(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
多くの態様および実施形態が以上に記載されているが、それらは例示的なものであり、限定するものではない。本明細書を読めば、本発明の範囲から逸脱することなく他の態様および実施形態が可能であることが、当業者には理解されよう。
【0015】
実施形態のいずれか1つまたはそれ以上における他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および請求項から明らかとなるであろう。詳細な説明では、最初に用語の定義と説明を扱い、その後、光活性層、電子デバイス、そして最後に実施例を扱う。
【0016】
1.用語の定義と説明
以下に説明する実施形態の詳細を扱う前に、一部の用語について定義または説明を行う。
【0017】
「アルキル」という用語は、脂肪族炭化水素に由来する基を意味することを意図する。実施形態によっては、アルキル基は1〜20個の炭素原子を有する。
【0018】
「アリール」という用語は、芳香族炭化水素に由来する基を意味することを意図する。「芳香族化合物」という用語は、非局在パイ電子を有する少なくとも1つの不飽和環状基を含む有機化合物を意味することを意図する。この用語は、炭素原子および水素原子のみを有する芳香族化合物と、環状基中の1つまたは複数の炭素原子が窒素、酸素、硫黄などの別の原子で置換されている複素環式芳香族化合物との両方を含むことを意図する。実施形態によっては、アリール基は4〜30個の炭素原子を有する。
【0019】
「電荷輸送」という用語は、層、物質、部材、または構造を表す場合、そのような層、物質、部材、または構造が、比較的効率的かつ少ない電荷損失で、そのような層、物質、部材、または構造の厚さを通過するそのような電荷の移動を促進することを意味することを意図する。正孔輸送物質は正電荷を促進し;電子輸送物質は負電荷を促進する。発光物質も、ある程度の電荷輸送特性を有する場合があるが、「電荷を輸送する層、物質、部材、または構造」という用語は、主要な機能が発光である層、物質、部材、または構造を含むことを意図しない。
【0020】
「重水素化(されている)」という用語は、少なくとも1つの利用可能なHがDで置換されていることを意味することを意図する。「重水素化類似体」という用語は、1つまたは複数の利用可能な水素が重水素で置換されている化合物または基の構造類似体を意味する。重水素化化合物中または重水素化類似体中、重水素は、天然存在レベルの少なくとも100倍存在する。
【0021】
「ドーパント」という用語は、ホスト物質を含む層中で、その層の電子的特性、あるいは放射線の放出、受容、またはフィルタリングの目標波長を、そのような材料を含まない層の電子的特性、あるいは放射線の放出、受容、またはフィルタリングの波長に対して変化させる物質を意味することを意図する。
【0022】
「電気的活性」という用語は、層または物質に言及している場合、デバイスの動作が電子的に促進される層または物質を指すことを意図する。電気活性物質の例としては、電荷の伝導、注入、輸送または遮断を行う物質(電荷は電子または正孔のいずれかでありうる)、または放射線を発するかまたは電子−正孔ペアの濃度の変化を示す(放射線を受けたとき)物質があるが、これらに限定されない。不活性物質の例としては、平坦化物質、絶縁物質、および環境障壁物質(environmental barrier materials)があるが、これらに限定されない。
【0023】
「エレクトロルミネセンス」という用語は、物質を通過する電流に応答したその物質から光の放出を意味する。「エレクトロルミネセンスの」は、エレクトロルミネセンスが可能な物質を意味する。
【0024】
「発光極大」という用語は、発せられる放射線の最高強度を意味することを意図する。発光極大は、対応する波長を有する。
【0025】
「縮合アリール」という用語は、2つ以上の縮合芳香環を有するアリール基を意味する。
【0026】
「ヘテロ」という接頭語は、1つまたは複数の炭素原子が異なる原子で置換されていることを示す。実施形態によっては、ヘテロ原子は、O、N、S、またはそれらの組み合わせである。
【0027】
「ホスト物質」という用語は、ドーパントが加えられる場合も加えられない場合もある、通常は層の形態である物質を意味することを意図する。ホスト物質は、電子的特性、あるいは放射線を放出、受容、またはフィルタリングする能力を有する場合もあるいは有さない場合もある
【0028】
「層」という用語は、「膜」という用語と同義語的に使用され、目的の領域を覆うコーティングを表す。この用語は大きさによって限定されるものではない。この領域は、デバイス全体と同じくらい大きくても、あるいは実際の表示装置など特定の機能領域と同じくらい小さくても、あるいは単一のサブピクセルと同じくらい小さくても構わない。層および膜は、蒸着、液体付着(連続技法および不連続技法)、および熱転写を含め、従来の任意の付着技法で形成できる。液相付着技法としては、スピンコーティング、グラビアコーティング、カーテンコーティング、浸漬被覆、スロットダイコーティング、吹付け塗り、および連続ノズルコーティング、インクジェット印刷、グラビア印刷、およびスクリーン印刷があるが、これらに限定されない。
【0029】
「有機電子デバイス」またはときにはただの「電子デバイス」という用語は、1種または複数種の有機半導体活性層または有機半導体活性物質を含むデバイスを意味することを意図する。
【0030】
「光活性」という用語は、印加された電圧によって活性化されると発光する物質(発光ダイオード中または化学セル中など)、あるいは、放射エネルギーに応答し、バイアス電圧の印加を使用して、または使用せずに信号を発生する物質(光検出器中など)を意味する。
【0031】
「シロキサン」という用語は、(RO)
3Si−基[ここで、Rは、H、D、C1〜20アルキル、またはフルオロアルキルである]を意味する。
【0032】
「シリル」という用語は、−SiR
3基[ここで、Rは、それぞれの出現において同一または異なっていて、アルキル基またはアリール基である]を意味する。
【0033】
「ヘテロ」という接頭語は、1つまたは複数の炭素原子が異なる原子で置換されていることを示す。実施形態によっては、異なる原子は、N、O、またはSである。「フルオロ」という接頭語は、1つまたは複数の水素原子がフッ素原子で置換されていることを示す。
【0034】
特に記載のない限り、すべての基は非置換であっても置換されていてもよい。特に記載のない限り、すべての基は、可能であれば、直鎖状、分枝状、または環状であってよい。実施形態によっては、置換基は、D、アルキル、アルコキシ、アリール、シリル、またはシロキサンである。
【0035】
本明細書において使用される場合、「含む」(comprises)、「含むこと」(compriing)、「含む」(includes)、「含むこと」(including)、「有する」(has)、「有すること」(having)、またはその他のあらゆる変形の用語は、非排他的な包含を扱うことを意図する。例えば、ある一連の要素を含むプロセス、方法、物品、または装置は、それらの要素にのみに必ずしも限定されるわけではなく、そのようなプロセス、方法、物品、または装置に関して明示されず固有のものでもない他の要素を含むことができる。本発明の対象の別の一実施形態が、特定の特徴または要素から本質的になると記載または説明されるのは、その実施形態において、その実施形態の動作原理または際だった特徴を実質的に変化させる特徴および要素が、その中には存在しない場合である。本発明の対象のさらに別の一実施形態が、特定の特徴または要素からなると記載されるのは、その実施形態において、またはそれらの実質的でない変形において、具体的に記載または説明される特徴または要素のみが存在する場合である。
【0036】
さらに、反対の意味で明記されない限り、「または」は、包含的なまたはを意味するのであって、排他的なまたはを意味するのではない。例えば、条件AまたはBが満たされるのは、Aが真であり(または存在し)Bが偽である(または存在しない)、Aが偽であり(または存在せず)Bが真である(または存在する)、ならびにAおよびBの両方が真である(または存在する)のいずれか1つによってである。
【0037】
また、本明細書に記載する要素および成分を説明するために「a」または「an」が使用される。これは単に便宜的なものであり、本発明の範囲の一般的な意味を提供するために行われている。この記述は、1つまたは少なくとも1つを含むものと読むべきであり、明らかに他の意味となる場合を除けば、単数形は複数形をも含んでいる。
【0038】
元素周期表中の縦列に対応する族の番号は、CRC Handbook of Chemistry and Physics,81
st Edition(2000−2001)に見ることができる「新表記法」(New Notation)の規則を使用している。
【0039】
特に定義されていない限り、本明細書に用いられている技術用語および科学用語はすべて、本発明が関係する技術分野の当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。本明細書に記載する方法および物質と同様または同等の方法および物質を本発明の実施または試験に使用できるが、好適な方法および物質を以下に記載しておく。本明細書で挙げる刊行物、特許出願、特許、および他の文献はすべて、特定の節が引用される場合を除けば、それらの記載内容全体が援用される。矛盾が生じる場合には、定義を含めて本明細書に従うものとする。さらに、そうした物質、方法、および実施例は例示にすぎず、限定することを意図するものではない。
【0040】
本明細書に記載されていない程度の、具体的な物質、処理行為、および回路に関する多くの詳細は従来通りであり、それらについては、有機発光ダイオードディスプレイ、光検出器、光電池、および半導体要素の技術分野の教科書およびその他の情報源中に見ることができる。
【0041】
2.光活性層
多くの従来技術のデバイスでは、光活性層は、1つまたは複数のホスト物質中に分散させた少なくとも1つの発光ドーパント物質を含む。本明細書に記載の光活性層は、単一成分層である。本明細書に記載の単一成分光活性層を有するデバイスは、向上した効率、向上した寿命、および向上した彩度を有することができる。
【0044】
[式中:
R
1〜R
8は、それぞれの出現において同一または異なっていて、H、D、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、シロキサン、およびシリルからなる群から選択され;
Ar
1およびAr
2は、同一または異なっていて、アリール基からなる群から選択され;
Ar
3およびAr
4は、同一または異なっていて、H、D、およびアリール基からなる群から選択される]
を有する化合物から本質的になる。
【0045】
実施形態によっては、式Iを有する化合物は重水素化されている。実施形態によっては、化合物は少なくとも10%が重水素化されている。これは、Hの少なくとも10%がDで置換されていることを意味する。実施形態によっては、化合物は、少なくとも20%が重水素化されており;実施形態によっては、少なくとも30%が重水素化されており;実施形態によっては、少なくとも40%が重水素化されており;実施形態によっては、少なくとも50%が重水素化されており;実施形態によっては、少なくとも60%が重水素化されており;実施形態によっては、少なくとも70%が重水素化されており;実施形態によっては、少なくとも80%が重水素化されており;実施形態によっては、少なくとも90%が重水素化されている。実施形態によっては、化合物は100%が重水素化されている。
【0046】
実施形態によっては、R
1〜R
8の少なくとも1つは、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、シロキサン、およびシリルから選択され、R
1〜R
8の残りは、HおよびDから選択される。
【0047】
実施形態によっては、R
2は、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、シロキサン、およびシリルから選択される。
【0048】
実施形態によっては、R
2は、アルキルおよびアリールから選択される。
【0049】
実施形態によっては、R
2は、重水素化アルキルおよび重水素化アリールから選択される。
【0050】
実施形態によっては、R
2は、少なくとも10%が重水素化されている重水素化アリールから選択される。実施形態によっては、R
2は、少なくとも20%が重水素化されている;実施形態によっては、少なくとも30%が重水素化されている;実施形態によっては、少なくとも40%が重水素化されている;実施形態によっては、少なくとも50%が重水素化されている;実施形態によっては、少なくとも60%が重水素化されている;実施形態によっては、少なくとも70%が重水素化されている;実施形態によっては、少なくとも80%が重水素化されている;実施形態によっては、少なくとも90%が重水素化されている、重水素化アリールから選択される。実施形態によっては、R
2は、100%が重水素化されている重水素化アリールから選択される。
【0051】
式Iの実施形態によっては、Ar
1〜Ar
4の少なくとも1つが重水素化アリールである。
【0052】
実施形態によっては、Ar
3およびAr
4は、Dおよび重水素化アリールから選択される。
【0053】
実施形態によっては、Ar
1およびAr
2は、フェニル、ナフチル、フェナントリル、アントラセニル、カルバゾリル、ジフェニルカルバゾリル、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、およびそれらの重水素化類似体からなる群から選択される。
【0054】
実施形態によっては、Ar
1およびAr
2は、フェニル、ナフチル、およびそれらの重水素化類似体からなる群から選択される。
【0055】
実施形態によっては、Ar
3およびAr
4は、フェニル、ナフチル、フェナントリル、アントラセニル、フェニルナフチレン、ナフチルフェニレン、カルバゾリル、ジフェニルカルバゾリル、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、それらの重水素化類似体、および式II:
【0057】
[式中:
R
9は、それぞれの出現において同一または異なっていて、H、D、アルキル、アルコキシ、シロキサン、およびシリルからなる群から選択されるか、あるいは隣接するR
9基は結合して芳香環を形成してもよく;
mは、それぞれの出現において同一または異なっていて、1〜6の整数である]
を有する基からなる群から選択される。
【0058】
実施形態によっては、Ar
3およびAr
4は、フェニル、ナフチル、フェニルナフチレン、ナフチルフェニレン、それらの重水素化類似体、および式III:
【0060】
[式中、R
9およびmは、式IIに関して前述した定義の通りである]
を有する基からなる群から選択される。実施形態によっては、mは1〜3の整数である。
【0061】
実施形態によっては、Ar
1〜Ar
4の少なくとも1つはヘテロアリール基である。実施形態によっては、ヘテロアリール基は重水素化されている。実施形態によっては、ヘテロアリール基は、カルバゾール、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、およびそれらの重水素化類似体から選択される。
【0062】
上記実施形態のいずれも、互いに排他的とならない限りは、1つまたは複数の他の実施形態と組み合わせることができる。
【0063】
本発明の式Iを有する化合物は、周知のカップリング反応および置換反応で調製できる。重水素化類似化合物は、重水素化前駆体物質を使用した類似の方法で調製することができるし、より一般的には、三塩化アルミニウムまたは塩化エチルアルミニウムなどのルイス酸H/D交換触媒の存在下で非重水素化化合物をd6−ベンゼンなどの重水素化溶媒で処理することによって、あるいは非重水素化化合物をCF
3COOD、DClなどの酸で処理することによって調製することができる。代表的な調製を実施例で示している。重水素化のレベルは、NMR分析によって、および大気圧固体分析プローブ質量分析(ASAP−MS)などの質量分析によって求めることができる。
【0064】
式Iを有する化合物の一部の非限定的な例を以下に示す。
【0072】
[式中、「D/H」は、この原子位置でHまたはDがほぼ等しい確率であることを示す]
【0075】
3.電子デバイス
本明細書に記載の光活性層を有することで恩恵を受けることのできる有機電子デバイスとしては、(1)電気エネルギーを放射線に変換するデバイス(例えば、発光ダイオード、発光ダイオードディスプレイ、ダイオードレーザー、照明器具、または照明パネル)、(2)電子的過程を用いて信号を検出するデバイス(例えば、光検出器、光導電セル、フォトレジスター、光スイッチ、光トランジスタ、光電管、赤外(「IR」)検出器、またはバイオセンサー)、(3)放射線を電気エネルギーに変換するデバイス(たとえば、光起電性デバイスまたは太陽電池)、(4)1つまたは複数の有機半導体層を含む1つまたは複数の電子部品(たとえば、トランジスタまたはダイオード)を含むデバイス、または項目(1)〜(4)のあらゆる組み合わせがあるが、これらに限定されない。
【0076】
実施形態によっては、有機発光デバイスは:
陽極;
正孔輸送層;
光活性層;
電子輸送層、および
陰極を含み;
光活性層が、前述の式Iを有する化合物から本質的になる。
【0077】
実施形態、特定の実施形態、および前述の実施形態の組み合わせによって表される式Iのいずれの化合物もデバイス中に使用できる。
【0078】
有機電子デバイス構造の1つの説明図を
図1に示す。デバイス100は、第1電気接触層である陽極層110と、第2電気接触層である陰極層160と、それらの間にある光活性層140とを有する。陽極の隣には正孔注入層120がある。正孔注入層の隣には、正孔輸送物質を含む正孔輸送層130がある。陰極の隣には、電子輸送物質を含む電子輸送層150があってよい。任意選択で、デバイスでは、陽極110の隣の1つまたは複数の更なる正孔注入層または正孔輸送層(図示せず)及び/または陰極160の隣の1つまたは複数の更なる電子注入層または電子輸送層(図示せず)を使用してよい。
【0079】
層120〜150は、個別にも集合的にも活性層と呼ばれる。
【0080】
実施形態によっては、
図2に示されるように、光活性層はピクセル化される。デバイス200において、層140はピクセルまたはサブピクセル単位141、142、および143に分割され、これらは層全体にわたって繰り返される。ピクセルまたはサブピクセル単位のそれぞれが異なる色を表す。実施形態によっては、サブピクセル単位は赤色、緑色、および青色用である。3つのサブピクセルが図中に示されているが、2つまたは4つ以上のサブピクセル単位を使用してもよい。
【0081】
1つの実施形態では、種々の層の厚さの範囲は以下の通りである:陽極110は500〜5000Åで、1つの実施形態では1000〜2000Åであり;正孔注入層120は50〜3000Åで、1つの実施形態では200〜1000Åであり;正孔輸送層130は50〜2000Åで、1つの実施形態では200〜1000Åであり;光活性層140は10〜2000Åで、1つの実施形態では100〜1000Åであり;層150は50〜2000Åで、1つの実施形態では100〜1000Åであり;陰極160は200〜10000Åで、1つの実施形態では300〜5000Åである。デバイス中の電子−正孔再結合域の場所(したがってデバイスの発光スペクトル)は、各層の相対的厚さによって影響されうる。層の厚さの所望の比率は、使用する物質のまさにその性質によって異なるであろう。
【0082】
デバイス100の用途に応じて、光活性層140は、印加電圧によって活性化される発光層であってよいか(発光ダイオードまたは発光電気化学セルの場合など)、あるいはバイアス印加電圧の有無にかかわりなく放射エネルギーに反応して信号を発生する物質の層(光検出器の場合など)であってよい。光検出器の例としては、光伝導セル、フォトレジスター、光電スイッチ、フォトトランジスター、および光電管、および光起電力セルがあり、これらの用語は、Markus,John,Electronics and Nucleonics Dictionary,470 and 476(McGraw Hill,Inc.1966)に記載されている通りである。
【0083】
a.光活性層
光活性層は、前述の式Iを有する化合物から本質的になる。
【0084】
実施形態によっては、式Iを有する化合物は、濃い青色発光を示す。「濃い青色」は、420〜475nmの発光波長を意味する。これは好都合であり、色座標で濃い純色の青色を示すことができる。
【0085】
実施形態によっては、光活性層は、C.I.E.色度図(Commission Internationale de L’Eclairage,1931)によるy座標が0.10未満である発光色を示す。実施形態によっては、y座標は0.7未満である。x座標は0.135〜0.165の範囲内である。
【0086】
光活性層は、層が得られることが知られている任意の方法によって形成することができる。
【0087】
実施形態によっては、光活性層は、後述のように液体組成物からの液相付着によって形成することができる。
【0088】
実施形態によっては、光活性層は、蒸着によって形成される。
【0089】
b.デバイスの他の層
デバイス中の他の層は、そのような層に有用であることが知られている任意の物質で作ることができる。
【0090】
陽極110は、正の電荷担体を注入するのに特に効率的な電極である。これは、例えば、金属、混合金属、合金、金属酸化物、または混合金属酸化物を含有する物質で作ることができるし、導電性ポリマー、またはそれらの混合物であってもよい。好適な金属としては、11族の金属、4〜6族の金属、および8〜10族の遷移金属がある。陽極を光透過性にする場合、12族、13族、および14族の金属の混合金属酸化物が一般的に使用される。好適な物質の例としては、インジウム−スズ−酸化物(「ITO」).インジウム−亜鉛−酸化物(「IZO」)、アルミニウム−スズ−酸化物(「ATO」)、アルミニウム−亜鉛−酸化物(「AZO」)、およびジルコニウム−スズ−酸化物(「ZTO」)があるが、これらに限定されない。陽極110は、“Flexible light−emitting diodes made from soluble conducting polymer,”Nature vol.357,pp 477−479(11 June 1992)に記載されているようにポリアニリンなどの有機物質を含むこともできる。実施形態によっては、陽極は、フッ素化酸ポリマーおよび導電性ナノ粒子を含む。このような物質は、例えば、米国特許第7,749,407号明細書に記載されている。生じた光を見ることができるように、陽極および陰極のうちの少なくとも1つが、望ましくは少なくとも部分的に透明である。
【0091】
正孔注入層120は正孔注入物質を含み、有機電子デバイスにおいて1つまたは複数の機能を有しうる。その機能としては、下にある層の平坦化、電荷輸送特性及び/または電荷注入特性、不純物(酸素または金属イオンなど)の除去、および有機電子デバイスの性能を促進または向上させる他の側面があるが、それらに限定されない。正孔注入物質は、ポリマー、オリゴマー、または小分子でありうる。それらは、溶液、分散液、懸濁液、エマルジョン、コロイド状混合物、または他の組成物の形であり得る液体から付着させるか、あるいは蒸着させることができる。
【0092】
正孔注入層は、ポリアニリン(PANI)またはポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)などの高分子材料(プロトニック酸がドープされることが多い)によって形成させることができる。プロトニック酸は、例えば、ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)などであってよい。
【0093】
正孔注入層は、銅フタロシアニンおよびテトラチアフルバレン−テトラシアノキノジメタン系(TTF−TCNQ)などの電荷移動化合物などを含むことができる。
【0094】
実施形態によっては、正孔注入層は、少なくとも1種類の導電性ポリマーおよび少なくとも1種類のフッ素化酸ポリマーを含む。このような物質は、例えば、米国特許出願公開第2004/0102577号明細書、米国特許出願公開第2004/0127637号明細書、米国特許出願公開第2005/0205860号明細書、および国際公開第2009/018009号パンフレットに記載されている。
【0095】
実施形態によっては、正孔注入層は、フッ素化酸ポリマーおよび導電性ナノ粒子を含む。このような物質は、例えば、米国特許第7,749,407号明細書に記載されている。
【0096】
層130用の他の正孔輸送物質の例は、例えば、Y.WangによってKirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,Fourth Edition,Vol.18,p.837−860,1996にまとめられている。正孔輸送分子および正孔輸送ポリマーの両方を使用できる。通常用いられる正孔輸送分子は以下のものである:N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD)、1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC)、N,N’−ビス(4−メチルフェニル)−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)−[1,1’−(3,3’−ジメチル)ビフェニル]−4,4’−ジアミン(ETPD)、テトラキス−(3−メチルフェニル)−N,N,N’,N’−2,5−フェニレンジアミン(PDA)、a−フェニル−4−N,N−ジフェニルアミノスチレン(TPS)、p−(ジエチルアミノ)−ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン(DEH)、トリフェニルアミン(TPA)、ビス[4−(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル](4−メチルフェニル)メタン(MPMP)、1−フェニル−3−[p−(ジエチルアミノ)スチリル]−5−[p−(ジエチルアミノ)フェニル]ピラゾリン(PPRまたはDEASP)、1,2−trans−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)シクロブタン(DCZB)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TTB)、N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス−(フェニル)ベンジジン(α−NPB)、およびポルフィリン化合物(銅フタロシアニンなど)。通常用いられる正孔輸送ポリマーは、ポリビニルカルバゾール、(フェニルメチル)−ポリシラン、およびポリアニリンである。正孔輸送分子(上述したものなど)をポリマー(ポリスチレンおよびポリカーボネートなど)にドープすることによって、正孔輸送ポリマーを得ることも可能である。場合によっては、トリアリールアミンポリマー、特にトリアリールアミン−フルオレンコポリマーが使用される。場合によっては、これらのポリマーおよびコポリマーは架橋性である。実施形態によっては、正孔輸送層はp−ドーパントをさらに含む。実施形態によっては、正孔輸送層はp−ドーパントがドープされる。p−ドーパントの例としては、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン(F4−TCNQ)およびペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸−3,4,9,10−二無水物(PTCDA)があるが、これらに限定されない。
【0097】
層150中に使用できる電子輸送物質の例としては、金属キレートオキシノイド化合物(トリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(AlQ)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(p−フェニルフェノラト)アルミニウム(BAlq)、テトラキス−(8−ヒドロキシキノラト)ハフニウム(HfQ)、およびテトラキス−(8−ヒドロキシキノラト)ジルコニウム(ZrQ)などの金属キノレート誘導体など);およびアゾール化合物(2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)、および1,3,5−トリ(フェニル−2−ベンゾイミダゾール)ベンゼン(TPBI)など);キノキサリン誘導体(2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリンなど);フェナントロリン類(4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(DPA)および2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(DDPA)など);およびそれらの混合物があるが、これらに限定されない。実施形態によっては、電子輸送層はn−ドーパントをさらに含む。n−ドーパント物質はよく知られている。n−ドーパントとしては、1族および2族の金属;1族および2族の金属塩(LiF、CsF、およびCs
2CO
3など);1族および2族の金属有機化合物(Liキノレートなど);ならびに分子n−ドーパント(ロイコ染料など)、金属錯体(W
2(hpp)
4[ここでhpp=1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−2H−ピリミド−[1,2−a]−ピリミジンである]、およびコバルトセンなど)、テトラチアナフタセン、ビス(エチレンジチオ)テトラチアフルバレン、複素環式ラジカルまたはジラジカル、ならびに複素環式ラジカルまたはジラジカルのダイマー、オリゴマー、ポリマー、ジスピロ化合物、および多環化合物があるが、これらに限定されない。
【0098】
陰極160は、電子または負の電荷担体を注入するのに特に効率的な電極である。陰極は、陽極よりも仕事関数の小さい任意の金属または非金属であってよい。陰極用の物質は、1族のアルカリ金属(例えば、Li、Cs)、2族の(アルカリ土類)金属、12族の金属(希土類元素およびランタニドを含む)、およびアクチニドから選択できる。アルミニウム、インジウム、カルシウム、バリウム、サマリウムおよびマグネシウムなどの物質、ならびにそれらの組合せを使用できる。動作電圧を下げるために、有機層と陰極層との間にLi含有有機金属化合物、LiF、Li
2O、Cs含有有機金属化合物、CsF、Cs
2O、およびCs
2CO
3を付着させることもできる。この層は電子注入層と呼ばれる場合がある。
【0099】
有機電子デバイス中に別の層を設けることが知られている。例えば、注入される正電荷の量を制御するため、かつ/または層のバンドギャップを一致させるため、あるいは保護層として機能するための、陽極110と正孔注入層120との間の層(図示せず)があってよい。当該技術分野において知られている層を使用でき、それには、銅フタロシアニン、酸窒化ケイ素、フルオロカーボン類、シラン類、または金属(Ptなど)の極薄層がある。あるいはまた、陽極層110、活性層120、130、140、および150、または陰極層160の一部または全部を表面処理して、電荷担体輸送効率を増大させることができる。各成分層の物質の選択は、好ましくは、デバイスが高いエレクトロルミネセンス効率となるように正電荷と負電荷を釣り合わせることにより決定する。
【0100】
各機能層は、複数の層で構成できることが理解される。
【0101】
c.デバイスの製造
デバイス層は、蒸着、液体付着、および熱転写などのあらゆる付着技法または技法の組み合わせによって形成することができる。ガラス、プラスチック、および金属などの基板を使用することができる。熱蒸着、化学蒸着などの従来の蒸着技法を使用できる。有機層は、限定するものではないが、スピンコーティング、浸漬被覆、ロール・トゥ・ロール技法、インクジェット印刷、連続ノズル印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷などの従来のコーティングまたは印刷技法を使用して、好適な溶媒中の溶液または分散体から塗布することができる。
【0102】
実施形態によっては、有機発光デバイスの製造方法は:
パターン化された陽極を上に有する基板を提供するステップと;
(a)式Iを有する化合物および(b)液体媒体から本質的になる第1の液体組成物を付着させることによって光活性層を形成するステップと;
陰極全体を形成するステップとを含む。
【0103】
「液体組成物」という用語は、1つまたは複数の物質が溶解して溶液を形成する液体媒体、1つまたは複数の物質が分散して分散液を形成する液体媒体、あるいは1つまたは複数の物質が懸濁して懸濁液またはエマルジョンを形成する液体媒体を意味することを意図している。
【0104】
実施形態によっては、本発明の方法は:
光活性層を形成する前に正孔注入層を形成するステップであって、正孔輸送物質を第2の液体媒体中に含む第2の液体組成物を付着させることによって正孔輸送層が形成されるステップをさらに含む。
【0105】
実施形態によっては、本発明の方法は:
光活性層を形成する前に正孔輸送層を形成するステップであって、正孔輸送物質を第3の液体媒体中に含む第3の液体組成物を付着させることによって正孔輸送層が形成されるステップをさらに含む。
【0106】
実施形態によっては、本発明の方法は:
光活性層を形成した後に電子輸送層を形成するステップであって、電子輸送物質を第4の液体媒体中に含む第4の液体組成物を付着させることによって電子輸送層が形成されるステップをさらに含む。
【0107】
実施形態によっては、有機発光デバイスの製造方法は:
パターン化された陽極を上に有する基板を提供するステップと;
陽極の上に正孔注入層を形成するステップであって、正孔輸送物質を第2の液体媒体中に含む第2の液体組成物を付着させることによって正孔輸送層が形成されるステップと、
正孔注入層の上の前に正孔輸送層を形成するステップであって、正孔輸送物質を第2の液体媒体中に含む第2の液体組成物を付着させることによって正孔輸送層が形成されるステップと、
(a)式Iを有する化合物および(b)液体媒体から本質的になる第1の液体組成物を付着させることによって、正孔輸送層の上に光活性層を形成するステップと;
陰極全体を形成するステップとを含む。
【0108】
本明細書において使用される場合、用語「上に」は、層の相対位置を示しているが、かならずしも直接的接触の存在を意味するものではない。第1の層の上に存在する第2の層は、第1の層の上に直接存在し第1の層と接触している場合もあるし、あるいは第2の層は、第1および第2の層の間の1つまたは複数の介在層の1つの上に存在する場合もある。
【0109】
光活性層を形成するために、連続および不連続技法などのあらゆる周知の液体付着技法または技法の組み合わせを使用することができる。液相付着技法の例としては、スピンコーティング、グラビアコーティング、カーテンコーティング、浸漬被覆、スロットダイコーティング、吹付け塗り、連続ノズル印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷、およびスクリーン印刷があるが、これらに限定されない。実施形態によっては、光活性層は、連続ノズル印刷およびインクジェット印刷から選択される方法によってあるパターンで形成される。ノズル印刷は、連続技法と見なすことができるが、層を形成するための所望の領域上のみにノズルを配置することによってパターンを形成することができる。例えば、連続した列のパターンを形成することができる。
【0110】
付着させる特定の光活性組成物に好適な液体媒体は、当業者によって容易に決定することができる。一部の用途では、化合物を非水溶媒中に溶解させることが望ましい。このような非水溶媒は、(C
1〜C
20アルコール、エーテル、および酸エステルなど)であってよく、比較的非極性(C
1〜C
12アルカン、あるいはトルエン、キシレン、トリフルオロトルエンなどの芳香族など)であってもよい。新規の化合物を含む本明細書に記載の溶液または分散体のいずれかとしての液体組成物の製造に用いると好適な別の液体としては、塩素化炭化水素(塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼンなど)、芳香族炭化水素(置換または非置換のトルエンまたはキシレンなど、たとえばトリフルオロトルエン)、極性溶媒(テトラヒドロフラン(THF)、N−メチルピロリドン(NMP)など)、エステル(エチルアセテートなど)、アルコール(イソプロパノールなど)、ケトン(シクロペンタトン(cyclopentatone)など)、芳香族エステル、芳香族エーテル、またはそれらのあらゆる混合物があるが、これらに限定されない。発光物質用の溶媒の混合物の例は、例えば、米国特許出願公開第2008−0067473号明細書に記載されている。
【0111】
付着後、物質を乾燥させて層を形成する。加熱、真空、およびそれらの組み合わせなどの任意の従来の乾燥技法を使用できる。
【0112】
実施形態によっては、デバイスは、正孔注入層、正孔輸送層、および光活性層の液体付着と、陽極、電子輸送層、電子注入層、および陰極の蒸着とによって製造される。
【実施例】
【0113】
以下の実施例において、本明細書に記載の概念をさらに説明するが、これらの実施例は、請求項に記載の本発明の範囲を限定するものではない。
【0114】
合成例1
この実施例は、化合物E1の調製を例示するものである。
【0115】
【化14】
【0116】
この化合物は以下のスキームにより調製することができる:
【0117】
【化15】
【0118】
化合物2の合成:
機械的攪拌機、滴下漏斗、温度計、およびN
2バブラーを取り付けた3Lのフラスコに、1.5Lの乾燥塩化メチレン中のアントロン54g(275.2mmol)を加えた。フラスコを氷浴中で冷却し、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(「DBU」)83.7ml(559.7mmol)を滴下漏斗によって1.5時間かけて加えた。溶液はオレンジ色に変わり、不透明になり、次に深い赤色になった。依然として冷却されるこの溶液に、溶液温度を5℃未満に維持しながら、トリフルオロメタンスルホン酸無水物58ml(345.0mmol)をシリンジによって約1.5時間かけて加えた。反応を室温で3時間進行させ、その後、1mLのさらなるトリフルオロ酢酸無水物を加え、室温で30分間攪拌を続けた。500mLの水をゆっくり加え、層を分離させた。その水層を3×200mLのジクロロメタン(「DCM」)で洗浄し、1つにまとめた有機物を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、ストリッピングして、赤色油を得た。
【0119】
この赤色油をDCM中に溶解させ、シリカゲル上に吸収させ、乾燥させた。これをシリカパッドの上部に塗布し、数リットルのニートのヘキサンで溶出させ、続いて3Lの95/5のヘキサン/DCMで溶出させた。数個の画分を回収し、ヘキサン43.1g(43%)から再結晶させた。NMRによって、生成物の同定および純度の測定を行った。
【0120】
化合物3の合成:
窒素を充填したグローブボックス中で、攪拌子を取り付けた200mLのケルダール反応フラスコに、アントラセン−9−イルトリフルオロメタンスルホネート(6.0g、18.40mmol)、ナフタレン−2−イル−ボロン酸(3.78g、22.1mmol)、三塩基性リン酸カリウム(17.50g、82.0mmol)、酢酸パラジウム(II)(0.41g、1.8mmol)、トリシクロヘキシルホスフィン(0.52g、1.8mmol)、およびTHF(100mL)を加えた。ドライボックスから取り出した後、反応混合物に窒素をパージし、脱気水(50mL)をシリンジで加えた。次に冷却器を取り付け、反応物を終夜還流させた。TLCを行った。完了後、反応混合物を室温まで冷却した。有機層を分離させ、水層はDCMで抽出した。有機画分を1つにまとめ、ブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。減圧下で溶媒を除去した。得られた固体をアセトンおよびヘキサンで洗浄し、濾過した。カラムクロマトグラフィーによって精製して、4.03g(72%)の生成物を淡黄色結晶物質として得た。
【0121】
化合物4の合成:
9−(ナフタレン−2−イル)アントラセン11.17g(36.7mmol)を100mLのDCM中に懸濁させた。N−ブロモスクシンイミド6.86g(38.5mmol)を加え、100Wのランプを照射しながら混合物を攪拌した。黄色透明溶液が形成され、次に沈殿が生じた。約1.5時間後、85/10/5のHex/EtOAc/DCMを用いたTLCによって、反応完了が示された。一部のDCMをストリッピングし、沈殿が開始するまで熱アセトニトリルを加えた。高温時に沈殿がちょうど溶解するように少量のDCMを加え、次に溶液を冷却すると、淡黄色結晶が得られた。収量=12.2g(87%)
【0122】
化合物7の合成:
窒素を充填したグローブボックス中、攪拌子を取り付けた500mLの丸底フラスコにナフタレン−1−イル−1−ボロン酸(14.2g、82.6mmol)、1−ブロモ−2−ヨードベンゼン(25.8g、91.2mmol)、テトラキス(トリフェニルホスピン)パラジウム(0)(1.2g、1.4mmol)、炭酸ナトリウム(25.4g、240mmol)、およびトルエン(120mL)を加えた。ドライボックスから取り出した後、反応混合物に窒素をパージし、脱気水(120mL)をシリンジで加えた。冷却器を取り付け、反応物を15時間還流させた。TLCを行うと、反応の完了が示された。反応混合物を室温まで冷却した。有機層を分離し、水層はDCMで抽出した。有機画分を1つにまとめ、減圧下で溶媒を除去して黄色油を得た。シリカゲルおよび10%DCM/ヘキサンを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製した。高真空下で乾燥させて、透明油13.6g(%)を得た。
【0123】
化合物6の合成:
マグネチックスターラー、窒素ラインに接続された還流冷却器、および油浴が取り付けられた1リットルのフラスコに、4−ブロモフェニル−1−ナフタレン(28.4g、10.0mmol)、ビス(ピナコレート)二ホウ素(40.8g、16.0mmol)、Pd(dppf)
2Cl
2(1.64g、2.0mmol)
、酢酸カリウム(19.7g、200mmol)、およびDMSO(350mL)を加えた。混合物に窒素を15分間バブリングし、次にPd(dppf)
2Cl
2(1.64g、0.002mol)を加えた。この過程で、混合物は徐々に暗褐色に変化した。反応物を120℃(油浴)において窒素下で18時間攪拌した。冷却後、混合物を氷水中に注ぎ、クロロホルム(3回)で抽出した。有機層を水(3回)および飽和ブライン(1回)で洗浄し、MgSO4で乾燥させた。濾過し溶媒を除去した後、残留物を、ヘキサン/クロロホルムグラジエント(19:1、2:8、5:5、および0:10)を溶離液として用いたシリカゲルカラム上のクロマトグラフィーによって精製した。生成物を含有する複数の画分を1つにまとめ、溶媒を回転蒸発により除去した。得られた白色固体をヘキサン/クロロホルムから結晶化させ、真空オーブン中40℃で乾燥させて、生成物を白色結晶フレーク(15.0 g、収率45%)として得た。1Hおよび13C−NMRスペクトルは、予想される構造と一致している。
【0124】
化合物E1の合成:
グローブボックス中の250mLのフラスコに、(2.00g、5.23mmol)、4,4,5,5−テトラメチル−2−(4−(ナフタレン−4−イル)フェニル)−1,3,2−ジオキサボロラン(1.90g、5.74mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(0.24g、0.26mmol)、およびトルエン(50mL)を加えた。ドライボックスから取り出し、窒素流入口および冷却器を取り付けた。脱気した炭酸ナトリウム水溶液(2M、20mL)をシリンジで加えた。反応物を攪拌し、終夜90Cに加熱した。LCは、反応完了を示した。室温まで冷却し、有機層を分離した。水層をDCMで2回洗浄した。有機層を1つにまとめ、溶媒を除去して灰色粉末を得た。DCMを用いて中性アルミナで濾過した。溶媒を除去すると、非常に薄い黄色の固体が得られた。再びDCM中に溶解させ、ヘキサン中で沈殿させた。高真空下で乾燥させた。得られた物質を、シリカゲルを用いてクロロホルム/ヘキサングラジエントで溶出させるカラムクロマトグラフィーによってさらに精製して、白色粉末としての生成物2.28g(86%)を得た。
【0125】
生成物を、米国特許出願公開第2008−0138655号明細書に記載されるようにさらに精製して、少なくとも99.9%のHPLC純度、および0.01以下の不純物吸光度を実現した。
【0126】
合成例2
この実施例は、化合物E15の合成を例示するものである。
【0127】
【化16】
【0128】
窒素雰囲気下で、AlCl
3(0.48g、3.6mmol)を、化合物E1(5g、9.87mmol)のペルジュウテロベンゼン、すなわちベンゼン−D6(C
6D
6)(100mL)溶液に加えた。得られた混合物を室温で6時間攪拌した後、D
2O(50mL)を加えた。層を分離させ、続いて水層をCH
2Cl
2(2×30mL)で洗浄した。1つにまとめた有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、揮発分を回転蒸発により除去した。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製した。重水素化生成物の化合物E15を白色粉末として得た(4.5g)。
【0129】
生成物を、米国特許出願公開第2008−0138655号明細書に記載されるようにさらに精製して、少なくとも99.9%のHPLC純度、および0.01以下の不純物吸光度を得た。得られた物質が、前述の中間体1と同レベルの純度であることが分かった。構造を
1H NMR、
13C NMR、
2D NMR、および
1H−
13C HSQC(異核種単一量子コヒーレンス)によって確認した。
【0130】
合成例3
この実施例は、以下に示すホスト化合物ホスト−1の調製を例示するものである。
【0131】
【化17】
【0132】
500mLの丸瓶フラスコに、4,4’−ジブロモ−2,2’−ジメチル−1,1’−ビナフチル(4.40g、10mmol)、4−(ナフタレン−1−イル)フェニルボロン酸(5.21g、mmol)、炭酸ナトリウム(2M、30mL、60mmol)、トルエン(120mL)、およびAliquat 336(0.5g)を加えた。混合物は、システムであり、窒素下で20分間攪拌した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)(462mg、0.4mmol)を加えた後、混合物を窒素下でさらに15分間攪拌した。次いで反応物を油浴中95℃で18時間加熱した。冷却後、混合物をCeliteパッドで濾過して、不溶性物質を除去した。溶液を希HCl(10%、80mL)、水(80mL)、および飽和ブライン(50mL)で洗浄した。溶媒を回転蒸発により除去した。粗生成物をシリカゲルカラムに通し、トルエンを用いて溶出させた。生成物を含有する複数の画分を1つにまとめ、溶媒を回転蒸発により除去した。塩化メチレンおよびアセトニトリルから再結晶させて、生成物を白色結晶物質として得た。収量、2.6g(38%)。NMRスペクトルは構造と一致した。
【0133】
合成例4
国際公開第2009/067419号パンフレットに記載されるようにして、以下に示す正孔輸送化合物HT−1、HT−2、HT−3を合成した。
HT−1
【0134】
【化18】
【0135】
HT−1は、最大20%の第2の異性体を含有することができ、アステリスクは結合点を示す:
【0136】
【化19】
【0137】
HT−2は、最大20%の第2の異性体を含有することができる:
【0138】
【化20】
【0139】
HT−3は、最大20%の第2の異性体を含有することができる:
【0140】
【化21】
【0141】
他の物質
HIJ−1は、ポリマーフッ素化スルホン酸がドープされた導電性ポリマーである。このような物質は、例えば、米国特許出願公開第2004/0102577号明細書、米国特許出願公開第2004/0127637号明細書、米国特許出願公開第2005/0205860号明細書、および国際公開第2009/018009号パンフレットに記載されている。
ET−1はフェナントロリン誘導体である。
ET−2は金属キノレート化合物である。
【0142】
デバイス例1および比較例A〜B
これらの例は、化合物E15から本質的になる光活性層を有するOLEDデバイスの製造および性能を示すものである。比較例では、化合物E15は、ホスト化合物中のドーパントとして存在した。
【0143】
デバイスは、ガラス基板上に以下の構造を有した:
陽極=インジウムスズ酸化物(ITO)、50nm
正孔注入層=HIJ−1(50nm)。
正孔輸送層は表1に示している(20nm)。
光活性層は表1に示している(40nm)。
電子輸送層=ET−1(10nm)。
電子注入層/陰極=CsF/Al(0.7(付着時)/100nm)。
【0144】
OLEDデバイスは、溶液処理と熱蒸発技法とを併用することによって作製した。パターン化インジウムスズ酸化物(ITO)で被覆されたガラス基板(Thin Film Devices,Incからのもの)を使用した。こうしたITO基板は、シート抵抗が30Ω/□であり光透過率が80%であるITOで被覆されたCorning 1737ガラスをベースにしている。パターン化ITO基板を、洗浄剤水溶液中で超音波を使って清浄にし、蒸留水ですすいだ。その後、パターン化ITOをアセトン中で超音波を使って清浄にし、イソプロパノールですすぎ、窒素流で乾燥させた。
【0145】
デバイスの作製の直前に、清浄にしたパターン化ITO基板を紫外オゾンで10分間処理した。冷却直後に、HIJ−1の水性分散液を、ITO表面を覆うようにスピンコーティングし、加熱して溶媒を除去した。冷却後、基板に正孔輸送物質をスピンコーティングし、加熱して溶媒を除去した。冷却後、基板に、光活性層物質のメチルベンゾエート中の溶液をスピンコーティングし、加熱して溶媒を除去した。基板をマスキングし、真空チャンバーに入れた。電子輸送層を熱蒸発によって付着させ、その後、CsF層を付着させた。次いで真空中でマスクを変え、Al層を熱蒸発で付着させた。チャンバーのガス抜きを行い、ガラスの蓋、乾燥剤、および紫外線硬化性エポキシを用いてデバイスを封入した。
【0146】
OLED試料は、(1)電流−電圧(I−V)曲線、(2)エレクトロルミネセンスの輝度対電圧、および(3)エレクトロルミネセンススペクトル対電圧を測定して特徴を決定した。3種類の測定はすべて同時にコンピュータで実行し制御した。ある一定電圧でのデバイスの電流効率は、LEDのエレクトロルミネセンス輝度を、デバイスを作動させるのに必要な電流密度で割ることによって求められる。単位はcd/Aである。結果を表2に示す。
【0147】
【表1】
【0148】
【表2】
【0149】
表から分かるように、本明細書に記載の光活性層を使用した場合に効率および寿命が向上している。
【0150】
デバイス例2〜7
これらの実施例は、化合物E15から本質的になる光活性層を有するOLEDデバイスの製造および性能を示すものである。
【0151】
デバイスは、ガラス基板上に以下の構造を有した:
陽極=インジウムスズ酸化物(ITO)、50nm
正孔注入層=HIJ−1(52nm)。
正孔輸送層は表3に示している(20nm)。
光活性層=E15(40nm)。
電子輸送層は表3に示している(10nm)。
電子注入層/陰極=CsF/Al(0.7(付着時)/100nm)
【0152】
デバイス例1に記載されるようにしてOLEDデバイスを製造し試験を行った。結果を表4に示す。
【0153】
【表3】
【0154】
【表4】
【0155】
概要および実施例において上で述べた作業のすべてが必要であるわけではないこと、特定作業の一部は必要ではないことがあること、また説明したものに加えて1つまたは複数の更なる作業が実行されうることに留意されたい。またさらに、列挙されている作業の順序は、必ずしもそれらが実行される順序ではない。
【0156】
上記の明細書により、各概念が特定の実施形態に関連して説明された。しかし、以下の請求項に記載した本発明の範囲から逸脱することなく様々な修正および変更を行うことができることは、当業者により理解される。したがって、明細書および図は、制限的な意味ではなく例示的なものと見なすべきであり、そのような修正はすべて本発明の範囲に含まれることが意図される。
【0157】
上記において、便益、他の利点、および問題の解決法は、特定の実施形態に関連して説明されている。しかし、便益、利点、問題の解決法、ならびにいずれかの便益、利点、または解決法をもたらしうるかまたはより顕著なものにしうるどの特徴も、いずれかまたはすべての請求項の重要な特徴、必須の特徴、または基本的特徴と解釈すべきではない。
【0158】
明快にするために別々の実施形態の文脈において本明細書で説明されている特定の複数の特徴を、1つの実施形態で兼ね備えさせることもできることを理解すべきである。その逆に、簡潔にするために1つの実施形態の文脈で説明されている様々な特徴を、別個に、あるいは任意の副次的な組合せで備えさせることもできる。さらに、範囲内に示されている値に言及する場合、それはその範囲内の各値およびすべての値を含む。