特許第5757995号(P5757995)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特許5757995車両用の安全システムを作動させるための制御装置、および車両用のそのような安全システムを作動させるための方法
<>
  • 特許5757995-車両用の安全システムを作動させるための制御装置、および車両用のそのような安全システムを作動させるための方法 図000002
  • 特許5757995-車両用の安全システムを作動させるための制御装置、および車両用のそのような安全システムを作動させるための方法 図000003
  • 特許5757995-車両用の安全システムを作動させるための制御装置、および車両用のそのような安全システムを作動させるための方法 図000004
  • 特許5757995-車両用の安全システムを作動させるための制御装置、および車両用のそのような安全システムを作動させるための方法 図000005
  • 特許5757995-車両用の安全システムを作動させるための制御装置、および車両用のそのような安全システムを作動させるための方法 図000006
  • 特許5757995-車両用の安全システムを作動させるための制御装置、および車両用のそのような安全システムを作動させるための方法 図000007
  • 特許5757995-車両用の安全システムを作動させるための制御装置、および車両用のそのような安全システムを作動させるための方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5757995
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】車両用の安全システムを作動させるための制御装置、および車両用のそのような安全システムを作動させるための方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/017 20060101AFI20150716BHJP
【FI】
   B60R21/017ZHV
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-508408(P2013-508408)
(86)(22)【出願日】2011年3月10日
(65)【公表番号】特表2013-532086(P2013-532086A)
(43)【公表日】2013年8月15日
(86)【国際出願番号】EP2011053587
(87)【国際公開番号】WO2011138074
(87)【国際公開日】20111110
【審査請求日】2012年12月24日
(31)【優先権主張番号】102010028556.0
(32)【優先日】2010年5月4日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(72)【発明者】
【氏名】ファルコ ジーヴェルス
(72)【発明者】
【氏名】ハルトムト シューマッヒャー
(72)【発明者】
【氏名】カーステン リスト
【審査官】 粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−335470(JP,A)
【文献】 特表2006−524602(JP,A)
【文献】 特表2009−508743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/017
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の安全システムを作動させるための制御装置であって、
スイッチコンバータとして構成され、車両バッテリ電圧から導出された入力電圧(UB)を出力部でこれよりも高い充電電圧(VUP)に変換する昇圧変圧器(AW)と、
自給モードにおいて前記安全システムの作動のために充電電圧(VUP)により充電される少なくとも1つのエネルギーリザーブ蓄積器(CER)とを有している、そのような制御装置において、前記昇圧変圧器(AW)と少なくとも1つの前記エネルギーリザーブ蓄積器(CER)との間には作動時にプログラミング可能な充電電流源が介在しており、該充電電流源は少なくとも1つの前記エネルギーリザーブ蓄積器のための充電電流をプログラミングに依存して規定することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記プログラミングのためにシリアルインターフェース(SPI)が設けられており、プログラミングを実行するために該シリアルインターフェースにコンピュータを接続可能であることを特徴とする、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記昇圧変圧器(AW)の出力部には充電電圧(VUP)の上昇時間を調整するための容量性負荷(C1,C2)が接続されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記エネルギーリザーブ蓄積器(CER)の少なくとも1つの電気パラメータに依存して前記エネルギーリザーブ蓄積器(CER)の充電中に前記エネルギーリザーブ蓄積器のキャパシタンス(CER)の初期測定を実行し、これに引き続いて前記エネルギーリザーブ蓄積器(CER)の等価内部抵抗の測定を実行する論理回路を有していることを特徴とする、請求項1から3のうちいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記論理回路は少なくとも1つの前記電気パラメータを所定の閾値と比較するために少なくとも1つのコンパレータを有しており、キャパシタンスの初期測定および内部抵抗の測定は当該比較に依存して実行されることを特徴とする、請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記論理回路は前記エネルギーリザーブの充電後に前記論理回路がキャパシタンスの次の測定を周期的に行うように構成されていることを特徴とする、請求項4または5に記載の制御装置。
【請求項7】
車両用の安全システムを作動させるための方法において、次の各方法ステップを有しており、すなわち、
車両バッテリ電圧から導出される入力電圧(UB)をスイッチコンバータとして構成された昇圧変圧器(AW)の出力部でこれよりも高い充電電圧(VUP)に変換し、
自給モードにおいて前記安全システムの作動のために充電電圧(VUP)によって少なくとも1つのエネルギーリザーブ蓄積器(CER)を充電する、そのような方法において、前記昇圧変圧器(AW)と少なくとも1つの前記エネルギーリザーブ蓄積器(CER)との間に作動時にプログラミング可能な充電電流源(LSQ)を介在させ、該充電電流源は少なくとも1つの前記エネルギーリザーブ蓄積器(CER)のための充電電流をプログラミングに依存して規定することを特徴とする方法。
【請求項8】
前記プログラミングはシリアルインターフェース(SPI)を介して行われることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの前記エネルギーリザーブ蓄積器(CER)の充電は充電電流源(LSQ)によって第1の時間帯および第3の時間帯では第1の電流レベルにより行われ、第2の時間帯ではテスト電流により行われ、第4の時間帯では前記第1の電流レベルを下回る第2の電流レベルにより行われ、第1、第2、第3、および第4の時間帯はこの順番で連続しており、第2の時間帯では前記エネルギーリザーブ蓄積器のキャパシタンスと等価内部抵抗の初期測定が行われ、第1の電流レベルとテスト電流との切換ならびに第1と第2の電流レベルの切換は前記エネルギーリザーブ蓄積器(CER)における電圧に基づいて行われることを特徴とする、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記制御装置は充電電圧(VUP)への起動後に前記充電電流源(LSQ)が遮断されたまま保たれることによってエネルギー節約モードに移行し、それにより少なくとも1つの前記エネルギーリザーブ蓄積器(CER)の充電が行われず、前記制御装置のコンピュータが前記昇圧変圧器(AW)の出力部に接続された少なくとも1つの降圧変圧器(DC1)によって電気エネルギーの供給を受けることを特徴とする、請求項7,8または9のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の分野に基づく車両用の安全システムを作動させるための制御装置ないし方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1より車両乗員用の安全装置が公知であり、この場合、エネルギー供給のためのコンデンサと、車両バッテリと接続され、車両バッテリの電圧を車両バッテリの電圧の数倍に引き上げて、この高くなった電圧でコンデンサを充電する第1の変圧器とが設けられている。第2の変圧器は、その出力部を介して電圧安定器と接続するために設けられている。さらに、変圧器を制御するマイクロコントローラが設けられており、変圧器は、マイクロコントローラのシリアルインターフェースにより制御可能である。特許文献2より、電気エネルギー蓄積装置を充電する装置および方法が公知である。その場合、供給電流を特定の最大電流に制限するために、主電流経路での能動的な電流制限が意図されている。電気エネルギー蓄積装置の電位を供給電位よりも引き上げるために、電圧変換装置が電流制限装置に後置されて配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】ドイツ特許第19542085B4号明細書
【特許文献2】ドイツ特許出願公開第102004057690A1号明細書
【発明の概要】
【0004】
それに対して、車両用の安全システムを作動させるための本発明による制御装置ないし本発明による方法は、昇圧変圧器とエネルギーリザーブ蓄積器との間に、プログラミングに依存して少なくとも1つのエネルギーリザーブ蓄積器に対する充電電流を決定する、作動時にプログラミング可能な充電電流源が介在するという利点を有している。それにより、昇圧変圧器からエネルギーリザーブ蓄積器を切り離すことが可能なので、さまざまな要求事項を簡単な仕方で具体化することができ、たとえば特に、エネルギーリザーブ蓄積器が充電されるのではなく、制御装置のコンピュータすなわちマイクロコントローラだけが電流の供給を受け、それ以外のコンポーネントは供給を受けない制御装置のエネルギー節約モードを具体化することができる。すなわちエアバッグアプリケーションは、このような好ましい節約モードのときには活動化していない。にもかかわらず、このようなモードでの効率は、車両電圧からの低い入力電流値が可能である程度に、十分高くなくてはならない。また、充電電流源を利用したこのような切り離しによって、エネルギーリザーブ蓄積器の充電速度も設定に応じて容易に調整することができる。あとでまた説明するとおり、昇圧変圧器とエネルギーリザーブ蓄積器の間への充電電流源の導入は、エネルギーリザーブ蓄積器のキャパシタンスおよびこれと等価のエネルギーリザーブ蓄積器の内部抵抗の初期測定を、追加の測定電流源を用いることなく、プログラミング可能な充電電流源を通じて行えるという利点をさらに有している。さらには急速始動性、すなわち追加の外部コンポーネントを用いることなく5ms未満の時間内にエアバッグ供給を行う能力が、プログラミング可能な充電電流源によって可能である。
【0005】
さらに、エネルギーリザーブの断絶に関わるリスクを回避するための、エネルギーリザーブと並列の容量性負荷を省略することができる。プログラミング可能な充電電流源が、エネルギーリザーブ蓄積器と昇圧変圧器との間に設けられているからである。さらに、プログラミング可能な充電電流源を介しての昇圧変圧器へのエネルギーリザーブ蓄積器の結合は、エネルギーリザーブ蓄積器の短絡や漏れ電流の増大が、エアバッグへの供給の途絶につながらないことを保証する。昇圧変圧器は、たとえば従属請求項から明らかなように容量性負荷で負荷される独自の出力部を有しており、プログラミング可能な充電電流源によって制限される取出し電流は、昇圧変圧器の能力の範囲内に収まっているからである。
【0006】
特に、上に示唆したとおり、昇圧変圧器とエネルギーリザーブ蓄積器の間へのプログラミング可能な充電電流源の導入は、エネルギーリザーブ蓄積器のキャパシタンスを、充電プロセス中に自動的に決定できることを意味している。このことは、エネルギーリザーブ蓄積器における電圧が約11Vと非常に小さいときすでに実現することができるので、エネルギーリザーブ蓄積器の漏れ電流の考えられる影響がきわめて小さくなる。測定精度の向上は、エネルギーリザーブ蓄積器の小型の設計につながる。
【0007】
充電電流源のプログラミング可能性は、ソフトウェアによるパワーオンリセットのたびごとに、充電電流限界値をあらたに定義して適用できるようにすることを可能にする。
【0008】
本件において制御装置とは、センサ信号を処理し、これに依存してたとえばエアバッグやベルトテンショナを含むパッシブな人員保護システムのような安全システムを制御する電気装置を意味している。制御装置は、通常、金属および/またはプラスチックからなる独自のハウジングを有しているが、さまざまな装置に分散したコンポーネントで少なくとも部分的に構成されていてもよい。このときアクティブセーフティとパッシブセーフティは、1つの共通のハウジングの中に配置されていてよい。
【0009】
安全システムの作動とは、それが意図されて設計されている安全性関連のケースで、安全システムが活動化することを意味している。たとえばエアバッグの制御が必要となる事故が起こると、制御装置は相応のエアバッグを制御するために制御信号を出力する。
【0010】
本件において安全システムとは、エアバッグやベルトテンショナといったパッシブセーフティシステムばかりでなく、車両の電子スタビリティコントロールやアンチスリップコントロールのようなアクティブセーフティシステムも意味している。
【0011】
昇圧変圧器とは、入力電圧を入力電圧に比べて高い出力電圧に変換する、インダクタンスを有する、汎用電子式のコンポーネントである。そのために昇圧変圧器は、スイッチコンバータとして構成されている。このような昇圧変圧器は、本件においては集積化して具体化可能であるフリーホイーリングダイオードまたはフリーホイーリングトランジスタと直列につながれた、たとえばインダクタンスすなわちコイルを有している。フリーホイーリングダイオードの後には、出力電圧を合算する充電コンデンサが設けられている。コイルはスイッチによってアースにつながれている。コイルで入力電圧が低下し、コイルを通る電流およびこれに伴って磁界に蓄えられるエネルギーが上昇する。スイッチが開くと、コイルは電気の流れを維持しようとする。コイルの二次側端部における電圧は、コンデンサに印加される電圧を上回ってダイオードを開くまで、非常に迅速に上昇する。電流は最初の瞬間には引き続き変わりなく流れ、コンデンサを引き続き充電する。このとき磁場が崩壊し、ダイオードを介して充電コンデンサおよび負荷へと電流を送ることによって、そのエネルギーを放出する。一般的に表現すると、インダクタンスは充電プロセスでは負荷として作用してエネルギーを吸収し、放電プロセスではバッテリのようにエネルギー源として作用する。したがって充電段階と、いわゆるフリーホイーリング段階とが区別される。フリーホイーリング段階では、昇圧変圧器の出力部へとエネルギーが運ばれる。
【0012】
車両バッテリから導出される入力電圧は、たとえば車両バッテリ電圧から直接導出される、フィルタリングされて逆電圧保護された電圧である。
【0013】
昇圧変圧器の出力部における充電電圧は入力電圧よりも高くなっており、昇圧変圧器という用語はそのようにして説明される。
【0014】
少なくとも1つのエネルギーリザーブ蓄積器は、通常、1つまたは複数のコンデンサであり、自給モードにおいて、安全システムの作動のために、昇圧変圧器の出力部で印加される充電電圧により充電される。自給モードとは、たとえば事故の結果として車両バッテリへの供給が途絶する時のことを表している。作動時にプログラミング可能な充電電流源は、通常、電流コントローラである。これは電流の弁のように作用するトランジスタ回路であり、プログラミングを相応の電流値へと具体化する論理回路が含まれている。それにより作動中に、すなわち車両がオンになっていてバッテリ電圧が印加されているときに、充電電流を状況に依存して調整することができる。このようなプログラミングは、たとえば制御装置のマイクロコントローラが実行することができる。プログラミング可能な充電電流源は、分路抵抗を備える電流ミラーまたは電流コントローラとして施工されていてよい。
【0015】
本件においてプログラミングとは、作動時に充電電流源が信号を受けとり、充電電流源はこの信号を、それが充電電流の値を表していると解釈することを意味している。
【0016】
従属請求項に記載されている方策と発展例により、独立請求項に記載された車両用の安全システムを作動させるための制御装置ないし方法の好ましい改良が可能である。
【0017】
プログラミングのためにシリアルインターフェースが設けられているのが好ましく、プログラミングを実行するためにこれにコンピュータを、たとえば制御装置のマイクロコントローラを接続可能である。このときシリアルインターフェースとしては、いわゆるSPIインターフェースが適しており、これはSerial Peripheral Interfaceというインターフェースのことである。このインターフェースは通常3+n(0..7)個の導線を並列に有しており、これらの導線がたとえばサイクル、マスタ・イン・スレーブ・アウト(MISO)、マスタ・アウト・スレーブ・イン(MOSI)といったさまざまに異なる信号を有しており、さらに、各々の接続されたスレーブモジュールについてn個のチップ・セレクト導線を有している。このことは、制御装置での特別に簡素なプログラミングと通信を可能にする。特に、昇圧変圧器と充電電流源ならびにたとえば降圧変圧器のようなその他のコンポーネントをただ1つのシステムASICに集積化し、すなわち、ただ1つの基板上の集積回路に統合することが可能である。調整可能な抵抗またはプログラミングピンを通じても、プログラミングを行うことができる。このときバイナリーレベルでのプログラミングピンは、プログラミング言語のビット数に相当する。
【0018】
さらに、フリーホイーリングダイオードまたは同期制御されるフリーホイーリングトランジスタを介して放出される、昇圧変圧器の放出された誘導性の切換電流を加算するための容量性負荷が、昇圧変圧器の出力部に接続されているのが好ましい。この容量性負荷はできる限り小さいのがよい。このことは、1から10MHzの高いサイクル周波数をもつコンバータによって実現可能である。目標値は1から20μFの範囲内にあるのがよく、いわゆるマルチレイヤセラミックチップキャパシタ(MLCC)によって具体化されるのがよい。昇圧変圧器の出力キャパシタンスをこのような値に低減することで、車内ネットワークからの始動電流制限をするための他の方策が必要ない(コスト削減)。始動電流は数μs(<30μs)に制限され、振幅に関しては車内ネットワークのインピーダンスによりきわめて強く規定される。さらに、このような容量性負荷により、昇圧変圧器の安定した動作を実現することができる。このことは、当該負荷に合わせたコントローラの適合化によって可能となる。そのために、正帰還を確実に回避しなければならない(不安定性)。このことは、フリーホイーリング回路と出力キャパシタンスとの間の不可避的な直列抵抗/インダクタンスの利用によって(抵抗の定義/フリーホイーリングダイオードと出力キャパシタンスとの間の条導体、ボンディングワイヤのインダクタンス)、追加のコストを要することなく的確に改善することができる。
【0019】
これに加えて制御装置は、エネルギーリザーブ蓄積器の充電中における少なくとも1つのエネルギーリザーブ蓄積器の少なくとも1つの電気パラメータに依存して、少なくとも1つのエネルギーリザーブ蓄積器のキャパシタンスの初期測定を行うとともに、これに引き続いて少なくとも1つのエネルギーリザーブ蓄積器の等価内部抵抗の測定を行う論理回路を有しているのが好ましい。このような論理回路は、通常、マイクロコントローラに存在しており、マイクロコントローラはそのために必要な、例えば少なくとも1つのエネルギーリザーブ蓄積器における電圧推移に関するデータを読み出す。SPIインターフェースを介して、かつこれに依存して、キャパシタンスの初期測定および内部抵抗の測定が開始される。少なくとも1つのエネルギー蓄積器の充電という概念は、本件においては、それが制御装置のスイッチオンないしパワーオンの後のエネルギー蓄積器の充電であることを意味している。
【0020】
論理回路は、少なくとも1つの電気パラメータを、通常は電圧を、本件においてはたとえば電気的なエネルギーリザーブ蓄積器における電圧を、所定の閾値と比較するための少なくとも1つのコンパレータを有しているのが好ましく、キャパシタンスの初期測定および内部抵抗の測定はこの比較に依存して実行される。すなわちコンデンサを備えるエネルギーリザーブ蓄積器における電圧が所定の値に達すると、キャパシタンスの測定が実行される。たとえば2つのコンパレータ値を利用することで、所定の測定帯域を通過するのに必要となる充電時間を、たとえば10ビット/10KHzの統合されたカウンタによって判定することができる。このとき測定電流としては、統一的に90mAを適用することができる。それによって次式に基づくキャパシタンスが生じる:
CER=測定電流×充電時間/測定帯域
【0021】
エネルギーリザーブすなわちエネルギーリザーブ蓄積器のいわゆる等価内部抵抗の測定についても、エネルギーリザーブ蓄積器の内部抵抗が十分に小さいかどうかを判断するために、2つのコンパレータ値を利用することができる。たとえば測定電流を90mAから930mAに変更すれば、測定電流の変更から10μs後にコンパレータ閾値によって具体化される、たとえば0.5Vの電圧変化が照会される。これを超過していれば、内部抵抗はたとえば<0.6オームである。たとえば1Vの電圧変更がなされると、第2のコンパレータテスト個所が測定電流の印加後に照会される。これを超過していれば、内部抵抗は1.2オームを超えている。進行制御はマイクロコントローラで具体化されていてよく、あるいはASICの論理回路によってハードウェアで具体化されていてよい。同様に、マイクロコントローラのADC(アナログ・デジタル・コンバータ)によって、またはシステムASICの電圧コンパレータとカウンタによって、測定装置が具体化されていてもよい。測定の開始はASICのマイクロコントローラが励起することができ、正確な開始時点は、VER_minに達したときにハードウエアによって行われる。この励起は、たとえば初期キャパシタンスの結果レジスタの読み取りによって行うことができる。測定が実行されなければ、結果レジスタは上書きされない。
【0022】
さらに論理回路は、エネルギーリザーブ蓄積器の充電後に論理回路がキャパシタンスの次回の測定を周期的に実行できるように構成されているのが好ましい。そのためにもコンパレータ閾値を利用することができる。この測定は、周期的なキャパシタンス測定の結果レジスタに対するマイクロコントローラの読み取りプロセス後に開始される。このプロセスによって充電電流源が遮断される。電圧は、コスト関連でない負荷によって、たとえば電圧分配器のところで低下する。エネルギーリザーブ蓄積器における電圧が所定の値に達すると、次の値に達するまで、測定電流によりエネルギーリザーブが再び充電される。小さくした測定ストロークおよびこれに対応して適合化された測定電流を選択することで、桁数で表したμFの分解能は、初期キャパシタンス測定の値に正確に保たれる。
【0023】
1つの発展例では、入力電圧がコンパレータにより監視されることによって、バッテリ電圧の急落の結果としてのキャパシタンス測定および内部抵抗測定での測定誤差が回避されることが意図される。コンパレータによって事前設定された値よりも入力電圧が低下すると、それぞれ進行中の測定は測定メモリにおいて実行不可能の表示が付される。その別案として、充電電流源の電流コントローラが測定アプリケーションにおける調整状態を生起する。立ち上がり時間を除いてこの調整状態が測定時間と同じ調整時間に達したときに限り、進行中の測定が障害なく進行しており、したがって有効であると見なされる。すなわち調整は目標電流に続いてただちに行われ、この調整状態のまま測定時間の終了まで保たれる。そうでない場合、測定値は測定メモリにおいて「実行不可能の表示」を与えられる。調整状態を検出するために、同じく10ビットカウンタを10kHzのサイクル周波数で利用することができる。これよりも低い分解能も考えられる。
【0024】
さらに、充電電流源による少なくとも1つのエネルギーリザーブ蓄積器の充電は、第1の電流レベルを有する第1の時間帯および第3の時間帯で、テスト電流を有する第2の時間帯で、および第1の電流レベルを下回る第2の電流レベルを有する第4の時間帯で行われるのが好ましく、第1、第2、第3、および第4の時間帯はこの順番で連続し、第2の時間帯ではエネルギーリザーブ蓄積器のキャパシタンスと内部抵抗の初期測定が行われる。第1の電流レベルとテスト電流レベルとの切換、ならびに第1の電流レベルと第2の電流レベルとの切換は、エネルギーリザーブ蓄積器における電圧に基づいて行われる。すなわちエネルギーリザーブ蓄積器における電圧が、所定の閾値と比較される。
【0025】
さらに、制御装置はエネルギー節約モードで始動するのが好ましい。1つまたは複数のエネルギーリザーブ蓄積器が充電されないので、制御装置電圧のスイッチオンとほぼ同期して、昇圧変圧器が出力電圧を形成することができるからである(充電電流源は当初は遮断されている)。昇圧変圧器の出力部に接続された少なくとも1つの降圧変圧器によってコンピュータ(マイクロコントローラ)へ電気エネルギーが供給され、すなわち本件では車両バッテリからの取出しが低減されるエネルギー節約モードが意図されており、これは、充電電流源からの制御装置内部のエネルギー蓄積器の充電を回避するために、ないしはそれが希望されたときに初めて実施するために(μcプログラム、CAN、FLEXRAY、LINを介してのデータトランスファ)、充電電流源が好ましく利用されることによってなされる。降圧変圧器では、入力電圧がこれよりも低い出力電圧へと変換される。降圧変圧器コンフィギュレーションの1つの好ましい特徴は、電圧を段階的に降下させる2つの降圧変圧器を直列につなぐことにある。これら両方の降圧変圧器は、昇圧変圧器と同様に容量性の負荷をかけられている。このようなエネルギー節約モードは、たとえば当該エネルギー節約モードで動くようにとの命令を制御装置が診断テスタを介して受けとるようにするために、たとえば展示会場の自動車などで採用される。エネルギー節約モードの別の可能性は、本来のアプリケーションを始動させることなく、定義された状態がスイッチオンされるキーレスエントリーである。
【0026】
本発明の実施例が図面に示されており、以下の記述の中で詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明による制御装置のブロック図である。
図2】本発明による方法のフローチャートである。
図3】本発明による方法の別のフローチャートである。
図4】本発明による制御装置の別のブロック図である。
図5】スイッチコンバータにおけるトランジスタの時間グラフである。
図6】電圧時間グラフである。
図7】別の電圧時間グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、本発明が対象とする制御装置の一部分をブロック図として示している。バッテリ電圧UBは、たとえばフィルタおよび/または逆電圧保護部を介して昇圧変圧器AWに印加され、すなわちその入力部に印加され、それによって昇圧変圧器AWは、バッテリ電圧UBまたはこれから導出される電圧を所定のレベルまで引き上げる。出力部と並列に若干の条導体を介して後置されたコンデンサC1における出力電圧は、記号VUPで表されている。昇圧変圧器AWは主としてSPIインターフェースを介して制御可能であり、このとき特に次のようなパラメータを変更することができる:オン/オフ、サイクル周波数、エッジ急峻度、トランジスタT1、T2、電流制限T1,T2、出力電圧23...25V/31...35V。出力部に並列につながれたコンデンサC1およびC2は、本例では、いわゆるマルチレイヤセラミックチップキャパシタ(MLCC)であり、これらは1から20μFのサイズを有しており、昇圧変圧器の安定した動作を保証する。これらのコンデンサC1およびC2は低いインピーダンスを有しているが、それにもかかわらず、本件では高い変圧器周波数が適用され、すなわち1800から2200kHzが適用され、それによって中波領域の障害を回避することができるので、安定したコントロールが実現される。定義された的確な方策により、たとえばこの変圧器出力キャパシタンスの結合部の1センチメートルにつき5...15mオーム/5−10nHの単位長さあたりインダクタンスを、十分なインピーダンス値の実現のために利用することができる。このとき出力キャパシタンスC1およびC2を結合するために、幅0.5mmと厚み35μmの長さ1cmにつき0.125オームの値が好ましいことが判明している。変圧器から放出される電流は、C1およびC2の単位長さあたりインダクタンスにおいて時間遅延なしに電圧を惹起し、それによって安定したコントロールが可能となる。昇圧変圧器AWの出力部に直列に接続された、以下に説明する図1の降圧変圧器DC1およびDC2は、昇圧変圧器AWの変圧器出力キャパシタンスを長さ1cm、幅/0.5mm、厚み/35μmの条導体と接続することができるように配置されており、すなわち共通のASICに配置されており、すなわち、昇圧変圧器と両方の降圧変圧器DC1およびDC2ならびに充電電流源LSQが配置された共通の集積回路に配置されており、それによりインダクタンスに対して5...15mオーム/5−10nHの単位長さあたり抵抗が発生し、そのようにして変圧器が通常安定する。しかしそれと同時に、これと同一のキャパシタンスで、後続の変圧器すなわちDC1およびDC2の入力緩衝キャパシタンスの機能も実現することができ、それは、これらの変圧器が0から5mmの短い条導体長さをもって以後の変圧器段の入力部に結合されている場合である。それによって電圧リプルが減少し、放射も減少する。この方法は、両方の降圧変圧器DC1およびDC2の結合についても相応に適用することができる。
【0029】
出力電圧VUP、すなわち特許請求の範囲に基づく充電電圧は、充電電流源LSQにより、充電電流源の出力部に接続されたエネルギーリザーブ蓄積器であるエネルギーリザーブCERを充電して、自給モードのための準備を整えるために利用される。しかしながら点火は多くの場合、このキャパシタンスCERを介して行われ、すなわち非自給モードにおいても行われる。目標電圧はここでは符号VERで表されている。充電電流源LSQと降圧変圧器DC1およびDC2もシリアルインターフェースSPIを介して、ここには図示しない好ましくはマイクロコントローラによって制御可能かつプログラミング可能である。充電電流源LSQに関しては、コンデンサCERを充電するのにどれだけの電流が使用されるかというプログラミングが必要である。コンデンサCERは、通常、電解コンデンサであるが、これ以外のコンデンサ型式も可能である。同じくキャパシタンスやESR測定電流の大きさも調整可能であってよく、時間測定のサイクル周波数も同様である。
【0030】
充電電流源LSQは電流コントローラを有している。このような電流コントローラは、制御装置のマイクロコントローラにより規定されている、プログラミングされた電流に合わせて電流をコントロールする。このような電流のプログラミングにより、制御装置がスイッチオンされた後の充電段階で、すでにコンデンサCERのキャパシタンスおよび等価内部抵抗の初期測定を実行することが可能である。こうした測定が必要なのは、たとえばエアバッグやベルトテンショナの点火にエネルギーリザーブも利用することができるように、当該コンデンサの機能性を検証するためである。測定結果は、以後の機能検証に利用するために、制御装置に保存されるのが好ましい。
【0031】
本発明の理解には必要でないが制御装置の動作には含まれるコンポーネントは、便宜上ここでの説明では省略している。
【0032】
充電電流を調整することで、キャパシタンスCERが所定の電圧まで充電されていく上昇速度も調整可能である。さらには、電流節約モードのような動作モードも可能であり、それは充電電流源が、そのような電流節約モードではコンデンサCERを充電しないことによる。そのとき、エコモードとも呼ばれるそのような電流節約モードでも作動するべきマイクロコントローラは、昇圧変圧器に直接結合された降圧変圧器DC1およびDC2を介して、必要なエネルギーの供給を受ける。エネルギーリザーブCERの充電速度を調整することで、所定のシステム・レディ時間を設定することが可能である。
【0033】
エネルギーリザーブCERには点火回路が接続されており、それによりエネルギーリザーブCERは、制御がなされた場合に、これにエネルギーを供給することができる。降圧変圧器DC1およびDC2を介して、自給モードにおいては制御装置のその他のコンポーネントも供給を受ける。
【0034】
降圧変圧器DC1およびDC2は、少なくとも部分的に、昇圧変圧器AWに対して反転した動作をする。これらもそれぞれインダクタンスを有しており、電圧を相応に引き下げる役割を有している。相応の電圧レベルで制御装置のエレクトロニクスに供給をするために、降圧変圧器にはインターフェースが接続されている。そのような電圧レベルについては後でまた説明する。降圧変圧器DC1がそのような供給を行うのではなくて電圧を第1のレベルまで引き下げ、このレベルを第2の変圧器DC2が利用して、これをさらに引き下げることが可能である。さらに降圧変圧器DC1およびDC2は少なくとも部分的に、昇圧変圧器AWに対して反転した動作をする。少なくとも1つの降圧変圧器が昇圧変圧器AWの出力部に接続されているとき、電圧VUPが下げられ、それに伴って電圧VERも同じく下げられる。エネルギーリザーブCERが欠如しているとき、または昇圧変圧器が故障しているとき、バッテリ電圧は当該降圧変圧器の出力電圧まで引き下げられる。昇圧変圧器と降圧変圧器の反転した動作とは、昇圧変圧器で充電段階が開始されてから、降圧変圧器でいわゆるフリーホイーリング段階が開始されることを意味している。充電段階とはインダクタンスが充電されることであり、フリーホイーリング段階とは、エネルギーがインダクタンスから放出されることをいう。これら両方の段階の間には、スイッチコンバータが介在している。昇圧変圧器AWがフリーホイーリング段階にあるとき、すなわちエネルギーが出力部VUPへと運ばれる段階にあるとき、一定の段階の重なり合いをもって、降圧変圧器DC1によりエネルギーがただちに再び出力部VUPから取り出される。それによってVUP制御電圧の振動分が低減され、そのようにして、出力部VUPにある可能なかぎり小型で低コストのセラミックコンデンサによる働きで済ませることができる。セラミックコンデンサはコンデンサC1およびC2であり、ないしは、両方の降圧変圧器DC1およびDC2の間ではC3およびC4である。
【0035】
降圧変圧器DC1の出力電圧には、ハードウェアによってプログラミング可能である1.2から3.3Vの電圧を生成するために、別の降圧変圧器が接続されている。この第2の降圧変圧器DC2は、第1の降圧変圧器DC1と同じく、昇圧変圧器に対して反転した動作をする。それにより第1の降圧変圧器の出力部では、出力電圧が増大するちょうどその瞬間に、第2の降圧変圧器によるエネルギー取出しによって反対の作用が行われる。そのようにして、第1の降圧変圧器DC1の出力電圧の振動分が同じく低減され、それによって、第1の降圧変圧器の出力部におけるたとえば150μFのキャパシタンスを約30μFまで引き下げることが促進される。
【0036】
図2に示すフローチャートは、本発明による方法を説明したものである。方法ステップ200では、バッテリ電圧UBがたとえばフィルタリングされ、または逆電圧保護され、ただし少なくとも昇圧変圧器AWの入力部に提供される。方法ステップ201では、この昇圧変圧器AWがスイッチコンバータとして作動することによって昇圧変圧を実行する。それにより昇圧変圧器AWの出力部では、電圧VUPを測定可能である。シリアルインターフェースSPIを介して充電電流源LSQがプログラミングされ、それにより充電電圧源は充電電圧VUPに依存して、エネルギーリザーブ蓄積器またはエネルギーリザーブまたはエネルギーリザーブコンデンサであるコンデンサCERを相応の電流で充電し、すなわち、電圧VERまで充電する。このことは方法ステップ203で行われる。
【0037】
図3は、このフローチャートを別のフローチャートで精密化したものであり、ここでは方法ステップ203が方法ステップ300で把握されており、これに先行する図2の各方法ステップはここには掲げていない。方法ステップ300でのコンデンサの充電中に、方法ステップ301で、たとえばマイクロコントローラによって、あるいは変圧器そのものも含むシステムASICによって、コンデンサの電圧が測定される。コンデンサの電圧が閾値VER_minに達しているかどうか、この電圧が方法ステップ302でチェックされる。これに達していなければ、方法ステップ300に戻る。しかし達しているときは、方法ステップ303へそのまま進むことができ、または、コンデンサCERのキャパシタンスおよびその等価内部抵抗ESRを初期測定するために、SPIを通じてテスト命令が出力されるまで待機する。その後、方法ステップ304で充電が再び開始される。キャパシタンスの測定、ないし内部抵抗ESRの測定は、充電電流とは相違していてよい測定電流を用いて実行される。
【0038】
方法ステップ304では、自動的に、またはシリアルインターフェースSPIを介してのマイクロコントローラμCによる要請後に、方法ステップ300の充電電流が再び開始される。この第2の充電段階では方法ステップ305で、コンデンサCERの充電電圧が、電圧VER_minよりも高い値VUP_lowに達しているかどうかチェックされる。これに達していなければ、充電電流による充電が続行される。しかしこれに達しているときは、方法ステップ306で充電電流源LSQのプログラミングが変更されて、方法ステップ300および304の充電電流よりも低い維持電流が適用されるようになる。このような維持電流が適用されるのは、目標電圧VUPに到達させてコンデンサをこの電圧で保つためである。昇圧変圧器は、充電電流源がそれを直流として解釈する程度に高い周波数で作動して、出力コンデンサにより平滑化される。
【0039】
図4は、本発明が含んでいる制御装置の各コンポーネントの詳細な回路図を示している。26V前後の値をとることができるバッテリ電圧UBは、逆電圧保護部としての役目をするダイオードD1に流れ方向で接続されている。ダイオードD1には、コンデンサV−FおよびC40に関わる、アースに向かう導出部を備えるVフィルタV−Fが接続されている。ダイオードおよびコンデンサV−FにはフェライトFRが接続されており、このフェライトが、アースにつながれた入力コンデンサC40と、昇圧変圧器AWのインダクタンスL1と、エレクトロニクスに関する昇圧変圧器AWの入力部と接続されている。昇圧変圧器AWは降圧変圧器DC1およびDC2、ならびにリニアコントローラLRおよび充電電流源とともに、さらにこれ以外のコンポーネントも含むことができる1つの共通のシステムASICに統合されている。このシステムASICは、ただ1つの基板上または複数の基板上のコンポーネントを含むことができる。
【0040】
昇圧変圧器AWは、ドレーン接続部を介してインダクタンスL1に接続されるとともにソース接続部を介して抵抗R1を通じてアースと接続されたNチャネル充電トランジスタT1を有している。さらに、フリーホイーリングPチャネルトランジスタT2が設けられており、これはソース接続部でインダクタンスおよびトランジスタT1(ドレーン)に接続されるとともに、ドレーン接続部では昇圧変圧器コントローラVUPrの入力部と結合されている。同期制御式のトランジスタT2に代えて、単純な超高速フリーホイーリングダイオード(ショットキーダイオード)を使用することもできる。これはアノードでインダクタンスおよびT1(ドレーン)と接続されるとともに、カソードでVUPrに接続される。
【0041】
VUPrには、コンデンサC1およびC2の並列回路が接続されている。この並列回路では、22から34Vの間である電圧VUPがタッピングされる。たとえばマイクロコントローラμCによって電圧が測定される。充電電圧VUPは充電電流源LSQの入力部と接続されており、充電電流源は、電流分配器SVおよび流れ方向と逆向きにつながれたダイオードD2の並列回路を有しており、それは、充電電流源LSQの出力部に接続されたコンデンサCERからの逆流を可能にするためである。電流分配器SVとしては、トランジスタT5が利用される。ダイオードD2は、通常、トランジスタT5の構成要素である。このとき電流は0から930mAの間でSPIインターフェースを通じてプログラミング可能である。充電電流源LSQの出力部に接続されたコンデンサCERはアースにつながれており、さらに、図示しない点火回路にも接続されている。ただし電圧VUPは、充電電流源LSQによって受け取られるだけでなく、電圧VUPを7.2Vの電圧VASに引き下げる降圧変圧器DC1によっても受け取られる。降圧変圧器DC1は、制御電圧VUPの振動分を低減するために、昇圧変圧器AWに反転して接続されている。
【0042】
電圧VUPは、降圧変圧器DC1の電流分路R2を介して、後置された充電トランジスタT3(Pチャネル)とソースで接続されるとともに、そのドレーンを介して降圧変圧器のインダクタンスL2に接続されている。さらに別の同期フリーホイーリングトランジスタT4(Nチャネル)が、ソース接続部でアースにつながれるとともに、ドレーン接続部でインダクタンスL2ならびにT3のドレーンにつながれている。T4に代えて、単純な超高速フリーホイーリングダイオード(ショットキーダイオード)を使用することもできる。これはアノードでアースと接続されるとともに、カソードでインダクタンスL2およびトランジスタT3のドレーンに接続される。インダクタンスL2は降圧変圧器DC1の制御入力部に接続されており、ここでは制御電圧VASrを形成する。この場合にも昇圧変圧器と同じく、この制御入力部はL2の電流供給部とともに容量性負荷に接続されており、すなわち、降圧変圧器の出力部を形成するコンデンサC3およびC4に接続されている。C3/C4(+)と接地ベースとの間で、引き下げられた電圧VASをタッピングすることができる。6.4V...7.2Vのこの電圧VASは、本件では降圧変圧器DC2により受け取られ、そのためにこの降圧変圧器は電流分路R3とスイッチングトランジスタT7およびT8とインダクタンスL3を有している。DC2はDC1に準じて構成されている。それにより、1.2から3.3Vの間である、制御装置の各コンポーネントにより受け取られる出力電圧VSTが形成される。降圧変圧器DC1に接続されたリニアコントローラLRを介して、5Vの電圧が電流分路R4および制御トランジスタT6の後に出力される。この電圧は、CANバスないしフレックスレイバスへの供給の役目を果たすことができる。リニアコントローラLRのこの出力部にも、冗長性の理由により並列につながれたコンデンサC41およびC44を含む容量性負荷が設けられている。
【0043】
降圧変圧器DC2も、Pチャネル充電トランジスタT7と、NチャネルフリーホイーリングトランジスタT8もしくはT8に代わるフリーホイーリングダイオードとを有している。電圧VASは、降圧変圧器DC2の電流分路R3を介して、後置された充電トランジスタT7(Pチャネル)とソースで接続されるとともに、ドレーンを介して、降圧変圧器のインダクタンスL3に接続されている。別の同期フリーホイーリングトランジスタT8(Nチャネル)が、ソース接続部でアースにつながれるとともに、ドレーン接続部でインダクタンスL3ならびにT7のドレーンにつながれている。T8に代えて、単純な超高速フリーホイーリングダイオード(ショットキーダイオード)を利用することもできる。これはアノードでアースと接続されるとともに、カソードではインダクタンスL3およびトランジスタT7のドレーンに接続される。
【0044】
降圧変圧器DC2の出力部も、コンデンサC43およびC44の並列回路で容量性負荷されている。それにより、それぞれ出力部で機能的に昇圧変圧器AWと同じように配線された、すなわち容量性に配線された、降圧変圧器DC1およびDC2の直列回路が成立する。さらにこれらの変圧器はすべて、変圧器の出力部で振動分が低減されるように作動する。このことは高い安定性につながる。
【0045】
図5は、スイッチコンバータAW、DC1、およびD2のトランジスタの変調を示している。これらは特に部分的に段階を重ね合わせながら、反転した動作を示している。ここで上側のグラフは、昇圧変圧器AWのトランジスタTおよびT2のパルス幅変調に対する変調を示しており、トランジスタはオンおよびオフされている。第1の段階には充電段階を見ることができ、第2の段階にはフリーホイーリング段階を見ることができる。中間のグラフには、充電段階とフリーホイーリング段階の部分的な重なり合いを示す、降圧変圧器DC1のトランジスタT3およびT4のパルス幅変調を見ることができる。ここでは正確な反転が行われており、最初はフリーホイーリング段階を見ることができ、次いで充電段階を見ることができる。このように昇圧変圧器AWの放出段階には、降圧変圧器DC1によるエネルギー取出しも見ることができる。両方の降圧変圧器DC1およびDC2の関係もこれに準じており、このことは、中央および下側の時間グラフに見ることができる。各変圧器のサイクルは本件では500nsである。1回のサイクルには充電段階と放出段階が含まれる。
【0046】
次の両方の電圧時間グラフである図6および図7には、図4に示す回路の機能形態が詳しく説明されている。図6は、バッテリ電圧UBのスイッチオンから、エネルギーリザーブCERの等価内部抵抗の測定までの電圧を示している。図7は、エネルギーリザーブCERの充電段階の開始から、エネルギーリザーブCERが制御電圧に達するまでの電圧の時間グラフを示している。
【0047】
図6は、時点T0で電圧供給がスイッチオンされることを示している。これは、たとえば12Vに達するバッテリ電圧UBである。スイッチコンバータは符号600で始動し、その出力部で電圧VUPを出力する。この上昇は、車両の供給インピーダンス、インダクタンスL1のVフィルタV−F、および容量性負荷C1およびC2に対応する。この上昇は本件では非常に迅速である。T0から約30から70μs後である時点T1で、少なくとも2つの安定したASIC内部の基準電圧が生成された後に、およびフィルタにより生じる定義された待機時間の後に、スイッチコンバータAWが始動する。基準電圧は差異に関してチェックされ、すなわち、相違が生じていればエラーが存在する。待機時間はカウンタによって計測される。
【0048】
そして時点T2で降圧変圧器DC1も運転を開始し、このことは符号601で表されている。このことは、昇圧変圧器の出力電圧VUPが所定の値VUP_lowを上回るとただちに行われる。降圧変圧器DC1自体がそのことを認識する。
【0049】
そして時点T3でスイッチコントローラDC2も始動し、このことは符号602で表されており、リニアコントローラLRも、第1の降圧変圧器DC1の出力電圧が所定の閾値VAS_lowを超えるとただちに始動する。時点T4で、安定した電圧の生成後に、放出によるパワーオンリセットが行われる。Vintは基準電圧が形成される元になる内部電圧であり、たとえばツェナー電圧から形成される。VRef1は、トランジスタ・エミッタ電圧と、温度補正のための加算割合とが組み合わされてなる、いわゆるバンドギャップ電圧である。これはシリコンのバンドギャップに相当している。第1の降圧変圧器の出力電圧VASは制御帯域内にあり、リニアコントローラLRの電圧および第2の降圧変圧器DC2の電圧もそれぞれの制御帯域内にあり、すなわちこれは、カウンタにより確認される定義された2から20msの充電時間後である。これらの電圧は、変圧器を含んでいるシステムASIC自体により監視される。時点T5で、充電電流源LSQのプログラミングがマイクロコントローラによって行われる。たとえば210mAの一次電流レベルによるエネルギー充電の開始が行われる。それにより、エネルギーリザーブVERにおける電圧が線形に上昇していく。時点T6で、エネルギーリザーブVERの電圧がたとえば11Vの値VER_minに達する。一次電流レベルが、たとえば90mAの測定電流レベルへと自動的に切り換えられ、少なくとも10ビットでカウンタを始動させる。時点T7で、電圧が+0.5Vの値VER_minに達する。するとカウンタが停止する。このカウンタ水準がキャパシタンス測定値として次回のパワーオンリセットまで保存され、等価内部抵抗の検査のための電流レベルも切り換えられる。この電流レベルは930mAである。
【0050】
T7+10μsである時点T8で、エネルギーリザーブCERにおける電圧が<=VER_min+1Vであるかどうか、また、この電圧が<=VER_min+1.5Vであるかどうかチェックされる。この決定フラッグが次回のパワーオンリセットまで保存され、その後、プログラミングされた一次電流レベルに切り換えられる。
【0051】
その様子は図7にも示されている。一次電流レベルは時点T5とT6の間で第1の上昇700をもたらし、キャパシタンスと等価内部抵抗の測定はT6とT8の間に行われる。第2の充電段階はT8とT9の間に行われ、符号703で表されている。時点T9で、エネルギーリザーブCERにおける電圧が値VER_low=22.8Vに達する。電流レベルは、たとえば60mAであるプログラミングされた維持値に自動的に設定される。エネルギーリザーブにおける電圧は、今度はゆっくりとした速度で電圧VUP=22.4Vの制御値になる。これは符号704で上昇して表されている。
【0052】
エネルギーリザーブCERを昇圧変圧器AWから分断することで、エアバッグ供給システムはすでに時点T4で準備が整う。T4は、待機時間をどのように決めるかに応じて3から21msの間である。それにより、いわゆるエコモードのような新たな機能性を実現することができる。このシステムは希望に応じて、エアバッグアプリケーションを始動させてエネルギーリザーブの充電により点火準備体制にすることなく、たとえば診断通信のような機能を実行する。このことは、たとえば定期検査や車両紹介などのために利用することができる。
【0053】
適当な一次電流レベルすなわち充電電流をプログラミングすることで、一方では、点火準備体制を実現している間の、すなわちエネルギーリザーブの充電段階での、最大の制御装置入力電流を求める要請を満たすことができ、他方では、所要のエネルギーリザーブ量の選択に応じて所望の充電時間を実現することができる。
【0054】
この充電段階でのキャパシタンス検査は、既存のプログラミング可能な充電電流源LSQ以外の測定源を必要とすることがない。2つのコンパレータ値VER_minおよびVER_min+0.5Vを適用することで、0.5Vの測定帯域を通過するために必要となる充電時間を、組み込まれたカウンタによって判定することができる。測定電流としては、たとえば90mAが統一的に適用される。それに応じてキャパシタンスCERは、102.3msの測定時間で(90mA×T測定)/0.5V)によって規定され、その結果は18.4mFとなる。
【0055】
いわゆるESRテストはエネルギーリザーブの等価内部抵抗であり、この充電段階では、同じく既存のプログラミング可能な充電電流源LSQ以外の測定源を必要とすることがない。さらに別の2つのコンパレータ値すなわちVER_min+1VおよびVER_min+1.5Vを適用することで、エネルギーリザーブの内部抵抗が十分に小さいかどうかを判定することができる。90mAから930mAに測定電流が変更されると、電流の印加後10μsにコンパレータ閾値VER_min+1Vが照会される。このμsは選択可能であり、本件では、さほどの容量性の再充電がないときの誘起効果の減衰を補正するために選択されている。このようなコンパレータ閾値を上回っていれば、内部抵抗は0.6Ωを超えている。同様に、測定電流の印加後10μsに、コンパレータ閾値VER_min+1.5Vが照会される。これを上回っていれば、内部抵抗は1.2Ωを超えている。これは高すぎる値であり、ランプ点灯のような警告が表示される。
【0056】
図4に準ずる直列結合された変圧器の反転動作という構成要件により、昇圧変圧器AWが遮蔽段階にあるときに、結合されている降圧変圧器DC1を少なくとも一時的にエネルギー消費させることが試みられる。この方策は、昇圧変圧器AWの出力部の振動分を低減させる。これと同じ手法が、降圧変圧器DC1およびDC2の結合にも適用される。相応の導線部材により誘導減結合された変圧器出力キャパシタンスという構成要件により、電流の変化によって安定した変圧器・コントローラ情報を導き出すことができる。
【0057】
エネルギーリザーブの充電後の別のコンパレータ閾値という構成要件により、エネルギーリザーブの周期的なキャパシタンス測定を実行することができ、このコンパレータ閾値は記号VUP_low+0.33Vで表される。この測定は、周期的なキャパシタンス測定の結果レジスタに対するマイクロコントローラの読み取りプロセス後に開始される。結果レジスタは同様にシステムASICに配置されている。このプロセスによって充電電流源LSQが遮断される。電圧分配器、安全スイッチなどの電圧VERに印加される負荷によって、電圧が低下する。電圧VERが値VER_lowに達すると、たとえば60mAの測定電流により、VUP_low+0.33Vに達するまで、エネルギーリザーブが再び充電される。短い測定ストロークおよびこれに合わせて相応に適合化された測定電流を選択することで、分解能が初期キャパシタンス測定の値に正確に保たれる。値VERに達すると、すなわちエネルギーリザーブにおける電圧が値VER_low+0.33Vに達すると、追加的に、システムASICにも配置されている測定値メモリの電圧フラッグが良好へと変わる。供給電圧監視は、電圧VUP、VER、VAS、VST50、VSTを、システムASICのマルチプレクサを介してアナログ・デジタル・コンバータに供給し、それにより、これらの値をマイクロコントローラによりSPIインターフェースを介してシリアルに読み取ることができる。
【0058】
本件では、エネルギーリザーブのキャパシタンス測定や等価内部抵抗の測定のときの測定誤差の回避も意図される。このような測定誤差は、バッテリ電圧の急落という状況で回避されるのが望ましい。そのために本件では、次の2つの二者択一の方法が提案される:
【0059】
a)入力電圧UBをコンパレータによって監視し、測定の進行中にこの電圧が少なくとも1回だけ閾値よりも低下すると、それぞれ進行中の測定に測定メモリで実行不可能の表示が付される。
【0060】
b)充電電流源LSQの電流コントローラが測定アプリケーションで調整状態を生起する。この調整状態が、立ち上がり時間を除いて、測定時間そのものと同じ調整時間に達したときに限り、進行中の測定が障害なく進行しており、したがって有効であると見なされ、そうでない場合、測定値は測定メモリにおいて実行不可能の表示を与えられる。調整状態を検出するために、同じく10ビットカウンタを5kHzのサイクル周波数で利用することができ、これよりも低い分解能も本件では考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7