(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱水に重合剤を添加して触媒粒子表面で前記熱水中のシリカを析出させる反応工程と前記触媒粒子表面に析出したシリカを除去する洗浄工程とが操業可能な複数の撹拌反応容器と、
前記撹拌反応容器の下流側に設置されて前記析出された熱水中のシリカを沈降分離する沈降分離槽と、
前記沈降分離槽によって処理された熱水中の残留シリカ濃度を測定する検出手段と、
前記検出手段によって検知された前記熱水中の残留シリカ濃度が閾値を超えた時に、前記反応工程を実施していた一方の前記撹拌反応容器を洗浄工程に切り替えるとともに、前記洗浄工程を実施していた他方の前記撹拌反応容器を反応工程に切り替える制御部と、
を具備してなることを特徴とする熱水の処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1に開示されているシリカ回収方法では、熱水中のモノシリカの重合反応が重合装置内で繰り替えされると、触媒粒子であるγ−アルミナ担体の表面全体にシリカが析出する。これにより、熱水中のモノシリカが新たにγ−アルミナ担体の表面に接触できなくなり、重合装置内におけるモノシリカの重合が阻害される課題があった。
【0006】
そこで、本発明はこのような従来技術の課題に着目し、熱水中のシリカを連続的且つ効率良く回収することが可能な熱水の処理装置及び処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための発明に係る熱水の処理装置は、熱水に重合剤を添加して触媒粒子表面で前記熱水中のシリカを析出させる反応工程と前記触媒粒子表面に析出したシリカを除去する洗浄工程とが操業可能な複数の撹拌反応容器と、前記撹拌反応容器の下流側に設置されて前記析出された熱水中のシリカを沈降分離する沈降分離槽と、前記沈降分離槽によって処理された熱水中の残留シリカ濃度を測定する検出手段と、前記検出手段によって検知された前記熱水中の残留シリカ濃度が閾値を超えた時に、前記反応工程を実施していた一方の前記撹拌反応容器を洗浄工程に切り替えるとともに、前記洗浄工程を実施していた他方の前記撹拌反応容器を反応工程に切り替える制御部と、を具備してなることを特徴とする。
【0008】
当該熱水の処理装置によれば、反応工程を実施していた一方の撹拌反応容器中の触媒粒子表面にシリカが析出して反応が阻害されることにより、沈降分離槽で処理された熱水中の残留シリカ濃度が閾値を超えたことが検出手段で検知された時に、制御部により反応工程を実施していた一方の撹拌反応容器が洗浄工程に切り替えられるとともに、洗浄工程を実施していた他方の撹拌反応容器が反応工程に切り替えられる。これにより、複数の撹拌反応容器が交互に用いられ、且つ切り替えられるタイミングが制御部により制御されることにより、撹拌反応容器への熱水の供給が中断されることなく、熱水中のシリカを析出させる反応が連続的に実施される。
当該熱水の処理装置において、触媒粒子としては、γ−アルミナビーズもしくは、シリカビーズが好ましい。当該熱水のシリカの析出の回収率を向上させるのは、γ−アルミナビーズが好ましい。また析出したシリカの別途に原料成分として利用するには、不純物成分とならないシリカビーズが好ましい。
【0009】
また、前記撹拌反応容器に導入する熱水は、pH調整剤によりpHを7〜9に調整されていることが好ましい。
上記の場合、撹拌反応容器におけるモノシリカの重合反応が促進されるため、シリカ析出反応を効率化かつ安定化させることができる。
【0010】
また、前記熱水の処理装置は、前記検出手段の下流側に、前記熱水中のリチウムを回収する回収処理装置を備えていることが好ましい。
当該熱水の処理装置によれば、回収処理装置の上流側の前段階で予め熱水中に含まれるシリカの多くが回収される。そのため、回収処理装置においてシリカが大量に析出することによるリチウムの選択的分離に対する阻害が回避され、熱水中のリチウムが確実に回収される。
【0011】
また、前記回収処理装置は、イオン交換酸化物法を用いた吸着により、リチウムマンガン酸化物として吸収することが好ましい。
この場合、リチウムマンガン酸化物は高温中でも安定であるため、回収処理装置に導かれた熱水の温度が約80℃〜90℃であっても、熱水中のリチウムが安定して確実に回収される。
【0012】
また、上記目的を達成するための発明に係る熱水の処理方法は、前記熱水の処理装置を用いた熱水の処理方法であって、一方の撹拌反応容器において熱水に重合剤を添加して触媒粒子表面で前記熱水中のシリカを析出させる反応工程を行うとともに、他方の撹拌反応容器において、前記触媒粒子表面に析出したシリカを除去する洗浄工程を行い、前記撹拌反応容器の下流側に設置された沈降分離槽において前記反応工程によって析出された熱水中のシリカを沈降分離し、前記沈降分離槽によって処理された熱水中の残留シリカ濃度を検出手段で測定し、前記検出手段によって検知された前記熱水中の残留シリカ濃度が閾値を超えた時に、制御部により、前記反応工程を実施していた一方の前記撹拌反応容器を洗浄工程に切り替えるとともに、前記洗浄工程を実施していた他方の前記撹拌反応容器を反応工程に切り替えることを特徴とする。
【0013】
前記熱水の処理方法
は、前記熱水の処理装置を用いた熱水の処理方法であって、
一方の撹拌反応容器において熱水に重合剤を添加して触媒粒子表面で前記熱水中のシリカを析出させる反応工程を行うとともに、他方の撹拌反応容器において、前記触媒粒子表面に析出したシリカを除去する洗浄工程を行い、前記撹拌反応容器の下流側に設置された沈降分離槽において前記反応工程によって析出された熱水中のシリカを沈降分離し、前記沈降分離槽によって処理された熱水中の残留シリカ濃度を検出手段で測定し、前記検出手段によって検知された前記熱水中の残留シリカ濃度が閾値を超えた時に、制御部により、前記反応工程を実施していた一方の前記撹拌反応容器を洗浄工程に切り替えるとともに、前記洗浄工程を実施していた他方の前記撹拌反応容器を反応工程に切り替え、前記検出手段の下流側に設置された回収処理装置によって、前記熱水中のリチウムを回収するものであってもよい。
【0014】
当該熱水の処理方法によれば、反応工程を実施していた一方の撹拌反応容器中の触媒粒子表面にシリカが析出して反応が阻害されることにより、沈降分離槽で処理された熱水中の残留シリカ濃度が閾値を超えたことを検出手段で検知した時に、制御部により反応工程を実施していた一方の撹拌反応容器を洗浄工程に切り替えるとともに、洗浄工程を実施していた他方の撹拌反応容器を反応工程に切り替える。これにより、複数の撹拌反応容器を交互に用い、且つ切り替えるタイミングを制御部により制御することにより、撹拌反応容器への熱水の供給を中断することなく、熱水中のシリカを析出させる反応を連続的に実施することができる。
また、当該熱水の処理方法によれば、回収処理装置の上流側で予め熱水からシリカを回収するため、回収処理装置においてシリカによるリチウムの選択的分離に対する阻害を回避し、熱水中のリチウムを確実に回収できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る熱水の処理装置及び熱水の処理方法によれば、シリカを含有する熱水から連続的且つ効率良くシリカを回収することができる。また、熱水にシリカに加えてリチウムが含まれる場合であっても、シリカによる妨害なく確実にリチウムを回収することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を適用した実施形態について、
図1を参照しながら説明する。
【0018】
(第1実施形態)
図1に示すように、熱水の処理プラント110には、地中から汲み上げられ、地熱発電に供された熱水を収容する熱水収容器10と、熱水中のシリカ及びリチウムを回収する処理装置100が備えられている。
【0019】
処理装置100は、熱水収容器10からの熱水を第1撹拌反応容器14または第2撹拌反応容器16に切り替えて供給する流路切り替え機12と、流路切り替え機12の下流側に設置されて、熱水に重合剤を添加して触媒粒子表面で熱水中のシリカを析出させる反応工程と触媒粒子表面に析出したシリカを除去する洗浄工程を操業可能な第1,第2の撹拌反応容器14,16と、第1,第2の撹拌反応容器14,16の下流側に設置されて熱水中に析出されたシリカを沈降分離する沈降分離槽18と、沈降分離槽18の下流側に設置されて沈降分離槽18によって処理された熱水中の残留シリカ濃度を測定する検出手段24と、検出手段24の下流側に設置されて熱水中のリチウムを回収する回収処理装置22と、流路切り替え機12における熱水の流路の切り替えを制御するとともに第1,第2の撹拌反応容器14,16における反応工程と洗浄工程との切り替えを行う制御部26を具備している。
【0020】
次に、処理装置100の各構成要素について説明する。
流路切り替え機12には熱水を輸送するためのライン(以下、単にラインと称する)L1,L2,L3が接続されている。また、ラインL1は熱水収容器10に接続され、ラインL2,L3はそれぞれ第1,第2の撹拌反応容器14,16に接続されている。
後述するように、流路切り替え機12は制御部26に接続されており、制御部26からの信号S2に従い、ラインL1から輸送された熱水をラインL2,L3のいずれかのラインに切り替えて輸送する機構を有する。
【0021】
第1撹拌反応容器14には、触媒粒子及び重合剤が添加された熱水を撹拌する撹拌機14aと、熱水中に重合剤を供給する重合剤供給装置14cと、第1撹拌反応容器14に洗浄液を供給する洗浄液供給装置14dが備えられている。
また、第1撹拌反応容器14には、重合剤供給装置14cから重合剤及びpH調整剤が供給されている。重合剤としては、例えばカチオン系界面活性剤が供給されている。カチオン系界面活性剤は触媒粒子とともにモノシリカの重合の促進に寄与するものであり、例えば炭素数10以上の直鎖状構造を有するアミノ系のカチオン系界面活性剤が用いられる。アミノ系のカチオン系界面活性剤としては、n−ドデシルトリメチルアンモニウム、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。本実施形態では、カチオン系界面活性剤として、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(第一工業製薬(株)製、商品名:シャロールDC−902P)を使用した。
また、pH調整剤は第1撹拌反応容器14内のpHを7〜9に調整するために投入するもので、pHがこの範囲外であると、モノシリカの重合反応の促進が低下することがある。pH調整剤には、例えば水酸化ナトリウム水溶液、塩酸水溶液が用いられる。
なお、pH調整剤は、シリカ析出反応の効率化と安定化のために添加されるが、重合剤の選択を適正化することで、pHの影響を少なくすることが可能となるため、pH調整剤の添加を省略してもよい。
【0022】
第1撹拌反応容器14には、触媒粒子として、表面がプラスに帯電し、且つ複数の球体粒子からなるγ−アルミナビーズ担体が予め充填されている。なお、触媒粒子としては、γ−アルミナビーズ担体に限らず表面がプラスに帯電している担体であれば制限なく用いられる。そして、第1撹拌反応容器14内の底部には、γ−アルミナビーズ担体またはシリカビーズ担体が撹拌機14aによって連続的かつ穏やかに撹拌されるように、移動床が備えられている。
γ−アルミナビーズ担体またはシリカビーズ担体は、直径が1mm〜7mm程度の略球形の形状である。熱水からのシリカの析出の回収率を向上させるのは、γ−アルミナビーズが触媒としての反応性を高めるので好ましい。また、析出したシリカの別途に原料成分として利用するには、不純物成分とならないシリカビーズが好ましい。
【0023】
第1撹拌反応容器14にはラインL2,L4,L9が接続されている。ラインL2により、第1撹拌反応容器14に熱水が供給される。ラインL9にはバルブ14bが備えられ、バルブ14bの開栓時には第1撹拌反応容器14内の熱水がラインL9より抜き出され、処理装置100外の図示しない排水部に導かれる。また、ラインL4にはバルブ14eが備えられ、バルブ14eの開栓時には第1撹拌反応容器14内の熱水がラインL4より沈降分離槽18に輸送される。
また、ラインL14により、第1撹拌反応容器14に洗浄液が供給される。この洗浄液には熱水収容器10から導いた工業用水等が用いられる。
【0024】
重合剤供給装置14cと洗浄液供給装置14dとバルブ14b,14eは制御部26に接続されており、制御部26からの信号S3に従って、次に述べるように制御される。第1撹拌反応容器14の反応工程開始時に、重合剤供給装置14cはカチオン系界面活性剤の供給状態になるとともに、洗浄液供給装置14dは洗浄液供給中断状態になる。このとき、バルブ14b,14eは閉じている。
反応工程開始から一定時間が経過した後、バルブ14eが開けられる。一方、第1撹拌反応容器14の洗浄工程時には、重合剤供給装置14cはカチオン系界面活性剤の供給中断状態になるとともに、バルブ14bが開栓され、バルブ14eが閉じられる。このとき、熱水の処理方法で後述するように、洗浄液供給装置14dは必要に応じて洗浄液供給状態になる。
【0025】
第2撹拌反応容器16には、
図1に示すように第1撹拌反応容器14と同一の構成要素が備えられており、反応工程及び洗浄工程時の各構成要素の動作は上記の第1撹拌反応容器14における各構成要素の動作と同様である。
なお、本実施形態では撹拌反応容器は第1撹拌反応容器14と第2撹拌反応容器16の2つの容器により構成されているが、撹拌反応容器数はその反応工程及び洗浄工程の切り替えのタイミングを計ることで、3つ、4つなど2つ以上の容器で構成されていればよい。撹拌反応容器の数量が増加すると各容器が小型化して、運用と取り扱いが容易になるメリットがある。
【0026】
ラインL4,L5は、沈降分離槽18に熱水を導くラインL6に合流点J1で接続されている。沈降分離槽18に導く熱水は、第1撹拌反応容器14と第2撹拌反応容器16により、熱水中のシリカが回収されているため、ラインL4,L5,L6などがシリカにより閉塞しないので、安定した運用が可能となる。
合流点J1には、第1撹拌反応容器14からラインL4を通って輸送された熱水が全てラインL6に導かれるようにする自動弁等が設けられている。これにより、ラインL5を通って第2撹拌反応容器16から輸送された熱水もラインL6に導かれる。なお、ラインL4及びラインL5は合流せずに、別々に沈降分離槽18に接続されても良い。
【0027】
沈降分離槽18の底部には、複数の仕切板18cが設けられている。また、仕切板18cにより、沈降分離槽18は複数の小室18fに区分されている。上板18aには、沈降分離槽18の底面に対向する面に、複数の仕切板18bが設けられている。上板18aは仕切板18b,18cが一定の間隔を保って互い違いに配置されるとともに、仕切板18bが沈降分離槽18の底面に接触せず、且つ仕切板18cが上板18aに接触しないように保持されている。これにより、沈降分離槽18に投入された熱水は、シリカが沈降するに十分な滞留時間が得られるように、仕切板18b,18cの間を蛇行しながら下流側に導かれる。このとき、熱水中のシリカは各小室18fの底部に沈降する。
ここで、沈降分離槽18の上流側の第1撹拌反応容器14と第2撹拌反応容器16のγ−アルミナビーズ担体(もしくはシリカビーズ担体)の表面では、カチオン系界面活性剤と反応し、且つモノシリカ同士が重合反応してポリシリカとなり、γ−アルミナビーズ担体表面に析出するが、一部のポリシリカは剥離して沈降分離槽18に導入される。沈降分離槽18では、この剥離したポリシリカを核として、熱水中のシリカの沈降が促進される。
【0028】
沈降分離槽18には、上流側のラインL6に加え、下流側にラインL7が接続されている。また、各小室18fの底面には、バルブ18dを備えたラインL11が接続されている。各ラインL11は下流側でラインL12に接続されている。この構成により、バルブ18dの開栓時には、小室18fの底部に沈降したシリカがラインL11から抜き出され、ラインL12を経由して、ラインL12の下流側に設置された沈降物収容器18eに導かれる。なお、シリカが沈降するに十分な滞留時間は数10分から1時間程度であり、沈降分離槽18はこの滞留時間を確保できる容量を有するものである。
【0029】
ラインL7により、シリカが沈降した沈降分離槽18内の熱水が沈降分離槽18から回収処理装置22に導かれる。
検出手段24は、沈降分離槽18から輸送される熱水中の残留シリカ濃度を常時測定することができる手段であり、熱水中の残留シリカ濃度と予め設定されたシリカ濃度の閾値との大小関係を判別する機能を有している。検出した残留シリカ濃度が閾値を超えた時は、検出手段24から制御部26に信号S1が発信される。
【0030】
回収処理装置22には、シリカが回収された熱水からリチウムを分離・回収する図示略のリチウム回収機構が備えられている。このようなリチウム回収機構を備えた回収処理装置22の構成の一例を
図2に示す。リチウム回収機構には、例えば吸着剤によるリチウムの吸着装置が適用される。リチウム回収機構内での吸着反応により、熱水に溶存しているリチウムが分離・回収される。吸着剤としてはリチウムマンガン酸化物を用いることができる。
また、回収処理装置22にはラインL7とともにラインL8が接続されている。ラインL8により、リチウムが回収された熱水が処理装置100外へ輸送される。
【0031】
回収処理装置22に導かれた熱水は、
図2に示すように熱水貯留カラム32内にプールされ、熱水に含まれるリチウムがイオン交換酸化物法を用いた吸着によりリチウムマンガン酸化物として吸収される。
詳細には、所定濃度のマンガン酸化物(H
+MnO
x)が熱水貯留カラム32内に保有されていて、熱水はラインL7より入口弁32aを開にして導入されるとともに、撹拌機32cにより穏やかに撹拌される。これにより、反応式(1)が生じ、熱水に含まれるリチウムからリチウムマンガン酸化物(Li
+MnO
x)が形成されて沈殿する。
Li
++H
+MnO
x→Li
+MnO
x+H
+・・・(1)
沈殿したLi
+MnO
xが増加すると、リチウム検出手段32dにより所定値以上のLi濃度が検出される。そこで、熱水貯留カラム32の下部にある三方弁34を動作させて、リチウムマンガン酸化物をリチウム回収塔35へ導入する。
リチウム検出手段32dは電気的反応や炎色反応を利用してLi濃度を検出するものであり、所定値に達することで熱水貯留カラム32中のLi
+MnO
xが所定量以上蓄積されていることを判断することができる。
【0032】
回収処理装置22では、熱水貯留カラム32のリチウムマンガン酸化物を三方弁34の動作により、リチウム回収塔35へ導入するとともに、熱水貯留カラム32と同様にして所定濃度のマンガン酸化物(H
+MnO
x)を導入した熱水貯留カラム33に、熱水をラインL7より入口弁33aを開にして導入する。これにより、熱水貯留カラム33において反応式(1)を生じさせ、熱水に含まれるリチウムからリチウムマンガン酸化物(Li
+MnO
x)を形成して沈殿させる。その後、同様に熱水貯留カラム33のリチウムマンガン酸化物を三方弁34の動作により、リチウム回収塔35へ導入する。
熱水貯留カラム32,33は、熱水を交互に所定の時間(数10分程度)毎にバッチ式処理運用し、リチウムマンガン酸化物を形成する。
【0033】
リチウム回収塔35では、Li
+MnO
xは入口弁35aよりHClを添加して、H
+MnO
xと再分離して、反応式(2)が生じ、ラインL8よりリチウムイオン(Li
+)として回収される。
Li
+MnO
x+HCl→H
+MnO
x+Li
++Cl
−・・・(2)
また、Li
+MnO
xにHClを添加して再分離したH
+MnO
xは循環弁32bより熱水貯留カラム32に回送される。
【0034】
さらに、リチウムイオン(Li
+)は炭酸リチウムとして安定化させて回収してもよい。すなわち、上記の反応式(2)の右辺に相当する回収されたリチウムイオン(Li
+)を含む溶液に、入口弁35bより所定濃度のNa
2CO
3が含有されるようNa
2CO
3を添加し、図示略の撹拌手段により穏やかに撹拌することで、反応式(3)が生じ、熱水に含まれるリチウムが炭酸リチウムとして安定して生成回収される。
2Li
++2Cl
−+Na
2CO
3→Li
2CO
3+2NaCl・・・(3)
【0035】
上記で生成された炭酸リチウムは、固形物として溶液中で沈殿するので容易に回収することができる。また、NaClは環境に問題なければ還元井から地中に戻してもよいし、濾過装置で分離回収してもよい。
【0036】
なお、本実施形態の回収処理装置22には、リチウムに限らず、熱水に含まれる有価金属に応じた回収機構を設けることができる。例えば、熱水中にシリカ及びマグネシウムが多く溶存している場合には、回収処理装置22にマグネシウム回収機構を具備すればよい。
【0037】
制御部26には、検出手段24からの信号S1の入力部と、信号S1に応じた流路切り替え機12への信号S2と第1撹拌反応容器14への信号S3及び第2撹拌反応容器16への信号S4の各出力部が設けられている。
検出手段24から制御部26に信号S1が発信されると、制御部26から流路切り替え機12、第1,第2の撹拌反応容器14,16にそれぞれ、信号S2,S3,S4が発信される。
第1撹拌反応容器14への信号S3は、
図1に示すように、重合剤供給装置14cと洗浄液供給装置14dとバルブ14b,14eの各構成要素へ分岐して出力される。同様に、第2撹拌反応容器16への信号S4は、重合剤供給装置16cと洗浄液供給装置16dとバルブ16b,16eのそれぞれに分岐して出力される。
【0038】
次いで、処理プラント110における熱水のシリカ回収の処理方法について説明する。
先ず、
図1に示していない装置を用いて地中の地熱水を汲み上げ、地熱発電に供された熱水を熱水収容器10に収容する。熱水収容器10内の熱水の温度は約100℃である。また、熱水には一般に、500〜1000ppm程度のモノシリカが溶存している。
次に、熱水収容器10からラインL1を介して、処理装置100に熱水を導く。制御部26により、処理装置100を以下に説明する稼動状態Aまたは稼動状態Bのいずれかの状態で稼動させ、熱水中のシリカを回収した後に、リチウムを個別に回収する。以下では、処理装置100の初期状態が稼動状態Aであるものとして説明する。
【0039】
[稼動状態A]
稼動状態Aは第1撹拌反応容器14において反応工程を実施するとともに、第2撹拌反応容器16において洗浄工程を実施する状態である。
具体的には、制御部26からの信号S2により、流路切り替え機12に輸送された熱水は全てラインL2に導く状態に切り替えておく。同時に、制御部26からの信号S3により、重合剤供給装置14cを重合剤供給状態にし、洗浄液供給装置14dを洗浄液供給停止状態にするとともに、バルブ14b,14eを閉じておく。さらに、制御部26からの信号S4により、洗浄液供給装置16d及び重合剤供給装置16cを供給停止状態にするとともに、バルブ16bを開栓し、バルブ16eを閉じておく。
【0040】
上記の制御により、流路切り替え機12に導かれた熱水はラインL2を通って第1撹拌反応容器14に投入される。
次に、第1撹拌反応容器14内に重合剤供給装置14cからカチオン系界面活性剤とpH調整剤を投入する。第1撹拌反応容器14内のカチオン系界面活性剤の濃度が高い程、モノシリカの重合反応の促進効果が大きくなるが、多量に投入すると熱水の処理コストが高くなる。そのため、カチオン系界面活性剤の濃度は5〜20ppmになるようにすることが好ましい。また、第1撹拌反応容器14内のpHは7〜9にすることが好ましい。
【0041】
反応工程において、モノシリカはpHが7近傍の熱水中で、H
3SiO
4−に解離していると考えられる。そのため、モノシリカのみではマイナスイオン同士で反発して重合反応が進行し難い。本実施形態の熱水の処理においては触媒粒子として表面がプラスに帯電したγ−アルミナビーズ担体を用いるため、モノシリカはγ−アルミナビーズ担体(もしくはシリカビーズ担体)に引きつけられて、その表面に接触し、重合反応が促進されるものと考えられる。また、カチオン系界面活性剤はカチオン基として解離しており、H
3SiO
4−となっているモノシリカと容易に反応すると予測される。そして、γ−アルミナビーズ担体に、これらの反応物が付着し、濃縮されることにより、モノシリカの重合反応が促進され、ポリシリカとしてシリカが析出されるものと推測できる。
【0042】
このように第1撹拌反応容器14内では、熱水中のモノシリカがγ−アルミナビーズ担体(もしくはシリカビーズ担体)の表面に接触するとともにカチオン系界面活性剤と反応し、且つモノシリカ同士が重合反応してポリシリカとなる。また、γ−アルミナビーズ担体は撹拌機14aにより常に撹拌されているため、γ−アルミナビーズ担体表面に析出したポリシリカは剥離する。そして、γ−アルミナビーズ担体の表面において、モノシリカのγ−アルミナビーズ担体への接触が繰り返されることにより、重合反応が進行する。第1撹拌反応容器14における反応工程にかかる時間は、熱水中のモノシリカの濃度等によっても異なるが、例えば5〜15分程度である。
なお、第1撹拌反応容器14における反応工程の所要時間を事前に調査し、予め制御部26に設定しておくことが好ましい。
【0043】
第1撹拌反応容器14における反応工程開始から、上記の所要時間に基づく一定時間の経過後に、制御部26からの信号S3によりバルブ14eを開ける。ポリシリカを含む熱水はラインL4,L6中を輸送され、沈降分離槽18に導かれる。
沈降分離槽18に投入された熱水は、一定の間隔で互い違いに配置された仕切板18b,18cの間を蛇行して沈降分離槽18の下流側に導かれる。このとき、各小室18fの底部に熱水中のポリシリカの粒子が沈降する。従って、一定量のポリシリカ粒子が沈降した時にバルブ18dを開けて、ポリシリカ粒子をラインL11,L12を介して沈降物収容器18eに輸送する。
【0044】
一方、沈降分離槽18内の熱水はラインL7から抜き出され、検出手段24を介して回収処理装置22に導かれる。このとき、検出手段24によりラインL7中を輸送される熱水中のモノシリカの残留濃度(残留シリカ濃度)を常時測定する。
【0045】
回収処理装置22には、既に上流側で第1撹拌反応容器14及び沈降分離槽18によりシリカが回収された熱水が投入される。
次に、この熱水から図示略のリチウム回収機構によりリチウムを回収する。具体的には、回収処理装置22では、イオン交換酸化物法を用いた吸着によりリチウムマンガン酸化物として吸収する。このリチウムマンガン酸化物は、リチウム回収塔35では、HClを添加してリチウムイオン(Li
+)として回収される。
これにより、熱水の温度が約80℃〜90℃であっても、不純物の混入を抑えて確実にリチウムを回収できる。
【0046】
リチウム回収後の熱水は、ラインL8から抜き出して処理装置100外に輸送する。さらに、熱水は図示しない配管を介して地中に還元される。
【0047】
一方、制御部26からの信号S4により、第2撹拌反応容器16では洗浄工程を実施する。直前まで反応工程が実施されていたため、第2撹拌反応容器16内はγ−アルミナビーズ担体表面にポリシリカが付着して重合反応が阻害され、その結果、検出手段24において検出される残留シリカ濃度が高い状態になっていた。なお、直前の反応工程で重合剤を添加した熱水は全て沈降分離槽18に送られていて、第2撹拌反応容器16自体は空になっている。
ここで、洗浄工程では信号S4により洗浄液供給装置16dからラインL16を介して、第2撹拌反応容器16に洗浄液のみを供給する。撹拌機16aを用いて洗浄液を撹拌し、γ−アルミナビーズ担体同士を衝突させることにより、その表面に付着しているポリシリカを強制的に剥離させる。洗浄液は熱水収容器10に溜められている熱水でもよいし、洗浄液供給装置16dから供給した洗浄液でもよい。この洗浄液供給装置16dの洗浄液は工業用水等でもよい。
上記の洗浄は所定の時間で行えばよい。γ−アルミナビーズ担体から剥離したポリシリカは洗浄液中に分散された状態になっている。洗浄終了後、バルブ16bを開けてポリシリカを含む洗浄液をラインL10から排出する。このような処理により、第2撹拌反応容器16からγ−アルミナビーズ担体表面に析出したポリシリカを除去することができる。ポリシリカが除去しきれない場合は、洗浄を繰り返し行う。
第2撹拌反応容器16における洗浄終了後、反応工程が第1撹拌反応容器14で進んでいる場合は、そのまま待機する。
【0048】
以上の稼動状態Aは検出手段24における残留シリカ濃度が閾値を超えるまで継続する。その後、残留シリカ濃度が閾値を超えたら、第1撹拌反応容器14のγ−アルミナビーズ担体の表面に析出したシリカを除去するために処理装置100を稼動状態Aから稼動状態Bに移行させる。
【0049】
[稼動状態B]
続いて、処理装置100の稼動状態Bについて説明する。稼動状態Bは第1撹拌反応容器14において洗浄工程を実施するとともに、第2撹拌反応容器16において反応工程を実施する状態である。
具体的には、制御部26からの信号S2により、流路切り替え機12に導かれた熱水を全てラインL3に導く状態に切り替える。同時に、制御部26からの信号S4により重合剤供給装置16cを重合剤供給状態にし、洗浄液供給装置16dを洗浄液供給停止状態にするとともに、バルブ16b,16eを閉じる。さらに、制御部26からの信号S3により重合剤供給装置14c及び洗浄液供給装置14dを供給停止状態にするとともに、バルブ14bを開栓し、バルブ14eを閉じる。
【0050】
上記の制御により、流路切り替え機12に導かれた熱水はラインL3を通って第2撹拌反応容器16に投入される。第2撹拌反応容器16の反応工程は稼動状態Aにおける第1撹拌反応容器14の反応工程と同様の工程で行うため、その説明を省略する。
第2撹拌反応容器16からラインL5に抜き出された熱水は、合流点J1を経由してラインL6に輸送され、沈降分離槽18に投入される。その後、沈降分離槽18で処理された熱水をラインL7で回収処理装置22に導く。また、検出手段24では、ラインL7中を流れる熱水の残留シリカ濃度を常時測定する。さらに、回収処理装置22で熱水中のリチウムを回収し、リチウム回収後の熱水をラインL8から抜き出して処理装置100外に輸送する。稼動状態A及び稼動状態Bにおける沈降分離槽18、検出手段24、回収処理装置22の動作は同一である。
【0051】
また、上記の制御により、第1撹拌反応容器14は洗浄工程を実施する。第1撹拌反応容器14の洗浄工程は稼動状態Aにおける第2撹拌反応容器16の洗浄工程と同様の工程で行うため、その説明を省略する。
【0052】
前述のように反応工程を実施している一方の撹拌反応容器では撹拌機14aまたは16aにより熱水を撹拌しても、γ−アルミナビーズ担体表面のポリシリカは剥離しきれず、γ−アルミナビーズ担体表面にポリシリカが付着する。そのため、熱水中のモノシリカがγ−アルミナビーズ担体表面に接触できなくなり、重合反応が進行しなくなる。このような状態になると、一方の撹拌反応容器から高いシリカ濃度の熱水が沈降分離槽18に導かれ、結果として検出手段24において測定される残留シリカ濃度が高くなる。
【0053】
検出手段24には予め、γ−アルミナビーズ担体表面にシリカが析出することにより第1,第2の撹拌反応容器14,16内で重合反応が進行しなくなった状態において、検出手段24で検知される熱水の残留シリカ濃度を閾値として設定する。
本実施形態における熱水の処理方法では、検出手段24で沈降分離槽18の熱水の残留シリカ濃度が閾値より高くなったことを検知した時に、検出手段24から制御部26に信号S1が発信される。また、検出手段24からの信号S1に応じて、制御部26により信号S2,S3,S4を発信し、処理装置100を稼動状態Aと稼動状態Bで交互に切り替える。
【0054】
このように、本実施形態の熱水の処理方法によれば、沈降分離槽18で処理された熱水中の残留シリカ濃度が閾値を超えたことを検出手段24で検知した時に、制御部26により反応工程を実施していた一方の撹拌反応容器を洗浄工程に切り替えるとともに、洗浄工程を実施していた他方の撹拌反応容器を反応工程に切り替えることができる。即ち、一方の撹拌反応容器で反応工程を実施している間に、洗浄工程を実施している他方の撹拌反応容器内の触媒粒子の表面に析出したシリカを除去し、他方の撹拌反応容器を反応工程の実施開始直前の状態に準備しておくことができる。また、検出手段24からの信号S1に応じて、制御部により処理プラント110の稼動状態を適切なタイミングで切り替えることにより、第1,第2の撹拌反応容器14,16をシリカの重合反応が充分に促進される状態に保つことができる。このような状態の第1,第2の撹拌反応容器14,16を交互に用いるため、撹拌反応容器への熱水の供給を中断せずに、熱水中のシリカを析出させる反応を連続的且つ効率良く実施できる。
【0055】
また、地域によっては高温地熱水にシリカに加えてリチウム等の有価金属が溶存している。その場合、地熱発電に供された地熱水から有価金属を回収できれば、資源として有効に利用できる。
特開2001−224957号公報には、リチウムを含むアルミナ−シリカ複合酸化物により得られるリチウム吸着剤が開示されている。また、特開2009−161794号公報には、β−ジケトン、中性有機リン化合物及び環状構造を有するビニルモノマーを原料とする吸着剤と、地熱水等のリチウム水溶液とをpH7以上の条件下で接触させ、その後にpH4±1.5の水と接触させるリチウム回収方法が開示されている。
従来、特開2001−224957号公報,特開2009−161794号公報に開示されているリチウム回収方法が知られているが、これらの方法ではリチウムの分離・回収に対するシリカの妨害が考慮されていない問題があった。また、特開2009−161794号公報に開示されているリチウム回収方法では、高温水溶液中での吸着剤の熱安定性が考慮されていないため、熱水を冷却しなければならず、リチウム回収の消費エネルギー及びコストが莫大になる問題があった。
しかしながら、本発明のようにシリカを回収した後の熱水に対してであれば、シリカの大量の析出が抑制されるため、例えばリチウムマンガン酸化物のような無機系の耐熱性に優れた吸着剤を用いることで、リチウムを確実に回収できる。