(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5758145
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】ガス燃料用噴射弁
(51)【国際特許分類】
F02M 21/02 20060101AFI20150716BHJP
F02M 51/06 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
F02M21/02 S
F02M51/06 L
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-31226(P2011-31226)
(22)【出願日】2011年2月16日
(65)【公開番号】特開2012-167650(P2012-167650A)
(43)【公開日】2012年9月6日
【審査請求日】2013年10月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141901
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン
(74)【代理人】
【識別番号】100071870
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 健
(74)【代理人】
【識別番号】100097618
【弁理士】
【氏名又は名称】仁木 一明
(74)【代理人】
【識別番号】100152227
【弁理士】
【氏名又は名称】▲ぬで▼島 愼二
(72)【発明者】
【氏名】瀧口 直人
【審査官】
津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】
特表2007−526425(JP,A)
【文献】
特開2010−236391(JP,A)
【文献】
特開平3−111660(JP,A)
【文献】
特開平7−42650(JP,A)
【文献】
特開2007−40245(JP,A)
【文献】
特開平5−288130(JP,A)
【文献】
特開平9−303207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 21/02
F02M 51/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部をガス燃料通路(6)とすると共に弁体(15)を収容する弁ハウジング(2)の前端部に単一のノズル部材(11)を固設し、このノズル部材(11)に、前記ガス燃料通路(6)に臨む弁座(13)と、この弁座(13)の中心部を貫通していて、弁体(15)及び弁座(13)の協働により開閉される弁孔(45)と、この弁孔(45)の出口に連なる、それより小径で、且つガス燃料を計量する絞り孔(46)と、この絞り孔(46)の出口に連なる、それより大径で、且つそれより長さの長いノズル孔(48)とを形成し、ノズル部材(11)からエンジンの吸気管(E)内にガス燃料を直接噴射するガス燃料用噴射弁であって、
前記ノズル部材(11)の前端部に、このノズル部材(11)の前端部外周面の第1係止溝(51)にスナップ結合される円筒部(52)と、この円筒部(52)の前端に連設されて前記ノズル孔(48)の前方開放面に対向する端壁(53)と、前記円筒部(52)の後端から半径方向に広がるフランジ(54)とからなるノズルキャップ(50)を装着し、前記端壁(53)には、この端壁(53)を貫通して前記ノズル部材(11)の中心軸線(Y)周りで前記ノズル孔(48)に開口する複数のガス燃料噴孔(55)を設けるとともに、前記フランジ(54)先端までの前記円筒部(52)外周面からの長さを前記円筒部(52)の厚さよりも大きく設定し、
前記ノズル部材(11)の中間部外周面の第2係止溝(56)に、前記フランジ(54)の後方に配置されるリング体(57)をスナップ結合して、このリング体(57)と前記フランジ(54)とで、前記第1,第2係止溝(51,56)の溝底よりも半径方向外方に位置する前記ノズル部材(11)の外周面が臨むシール溝(58)を画成し、このシール溝(58)に、前記ノズル部材(2)を前記吸気管(E)の取り付け孔(Ea)に挿入したときに、その内周面に密接するシール部材(59)を装着したことを特徴とするガス燃料用噴射弁。
【請求項2】
請求項1記載のガス燃料用噴射弁において、
各前記ガス燃料噴孔(55)を、それの中心軸線(A)が前記ノズルキャップ(50)の前方に行くにつれて前記ノズル部材(11)の中心軸線(Y)から離れる方向に傾斜するよう形成したことを特徴とするガス燃料用噴射弁。
【請求項3】
請求項1又は2記載のガス燃料用噴射弁において、
前記ガス燃料噴孔(55)の個数を、2ないし6個としたことを特徴とするガス燃料用噴射弁。
【請求項4】
請求項1記載のガス燃料用噴射弁において、
前記端壁(53)を、その前側に頂点(P)を有する円錐形に形成したことを特徴とするガス燃料用噴射弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CNG、LPG等の天然ガスを燃料としてエンジンに供給するガス燃料用噴射弁に関し、特に、内部をガス燃料通路とすると共に弁体を収容する弁ハウジングの前端部にノズル部材を固設し、このノズル部材に、前記ガス燃料通路に臨む弁座と、この弁座の中心部を貫通していて、弁体及び弁座の協働により開閉される弁孔と、この弁孔の出口に連なる、それより小径の絞り孔と、この絞り孔の出口に連なる、それより大径のノズル孔とを形成し、ノズル部材からエンジンの吸気管内にガス燃料を直接噴射するガス燃料用噴射弁の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
かゝるガス燃料用噴射弁は、下記特許文献1に開示されるように既に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−303685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、この種のガス燃料用噴射弁では、弁体の開弁時、ガス燃料通路内の高圧のガス燃料が弁座を通過し、絞り孔で流量を計量された後、ノズル孔に移るが、従来のものでは、絞り孔及びノズル孔間での流路断面積の変化が急激であるため、ガス燃料が絞り孔からノズル孔へ急速に移るとき、絞り孔及びノズル孔間の境界部で流れの剥離現象が生じ、この剥離現象が音源となってノズル孔でノイズが発生し、これが外部に漏れ出すとユーザにとって耳触りな異音となる。
【0005】
そこで、特許文献1に開示されるガス燃料用噴射弁では、ノズル孔の前方開口端を栓体で閉塞し、ノズル部材の周壁にノズル孔に連なる半径方向の複数のガス燃料噴孔を穿設し、ノズル孔で発生したノイズを栓体で遮断して、ノイズの外部への漏れ出しを防ぐと共に、ガス燃料の噴射を可能にしている。しかしながら、そのものでは、各燃料噴孔からのガス燃料の噴射方向は半径方向となり、噴射燃料が吸気管の内壁に衝突してしまうため、吸気管内の吸気流と良好に混合し得るガス燃料の噴霧フォームの形成が困難となる。
【0006】
本発明は、かゝる事情に鑑みてなされたもので、吸気管内の吸気流と良好に混合し得るガス燃料の噴霧フォームの形成を可能にしながら、ノズル部材外へのノイズの漏れ出しを抑えるようにした、静粛なガス燃料用噴射弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、内部をガス燃料通路とすると共に弁体を収容する弁ハウジングの前端部に単一のノズル部材を固設し、このノズル部材に、前記ガス燃料通路に臨む弁座と、この弁座の中心部を貫通していて、弁体及び弁座の協働により開閉される弁孔と、この弁孔の出口に連なる、それより小径で、且つガス燃料を計量する絞り孔と、この絞り孔の出口に連なる、それより大径で、且つそれより長さの長いノズル孔とを形成し、ノズル部材からエンジンの吸気管内にガス燃料を直接噴射するガス燃料用噴射弁であって、前記ノズル部材の前端部に
、このノズル部材の前端部外周面の第1係止溝にスナップ結合される円筒部と、この円筒部の前端に連設されて前記ノズル孔の前方開放面に対向する端壁と、前記円筒部の後端から半径方向に広がるフランジとからなるノズルキャップを装着
し、前記端壁には、この端壁を貫通し
て前記ノズル部材の中心軸線周りで前記ノズル孔に開口する複数のガス燃料噴
孔を設け
るとともに、前記フランジ先端までの前記円筒部外周面からの長さを前記円筒部の厚さよりも大きく設定し、前記ノズル部材の中間部外周面の第2係止溝に、前記フランジの後方に配置されるリング体をスナップ結合して、このリング体と前記フランジとで、前記第1,第2係止溝の溝底よりも半径方向外方に位置する前記ノズル部材の外周面が臨むシール溝を画成し、このシール溝に、前記ノズル部材を前記吸気管の取り付け孔に挿入したときに、その内周面に密接するシール部材を装着したことを第1の特徴とする。
【0008】
また本発明は、第1の特徴に加えて、各前記ガス燃料噴孔を、それの中心軸線が前記ノズルキャップの前方に行くにつれて前記ノズル部材の中心軸線から離れる方向に傾斜するよう形成したことを第2の特徴とする。
【0009】
さらに本発明は、第1又は第2の特徴に加えて、前記ガス燃料噴孔の個数を、2ないし6個としたことを第3の特徴とする。
【0010】
さらにまた本発明は、第1の特徴に加えて、前記端壁を、その前側に頂点を有する円錐形に形成したことを第4の特徴とする
。
【0011】
尚、前記シール部材は、後述する本発明の実施形態中のOリング59に対応する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の特徴によれば、ノズル部材の前端部に
、このノズル部材の前端部外周面の第1係止溝にスナップ結合される円筒部と、この円筒部の前端に連設されてノズル孔の前方開放面に対向する端壁と、前記円筒部の後端から半径方向に広がるフランジとからなるノズルキャップ
を装着し、前記端壁
には、この端壁を貫通して、ノズル部材の中心軸線周りでノズル孔に開口する複数のガス燃料噴
孔を設けたので、複数のガス燃料噴孔からの噴射燃料により、吸気管の内壁に衝突することなく拡散する噴霧フォームを形成し、吸気管内を流下する吸気と良好に混合しながらエンジンに供給され、燃焼効率を高めることができる。
【0013】
しかもこの間、ノズル孔でノイズが発生すると、そのノイズの多くは、ノズルキャップの端壁のガス燃料噴孔の無い部分で遮断されて、ノズル部材外に漏れ出すことが抑えられ、ガス燃料用噴射弁の静粛性を図ることができる。
【0014】
また、ノズルキャップは、フランジ先端までの前記円筒部外周面からの長さが前記円筒部の厚さよりも大きく設定され、このフランジが、ノズル部材に固設されるリング体及び第1,第2係止溝の溝底よりも半径方向外方に位置するノズル部材の外周面と協働して、吸気管の取り付け孔の内面に密接するシール部材を保持する役割を果たすので、取り付け孔のシール構造の簡素化にも寄与し得る。
【0015】
本発明の第2の特徴によれば、複数のガス燃料噴孔からの噴射燃料は、末広がりの噴霧フォームを形成し、吸気管の内壁に衝突することなく理想的に拡散した噴霧フォームを形成することができ、吸気との混合が一層良好となる。
【0016】
本発明の第3の特徴によれば、ガス燃料噴孔での圧損によ
るガス燃料流量の減少を回避しながら、ガス燃料噴孔による噴射燃料の拡散及び端壁による遮音効果を満足させることができる。
【0017】
本発明の第4の特徴によれば、ノズルキャップの端壁の内面に反射したノイズは、ノズル孔の中心部に集中し、互いに減衰し合うことになり、ガス燃料用噴射弁の静粛性を高めることができる
。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るガス燃料用噴射弁の縦断面図。
【
図3】本発明の第2実施形態を示す、
図2との対応図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態を、添付図面に基づいて以下に説明する。
【0020】
先ず、
図1及び
図2に示す本発明の第1実施形態の説明より始める。
【0021】
図1において、本発明に係るガス燃料用噴射弁Iは、エンジンの吸気管Eの管壁に設けられる取り付け孔Eaに前端部が装着され、エンジンの吸気行程時、ガス燃料を吸気管E内に直接噴射する。このガス燃料用噴射弁Iは、円筒状の第1ハウジング部3と、この第1ハウジング部3の後端のフランジ3aに前端部がかしめ結合される、第1ハウジング部3より大径の円筒状の第2ハウジング部4と、この第2ハウジング部4の後端壁4aに一体に連設される、第2ハウジング部4より小径の円筒状の第3ハウジング部5とからなる弁ハウジング2を備えており、この弁ハウジング2内はガス燃料通路6とされる。第1〜第3ハウジング部3〜5は何れも磁性材で構成される。
【0022】
第1ハウジング部3は、その前端に開口する取り付け孔8と、その後端に開口する、取り付け孔8より小径で且つ長い案内孔9とが同軸状に形成されており、取り付け孔8には、環状シム10と円板状のノズル部材11とが順次嵌合されると共に、第1ハウジング部3の前端縁の内方へのかしめにより固着される。その際、ノズル部材11の外周には、取り付け孔8の内周面に密接する環状のシール部材12が装着される。環状シム10は、その厚みの選定によりノズル部材11の嵌合位置を調整するものである。
【0023】
ノズル部材11には、ガス燃料通路6に臨む弁座13と、この弁座13の中心部を貫通する弁孔45と、この弁孔45の出口に連なる、それより小径で、且つガス燃料を計量する絞り孔46と、この絞り孔46の出口にテーパ状の環状段部47を介して連なる、絞り孔46より大径で、且つそれより長さの長いノズル孔48とが設けられる。
【0024】
一方、前記案内孔9には弁体15が摺動可能に収容、保持される。この弁体15は前端側からフランジ部16、短軸部17
1 、第1ジャーナル部18
1 、長軸部17
2 及び第2ジャーナル部18
2 を同軸状に一体に連ねてなるプランジャ19と、上記フランジ部16の前端面に焼き付けて結合されるゴム製の着座部材20とで構成され、この着座部材20が前記弁座13に着座したり離座することで前記弁孔45を開閉することができる。プランジャ19は、可動コアを兼ねるべく磁性材製とされる。
【0025】
上記プランジャ19において、短軸部17
1 及び長軸部17
2 は、第1及び第2ジャーナル部18
1 ,18
2 よりも充分小径に形成され、第1及び第2ジャーナル部18
1 ,18
2 は、共に案内孔9に摺動自在に支承される。
【0026】
第2ハウジング部4にはコイル組立体23が収容される。このコイル組立体23は、ボビン24と、このボビン24の外周に巻装されるコイル25と、このコイル25をボビン24に埋封する樹脂モールド部26とからなっており、ボビン24と前記第1ハウジング部3のフランジ3aとの間には環状のシール部材27が介装される。
【0027】
第2ハウジング部4の後端壁4aには、ボビン24の内周面に嵌合する円筒状の固定コア29が一体に形成されており、それらの嵌合部をシールするシール部材28がボビン24及び固定コア29間に介装される。前記プランジャ19は、その後端部をボビン24内に突入させて、固定コア29の前端面に対向させている。
【0028】
プランジャ19には、その後端面からフランジ部16の手前で終わる縦孔30と、この縦孔30を、短軸部17
1 の外周面に連通する複数の横孔31,31…とが設けられる。その際、縦孔30の途中には、固定コア29側を向いた環状のばね座32が形成される。
【0029】
一方、固定コア29から第3ハウジング部5の前半部に亙り、それらの中心部には、前記縦孔30と連通する支持孔35が形成され、また第3ハウジング部5の後半部には、上記支持孔35に連なる、それより大径の入口孔36が設けられる。支持孔35には、弁体15を弁座13側に付勢する戻しばね33を前記ばね座32との間で支持するパイプ状のリテーナ37が挿入され、その挿入深さを加減して戻しばね33のセット荷重を調整した後、リテーナ37は、第3ハウジング部5の外周からのかしめにより第3ハウジング部5に固着される。符号38は、そのかしめ部を示す。入口孔36には、燃料フィルタ39が装着される。
【0030】
第2ハウジング部4の後端部から第3ハウジング部5の前半部に亙り、それらの外周面を覆うと共に、一側にカプラ40を一体に備える樹脂モールド部41が形成され、そのカプラ40は、前記コイル25に連なる通電用端子42を保持する。
【0031】
また弁体15の後端面には、固定コア29の前端面に対向するゴム製で環状のクッション部材43が焼き付けにより接合される。
【0032】
ノズル部材11の前端部にはノズルキャップ50が嵌装される。このノズルキャップ50は、ノズル部材11の前端部外周面の第1係止溝51にスナップ結合される円筒部52と、この円筒部52の前端に連設された前記ノズル孔48の前方開放面に対向する端壁53と、円筒部52の後端から半径方向に広がるフランジ54とからなっており、その全体が合成樹脂により一体成形される。
またフランジ54先端までの円筒部52外周面からの長さは、円筒部52の厚さよりも大きく設定されている。
【0033】
前記端壁53は、その前側でノズル部材11の中心軸線Y上に頂点Pを有する円錐形をなしており、この端壁53には、ノズル部材11の中心軸線Yを挟むように並びながらノズル孔48に開口する一対のガス燃料噴孔55,55が設けられる。これらガス燃料噴孔55,55は、それぞれの中心軸線A、Aが前記端壁53の円錐形の母線と直交するように配置される。したがって、各ガス燃料噴孔55,55の中心軸線A,Aは、前方に行くにつれてノズル部材11の中心軸線Yから離れるように傾斜することになる。
【0034】
またノズル部材11の中間部外周面の第2係止溝56には、前記フランジ54の後方に配置される合成樹脂製のリング体57がスナップ結合され、このリング体
57及び前記フランジ54により、
第1,第2係止溝51,56の溝底よりも半径方向外方に位置するノズル部材11の外周面が臨むシール溝58が画成され、このシール溝58には、ノズル部材2をエンジンの吸気管Eの取り付け孔Eaに挿入したとき、その内周面に密接するOリング59が装着される。
【0035】
また第3ハウジング部5の後端部外周面に形成される環状のシール溝61には、第3ハウジング部5の外周に燃料分配管Dを嵌装したとき、その内周面に密接するOリング62が装着される。
【0036】
次に、この第1実施形態の作用について説明する。
【0037】
コイル25の消磁状態では、弁体15は、戻しばね33の付勢力により前方に押圧され、着座部材20を弁座13に着座させている。この状態では、図示しないガス燃料タンクから燃料分配管Dに送られたガス燃料は、弁ハウジング2の入口孔36に流入して燃料フィルタ39で濾過され、そしてパイプ状のリテーナ37内部、弁体15の縦孔30及び横孔31…を通って案内孔9内に待機する。
【0038】
コイル25を通電により励起すると、それにより生ずる磁束が固定コア29、第2ハウジング部4及びフランジ3a、弁体15を順次走り、その磁力により弁体15が戻しばね33のセット荷重に抗して固定コア29に吸引され、弁体15のゴム製のクッション部材43が固定コア29の前端面に当接することで、着座部材20の弁座13に対する開き限界が規制される。
【0039】
こうして、弁体15が開弁すると、案内孔9に待機していたガス燃料が弁座13を通過し、絞り孔46で流量を計量された後、該絞り孔46より大径で、且つそれより長さの長いノズル孔48を経て、ノズルキャップ50の一対のガス燃料噴孔55,55から吸気管E内に噴射される。このとき、一対のガス燃料噴孔55,55の各中心軸線A,Aが前方に行くにつれてノズル部材11の中心軸線Yから離れるように傾斜することから、一対のガス燃料噴孔55,55からの噴射燃料は、末広がりの噴霧フォームを形成し、吸気管Eの内壁に付着することなく理想的に拡散するので、吸気管E内を流下する吸気と良好に混合しながらエンジンに供給され、燃料効率を高めることができる。
【0040】
この間、ノズル孔48において、絞り孔46及びノズル孔48間の環状段部47で生じるガス燃料の流れの剥離等に起因してノイズが発生すると、そのノイズの多くは、ノズルキャップ50の端壁53のガス燃料噴孔55、55の無い部分で遮断されて、ノズル部材11外に漏れ出すことが抑えられ、ガス燃料用噴射弁Iの静粛性を図ることができる。
【0041】
特に、上記端壁53は、その前側に頂点Pを有する円錐形をなしているので、その端壁53の内面に反射したノイズは、ノズル孔48の中心部に集中し、互いに減衰し合うことになり、ガス燃料用噴射弁Iの静粛性を高めることができる。
【0042】
またノズルキャップ50は、
ノズル部材11の前端部外周面の第1係止溝51にスナップ結合される円筒部52と、この円筒部52の前端に連設された上記端壁53と、該円筒部52の後端から半径方向に広がり且つ先端までの円筒部52外周面からの長さが円筒部52の厚さよりも大きいフランジ54とからなり、このフランジ54が、ノズル部材11に固設されるリング体57
及び第1,第2係止溝51,56の溝底よりも半径方向外方に位置するノズル部材11の外周面と協働して、吸気管Eの取り付け孔Eaの内面に密接するOリング59を保持する役割を果たし、取り付け孔Eaのシール構造の簡素化にも寄与し得る。
【0043】
次に、
図3に示す本発明の第2実施例について説明する。
【0044】
この第2実施例は、ノズルキャップ50の端壁53に、ノズル部材11の軸線Y周りに等間隔に配列した4個のガス燃料噴孔55,55…を設けたもので、その他の構成は前実施形態と同様であるので、
図3中、前実施形態と同様な部分には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0045】
この第2実施形態によれば、ノズル孔48を通過したガス燃料が4個のガス燃料噴孔55,55…から噴射されることで、噴射燃料は末広がりの噴霧フォームを形成しながら拡散が促進され、吸気管E内での空気との混合をより良好にすることができる。
【0046】
ところで、ガス燃料噴孔55の個数を増加させていくと、必然的に各ガス燃料噴孔55の内径は小さくなり、その内径は或る値以下となると圧損による流量の減少を招くことになる。そこで、各ガス燃料噴孔55での圧損によ
るガス燃料流量の減少を回避しながら、ガス燃料噴孔55による噴射燃料の拡散及び端壁による遮音効果を満足させるには、ガス燃料噴孔55の個数は、2ないし6個が好ましいことが実験により判明した。
【0047】
本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、リング体57は、ノズル部材11と一体に形成することもできる。また複数のガス燃料噴孔55は、ノズル部材11の軸線Y周りに不等間隔に配列することもできる。
【符号の説明】
【0048】
E・・・・・吸気管
Ea・・・・取り付け孔
I・・・・・ガス燃料用噴射弁
2・・・・・弁ハウジング
6・・・・・ガス燃料通路
11・・・・ノズル部材
13・・・・弁座
13・・・・弁座
15・・・・弁体
45・・・・弁孔
46・・・・絞り孔
48・・・・ノズル孔
50・・・・ノズルキャップ
51・・・・第1係止溝
52・・・・円筒部
53・・・・端壁
54・・・・フランジ
55・・・・ガス燃料噴孔
56・・・・第2係止溝
57・・・・リング体
58・・・・シール溝
59・・・・シール部材(Oリング)