリングされ、正規化され、またはそれ以外の前処理が施された複数の異なる対象についてのそのような情報に基づいて、有病正診率(true positive rate、TPR)を比TP/(TP+FP)として算出でき、無病誤診率(false positive rate、FPR)を比FP/(TN+FN)として算出できる。TPR(sensitivityとしても知られる)をFPR(1−specificity)に対してプロットすることでROC曲線が生成される。このROC曲線の下方の面積を算出することができ、眼10内の関心領域24の特定位置38(
図2)に対応する
図5中の値R
11として割り当てることができる。
【0045】
明確に定義された2つのカテゴリの1つ(たとえば疾患有りと無しのいずれか)に検査の結果が含まれる場合、その検査は、有病正診率(sensitivity)の値と無病正診率(specificity)の値とのペアを唯1つ持つ。しかし、他の実施形態によれば、診断の筋書きは、一般に、OCTスキャンなどを解釈する者の間における診断の信頼性のレベルの相当の変化に影響を及ぼす。したがって、検査の診断性能の最大幅を説明するために、有病正診率の値と無病正診率の値との2以上のペアを利用することができる。
【0046】
有病正診率の値と無病正診率の値との複数のペアを処理するために、有病正診率をy座標としてプロットすることができ、FPR(または、(1−specificities)をx座標としてプロットすることができる。プロット上の各々の離散点は、陽性の検査結果についての異なるカットオフレベルを用いることによって生成される。検査結果が二項分布に従うことを仮定することにより、これら離散点からROC曲線を推定することができる。改めて、そのようなROC曲線の下方の面積を算出し、
図5のROCアレイ50内のR
11の値として割り当てることができる。
【0047】
複数の(任意的には多数の)異なる対象についての眼10の特定位置に割り当てられた層厚に基づき生成されたROC曲線の下方の面積を算出する処理と、その算出された面積をROCアレイ50内の対応するエントリに割り当てる処理は、関心領域24内の各特定位置27について反復される。緑内障の検査として網膜厚(のみ)を用いることの正確度は、ROC曲線の下方の面積によって測られる。そのため、ROCアレイ50の各エントリについてのROC曲線の下方の面積の値を決定することは、各特定位置27での網膜厚の推測値(predictor)が、対象が緑内障を有するか決定するためにどの程度の正確度を有するかを示す指標を提供する。
【0048】
関心領域24内の各特定位置27での緑内障検査における網膜厚の正確度についての容易に観察可能かつ図表的な表現を提供するために、
図6に示すようなROCマップを生成することができる。各々の空間的位置27についてのROC曲線の下方の面積のR
nmの各値または値の範囲を、カラーコードまたは他の視認可能な指標に割り当てることができる。R
nmの数値を各々のカラーコードまたは他の視認可能な指標により置き換えることができ、それにより、関心領域24内の特定位置27または特定位置27の集合を、緑内障等の症状の良好なまたは不十分な指標として容易に観察可能にすることができる。ROCアレイ50(
図5)内のセルをグリッド28内の空間的位置27(
図2)の配置に対応づけるために配置することができるので、観察者は、対象が緑内障を有するかどうかのより決定的な指標を過去に提供した眼10内の空間的位置27を視覚的に確認することができる。換言すると、ここで説明するような過去の臨床データを用いて決定された
図6における各空間的位置27についてのROC曲線の下方の面積を表現する色を、
図2に示すような眼10内の関心領域24の空間的位置27と同様の配置(任意的に、同じ配置)とすることができる。診断のための現在の対象の層厚アレイ44(任意的にカラーコードでもよい)の解析を、主として、より決定的な推測値であることが証明された特定位置27とされる測定値に限定することができる。
【0049】
図5のROCアレイ50より大きい(つまり、列および行の数がより多い)ROCアレイの視覚的な表現を提供するカラーコーディングの例を
図6に示す。示されているように、各ピクセル60には、ROCアレイ内の対応するセルについての基礎的なR
nm値を表現する色が入れられている。図の説明62は、異なる色のそれぞれを、異なる空間的位置27についてのROC曲線の下方の面積に対応する異なるR
nm値に関連付ける。
図6に示す実施形態について、この説明は、ROC曲線の面積(AROC)の範囲0.5〜1.0を表す。本例における下位の弧状領域64(これは、同様に位置する空間的位置27に対応する)は、緑内障診断のために有意義な厚さ測定値が配置された領域として示される。
【0050】
ROCアレイ50内の値R
nmは、どの対応する空間的位置27が、一般化された考察について最も有意義であるか特定するために役立つ。換言すると、R
nm値およびカラーコードまたは他の視認可能な指標に基づいて、観察者は、網膜のどの空間的位置27が緑内障診断に用いられる決定的な情報をもたらすのに最も適当であるか確認することができる。
図6のROCアレイ50に提供される視認可能な指標の具体例について、決定的なパターンが下位の弧状領域64内またはその周囲に存在すること、いくぶん決定的でない領域が上記の弧状領域の周囲に存在すること、そして、それら空間的位置27での網膜厚のみに基づく緑内障の可能な推測因子として視神経乳頭を直に囲む領域が顕著であると任意的に考えられることが分かる。したがって、ROCマップは、臨床医がそのような位置での診断的努力に集中すべきであること(彼らがそれら範囲に必然的に限定されないとしても)を示唆する。
【0051】
緑内障等の医学的状態を患者が有するかどうか予測するための空間的位置の能力は、信頼できる予測因子である最も適当な空間的位置を強調するためにコンピュータに設けられたプロセッサにより任意的に利用可能である。中心窩、視神経乳頭等の参照点は、一般に、OCTスキャン領域またはグリッド28(
図2)の中心に配置されかつ位置される(または、それら内の基準として任意に固定されかつ知られた位置に配置することも可能である)。そして、関心領域全体を包含するスキャンが行われ、この領域全体から収集されたデータは、患者が緑内障を有するか否かの診断に用いられる。他の実施形態によれば、他の空間的位置と比べて相対的に信頼できる緑内障の予測因子である空間的位置を特定するためにROCアレイ50内のR
nm値を考慮するようにコンピュータプロセッサをプログラムすることができる。これを達成するために、コンピュータ25は、信頼できる緑内障の予測因子としてROCアレイ50内のR
nm値により示される空間的位置を含む既定の閉ループ経路(たとえば、円、楕円など)に沿ってスキャンするためのトランスミッター11(
図1)により確立されるスキャン経路を任意に制御することができる。これにより、信頼できる予測因子であるそれら空間的位置を包含するための適当なサイズおよび/または形状を有するスキャン経路を確立することができる。他の実施形態によれば、スキャン経路は、全ての空間的位置27、閉ループでない経路中の空間的位置、または関心領域内の所望の空間的位置27の領域のみを含む任意のスキャン経路を含むことができるが、ROCアレイ50内のR
nm値に基づく緑内障の信頼できる予測因子であると考えられるそれら空間的位置に対してのみ実行するようキャプチャ後の処理ステップを限定するように、コンピュータ25をプログラムすることができる。収集されたデータを、信頼できる予測因子であると考慮される空間的位置にどの程度限定するかに関わらず、そのようなステップは、医学的状態の診断を試みる臨床医により考慮されかつ解析されるべきデータを限定し、結果として得られる有病正診率および無病正診率の特性に関する疾患検出の正確度の向上を最終的にはもたらすであろう。
【0052】
信頼できる予測因子であると考えられる空間的位置を、他の空間的位置から区別し、かつ、任意の適当な基準に基づき選択することが可能である。たとえば、信頼できる予測因子であると考えられる空間的位置に対応するROCアレイ50内のR
nmの平均値が既定の閾値を超える(たとえば、なされる診断に特有の任意に選択された値(0.8または0.9等)より大きい)ように、スキャン経路が確立される。他の実施形態によれば、ROCアレイ50内の対応するR
nm値が既定の閾値を超える場合、任意的に、その空間的位置を、緑内障の信頼できる予測因子であると考えることができる。さらに他の実施形態においては、経路にわたって遭遇する曲線の値の下方の積分されたROC範囲を最大化するために、ROCマップにわたる最適化技術(たとえば経路探索)を適用することができる。
【0053】
上記の例は、緑内障診断を支援するための眼の関心領域内網膜厚の解釈を含むが、本開示はそのように限定されないと理解されるべきである。代わりに、ここで検討される概念は、診断または他の努力のための対象の任意の関心領域内の実証可能な空間的パターンにおけるデータを解析することに応用可能である。さらに、診断に使用される測定量は、組織層の寸法などの物理的特性である必要はない。たとえば、他の光学的、音響的、電気的、化学的等の特性(組織の減衰係数または統合的減衰係数など)を利用し、ここで説明したような診断のための過去データのROC解析と比較することが可能である。
【0054】
以上、例示的な実施形態が記述された。この発明の一般的な範囲から逸脱しないように上記の装置および方法に変更および変形を加えてよいことは、当該分野の技術者にとって明らかである。本発明の範囲における全てのそのような変形や変更を含むことを意図している。さらに、用語「含む(include)」の範囲に関し、詳細な説明またはクレームのいずれにおいても使用され、そのような用語は、クレームにおける因襲的な用語として用いられるときの用語「有する、含む(comprising)」の解釈と同様に包括的であることを意図している。