(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、生ごみ等の有機性廃棄物には、ビニル、プラスチック、布(繊維)、割り箸、貝殻、骨、種、砂などの発酵不適物が混在している。そして、前処理ではこのような発酵不適物を除去しつつ可溶化して可溶化液(発酵原料)を生成するが、上記従来のメタン発酵前処理装置では、選別機で発酵不適物を粗選別除去し、また、可溶化槽で発酵不適物を沈殿又は浮上させて分離除去し、さらに、可溶化槽からメタン発酵槽の間に設けたスクリーンを通過させることにより可溶化液から発酵不適物を捕捉除去するようにしている。
【0007】
しかしながら、このメタン発酵前処理装置においては、発酵不適物を選別機や可溶化槽、スクリーンによって高効率で除去しようとすると、発酵不適物とともに可溶化液(発酵原料)の多くも分離されてしまい、可溶化液が極端に減少する。従来、数mm〜数十mm(例えば6mm〜10mm程度)の大きな網目のスクリーンを使用するようにしているため、可溶化槽までで相当部分が微細化する砂、貝殻、卵の殻、骨片等の比較的小さな発酵不適物は、スクリーンを通過することになる。
【0008】
そして、このように発酵不適物が系外に排出されず、可溶化槽からメタン発酵槽に流入することによって、メタン発酵槽及びそれ以後の工程(水処理など)で、槽内や配管、撹拌機、ポンプなどの機器に対し、発酵不適物の堆積、閉塞、摩耗などの機械的トラブルが生じる場合があった。また、系外に排出されず、発酵不適物が大量に系内に蓄積すると、メタン発酵機能が低下する。
【0009】
さらに、可溶化槽の定期清掃やメタン発酵槽からの発酵不適物の排除などを行うために運転を休止する頻度が多くなり、また、このような作業を行っても完全に系内の発酵不適物を除去しきれない場合があった。特に、貝殻、卵の殻などは、含有するカルシウム分がスケールとして系内に蓄積しやすく、また、系内から除去しにくく、運転の障害になっている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のメタン発酵前処理装置は、有機性廃棄物をメタン発酵処理する際の前処理に用いるメタン発酵前処理装置であって、前記有機性廃棄物を可溶化処理する可溶化槽と、前記可溶化槽で前記有機性廃棄物を可溶化処理してなる可溶化液を通過させることにより、前記可溶化液に含まれる発酵不適物を除去する第1固液分離手段のスクリーンと、前記スクリーンで処理した後の可溶化液を受け入れるとともに該可溶化液に遠心力を作用させて前記可溶化液に含まれる発酵不適物を分離する液体サイクロン及び該液体サイクロンで分離した発酵不適物を受け入れて脱水処理する水切装置を有する第2固液分離手段とを備え
、前記水切装置は、前記液体サイクロンで分離した発酵不適物を沈降性不適物濃縮液として受け入れ、さらに発酵不適物を重力沈降させて再濃縮する重力分離装置と、前記液体サイクロンから前記沈降性不適物濃縮液を前記重力分離装置に定量排出させる濃縮液定量排出装置と、前記重力分離装置で再濃縮した発酵不適物をパイプ内に受け入れ、前記パイプ内を移動するブレードによって搬送して排出させる不適物排出装置と、前記沈降性不適物濃縮液の液体成分をオーバーフローで排出する排出口とを備え、前記不適物排出装置の前記パイプは、高低差をつけて配置され、前記不適物排出装置の排出口は、少なくとも前記水切装置の前記排水口のオーバーフロー位置よりも高い位置に配置されており、前記水切装置の前記排水口から排出された前記液体成分は、前記可溶化槽に返送されることを特徴とする。
【0011】
この発明においては、第1固液分離手段のスクリーンによって可溶化液から発酵不適物を除去した後、液体サイクロン及び水切装置を有する第2固液分離手段によって可溶化液から発酵不適物を除去することができる。これにより、可溶化槽までで微細化してスクリーンを通過してしまう砂、貝殻、卵の殻、骨片等の比較的小さな発酵不適物を第2固液分離手段によって可溶化液から除去することが可能になる。
また、濃縮液定量排出装置によって重力分離装置に沈降性不適物濃縮液を液体サイクロンから定量供給(排出)することができ、重力分離装置によって沈降性不適物濃縮液中の発酵不適物を濃縮し、沈降性不適物濃縮液を液体成分と発酵不適物に分離することができ、不適物排出装置によって脱水処理後の発酵不適物を搬送して系内から排出することができる。そして、例えば重力分離装置からオーバーフローさせるなどして分離排出した沈降性不適物濃縮液の液体成分を可溶化槽に返送するように構成すると、さらに発酵不適物を高効率で除去しつつ可溶化液の減少を抑えることが可能になる。また、このように構成した水切装置によって処理することで発酵不適物を確実に減容化することができ、その処分を容易にすることが可能になる。
【0012】
また、本発明のメタン発酵前処理装置においては、前記液体サイクロンで分離した可溶化液を受け入れて可溶化処理する再可溶化槽を備えるとともに、前記再可溶化槽から一部の可溶化液を前記可溶化槽に返送するように構成されていることが望ましい。
【0013】
この発明においては、第2固液分離手段の液体サイクロンで分離した可溶化液を再可溶化槽に送り、その可溶化液の一部を再可溶化槽から可溶化槽に返送して循環させる。そして、この循環によって可溶化液に含まれる発酵不適物の除去を繰り返し行うことができ、発酵不適物の除去効率を上昇させることが可能になる。また、再可溶化槽で可溶化液(発酵原料)のさらなる可溶化を進めることができるとともに、ポンプなどによって再可溶化槽から可溶化槽に返送して可溶化液を循環させることによって可溶化を促進させることが可能になる。
【0014】
また、第2固液分離手段で処理した後の可溶化液が再可溶化槽から可溶化槽に返送されるため、可溶化槽から第1固液分離手段のスクリーン、さらに第2固液分離手段の液体サイクロンに送られる可溶化液の見かけ上の発酵不適物濃度を低下させることでき、また、可溶化液の流動性を改善することができ、発酵不適物の除去を容易にすることができる。さらに、第2固液分離手段で処理した後の可溶化液を再可溶化槽から可溶化槽に返送することで、可溶化槽の容量を最小限にとどめることができ、可溶化槽でのスカム浮上や沈殿によるトラブルリスクを低減させることが可能になる。
【0015】
さらに、本発明のメタン発酵前処理装置においては、前記第1固液分離手段のスクリーンで除去した発酵不適物と、前記第2固液分離手段で除去した発酵不適物とを受け入れて脱水処理する脱水機を備えていることがより望ましい。
【0016】
この発明においては、第2固液分離手段で除去した沈降性の発酵不適物と、第1固液分離手段のスクリーンで除去した浮上性及び沈降性の発酵不適物とを脱水機で脱水処理することにより、これら発酵不適物に含まれた可溶化液(発酵原料)を分離し、可溶化槽に戻すことができる。これにより、発酵不適物を高効率で除去しつつ可溶化液の減少を抑えることが可能になる。また、発酵不適物から水分を除去して発酵不適物を減容化することができ、その処分を容易にすることが可能になる。
【0017】
また、本発明のメタン発酵前処理装置においては、前記可溶化槽と前記スクリーンの間に破砕ポンプを備え、前記破砕ポンプの駆動によって、前記可溶化槽から可溶化液を破砕処理しながら前記スクリーンに送り、且つ、可溶化液の一部を前記破砕ポンプから前記可溶化槽に、あるいは前記スクリーンから前記可溶化槽に返送するように構成されていることがさらに望ましい。
【0018】
この発明においては、破砕ポンプによって可溶化液を可溶化槽からスクリーンに破砕処理しながら送ることで、可溶化液の可溶化を促進させることができるとともに、可溶化液に含まれる発酵不適物の除去効率を上昇させることが可能になる。また、可溶化液の一部を破砕ポンプから可溶化槽に、あるいはスクリーンから可溶化槽に返送することにより、確実に、可溶化液の可溶化を促進させることができるとともに、可溶化液に含まれる発酵不適物の除去効率を上昇させることが可能になる。
【0019】
さらに、本発明のメタン発酵前処理装置においては、前記可溶化槽が、前記有機性廃棄物を受け入れて可溶化する可溶化部と、前記可溶化部で前記有機性廃棄物を可溶化処理してなる可溶化液を前記可溶化部からオーバーフローさせて受け入れる調整部とを備えるとともに、駆動によって、前記可溶化部内の可溶化液を吸引し、破砕処理しながら前記可溶化部に返送する破砕ポンプを備えていてもよい。
【0020】
この発明においては、可溶化槽の可溶化部によって有機性廃棄物を可溶化し、この可溶化部から調整部に可溶化液をオーバーフローさせることで、沈降性の発酵不適物(一部の発酵不適物)を可溶化部に留め、この沈降性の発酵不適物を除去した可溶化液を調整部で一時的に貯留し、沈降性の発酵不適物を除去した可溶化液を調整部からスクリーンに送ることができる。そして、このように可溶化部から調整部に可溶化液をオーバーフローさせるように構成することで、可溶化に寄与する滞留時間を一定に保って安定的に可溶化処理を行うことが可能になる。また、発酵不適物の除去効率を上昇させることが可能になる。
【0021】
さらに、破砕ポンプの駆動によって、可溶化部内の可溶化液を吸引し、破砕処理しながら可溶化部に返送して循環させることにより、可溶化液の可溶化を促進させることができるとともに、確実に、可溶化に寄与する滞留時間を一定に保って安定的に可溶化処理を行うことが可能になる。
【0024】
さらに、本発明のメタン発酵前処理装置においては、前記不適物排出装置のブレードに、前記パイプ内の発酵不適物を掻き揚げつつ搬送するためのブラシが取り付けられていてもよい。
【0025】
この発明においては、ブレードだけではパイプ内の発酵不適物を掻き揚げて搬送しにくい場合に、ブレードにブラシを取り付けることによって、発酵不適物を掻き揚げて確実に搬送することができ、好適に発酵不適物を排出することが可能になる。
【発明の効果】
【0026】
本発明のメタン発酵前処理装置においては、可溶化槽までで微細化してスクリーンを通過してしまう砂、貝殻、卵の殻、骨片等の比較的小さな発酵不適物を第2固液分離手段によって可溶化液から除去することが可能になる。
【0027】
これにより、発酵不適物を除去した好適な状態の可溶化液(発酵原料)をメタン発酵槽に供給することができ、メタン発酵槽及びそれ以後の工程で、槽内や配管、撹拌機、ポンプなどの機器に対し、発酵不適物の堆積、閉塞、摩耗などの機械的トラブルが生じることを防止できる。また、系外に排出されず、発酵不適物が大量に系内に蓄積することがないため、従来と比較し、メタン発酵機能を向上させ、メタンガスの製造歩掛りを向上させることが可能になる。さらに、可溶化槽の定期清掃やメタン発酵槽からの発酵不適物の排除などを行うために運転を休止する頻度を少なくすることも可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、
図1から
図6を参照し、本発明の第1実施形態に係るメタン発酵前処理装置について説明する。ここで、本実施形態は、生ごみ、水産加工廃棄物等の有機性廃棄物(バイオマス原料)をメタン発酵処理する際の前処理に用いるメタン発酵前処理装置に関するものである。
【0030】
本実施形態のメタン発酵前処理装置Aは、
図1に示すように、有機性廃棄物(以下、廃棄物という)S1を受け入れる受入ホッパ1と、破砕機2(2a、2b)と、選別機3と、可溶化槽4と、第1固液分離手段5と、脱水機6と、第2固液分離手段7とを備えて構成されている。
【0031】
破砕機2は、受入ホッパ1から供給された廃棄物S1を破砕処理するためのものであり、本実施形態では、粗破砕機2aと微破砕機2bによって2段階破砕を行うように構成されている。例えば、粗破砕機2aでは、破砕後の粒径が200mm以下となるようにし、その後さらに細かく破砕する微破砕機2bでは、破砕後の粒径が50mm以下となるようにする。
【0032】
ここで、廃棄物S1の種類は多種多様であるため、破砕機2は、必ずしも本実施形態のように限定されるものではなく、持ち込まれる廃棄物S1の形態に応じて、その数、種類、組み合わせなどを適宜選定すればよい。例えば、大型の固形生ごみを多く含むような場合には、粗破砕機2aとして2軸破砕手段又はハンマー破砕手段等を用い、微破砕機2bとして2軸破砕手段を用いことが好ましい。また、繊維分などが少ない生ごみの場合には、例えば圧縮破砕手段を用いることが好ましい。また、水分が少ない生ごみの場合には、例えばパルパー手段を用いることが好ましい。
【0033】
選別機3は、例えば回転ドラム式、篩式などの選別機であり、破砕機2で破砕処理した廃棄物S2に混入しているビニル等の大きな発酵不適物(粗不適物)を粗選別する。
【0034】
可溶化槽4は、選別機3で粗選別処理して一部の発酵不適物を除去した後の廃棄物S3を例えば水分量85%以上の所定の水分量になるように可溶化(スラリー化)するためのものである。また、この可溶化槽4は、選別機3から送られた廃棄物S3を加温装置8で加熱しつつ撹拌することにより可溶化し、可溶化液(発酵原料)S4を生成するように構成されている。また、加温装置8は、例えば、廃棄物S3に蒸気を吹き込んで加熱するように構成されていたり、循環させた廃棄物S3を熱交換によって加熱するように構成されている。そして、本実施形態では、このような加温装置8によって40℃程度になるように加熱して廃棄物S3を可溶化し、可溶化液S4を生成するように構成されている。
【0035】
第1固液分離手段5は、可溶化液S4中に残留して含まれる比較的大きなビニル等の発酵不適物を除去するためのものである。そして、本実施形態において、この第1固液分離手段5は、例えば目開きが1〜20mm程度、好ましくは10〜12mm程度のスクリーンとされ、ポンプ9の駆動とともに可溶化槽4から可溶化液S4を送液して通過させることにより、可溶化液S4中の発酵不適物の一部を捕捉除去する。
【0036】
スクリーン5としては、例えばドラムスクリーン、シーブ等を用いることができる。また、可溶化液S4を通過させるスクリーン5の網部としては、例えば、織金網(金属線を織り込んでなる金網)、パンチングメタル(金属を主体とした素材に孔をあけて加工してなるスクリーン)、ウェッジワイヤ(逆三角形の断面をして異形線を等間隔に並べて目(スリット)を形成したスクリーン)等を用いるようにすればよい。
【0037】
脱水機6は、スクリーン5で捕捉除去した発酵不適物を受け入れ、この発酵不適物を脱水処理するように設けられている。また、本実施形態では、この脱水機6で脱水処理して得た可溶化液S5を可溶化槽4に返送するように構成されている。
【0038】
第2固液分離手段7は、可溶化槽4までで微細化して第1固液分離手段5のスクリーンを通過してしまう砂、貝殻、卵の殻、骨片等の比較的小さな発酵不適物を除去するためのものである。そして、本実施形態において、この第2固液分離手段7は、
図1及び
図2(a)に示すように、液体サイクロン10と水切装置27とを備えて構成されている。また、水切装置27は、ロータリーバルブ(濃縮液定量排出装置)12と、水切タンク(重力分離装置)13と、パイプコンベア(不適物排出装置)11とを備えて構成されている。
【0039】
液体サイクロン10は、スクリーン5を通過し、ポンプ36の駆動とともに可溶化液S6を受け入れ、遠心力を作用させることによって、可溶化液S7と、この可溶化液S7に含まれた発酵不適物とを分離する。
【0040】
そして、第2固液分離手段7は、液体サイクロン10によって分離された沈降性の発酵不適物を含む沈降性不適物濃縮液が、液体サイクロン10の下部に設置された水切装置27のロータリーバルブ12、水切タンク13を通してパイプコンベア11に排出されるように構成されている。すなわち、水切装置27は、液体サイクロン10とロータリーバルブ12が密閉状態で接続し、ロータリーバルブ12の下部の水切タンク13内で一旦大気解放され、液体サイクロン10の下部から排出される沈降性不適物濃縮液を水切タンク13に供給する。また、水切タンク13とパイプコンベア11とは再び密閉状態で接続し、水切タンク13で受け入れた沈降性不適物濃縮液が更に沈殿濃縮したものをパイプコンベア11で受け入れるように構成されている。また、水切タンク13には、液をオーバーフローで排出する排水口21が設けられている。
【0041】
また、パイプコンベア11は、
図2(a)、(b)に示すように、円筒状のパイプ15と、複数のブレード16と、牽引体17と、駆動装置18と、排出口20を備えて構成されている。パイプ15は、高低差をつけて配置され、排出口20は少なくとも水切タンク13の排水口21のオーバーフロー位置よりも高い位置に配置されている。そして、複数のブレード16は、貫通孔を備えて形成されるとともに牽引体17で連結してパイプ15の内部に配置され、駆動装置18の駆動によって牽引体17を牽引するとともにパイプ15の内部を移動するように設けられている。
【0042】
次に、上記構成からなる本実施形態のメタン発酵前処理装置Aを用いて有機性廃棄物(バイオマス原料)S1の前処理を行う方法について説明するとともに、本実施形態のメタン発酵前処理装置Aの作用及び効果について説明する。
【0043】
はじめに、生ごみ等の廃棄物S1を受入ホッパ1に投入し、粗破砕機2a、微破砕機2bで順次廃棄物S1を破砕する。そして、所定の粒径以下になるように破砕した廃棄物S2を選別機3に送り、この選別機3で廃棄物S2に混入しているビニル等の大きな発酵不適物を粗選別するとともに、粗不適物を除去した廃棄物S3を可溶化槽4に送る。
【0044】
次に、可溶化槽4において、廃棄物S3を加温装置8で加熱しつつ撹拌することにより可溶化し、可溶化液S4を生成する。また、ポンプ9を駆動して可溶化槽4から可溶化液S4をスクリーン5に送り、スクリーン5を通過させることで、可溶化液S4に含まれる比較的大きなビニル等の発酵不適物を捕捉除去する。このとき、スクリーン5で捕捉した発酵不適物を脱水機6で脱水処理し、この脱水処理で得た可溶化液S5を可溶化槽4に返送する。これにより、発酵原料の可溶化液S5が系内に戻され、可溶化液S7が減少することを抑えることが可能になる。ちなみに、可溶化液は、低濃度で数千cp、高濃度で数万cpの粘性を有している。
【0045】
一方、スクリーン5を通過した可溶化液S6には、可溶化槽4までで相当部分が微細化する砂、貝殻、卵の殻、骨片等の比較的小さな発酵不適物がスクリーン5で捕捉されずに残留している。
【0046】
これに対し、本実施形態では、このような発酵不適物が残留して含まれた可溶化液S6をポンプ36の駆動によって第2固液分離手段7の液体サイクロン10に送る。そして、可溶化液S7と、この可溶化液S7に含まれた比較的小さな発酵不適物とを分離する。分離した発酵不適物は、ロータリーバルブ12を通じ、沈降性不適物濃縮液として水切タンク13に排出される。水切タンク13で一旦大気開放された沈降性不適物濃縮液は、水切タンク13内で更に重力沈降して再濃縮され、発酵不適物を含まない液分が排水口21から排水され、再濃縮された発酵不適物は水切タンク13下部からパイプコンベア11に排出される。このパイプコンベア11において、駆動装置18の駆動により牽引体17を牽引し、ブレード16がパイプ15内を移動すると、沈降性不適物濃縮液に含まれる発酵不適物は、排出口20まで移送されて排出される。また、水切タンク13の排水口21から排出された沈降性不適物濃縮液の液体成分(可溶化液S8)は、本実施形態では、可溶化槽4に返送される。これにより、発酵原料の可溶化液S8が系内に戻され、可溶化液S7が減少することを抑えることが可能になる。
【0047】
ここで、
図3から
図6に示すように、ブレード16の表面にブラシ19を単数または複数取り付けて構成し、パイプコンベア11のパイプ15内の発酵不適物を効率よく且つ確実にブラシ19で掻き揚げて搬送できるようにしてもよい。このとき、例えば、ブラシ19は、円筒状の取付部22と、取付部22の側面に一体に取り付けられたワイヤーブラシからなる捕捉部23とを備えて構成することが好ましい。また、捕捉部23は、パイプ15の内面に内接し、牽引体17が配される位置に切り込み24を設けて形成することが好ましい。そして、このように構成したブラシ19は、ブレード16に設けられた貫通孔と取付部22の内孔にボルト25を挿通し、ナット26で固定することにより、ブレード16に取り付けられる。このとき、牽引体17と捕捉部23が干渉しないように、牽引体17が捕捉部23の切り込み24部分に配置される。なお、
図6に示すように、取付部22の側面に扇状の捕捉部23を設けてパイプコンベア11を構成してもよい。
【0048】
一方、液体サイクロン10によって処理した後の可溶化液S7がメタン発酵槽(メタン発酵工程)に送られ、この可溶化液S7を発酵原料にしてメタン発酵(メタンガス(バイオ燃料)の生産)が行われる。
【0049】
このため、発酵不適物を除去した好適な状態の可溶化液S7がメタン発酵槽に供給されることになり、メタン発酵槽及びそれ以後の工程で、槽内や配管、撹拌機、ポンプなどの機器に対し、発酵不適物の堆積、閉塞、摩耗などの機械的トラブルが生じることがない。
【0050】
したがって、本実施形態のメタン発酵前処理装置Aにおいては、第1固液分離手段5のスクリーンによって可溶化液S4から発酵不適物を除去した後、液体サイクロン10及び水切装置11、13を有する第2固液分離手段7によって可溶化液S6から発酵不適物を除去することができる。これにより、可溶化槽4までで微細化してスクリーン5を通過してしまう砂、貝殻、卵の殻、骨片等の比較的小さな発酵不適物を第2固液分離手段7によって可溶化液S6から除去することが可能になる。
【0051】
よって、本実施形態のメタン発酵前処理装置Aによれば、発酵不適物を除去した好適な状態の可溶化液(発酵原料)S7をメタン発酵槽に供給することができ、メタン発酵槽及びそれ以後の工程で、槽内や配管、撹拌機、ポンプなどの機器に対し、堆積、閉塞、摩耗などの機械的トラブルが生じることを防止できる。また、系外に排出されず、発酵不適物が大量に系内に蓄積することがないため、従来と比較し、メタン発酵機能を向上させ、メタンガスの製造歩掛りを向上させることが可能になる。さらに、可溶化槽4の定期清掃やメタン発酵槽からの発酵不適物の排除などを行うために運転を休止する頻度を少なくすることも可能になる。
【0052】
また、本実施形態のメタン発酵前処理装置Aにおいては、水切装置27が水切タンク(重力分離装置)13と、ロータリーバルブ(濃縮液定量排出装置)12と、パイプコンベア(不適物排出装置)11とを備えて構成されている。これにより、ロータリーバルブ12によって水切タンク13に沈降性不適物濃縮液を液体サイクロン10から定量供給(排出)することができ、水切タンク13によって沈降性不適物濃縮液中の発酵不適物を濃縮し、沈降性不適物濃縮液を液体成分と発酵不適物に分離することができる。また、パイプコンベア11によって脱水処理後の発酵不適物を搬送して系内から排出することができる。そして、水切タンク13からオーバーフローさせて分離排出した沈降性不適物濃縮液の液体成分を可溶化槽4に返送することで、さらに発酵不適物を高効率で除去しつつ可溶化液の減少を抑えることが可能になる。また、このように構成した水切装置27によって処理することで発酵不適物を確実に減容化することができ、その処分を容易にすることが可能になる。
【0053】
さらに、パイプコンベア11のブレード16に、パイプ15内の発酵不適物を掻き揚げつつ搬送するためのブラシ19を取り付けることによって、ブレード16だけではパイプ15内の発酵不適物を掻き揚げて搬送しにくい場合に、発酵不適物を掻き揚げて確実に搬送することができ、好適に発酵不適物を排出することが可能になる。
【0054】
以上、本発明に係るメタン発酵前処理装置の第1実施形態について説明したが、本発明は上記の第1実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0055】
例えば、本実施形態では、メタン発酵前処理装置Aが受入ホッパ1と破砕機2と選別機3と可溶化槽4と第1固液分離手段5と脱水機6と第2固液分離手段7とを備えて構成されているものとしたが、本発明に係るメタン発酵前処理装置においては、少なくとも可溶化槽4と第1固液分離手段5と第2固液分離手段7を備えて構成されていればよく、これら構成要素4、5、7を備えていれば、本実施形態の作用効果を得ることが可能である。
【0056】
また、
図7に示すように、第2固液分離手段7の液体サイクロン10で分離した可溶化液S7を受け入れる再可溶化槽30を設け、再可溶化槽30から一部の可溶化液S9をポンプ31で可溶化槽4に返送するようにしてもよい。この場合には、本実施形態の作用効果に加え、一部の可溶化液S9を再可溶化槽30から可溶化槽4に返送して循環させることにより、発酵不適物の除去を循環によって繰り返し行うことが可能になる。このため、発酵不適物の除去効率を上昇させることが可能になる。
【0057】
また、液体サイクロン10で分離した可溶化液S7を再可溶化槽30に送り、加温装置32によって再可溶化槽30内の可溶化液S7を加熱することで、さらなる可溶化を進めることができる。さらに、このように再可溶化槽30で可溶化液S7のさらなる可溶化を進めることができるとともに、ポンプ31などによって再可溶化槽30から可溶化槽4に返送して可溶化液S9を循環させることによっても可溶化を促進させることが可能になる。
【0058】
また、第2固液分離手段7によって発酵不適物の除去処理を施した可溶化液S7が再可溶化槽30から可溶化槽4に返送されるため、可溶化槽4からスクリーン5、第2固液分離手段7の液体サイクロン10に送られる可溶化液S4、S6の見かけ上の発酵不適物濃度を低下させることでき、また、可溶化液S4、S6の流動性を改善することができる。これにより、発酵不適物の除去を容易にすることができる。さらに、第2固液分離手段7によって発酵不適物の除去処理を施した可溶化液S7を再可溶化槽30から可溶化槽4に返送することで、可溶化槽4の容量を最小限にとどめることができ、可溶化槽4でのスカム浮上や沈殿によるトラブルリスクを低減させることも可能になる。
【0059】
また、
図8に示すように、第1固液分離手段5のスクリーンで除去した発酵不適物と、第2固液分離手段7で除去した発酵不適物とを受け入れて、脱水機6で脱水処理を施すようにしてもよい。この場合には、第2固液分離手段7で除去した沈降性の発酵不適物と、第1固液分離手段5のスクリーンで除去した浮上性及び沈降性の発酵不適物とを脱水機6で脱水処理することにより、これら発酵不適物に含まれた可溶化液(発酵原料)S5を可溶化槽4に戻すことができる。これにより、発酵不適物を高効率で除去しつつ可溶化液S7の減少を抑えることが可能になる。また、発酵不適物を減容化することができ、その処分を容易にすることが可能になる。
【0060】
次に、
図9を参照し、本発明の第2実施形態に係るメタン発酵前処理装置について説明する。本実施形態は、第1実施形態と同様、生ごみ、水産加工廃棄物等の有機性廃棄物(バイオマス原料)をメタン発酵処理する際の前処理に用いるメタン発酵前処理装置に関するものである。このため、第1実施形態と同様の構成に対しては、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0061】
図9に示すように、本実施形態のメタン発酵前処理装置Bは、第1実施形態と同様、有機性廃棄物(以下、廃棄物という)S1を受け入れる受入ホッパ1と、破砕機2と、選別機3と、可溶化槽4と、第1固液分離手段5と、脱水機6と、第2固液分離手段7とを備えて構成されている。
【0062】
この一方で、本実施形態のメタン発酵前処理装置Aは、可溶化槽4と第1固液分離手段5のスクリーンとの間に破砕ポンプ33を備え、可溶化槽4から破砕ポンプ33の駆動によって可溶化液S4を破砕処理してスクリーン5に送りつつ、可溶化液S6の一部をスクリーン5から可溶化槽4に返送するように構成されている。なお、破砕ポンプ33は、破砕機構を備えたポンプであり、例えば、インペラの前に切刃と固定刃を備えた渦巻きポンプなどである。そして、駆動によって可溶化液S4を圧送するとともに、可溶化液S4中の発酵不適物を破砕(裁断)することができるように構成されている。
【0063】
このように構成した本実施形態のメタン発酵前処理装置Bにおいては、第1実施形態の作用効果に加え、破砕ポンプ33によって可溶化液S4を可溶化槽4からスクリーン5に破砕処理しながら送ることで、可溶化液(発酵原料)S4の可溶化を促進させることができる。
【0064】
また、破砕ポンプ33の駆動によってスクリーン5に送られた可溶化液S4は、第1実施形態と同様に第2固液分離手段7の液体サイクロン10に送られて処理されるとともに、その一部が破砕ポンプ33による圧送力によってスクリーン5から可溶化槽4に返送される。これにより、可溶化液S4、S6が可溶化槽4から破砕ポンプ33、破砕ポンプ33からスクリーン5、スクリーン5から可溶化槽4に循環することになる。
【0065】
このように可溶化液S4、S6が循環することで、可溶化槽4や破砕ポンプ33により、確実に可溶化液S4、S6の可溶化を促進させることができる。また、可溶化液S4、S6が循環することで、可溶化槽4やスクリーン5によって可溶化液S4、S6に含まれた発酵不適物を除去する除去効率を上昇させることが可能になる。
【0066】
以上、本発明に係るメタン発酵前処理装置の第2実施形態について説明したが、本発明は上記の第2実施形態に限定されるものではなく、第1実施形態の変更例を含め、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0067】
例えば、
図10に示すように、可溶化槽4とスクリーン5の間に破砕ポンプ33を備え、可溶化槽4から破砕ポンプ33の駆動によって可溶化液S4を破砕処理してスクリーン5に送りつつ、可溶化液S4の一部を破砕ポンプ33から可溶化槽4に返送するように構成してもよい。この場合においても、本実施形態と同様、破砕ポンプ33によって可溶化液S4を可溶化槽4からスクリーン5に破砕処理しながら送ることで、可溶化液S4の可溶化を促進させることができるとともに、可溶化液S4に含まれた発酵不適物の除去効率を上昇させることが可能になる。また、可溶化液S4の一部を破砕ポンプ33から可溶化槽4に返送することにより、確実に、可溶化液S4の可溶化を促進させることができるとともに、可溶化液S4に含まれた発酵不適物の除去効率を上昇させることが可能になる。
【0068】
さらに、
図11に示すように、選別機3で選別した後の廃棄物S3を受け入れて可溶化する可溶化部34と、可溶化部34からオーバーフローさせた可溶化液S9を受け入れる調整部35とを備えて可溶化槽4を構成してもよい。また、これに加えて、その駆動によって、可溶化部34内の可溶化液S9を吸引し、破砕処理して可溶化部34に返送する破砕ポンプ33を備えるようにしてもよい。
【0069】
そして、この場合においては、可溶化槽4の可溶化部34によって廃棄物S3を可溶化し、この可溶化部34から調整部35に可溶化液S9をオーバーフローさせることで、沈降性の発酵不適物(一部の発酵不適物)を可溶化部34に留め、この沈降性の発酵不適物を除去した可溶化液S9を調整部35に一時的に貯留することができ、調整部35からスクリーン5に送ることができる。このように可溶化部34から調整部35に可溶化液S9をオーバーフローさせるように構成することで、可溶化に寄与する滞留時間を一定に保って安定的に可溶化処理を行うことが可能になるとともに、発酵不適物の除去効率を上昇させることが可能になる。
【0070】
また、破砕ポンプ33によって、可溶化部34内の可溶化液S9を吸引し、破砕処理して可溶化部34に返送して循環させることにより、可溶化を促進させることができるとともに、確実に、可溶化に寄与する滞留時間を一定に保って安定的に可溶化処理を行うことが可能になる。