特許第5758088号(P5758088)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東電工株式会社の特許一覧

特許5758088光学フィルム用粘着剤組成物、光学フィルム用粘着剤層、粘着型光学フィルムおよび画像表示装置
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5758088
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】光学フィルム用粘着剤組成物、光学フィルム用粘着剤層、粘着型光学フィルムおよび画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/06 20060101AFI20150716BHJP
   C09J 157/00 20060101ALI20150716BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20150716BHJP
   C09J 157/10 20060101ALI20150716BHJP
   C09J 133/02 20060101ALI20150716BHJP
   C09J 183/04 20060101ALI20150716BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20150716BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20150716BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
   C09J133/06
   C09J157/00
   C09J11/06
   C09J157/10
   C09J133/02
   C09J183/04
   C09J7/02 Z
   G02F1/1335 510
   G02F1/13363
【請求項の数】9
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2010-146674(P2010-146674)
(22)【出願日】2010年6月28日
(65)【公開番号】特開2012-7132(P2012-7132A)
(43)【公開日】2012年1月12日
【審査請求日】2012年11月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】乾 州弘
(72)【発明者】
【氏名】細川 敏嗣
(72)【発明者】
【氏名】石井 孝証
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 正之
【審査官】 松波 由美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−001673(JP,A)
【文献】 特開2007−186661(JP,A)
【文献】 特開2002−169017(JP,A)
【文献】 特開2007−224186(JP,A)
【文献】 特開2009−299047(JP,A)
【文献】 特開2007−070610(JP,A)
【文献】 特開2007−056248(JP,A)
【文献】 特開2006−241419(JP,A)
【文献】 特開2004−277711(JP,A)
【文献】 特開2010−163526(JP,A)
【文献】 特開2008−133433(JP,A)
【文献】 特開2005−314453(JP,A)
【文献】 特開2002−303857(JP,A)
【文献】 特開2002−258044(JP,A)
【文献】 特開2007−224184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J1/00−5/10,9/00−201/10
C09J7/00−7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)、および、脱水および加水分解反応に係わる可逆的な反応を生じることができる官能基(x1)を有する可逆性モノマー(b)をモノマー単位として含有する(メタ)アクリル系共重合体(A)の水分散液であって、
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)の割合が、(メタ)アクリル系共重合体(A)の総モノマー単位の67〜99.9重量%であり、
可逆性モノマー(b)の割合が、(メタ)アクリル系共重合体(A)の総モノマー単位の0.1〜10重量%である(メタ)アクリル系共重合体(A)の水分散液、
並びに、可逆性モノマー(b)が有する官能基(x1)に対して脱水および加水分解反応に係わる可逆的な反応を生じる官能基(x2)を、分子中に少なくとも2個有する架橋剤(B)を含有し、
前記可逆性モノマー(b)が、アルデヒド基含有モノマーまたはケト基含有モノマーであり、前記架橋剤が有する官能基(x2)が、ヒドラジノ基であることを特徴とする光学フィルム用水分散型粘着剤組成物(但し、ロジン系粘着付与樹脂を含まない)。
【請求項2】
(メタ)アクリル系共重合体(A)が、モノマー単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)、および、可逆性モノマー(b)の他に、共重合モノマーとして、カルボキシル基含有モノマーを含有しており、かつ、当該カルボキシル基含有モノマーの割合が、(メタ)アクリル系共重合体(A)の総モノマー単位の0.1〜10重量%含有することを特徴とする請求項記載の光学フィルム用水分散型粘着剤組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)が、モノマー単位として、アルコキシシリル基含有モノマー(c)を含有しており、かつ、当該アルコキシシリル基含有モノマーの割合が、(メタ)アクリル系共重合体(A)の総モノマー単位の0.001〜1重量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学フィルム用水分散型粘着剤組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)が、モノマー単位として、リン酸基含有モノマーを含有しており、当該リン酸基含有モノマーの割合が、(メタ)アクリル系共重合体(A)の総モノマー単位の0.1〜20重量%であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の光学フィルム用水分散型粘着剤組成物。
【請求項5】
請求項1〜のいずれかに記載の光学フィルム用水分散型粘着剤組成物を塗布した後、乾燥することにより形成されたことを特徴とする光学フィルム用粘着剤層。
【請求項6】
前記粘着剤層は、
環境下60℃、7%R.H.での伸び率(L60)が、250%以下であり、
環境下60℃、7%R.H.での伸び率(L60)と、環境下60℃、90%R.H.での伸び率(L60−90)との比率{(L60−90)/(L60)}が1.5以上である、
但し、伸び率は、粘着剤層を断面積4.6mm、長さ30mmの円柱形状の試験片に成形して、当該試験片を60℃、7%R.H.または60℃、90%R.H.の環境下に1時間放置した後の長さL0(mm)と、その後、試験片の一端を固定して、試験片の他端に12gのおもりを取り付けて、試験片を60℃、7%R.H.または60℃、90%R.H.の環境下に2時間垂下させた後の試験片の長さL1(mm)から、下記式により算出される、
伸び率(%)={(L1−L0)/L0}×100、
ことを特徴とする請求項記載の光学フィルム用粘着剤層。
【請求項7】
前記粘着剤層は、粘着剤層の厚さが20μmの場合のヘイズ値(H20)が0〜1%であることを特徴とする請求項または記載の光学フィルム用粘着剤層。
【請求項8】
光学フィルムの少なくとも片側に、請求項のいずれかに記載の光学フィルム用粘着剤層が積層されていることを特徴とする粘着型光学フィルム。
【請求項9】
請求項記載の粘着型光学フィルムを少なくとも1枚用いていることを特徴とする画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム用水分散型粘着剤組成物および当該粘着剤組成物から形成された光学フィルム用粘着剤層に関する。また本発明は、当該粘着剤層が光学フィルムに設けられている粘着型光学フィルムに関する。さらには、本発明は、前記粘着型光学フィルムを用いた液晶表示装置、有機EL表示装置、PDP等の画像表示装置に関する。前記光学フィルムとしては、偏光板、位相差板、前面板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、さらにはこれらが積層されているものを用いることができる。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置等は、その画像形成方式から液晶セルの両側に偏光素子を配置することが必要不可欠であり、一般的には偏光板が貼着されている。また液晶パネルには偏光板の他に、ディスプレイの表示品位を向上させるために様々な光学素子が用いられるようになってきている。例えば、着色防止としての位相差板、液晶ディスプレイの視野角を改善するための視野角拡大フィルム、さらにはディスプレイのコントラストを高めるための輝度向上フィルム等が用いられる。これらのフィルムは総称して光学フィルムと呼ばれる。
【0003】
前記光学フィルムを液晶セルに貼着する際には、通常、粘着剤が使用される。また、光学フィルムと液晶セル、または光学フィルム間の接着は、通常、光の損失を低減するため、それぞれの材料は粘着剤を用いて密着されている。このような場合に、光学フィルムを固着させるのに乾燥工程を必要としないこと等のメリットを有することから、粘着剤は、光学フィルムの片側に予め粘着剤層として設けられた粘着型光学フィルムが一般的に用いられる。
【0004】
前記粘着型光学フィルムに用いる光学フィルムは、加熱や加湿の条件下で収縮、膨張しやすいため、前記粘着型光学フィルムを、液晶セルに貼り合せた後には、浮きやハガレが生じやすい。そのため、前記粘着剤層には、加熱および加湿等に対する耐久性が求められる。従来から、上記粘着型光学フィルムの粘着剤層の形成に用いる粘着剤としては、有機溶剤型粘着剤が主に使用されてきた。例えば、ハガレなどの耐久性を確保できる有機溶剤型粘着剤として、官能基を導入した(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、イソシアネート化合物を0.01〜1重量部含有してなり、架橋によりゲル分率を制御した光学部材用粘着剤組成物を用いることが提案されている(特許文献1)。
【0005】
近年では、地球環境負荷の低減、作業安定性の向上の観点から有機溶剤を使用しない無溶剤型粘着剤の開発が盛んになされている。無溶剤型粘着剤としては、例えば、分散媒として水を用いて、水中に粘着剤ポリマー成分を分散させた水分散型粘着剤が知られている。しかしながら、水分散型粘着剤には一般に乳化剤、分散剤など界面活性剤を水溶性の分散安定化成分として含むため、水分散型粘着剤により形成された粘着剤層は、前記水溶性成分の影響により、加熱条件下で発泡しやすく、また加湿条件下でハガレ等が発生しやすく耐久性に問題があった。また、水分散型粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、エマルション粒子等により形成されているため、その層構造として粒子界面が存在しており、特許文献1の組成物を水分散型粘着剤組成物に適用して粘着剤層を形成したとしても、加湿耐久性を満足することができない。
【0006】
この耐久性を向上させるため、光学フィルムの分野でいくつかの提案がなされている。例えば、液晶パネルのガラス基板に対する密着性を向上できる光学フィルム用の水分散型粘着剤として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとともにシラン系単量体を用いアクリル系ポリマーのエマルションを用いることが提案されている(特許文献1)。また、液晶パネルのガラス基板に対する加熱、加湿条件下における密着性を向上できる光学フィルム用の水分散型粘着剤として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとともにリン酸基含有モノマーを用いたアクリル系ポリマーのエマルションを用いることが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−091500号公報
【特許文献2】特開2002−309212号公報
【特許文献3】特開2007−186661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献2、3の水分散型粘着剤は、一定の加湿試験後における耐久性については満足するものであった。しかし、上記特許文献2、3の水分散型粘着剤は、粘着型光学フィルムを、高温加湿環境下から常温下に取り出して、その後、長時間保存した場合に生じるハガレ(以下、このハガレを経時ハガレという。)を十分に抑えられるものではないことが、新たに分かった。
【0009】
本発明は、光学フィルムに適用される水分散型粘着剤であって、当該水分散型粘着剤により形成された粘着剤層が、加湿環境下でのハガレおよび高温加湿環境下から常温下に取り出して長時間保存した場合に生じる経時ハガレを抑えることができる、光学フィルム用水分散型粘着剤組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、当該光学フィルム用水分散型粘着剤組成物により形成された光学フィルム用粘着剤層を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、光学フィルムの少なくとも片側に、前記光学フィルム用粘着剤層が積層されている粘着型光学フィルムを提供することを目的にする。さらに本発明は、前記粘着型光学フィルムを用いた画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、下記の光学フィルム用水分散型粘着剤組成物等により前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち本発明は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)、および、
脱水および加水分解反応に係わる可逆的な反応を生じることができる官能基(x1)を有する可逆性モノマー(b)をモノマー単位として含有する(メタ)アクリル系共重合体(A)の水分散液であって、
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)の割合が、(メタ)アクリル系共重合体(A)の総モノマー単位の67〜99.9重量%であり、
可逆性モノマー(b)の割合が、(メタ)アクリル系共重合体(A)の総モノマー単位の0.1〜10重量%である(メタ)アクリル系共重合体(A)の水分散液、
並びに、可逆性モノマー(b)が有する官能基(x1)に対して脱水および加水分解反応に係わる可逆的な反応を生じる官能基(x2)を、分子中に少なくとも2個有する架橋剤(B)を含有することを特徴とする光学フィルム用水分散型粘着剤組成物、に関する。
【0013】
前記光学フィルム用水分散型粘着剤組成物において、可逆性モノマー(b)としては、アルデヒド基含有モノマーまたはケト基含有モノマーが好ましい。
【0014】
また、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)が、モノマー単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)、および、可逆性モノマー(b)の他に、共重合モノマーとして、カルボキシル基含有モノマーを含有し、カルボキシル基含有モノマーの割合が、(メタ)アクリル系共重合体(A)の総モノマー単位の0.1〜10重量%であることが好ましい。
【0015】
前記光学フィルム用水分散型粘着剤組成物において、可逆性モノマー(b)がアルデヒド基含有モノマーまたはケト基含有モノマーである場合、架橋剤が有する官能基(x2)は、ヒドラジノ基であることが好ましい。
【0016】
前記光学フィルム用水分散型粘着剤組成物において、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)が、モノマー単位として、アルコキシシリル基含有モノマー(c)を含有しており、かつ、当該アルコキシシリル基含有モノマーの割合が、(メタ)アクリル系共重合体(A)の総モノマー単位の0.001〜1重量%であることが好ましい。
【0017】
前記光学フィルム用水分散型粘着剤組成物において、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)が、モノマー単位として、リン酸基含有モノマーを含有しており、かつ、当該リン酸基含有モノマーの割合は、(メタ)アクリル系共重合体(A)の総モノマー単位の0.1〜20重量%であることが好ましい。
【0018】
また本発明は、前記光学フィルム用水分散型粘着剤組成物を塗布した後、乾燥することにより形成された光学フィルム用粘着剤層、に関する。
【0019】
前記粘着剤層は、
環境下60℃、7%R.H.での伸び率(L60)が、250%以下であり、
環境下60℃、7%R.H.での伸び率(L60)と、環境下60℃、90%R.H.での伸び率(L60−90)との比率{(L60−90)/(L60)}が1.5以上であることが好ましい。
【0020】
但し、伸び率は、粘着剤層を断面積4.6mm、長さ30mmの円柱形状の試験片に成形して、当該試験片を60℃、7%R.H.または60℃、90%R.H.の環境下に1時間放置した後の長さL0(mm)と、その後、試験片の一端を固定して、試験片の他端に12gのおもりを取り付けて、試験片を60℃、7%R.H.または60℃、90%R.H.の環境下に2時間垂下させた後の試験片の長さL1(mm)から、下記式により算出される。
伸び率(%)={(L1−L0)/L0}×100。
【0021】
前記粘着剤層は、粘着剤層の厚さが20μmの場合のヘイズ値(H20)が0〜1%であることが好ましい。
【0022】
また本発明は、光学フィルムの少なくとも片側に、前記光学フィルム用粘着剤層が積層されていることを特徴とする粘着型光学フィルム、に関する。
【0023】
また本発明は、前記粘着型光学フィルムを少なくとも1枚用いていることを特徴とする画像表示装置、に関する。
【発明の効果】
【0024】
粘着型光学フィルムに係る加湿耐久性は、加湿環境下(例えば、60℃,90%RH)の存在下に保存することで生じるハガレとして認識されている。要するに、当該ハガレは、粘着型光学フィルムが加湿環境下に置かれることによって、粘着剤層の被着体への接着力が不足するようになり、粘着剤層と被着体(例えば、ガラス)との界面において発生するハガレである(以下、これを加湿ハガレという)。
【0025】
一方、粘着型光学フィルムを高温加湿環境下(例えば、85℃,85%RH)から常温下に取り出して、長期に保存した際にもハガレ(経時ハガレ)に係る課題があることが新たに分かった。しかし、経時ハガレは、加湿ハガレとは異なるメカニズムに生じていることが分かった。即ち、経時ハガレは、高温加湿環境下で膨張した光学フィルム、さらにはそれに追随して膨張した粘着剤層が、高温加湿環境下から常温下に取り出して長期に保存(約100時間以上放置)した際には、光学フィルムが膨張前の状態よりも収縮する結果、光学フィルムの端部にガラス面側とは反対方向(収縮方向)への反りが発生し、当該光学フィルムの収縮と反りにより粘着剤層と被着体に引張り応力が作用して、当該引張り応力に耐え切れなくなった粘着剤層が凝集破壊により生じることで進行していることが分かった。つまり、本発明者らは、高温加湿環境下から常温下に取り出して長期に保存した場合に生じる経時ハガレに係る課題が、粘着剤の接着不足によるものではなく、粘着剤層の凝集力不足であることを見出し、この新たな知見から本発明を完成するに至ったものである。
【0026】
通常、アクリル系粘着剤層の凝集力を高める手段としては、アクリル系ポリマーに多官能性モノマーを用いて内部架橋構造を導入する方法や、アクリル系ポリマーにカルボキシル基や水酸基等の官能基を導入し、かつ当該官能基と反応性を持つ官能基を有する架橋剤(例えば、カルボジイミド系化合物、オキサゾリン系化合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物、イソシアネート系化合物)により外部架橋構造を導入する方法が採用されている。前記架橋構造を導入する方法では、一度架橋構造が形成されると、その架橋構造に係る結合が切断されることは少ない。そのため、架橋構造が形成された粘着剤層を有する光学フィルムをガラスに貼り合せたものを高温加湿環境下(例えば、85℃,85%RH)から常温下に取り出して、長期に保存した際にも架橋構造の変化は少ない。よって、架橋構造を有する粘着剤層によれば、経時ハガレを改善することができる。しかしながら、架橋構造を有する粘着剤層によれば、粘着剤層全体が硬くなってしまう。硬くなった粘着剤層は、ガラス界面との密着性が悪い。そのため、架橋構造を導入した粘着剤層は、加湿環境下(例えば、60℃,90%R.H.)で生じる加湿ハガレを満足できない。
【0027】
本発明では、粘着剤層に凝集力を付与するために、粘着剤層を形成する水分散型粘着剤組成物として、脱水および加水分解反応に係わる可逆的な反応を生じる官能基(x1)を有する可逆性モノマー(b)をモノマー単位として有する(メタ)アクリル系共重合体(A)の水分散液とともに、前記官能基(x1)に対して脱水および加水分解反応に係わる可逆的な反応を生じる官能基(x2)を、分子中に少なくとも2個有する架橋剤(B)を用いている。以上のように、水分散型粘着剤組成物として、(メタ)アクリル系共重合体(A)が有する官能基(x1)と、架橋剤が有する官能基(x2)とを、脱水および加水分解反応に係わる可逆的な反応を生じるような組み合わせで用いることにより、当該水分散型粘着剤組成物による形成される粘着剤層は、被着体への接着力を維持しながら優れた凝集力を有しており、前記加湿ハガレおよび経時ハガレを抑えることができる。
【0028】
上記のように本発明の粘着剤層における架橋構造は、脱水および加水分解反応に係わる可逆的な反応を生じる官能基(x1)と官能基(x2)の反応により形成されている。前記可逆的な反応は、水の非存在下での脱水反応に基づく架橋反応と、水の存在下での加水分解反応に基づく脱架橋反応に係わる。このような可逆的な反応が生じうる粘着剤層は、加湿環境下では脱架橋反応が生じて、粘着剤層が軟らかくなり、ガラス界面との密着性が低下しにくく、加湿ハガレが抑制される。また、高温加湿環境下から常温下に取り出して、長期に保存した際には、水分が低下するため架橋反応が生じて粘着剤層が硬くなり、凝集力が向上して、粘着剤層が凝集破壊しにくくなり、経時ハガレを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の光学フィルム用水分散型粘着剤組成物は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)、および、脱水および加水分解反応に係わる可逆的な反応を生じることができる官能基(x1)を有する可逆性モノマー(b)をモノマー単位として含有する(メタ)アクリル系共重合体(A)の水分散液と、可逆性モノマー(b)が有する官能基(x1)に対して脱水および加水分解反応に係わる可逆的な反応を生じる官能基(x2)を、分子中に少なくとも2個有する架橋剤(B)を含有する。
【0030】
前記(メタ)アクリル系重合体(A)に用いる(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)としては、乳化重合の反応性の観点から水に対する溶解度が一定の範囲のものが好ましく、アルキル基の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とすることが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等のアクリル酸アルキルエステルが挙げられる。これらは単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル等のアルキル基の炭素数が3〜9の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステルはアクリル酸アルキルエステルおよび/またはメタクリル酸アルキルエステルをいい、本発明の(メタ)とは同様の意味である。
【0031】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)は、(メタ)アクリル系重合体(A)の総モノマー単位の67〜99.9重量%を含有する。好ましくは70〜99.8重量%、さらには80〜99.5重量%であるのが好ましい。
【0032】
前記(メタ)アクリル系重合体(A)に用いる可逆性モノマー(b)は、可逆性モノマー(b)が有する官能基(x1)と、架橋剤(B)の官能基(x2)との関係で、これら官能基が脱水および加水分解反応に係わる可逆的な反応を生じることができる組み合わせになるように選択される。脱水および加水分解反応に係わる可逆的な反応を生じる組み合わせとしては、例えば、アルデヒド基またはケト基に対しては、ヒドラジノ基、セミカルバジド基等が挙げられる。カルボキシル基に対しては、少なくとも2価以上の金属に係る金属塩、金属キレート化合物等が挙げられる。なお、本発明の脱水および加水分解反応に係わる可逆的な反応を生じる官能基には、イオン状態を提供できる金属が含まれ、例えば二価金属であれば2つの官能基を有する。
【0033】
前記可逆性モノマー(b)は、(メタ)アクリル系重合体(A)の総モノマー単位の0.1〜10重量%を含有する。好ましくは0.3〜5重量%、さらには0.5〜3重量%、さらには0.5〜2重量%であるのが好ましい。0.1重量%未満では、架橋に対する効果が十分に得られず経時ハガレが発生する。一方、10重量%を超えると、粘着剤層の架橋度が高くなりすぎて、加湿条件下でも一部残存している架橋構造により、粘着剤層が硬くなりすぎて界面密着性が低下して加湿ハガレが発生する。
【0034】
前記可逆性モノマー(b)が有する官能基(x1)としては、官能基(x2)との関係で、脱水および加水分解反応に係わる可逆反応を生じやすく、かつ水の存在下では架橋反応しにくく、水分散液の安定性が良好の点から、例えば、アルデヒド基、ケト基、カルボキシル基が好適である。従って、可逆性モノマー(b)としてはアルデヒド基含有モノマー、ケト基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマーが好適である。特に、可逆性モノマー(b)としては、アルデヒド基含有モノマーまたはケト基含有モノマーが好適に用いられる。
【0035】
アルデヒド基含有モノマーは、アルデヒド基および(メタ)アクリロイル基、ビニル基等のラジカル重合性の不飽和二重結合を有するものを例示できる。例えば、(メタ)アクロレイン、N−ビニルホルムアミド、ホルミルスチレン等が挙げられる。
【0036】
ケト基含有モノマーは、ケト基および(メタ)アクリロイル基、ビニル基等のラジカル重合性の不飽和二重結合を有するものを例示できる。例えば、(メタ)アクリル酸アセトアセトキシエチル、(メタ)アクリル酸アセトアセトキシブチル、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリレート、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン等の4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン等が挙げられる。
【0037】
カルボキシル基含有モノマーは、カルボキシル基および(メタ)アクリロイル基、ビニル基等のラジカル重合性の不飽和二重結合を有するものを例示でき、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレートなどが挙げられる。
【0038】
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)には、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)および可逆性モノマー(b)の他に、水分散液の安定化、粘着剤層の光学フィルム等の基材に対する密着性の向上、さらには、被着体に対する初期接着性の向上などを目的として、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合に係る重合性の官能基を有する、1種類以上の共重合モノマーを共重合により導入することができる。
【0039】
可逆性モノマー(b)としてカルボキシル基含有モノマーを用いない場合には、共重合性モノマーとして、カルボキシル基含有モノマーを用いることが好ましい。特に、前記可逆性モノマー(b)としてアルデヒド基含有モノマーまたはケト基含有モノマーを用いる場合には、共重合モノマーとして、カルボキシル基含有モノマーを用いることが好ましい。カルボキシル基含有モノマーとしては、前記例示のものが用いられる。カルボキシル基含有モノマーは、可逆性モノマー(b)としても例示されるが、カルボキシル基が、架橋剤が有する官能基との関係で、可逆性モノマー(b)として機能しない場合には、粘着剤の接着性向上とエマルションへの安定性付与のために、カルボキシル基含有モノマーを用いることが好ましい。
【0040】
カルボキシル基含有モノマーは、(メタ)アクリル系共重合体(A)の総モノマー単位の0.1〜10重量%含有するのが好ましく、さらには0.5〜7重量%、さらには1〜5重量%であるのが好ましい。カルボキシル基含有モノマーの割合を0.1重量%以上とすることで、エマルションに機械的な安定性を付与でき、エマルションにシェアがかかった場合の凝集物の発生を抑えることができる。また、10重量%以下とすることは、粘着剤層の水溶性を抑えて、加湿耐久性を満足させるうえで好ましい。
【0041】
前記共重合モノマーとしては、アルコキシシリル基含有モノマーが挙げられる。アルコキシシリル基含有モノマーは、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の不飽和二重結合を1個以上有し、かつ、アルコキシシリル基を有する、シランカップリング剤系不飽和モノマーである。アルコキシシリル基含有モノマーは、(メタ)アクリル系共重合体(A)へ架橋構造を付与し、またガラスへの密着性を向上するうえで好ましい。
【0042】
前記アルコキシシリル基含有モノマーとしてはアルコキシシリル基含有(メタ)アクリレートモノマーや、アルコキシシリル基含有ビニルモノマーなどが含まれる。アルコキシシリル基含有(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシメチル−トリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチル−トリエトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−トリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−トリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリイソプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリブトキシシランなどの(メタ)アクリロイルオキシアルキル−トリアルコキシシラン;例えば、(メタ)アクリロイルオキシメチル−メチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチル−メチルジエトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−メチルジメトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−メチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジイソプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジブトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジイソプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジブトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−プロピルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−プロピルジエトキシシランなどの(メタ)アクリロイルオキシアルキル−アルキルジアルコキシシランや、これらに対応する(メタ)アクリロイルオキシアルキル−ジアルキル(モノ)アルコキシシランなどが挙げられる。また、アルコキシシリル基含有ビニルモノマーとしては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシランなどのビニルトリアルコキシシランの他、これらに対応するビニルアルキルジアルコキシシランや、ビニルジアルキルアルコキシシラン、例えば、ビニルメチルトリメトキシシラン、ビニルメチルトリエトキシシラン、β−ビニルエチルトリメトキシシラン、β−ビニルエチルトリエトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリメトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリエトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリプロポキシシラン、γ−ビニルプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−ビニルプロピルトリブトキシシランなどのビニルアルキルトリアルコキシシランの他、これらに対応する(ビニルアルキル)アルキルジアルコキシシランや、(ビニルアルキル)ジアルキル(モノ)アルコキシシランなどが挙げられる。
【0043】
前記アルコキシシリル基含有モノマーの割合は、(メタ)アクリル系共重合体(A)の総モノマー単位の0.001〜1重量%であることが好ましく、さらには0.01〜0.5重量%、さらには0.03〜0.1重量%であるのが好ましい。0.001重量%未満では、アルコキシシリル基含有モノマーを用いる効果(架橋構造の付与、ガラスへの密着性)を十分には得られず、一方、1重量%を超えると、粘着剤層の架橋度が高くなりすぎて、経時での粘着剤層の割れなどが発生するおそれがある。
【0044】
また、共重合モノマーとしては、リン酸基含有モノマーが挙げられる。リン酸基含有モノマーは、ガラスへの密着性を向上させる効果がある。
【0045】
リン酸基含有モノマーとしては、例えば、下記一般式(1):
【化1】

(一般式(1)中、R1は、水素原子またはメチル基を示し、R2は炭素数1〜4のアルキレン基、mは2以上の整数を示し、M1およびM2は、それぞれ独立に、水素原子またはカチオンを示す。)で表されるリン酸基またはその塩を示す。)で表されるリン酸基含有モノマーが挙げられる。
【0046】
なお、一般式(2)中、mは、2以上、好ましくは、4以上、通常40以下であり、mは、オキシアルキレン基の重合度を表す。また、ポリオキシアルキレン基としては、例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基等が挙げられ、これらポリオキシアルキレン基は、これらのランダム、ブロックまたはグラフトユニットなどであってもよい。また、リン酸基の塩に係る、カチオンは、特に制限されず、例えば、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、例えば、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属などの無機カチオン、例えば、4級アミン類などの有機カチオンなどが挙げられる。
【0047】
前記リン酸基含有モノマーの割合は、(メタ)アクリル系共重合体(A)の総モノマー単位の0.1〜20重量%であることが好ましい。0.1重量%未満では、リン酸基含有モノマーを用いる効果(線状気泡発生の抑制)を十分には得られず、一方、20重量%を超えると、重合安定性の点で好ましくない。
【0048】
前記アルコキシシリル基含有モノマー、リン酸基含有モノマー以外の共重合モノマーの具体例としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマー;例えば、(メタ)アクリル酸フェニルなどの(メタ)アクリル酸アリールエステル、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;例えば、スチレンなどのスチレン系モノマー;例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのエポキシ基含有モノマー;例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどのヒドロキシル基含有モノマー;例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどの窒素原子含有モノマー;例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどのアルコキシ基含有モノマー;例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノ基含有モノマー;例えば、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどの官能性モノマー;例えば、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレンなどのオレフィン系モノマー;例えば、ビニルエーテルなどのビニルエーテル系モノマー;例えば、塩化ビニルなどのハロゲン原子含有モノマー;その他、例えば、N−ビニルピロリドン、N−(1−メチルビニル)ピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール、N−ビニルモルホリンなどのビニル基含有複素環化合物や、N−ビニルカルボン酸アミド類などが挙げられる。
【0049】
また、共重合性モノマーとして、例えば、N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系モノマー;例えば、N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミドなどのイタコンイミド系モノマー;例えば、N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミドなどのスクシンイミド系モノマー;例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマーが挙げられる。
【0050】
また、共重合性モノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどのグリコール系アクリルエステルモノマー;その他、例えば、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルや、フッ素(メタ)アクリレートなどの複素環や、ハロゲン原子を含有するアクリル酸エステル系モノマーなどが挙げられる。
【0051】
さらに、共重合性モノマーとして、水分散型粘着剤のゲル分率の調整などのために、前記アルコキシシリル基含有モノマー以外の、多官能性モノマーを用いることができる。多官能モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の不飽和二重結合を2個以上有する化合物などが挙げられる。例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(モノまたはポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレートや、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(モノまたはポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(モノまたはポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの他、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル化物;ジビニルベンゼン等の多官能ビニル化合物;(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ビニル等の反応性の異なる不飽和二重結合を有する化合物等が挙げられる。また、多官能性モノマーとしては、ポリエステル、エポキシ、ウレタンなどの骨格にモノマー成分と同様の官能基として(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の不飽和二重結合を2個以上付加したポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートなどを用いることもできる。
【0052】
前記アルコキシシリル基含有モノマー、リン酸基含有モノマー以外の共重合性モノマーが単官能モノマーの場合にはその割合は、エマルションの粘度が高くなりすぎず、またエマルションの安定性の点から、(メタ)アクリル系共重合体(A)の総モノマー単位の20重量%以下であることが好ましく、さらには10重量%以下、さらには5重量%以下であるのが好ましい。共重合性モノマーが多官能モノマーの場合にはその割合は、エマルションの安定性の点から、(メタ)アクリル系共重合体(A)の総モノマー単位の5重量%以下であることが好ましく、さらには3重量%以下、さらには1重量%以下であるのが好ましい。
【0053】
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)の水分散液は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)および可逆性モノマー(b)を含有するモノマー成分を界面活性剤およびラジカル重合開始剤の存在下に水中で重合することにより得られる。前記重合の形態としては、乳化重合または懸濁重合、分散重合が挙げられ、乳化重合の場合にはポリマーエマルションが、懸濁重合の場合にはポリマーサスペンジョン、分散重合の場合にはポリマーディスパージョンが得られる。前記粘着剤の種類に応じて粘着性のポリマーの種類や重合手段が選択される。また、界面活性剤は、乳化重合の場合には乳化剤が、懸濁重合の場合には分散剤が、各重合形態に応じて適宜に選択される。
【0054】
本発明の水分散型粘着剤における水分散液としては、乳化重合により得られたポリマーエマルションを用いたエマルション型粘着剤が好ましい。
【0055】
前記モノマー成分の乳化重合は、常法により行なった。これにより(メタ)アクリル系共重合体(A)をベースポリマーとして含有する水分散液(ポリマーエマルション)を調製する。乳化重合では、例えば、上記したモノマー成分とともに、界面活性剤(乳化剤)、ラジカル重合開始剤、必要に応じて連鎖移動剤などが適宜配合される。より具体的には、例えば、一括仕込み法(一括重合法)、モノマー滴下法、モノマーエマルション滴下法などの公知の乳化重合法を採用することができる。なお、モノマー滴下法では、連続滴下または分割滴下が適宜選択される。これらの方法は適宜に組み合わせることができる。反応条件などは、適宜選択されるが、重合温度は、例えば、40〜95℃程度であるのが好ましくり、重合時間は30分間〜24時間程度あるのが好ましい。
【0056】
乳化重合に用いられる界面活性剤(乳化剤)は、特に制限されず、乳化重合に通常使用される各種の界面活性剤が用いられる。界面活性剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤が用いられる。アニオン系界面活性剤の具体例としては、オレイン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩類;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩類;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩類;ポリオエキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩類;モノオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルスルホコハク酸ナトリウム等のアルキルスルホコハク酸エステル塩およびその誘導体類;ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩類等を例示することができる。ノニオン系界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート等のソルビタン高級脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等のポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート等のポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル類;オレイン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド等のグリセリン高級脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロックコポリマー、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル等を例示することができる。
【0057】
また、上記非反応性界面活性剤の他に、界面活性剤としては、エチレン性不飽和二重結合に係るラジカル重合性官能基を有する反応性界面活性剤を用いることができる。反応性界面活性剤としては、前記アニオン系界面活性剤やノニオン系界面活性剤に、プロペニル基やアリルエーテル基などのラジカル重合性官能基(ラジカル反応性基)が導入されたラジカル重合性界面活性剤などが挙げられる。これら界面活性剤は、適宜、単独または併用して用いられる。これらの界面活性剤の中でも、ラジカル重合性官能基を有したラジカル重合性界面活性剤は、水分散液の安定性、粘着剤層の耐久性の観点から、好ましく使用される。
【0058】
アニオン系反応性界面活性剤の具体例としては、アルキルエーテル系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製アクアロンKH−05、KH−10、KH−20、旭電化工業株式会社製アデカリアソープSR−10N、SR−20N、花王株式会社製ラテムルPD−104等);スルフォコハク酸エステル系(市販品としては、例えば、花王株式会社製ラテムルS−120、S−120A、S−180P、S−180A、三洋化成株式会社製エレミノールJS−2等);アルキルフェニルエーテル系もしくはアルキルフェニルエステル系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製アクアロンH−2855A、H−3855B、H−3855C、H−3856、HS−05、HS−10、HS−20、HS−30、BC−05、BC−10、BC−20、旭電化工業株式会社製アデカリアソープSDX−222、SDX−223、SDX−232、SDX−233、SDX−259、SE−10N、SE−20N);(メタ)アクリレート硫酸エステル系(市販品としては、例えば、日本乳化剤株式会社製アントックスMS−60、MS−2N、三洋化成工業株式会社製エレミノールRS−30等);リン酸エステル系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製H−3330PL,旭電化工業株式会社製アデカリアソープPP−70等)が挙げられる。ノニオン系反応性界面活性剤としては、例えばアルキルエーテル系(市販品としては、例えば、旭電化工業株式会社製アデカリアソープER−10、ER−20、ER−30、ER−40、花王株式会社製ラテムルPD−420、PD−430、PD−450等);アルキルフェニルエーテル系もしくはアルキルフェニルエステル系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製アクアロンRN−10、RN−20、RN−30、RN−50、旭電化工業株式会社製アデカリアソープNE−10、NE−20、NE−30、NE−40等);(メタ)アクリレート硫酸エステル系(市販品としては、例えば、日本乳化剤株式会社製RMA−564、RMA−568、RMA−1114等)が挙げられる。
【0059】
前記界面活性剤の配合割合は、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)および可逆性モノマー(b)を含有するモノマー成分100重量部に対して、0.3〜5重量部であるのが好ましい。界面活性剤の配合割合により粘着特性、さらには重合安定性、機械的安定性などの向上を図ることができる。前記界面活性剤の配合割合は、0.3〜3重量部がより好ましい。
【0060】
ラジカル重合開始剤としては、特に制限されず、乳化重合に通常使用される公知のラジカル重合開始剤が用いられる。例えば、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩などのアゾ系開始剤;例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩系開始剤;例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素などの過酸化物系開始剤;例えば、フェニル置換エタンなどの置換エタン系開始剤;例えば、芳香族カルボニル化合物などのカルボニル系開始剤などが挙げられる。これら重合開始剤は、適宜、単独または併用して用いられる。また、乳化重合を行なうに際して、所望により重合開始剤とともに還元剤を併用するレドックス系開始剤とすることができる。これにより、乳化重合速度を促進したり、低温において乳化重合をおこなったりすることが容易になる。このような還元剤としては、例えば、アスコルビン酸、エルソルビン酸、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖、ホルムアルデヒドスルホキシラートなどの金属塩等の還元性有機化合物;チオ硫酸案トリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等の還元性無機化合物;塩化第一鉄、ロンガリット、二酸化チオ尿素などを例示できる。
【0061】
また、ラジカル重合開始剤の配合割合は、適宜選択されるが、モノマー成分100重量部に対して、例えば、0.02〜1重量部程度であり、好ましくは0.02〜0.5重量部、より好ましくは0.08〜0.3重量部である。0.02重量部未満であると、ラジカル重合開始剤としての効果が低下する場合があり、1重量部を超えると、水分散液(ポリマーエマルション)に係る(メタ)アクリル系共重合体(A)の分子量が低下し、水分散型粘着剤の耐久性が低下する場合がある。なお、レドックス系開始剤の場合には、還元剤は、モノマー成分の合計量100重量部に対して、0.01〜1重量部の範囲で用いるのが好ましい。
【0062】
連鎖移動剤は、必要により、水分散型の(メタ)アクリル系ポリマーの分子量を調節するものであって、通常、乳化重合に通常使用される連鎖移動剤が用いられる。例えば、1−ドデカンチオール、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸2−エチルへキシル、2,3−ジメチルカプト−1−プロパノール、メルカプトプロピオン酸エステル類などのメルカプタン類などが挙げられる。これら連鎖移動剤は、適宜、単独または併用して用いられる。また、連鎖移動剤の配合割合は、モノマー成分100重量部に対して、例えば、0.001〜0.3重量部である。
【0063】
このような乳化重合によって、(メタ)アクリル系共重合体(A)を水分散液(エマルション)として調製することができる。このような水分散型の(メタ)アクリル系共重合体(A)は、その平均粒子径が、例えば、0.05〜3μm、好ましくは、0.05〜1μmに調整される。平均粒子径が0.05μmより小さいと、水分散型粘着剤の粘度が上昇する場合があり、1μmより大きいと、粒子間の融着性が低下して凝集力が低下する場合がある。
【0064】
また、前記水分散液の分散安定性を保つために、前記水分散液に係る(メタ)アクリル系共重合体(A)が、モノマー単位としてカルボキシル基含有モノマーを含有している場合、当該カルボキシル基含有モノマー等を中和することが好ましい。中和は、例えば、アンモニア、水酸化アルカリ金属等により行なうことができる。
【0065】
本発明の水分散型の(メタ)アクリル系共重合体(A)は、通常、重量平均分子量は100万以上のものが好ましい。特に重量平均分子量で100万〜400万のものが耐熱性、耐湿性の点で好ましい。重量平均分子量が100万未満であると耐熱性、耐湿性が低下し好ましくない。また乳化重合で得られる粘着剤はその重合機構より分子量が非常に高分子量になるので好ましい。ただし、乳化重合で得られる粘着剤は一般にはゲル分が多くGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)で測定できないので分子量に関する実測定での裏付けは難しいことが多い。
【0066】
本発明の光学フィルム用水分散型粘着剤組成物は、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)の水分散液と、架橋剤(B)を含有する。架橋剤(B)は、可逆性モノマー(b)が有する官能基(x1)に対して脱水および加水分解反応に係わる可逆的な反応を生じる官能基(x2)を分子中に少なくとも2個有する化合物である。官能基(x2)は、可逆性モノマー(b)が有する官能基(x1)との関係で脱水および加水分解反応に係わる可逆的な反応を生じる組み合わせになるように選択される。
【0067】
可逆性モノマー(b)が、例えば、アルデヒド基含有モノマーまたはケト基含有モノマーの場合には、官能基(x2)を有する架橋剤としてはヒドラジノ基、セミカルバジド基を少なくとも2個有するヒドラジン系架橋剤が好適である。ヒドラジノ基を少なくとも2個有する化合物としては、例えば、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等の脂肪族多塩基酸のポリヒドラジド;芳香族酸多塩基酸のポリヒドラジド;ポリアクリル酸のポリヒドラジド;芳香族炭化水素のポリヒドラジド;ヒドラジン‐ピリジン誘導体;マレイン酸ジヒドラジド等の不飽和多塩基酸のポリヒドラジド;炭酸ポリヒドラジド等が挙げられる。また、セミカルバジド基を少なくとも2個有する化合物としては、例えば、脂肪族、脂環族、芳香族等のポリセミカルバジド等のセミカルバジド系化合物を用いることができる。
【0068】
可逆性モノマー(b)が、例えば、カルボキシル基含有モノマーの場合には、官能基(x2)を有する架橋剤としては、少なくとも2価の金属イオンを提供できる金属塩や金属キレート化合物が挙げられる。金属塩としては、例えば、酢酸亜鉛アンモニウム、亜鉛アンモニウムカーボネート、ジルコニルアンモニウムカーボネートが挙げられる。金属キレート化合物としては、例えば、Ti、Zr又はAlから選ばれる元素の金属キレート化合物が挙げられる。金属キレート化合物の具体例としては、金属元素Mがチタニウムまたはジルコニウム元素の場合には、一般式(R34-nM(R4nで示され、Mがアルミニウム元素の場合には、一般式(R33-mM(R4mで示されるアルコキシド化合物またはアルコキシル基置換アルコキシド化合物[ここで、nは2〜4の整数であり、mは2〜3の整数であり、R3はエチル基、アミル基、フェニル基、ビニル基、β−(3,4−エポキシクロヘキシル)基、γ−メルカプトプロピル基、アミノアルキル基などの置換基を表わし、R4は通常炭素原子数1〜8のアルコキシ基(たとえば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基、イソペントキシ基、n−ヘキソキシ基、n−ヘプトキシ基、n−オクトキシ基など)または合計の炭素原子数が2〜10のアルコキシ置換アルコキシ基(例えば、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシブトキシ基、ブトキシペントキシ基など)を表わす]に、マレイン酸などのジカルボン酸類;ジアセトンアルコールなどのケトンアルコール;アセトチルアセトンなどのジケトン;アセト酢酸エチルなどのケトンエステル;マロン酸エチルなどのジエステル;サリチル酸;サリチルアルデヒド;カテコール、ピロガロールなどの2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール類;トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミノアルコールなどのアルカノールアミン類などをリガンド(配位子)として結合せしめることにより得られる、2個以上、好ましくは2〜3個の金属アルコキシド結合(アルコキシ置換アルコキシド結合も含む)を有する配位化合物(錯化合物)が挙げられる。
【0069】
前記架橋剤(B)の配合割合は特に限定されないが、通常、(メタ)アクリル系共重合体(A)がモノマー単位として含有する可逆性モノマー(b)が有する官能基(x1)の1当量に対して、架橋剤(B)が有する官能基(x2)が、0.05〜3当量になるように配合することが、加湿ハガレと経時ハガレの両方の発生を抑制する点から好ましい。0.05当量未満では、架橋の効果が十分に得られない場合がある。3当量を超えると架橋度が高くなりすぎて加湿条件下でも一部残存している架橋構造により、粘着剤層が硬くなりすぎて界面密着性が低下して加湿ハガレが発生するおそれがある。架橋剤(B)の配合割合は、0.1〜2当量が好ましく、さらには0.2〜1当量が好ましい。
【0070】
なお、架橋剤(B)とともに、他の架橋剤を用いることができる。前記他の架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤などの一般に用いられているものを使用できる。これら架橋剤は、官能基含有単量体を用いることにより(メタ)アクリル系ポリマー中に導入した官能基と反応して架橋する効果を有する。しかし、これら架橋剤は、粘着剤層に凝集力を付与できるものの、架橋剤を用いると、密着性が悪くなり加湿ハガレが生じやすくなる傾向があり、その使用割合は(メタ)アクリル系共重合体(A)の水分散液の固形分100重量部に対して、0.5重量部以下であるのが好ましい。
【0071】
なお、本発明の水分散型粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系共重合体(A)の水分散液と架橋剤(B)を含有するが、これらの固形分重量の合計は、光学フィルム用水分散型粘着剤組成物に係る水分散液の固形分重量の80重量%以上、さらには90重量%以上、さらには95重量%以上になるように、さらには100%になるように用いるのが好ましい。他の成分の割合は10重量%以下の割合で用いるのが粘着剤層のヘイズの悪化を抑制する点から好ましい。
【0072】
さらには、本発明の水分散型粘着剤組成物は、必要に応じて、粘度調整剤、剥離調整剤、粘着付与剤、可塑剤、軟化剤、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤、顔料、着色剤(顔料、染料など)、pH調整剤(酸または塩基)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤等を、また本発明の目的を逸脱しない範囲で各種の添加剤を適宜に使用することもできる。また微粒子を含有して光拡散性を示す粘着剤層などとしても良い。これら添加剤もエマルションとして配合することができる。
【0073】
本発明の光学フィルム用粘着剤層は、上記水分散型粘着剤組成物により形成される。粘着剤層の形成は、支持基材(光学フィルムまたは離型フィルム)に上記水分散型粘着剤を塗布した後、乾燥することより形成することができる。
【0074】
本発明の粘着剤型光学フィルムは、光学フィルム片面または両面に前記粘着剤層を積層したものである。本発明の粘着型光学フィルムは、前記水分散型粘着剤組成物を、光学フィルムまたは離型フィルムに塗布し、乾燥することにより形成される。粘着剤層を離型フィルムに形成した場合には、当該粘着剤層は光学フィルムに貼り合せて転写する。
【0075】
上記水分散型粘着剤組成物の塗布工程には、各種方法が用いられる。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーターなどによる押出しコート法などの方法が挙げられる。
【0076】
また、前記塗布工程では、形成される粘着剤層が所定の厚み(乾燥後厚み)になるようにその塗布量が制御される。粘着剤層の厚み(乾燥後厚み)は、通常、1〜100μm程度、好ましくは5〜50μm、さらに好ましくは10〜40μmの範囲に設定される。
【0077】
次いで、粘着剤層の形成にあたっては、塗布された水分散型粘着剤に対して乾燥が施される。乾燥温度は、通常、80〜170℃程度、好ましくは80〜160℃であり、乾燥時間0.5〜30分間程度、好ましくは1〜10分間である。
【0078】
前記粘着剤層は、前記方法にて測定される、環境下60℃、7%R.H.での伸び率(L60)が250%以下であり、環境下60℃、7%R.H.での伸び率(L60)と、環境下60℃、90%R.H.での伸び率(L60−90)との比率{(L60−90)/(L60)}が1.5以上、であることが好ましい。測定方法は詳しくは実施例に記載される。伸び率(L60)は230%以下が好ましく、さらには200%以下が好ましい。伸び率(L60)が250%以下であれば、粘着剤層の凝集力がよく、経時ハガレを抑制するうえで好ましい。また比率{(L60−90)/(L60)}は1.8以上が好ましく、さらには2以上が好ましい。前記比が1.5以上であれば、加湿条件下において粘着剤層が軟らかくなりにくく接着力の低下による加湿ハガレを抑制するうえで好ましい。
【0079】
また、前記粘着剤層は、ゲル分率が70〜95重量%未満であることが好ましい。ゲル分率は、75〜93重量%が好ましく、さらには80〜90重量%が好ましい。ゲル分率を70重量%以上とすることは、粘着剤層の凝集力がよく、経時ハガレを抑制するうえで好ましい。ゲル分率を95重量%未満とすることは、粘着剤層が硬くなりすぎず、ガラス界面との密着性を確保でき、加湿ハガレを抑制するうえで好ましい。なお、ゲル分率は下記方法により測定される。
<ゲル分率の測定>
粘着剤層を約0.1gとり、これを秤量して重量W(g)を測定した。次いで、前記粘着剤層を約50mlの酢酸エチルに23℃下で7日間浸漬した後、可溶分を抽出した。その後、上記粘着剤層を酢酸エチル中から取り出し、これを120℃で2時間乾燥し、全体の重量W(g)を測定した。これらの測定値から、
下記の式:ゲル分率(重量%)=〔(W−W)/W〕×100
により算出される値を粘着剤層のゲル分率(重量%)とした。
【0080】
前記粘着剤層は、粘着剤層の厚さが20μmの場合のヘイズ値(H20)が0〜1%を満足することができ、粘着型光学フィルムに要求される透明性を有しており好ましい。ヘイズ値(H20)は0〜0.8%であることが好ましく、さらには0〜0.5%であることが好ましい。
【0081】
離型フィルムの構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルム、紙、布、不織布などの多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、およびこれらのラミネート体などの適宜な薄葉体などを挙げることができるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0082】
そのプラスチックフィルムとしては、前記粘着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフイルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムなどが挙げられる。
【0083】
前記離型フィルムの厚みは、通常5〜200μm、好ましくは5〜100μm程度である。前記離型フィルムには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉などによる離型および防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型などの帯電防止処理もすることもできる。特に、前記離型フィルムの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの剥離処理を適宜おこなうことにより、前記粘着剤層からの剥離性をより高めることができる。
【0084】
前記粘着剤層が露出する場合には、実用に供されるまで離型フィルムで粘着剤層を保護してもよい。なお、上記の剥離フィルムは、そのまま粘着型光学フィルムのセパレータとして用いることができ、工程面における簡略化ができる。
【0085】
また、光学フィルムの表面に、粘着剤層との間の密着性を向上させるために、アンカー層を形成したり、コロナ処理、プラズマ処理などの各種易接着処理を施した後に粘着剤層を形成することができる。また、粘着剤層の表面には易接着処理をおこなってもよい。
【0086】
上記アンカー層の形成材としては、好ましくは、ポリウレタン、ポリエステル、分子中にアミノ基を含むポリマー類、オキサゾリニル基を含むポリマー類から選ばれるアンカー剤が用いられ、特に好ましくは、分子中にアミノ基を含んだポリマー類、オキサゾリニル基を含むポリマー類である。分子中にアミノ基を含むポリマー類、オキサゾリニル基を含むポリマー類は、分子中のアミノ基、オキサゾリニル基が粘着剤中のカルボキシル基等と反応またはイオン性相互作用などの相互作用を示すため、良好な密着性が確保される。
【0087】
分子中にアミノ基を含むポリマー類としては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリジン、ジメチルアミノエチルアクリレート等の含アミノ基含有モノマーの重合体などを挙げることができる。
【0088】
光学フィルムとしては、液晶表示装置等の画像表示装置の形成に用いられるものが使用され、その種類は特に制限されない。例えば、光学フィルムとしては偏光板が挙げられる。偏光板は偏光子の片面または両面には透明保護フィルムを有するものが一般に用いられる。
【0089】
偏光子は、特に限定されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。これらの偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に5〜80μm程度である。
【0090】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作成することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液や水浴中でも延伸することができる。
【0091】
透明保護フィルムを構成する材料としては、例えば透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、およびこれらの混合物が挙げられる。なお、偏光子の片側には、透明保護フィルムが接着剤層により貼り合わされるが、他の片側には、透明保護フィルムとして、(メタ)アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂または紫外線硬化型樹脂を用いることができる。透明保護フィルム中には任意の適切な添加剤が1種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤などが挙げられる。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは50〜99重量%、さらに好ましくは60〜98重量%、特に好ましくは70〜97重量%である。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量が50重量%以下の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現できないおそれがある。
【0092】
また光学フィルムとしては、例えば反射板や反透過板、位相差板(1/2や1/4等の波長板を含む)、視覚補償フィルム、輝度向上フィルムなどの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層となるものが挙げられる。これらは単独で光学フィルムとして用いることができる他、前記偏光板に、実用に際して積層して、1層または2層以上用いることができる。
【0093】
偏光板に前記光学層を積層した光学フィルムは、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、予め積層して光学フィルムとしたものは、品質の安定性や組立作業等に優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着層等の適宜な接着手段を用いうる。前記の偏光板と他の光学層の接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
【0094】
本発明の粘着型光学フィルムは液晶表示装置等の各種画像表示装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セル等の表示パネルと粘着型光学フィルム、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組み立てて駆動回路を組み込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による粘着型光学フィルムを用いる点を除いて特に限定は無く、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型、VA型、IPS型などの任意なタイプのものを用いうる。
【0095】
液晶セル等の表示パネルの片側又は両側に粘着型光学フィルムを配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による光学フィルムは液晶セル等の表示パネルの片側又は両側に設置することができる。両側に光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであっても良いし、異なるものであっても良い。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【実施例】
【0096】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各例中の部および%はいずれも重量基準である。
【0097】
製造例1
((メタ)アクリル系共重合体エマルションの調製)
容器に、原料としてアクリル酸ブチル940部、アクリル酸50部およびメタクリル酸アセトアセトキシエチル10部を加えて混合して、モノマー混合物を得た。次いで、上記割合で調製したモノマー混合物1000部に対して、反応性界面活性剤(アニオン性)であるアクアロンHS−10(第一工業製薬(株)製)40部、イオン交換水635部を加え、ホモミキサー(特殊機化工業(株)製)を用い、5分間、6000(rpm)で攪拌し、モノマーエマルションを調製した。
【0098】
次に、冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートおよび攪拌羽根を備えた反応容器に、上記で調製したモノマーエマルションのうちの200部およびイオン交換水552部を仕込み、次いで、反応容器を十分窒素置換した後、過硫酸アンモニウム0.6部を添加して、撹拌しながら60℃で1時間重合した。次いで、残りのモノマーエマルションを、反応容器を60℃に保ったまま、これに3時間かけて滴下し、その後、3時間重合して、固形分濃度46.4%のポリマーエマルションを得た。次いで、上記ポリマーエマルションを室温まで冷却した後、これに、濃度10%のアンモニア水を添加してpHを8にし、固形分45.2%の(メタ)アクリル系共重合体エマルション(1)を得た。
【0099】
製造例2
製造例1において、モノマー混合物として、アクリル酸ブチル939.5部、アクリル酸50部、メタクリル酸アセトアセトキシエチル10部および3−メタクリロイルオキシプロピル−トリメトキシシラン(信越化学工業(株)製,KBM−503)0.5部のモノマー混合物を用いたこと以外は、製造例1と同様にして固形分45.3%に調整した、(メタ)アクリル系共重合体エマルション(2)を得た。
【0100】
製造例3
製造例1において、モノマー混合物として、アクリル酸ブチル919.5部、アクリル酸50部、メタクリル酸アセトアセトキシエチル10部、3−メタクリロイルオキシプロピル−トリメトキシシラン(信越化学工業(株)製,KBM−503)0.5部およびモノ[ポリ(プロピレンオキシド)メタクリレート]リン酸エステル(ローディア日華(株)製:商品名「Sipomer PAM−200」)20部のモノマー混合物を用いたこと以外は、製造例1と同様にして固形分45.3%に調整した、(メタ)アクリル系共重合体エマルション(3)を得た。
【0101】
製造例4
製造例1において、モノマー混合物として、アクリル酸ブチル919.5部、アクリル酸50部、ダイアセトンアクリルアミド10部、3−メタクリロイルオキシプロピル−トリメトキシシラン(信越化学工業(株)製,KBM−503)0.5部およびモノ[ポリ(プロピレンオキシド)メタクリレート]リン酸エステル(ローディア日華(株)製:商品名「Sipomer PAM−200」)20部のモノマー混合物を用いたこと以外は、製造例1と同様にして固形分45.3%に調整した、(メタ)アクリル系共重合体エマルション(4)を得た。
【0102】
製造例5
製造例1において、モノマー混合物として、アクリル酸ブチル849.5部、アクリル酸50部、メタクリル酸アセトアセトキシエチル80部、3−メタクリロイルオキシプロピル−トリメトキシシラン(信越化学工業(株)製,KBM−503)0.5部およびモノ[ポリ(プロピレンオキシド)メタクリレート]リン酸エステル(ローディア日華(株)製:商品名「Sipomer PAM−200」)20部のモノマー混合物を用いたこと以外は、製造例1と同様にして固形分45.4%に調整した、(メタ)アクリル系共重合体エマルション(5)を得た。
【0103】
製造例6
製造例1において、モノマー混合物として、アクリル酸ブチル915部、アクリル酸50部、メタクリル酸アセトアセトキシエチル10部、3−メタクリロイルオキシプロピル−トリメトキシシラン(信越化学工業(株)製,KBM−503)5部およびモノ[ポリ(プロピレンオキシド)メタクリレート]リン酸エステル(ローディア日華(株)製:商品名「Sipomer PAM−200」)20部のモノマー混合物を用いたこと以外は、製造例1と同様にして固形分45.4%に調整した、(メタ)アクリル系共重合体エマルション(6)を得た。
【0104】
製造例7
製造例1において、モノマー混合物として、アクリル酸ブチル929.5部、アクリル酸50部、3−メタクリロイルオキシプロピル−トリメトキシシラン(信越化学工業(株)製,KBM−503)0.5部およびモノ[ポリ(プロピレンオキシド)メタクリレート]リン酸エステル(ローディア日華(株)製:商品名「Sipomer PAM−200」)20部のモノマー混合物を用いたこと以外は、製造例1と同様にして固形分45.3%に調整した、(メタ)アクリル系共重合体エマルション(7)を得た。
【0105】
上記製造例1乃至7で得られた(メタ)アクリル系共重合体エマルション(1)乃至(7)のモノマー成分、その割合(重量%)、固形分(重量%)を表1に示す。
【0106】
実施例1
(水分散型粘着剤組成物の調製)
(メタ)アクリル系共重合体エマルション(1)の固形分100部に対して、架橋剤として、アジピン酸ジヒドラジド(ADH,日本化成(株)製)0.16部を配合した。アジピン酸ジヒドラジドの配合量は、(メタ)アクリル系共重合体エマルション(1)のケト基の1当量に対して、ヒドラジノ基が0.2当量になるように調整した。
【0107】
(粘着剤層の形成および粘着型偏光板の作成)
上記水分散型粘着剤組成物を、乾燥後の厚みが20μmとなるように、離型フィルム(三菱化学ポリエステル(株)製,ダイアホイルMRF−38,ポリエチレンテレフタレート基材)上にダイコーターにより塗布した後、120℃で5分間乾燥して、粘着剤層を形成した。当該粘着剤層を、オキサゾリン系共重合体を含有する下塗り剤(エポクロスWS−700,(株)日本触媒製)により形成された膜厚500nmの下塗り層を設けた偏光板(日東電工(株)製,製品名SEG−DU)に転写して、粘着型偏光板を作成した。
【0108】
実施例2乃至9および比較例1乃至3
実施例1において、混合する(メタ)アクリル系共重合体エマルションの種類および架橋剤の種類を表1に示すように変えたこと以外は実施例1と同様にして水分散型粘着剤組成物を得た。また、当該水分散型粘着剤組成物を用いて実施例1と同様にして粘着剤層の形成および粘着型偏光板の作成を行った。
【0109】
上記実施例および比較例で得られた粘着型偏光板について以下の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0110】
[加湿耐久性<加湿ハガレ>]
各実施例および各比較例の粘着型偏光板を、15インチサイズの大きさに切断し、これを、厚さ0.7mmの無アルカリガラス板(コーニング#1737,コーニング(株)製)に貼着し、50℃、0.5MPaのオートクレーブ中に15分間放置した。その後、60℃、90%R.H.の環境気下に500時間処理してから、室温条件(23℃,55%R.H.)に取り出した直後に、処理された粘着型偏光板と無アルカリガラスの間のハガレの度合いを目視で確認し、下記基準で評価した。
5:ハガレの発生なし。
4:粘着型偏光板の端部から0.5mm以内の箇所にハガレが発生している。
3:粘着型偏光板の端部から1.0mm以内の箇所にハガレが発生している。
2:粘着型偏光板の端部から3.0mm以内の箇所にハガレが発生している。
1:粘着型偏光板の端部から3.0mm以上の箇所にハガレが発生している。
【0111】
[高温加湿耐久性<経時ハガレ>]
各実施例および各比較例の粘着型偏光板を、15インチサイズの大きさに切断し、これを、厚さ0.7mmの無アルカリガラス板(コーニング#1737,コーニング(株)製)に貼着し、50℃、0.5MPaのオートクレーブ中に15分間放置した。その後、85℃、85%R.H.の環境気下に100時間処理してから、室温条件(23℃,55%R.H.)に取り出した直後に、処理された粘着型偏光板と無アルカリガラスの間のハガレの度合いを目視で確認し、下記基準で評価した。いずれの例についても、この段階での評価は「5」であり、ハガレの発生は認められなかった。次いで、室温条件(23℃,55%R.H.)に取り出してから240時間保存後に、処理された粘着型偏光板と無アルカリガラスの間のハガレの度合いを目視で確認し、下記基準で評価した。
5:ハガレの発生なし。
4:粘着型偏光板の端部から0.5mm以内の箇所にハガレが発生している。
3:粘着型偏光板の端部から1.0mm以内の箇所にハガレが発生している。
2:粘着型偏光板の端部から3.0mm以内の箇所にハガレが発生している。
1:粘着型偏光板の端部から3.0mm以上の箇所にハガレが発生している。
【0112】
[伸び率]
各例において、粘着剤層の形成に用いた水分散型粘着剤組成物と同様の水分散型粘着剤組成物から、断面積4.6mm、長さ30mmの円柱形状の試験片(粘着剤層)を成形した。次いで、当該試験片を60℃、7%R.H.または60℃、90%R.H.の環境下に1時間放置した後の長さL0(mm)を測定した。また、その後、試験片の一端を固定して、試験片の他端に12gのおもりを取り付けて、試験片を60℃、7%R.H.または60℃、90%R.H.の環境下に2時間垂下させた後の試験片の長さL1(mm)を測定した。
前記の結果から、伸び率(%)={(L1−L0)/L0}×100、を算出した。
環境下60℃、7%R.H.で測定した場合を伸び率(L60)、環境下60℃、90%R.H.で測定した場合を伸び率(L60−90)として、比率{(L60−90)/(L60)}を求めた。
【0113】
[ヘイズ]
各例で得られた、離型フィルムに設けた厚さ20μmの粘着剤層を、50mm×50mmに切断した。その後、粘着剤層を離型フィルムから剥離して、25℃の雰囲気下で、(株)村上色彩技術研究所社製の「HAZEMETER HM−150型」を用いて、JISK−7136に準じて、へイズ値(%)を測定した。
【0114】
【表1】
【0115】
表1から、実施例の粘着型光学フィルム(粘着型偏光板)は透明性がよく、加湿ハガレ、経時ハガレのいずれも満足でき加湿耐久性および高温加湿耐久性が良好であることが分かる。一方、比較例1は、実施例と同様のヒドラジン系架橋剤を用いているが、当該架橋剤の官能基と(メタ)アクリル系共重合体が有する官能基が脱水および加水分解反応に係わる可逆的な反応を生じる組み合わせになっていないため、経時ハガレを満足できていない。また、比較例2、3では、架橋剤を用いていないため、経時ハガレを満足できていない。
【0116】
表中、BA:アクリル酸ブチル、AA:アクリル酸、AAEM:メタクリル酸アセトアセトキシエチル、KBM503:3−メタクリロイルオキシプロピル−トリメトキシシラン(信越化学工業(株)製,KBM−503)、PAM200:モノ[ポリ(プロピレンオキシド)メタクリレート]リン酸エステル(ローディア日華(株)製:商品名「SipomerPAM−200」)、DAAM:ダイアセトンアクリルアミド、を示す。
また、架橋剤に関して、*1:アジピン酸ジヒドラジド(ADH,日本化成(株)製)、*2:セミカルバジド系化合物(ハードナーSC,旭化成ケミカル(株)製)、を示す。比較例1の架橋剤の配合量「0.2」は、実施例1と同じ配合量(0.16部)の架橋剤を配合したことを意味する。