(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5758013
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】気体汚染物を除去するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
B01D 53/14 20060101AFI20150716BHJP
B01D 53/38 20060101ALI20150716BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
B01D53/14 220
B01D53/38 120
B01D53/78ZAB
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-548403(P2013-548403)
(86)(22)【出願日】2011年12月7日
(65)【公表番号】特表2014-501615(P2014-501615A)
(43)【公表日】2014年1月23日
(86)【国際出願番号】US2011063646
(87)【国際公開番号】WO2012094089
(87)【国際公開日】20120712
【審査請求日】2013年9月5日
(31)【優先権主張番号】61/430,280
(32)【優先日】2011年1月6日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/238,534
(32)【優先日】2011年9月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503416353
【氏名又は名称】アルストム テクノロジー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン ウィリアム リースター
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック ヴィッツェ
(72)【発明者】
【氏名】バラス バブラオ
【審査官】
森井 隆信
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭55−009079(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/120527(WO,A2)
【文献】
特開2005−254212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/00−53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流から気体汚染物を除去するための利用される洗浄液を再生するためのシステムであって、
第1の加熱された使用済み洗浄液(164)を形成するための、高温の再生された洗浄液(184)と使用済み洗浄液(138b)の一部(143)との間の熱伝達のための第1の熱交換器(172)と、
第2の加熱された使用済み洗浄液(166)を形成するための、高温の再生された洗浄液(184)と、前記第1の熱交換器(172)からの使用済み洗浄液の一部(164b)との間の熱伝達のための第2の熱交換器(178)と、
使用済み洗浄液の一部、第1の加熱された使用済み洗浄液(164)の一部(164a)および第2の加熱された使用済み洗浄液(166)を受け取るように配置された再生器(162)と、を備え、前記第2の加熱された使用済み洗浄液(166)は、前記第1の使用済み洗浄液(164)よりも高い温度(T3)を有し、前記第1の加熱された使用済み洗浄液(164)は、前記使用済み洗浄液(141)の温度(T1)よりも高い温度(T2)を有し、
前記第1の加熱された使用済み洗浄液(164)の一部(164a)は、前記使用済み洗浄液が再生器(162)に進入するところより、再生器における使用済み洗浄液の流れに関して下流の進入箇所において前記再生器(162)に提供され、
前記第2の加熱された使用済み洗浄液(166)は、前記第1の加熱された使用済み洗浄液(164a)および前記使用済み洗浄液(141)が導入されるところよりも下流の進入箇所において前記再生器(162)へ提供され、
これにより、再生器によって消費されるエネルギの量を減じることを特徴とする、ガス流から気体汚染物を除去するために利用される洗浄液を再生するためのシステム。
【請求項2】
前記再生器(162)から再生された洗浄液を受け取るように配置されたリボイラ(180)を備え、該リボイラ(180)は、再生された洗浄液を加熱して、蒸気および高温の再生された洗浄液(184)を形成するように配置されている、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
気体汚染物を含むガス流(120)を受け取るように配置された吸収装置(130)をさらに備える、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
前記第1の熱交換器(172)から前記高温の再生された洗浄液(184)を受け取り、該高温の再生された洗浄液(184)を冷却し、冷却された再生された洗浄液を形成するように配置された第1の冷却ユニット(186)をさらに備える、請求項3記載のシステム。
【請求項5】
前記吸収装置(130)は、前記冷却された再生された洗浄液を受け取るように配置されている、請求項4記載のシステム。
【請求項6】
前記吸収装置(130)と流体連通した第2の冷却ユニット(142)をさらに備え、該第2の冷却ユニット(142)は、前記吸収装置(130)の第1の引出しレベル(139)から使用済み洗浄液を受け取り、冷却された使用済み洗浄液を前記吸収装置(130)の第1の再導入レベル(146)へ戻し、該第1の再導入レベル(146)は、前記吸収装置(130)における洗浄液の流れに関して前記第1の引出しレベル(139)の上流に位置している、請求項3記載のシステム。
【請求項7】
前記吸収装置(130)は、使用済み洗浄液を前記第2の冷却ユニット(142)に提供するための第2の引出しレベル(148)をさらに備え、該第2の引出しレベル(148)は、前記吸収装置(130)における洗浄液の流れに関して前記第1の引出しレベル(139)の上流に位置している、請求項6記載のシステム。
【請求項8】
前記吸収装置(130)は、固定層カラムである、請求項3記載のシステム。
【請求項9】
前記固定層カラムは、同様の充填材料の複数の吸収セクション(132,134)を有する、請求項8記載のシステム。
【請求項10】
前記固定層カラムは、異なる充填材料の複数の吸収セクション(132,134)を有する、請求項8記載のシステム。
【請求項11】
ガス流から気体汚染物を除去する際に利用される洗浄液を再生する方法であって、
使用済み洗浄液(138b)の第1の部分(141)を再生器へ提供し、
使用済み洗浄液(138b)の第2の部分(143)を第1の熱交換器(172)へ提供し、高温の再生された洗浄液(184)と、前記使用済み洗浄液(138b)の第2の部分(143)との間で熱を伝達し、第1の加熱された使用済み洗浄液(164)を形成し、
該第1の加熱された使用済み洗浄液(164)の第1の部分(164a)を、前記使用済み洗浄液が再生器(162)に進入するところより、再生器(162)における使用済み洗浄液の流れに関して下流の進入箇所において前記再生器(162)へ提供し、
前記第1の加熱された使用済み洗浄液(164)の第2の部分(164b)を、高温の再生された洗浄液(184)と第1の加熱された使用済み洗浄液(164)との間の熱伝達のための第2の熱交換器(178)に提供し、第2の加熱された使用済み洗浄液(166)を形成し、
該第2の加熱された使用済み洗浄液(166)を、前記第1の加熱された使用済み洗浄液(164a)および前記使用済み洗浄液(141)が導入されるところよりも下流の進入箇所において前記再生器(162)へ提供し、該再生器(162)へ提供される前記第2の加熱された使用済み洗浄液(166)は、前記再生器へ提供される第1の加熱された使用済み洗浄液(164)の温度(T2)よりも高い温度(T3)を有し、前記再生器(162)へ提供される前記第1の加熱された使用済み洗浄液(164)は、前記再生器(162)へ提供される使用済み洗浄液(141)の温度(T1)よりも高い温度(T2)を有し、
これにより、前記再生器(162)によって消費されるエネルギ量を減じることを特徴とする、ガス流から気体汚染物を除去する際に利用される洗浄液を再生する方法。
【請求項12】
前記使用済み洗浄液(138b)と、前記第1の加熱された使用済み洗浄液(164)と、前記第2の加熱された使用済み洗浄液(166)とを、前記再生器(162)において蒸気と接触させ、再生された洗浄液(168)を形成する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記再生された洗浄液をリボイラ(180)において加熱し、これにより、高温の再生された洗浄液(184)を形成する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記高温の再生された洗浄液(184)を冷却ユニット(186)へ提供し、冷却された再生された洗浄液(188)を形成し、前記冷却ユニット(186)は前記第1の熱交換器(172)と吸収装置(130)との間に配置されている、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記冷却された再生された洗浄液(188)を前記吸収装置(130)へ提供し、
前記冷却された再生された洗浄液(188)を、気体汚染物を含むガス流(120)と接触させ、これにより、前記ガス流(120)から気体汚染物を除去し、使用済み洗浄液(138)を形成する、請求項14記載の方法。
【請求項16】
再生器(162)によって消費されるエネルギの量を減じる方法であって、
使用済み洗浄液(138b)を複数の部分に分離し、
前記使用済み洗浄液(138b)の第1の部分(141)を再生器(162)へ提供し、該使用済み洗浄液(138b)は第1の温度(T1)を有し、
前記使用済み洗浄液(138b)の第2の部分(143)を加熱し、第2の温度(T2)を有する第1の加熱された使用済み洗浄液(164)を形成し、
前記使用済み洗浄液(138b)の第3の部分(164b)を加熱し、第3の温度(T3)を有する第2の加熱された使用済み洗浄液(166)を形成し、
その際、T1<T2<T3の温度分布が維持されており、
前記第1の加熱された使用済み洗浄液(164a)を、前記使用済み洗浄液が再生器(162)に進入するところより、再生器(162)における使用済み洗浄液の流れに関して下流の進入箇所において前記再生器(162)に提供し、
前記第2の加熱された使用済み洗浄液(166)を、前記第1の加熱された使用済み洗浄液(164a)および前記使用済み洗浄液(141)が導入されるところよりも下流の進入箇所において前記再生器(162)へ提供し、
これにより、再生器(162)によって消費されるエネルギの量を減じることを特徴とする、再生器によって消費されるエネルギの量を減じる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願とのクロスリファレンス
本願は、2011年1月6日に出願された米国特許仮出願第61/430280号明細書に対して優先権を主張し、その開示は、本願と矛盾しない程度に、引用によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
背景
1.発明の分野
開示された主体は、ガス流から気体汚染物を除去するための方法およびシステムに関する。
【0003】
2.関連技術の説明
ガス浄化のための慣用の工業技術において、H
2S、CO
2および/またはCOSなどの不純物は、煙道ガス、天然ガス、合成ガスなどのガス流またはその他のガス流から、液体洗浄液における、たとえばアミン化合物を含む液体溶液における吸収によって除去される。
【0004】
使用済み溶液は、その後、通常は流れとの逆流接触により、溶液に存在する不純物を解放するために再生器カラム("再生器"とも称される)において再生される。再生のために必要とされる蒸気は、通常、再生器カラムの底部の近くに配置されたリボイラにおいて、再生された洗浄液を沸騰させることによって製造される。さらに、再生された洗浄液の再沸騰は、洗浄液に存在する不純物のさらなる解放を提供する。
【0005】
上述のような慣用の吸収再生プロセスにおいて、再生されかつ再沸騰された洗浄液は、通常、別の吸収サイクルにおいて再利用される。しかしながら、再沸騰された溶液は、100〜150℃の温度を有する。効率的な吸収を可能にするために、アミン化合物に基づく洗浄液は、通常、吸収の別の過程に送られる前に通常は冷却される。冷却は、慣用的に、吸収プロセスからの使用済み洗浄液との熱交換によって達成される。
【0006】
リボイラによって発生されたエネルギは、再生のためだけに利用されるのではなく、吸収再生プロセスにおける他の位置においても利用される。概して、慣用のガス浄化プロセスのエネルギ要求は、3つのタイプ、すなわち、結合エネルギ、除去エネルギおよび顕熱である。結合エネルギは、不純物と洗浄液との間に形成された化学結合を破壊するために必要とされるのに対し、除去エネルギは、洗浄液から不純物を解放するために必要とされる蒸気の発生のために必要とされる。顕熱は、次いで、再生の前に洗浄液の加熱のために必要とされる。慣用のシステムおよびプロセスにおいて、発生されたエネルギの一部は、たとえば、システム冷却器において損失され、これは、システムにおける特定の位置、たとえば、吸収装置に供給する前に戻り洗浄液を冷却するための、吸収装置入口の近くに配置された冷却器において温度を低下させる。さらに、エネルギは、吸収装置の上部に配置された凝縮器、再生器などにおいて、またプロセスから出る水蒸気の形態で、たいてい、浄化されたCO
2ガスに水蒸気が存在する再生器の上部において損失される。
【0007】
すなわち、ガス流からの汚染物除去、特に洗浄液の再生は、エネルギ集約的なプロセスである。ガス浄化プロセスの異なる部分におけるエネルギ要求の減少は、潜在的に、システムによって要求される全エネルギを減じる。
【0008】
概要
ここに例示された態様によれば、ガス流から気体汚染物を除去するために使用される洗浄液を再生するためのシステムであって、このシステムは、第1の加熱された使用済み洗浄液を形成するための、高温の再生された洗浄液と、使用済み洗浄液との間の熱伝達のための第1の熱交換機と、第2の加熱された使用済み洗浄液を形成するための、高温の再生された洗浄液と、第1の熱交換器からの使用済み洗浄液の少なくとも一部との間の熱伝達のための第2の熱交換機と、使用済み洗浄液、第1の加熱された使用済み洗浄液および第2の加熱された使用済み洗浄液を受け取るように配置された再生器と、を備え、第2の加熱された使用済み洗浄液は、第1の加熱された使用済み洗浄液よりも高い温度を有し、第1の加熱された使用済み洗浄液は、使用済み洗浄液よりも高い温度を有する、ガス流から気体汚染物を除去するために使用される洗浄液を再生するためのシステムが提供される。
【0009】
ここに例示された別の態様によれば、ガス流から気体汚染物を除去する際に使用される洗浄液を再生するための方法であって、この方法は、使用済み洗浄液の第1の部分を再生器へ提供し、第1の熱交換機に使用済み洗浄液の第2の部分を提供し、高温の再生された洗浄液と、使用済み洗浄液の第2の部分との間で熱を伝達し、第1の加熱された使用済み洗浄液を形成し、第1の加熱された使用済み洗浄液の第1の部分を再生器へ提供し、第1の加熱された使用済み洗浄液の第2の部分を、高温の再生された洗浄液と第1の加熱された使用済み洗浄液との間の熱伝達のための第2の熱交換機に提供し、第2の加熱された使用済み洗浄液を形成し、第2の加熱された使用済み洗浄液を再生器へ提供し、再生器へ提供される第2の加熱された使用済み洗浄液は、再生器へ提供される第1の加熱された使用済み洗浄液の温度よりも高い温度を有し、再生器に提供される第1の加熱された使用済み洗浄液は、再生器へ提供される使用済み洗浄液の温度よりも高い温度を有する、ガス流から気体汚染物を除去する際に使用される洗浄液を再生するための方法が提供される。
【0010】
ここに例示された別の態様によれば、再生器によって消費されるエネルギの量を減じる方法であって、この方法は、使用済み洗浄液を複数の部分に分離させ、使用済み洗浄液の第1の部分を再生器に提供し、使用済み洗浄液は第1の温度(T1)を有し、使用済み洗浄液の第2の部分を加熱して、第2の温度(T2)を有する第1の加熱された使用済み洗浄液を形成し、使用済み洗浄液の第3の部分を加熱して、第3の温度(T3)を有する第2の加熱された使用済み洗浄液を形成し、第1及び第2の加熱された使用済み洗浄液を再熱器に提供し、該再熱器において、T1<T2<T3の温度分布が維持され、これにより、再生器によって消費されるエネルギの量を減じる、再生器によって消費されるエネルギの量を減じる方法が提供される。
【0011】
上述の特徴およびその他の特徴は、以下の図面および詳細な説明によって例示される。
【0012】
ここで、典型的な実施の形態である図面を参照し、図面において同じエレメントは同じ符号で示されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】ガス流から気体汚染物を除去するためのシステムの概略図である。
【
図3】ここで説明されるシステムの実証試験に関連したデータを示すグラフである。
【0014】
詳細な説明
図1は、ガス流120から気体汚染物を除去するためのシステム100を示す。ガス流120は、気体汚染物を含むあらゆるガス流であってよく、燃焼源からの煙道ガス流、天然ガス流、合成ガスなどを含むがこれらに限定されない。ガス流120に存在する気体汚染物は、CO
2、H
2Sなどの酸性ガス不純物を含むがこれらに限定されない。
【0015】
ガス流と洗浄液との接触を可能にするように配置された吸収装置130にガス流120が導入される。1つの実施の形態では、吸収装置130は、固定層カラムである。固定層カラムは、同じ又は異なる充填材料の複数のセクションを有してよい。
図1に示したように、吸収装置130は、2つの吸収セクション、すなわち上側吸収セクション132および下側吸収セクション134を有する。吸収装置130は、これに関して制限されない。なぜならば、より多くのまたはより少ない吸収セクションが吸収装置に存在してもよいからである。
【0016】
気体汚染物を含有するガス流120が、進入箇所131において吸収装置130に進入し、吸収装置の長さLに沿って上方へ移動する。
図1に示したように進入箇所131は、吸収装置130の底部133に配置されている。ガス流120が吸収装置130の長さLに沿って上方へ移動しながら、ガス流120は、吸収セクション132,134において洗浄液と接触させられる。洗浄液は、通常、ガス流120と向流接触するように、吸収装置130の長さLに沿って下方へ移動する。
【0017】
1つの実施の形態では、洗浄液は、アミンベースの洗浄液である。アミンベースの洗浄液の例は、モノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン(DEA)、メチルジエタノールアミン(MDEA)、ジイソプロピルアミン(DIPA)およびアミノエトキシエタノール(ジグリコールアミン)などのアミン化合物を含むがこれらに限定されない。工業用プラントにおいてもっとも一般的に使用されるアミン化合物は、アルカノールアミンMEA、DEA、MDEAおよび促進剤、抑制剤などとの慣用のアミンのいくつかの混合物である。アミンベースの洗浄液は、アンモニア化溶液によるCO
2の補足に伴われる化学反応運動を高めるための促進剤をも有してよい。たとえば、促進剤は、アミン(たとえばピペラジン)または酵素(たとえば炭酸脱水酵素またはその類似体)を含んでよく、これらは、溶液の形態であってよいか、または固体または半固体表面において不動化されていてよい。しかしながら、ここで開示されるシステムおよび方法は、吸収/再生スキームを備えるプロセスに伴われるあらゆる溶液に適用されてよいことが理解される。
【0018】
洗浄液の少なくとも一部は、ライン136を介して吸収装置の上部135において吸収装置130に導入され、吸収装置の長さLに沿って下方へ移動し、その際、洗浄液は、吸収セクション132,134においてガス流120と接触する。
【0019】
吸収装置130において、ガス流120に存在する二酸化炭素(CO
2)などの気体汚染物は、洗浄液によって吸収され、これにより、使用済み洗浄液138と、汚染物が減じられたガス流140とを形成する。使用済み洗浄液138は、ガス流120から吸収された汚染物を多く含んでいる。
【0020】
図1に示したように、汚染物が減じられたガス流140は、吸収装置130の上部135から放出される。汚染物が減じられたガス流140は、環境中への放出のために煙突に送られる前に、さらなる処理(図示せず)が行われてよい。汚染物が減じられたガス流140のさらなる処理は、たとえば粒子除去を含んでよい。
【0021】
使用済み洗浄液138の少なくとも一部は、第1の引出しレベル139において吸収装置130から引き出され、出ていく。
図1は、吸収装置130の底部133における、すなわち洗浄液の流れに関して下側吸収セクション134の下流における第1の引出しレベル139を示している。しかしながら、第1の引出しレベルは吸収装置130のあらゆる位置に配置されていてよいと考えられる。
【0022】
第1の引出しレベル139において引き出された使用済み洗浄液138は、再生器において再生されてよく、再生器において、汚染物は使用済み洗浄液から分離され、吸収装置130における再利用のための再生された洗浄液を生じる。
【0023】
さらに
図1を参照すると、第1の引出しレベル139において吸収装置130から出た後、使用済み洗浄液138は、2つの部分、すなわち第1の部分138aと第2の部分138bとに分離される。1つの実施の形態では、使用済み洗浄液138は、2つの等しい部分に分離される。たとえば、使用済み洗浄液138の50%が第1の部分138aを形成するのに対し、使用済み洗浄液138の50%は第2の部分138bを形成する。しかしながら、別の実施の形態では、使用済み洗浄液138は、2つの等しくない部分に分離されることが考えられる。たとえば、使用済み洗浄液138の10%が第1の部分138aを形成するのに対し、使用済み洗浄液の90%が第2の部分138bを形成する。特定の実施の形態では、使用済み洗浄液138の30〜60%が第1の部分138aを形成し、残りの使用済み洗浄液が第2の部分138bを形成する。
【0024】
使用済み洗浄液の第1の部分138aは、吸収装置130と流体連通した冷却ユニット142へ提供される。冷却ユニット142において、使用済み洗浄液138aの温度は減じられ、使用済み洗浄液138aは、冷却された使用済み洗浄液144として吸収装置130へ戻される。冷却された使用済み洗浄液144は、第1の再導入レベル146において吸収装置130へ戻される。冷却された使用済み洗浄液144の第1の再導入レベル146は、吸収装置130における洗浄液の流れに関して、第1の引出しレベル139の上流に配置されている。
【0025】
図1に示したように、吸収装置130は、吸収装置130における洗浄液の流れに関して、上側吸収セクション132の下流でかつ第1の再導入レベル146の上流の位置に配置された第2の引出しレベル148を有する。ガス流120から吸収された汚染物で部分的に飽和させられた使用済み洗浄液150は、第2の引出しレベル148において吸収装置130から引き出され、冷却ユニット142へ提供される。使用済み洗浄液150は、使用済み洗浄液138aと組み合わされ、冷却ユニット142において冷却され、冷却された使用済み洗浄液144の一部として吸収装置へ戻される。
【0026】
使用済み洗浄液138a,150が冷却される温度は、冷却媒体の利用可能性、洗浄液とガス流120に存在する汚染物との反応運動、および吸収セクション132,134において使用される充填材料の特性を含むがこれらに限定されない複数の要因に依存する。1つの実施の形態では、冷却ユニット142は、使用済み洗浄液138a,150の温度を約摂氏40度(40℃)の温度に減じる。
【0027】
冷却された使用済み洗浄液144は、第1の導入レベル146を介して吸収装置130に導入され、下流へ流れ、下側吸収セクション134を通過し、この下側吸収セクションにおいてガス流120と接触する。冷却された使用済み洗浄液144がガス流120と接触すると、洗浄液が使用済み洗浄液138として第1の引出しレベル139において引き出される前に、汚染物がガス流から吸収される。このプロセスは反復されてよい。
【0028】
吸収装置130から引き出された使用済み洗浄液の第2の部分138bは、再生システム160に提供される。再生システム160は、使用済み洗浄液の再生のために使用済み洗浄液を受け取るように配置された再生器162を有する。使用済み洗浄液は、少なくとも3つの部分、すなわち、使用済み洗浄液141、第1の加熱された使用済み洗浄液164bおよび第2の加熱された洗浄液166において再生器162へ提供される。再生器162は、たとえば、固定層カラムまたはトレーを含むカラムなどのカラムであってよい。固定層カラムである場合、再生器162は、同じまたは異なる充填材料を有する複数のセクションを有してよい。
【0029】
再生器162は、使用済み洗浄液から気体汚染物を除去または吸収し(「再生する」)、再生された洗浄液168および汚染物流170を形成する。使用済み洗浄液141,164b、166は、汚染物と洗浄液との間の化学結合を破壊することによって気体汚染物を除去することによって再生される。
【0030】
汚染物流170は、凝縮などのさらなる処理が行われてよいか、または貯蔵設備へ直接に提供されてよい。1つの実施の形態では、使用済み洗浄液141,164b、166は、CO
2ガス流170として再生器162において洗浄液から除去されたCO
2を含み、その後、後で使用するために凝縮および貯蔵される。
【0031】
図1に示したように、吸収装置130からの使用済み洗浄液138bは、2つの部分に分離され、第1の部分141は、洗浄液を加熱または冷却することなく再生器162へ直接に提供されるのに対し、第2の部分143は、熱交換機172へ提供される。熱交換機の例は、シェル・アンド・チューブ熱交換機、およびプレート・アンド・フレーム熱交換機を含むがこれらに限定されない。
【0032】
1つの実施の形態では、使用済み洗浄液138bは2つの等しい部分に分離される。たとえば、使用済み洗浄液138bの50%は、再生器162に提供される第1の部分141を形成するのに対し、使用済み洗浄液138bの50%は、熱交換機172へ提供される第2の部分143を形成する。しかしながら、別の実施の形態では、使用済み洗浄液138bが2つの等しくない部分に分離され、たとえば使用済み洗浄液138bの10%が、再生器162へ提供される第1の部分141を形成するのに対し、使用済み洗浄液の90%が、熱交換機172へ提供される第2の部分143を形成することが考えられる。特定の実施の形態では、使用済み洗浄液138bの1〜10%が、再生器162へ提供される第1の部分141を形成し、残りの使用済み洗浄液138bは、熱交換機172へ提供される第2の部分143を形成する。
【0033】
再生器162へ提供される使用済み洗浄液の第1の部分141は、吸収装置130から引き出された時点で、使用済み洗浄液138の温度と同じかまたはそれよりも低い温度(T1)を有する。通常、再生器162へ提供される使用済み洗浄液141の温度は、40〜60℃である。
【0034】
熱交換機172へ提供される使用済み洗浄液の第2の部分143は、熱エネルギを獲得し、温度が高まり、第1の加熱された使用済み洗浄液164を形成する。1つの実施の形態では、
図1に示したように、第1の加熱された使用済み洗浄液164は、2つの部分164aおよび164bに分離され、第1の部分164aは、使用済み洗浄液が再生器162に進入するところより、再生器における使用済み洗浄液の流れに関して下流の進入箇所において再生器162に提供される。使用済み洗浄液の第2の部分164bは、分離器174に提供される。
【0035】
1つの実施の形態では、第1の加熱された使用済み洗浄液164は、2つの等しい部分に分離され、たとえば、第1の加熱された使用済み洗浄液164の50%は、再生器162へ提供される第1の部分164aを形成するのに対し、第1の加熱された使用済み洗浄液164の50%は、分離器174へ提供される第2の部分164bを形成する。しかしながら、別の実施の形態では、第1の加熱された使用済み洗浄液164は、2つの等しくない部分に分離され、たとえば第1の加熱された使用済み洗浄液164の10%が、再生器162へ提供される第1の部分164aを形成するのに対し、第1の加熱された使用済み洗浄液164の90%は、分離器174へ提供される第2の部分164bを形成する。
【0036】
特定の実施の形態では、第1の加熱された使用済み洗浄液164の30〜60%が、再生器162へ提供される第1の部分164aを形成し、残りは、分離器174へ提供される第2の部分164bを形成する。
【0037】
再生器162へ提供される第1の加熱された使用済み洗浄液164aは、再生器へ提供される使用済み洗浄液141の温度よりも高い温度(T2)を有する。通常、再生器162へ提供される第1の加熱された使用済み洗浄液164aの温度(T2)は、80℃〜100℃である。
【0038】
分離器174は、使用済み洗浄液の第2の部分164bから気体成分(蒸気)176を除去し、使用済み洗浄液を熱交換機178へ提供する。気体成分176は、第1の加熱された使用済み洗浄液164aが再生器に提供されるところに関して下流の進入箇所において再生器162へ提供される。熱交換機178へ提供される使用済み洗浄液164bは、そこで加熱され、第2の加熱された使用済み洗浄液166を形成する。
【0039】
別の実施の形態では、
図2に示したように、第1の加熱された使用済み洗浄液164は、熱交換機172を出た後、2つの部分164aおよび164bに分離される。第1の部分164aは、使用済み洗浄液141が再生器に進入するところの下流の進入箇所において再生器162へ提供され、第2の部分164bは、熱交換機178へ直接に提供され、熱交換機178において加熱されて第2の加熱された使用済み洗浄液166を形成する。
図2に示した配列は、第1の加熱された使用済み洗浄液164から気体成分を除去するための分離器174を有さない。この実施の形態では、簡単な作動のため、および効率的な熱エネルギの利用のため、熱交換機178の出口は、蒸発点、たとえば溶液の泡立ち点まで加熱されてよい。
【0040】
図2において、第1の加熱された使用済み洗浄液164は、2つの等しい部分に分離されてよく、たとえば、第1の加熱された使用済み洗浄液164の50%は、再生器162へ提供される第1の部分164aを形成するのに対し、第1の加熱された使用済み洗浄液164の50%は、熱交換機178へ提供される第2の部分164bを形成する。しかしながら、別の実施の形態では、第1の加熱された使用済み洗浄液164は、2つの等しくない部分に分離され、たとえば、第1の加熱された使用済み洗浄液164の10%が、再生器162へ提供される第1の部分164aを形成するのに対し、第1の加熱された使用済み洗浄液164の90%は、熱交換機178へ提供される第2の部分164bを形成することが考えられる。特定の実施の形態では、第1の加熱される使用済み溶液164の30〜60%は、再生器162へ提供される第1の部分164aを形成し、残りは、熱交換機178へ提供される第2の部分164bを形成する。
【0041】
ここで
図1および
図2の両方を参照すると、第1の加熱された使用済み洗浄液164bの温度は熱交換機178において高められ、これにより、第2の加熱された使用済み洗浄液166を形成する。第2の加熱された使用済み洗浄液166は再生器162へ提供される。再生器162へ提供される第2の加熱された洗浄液166の温度(T3)は、再生器に提供される第1の加熱された使用済み洗浄液164aの温度(T2)よりも高い。第2の加熱された使用済み洗浄液166の温度(T3)は、また、再生器162へ提供される使用済み洗浄液141の温度(T1)よりも高い。1つの実施の形態では、第2の加熱された使用済み洗浄液166の温度(T3)は、110〜150℃である。再生器162へ提供される使用済み洗浄液141,164a,166の温度分布は、T1<T2<T3である。
【0042】
第2の加熱された使用済み洗浄液166は、第1の加熱された使用済み洗浄液164aおよび使用済み洗浄液141が導入されるところよりも下流の進入箇所において再生器162へ提供される。
【0043】
図1および
図2に示したように、再生器162へ提供される第2の加熱された使用済み洗浄液166の温度(T3)は、再生器へ提供される第1の加熱された使用済み洗浄液164aの温度(T2)よりも高く、再生器に提供される第1の加熱された使用済み洗浄液の温度は、再生器へ提供される使用済み洗浄液141の温度(T1)よりも高い(T1<T2<T3)。使用済み洗浄液141,164a,166の温度分布を維持することは、洗浄液から汚染物を除去するために要求されるエネルギ(「除去エネルギ」)の損失を同時に最小限にすることによって、再生器162における熱エネルギの最大限の利用を可能にする。つまり、熱エネルギの最大限の利用は、再生器162のエネルギ消費を減じる。
【0044】
慣用の溶剤ベース気体汚染物捕捉プロセスを行うために要求される再生エネルギは、異なる形式で、すなわち、(1)再生反応を開始するために洗浄液を加熱するために要求されるエネルギ(「顕熱」)、および(2)洗浄液、すなわち溶剤から汚染物を除去するために要求される蒸気エネルギ(「除去エネルギ」)で分配される。
【0045】
溶剤から汚染物を除去するために必要とされるエネルギの理論的な最小量は、溶剤の結合エネルギに設定される。しかしながら、汚染物を除去するために費やされるエネルギは、有効な熱エネルギ利用によって最小限にすることができる。
【0046】
再生器162に沿った温度分布は、温度が、再生が高められる底部において最も高くなっている。以下の式、すなわち、使用済み洗浄液(T1)<第1の加熱された使用済み洗浄液(T2)<第2の加熱された使用済み洗浄液(T3)、を満たす温度分布は、除去エネルギの最小化を促進する。
【0047】
使用済み洗浄液141、第1の加熱された使用済み洗浄液164aおよび第2の加熱された使用済み洗浄液166は、上記のように、再生器において再生され、再生された洗浄液168を形成する。再生された洗浄液168は、再生器162の底部169から引き出され、リボイラ180へ提供される。リボイラ180は、(洗浄液の流れに関して)再生器の下流に配置されており、再生された洗浄液を受け取るように配置されている。
【0048】
リボイラ180は再生された洗浄液168を沸騰させ、蒸気182と、高温の再生された洗浄液184とを形成する。蒸気182は再生器162へ提供され、再生器に存在する使用済み洗浄液141,164a,166からの汚染物の除去を促進する。「高温希薄溶液」とも称される高温の再生された洗浄液184は、ガス流120からの気体汚染物の除去のために吸収装置130へ提供される。
【0049】
高温の再生された洗浄液184は、再利用のために吸収装置130へ直接に提供されてよい。しかしながら、高温の再生された洗浄液184に存在する熱エネルギを利用するために、
図1及び
図2に示したように、高温の再生された洗浄液は熱交換機178へ提供され、そこで、使用済み洗浄液164bと熱を交換する。したがって、熱交換機178を通過した後、高温の再生された洗浄液184は、リボイラ180から出た後の温度と比較して、低下した温度を有する。
【0050】
1つの実施の形態では、高温の再生された洗浄液184は、熱交換機178を通過した後、約100〜140℃の温度を有する。高温の再生された洗浄液184で使用済み洗浄液164bを加熱することは、熱交換機178へ提供される別個の加熱媒体の必要性を排除し、これにより、システム100のコストおよびエネルギ消費を減じる。
【0051】
熱交換機178を通過した後、高温の再生された洗浄液184は熱交換機172へ提供され、そこで、使用済み洗浄液143と熱交換し、第1の加熱された使用済み洗浄液164を形成する。したがって、熱交換機172を通過した後、高温の再生された洗浄液184は、熱交換機178を出た後の温度と比較して、低下した温度を有する。1つの実施の形態では、高温の再生された洗浄液184は、熱交換機172を通過した後、約80〜120℃の温度を有する。
【0052】
高温の再生された洗浄液184と熱交換することによって使用済み洗浄液143を加熱することは、熱交換機172のための別の加熱媒体を排除し、これにより、システム100のコストおよびエネルギ消費を減じる。これは、再生プロセスにおける顕熱として高温の再生された洗浄液184からの熱エネルギを利用することを可能にする。
【0053】
熱交換機172を通過した後、高温の再生された洗浄液184は冷却ユニット186へ提供される。冷却ユニット186は、熱交換機172と吸収装置130との間に配置されており、高温の再生された洗浄液184を受け取り、この高温の再生された洗浄液184の温度を冷却して、冷却された再生された洗浄液188を形成するように配置されている。冷却された再生された洗浄液188は、約25〜50℃の温度を有する。
【0054】
冷却された再生された洗浄液188は、ライン136を介して進入箇所において吸収装置130に提供される。冷却された再生された洗浄液188の進入箇所は、吸収装置130の上部135に配置されている。冷却された再生された洗浄液188はガス流120と接触させられ、ガス流120から気体汚染物を除去し、これにより、吸収および再生のサイクルを反復する。
【0055】
高温の再生された洗浄液184における熱エネルギを利用し、再生器における前記温度分布を維持することにより、システム100の全体的なエネルギ消費は、慣用のシステムと比較して減じられる。
【実施例】
【0056】
実施例1
ここでの説明によるシステムのエネルギ消費を決定するために、
図1に示された概略をシミュレーションするシステムが使用された。シミュレーションは、入口における13〜14モル%のCO
2で作動する煙道ガスから90%のCO
2を除去した。慣用のシステムと比較して、ここに明示されたシステムは、30〜40%少ないエネルギを利用する。シミュレーションの結果は
図3に示されている。
【0057】
そうでないことが明示されない限り、ここに開示された全ての範囲は、包括的であり、その範囲における終点および全ての中間点において組合せ可能である。「第1」、「第2」などの用語は、いかなる順序、量または重要性を示すものではなく、1つの要素を別の要素と区別するために用いられる。ここでの「a」および「an」という用語は、量の限定を示すのではなく、引用されたアイテムの少なくとも1つの存在を示している。「約」によって修正された全ての数字は、そうでないことが明示されない限り、まさにその数値を含んでいる。
【0058】
発明は、様々な典型的な実施の形態を引用して説明されたが、発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更がなされてよく、その要素に均等物が代用されてもよいことは、当業者によって理解されるであろう。したがって、発明は、本発明を実施するために最良の態様として考えられるものとして開示された特定の実施の形態に限定されず、発明は、添付の請求項の範囲に当てはまる全ての実施の形態を含むことが意図されている。