(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について、図を参照して詳細に説明する。本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
各図面中、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、各図面に示す位置関係に基づくものとし、さらに図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。
【0021】
〔血液処理用中空糸膜〕
本実施形態の血液処理用中空糸膜は、
親水性高分子とポリスルホン系樹脂と脂溶性ビタミンとを含む、血液処理用中空糸膜であり、
前記血液処理用中空糸膜全体における前記親水性高分子及び前記ポリスルホン系樹脂の合計質量に対する前記親水性高分子の質量の割合である前記親水性高分子の含有率Aが3質量%以上10質量%以下であり、
前記血液処理用中空糸膜の内表面における前記親水性高分子及び前記ポリスルホン系樹脂の合計質量に対する前記親水性高分子の質量の割合である、前記親水性高分子の存在率Bが35質量%以上50質量%以下であり、
前記血液処理用中空糸膜の全表面における前記脂溶性ビタミンの存在量が中空糸膜1gあたり0.5mg以上25mg以下である。
なお、血液処理用中空糸膜の内表面とは、中空糸膜の内側の最表層部、すなわち血液が中空糸膜と接触する表面である。
また、血液処理用中空糸膜の全表面とは、血液と直接接する中空糸膜の内表面のみではなく、外表面や膜厚部の多孔質部分の孔内の表面も含む。
【0022】
本実施形態の血液処理用中空糸膜は、所定の容器内に収納されることにより中空糸膜型血液処理装置を構成する。
図1に示す構造が一般的であるが、処理される血液の入り口と出口、処理液の入り口と出口、両者を隔離する中空糸膜を有していればその他の構造でも構わない。
【0023】
本実施形態の中空糸膜型血液処理装置は、容器と、この容器内に挿入された複数の中空糸膜からなる中空糸膜束と、この中空糸膜束の両端部を容器の両端部にそれぞれ液密に固定する隔壁と、容器内の空間と連通する処理液流入口及び処理液流出口と、容器の両端部にそれぞれ取り付けられ中空糸膜の内部の空間と連通する血液流入口及び血液流出口とを有しており、中空糸膜として、上述した実施形態の血液処理用中空糸膜を備えるものである。
【0024】
図1は、本実施形態の中空糸膜型血液処理装置の模式断面図である。
中空糸膜型血液処理装置10は、筒状容器2の長手方向に沿って、複数の血液処理用中空糸膜1からなる中空糸膜束が装填されている。
当該中空糸膜束は、血液処理用中空糸膜1の内側(第一の流路1a)と外側(第二の流路11)とを隔絶するように、その両端部が、樹脂3a、3b(隔壁)によって、筒状容器2の両端部に固定されている。なお、第二の流路11には、中空糸膜1の外側と筒状容器2の内部表面との間にできた空間のほか、複数の血液処理用中空糸膜1の間の空間も含まれる。
【0025】
血液処理用中空糸膜1の端面は開口しており、この開口部により、血液等の被処理液が矢印Fbの方向から空間8を経て第1の流路1a内へ流入することができる。そして、第一の流路1aを通過した血液等の被処理液は、他方の開口部から流出することができる。筒状容器2の両端部には、表面に中空糸膜1の開口部を有する樹脂3a,3bの端面に対向して、血液等の被処理液の流入及び流出口となる、ノズル6a,6bを備えたヘッダーキャップ7a,7bが設けられている。
【0026】
筒状容器2の両端部の側面には、透析液等の処理液の流入及び流出口となるポート2a,2bが設けられている。透析液等の処理液が、例えばポート2bより矢印Faの方向から流入すると、第二の流路11の内部を通過し、ポート2aから外部へ流出することができる。透析液等の処理液は、第二の流路11の内部を通過しながら、血液処理用中空糸膜1を介して、第一の流路1aの内部を流れる血液等の被処理液から、例えば老廃物を除去することができる。
【0027】
なお、中空糸膜型血液処理装置としては、例えば、血液透析器、血液透析濾過器、血液濾過器、持続血液透析濾過器、持続血液濾過器、血漿分離器、血漿成分分画器、血漿成分吸着器、ウイルス除去器、血液濃縮器、血漿濃縮器、腹水濾過器、腹水濃縮器等が挙げられ、中空糸膜のもつ濾過特性を利用した医療用具であれば本発明の血液処理器に含まれる。
【0028】
(ポリスルホン系樹脂)
本実施形態の血液処理用中空糸膜に含まれるポリスルホン系樹脂(以下、PSfと称することがある。)とは、スルホン結合を有する高分子化合物の総称であり、特に限定されるものではない。
例えば、繰り返し単位が、下記式(1)〜(5)で示されるポリスルホン系高分子が挙げられる。各式中、nは2〜200の整数であることが好ましく、80〜140であることがより好ましく、92〜136であることがさらに好ましい。
下記式(1)のビスフェノール型ポリスルホン高分子は、ソルベイ・アドバンスド・ポリマーズ社より、「ユーデル」の商品名で、また、ビー・エー・エス・エフ社より「ウルトラゾーン」の商品名で市販されており、重合度によって複数の種類が存在するが、特に限定するものではない。
【0030】
(親水性高分子)
本実施形態の血液処理用中空糸膜に含まれる親水性高分子とは、親水基を有するポリマーである。
親水性高分子としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリビニルピロリドン(以下PVPと称することがある。)、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリプロピレングリコール等やそれらの混合物が挙げられるが、紡糸の安定性や、上述したポリスルホン系樹脂(PSf)との親和性の観点から、PVPが好ましく用いられる。
PVPは、重合度によって複数の種類が存在し、例えば、アイ・エス・ピー社より、「プラスドン」の商標名で、K−15、30、90等の分子量違いのものが存在するが、いずれも用いることができる。
【0031】
<血液処理用中空糸膜全体における親水性高分子及びポリスルホン系樹脂の合計質量に対する親水性高分子の質量の割合(親水性高分子の含有率A)>
本実施形態の血液処理用中空糸膜全体における親水性高分子及びポリスルホン系樹脂の合計質量に対する親水性高分子の質量の割合(以下、親水性高分子の含有率Aと記載する場合がある。)が3質量%以上10質量%以下である。
前記親水性高分子の含有率Aを3質量%以上とすることにより、後述するように、親水性高分子を血液処理用中空糸膜に実用上十分な量で固定化させるために3質量%以上とし、かつ血液処理用中空糸膜において実用上十分な引張強度を得ると同時に過酷環境下における透過性能の安定性を得るために10質量%以下とする。
前記親水性高分子の含有率Aは、4質量%以上9質量%以下が好ましく、5質量%以上8質量%以下がより好ましい。
親水性高分子の含有率Aの測定方法としては、例えば、1H−NMRによる測定結果を用いた方法が挙げられる。すなわち、1H−NMRを用いた方法では、ポリスルホン系樹脂に特有な基のプロトンに由来するピークの強度と、親水性高分子に特有な基のプロトンに由来するピークの強度とから両化合物のモル比を求め、当該モル比に基いて、前記中空糸膜全体における親水性高分子の存在率を算出することができる。
例えば、ポリスルホン系樹脂が上記式(1)で表わされる構造単位を有するものであり、親水性高分子がポリビニルピロリドンである場合は、ポリスルホン系樹脂の構造単位中の1つのフェニレン基の水素原子、及びポリビニルピロリドンの構造単位中の水素原子に着目し、これらに帰属されるピークの強度(積分値)をそれぞれ算出する。
ポリスルホン系樹脂を100モルとすると、フェニレン基の水素原子は4つであるので、それに由来するピークの強度を400としたときのポリビニルピロリドン由来のピークの強度が、ポリスルホン系樹脂を100モルとしたときのポリビニルピロリドンのモル数に対応する。
これらの結果に基づいて、両化合物の質量比を算出することができ、その結果、上述した中空糸膜全体における親水性高分子の存在率が求められる。
【0032】
<血液処理用中空糸膜の内表面における親水性高分子及びポリスルホン系樹脂の合計質量に対する親水性高分子の質量の割合(親水性高分子の存在率B)>
本実施形態の血液処理用中空糸膜の内表面における親水性高分子及びポリスルホン系樹脂の合計質量に対する親水性高分子の質量の割合(以下、親水性高分子の存在率Bと記載する場合がある。)は、35質量%以上50質量%以下である。
血液処理用中空糸膜の内表面とは、中空糸膜の内側の最表層部、すなわち血液が中空糸膜と接触する表面である。
前記親水性高分子の存在率Bが35質量%以上とすることにより十分な血液適合性が得られる。また、50質量%以下であることにより、プライミング後のエアー残量の低減化を図ることができる。
前記親水性高分子の存在率Bは、39質量%以上50質量%以下が好ましく、40質量%以上50質量%以下がより好ましい。
前記親水性高分子の存在率Bの測定方法としては、例えば、X線光量子スペクトル(X−ray photoelectron spectrosopy:XPS)による測定結果を用いた方法が挙げられる。
すなわち、中空糸膜の内側の表面をXPSにより測定し、ポリスルホン系樹脂と親水性高分子にそれぞれ特有な原子のピーク強度から当該表面における各原子の数の比を求め、それに基づいて得られる両化合物の質量比率から上記の存在率を算出することができる。
具体的には、親水性高分子としてポリビニルピロリドンを用いた場合には、中空糸膜の内側の表面部での窒素原子数(ポリビニルピロリドン由来)と硫黄原子数(ポリスルホン系樹脂由来)とから求められる。
例えば、ポリスルホン系樹脂が上記(1)式で表わされる構造単位からなり、親水性高分子としてポリビニルピロリドンを用いた場合、下記式(I)により、中空糸膜の内表面におけるポリビニルピロリドンの存在率(質量%)を求めることができる。
【0034】
ここで、前記式(I)中、111はポリビニルピロリドンの繰り返し単位の式量であり、442はポリスルホンの繰り返し単位の式量である。
【0035】
(脂溶性ビタミン)
本実施形態の血液処理用中空糸膜に含まれる脂溶性ビタミンとは、一般に、水に溶けにくく、アルコールや油脂に溶けるビタミンである。
前記脂溶性ビタミンは、以下に限定されるものではないが、例えば、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK及びユビキノン等が挙げられ、特にビタミンEが好ましい。
前記ビタミンEとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、α−トコフェロール、α−酢酸トコフェロール、α−ニコチン酸トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール等が挙げられる。特に、α−トコフェロールは、生体内抗酸化作用、生体膜安定化作用、血小板凝集抑制作用等の種々の生理作用を有するため、好ましく用いられる。
前記脂溶性ビタミンは、長期透析患者で顕在化する酸化ストレスを緩和する役割、具体的には、酸化ストレスの原因物質である過酸化物の消去や、生体の抗酸化効果を回復する役割を担う。
さらに、本実施形態の血液処理用中空糸膜及びこれを備える中空糸膜型血液処理装置は、中空糸膜表面における脂溶性ビタミン及びその他の成分(親水性高分子及びポリスルホン系樹脂)がそれぞれ後述する特定の条件を満たすようにして含まれることにより、後述するようにリークテストにおけるリーク誤検知の予防や透過性能の安定性向上等という、効果が得られる。
本実施形態の血液処理用中空糸膜においては、中空糸膜の全表面に脂溶性ビタミンが存在することで、これらの効果が発現されるものと考えられる。ここで「全表面」とは、血液と直接接する中空糸膜の内表面のみではなく、外表面や膜厚部の多孔質部分の孔内の表面も含む。血液成分のうち血球は内表面のみとしか接しないが、蛋白等の液性成分や活性酸素等の過酸化物質は、拡散により膜厚部を行き来するため、多孔質部分や外表面に至る全ての膜表面が抗酸化作用に寄与する。さらにプロセス液(例えばリーク検査時の湿潤剤、保存液、透析液等)や、ドライ製品であれば包装袋内の気体は外表面を含む全ての表面と接触している。このため、全表面に存在する脂溶性ビタミンの総量が問題となる。言い換えれば、膜基材に埋没して液体と接触しえない脂溶性ビタミンは、本実施形態で定義する「中空糸膜の全表面における脂溶性ビタミンの存在量」の対象外である。
【0036】
本実施形態の血液処理用中空糸膜においては、全表面(多孔質からなる膜厚部や外表面を含む)に存在する脂溶性ビタミンの量を定義するために、あえて中空糸膜の質量あたりの脂溶性ビタミン量を規定している。
仮に、脂溶性ビタミンの量を、膜面積(一般的に内表面積を指す)を基準にして定義すると、同じ膜面積でも膜厚が異なれば全表面積が大きく異なり、脂溶性ビタミンの総量が大きく変わるため、所定の効果を確実に得るための脂溶性ビタミンの膜面積あたりの量を規定するのは困難である。
一方、本実施形態のようなポリスルホン系樹脂からなる血液処理用中空糸膜の開孔度合いは、膜厚が変わってもほぼ一定であるので、体積や質量を基準とすることで、優れた効果が得られる存在量の範囲を規定することができる。
そこで、本実施形態の血液処理用中空糸膜においては、測定の再現性を重視して、血液処理用中空糸膜の質量を基準として、血液処理用中空糸膜の全表面における脂溶性ビタミンの存在量を規定する。
本実施形態の血液処理用中空糸膜においては、脂溶性ビタミンの前記血液処理用中空糸膜全表面における存在量が、前記中空糸膜1gあたり0.5mg以上25mg以下である。
脂溶性ビタミンの前記血液処理用中空糸膜全表面における存在量が、前記中空糸膜1gあたり0.5mg以上25mg以下であることにより、優れた血液適合性が得られる。
脂溶性ビタミンの前記血液処理用中空糸膜全表面における存在量は、前記中空糸膜1gあたり1.5mg以上18mg以下が好ましく、1.5mg以上15mg以下がより好ましい。
なお、本明細書においては、これを「中空糸膜全表面における脂溶性ビタミンの存在量」と記載する場合がある。
【0037】
<中空糸膜全表面における脂溶性ビタミンの存在量の測定方法>
本実施形態の血液処理用中空糸膜の全表面における脂溶性ビタミンの存在量は、中空糸膜型血液処理装置の中空内部を、アルコール水溶液や界面活性剤の水溶液等を通液して中空糸膜内表面の脂溶性ビタミンを抽出した後、液体クロマトグラフィーで定量することで評価できる。
この際、血液処理用中空糸膜の表面に存在する全ての脂溶性ビタミンを抽出する必要があり、抽出溶媒の脂溶性ビタミン溶解能力は十分に高い必要がある。一方で膜基材を膨潤させてしまうと膜基材に埋没していた脂溶性ビタミンをも抽出してしまう可能性がある。このため、膜基材を膨潤させる能力を有さず、脂溶性ビタミンを十分に溶解させる能力を有する界面活性剤水溶液を抽出溶媒として用いるのが望ましい。
【0038】
血液処理用中空糸膜の全表面に存在する脂溶性ビタミンの存在量の具体的な測定方法の例を下記に示す。
なお、血液処理用中空糸膜の全表面に存在する脂溶性ビタミンの存在量の測定方法は、下記の例に限定されるものではなく、上記目的を満たす範囲で採取量、抽出溶液の濃度や量、温度、時間、通液流量、測定装置等、適宜調整することができる。
先ず、中空糸膜型血液処理装置を分解し、血液処理用中空糸膜を採取し、水洗した後、乾燥処理を施す。
続いて、乾燥後の血液処理用中空糸膜4gをガラス瓶に秤取し、界面活性剤の水溶液として、例えば1質量%のポリエチレングリコール−t−オクチルエーテル水溶液を80mL加え、室温で60分間、超音波振動を加えながら脂溶性ビタミンの抽出を行う。定量操作は液体クロマトグラフ法により行い、脂溶性ビタミン標準溶液のピーク面積から得た検量線を用いて、抽出液の脂溶性ビタミン量を求める。液体クロマトグラフ法による定量方法の一例:高速液体クロマトグラフ装置(ポンプ:日本分光PU−1580、検出器:島津RID−6A、オートインジェクター:島津SIL−6B、データ処理:東ソーGPC−8020、カラムオーブン:GL Sciences556)に、カラム(Shodex Asahipak社製ODP−506E packed column for H PLC)を取り付け、カラム温度40℃ において、移動相である高速液体クロマトグラフィー用メタノールを、例えば流量1mL/minで通液し、紫外部の吸収ピークの面積から脂溶性ビタミン濃度を求める。この濃度から、抽出効率を100%として、血液処理用中空糸膜に含有される全表面の脂溶性ビタミンの質量(mg/g)を求める。なお、放射線照射により、脂溶性ビタミンは一部失活する。本実施形態の中空糸膜型血液処理装置を構成する血液処理用中空糸膜の表面に存在する脂溶性ビタミン量とは、放射線照射により失活したものを含める。
【0039】
〔血液処理用中空糸膜の特性〕
(中空糸膜型血液処理装置を構成する中空糸膜の血液適合性)
従来から、中空糸膜型血液処理装置の血液適合性は、順次改良が進められているが、抗凝固剤の併用が必須であったり、長期の繰り返し使用により様々な合併症を併発したりするなど、未だに改良の余地がある。
従来技術として、脂溶性ビタミンを含有しない親水性高分子を含むポリスルホン中空糸膜を、「湿潤保護剤」として例示されるグリセリン水溶液で覆い、さらに電子線滅菌を行って得られた膜の血液適合性を、後述する実施例中に示す〔乳酸脱水素(LDH)活性の測定〕により評価したところ、血液適合性にはまだ改良の余地があることが分かった(特許文献3(特開2008−93228号公報)参照。後述する比較例10にて詳述する。)。
なお、以下血液適合性について、本発明者らが開発したより厳しい試験方法で識別できる「改良の余地がある」レベルを「不十分」と表現するが、これはより高いレベルを目指したためである。
【0040】
前記特許文献3においては、多価アルコール水溶液は放射線滅菌時に生じるラジカル種を捕捉する能力があり、そのために血液適合性を担う膜表面の親水性高分子のラジカル種による劣化(解重合や過度の架橋)を抑制すると記載されている。
しかしながら、血液適合性が不十分であるということは、グリセリン水溶液では、放射線滅菌時に生じる大量のラジカル種を捕捉する能力が不足していた可能性がある。
このため、より高いラジカル種捕捉能を求めて、同じく特許文献3に例示されているビタミンEを、中空糸膜表面の微細孔を閉塞しない程度に中空糸膜に付与して、さらに電子線滅菌を行ったところ、やはり十分な血液適合性が得られなかった。
ビタミンEの付着量は、特許文献3で「湿潤保護剤」として要求されている60〜400%よりも低い数値ではあったものの、後述する塩化第二鉄水溶液反応により、滅菌後においても、中空糸膜に残留するビタミンE量は十分に確保されていた。従って十分なラジカル種捕捉能を有しており、血液適合性の不足の原因がラジカル種捕捉能の不足にあったとは考えられない。
【0041】
本発明者らはさらに、親水性高分子の変性によると推測される血液適合性の低下をその存在量の増加で補償できないかと考え、次の実験を行った。
第一に、中空糸膜を製膜する際に紡糸原液のPVP(ポリビニルピロリドン:親水性高分子)濃度を上げることにより中空糸膜内表面のPVP濃度を増加させた。得られたドライタイプの中空糸膜型血液処理装置の血液適合性は未だ十分でなく、中空糸膜からの溶出物が増大するばかりか、中空糸膜基材の相対的なPSf組成の減少により、中空糸膜強度の減少を招き、使用時の中空糸膜リーク耐性に不安なものとなった(後述する比較例6にて詳述する)。
第二に、脂溶性ビタミンを含有しない中空糸膜型血液処理装置にPVP水溶液を通液し、次いで乾燥及び放射線滅菌を施した。この方法では、PVPを過剰に付与させれば血液適合性を満足できたものの、使用前のプライミング(水を通液して膜をぬらすとともに中空内の気体を除去する操作)を行ってもエアーが除去しきれず、血液処理装置としては用いることができなかった(後述する比較例7にて詳述する。)。
このように、従来技術ないし従来技術に創意工夫をこらしても課題である血液適合性とプライミング性を満足する中空糸膜型血液処理装置は容易には得られなかった。
【0042】
本発明者らはさらに研究を進めた結果、驚くべきことに、脂溶性ビタミンを含有する中空糸膜を、前記脂溶性ビタミンを含有しない中空糸膜において血液適合性確保のために要求される量よりもずっと少ない量の親水性高分子で中空糸膜の内表面を覆って放射線滅菌を施した中空糸膜型血液処理装置は、良好な血液適合性とプライミング性、十分な膜強度を両立することを見出した。
本実施形態の中空糸膜型血液処理装置及び血液処理用中空糸膜においては、上述したように、血液処理用中空糸膜の全表面における前記脂溶性ビタミンの存在量が、中空糸膜1g当たり0.5mg以上25mg以下である。
この条件の下、親水性高分子の含有率Aを3質量%以上10質量%以下とし、かつ親水性高分子の存在率Bを35質量%以上50質量%以下とする。
脂溶性ビタミンの中空糸膜全表面における存在量が、中空糸膜1gあたり0.5mg以上であると、親水性高分子を十分に血液接触側に偏在させることができ、良好な血液適合性が得られる。
よって、脂溶性ビタミンの中空糸膜表面における存在量は0.5mg以上であるものとし、好ましくは1.0mg以上、より好ましくは1.5mg以上である。
また、脂溶性ビタミンの中空糸膜全表面における存在量が、中空糸膜1gあたり25mg以下とすることにより、脂溶性ビタミン自身の疎水性の影響を抑制でき、抗血栓性が実用上十分に得られ、血液と接触させたときに中空糸内で血液が凝固する、いわゆる残血の発生を防止することができる。
よって脂溶性ビタミンの中空糸膜全表面における存在量の上限値は25mg以下、好ましくは18mg以下、より好ましくは15mg以下である。
【0043】
本実施形態の中空糸膜型血液処理装置を構成する、上述したように特定量の脂溶性ビタミンを含有する本実施形態の血液処理用中空糸膜の内表面を、上述したような特定量の親水性高分子で覆って、さらに放射線滅菌を施すことによって高い血液適合性を発現するメカニズムは以下のように考えられる。
図2に示すように、ポリスルホンと親水性高分子とのブレンド膜においては、表面の状態が、疎水性のポリスルホン高分子の膜基材41に、親水性高分子42が突き出すように存在した状態となっている。
親水性高分子42は、血液中で水和し、血液適合性の保持に不可欠な散漫層を形成する。このときの親水性高分子42の散漫層は、厚み43を有する。
ところで、中空糸膜全体を水で充填したウェットタイプの中空糸膜型血液処理装置においては、放射線滅菌を行っても親水性高分子の変性は軽微であり、ほぼ
図2の状態を保持することが知られている。すなわち、血液中で水和し、血液適合性の保持に不可欠な散漫層を形成する親水性高分子の厚み43は十分に確保される。
【0044】
次に、中空糸膜表面が乾燥したドライタイプの中空糸膜型血液処理装置を放射線滅菌した状態のモデル図を
図3に示す。
図3中の親水性高分子51は、放射線滅菌により発生したラジカル種等の作用により解重合等の変性を受けている。
この結果、血液中での散漫層を形成する親水性高分子51の厚み52が、
図2に示した親水性高分子42の状態よりも減少し、十分な血液適合性を発揮することが出来ない。
【0045】
図2に示した、親水性高分子42が突き出した状態の、ポリスルホンと親水性高分子とのブレンド膜に対し、親水性高分子をさらに溶液として付与し、溶媒を乾燥除去して、親水性高分子をさらに追加して固定した場合のモデル図を
図4に示す。
追加の親水性高分子62は、製膜時から存在する親水性高分子42と同様に、膜基材41に接している。この状態で放射線滅菌を施した場合のモデル図を
図5に示す。
元から存在する親水性高分子42と、追加の親水性高分子62は、等しく解重合等の変性を受け、それぞれ親水性高分子71、追加の親水性高分子72となり、結果として血液中での散漫層の厚み73が減少してしまい、十分な血液適合性を発揮することができない。
【0046】
一方、
図2に示した、親水性高分子42が突き出した状態の、ポリスルホンと親水性高分子とのブレンド膜に対し、脂溶性ビタミンと親水性高分子との溶液を付与した後、溶媒を乾燥除去することによって、脂溶性ビタミンと追加の親水性高分子を固定した場合のモデル図を
図6に示す。
脂溶性ビタミンと親水性高分子を共溶解しつつ、中空糸膜基材や、もともと存在している親水性高分子42に影響を与えない溶媒としては、アルコール水溶液が好ましく用いられる。
前記溶媒の乾燥過程でアルコールが先に揮発して、脂溶性ビタミン81が分離し、疎水性の強いポリスルホン基材表面41を覆う。
その結果、疎水性の強い脂溶性ビタミン81と反発する追加の親水性高分子83は、元から存在する親水性高分子42上における、脂溶性ビタミン81が付着した膜表面側とは反対側、すなわち、最終的に得られる中空糸膜型血液処理装置における血液接触側に移動し、水分の乾燥除去によりその場で固定化される。
【0047】
なお、元から存在する親水性高分子42も脂溶性ビタミン81との反発により、より血液接触側に伸張していると考えられる。
この状態で放射線滅菌を施した場合のモデル図を
図7に示す。
元から存在する親水性高分子42と追加の親水高分子83は、等しく解重合等の変性を受けるが(それぞれ91、92)、追加された親水性高分子92が、血液接触側に位置するため、結果として血液中での散漫層の厚み93がウェットタイプの中空糸膜型血液処理装置と同等程度に保持され、十分な血液適合性を発揮することができる。
また、使用開始初期での濡れ性が高まる結果、血液への親和性の改善を図ることができる。
【0048】
なお、追加の親水性高分子83は元から存在する親水性高分子42と絡み合うことにより膜に固定される。
このため、元から存在する親水性高分子42がある一定量以上存在しないと固定化が十分に行われず、本発明の効果が得られない。このため、元から存在する親水性高分子42の量を反映する中空糸膜全体の親水性高分子の含有率Aは、3質量%以上が必要であり、これにより親水性高分子の固定化が十分に行われる。一方で含有率Aの上限は10質量%以下である。含有率Aを10質量%以下とすることにより、中空糸膜において実用上十分な引張強度及びタフネスが得られる。タフネスについては後述する。
【0049】
中空糸膜の内表面における親水性高分子の存在は、血液適合性を高めるために必須である。
血液適合性としては様々なパラメーターが知られているが、実施例に詳述する乳酸脱水素酵素活性(LDH)の測定値によっても表すことができる。
本指標は血小板の付着量の代用指数であるが、実際の臨床使用例ではヘパリン等の抗凝固剤の使用量により望ましい測定値が異なる。測定値が300ポイントの中空糸膜も現実の臨床で用いられているが、より高い血液適合性を目指す本発明の目的からは、測定値が100以下を実現することを目標とする。さらに50以下であればなお高い血液適合性を実現可能であり、10以下であればさらに好ましい。
【0050】
本実施形態の血液処理用中空糸膜の内表面におけるポリスルホン系樹脂と親水性高分子との全質量に対する親水性高分子の質量の割合である親水性高分子の存在率Bは35質量%以上50質量%以下である。この存在率Bが35質量%以上であると実用上十分な血液適合性が得られる。39質量%以上あれば好ましく、40質量%以上であればより好ましい。
一方で存在率Bの上限は50質量%である。存在率Bを50質量%以下とすることにより、中空糸膜型血液処理装置のプライミング後におけるエアー残量を十分に低減化することができる。
エアー残量が数mL程度では実用上問題が無いが、5mLを超えると血液チャンバーを超えて患者の体内にエアーを送り込んでしまう危険がある。従って、中空糸膜の内表面における親水性高分子の存在率Bは、35質量%以上50質量%以下であるものとし、好ましくは39質量%以上50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以上50質量%以下である。なお、エアー残量の具体的な評価方法は実施例にて詳述する。
【0051】
(中空糸膜型血液処理装置のリーク特性)
本実施形態の中空糸膜型血液処理装置のリーク特性を評価するために適用できるリークテスト方法としては、例えば、水等の生体に無害な液体を中空糸膜にコートする工程と、コート後の中空糸膜の気体の透過性を測定するリークテスト工程とを有する方法が挙げられる。
以下このリークテスト方法について工程ごとに説明する。
【0052】
<中空糸膜にコートする工程>
中空糸膜にコートする液体は、例えば、水及び水系溶液といった中空糸膜や脂溶性ビタミンを溶解せず、生体にとって無害であって、かつ、中空糸膜への濡れ性が高い親水性の液体(コート液)であることが好ましい。これらの液体は、リークテスト後に、中空糸膜を乾燥させることによって除去するが、多少残存したとしても、中空糸膜を使用前に生理食塩液等で洗浄することによって容易に除去できる。
上述のコート溶液を、中空糸膜に、中空糸膜の内部表面近傍に形成された緻密層を含めてコートする方法としては、例えば、上記コート溶液を、
図1に示す中空糸膜型血液処理装置を構成する中空糸膜1の内側(第一の流路1a)に通液する方法を採用できる。この方法により、中空糸膜1の少なくとも内表面に、コート溶液が接触する。余剰な溶液は、気体等でフラッシュ(吹き飛ばし)したり、遠心力をかけて脱液したりすることにより除去できる。このような方法によって上述のコート溶液を中空糸膜に含浸させることにより、中空糸膜の気体透過性を大幅に低下させることができ、後述するリークテスト工程においてピンホールの有無を判別し易い状態となる。
【0053】
<気体の透過性を測定するリークテスト工程>
上述したように、中空糸膜に、中空糸膜の内部表面近傍に形成された緻密層を含めてコート溶液をコートした後、リークテストを行う。
リークテストでは、中空糸膜のピンホールの有無を判別する。
例えば、中空糸膜に気体の圧力を加えて、中空糸膜を透過する気体の速度を計測し、それに基づいてピンホールの有無を判定する方法が例示できる。
より具体的には、
図1に示す中空糸膜型血液処理装置において、中空糸膜1の内部(第一の流路1a)に、一定の空気圧をかけてから加圧を止めて開口部を閉じ、中空糸膜1の内部の圧力降下を測定して、ピンホールの有無を調べる。圧力降下が通常の程度を超えて生じた場合は、ピンホールが存在しており、リークが発生していると判定できる。
【0054】
ところが、従来公知の中空糸膜においては、気体の透過性が高い場合には、上述のコートを行ったとしても、中空糸膜の内部表面が十分にコートされていなかったりして圧力降下が生じ、これによってリーク誤検知が引き起こされる。つまり、均一にコート層を形成する目的のエアフラッシュの圧力によって、微細孔を塞ぐはずの水が透過してしまって水膜を形成できなかったり、あるいは微細孔が大きすぎてリーク検査のための気体圧力に抗しきれず、水膜を維持できなかったりして圧力降下を生じるおそれがある。
そのため、従来公知の中空糸膜においては、気体の透過性が高い中空糸膜に対して正確なリークテストを行うことが困難であった。
これに対し、上述した本実施形態の血液処理用中空糸膜によれば、中空糸膜の表面における脂溶性ビタミンの存在量が中空糸膜1gあたり0.5mg以上25mg以下であって、中空糸膜の内表面におけるポリスルホン系樹脂と親水性高分子との全質量に対する親水性高分子の質量の割合である、親水性高分子の存在率Bが35質量%以上50質量%以下であることにより、中空糸膜の内表面がコート溶液の濡れ性が優れており、中空糸膜の気体透過性が十分に低下している。これにより、リーク誤検知を低減化できる。
【0055】
ところで、脂溶性ビタミンは疎水性が高いことから、一般的には、中空糸膜の膜表面に存在するとむしろ濡れ性が低下してリーク誤検知率が増大してしまうと予想されるため、通常であれば、上述したようなリーク誤検知を少なくする効果は得られないと考えられる。これに対し、本実施形態の血液処理用中空糸膜及びこれを用いた中空糸膜型血液処理装置により上記のような、中空糸膜の内表面における気体透過性が十分に低下するという効果が得られる要因は、下記のように推定される。
【0056】
まず、
図8にポリスルホン系樹脂151の基材と親水性高分子152のみからなる中空糸膜の膜表面近傍のモデル図を示す。
ポリスルホン系樹脂151は元来疎水性の高い表面を有するが、水湿潤下では表面に水和した親水性高分子152が存在することにより濡れやすくなり、微細孔を塞ぐ水膜を表面に形成できるようになる。
このとき、親水性高分子152は十分に伸張した状態となることにより最もその効果を発揮するが、ポリスルホン系樹脂151の基材の細孔径が大きく透過性が高い場合には、水膜の保持が十分でない。
一方、本実施形態の血液処理用中空糸膜においては、
図6を用いて説明したように、親水性高分子42が立ち上がり、かつ後から添加した親水性高分子83によって密度の高い状態にある。その結果、中空糸膜の膜表面の水濡れ性の増加や、微細孔の実質的な孔径の縮小がもたらされる。
このように、ある一定以上の脂溶性ビタミンと親水性高分子とが共存することによって、実用に足る十分に低いリーク誤検知率が達成される。
【0057】
以上は、中空糸膜の表面における脂溶性ビタミンの存在量が好適な範囲(中空糸膜1gあたり0.5mg以上25mg以下)である場合のモデルである。
これに対し、脂溶性ビタミンの存在量が過剰で、親水性高分子を押しのけて微細孔の表面に露出するほどになった場合、中空糸膜表面の疎水性が一挙に増大して急激に濡れ性が低下する。これは、リーク誤検知率の急激な増加という結果をもたらす。
なお、本実施形態の血液処理用中空糸膜における脂溶性ビタミン存在量の上限値は、上述したリーク誤検知率の観点から決定される好適値と、血液適合性の観点から決定される好適値とが略同一である。これは、脂溶性ビタミンが、当初から存在する親水性高分子及び後から添加する親水性高分子によって十分にマスクされる量に抑えることにより、中空糸膜の内表面への水膜の形成されやすさを確実に確保でき、たんぱく質及び血球の吸着されやすさが実現できるためである。
【0058】
一方で、中空糸膜の内表面における親水性高分子の存在率Bと中空糸膜の全表面における脂溶性ビタミンの存在量だけを規定しても、リークテストの結果を十分に安定させることは困難である。
これは、中空糸膜全体の親水性高分子の存在割合の偏りにより中空糸膜の収縮率に差が出た場合には、中空糸膜表面の構造が変化する場合があるためであると推定される。
そこで、中空糸膜内表面と中空糸膜全体における、親水性高分子及びポリスルホン酸系樹脂の合計質量に対する親水性高分子の質量の割合である親水性高分子の含有率Aを3質量%以上10質量%以下に調節し、さらには、中空糸膜全体における親水性高分子の含有率Aに対する、中空糸膜の内表面における親水性高分子の存在率Bの比を、8.0以上50以下とした場合に、リークテストの結果が極めて安定することを見出した。
つまり、中空糸膜の内表面における親水性高分子の存在率Bの条件に加えて、これらの条件を組み合わせて満たすことにより、一層リーク誤検知を少なくして再現性の良い結果が得られるようになる。これらの条件を満たす場合、中空糸膜(あるいは中空糸膜の緻密層)の内部の表面状態(具体的には、ポリスルホン系樹脂と親水性高分子の存在状態の斑、孔径斑や厚み斑等)が、コート溶液によってマスクされ易い状態となるためであると推察される。
【0059】
なお、リーク誤検知が発生する程度は、リーク誤検知の発生率(リーク誤検知率)によって評価することができ、リーク誤検知率は、例えば、下記の方法によって算出することができる。
すなわち、複数の中空糸膜型血液処理装置に対して、上述のリークテスト方法を行い、それらのうちでピンホール有りと判断された本数を算出する。その後、ピンホール有りと判断されたものに対し、再度、上記のリークテスト方法を実施する。この場合、一回目にピンホール有りと判断されたにもかかわらず、二回目にはピンホール無しと判断された場合がリーク誤検知となる。したがって、一回目にピンホール有りと判断されたサンプルの数に対する、リーク誤検知を生じたサンプルの数の割合が、リーク誤検知率となり、この数値が大きいほどリーク誤検知が生じ易いことを意味する。
【0060】
(中空糸膜の過酷環境下における透過性能の安定性)
過酷環境下における透過性能の安定性、すなわち過酷環境下での保管による透過性能の劣化に対抗する安定性(以下、単に、安定性と記載する場合がある。)は、中空糸膜の内表面における親水性高分子の存在率Bと中空糸膜の表面に存在する脂溶性ビタミン量とに影響を受ける。
具体的には、中空糸膜表面の脂溶性ビタミンの存在量を中空糸膜1gあたり0.5mg以上25mg以下にした上で、親水性高分子の存在率Bが35質量%未満になると、前記安定性が低下する。
過酷環境下での保管による親水性高分子の酸化劣化(解重合)により透過性能の変化、具体的には過度な低下ないしは増大が認められ、常識的に考えれば、前記安定性を増すためには親水性高分子の分率を下げるべきである。しかしながら前記安定性の向上を図るためには、前述したように中空糸膜表面の脂溶性ビタミンの存在量を中空糸膜1gあたり0.5mg以上25mg以下にした上で、35質量%以上の親水性高分子が必要である。脂溶性ビタミンが存在していても親水性高分子の酸化劣化は一部進行してしまうため、ある一定量以上の初期存在量が必要なためである。
さらに脂溶性ビタミンの存在は高温雰囲気下での長期保管によって生じる親水性高分子の酸化劣化を抑制し、結果として透水性能の変化を予防することにも寄与する。
加えて、親水性高分子の含有量Aもまた前記安定性に影響を与える。本実施形態の中空糸膜の骨格はポリスルホン系樹脂と親水性高分子の複合体を構成要素としているが、耐熱性の高いポリスルホン系樹脂と異なり、吸湿した親水性高分子の耐熱性は低い。このため含有量Aが高いと過酷環境下において膜構造が変形を受けて透過性能が劣化する可能性がある。これを防ぐために含有率Aは10質量%以下とする。
ここで、透水性能の安定性は、一定期間の加熱によるモデル試験前後の血液処理装置の透水量、具体的には、限外ろ過率(UFR)の変化率で判断できる。この限外ろ過率の変化率が±10%以内であれば、優れた安定性を有すると見なせるが、それ以上の変化率である場合、臨床上許容し難い溶質除去性能の変化を生じる可能性がある。この観点から、優れた安定性を有する中空糸膜は、高温雰囲気下での長期保管を経ても、所望の透過性能を維持することができる。
よって、中空糸膜の透過性能の経時安定性、過酷環境下での保管による透過性能安定性のために、中空糸膜表面の脂溶性ビタミン存在量は中空糸膜1gあたり0.5mg以上であることが必要であり、好ましくは1.0mg以上、より好ましくは1.5mg以上である。さらには親水性高分子の存在率Bが35質量%以上とする。
【0061】
(プライミングにおけるエアー残量)
一般に血液処理用中空糸膜を内包する乾燥状態の中空糸膜型血液処理装置を使用前に生理食塩水などを通液して膜表面を湿潤状態にする、プライミング操作において、中空部のエアーが抜けないトラブルが発生する可能性がある。
残存するエアー量、すなわちエアー残量が数mL程度では実用上問題が無いが、5mLを超えると血液チャンバーを超えて患者の体内にエアーを送り込んでしまう危険がある。これは中空糸膜の水濡れ性不良によるものであり、常識的に考えれば中空糸膜の内表面の親水性高分子の存在率Bを増加させることにより水濡れ性の向上効果が得られると考えられる。
しかしながら、本実施形態の脂溶性ビタミンを含有する中空糸膜においては、中空糸膜の内表面における親水性高分子の存在率Bが50質量%を超えるとプライミング時のエアー残量が急激に増大する。これは必ずしも明らかになっていないが、過剰な親水性高分子が膜状となって中空糸膜の中空部をふさぎ、低圧力や低流速下では、ふさがれた当該中空糸膜にプライミング液が流れなくなってしまい、エアー溜りが生じるためと考えられる。
従って、中空糸膜の内表面における親水性高分子の存在率は、35質量%以上50質量%以下であるものとし、好ましくは39質量%以上50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以上50質量%以下である。なお、エアー残量の具体的な評価方法は実施例にて詳述する。
【0062】
(中空糸膜からの溶出)
中空糸膜を使用するに当たり、血液への中空糸膜からの溶出は、中空糸膜を使用する際に生体に悪影響を与えるおそれがある。
水系媒体である血液への溶出はそのほとんどが親水性高分子の量に由来する。このため、中空糸膜全体の親水性高分子の含有率Aや内表面における親水性高分子の存在率Bを低く抑える必要がある。
一方で特に前記親水性高分子の含有率Aは低すぎると、後コーティングにより追加される親水性高分子の固定が阻害されるため、前記親水性高分子の含有率Aは、ある一定量以上の値が必要である。
また、親水性高分子は滅菌時の放射線照射により架橋されて、血液への中空糸膜からの溶出が抑えられる反面、放射線、あるいは放射線により生じたラジカル種による解重合を受けて溶出が促進される可能性もある。
一方、脂溶性ビタミンを混合させることにより、前記親水性高分子の放射線による解重合を抑制する効果があるため、これを適正な量で用いることが必要である。
これらの観点から、中空糸膜の全表面に存在する脂溶性ビタミン量は膜1gあたり0.5g以上25mg以下とし、中空糸膜全体の親水性高分子の含有率Aは3質量%以上10質量%以下とし、中空糸膜の内表面における親水性高分子の存在率Bは50質量%以下とする。
なお、中空糸膜の溶出は例えば、以下の方法により評価できる。
すなわち、プライミングを行った中空糸膜型血液処理装置を解体して取り出した中空糸膜を70℃の純水に浸漬し、1時間抽出し、抽出液の350〜220nmのUVスペクトルの最大吸収を示す吸光度をもって溶出物の量の代用指数とすることができる。
【0063】
(中空糸膜のタフネス)
中空糸膜は使用に際し、容器に収納されてモジュール形態で用いられるが、機械的強度が十分でないとモジュール製造、あるいは取り扱いの際に膜の破壊が生じる危険性がある。
機械的強度は引っ張り試験から得られるタフネスで表すことができる。具体的には、中空糸膜1本あたり1000gf・%のタフネスがあれば実用上十分である。
なお、本明細書中におけるタフネスとは、破断強力(gf)と伸度(%)とを掛け合わせたものであり、測定方法については実施例の分析方法にて詳しく説明する。
中空糸膜の強度はポリスルホン系樹脂(PSf)が担っており、共存する親水性高分子は強度の観点からは、多く含有することは好ましくなく、過剰な親水性高分子分率は膜強度の急激な低下の原因となる。このため中空糸膜全体における親水性高分子の含有率Aは10質量%以下であることが必要であり、好ましく9質量%以下、より好ましくは8質量%以下である。
【0064】
(血液処理用中空糸膜の、硝酸イオンの含有量)
本実施形態の血液処理用中空糸膜は、1ppm以上8ppm以下の硝酸イオンを含有することが好ましい。
親水性高分子としてポリビニルピロリドン等の窒素原子を含む高分子を用いた場合、ドライ状態で放射線滅菌処理することによって、分離膜内に硝酸イオンが発生し、結果として、血液処理用中空糸膜は、硝酸イオン成分を含有することとなる。
硝酸イオンの含有量は、窒素原子を含む高分子が多いほど、あるいは放射線照射量が多いほど大きいことは自明である。
しかしながら本実施形態の血液処理用中空糸膜は、血液処理膜として一般的な放射線滅菌線量である15〜50kGyの範囲において、脂溶性ビタミンによる適度な抗酸化作用、さらに、
図6に示した親水性高分子と脂溶性ビタミンの適切な配置により、脂溶性ビタミンが存在しない場合と比べて比較的低めに、かつ再現性良く硝酸イオン存在量が制御されている。
なお、本実施形態の血液処理用中空糸膜においては、硝酸イオンは硝酸の形で存在していると考えられる。
硝酸が過度に存在すると酸化作用等の、血液処理用中空糸膜の変質を促進するので好ましくない。
一方で適度な量の硝酸の存在により、血液適合性(実施例におけるLDH)が向上し、プライミング容易性(実施例におけるエアー残量)が向上する。これは、硝酸の存在は親水性高分子の吸湿性を増加させ、親水性の向上をもたらす一方で脂溶性ビタミンのフェノール性水酸基の解離を抑制して疎水性を向上させるためであると考えられる。
この結果、
図6に示すように、親水性高分子と脂溶性ビタミンの親水−疎水反発を増大させて、血液処理用中空糸膜が、より水濡れしやすい状態になり、血液適合性とプライミング容易性が向上する。
上述したように、親水性高分子の吸湿性を増加させ、親水性の向上をもたらし、かつ脂溶性ビタミンのフェノール性水酸基の解離を抑制して疎水性を向上させるという効果を発揮し、且つ悪影響を及ぼさない硝酸イオン成分の範囲は、その濃度として1ppm以上8ppm以下であることが好ましく、2ppm以上6ppm以下であることがより好ましい。
この範囲は上述したように、本実施形態の、親水性高分子とポリスルホン系樹脂と脂溶性ビタミンとを含む血液処理用中空糸膜であって、中空糸膜全体における親水性高分子及びポリスルホン系樹脂の合計質量に対する親水性高分子の含有率Aが3質量%以上10質量%以下であり、中空糸膜の内部表面における親水性高分子及びポリスルホン系樹脂の合計質量に対する親水性高分子の存在率Bが35質量%以上50質量%以下であり、中空糸膜の全ての表面における脂溶性ビタミンの存在量が中空糸膜1gあたり0.5mg以上25mg以下であることにより保証される。
本実施形態において、硝酸イオンの含有率は、以下の実施例に記載する方法により測定することができる。
【0065】
〔血液処理用中空糸膜、中空糸膜型血液処理装置の製造方法〕
本実施形態の血液処理用中空糸膜、中空糸膜型血液処理装置の製造方法について説明する。
(血液処理用中空糸膜の製造工程)
血液処理用中空糸膜は、
図9のフローチャートに示すように、紡糸原液調製工程、内部凝固液調製工程、紡糸工程、凝固工程、水洗工程、乾燥工程、巻取工程、及び製束・切断工程を経て製造できる。
これらの各工程については、
図10を参照しながら詳細に説明する。
【0066】
(紡糸原液調製工程)
紡糸原液調製工程では、ポリスルホン系樹脂と親水性高分子とを溶媒で溶解し、紡糸原液231を調製する。親水性高分子としては、分子量が300,000以上のものを用いることが好ましく、850,000以上のものを用いることがより好ましい。親水性高分子の中でも、ポリビニルピロリドンを用いることが特に好ましい。溶媒としては、ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられる。
【0067】
紡糸原液に親水性高分子を添加する場合、親水性高分子が、分子量300,0000以上であるときは、親水性高分子の量はポリスルホン系樹脂に対する混和率として10質量%〜30質量%とすることが好ましく、14質量%〜27質量%とすることがより好ましく、15質量%〜26質量%とすることがさらに好ましく、16質量%〜25質量%とすることが特に好ましい。
【0068】
(内部凝固液調製工程)
内部凝固液調製工程では、ポリスルホン系樹脂の溶媒と、非溶媒の混合物を調整して内部凝固液232を調製する。溶媒としてはDMAC、NMP、DMSOなどが、非溶媒としては水やアルコール等があげられる。上述した紡糸原液の組成や凝固条件などを適切に調整することによっても、親水性高分子の存在率Bが特定範囲に制限された本実施形態の中空糸膜を得ることができる。
【0069】
(紡糸工程)
紡糸工程では、
図10に示すように、2重の管構造を有する環状スリット口金233の外側の管から上記紡糸原液を吐出すると同時に、内部凝固液を内側の管から吐出して紡糸する。押し出された紡糸原液を、例えば、空気中において、5cmから1mの距離を走行させた後、凝固浴234に浸漬する。
押し出された紡糸原液は、凝固浴234に浸漬される前に、充分に凝固していることが好ましい。なお、所望の膜厚及び内径を有する中空糸膜を得るには、紡糸原液231及び内部凝固液232の吐出量を適宜調製すればよい。
【0070】
(凝固工程)
環状スリット口金233より押し出された紡糸原液を凝固浴234中に浸漬する。
押し出された紡糸原液をより充分に凝固するとともに、内部凝固液を充分に溶出させる観点から、凝固浴には、40℃〜70℃の水を用いるとよい。押し出された紡糸原液の浸漬速度は10cm/分〜100cm/分であることが好ましい。
【0071】
(水洗、乾燥、巻取工程)
凝固浴へ浸漬した後の中空糸膜230を、必要に応じて水洗浴235中で洗浄した後、例えば、内部の温度が100℃〜180℃に設定された乾燥機236内で乾燥し、巻取ローラ237にて巻取りを行う。中空糸膜の中空構造は、凝固工程や水洗工程において、水等により内部凝固液のみが溶出されることによって形成される。こうして得られた中空糸膜230は、未洗浄の残溶剤を除去するためにさらに温水等で洗浄してもよく、必要に応じてグリセリン等の孔径保持剤を付着させて乾燥することもできる。
【0072】
(製束、切断工程)
巻取工程後、得られた中空糸膜の束を切断する。このようにして複数の中空糸膜からなる中空糸膜束238を製造することができる。
【0073】
本実施形態の血液処理用中空糸膜は、上述したように、公知の乾湿式製膜技術を利用することにより製造できる。
前記紡糸原液の調製工程においては、親水性高分子の含有率Aを3質量%以上10質量%以下に調整するためにポリスルホン系高分子と親水性高分子の仕込み量を調整する。
紡糸原液における共通溶媒としては、上記の他、スルホラン、ジオキサン等の溶媒、あるいは上記溶媒を2種類以上混合した溶媒等が挙げられる。なお、目的とする中空糸膜の孔径制御のため、紡糸原液には水等の添加物を加えてもよい。
【0074】
中空糸膜を製膜する工程においては、前記2重の管構造を有する環状スリット口金233としてチューブインオリフィス型の紡糸口金を用い、紡糸口金のオリフィスから紡糸原液を、該紡糸原液を凝固させるための中空内液と同時に、チューブから空中に吐出させる。 中空内液としては、水、又は水を主体とした凝固液が使用でき、目的とする中空糸膜の透過性能に応じてその組成等を決定すればよい。一般的には、紡糸原液に使用した溶剤と水との混合溶液が好適に使用される。例えば、0〜65質量%のDMAC水溶液などが用いられる。さらに中空内液に親水性高分子を添加して膜表面の親水性高分子の存在量を調整することもできる。
紡糸口金から中空内液とともに吐出された紡糸原液は、空走部を走行させ、紡糸口金下部に設置した水を主体とする凝固浴234中へ導入、浸漬して凝固を完了させ、上述したように、水洗、乾燥、巻取工程を経て中空糸膜の束を得る。また、洗浄工程後に巻き取りを行い、乾燥処理を行い、中空糸膜束を得てもよい。
【0075】
(中空糸膜型血液処理装置の製造工程)
本実施形態の中空糸膜型血液処理装置は、上述した血液処理用中空糸膜の束を被処理液である所定の流体の出入口を有する筒状の容器に挿入し、両束端にポリウレタン等のポッティング剤を注入してポッティング層を形成して両端をシールし、その後、硬化後の余分なポッティング剤を切断除去して端面を開口させ、流体の出入口を持つヘッダーを取り付けることにより製造できる。
さらにその後、本実施形態の中空糸膜型処理装置においては、親水性高分子の含有率A、親水性高分子の存在率B、脂溶性ビタミンの存在量を所定の範囲に制御するために後述する通液工程を実施し、その後さらに溶媒の乾燥除去工程、放射線滅菌処理工程を実施する。
【0076】
<通液工程>
前記中空糸膜の血液流通面に、脂溶性ビタミンと親水性高分子との混合溶液(コーティング液)を通液させ、前記脂溶性ビタミンの、前記中空糸膜の全表面における存在量が、中空糸膜1gあたり0.5mg以上25mg以下、中空糸膜の内表面における前記親水性高分子の存在率Bが35質量%以上50質量%、中空糸膜全体における前記親水性高分子の含有率Aが3質量%以上10質量%以下となるように制御する。
コーティング液の付着率を制御する方法としては、混合溶液の濃度を調整する方法、通液して膜に接触させる際の接触時間や注入圧力あるいは温度を変えることにより浸透量を調整する方法、混合溶液を付着させた後にエアブロー等で溶液の脱液率を調整する方法等、適宜選択ないし組み合わせて用いればよい。
上記方法により脂溶性ビタミンの存在量は特に問題なく制御できる一方で、親水性高分子の固定化はより慎重な条件を要する。即ち、単に親水性高分子溶液をコーティングしただけでは元からあった親水性高分子と追加の親水性高分子の絡み合いが不十分なためか、本発明の効果を奏するに必要な中空糸膜の内表面における親水性高分子の存在率Bを達成できない。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、以下の方法が有用であることを見出した。
第一の方法として、脂溶性ビタミンと親水性高分子との混合溶液を通液させる前に100〜40%程度のアルコール水溶液等を通液させる。
第二の方法として、脂溶性ビタミンと親水性高分子との混合溶液として65%以上のアルコール水溶液を用いる。
第三の方法として、膜と接触させる脂溶性ビタミンと親水性高分子との混合溶液の温度を比較的高温、例えば40〜70℃の範囲にする。
これらの方法はいずれも元からある親水性高分子を膨潤させて、追加される親水性高分子と絡み合いやすくする効果がある。
以上の方法は単独で採用してもよいし、複数を組み合わせてもよい。
<溶媒の乾燥除去工程>
前記通液工程で用いた溶液の溶媒を除去する乾燥除去工程においては、エアーや窒素等のガスを通気したり、真空乾燥したりすればよく、特に方法は限定されない。
また、その際の温度も特に限定されない。
<放射線滅菌処理工程>
上述した中空糸膜型血液処理装置に対して、放射線を照射し、滅菌処理を施す。
放射線滅菌法には、電子線、ガンマ線、エックス線等を用いることができるが、いずれを用いてもよい。
放射線の照射線量は、γ線や電子線の場合は本実施形態においては15〜50kGyであるが、20〜40kGyの線量範囲で照射することがより好ましい。このような条件下で放射線滅菌することにより、中空糸膜を構成する親水性高分子は部分架橋され、良好な血液適合性を維持したまま親水性高分子の溶出を抑制することができる。
【実施例】
【0077】
以下、具体的な実施例と、これとの比較例を挙げて説明するが、本発明は、以下の実施
例に限定されるものではない。
先ず、実施例に用いた各種測定方法について説明する。
【0078】
〔中空糸膜の全表面に存在する脂溶性ビタミン量〕
中空糸膜の全表面に存在する脂溶性ビタミンの存在量の具体的な測定方法について述べる。
中空糸膜型血液処理装置を分解して中空糸膜を採取し、水洗した後、40℃で真空乾燥した。
乾燥後の中空糸膜4gをガラス瓶に秤取し、1質量%のポリエチレングリコール−t−オクチルエーテル水溶液を80mL加え、室温で60分間、超音波振動を加えながら、脂溶性ビタミンの抽出を行った。
定量操作は、液体クロマトグラフ法により行い、脂溶性ビタミン標準溶液のピーク面積から得た検量線を用いて、抽出液の脂溶性ビタミン量を求めた。
すなわち、高速液体クロマトグラフ装置(ポンプ:日本分光PU−1580、検出器:島津RID−6A、オートインジェクター:島津SIL−6B、データ処理:東ソーGPC−8020、カラムオーブン:GL Sciences556)に、カラム(Shodex Asahipak社製 ODP−506E packed column for HPLC)を取り付け、カラム温度40℃において、移動相である高速液体クロマトグラフィー用メタノールを流量1mL/minで通液し、紫外部の吸収ピークの面積から脂溶性ビタミン濃度を求めた。
この濃度から、抽出効率を100%として、中空糸膜の全表面に存在する脂溶性ビタミンの質量(mg/g)を求めた。
なお、部分酸化した脂溶性ビタミンも中空糸膜の全表面に存在する脂溶性ビタミン量に含めた。このため、部分酸化した脂溶性ビタミン量を定めるべく、予め検量線作成に用いる脂溶性ビタミンを空気中で50kGyの放射線に当て、面積計算に用いるピーク群を事前に求めておいた。
【0079】
〔血液処理用中空糸膜全体における親水性高分子の、親水性高分子とポリスルホン系樹脂の合計質量に対する質量の割合(含有率A)〕
血液処理用中空糸膜全体における親水性高分子の、親水性高分子とポリスルホン計樹脂の合計質量に対する質量の割合:含有率A(下記表1、2においては、中空糸膜全体の親水性高分子の含有率Aと記載する。)は、下記のようにして求めた。
中空糸膜を試料濃度3質量%で、重クロロホルム(ISOTEC社製)に溶解し、ガラスウールで濾過し、この試料を核磁気共鳴装置:Avance600(ブルカー・バイオスピン株式会社製)を用いて室温で測定した。
観測周波数は600MHz、化学シフト基準はTMS(=0.00ppm)とした。
得られたNMRチャートからポリスルホン系樹脂に特有な基のプロトンに由来するピークの積分強度と、親水性高分子に特有な基のプロトンに由来するピークの積分強度とから両化合物のモル比を求め、それを質量比に変換し、中空糸膜全体における親水性高分子の、親水性高分子とポリスルホン系樹脂の合計質量に対する質量の割合を算出した。
【0080】
〔血液処理用中空糸膜の内表面における親水性高分子及びポリスルホン系樹脂の合計質量に対する親水性高分子の質量の割合(存在率B)〕
血液処理用中空糸膜の内部表面における親水性高分子及びポリスルホン系樹脂の合計質量に対する親水性高分子の質量の割合:存在率B(下記表1、2においては、中空糸膜の内表面における親水性高分子の存在率(B)と記載する。)は、下記のようにして求めた。
中空糸型血液処理装置を解体して中空糸膜を取り出した。
中空糸膜を紐で縛って50本×20cm程度の束とし、蒸留水を張ったバットに一晩浸漬した。なお、バットの蒸留水は常時新鮮な蒸留水を補給し、オーバーフローさせた。
中空糸膜の束を取り出し、5cmに切断し、−40℃のフリーザーに入れて凍結させた。0.3〜0.4torr程度の真空度にて一晩の間、凍結乾燥を行った。乾燥した中空糸膜を縦方向に切り開いて内面を露出させ、両面テープ上に数本並べたものを試料とした。測定は、X線光電子分光装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、ESCALAB250)を用い、以下の条件にて行った。
測定条件
励起源:mono.AlKα 15kV×10mA
取込領域
Survey scan:0〜1,100eV
Narrow scan:C1s、O1s、N1s、S2p
PassEnergy :100eV
得られたNarrow Scanスペクトルの面積強度から装置のライブラリ相対感度係数を用いて元素濃度を求め定量計算した。用いた相対感度係数は、C1s:0.296、O1s:0.711、S2p:0.666、N1s:0.477である。
以下、一例としてポリスルホン系樹脂として上記式(1)に示すポリスルホンを、親水性高分子としてポリビニルピロリドンを用いた中空糸膜の場合で説明する。
測定により得られたS2pはポリスルホンに由来し、N1sはポリビニルピロリドンに由来する。ポリスルホンの繰り返し単位の式量は442であり、ポリビニルピロリドンの繰り返し単位の式量は111である。S2pの元素濃度(Atomic%)をS、N1sの元素濃度(Atomic%)をNとしたときに、中空糸膜の内表面におけるポリビニルピロリドンの存在率Bは以下の式により求めることができる。
【0081】
【数2】
【0082】
さらにポリスルホン系樹脂として上記式(1)に示すポリスルホンを、親水性高分子としてポリビニルピロリドン及びポリエチレングリコールを用いた中空糸膜の場合の、中空糸膜の内表面における親水性高分子、すなわちポリビニルピロリドンとポリエチレングリコールの合計の存在率について説明する。
上述した親水性高分子としてポリビニルピロリドンのみを用いた中空糸膜の場合と同様にX線光電子分光装置を用い、元素濃度を求め定量計算を行った。
測定により得られたS2pはポリスルホンに由来し、N1sはポリビニルピロリドンに由来し、O1sはポリスルホン繰り返し単位中の4つの酸素原子とポリビニルピロリドン繰り返し単位中の1つの酸素原子とポリエチレングリコール繰り返し単位中の1つの酸素原子に由来する。ポリスルホンの繰り返し単位の式量は442であり、ポリビニルピロリドンの繰り返し単位の式量は111であり、ポリエチレングリコールの繰り返し単位の式量は44である。S2pの元素濃度(Atomic%)をS、N1sの元素濃度(Atomic%)をN、O1sの元素濃度(Atomic%)をOとしたときに、中空糸膜の内表面における親水性高分子=ポリビニルピロリドン+ポリエチレングリコールの存在率Bは以下の式により求めることができる。
【0083】
【数3】
【0084】
〔抗酸化能力〕
中空糸膜型血液処理装置の抗酸化能力について、以下の方法により測定した。
先ず、塩化第二鉄6水和物を純水に溶解し、0.3w/v%(溶液100mL中の溶質の量(g))水溶液を調製した。
中空糸膜型血液処理装置を分解して中空糸膜を採取し、水洗した後、40℃で真空乾燥した。
乾燥後の中空糸膜1gと塩化第二鉄水溶液20mLとをガラス瓶に秤取し、60mmHgで10分間脱泡した後、振とう下で30℃×4時間インキュベートした(中空糸膜表面に存在する脂溶性ビタミンが鉄(III)イオンを還元し、鉄(II)が生じた。)。
インキュベートした水溶液を2.6mL、エタノール0.7mL、別途調製した0.5w/v%の2,2’−ビピリジルエタノール水溶液0.7mLを混合し、振とう下で30℃×30分間インキュベートした(鉄(II)とビピリジルとが錯体を形成し、呈色する)。
分光計を用いて、呈色した液の520nmにおける吸光度を測定した。
中空糸膜の代わりに、濃度既知の脂溶性ビタミンエタノール溶液を用いて、同様のインキュベーション、呈色反応、吸光度の測定を行って、検量線を作成し、中空糸膜1gが発現する抗酸化能力を、脂溶性ビタミンの質量相当値として求めた。
中空糸膜1gあたりの中空糸膜表面に存在する、脂溶性ビタミンの質量相当値が0.4mg以上の場合を抗酸化能力が良好であると判断し○、0.4mg未満である場合を抗酸化能力が良好でないと判断して×として評価した。
【0085】
〔乳酸脱水素(LDH)活性の測定〕
中空糸膜の血液適合性は、中空糸膜表面への血小板の付着性で評価し、中空糸膜に付着した血小板に含まれる乳酸脱水素酵素(LDH)の活性を指標として定量化した。
中空糸膜型血液処理装置を分解して採取した血液浄化用中空糸膜を、有効長15cm、膜内表面の面積が50mm
2(内径185μmの中空糸膜なので56フィラメント)となるように両端をエポキシ接着剤で接着してミニモジュールを作製した。
このミニモジュールに対し、生理食塩水(大塚製薬株式会社、大塚生食注)3mLを流速0.6mL/minで中空糸膜の内側に流し、洗浄した(以下、「プライミング」と称す)。
その後、ヘパリン加人血15mLを37℃に温調し、1.2mL/minでの流速でミニモジュール内に4Hr循環した。循環後、生理食塩水によりミニモジュールの内側を10mL、外側を10mLでそれぞれ洗浄した。
洗浄したミニモジュールから56フィラメント、長さ7cmの中空糸膜を採取後、これを細断してLDH測定用のスピッツ管に入れたものを測定用試料とした。
洗浄したミニモジュールから長さ14cmの中空糸膜を全体の半数本採取後、これを細断してLDH測定用のスピッツ管に入れたものを測定用試料とした。
【0086】
次に、燐酸緩衝溶液(PBS)(和光純薬工業(株)製)にTritonX−100(ナカライテスク社製)を溶解して得た0.5容量%のTritonX−100/PBS溶液をLDH測定用のスピッツ管に0.5mL添加後、遠心(2700rpm×5min)して中空糸膜を液中に沈め、振とう抽出を60分間行って中空糸膜に付着した細胞(主に血小板)を破壊し、細胞中のLDHを抽出した。この抽出液を0.05mL分取し、さらに0.6mMのピルビン酸ナトリウム溶液2.7mL、1.277mg/mLのニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)溶液0.3mLを加えて反応させ、さらに37℃で1時間反応させた後に、340nmの吸光度を測定した。同様に血液と反応させていない膜(ブランク)についても吸光度を測定し、下記式(IV)により吸光度の差を算出した。
さらに下記式(IV)で得られた値を、有効膜面積で割った下記式(V)で得られた値によって、LDHを評価した。
本方法では、この減少幅が大きいほどLDH活性が高い、すなわち中空糸膜表面への血小板の付着量が多いことを意味するものとして評価し、このLDH活性が50以下であると血液適合性が良好であると判断して○、50を超えると×と評価した。
Δ340nm=サンプルの60分後吸光度−ブランクの60分後吸光度 ・・・(IV)
LDH=Δ340nm/有効膜面積 ・・・(V)
図11に、中空糸膜の内表面の親水性高分子の存在率B(血液処理用中空糸膜の内部表面における親水性高分子及びポリスルホン系樹脂の合計質量に対する親水性高分子の質量の割合)が35〜50質量%の場合の、中空糸膜の全表面の脂溶性ビタミン量とLDH活性との関係を示した。
図11中、横軸の単位(mg/gHF)は、中空糸膜1gあたりの中空糸膜の全表面に存在する脂溶性ビタミン量(mg)を意味する。
脂溶性ビタミン量が、中空糸膜1gあたり0.5mg以上25mg以下の場合は、LDHが良好であるのに対し、この範囲外の0.5mg未満である0.4mgもしくは25mgを超える27mgの場合は、LDHは良好ではないことが分かった。
図12に、中空糸膜の全表面に存在する脂溶性ビタミン量が膜1gあたり0.5〜25mgの場合の、中空糸膜の内表面における親水性高分子の存在率Bと、LDH活性との関係を示した。中空糸膜の内表面における親水性高分子の存在率Bが35質量%以上の場合、LDHが本発明の目標を満足するのに対し、それ未満では満足できないことがわかった。
【0087】
〔プライミング性の評価(エアー残量の定量)〕
図13に示す構成の実験装置を用いて、プライミング後のエアー残量の測定評価を行った。
図13の実験装置は、生理食塩水入りの容器122、中空糸膜型血液処理装置121と、容器124とを具備している。
中空糸膜型血液処理装置121の中心は、容器122と容器124の水面の中間の位置に合わせて固定されている。
チューブ125として、市販の透析用血液回路を適当な長さに切断したものを用い、容器122から当該チューブ125を介して生理食塩水が中空糸膜型血液処理装置121に送り込まれ、さらに所定のチューブを介して処理液が容器124に送り込まれるようになされている。容器122から容器124の高低差(ヘッド差)126は、100cmとした。
先ず、チューブ125に生理食塩水を充填し、ヘッド差126を利用して容器122から中空糸膜型血液処理装置121を経て容器123に生理食塩水を通じた。最初の処理液が容器123に流れ出てから500mLの生理食塩水をヘッド差による駆動力のみで通液した。
通液開始から生理食塩水が450mL消費されるまでは、中空糸膜型血液処理装置に衝撃や振動を与えずに静置し、最後の50mLを通液している間に軽く殴打して上部ヘッダーに滞留しているエアーのみをチューブに流した。
次にポンプを設置するポイント127にASAHI MEDICAL製ABP−01ポンプを設置し、エアーを排出するために中空糸膜型血液処理装置を殴打、振動を加えつつ600mL/minの流速でエアーが出なくなるまで通液した。
排出されたエアーをメスシリンダーで受け取って読み取り、エアー残量(mL)として記録した。
エアー残量が5mL未満であれば実用上問題ないと判断し○、5mL以上である場合は血液チャンバーを超えて患者の体内にエアーを送り込んでしまう危険があると判断して×として評価した。
【0088】
〔中空糸膜からの溶出物〕
中空糸膜型血液処理装置の中空糸膜の内側流路及び中空糸膜の外側流路を、それぞれ蒸留水1000mL(流量100mL/分)で洗浄し、エアブローにて脱液した。
ついで中空糸膜型血液処理装置を解体して取り出した中空糸膜1.5gを、70℃の純水150mLで1時間抽出した。
抽出液の350nm〜220nmのUVスペクトルを測定し、最大吸収を示す吸光度をもって中空糸膜からの溶出物の量の代用指数とした。
吸光度が0.10未満であれば実用上問題ないと判断して○、0.10以上では×と評価した。
【0089】
〔中空糸膜のタフネス〕
室温20〜25℃、湿度55〜60RH%の室内で、島津製作所製の引っ張り試験機(EZ Test series)を用い、乾燥した20cmの中空糸膜1本を、チャックを用いて固定し、30cm/分の速度で引っ張り、破断したときの応力(gf)を測定した。
また、中空糸膜が破断したときの伸びを、測定前の中空糸膜の長さである20cmで除して100を掛けた値を伸度(%)として求め、以下の式によりタフネスを計算した。
タフネス(gf・%)=破断応力(gf)×伸度(%)
タフネスが1000gf・%以上であれば実用上問題ないと判断して○、1000gf・%未満では×と評価した。
【0090】
〔過酷環境下における透過性能の安定性試験(高温下での保管前後の透過性能の測定)
後述する実施例及び比較例の中空糸膜型血液処理装置(有効膜面積1.5m
2)を、60℃の恒温槽の中で6週間加熱処理した。
加熱処理前後の中空糸膜型血液処理装置の透過性能(限外ろ過率)を、試験液を牛血液から蒸留水に変更した以外は、ISO8637:2004 5.6.3(あるいはJIS T3250:2005 5.6.3)に規定される方法に従って測定した。具体的には以下の方法により測定した。
(1)
図14に示すように試験回路を組み立てた。
ドリップチャンバー140〜142と、圧力調整器131、中空糸膜型血液処理装置132、ろ液回収容器133、試験液リザーバ134、血液ポンプ135、及び廃液回収容器136とを、
図14のように、所定のチューブを用いて連結させた。
ドリップチャンバー140〜142には、それぞれ、血液ノズル入口側圧力計138、血液ノズル出口側圧力計137、及びろ液側圧力計139を、設置した。
連結するチューブは市販の透析用血液回路を適当な長さに切断して流用した。
中空糸膜型血液処理装置132は、縦方向(血液側流路のノズルが上下になる方向)に設置し、回路に連結されていない一方の透析液側流路のノズルは施栓した。
図14中の破線143に示すように、ドリップチャンバー140の液面、ドリップチャンバー141、142の液流入口が中空糸膜型血液処理装置132の中心と同じ高さになるように調整した。
(2)試験液は37℃に保温した蒸留水を用いた。
(3)血液ノズル入りの流量を200mL/分に、TMP(TRANS MEMBRANE PRESSURE:膜間圧力差)が50mmHgとなるように血液ポンプ135と圧力調整器131を調整し、血液回路とろ液の流れを安定させた。
なお、TMPは以下の式により算出した。
TMP={(血液ノズル出口側圧力計137の圧力値)+(血液ノズル入口側圧力計138の圧力値)}/2−(ろ液側圧力計139の圧力値)
(4)1時間あたりのろ液量を計量し、以下の式のより、加熱処理前後の限外ろ過率をそれぞれ求めた。
(限外ろ過率:UFR)=(ろ液量)/TMP (単位:mL/(hr・mmHg))
加熱処理前後におけるUFRの変化率が±10%以内であれば実用上問題ないと判断して○、±10%を超えれば×と評価した。また、加熱処理後のUFRが40mL/(hr・mmHg)を超えていれば高い膜性能を維持できたものと判断して○、それ未満であれば×と評価した。
【0091】
〔中空糸膜に含まれる硝酸イオン濃度の測定〕
試料約1gをサンプリングし、正確に秤量(抽出前の中空糸膜の質量)し、ポリプロポレン製遠心チューブ(IWAKI cat.No.2345−050;旭硝子株式会社)に入れた。
これに、蒸留水(高速液体クロマトグラフ用046−16971;和光純薬株式会社)を50mL添加し、20分間超音波処理(Elmasonic S30H;Pathtech Pty Ltd.)し、以下の条件でイオンクロマトにより、硝酸イオンを定量した。試料なしで同様の操作を行ったものをブランクサンプルとした。
抽出操作後の試料は、室温にて水切りを行った後、60℃×12hrにて真空乾燥を行い、秤量した(抽出後の中空糸膜の質量)。硝酸イオン濃度は、イオンクロマト定量値から抽出後の中空糸膜の質量あたりに換算した。
イオンクロマト測定条件
装置: 東ソー IC−2001
カラム: TSKgel Super IC−AZ
溶離液: 6.3mM NaHCO
3+1.7mM NaCO
3
流速: 0.8mL/min
圧力: 9.0mPa
【0092】
〔実施例1〕
PSf(ソルベイ・アドバンスド・ポリマーズ社製、P−1700)17質量部
PVP(アイ・エス・ピー社製、K−90)4質量部
ジメチルアセトアミド(以下、DMAC)79質量部
からなる均一な紡糸原液を調製した。
ここで、PSfはポリスルホン系樹脂、PVPはポリビニルピロリドンを表す。
【0093】
中空内液には、DMACの42質量%水溶液を用い、紡糸原液とともに、紡糸口金から吐出させた。
その際、乾燥後の膜厚を45μm、内径を185μmに合わせるように紡糸原液及び中空内液の吐出量を調整した。
吐出した紡糸原液を50cm下方に設けた水よりなる60℃の凝固浴に浸漬し、30m/分の速度で凝固工程、水洗工程(水洗処理)を通過させた後に熱風乾燥機に導入し、120℃で2分間乾燥後、さらに160℃で0.5分間の加熱処理を行った後、クリンプを付与したポリスルホン系中空糸膜を巻き取った。
次に、巻き取った10000本の中空糸膜からなる束を、中空糸膜の有効膜面積が1.5m
2となるように設計したプラスチック製筒状容器に装填し、その両端部をウレタン樹脂で接着固定し、両端面を切断して中空糸膜の開口端を形成した。
開口端から2−プロパノール(和光純薬工業(株)製 特級)65質量部と蒸留水(大塚製薬)35質量部からなる水溶液にPVPとα−トコフェロール(和光純薬工業(株)製 特級)をそれぞれ濃度0.05質量%、0.5質量%となるように溶解したコート溶液を40℃に加熱してから中空糸膜内に120mL通液し、0.3MPaのエアーで10秒間フラッシュした。次いで40℃の乾燥空気で1時間乾燥した。乾燥後、両端部にヘッダーキャップを取り付けた。血液流出入側ノズルに栓を施した後、電子線を25kGy照射して有効膜面積1.5m
2の中空糸膜型血液処理装置を得た。
この中空糸膜型血液処理装置における、中空糸膜の全表面における脂溶性ビタミン(α−トコフェロール)の存在量は、中空糸膜1gあたり7mgであり、中空糸膜の内表面における親水性高分子(PVP)の存在率Bは44質量%、中空糸膜全体の親水性高分子(PVP)の含有率Aは3質量%であった。
諸性能を測定した結果を下記表1に示した。
【0094】
〔実施例2〕
前記コート溶液を中空糸膜内に通液する前に、2−プロパノール80質量部と蒸留水20質量部からなる水溶液を120mL通液し、0.3MPaのエアーで10秒間フラッシュした。
さらに前記コート溶液のα−トコフェロール濃度を0.05質量%とした。
それ以外の条件は実施例1と同様として中空糸膜型血液処理装置を得た。
この中空糸膜型血液処理装置における、中空糸膜の全表面における脂溶性ビタミン(α−トコフェロール)の存在量は膜1gあたり0.5mgであり、中空糸膜の内表面における親水性高分子(PVP)の存在率Bは46質量%、中空糸膜全体の親水性高分子(PVP)の含有率Aは3質量%であった。
諸性能を測定した結果を下記表1に示した。
【0095】
〔実施例3〕
前記コート溶液のα−トコフェロール濃度を0.1質量%とした。
それ以外の条件は実施例1と同様として中空糸膜型血液処理装置を得た。
この中空糸膜型血液処理装置における、中空糸膜の全表面における脂溶性ビタミン(α−トコフェロール)の存在量は膜1gあたり1.5mgであり、中空糸膜の内表面における親水性高分子(PVP)の存在率Bは46質量%、中空糸膜全体の親水性高分子(PVP)の含有率Aは3質量%であった。
諸性能を測定した結果を下記表1に示した。
【0096】
〔実施例4〕
前記コート溶液のα−トコフェロール濃度を1.2質量%とした。
さらに電子線25KGyの代わりにガンマ線25KGyを照射した。
それ以外の条件は実施例1と同様として中空糸膜型血液処理装置を得た。
この中空糸膜型血液処理装置における、中空糸膜の全表面における脂溶性ビタミン(α−トコフェロール)の存在量は膜1gあたり1.5mgであり、中空糸膜の内表面における親水性高分子(PVP)の存在率Bは46質量%、中空糸膜全体の親水性高分子(PVP)の含有率Aは3質量%であった。
諸性能を測定した結果を下記表1に示した。
【0097】
〔実施例5〕
前記コート溶液のα−トコフェロール濃度を1.6質量%とした。
さらに電子線を照射する前に血液処理装置の血液出入ノズルから窒素ガスを10分間通じた。それ以外の条件は実施例4と同様として中空糸膜型血液処理装置を得た。
この中空糸膜型血液処理装置における中空糸膜の全表面における脂溶性ビタミン(α−トコフェロール)の存在量は膜1gあたり25mgであり、中空糸膜の内表面における親水性高分子(PVP)の存在率Bは43質量%、中空糸膜全体の親水性高分子(PVP)の含有率Aは3質量%であった。
諸性能を測定した結果を下記表1に示した。
【0098】
〔実施例6〕
前記コート溶液のPVP濃度を0.01質量%とした。
それ以外の条件は実施例1と同様として中空糸膜型血液処理装置を得た。
この中空糸膜型血液処理装置における、中空糸膜の全表面における脂溶性ビタミン(α−トコフェロール)の存在量は膜1gあたり1.5mgであり、中空糸膜の内表面における親水性高分子(PVP)の存在率Bは46質量%、中空糸膜全体の親水性高分子(PVP)の含有率Aは3質量%であった。
諸性能を測定した結果を下記表1に示した。
【0099】
〔実施例7〕
前記コート溶液のPVP濃度を0.02質量%とした。
さらに電子線の照射線量を15kGyとした。
それ以外の条件は実施例1と同様として中空糸膜型血液処理装置を得た。
この中空糸膜型血液処理装置における、中空糸膜の全表面における脂溶性ビタミン(α−トコフェロール)の存在量は膜1gあたり6mgであり、中空糸膜の内表面における親水性高分子(PVP)の存在率Bは39質量%、中空糸膜全体の親水性高分子(PVP)の含有率Aは3質量%であった。
諸性能を測定した結果を下記表1に示した。
【0100】
〔実施例8〕
コート溶液のPVP濃度を0.1質量%とした。
さらに電子線の照射線量を40kGyとした。
それ以外の条件は実施例1と同様として中空糸膜型血液処理装置を得た。
この中空糸膜型血液処理装置における、中空糸膜の全表面における脂溶性ビタミン(α−トコフェロール)の存在量は膜1gあたり6mgであり、中空糸膜の内表面における親水性高分子(PVP)の存在率Bは40質量%、中空糸膜全体の親水性高分子(PVP)の含有率Aは3質量%であった。
諸性能を測定した結果を下記表1に示した。
【0101】
〔実施例9〕
コート溶液のPVP濃度を0.18質量%とした。
さらに電子線の照射線量を50kGyとした。
それ以外の条件は実施例1と同様として中空糸膜型血液処理装置を得た。
この中空糸膜型血液処理装置における、中空糸膜の全表面における脂溶性ビタミン(α−トコフェロール)の存在量は膜1gあたり6mgであり、中空糸膜の内表面における親水性高分子(PVP)の存在率Bは50質量%、中空糸膜全体の親水性高分子(PVP)の含有率Aは3質量%であった。
諸性能を測定した結果を下記表1に示した。
【0102】
〔実施例10〕
紡糸原液のPVP仕込み量を9質量部、ジメチルアセトアミドの仕込み量を74質量部とした。
それ以外の条件は実施例1と同様として中空糸膜型血液処理装置を得た。
この中空糸膜型血液処理装置における、中空糸膜の全表面における脂溶性ビタミン(α−トコフェロール)の存在量は膜1gあたり6mgであり、中空糸膜の内表面における親水性高分子(PVP)の存在率Bは39質量%、中空糸膜全体の親水性高分子(PVP)の含有率Aは10質量%であった。
諸性能を測定した結果を下記表1に示した。
【0103】
〔比較例1〕
前記コート溶液のα−トコフェロール濃度を0.03質量%とした。
それ以外の条件は実施例1と同様として中空糸膜型血液処理装置を得た。
この中空糸膜型血液処理装置における、中空糸膜の全表面における脂溶性ビタミン(α−トコフェロール)の存在量は膜1gあたり0.4mgであり、中空糸膜の内表面における親水性高分子(PVP)の存在率Bは44質量%、中空糸膜全体の親水性高分子(PVP)の含有率Aは3質量%であった。
諸性能を測定した結果を下記表2に示した。
抗酸化能力が低く、LDH活性値が高くて良好な血液適合性が得られず、リーク試験誤検知率が高くて生産性に劣り、過酷条件下における性能安定性が十分でなかった。
【0104】
〔比較例2〕
前記コート溶液のα−トコフェロール濃度を1.8質量%とした。
それ以外の条件は実施例1と同様として中空糸膜型血液処理装置を得た。
この中空糸膜型血液処理装置における、中空糸膜の全表面における脂溶性ビタミン(α−トコフェロール)の存在量は膜1gあたり27mgであり、中空糸膜の内表面における親水性高分子(PVP)の存在率Bは44質量%、中空糸膜全体の親水性高分子(PVP)の含有率Aは3質量%であった。
諸性能を測定した結果を下記表2に示した。
LDH活性値が高くて良好な血液適合性が得られず、リーク試験誤検知率が高くて生産性に劣っていた。
【0105】
〔比較例3〕
前記コート溶液のPVP濃度を0.008質量%とした。
それ以外の条件は実施例1と同様として中空糸膜型血液処理装置を得た。
この中空糸膜型血液処理装置における、中空糸膜の全表面における脂溶性ビタミン(α−トコフェロール)の存在量は膜1gあたり6mgであり、中空糸膜の内表面における親水性高分子(PVP)の存在率Bは34質量%、中空糸膜全体の親水性高分子(PVP)の含有率Aは3質量%であった。
諸性能を測定した結果を下記表2に示した。
LDH活性値が高くて良好な血液適合性が得られず、リーク試験誤検知率が高くて生産性に劣り、過酷条件下における性能安定性が十分でなかった。
【0106】
〔比較例4〕
前記コート溶液のPVP濃度を0.2質量%とした。
それ以外の条件は実施例1と同様として中空糸膜型血液処理装置を得た。
この中空糸膜型血液処理装置における、中空糸膜の全表面における脂溶性ビタミン(α−トコフェロール)の存在量は膜1gあたり6mgであり、中空糸膜の内表面における親水性高分子(PVP)の存在率Bは34質量%、中空糸膜全体の親水性高分子(PVP)の含有率Aは3質量%であった。
諸性能を測定した結果を下記表2に示した。
過酷条件下における性能安定性が十分でなく、プライミング後のエアー残量が過多であって実用上問題があり、溶出物が多くて実用上問題があった。
【0107】
〔比較例5〕
前記コート溶液のPVP濃度を0.1質量%とした。
それ以外の条件は実施例1と同様として中空糸膜型血液処理装置を得た。
この中空糸膜型血液処理装置における、中空糸膜の全表面における脂溶性ビタミン(α−トコフェロール)の存在量は膜1gあたり6mgであり、中空糸膜の内表面における親水性高分子(PVP)の存在率Bは32質量%、中空糸膜全体の親水性高分子(PVP)の含有率Aは2質量%であった。
諸性能を測定した結果を下記表2に示した。
LDH活性値が高くて良好な血液適合性が得られず、リーク試験誤検知率が高くて生産性に劣り、過酷条件下における性能安定性が十分でなく、溶出物が多くて実用上問題があった。
【0108】
〔比較例6〕
紡糸原液のPVP仕込み量を10質量部、ジメチルアセトアミドの仕込み量を73質量部とした。
さらにコート溶液にPVPを添加しなかった。
それ以外の条件は実施例1と同様として中空糸膜型血液処理装置を得た。
この中空糸膜型血液処理装置における、中空糸膜の全表面における脂溶性ビタミン(α−トコフェロール)の存在量は膜1gあたり7mgであり、中空糸膜の内表面における親水性高分子(PVP)の存在率Bは33質量%、中空糸膜全体の親水性高分子(PVP)の含有率Aは12質量%であった。
諸性能を測定した結果を下記表2に示した。
LDH活性値が高くて良好な血液適合性が得られず、リーク試験誤検知率が高くて生産性に劣り、過酷条件下における性能安定性が十分でなく、中空糸膜のタフネスが低くて生産時や輸送時のリーク発生リスクがあり、溶出物が多くて実用上問題があった。
【0109】
〔比較例7〕
前記コート溶液のPVP濃度を0.22質量%とし、α−トコフェロールは添加しなかった。電子線照射量を50kGyとした。
それ以外の条件は実施例1と同様として中空糸膜型血液処理装置を得た。
この中空糸膜型血液処理装置における、中空糸膜の全表面における脂溶性ビタミン(α−トコフェロール)の存在量は膜1gあたり0mgであり、中空糸膜の内表面における親水性高分子(PVP)の存在率Bは60質量%、中空糸膜全体の親水性高分子(PVP)の含有率Aは4質量%であった。
諸性能を測定した結果を下記表2に示した。
抗酸化能力が低く、LDH活性値が高くて良好な血液適合性が得られず、リーク試験誤検知率が高くて生産性に劣り、過酷条件下における性能安定性が十分でなく、プライミング後のエアー残量が過多であって実用上問題があった。
【0110】
〔比較例8〕
PSf18.0質量%、PVP4.3質量%を、ジメチルアセトアミド77.7質量%に溶解して均一な溶液とし、紡糸原液を得た。ここで、紡糸原液中のPSfに対するPVPの混和比率は23.9質量%であった。この紡糸原液を60℃に保ち、ジメチルアセトアミド30質量%と水70質量%の混合溶液からなる内部液とともに、2重環状紡口から吐出させ、0.96mのエアギャップを通過させて75℃の水からなる凝固浴へ浸漬し、80m/分にて巻き取った。この時、紡口から凝固浴までを円筒状の筒で囲み、筒の中に水蒸気を含んだ窒素ガスを流しながら、筒の中の湿度を54.5%、温度を51℃にコントロールした。紡速に対するエアギャップの比率は、0.012m/(m/分)であった。10000本に巻き取った糸束を切断後、束の切断面上方から80℃の熱水シャワーを2時間かけて洗浄することにより膜中の残溶剤を除去し、該膜を、液体の導入および導出用の2本のノズルを有する筒状容器に充填して両端部をウレタン樹脂で包埋後、硬化したウレタン部分を切断して中空糸膜が開口した端部に加工した。この両端部に血液導入(導出)用のノズルを有するヘッダーキャップを装填し中空糸膜型血液処理装置の形状に組み上げた。
次に、IPA57質量%の水溶液にα−トコフェロールを0.5質量%溶解したコート溶液を、中空糸膜型血液処理装置の血液導入ノズルから中空糸膜の内腔部に52秒通液してα−トコフェロールを接触させた。コート溶液の温度は室温と同じ21℃であった。さらにエアフラッシュして内腔部の残液を除去した後、24℃の乾燥空気を30分間通気して溶媒を乾燥除去することにより、α−トコフェロールを被覆した。血液流出入側ノズルに栓を施した後、電子線を25kGy照射して有効膜面積1.5m
2の中空糸膜型血液処理装置を得た。
この中空糸膜型血液処理装置における、中空糸膜の全表面における脂溶性ビタミン(α−トコフェロール)の存在量は膜1gあたり6mgであり、中空糸膜の内表面における親水性高分子(PVP)の存在率Bは33質量%、中空糸膜全体の親水性高分子(PVP)の含有率Aは3質量%であった。
諸性能を測定した結果を下記表2に示した。
LDH活性値が高くて良好な血液適合性が得られず、リーク試験誤検知率が高くて生産性に劣り、過酷条件下における性能安定性が十分でなかった。
【0111】
〔比較例9〕
前記コート溶液のα−トコフェロール濃度を0.05質量%とし、PVPを添加せず、IPA濃度は57質量%とし、温度は21℃で通液を行った。さらにコート溶液を乾燥した後に、開口端から濃度63.1質量%のグリセリン(和光純薬工業(株)製 特級)水溶液を中空糸膜内に120mL通液し、0.3MPaのエアーで10秒間フラッシュした後、両端部にヘッダーキャップを取り付けた。それ以外の条件は実施例1と同様として中空糸膜型血液処理装置を得た。
この中空糸膜型血液処理装置における、中空糸膜の全表面における脂溶性ビタミン(α−トコフェロール)の存在量は膜1gあたり0.5mgであり、中空糸膜の内表面における親水性高分子(PVP)の存在率Bは33質量%、中空糸膜全体の親水性高分子(PVP)の含有率Aは3質量%であった。
諸性能を測定した結果を下記表2に示した。
LDH活性値が高くて良好な血液適合性が得られず、リーク試験誤検知率が高くて生産性に劣り、過酷条件下における性能安定性が十分でなかった。
【0112】
〔比較例10〕
前記コート溶液として濃度63.1質量%のグリセリンを中空糸膜内に120mL通液し、0.3MPaのエアーで10秒間フラッシュした後、両端部にヘッダーキャップを取り付けた。それ以外の条件は実施例1と同様として中空糸膜型血液処理装置を得た。
この中空糸膜型血液処理装置における、中空糸膜の全表面における脂溶性ビタミン(α−トコフェロール)の存在量は膜1gあたり0mgであり、中空糸膜の内表面における親水性高分子(PVP)の存在率Bは33質量%、中空糸膜全体の親水性高分子(PVP)の含有率Aは3質量%であった。
諸性能を測定した結果を下記表2に示した。
抗酸化能力が低く、LDH活性値が高くて良好な血液適合性が得られず、リーク試験誤検知率が高くて生産性に劣り、過酷条件下における性能安定性が十分でなかった。
【0113】
〔比較例11〕
前記コート溶液のPVP濃度を0.01質量%、IPA濃度を57質量%とし、温度を21℃で通液を行った。それ以外の条件は実施例1と同様として中空糸膜型血液処理装置を得た。
この中空糸膜型血液処理装置における、中空糸膜の全表面における脂溶性ビタミン(α−トコフェロール)の存在量は膜1gあたり6mgであり、中空糸膜の内表面における親水性高分子(PVP)の存在率Bは33質量%、中空糸膜全体の親水性高分子(PVP)の含有率Aは3質量%であった。
諸性能を測定した結果を下記表2に示した。
LDH活性値が高くて良好な血液適合性が得られず、リーク試験誤検知率が高くて生産性に劣り、過酷条件下における性能安定性が十分でなかった。
【0114】
〔比較例12〕
紡糸原液のPVP仕込み量を10質量部、ジメチルアセトアミドの仕込み量を73質量部とした。それ以外の条件は実施例1と同様として中空糸膜型血液処理装置を得た。
この中空糸膜型血液処理装置における、中空糸膜の全表面における脂溶性ビタミン(α−トコフェロール)の存在量は膜1gあたり7mgであり、中空糸膜の内表面における親水性高分子(PVP)の存在率Bは47質量%、中空糸膜全体の親水性高分子(PVP)の含有率Aは12質量%であった。
諸性能を測定した結果を下記表2に示した。
過酷条件下における性能安定性が十分でなく、高い膜性能が得られず、中空糸膜のタフネスが低くて生産時や輸送時のリーク発生リスクがあり、溶出物が多くて実用上問題があった。
【0115】
【表1】
【0116】
【表2】
【0117】
表1、表2中、中空糸膜の全表面の脂溶性ビタミンの存在量の単位である「mg/gHF」は、測定対象である中空糸膜1gあたりの全表面の脂溶性ビタミンの質量(mg)を意味する。
表1に示すように、実施例1〜10の中空糸膜型血液処理装置は、いずれも実用上良好な抗酸化性能、血液適合性を有し、リークテストの誤検知率が低くて生産性が高く、プライミング後のエアー残量が十分に少ないことからプライミングが容易であり、タフネスが実用上十分であって中空糸リークのリスクが低く、親水性高分子の溶出が少なくてより安全であることが分かった。
【0118】
本出願は、2011年6月9日に日本国特許庁へ出願された日本特許出願、特願2011−129437、及び2011年7月4日に日本国特許庁に出願された日本特許出願、特願2011−148534に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。