(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
洗濯した後に半乾燥した衣類をアイロナー、あるいは折り畳み機等へ投入するために、整形体を有する投入機を使用することは既に公知である。整形体は、たとえば模擬人体と称される部材を有し、そこに衣類を着せるように掛けて整姿状態とし、袖を伸ばすなどして、衣類が原形に近い状態で仕上げられるようにされている。このような投入装置の従来例として特許文献1がある。
【0003】
この特許文献1の従来技術は
図15に示すように、投入機本体111の下部前面に整形体112を備え、本体111の上部に下コンベヤ121および上コンベヤ122を備えている。整形体112の基端部はベース113に対し傾斜自在に取付けられ、伸縮機構114で昇降自在である。また、整形体112の上部には左右の伸縮腕115,116が取付けられ、この伸縮腕115,116は左右の伸縮機構117,118で左右方向に伸長したり収縮するようになっている。
【0004】
そして、半乾燥した衣類を投入するときは、
図16に示すように、まず、(a)整形体112に衣類Cを被せ、ついで、(b)伸縮腕115,116を伸ばして衣類Cの袖を左右に広げ、さらに(c)整形体112を上昇させる。この動作により
図15に示す上下コンベヤ121,122に受け渡すようにしている。
【0005】
ところが、特許文献1では、衣類Cの身頃をきちんと伸ばしていないので、完全に皺のない状態でアイロンをかけたり折り畳むことはできなかった。
そこで、整形体に身頃を広げる幅張り板を取付けた従来技術も提案された。この従来技術では、整形体に浴衣等を着せた後で幅張り板を手作業で左右に伸ばして身頃を広げるが、この幅張り作業は手作業であるため面倒であった。また、幅張り寸法は調整可能であっても、数段階に制限されるので、身頃の広げ方が不充分なことがあり皺のない仕上げができないことがあった。さらに、衣類の大きさに合わせて幅張り寸法を選択しなければならず、手間がかかっていた。
【発明を実施するための形態】
【0011】
つぎに、本発明の一実施形態に係る衣類投入機を図面に基づき説明する。
まず、
図6および
図7に基づき本実施形態に係る衣類投入機の基本構成を説明する。
衣類投入機Pの下部正面には、整形体10が立設され、衣類投入機Pの上部正面には、下コンベヤ1と上コンベヤ2の対が設けられている。下コンベヤ1と上コンベヤ2の対が、特許請求の範囲にいうコンベヤ機構である。整形体10は洗濯した後に半乾燥した衣類C(代表的には浴衣やガウンであるが、これには限られない)を整姿状態とし、その状態で衣類Cを下コンベヤ1と上コンベヤ2の間に挿入する装置である。
【0012】
下コンベヤ1と上コンベヤ2の対は、整形体10から送り込まれた衣類Cを受け取って、搬送を開始するための機構である。このコンベヤ1,2の下流には更にコンベヤC1,C2、C3が連設され、ロールアイロナーRにつなげられている。ロールアイロナーRは衣類にアイロン掛けをする公知の装置である。なお、アイロナーRの代りに折り畳み装置が設けられることもある。アイロナーRや折り畳み装置が特許請求の範囲にいう後工程装置である。
【0013】
図8および
図9に示すように、下コンベヤ1は10本から20本位のベルト1aを並列に掛け並べたもので、その全幅は衣類Cの両軸を広げたときの幅よりも広くなっている。各ベルト1aは数本のガイドロール1bと背面吸引ボックス3の吸引面に掛け回されている。
【0014】
上コンベヤ2は下コンベヤ1の幅方向中央部における上方部分に配置されている。その構成は、数本(図では6本)のベルト2aを並列に掛け並べたもので、その幅は衣類Cの肩幅に相当する程度である。各ベルト2aは、上下に配置した水平なガイドローラ2bに掛け回されており、2本のガイドローラ2bは左右に離れて配置された2本の傾動アーム2cに軸支されている。この傾動アーム2cの上端にはエアーシリンダ2dが連結されている。このため、エアーシリンダ2dを伸縮させることにより、上コンベヤ2を下コンベヤ1に接触させた接触位置とそこから離れた離間位置との間で姿勢変更することができる。
【0015】
背面吸引ボックス3は投入機Pの前面内側に設けられており、下コンベヤ1とほぼ同じ全幅、つまり衣類Cの両袖(広げられた状態)の全幅よりも広いをもっている。また、下コンベヤ1のベルト1aは多孔ベルトであり、背面吸引ボックス3による空気の吸引を許容する。このため、衣類Cの背面を吸引して落下しないように保持することができる。
【0016】
下コンベヤ2の左右両端部の前面には、
図6に示すように、袖吸引ボックス4、4が左右に2個設けられている。つまり、袖吸引ボックス4、4は衣類の両袖を左右方向に吸引する位置に配置されている。この袖吸引ボックス4は、
図10および
図11に示すように、上傾動アーム4aと下傾動アーム4bで支持されており、上傾動アーム4aにはエアシリンダ4cが連結されている。このため、エアシリンダ4cを伸縮させると、袖吸引ボックス4を下コンベヤ1の表面に近接した吸引位置とここから離れた離間位置との間で姿勢変更することができる。なお、4eは袖吸引ボックス4の内側に取付けられた透明板で、空気の流れを案内しつつ、作業員が袖の状態を視認できるようにしている。
【0017】
前記背面吸引ボックス3と袖吸引ボックス4は、ダクト5a、5b、5cでブロア5dに接続されている。また、ブロア5cの入側ダクトには、ダンパー5e、5fを取付けており、背面吸引ボックス3と袖吸引ボックス4の吸引・停止を制御できるようになっている。
【0018】
図12および
図13に基づき、整形体10の基本構造を説明する。
整形体10は基板11と昇降板12を備えている。基板11はベース部材13にピンで前後傾自在に軸支されており、エアーシリンダ14で直立姿勢と少し後方に傾斜した後傾姿勢との間で傾斜動作できるようになっている。
【0019】
図14に基づき、整形体10の昇降機構を説明する。基板11には縦方向にレール15aが取付けられており、昇降板12にはスライダ15bが取付けられ、レール15aにはスライダ15bが昇降自在となっている。また、基板11と昇降板12との間には伸縮機構としてのエアーシリンダ16が取付けられている。このため、エアーシリンダ16を昇降させると、昇降板12が上昇したり下降したりする。
なお、昇降板12には前カバー17が取付けられており、この前カバー17は基板11の前面も覆っている。
【0020】
つぎに、本発明の特徴である整形体10に設けられた身頃幅張り機構を説明する。
図1および
図2は、整形体10のうち基板11を省略し、昇降板12と、それに取付けた幅張り板31と拡開機構を示している。拡開機構は、リンクとそれを作動させるエアーシリンダ40から構成されている。
【0021】
昇降板12は縦長の板材であって、その左右両側縁には上下に2個づつ配置したブラケット12aを備えている。
この昇降板12には、左右の幅張り板31,31が後述する拡開機構のリンクを介して取付けられている。
【0022】
幅張り板31は、整形体10に被せられた衣類Cの身頃を左右に広げるための板状部材であり、左右一対設けられている。
昇降板12の各ブラケット12aには、L形リンク32の中央支点部がピン33で枢支されており、このL形リンク32の長辺アームの先端ではピン34により幅張り板31に軸支されている。
そして、上下のL形リンク32の短辺同士はリンク35で連結され、上下のL形リンク32は同期して動くようになっている。
【0023】
一方、左右の幅張り板31,31の間には、3連リンク36が配置されている。3連リンク36は3本のリンク36a、36b、36cを3連に連設したもので、その先端は、ピン34により左右のL形リンク32の先端に連結されている。
3連リンク36の中間リンク36bの中央には軸37が固定され、この軸37を支持するボス38は昇降板12に固定されている。
また、軸37はリンク38を介してエアーシリンダ40のピストンロッド41に連結されている。
【0024】
このため、エアーシリンダ40のピストンロッド41を伸縮させると3連リンク36を時計回り又は反時計回りに回動させ、L形リンク32を回動させて左右の幅張り板31を左右方向に張り出したり引き込めたりすることができる。
【0025】
図3はエアーシリンダ40のエアー制御回路である。エアーシリンダ40にはピストンロッド41のストロークを可変に設定するストローク調整器43が取付けられており、エアーの給排によりストローク量を可変に調整できる。44はストローク調整器43にエアーを給排する2位置切換弁であり、I位置でエアー給排するとストローク調整器43がピストンロッド41を固定し、II位置でエアー給排するとストローク調整器43がピストンロッド41の固定を解除することができる。このため、切換弁44を切換え制御することで、エアーシリンダ40のストロークを任意の長さに調整することができる。
【0026】
45はエアーシリンダ40のピストン側画室とロッド側画室へのエアー給排を制御する3位置切換弁である。46はピストン側画室への回路に介装した減圧回路で、減圧弁46aと逆止弁46bから構成されている。減圧弁46aはエアーシリンダ40のピストン側画室へ供給するエアー圧力を設定する圧力制御弁である。逆止弁46bは、前記ピストン側画室へのエアー供給を阻止し、エアー排出は許容する弁である。
減圧弁46aはピストン側画室へ供給後エアー圧を任意に設定でき、ピストン側画室からのエアーの排出は逆止弁46bによって自由に行える。そして、減圧弁46aの設定圧はエアーシリンダ40による拡開力を人の力で押えつければ拡開する動作を止めうる程度としている。この理由は、つぎのとおりである。
【0027】
衣類Cの投入動作時には、整形体10に被せられた衣類Cの身頃を、作業員が手で握って左右に開かないようにする。そのうえで、幅張り板21を左右に拡開させると、衣類の身頃部分が左右に引っ張られ、皺のない状態となる。このとき拡開力が強すぎると作業員が手で持っている左右の前身頃が離れてしまうので、離れないように、人の力より小さい拡開力となるよう圧力制御部で上限値を制御しているのである。
【0028】
つぎに、本実施形態における衣類投入機Pの投入動作を説明する。
まず全体の動作手順は、次のとおりである。
(1)投入動作前の整形体10は、
図12および
図13に実線で示すように、下降位置にあり、直立している。この状態で整形体10に衣類Cを被せる。その後の身頃の拡開作業は後に詳述する。
(2)整形体10が
図12および
図13の点線で示すように、コンベヤ1の面に沿う角度に後傾し、昇降体12が上昇する。この状態になった後、衣類Cの袖を左右に広げる展開作業が行われる。
(3)
図6に示すように、袖吸引ボックス4が下コンベヤ1の面に沿った状態で吸引すると、衣類Cの左右の袖は左右に展開される。
(4)袖吸引ボックス4の吸引を停止し、同時に背面吸引ボックス3が吸引を開始すると下コンベヤ1の表面に衣類Cが張り付く。
(5)上コンベヤ2が下降し衣類Cの衿付近をコンベヤ1と挟み込む。同時に袖吸引ボックス4が旋回して上昇する。
(6)整形体10が下降し、同時に下コンベヤ1が起動して衣類Cだけが搬送される。
(7)衣類Cが下コンベヤ1を通過し終えると、背面吸引ボックス3は吸引を止める。
(8)衣類Cはその後、コンベヤC1、C2、C3の順番で搬送され、ロールアイロナーRまで搬送される。
【0029】
つぎに、前記動作(1)で言及した身頃の拡開動作を説明する。
図4は、前記動作(1)で説明した衣類Cを被せた状態である。この状態では、エアーシリンダ40は収縮しており、3連リンク36は折り畳まれて、L形リンク32の長辺先端は内側に倒れている。ついで、
図5に示すように、昇降板12が昇降していくが、このとき、作業者は左右の身頃を両手で持ち中央に引っ張っている。同時に幅張り板31は左右に拡開する。すなわち、エアーシリンダ40が伸長し、3連リンク36が伸びて、L形リンク32の長辺が外側に向いて動く。この結果、左の幅張り板31が左右に広げられ、衣類Cの身頃も左右に広げられ、皺がない状態となる。
そして、この状態で衣服Cが上下コンベヤ1,2の間に送り込まれると、皺のない仕上げが可能となる。
【0030】
上記の幅張り作業において、本実施形態の幅張り機構はつぎの利点を奏する。
(1)身頃の張り幅の調整
エアーシリンダ40はストローク調整器43と切換弁44によって、ストロークを自在に設定できる。そのため、衣類Cの大小に合わせてエアーシリンダ40のストロークを長短に調整することで、身頃を確実に皺のない状態に広げることができる。
【0031】
(2)作業員の手作業の補助
身頃の拡開は、衣類Cの左右の身頃は作業員が手で握って離れないようにした状態で、幅張り板31を広げる、という作業により行う。
このとき、幅張り板31の拡開力が作業員の手の握る力より強いと身頃が左右に離れてしまって、身頃を広げることができない。しかし、本実施形態のようにエアーシリンダ40の伸長力を適正値に調整しておくと幅張り板31の拡開力が手で身頃を握る力よりは弱くなる。この場合、前身頃が離れないようにしながら身頃を広げることができるので、身頃に皺のない状態で上下コンベヤ1,2に送り込むことができる。
【0032】
(他の実施形態)
前記実施形態では、左右の幅張り板31を同期させて広げるために、3連リンク36やL形リンク32を用いたが、これに限ることなく種々のリンク機構を用いることができる。
【0033】
(先の出願の記載事項)
以下は、先の出願における幅張り機構の記載である。なお、符号は本項の実施形態に合わせるよう変更した。
【0034】
B.身頃幅張り機構
整形体10は左右一対の幅張り板31を備えており、リンクを介してエアシリンダ等のアクチュエータ40に連結されている。アクチュエータ40が作動すると幅張り板31は整形体10の中に収められた位置と左右両側に張り出した位置との間で姿勢変更する。
アクチュエータ80には
図3に示す圧力制御部が接続され、拡開力が人力を上回らないよう制限されている。
整形体10に浴衣等を着せると、作業員が左右の身頃を手で握って左右に開かないようにする。そのうえで、幅張り板31を左右に拡開させると、衣類の身頃部分が左右に引っ張られ、皺のない状態となる。このとき拡開力が強すぎると作業員が手で持っている左右の前身頃が離れてしまうので、離れないように、人の力より小さい拡開力となるよう圧力制御部で上限値を制御している。
【0035】
(動作概略)
動作手順(3)において幅張り板31が左右に飛び出し身頃皺伸ばし作業(手作業)の補助の役目をなすが、飛び出し距離が衣類等の身頃幅に合っていないと綺麗に皺伸ばしを行えない。従来機では、幅の飛び出し距離を3段階に設け、衣類等に合わせてその都度作業者が選択を変えていた。
そこで、作業者は身頃の合わせを両手で持ち中央に引っ張るが、その引っ張る力を利用し板の飛び出しを規制させ、その後、板を固定させる。その構造を採用するために、左右板の1つのアクチュエーター40で同期させ、左右が同距離飛び出すようにしている。また、板の飛び出す力(エア圧)を減圧させている。
【0036】
(効果)
衣類等に合わせてその都度作業者が選択を変えなくて済み、作業効率アップ。