特許第5758352号(P5758352)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5758352
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】無線通信システムおよび基地局
(51)【国際特許分類】
   H04W 76/02 20090101AFI20150716BHJP
   H04W 92/20 20090101ALI20150716BHJP
【FI】
   H04W76/02
   H04W92/20
【請求項の数】9
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2012-140900(P2012-140900)
(22)【出願日】2012年6月22日
(65)【公開番号】特開2014-7500(P2014-7500A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2014年2月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】392026693
【氏名又は名称】株式会社NTTドコモ
(74)【代理人】
【識別番号】100125689
【弁理士】
【氏名又は名称】大林 章
(72)【発明者】
【氏名】キム ジンホ
(72)【発明者】
【氏名】安田 浩人
(72)【発明者】
【氏名】森岡 康史
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】萩原 淳一郎
(72)【発明者】
【氏名】石井 啓之
【審査官】 望月 章俊
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0140700(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0019637(US,A1)
【文献】 特開2013−153520(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/053039(WO,A2)
【文献】 NTT DOCOMO,INC.,Requirements, Candidate Solutions & Technoloty Roadmap for LTE Rel-12 Onward,3GPP RWS-120010,3GPP,2012年 6月11日
【文献】 NTT DOCOMO, INC.,TP to TR 36.842 on SeNB modification and release,3GPP R2-134565,3GPP,2013年11月11日
【文献】 Hiroyuki Ishii et al.,A Novel Architecture for LTE-B,GC'12 Workshop: International Workshop on Emerging Technologies for LTE-Advanced and Beyond-4G,IEEE,2012年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W4/00−H04W99/00
H04B7/24−H04B7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ装置と、
前記ユーザ装置の無線リソース制御を、制御プレーン経路を介して実行可能である第1基地局と、
前記ユーザ装置の無線リソース制御を実行しない第2基地局と
を含む複数の基地局と、
ゲートウェイ装置とを備え、
前記第1基地局は、
前記ユーザ装置から送信される、前記基地局が送信する電波に関する測定報告メッセージを受信する測定報告メッセージ受信部と、
前記ユーザ装置と前記第1基地局とに制御プレーン経路及び第1ユーザプレーン経路が確立され、前記第1基地局と前記ゲートウェイ装置とに第2ユーザプレーン経路が確立されている場合に、前記第1基地局と前記第2基地局とに第3ユーザプレーン経路を確立すべきか否かを前記測定報告メッセージに基づいて判定する判定部と、
前記第3ユーザプレーン経路を確立すべきと前記判定部が判定したときに、前記第1基地局と前記第2基地局とに前記第3ユーザプレーン経路を確立し、確立された前記第3ユーザプレーン経路を前記第2ユーザプレーン経路に関連付けるユーザプレーン経路制御部と、
前記ユーザ装置と前記第2基地局とに第4ユーザプレーン経路を確立することを指示する無線接続再設定メッセージを、前記ユーザ装置に送信する無線接続設定部とを備え、
前記第2基地局は、
前記ユーザ装置が確立した前記第4ユーザプレーン経路を、前記第3ユーザプレーン経路に関連付けるユーザプレーン経路処理部を備える
無線通信システム。
【請求項2】
ユーザ装置と、
前記ユーザ装置の無線リソース制御を、制御プレーン経路を介して実行可能である第1基地局と、
前記ユーザ装置の無線リソース制御を実行しない第2基地局と
を含む複数の基地局と、
交換局と、
ゲートウェイ装置とを備え、
前記第1基地局は、
前記ユーザ装置から送信される、前記基地局からの電波に関する測定報告メッセージを受信する測定報告メッセージ受信部と、
前記測定報告メッセージを前記交換局に転送する転送部とを備え、
前記交換局は、
前記ユーザ装置と前記第1基地局とに制御プレーン経路及び第1ユーザプレーン経路が確立され、前記第1基地局と前記ゲートウェイ装置とに第2ユーザプレーン経路が確立されている場合に、前記第1基地局と前記第2基地局とに第3ユーザプレーン経路を確立すべきか否かを前記測定報告メッセージに基づいて判定する判定部と、
前記判定部の判定結果を前記第1基地局に送信する判定結果送信部とを備え、
前記第1基地局は、さらに、
前記判定結果が前記第3ユーザプレーン経路を確立すべきとの判定を示すときに、前記第1基地局と前記第2基地局とに前記第3ユーザプレーン経路を確立し、確立された前記第3ユーザプレーン経路を前記第2ユーザプレーン経路に関連付けるユーザプレーン経路制御部と、
前記ユーザ装置と前記第2基地局とに第4ユーザプレーン経路を確立することを指示する無線接続再設定メッセージを、前記ユーザ装置に送信する無線接続設定部とを備え、
前記第2基地局は、
前記ユーザ装置が確立した前記第4ユーザプレーン経路を、前記第3ユーザプレーン経路に関連付けるユーザプレーン経路処理部を備える
無線通信システム。
【請求項3】
前記第1基地局の前記ユーザプレーン経路制御部は、
前記第3ユーザプレーン経路と前記第4ユーザプレーン経路とが関連付けられた後に前記第1ユーザプレーン経路を解放する
請求項1または請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記第1基地局の前記ユーザプレーン経路制御部は、
前記第1基地局の識別情報を含み、前記第3ユーザプレーン経路を確立することを要求する経路確立要求メッセージを第2基地局に送信し、
前記第2基地局の前記ユーザプレーン経路処理部は、
前記経路確立要求メッセージに応じて、前記第2基地局の識別情報を含む経路確立応答メッセージを送信し、
前記第1基地局の前記無線接続設定部は、
前記第2基地局の前記識別情報を含む前記無線接続再設定メッセージを前記ユーザ装置に送信し、
前記ユーザ装置は、
前記無線接続再設定メッセージに基づいて前記第2基地局にアクセスすることにより前記第4ユーザプレーン経路を確立する通信制御部を備える
請求項1から請求項3のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項5】
ユーザ装置と、
前記ユーザ装置の無線リソース制御を、制御プレーン経路を介して実行可能である第1基地局と、
前記ユーザ装置の無線リソース制御を実行しない第2基地局と
を含む複数の基地局と、
ゲートウェイ装置とを備え、
前記第1基地局は、
前記ユーザ装置から送信される、前記基地局が送信する電波に関する測定報告メッセージを受信する測定報告メッセージ受信部と、
前記ユーザ装置と前記第1基地局とに制御プレーン経路が確立され、前記ゲートウェイ装置と前記第1基地局とに第2ユーザプレーン経路が確立され、前記第1基地局と前記第2基地局とに第3ユーザプレーン経路が前記第2ユーザプレーン経路と関連付けて確立され、前記第2基地局と前記ユーザ装置とに第4ユーザプレーン経路が前記第3ユーザプレーン経路と関連付けて確立されている場合に、前記ユーザ装置と前記第1基地局とに第1ユーザプレーン経路を確立すべきか否かを前記測定報告メッセージに基づいて判定する判定部と、
前記第1ユーザプレーン経路を確立すべきと前記判定部が判定した場合に、前記ユーザ装置と前記第1基地局とに前記第1ユーザプレーン経路を確立するユーザプレーン経路制御部とを備える
無線通信システム。
【請求項6】
ユーザ装置と、
前記ユーザ装置の無線リソース制御を、制御プレーン経路を介して実行可能である第1基地局と、
前記ユーザ装置の無線リソース制御を実行しない第2基地局と
を含む複数の基地局と、
交換局と、
ゲートウェイ装置とを備え、
前記第1基地局は、
前記ユーザ装置から送信される、前記基地局が送信する電波に関する測定報告メッセージを受信する測定報告メッセージ受信部と、
前記測定報告メッセージを前記交換局に転送する転送部とを備え、
前記交換局は、
前記ユーザ装置と前記第1基地局とに制御プレーン経路が確立され、前記ゲートウェイ装置と前記第1基地局とに第2ユーザプレーン経路が確立され、前記第1基地局と前記第2基地局とに第3ユーザプレーン経路が前記第2ユーザプレーン経路と関連付けて確立され、前記第2基地局と前記ユーザ装置とに第4ユーザプレーン経路が前記第3ユーザプレーン経路と関連付けて確立されている場合に、前記ユーザ装置と前記第1基地局とに第1ユーザプレーン経路を確立すべきか否かを前記測定報告メッセージに基づいて判定する判定部と、
前記判定部の判定結果を前記第1基地局に送信する判定結果送信部とを備え、
前記第1基地局は、さらに
前記判定結果が前記第1ユーザプレーン経路を確立すべきとの判定を示すときに、前記ユーザ装置と前記第1基地局とに前記第1ユーザプレーン経路を確立するユーザプレーン経路制御部とを備える
無線通信システム。
【請求項7】
前記第1基地局は、無線接続再設定メッセージを送信可能な無線接続制御部を備え、
前記第1基地局の前記ユーザプレーン経路制御部は、
前記第1ユーザプレーン経路を確立すべき場合であって、
前記ユーザ装置と前記第1基地局とに既にユーザプレーン経路が存在するときには、当該ユーザプレーン経路を前記第2ユーザプレーン経路と関連付けて前記第1ユーザプレーン経路とし、
前記ユーザ装置と前記第1基地局とにユーザプレーン経路が存在しないときには、前記ユーザ装置と前記第1基地局とに前記第1ユーザプレーン経路を確立することを指示する無線接続再設定メッセージを、前記ユーザ装置に送信するように前記無線接続制御部を制御する
請求項5または請求項6に記載の無線通信システム。
【請求項8】
ユーザ装置と、
前記ユーザ装置の無線リソース制御を、制御プレーン経路を介して実行可能である第1基地局と、
前記ユーザ装置の無線リソース制御を実行しない第2基地局と
を含む複数の基地局と、
ゲートウェイ装置とを備える無線通信システムで用いられる第1基地局であって、
前記ユーザ装置から送信される、前記基地局が送信する電波に関する測定報告メッセージを受信する測定報告メッセージ受信部と、
前記ユーザ装置と前記第1基地局とに制御プレーン経路及び第1ユーザプレーン経路が確立され、前記第1基地局と前記ゲートウェイ装置とに第2ユーザプレーン経路が確立されている場合に、前記第1基地局と前記第2基地局とに第3ユーザプレーン経路を確立すべきか否かを前記測定報告メッセージに基づいて判定する判定部と、
前記第3ユーザプレーン経路を確立すべきと前記判定部が判定したときに、前記第1基地局と前記第2基地局とに前記第3ユーザプレーン経路を確立し、確立された前記第3ユーザプレーン経路を前記第2ユーザプレーン経路に関連付けるユーザプレーン経路制御部と、
前記ユーザ装置と前記第2基地局とに第4ユーザプレーン経路を確立することを指示する無線接続再設定メッセージを、前記ユーザ装置に送信する無線接続設定部とを備える
基地局。
【請求項9】
ユーザ装置と、
前記ユーザ装置の無線リソース制御を、制御プレーン経路を介して実行可能である第1基地局と、
前記ユーザ装置の無線リソース制御を実行しない第2基地局と
を含む複数の基地局と、
ゲートウェイ装置とを備える無線通信システムで用いられる第1基地局であって、
前記ユーザ装置から送信される、前記基地局が送信する電波に関する測定報告メッセージを受信する測定報告メッセージ受信部と、
前記ユーザ装置と前記第1基地局とに制御プレーン経路が確立され、前記ゲートウェイ装置と前記第1基地局とに第2ユーザプレーン経路が確立され、前記第1基地局と前記第2基地局とに第3ユーザプレーン経路が前記第2ユーザプレーン経路と関連付けて確立され、前記第2基地局と前記ユーザ装置とに第4ユーザプレーン経路が前記第3ユーザプレーン経路と関連付けて確立されている場合に、前記ユーザ装置と前記第1基地局とに第1ユーザプレーン経路を確立すべきか否かを前記測定報告メッセージに基づいて判定する判定部と、
前記第1ユーザプレーン経路を確立すべきと前記判定部が判定した場合に、前記ユーザ装置と前記第1基地局とに前記第1ユーザプレーン経路を確立するユーザプレーン経路制御部とを備える
基地局。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムおよび基地局に関する。
【背景技術】
【0002】
3GPP(Third Generation Partnership Project)規格に従う様々な無線通信システムが活用されている。3GPPに規定されるLTE/SAE(Long Term Evolution / System Architecture Evolution)規格に従う無線通信システムにおいては、ユーザデータの通信に使用される論理的な通信経路(ユーザプレーン経路)が無線基地局であるeNB(evolved Node B)を経由してゲートウェイ装置とユーザ装置とに確立される。ユーザ装置は、確立されたユーザプレーン経路を用いて外部ネットワーク(インターネット等)との通信を実行する。
【0003】
また、eNBは、他のeNB、交換局、およびユーザ装置と制御信号を送受信するための通信経路(制御プレーン経路)を有する。ユーザ装置と接続中のeNBは、そのユーザ装置が他のeNBが形成するセルへと移動する際、制御プレーン経路を介してユーザ装置および他のeNBと制御メッセージを送受信し、そのユーザ装置を他のeNBへハンドオーバさせるように動作する。ハンドオーバ時には、ユーザプレーン経路がハンドオーバ先のeNBを経由するように経路変更される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】3GPP TS 36.300 V10.6.0 (2011-12), 3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Radio Access Network; Evolved Universal Terrestrial Radio Access (E-UTRA) and Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network (E-UTRAN); Overall description; Stage 2 (Release 10)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のようなeNBに加えて、無線通信システムが、eNBに接続され、ユーザ装置に対する制御プレーン経路を有さない基地局(制御機能が限定的な基地局)を備えることを想定する。そのような基地局は、eNBと接続される一方で、ゲートウェイ装置とは接続されないので、ゲートウェイ装置と直接的にユーザデータを送受信できない。また、そのような基地局は、ユーザ装置に対する制御プレーン経路を有さないので、ユーザ装置と直接的に制御メッセージを送受信できない。したがって、従来の無線通信システムによれば、そのような基地局を用いたシステム構成を実現することが困難である。
【0006】
以上の事情を考慮して、本発明は、制御機能が限定的な基地局を備える無線通信システムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の無線通信システムは、ユーザ装置と、前記ユーザ装置の無線リソース制御を、制御プレーン経路を介して実行可能である第1基地局と、前記ユーザ装置の無線リソース制御を実行しない第2基地局とを含む複数の基地局と、ゲートウェイ装置とを備え、前記第1基地局は、前記ユーザ装置から送信される、前記基地局が送信する電波に関する測定報告メッセージを受信する測定報告メッセージ受信部と、前記ユーザ装置と前記第1基地局とに制御プレーン経路及び第1ユーザプレーン経路が確立され、前記第1基地局と前記ゲートウェイ装置とに第2ユーザプレーン経路が確立されている場合に、前記第1基地局と前記第2基地局とに第3ユーザプレーン経路を確立すべきか否かを前記測定報告メッセージに基づいて判定する判定部と、前記第3ユーザプレーン経路を確立すべきと前記判定部が判定したときに、前記第1基地局と前記第2基地局とに前記第3ユーザプレーン経路を確立し、確立された前記第3ユーザプレーン経路を前記第2ユーザプレーン経路に関連付けるユーザプレーン経路制御部と、前記ユーザ装置と前記第2基地局とに第4ユーザプレーン経路を確立することを指示する無線接続再設定メッセージを、前記ユーザ装置に送信する無線接続設定部とを備え、前記第2基地局は、前記ユーザ装置が確立した前記第4ユーザプレーン経路を、前記第3ユーザプレーン経路に関連付けるユーザプレーン経路処理部を備える。
【0008】
以上の構成によれば、第1基地局と第2基地局とに第3ユーザプレーン経路が確立され、ユーザ装置への制御プレーン経路を有さない(ユーザ装置の無線リソース制御を実行しない)第2基地局とユーザ装置とに第4ユーザプレーン経路が確立される。したがって、ユーザ装置は、ゲートウェイ装置と直接的に接続されない第2基地局を経由してユーザ信号を送受信することが可能となる。すなわち、ユーザ装置の無線リソース制御を実行しない(制御機能が限定的な)第2基地局を備える無線通信システムが実現される。
【0009】
本発明の他の無線通信システムは、ユーザ装置と、前記ユーザ装置の無線リソース制御を、制御プレーン経路を介して実行可能である第1基地局と、前記ユーザ装置の無線リソース制御を実行しない第2基地局とを含む複数の基地局と、交換局と、ゲートウェイ装置とを備え、前記第1基地局は、前記ユーザ装置から送信される、前記基地局からの電波に関する測定報告メッセージを受信する測定報告メッセージ受信部と、前記測定報告メッセージを前記交換局に転送する転送部とを備え、前記交換局は、前記ユーザ装置と前記第1基地局とに制御プレーン経路及び第1ユーザプレーン経路が確立され、前記第1基地局と前記ゲートウェイ装置とに第2ユーザプレーン経路が確立されている場合に、前記第1基地局と前記第2基地局とに第3ユーザプレーン経路を確立すべきか否かを前記測定報告メッセージに基づいて判定する判定部と、前記判定部の判定結果を前記第1基地局に送信する判定結果送信部とを備え、前記第1基地局は、さらに、前記判定結果が前記第3ユーザプレーン経路を確立すべきとの判定を示すときに、前記第1基地局と前記第2基地局とに前記第3ユーザプレーン経路を確立し、確立された前記第3ユーザプレーン経路を前記第2ユーザプレーン経路に関連付けるユーザプレーン経路制御部と、前記ユーザ装置と前記第2基地局とに第4ユーザプレーン経路を確立することを指示する無線接続再設定メッセージを、前記ユーザ装置に送信する無線接続設定部とを備え、前記第2基地局は、前記ユーザ装置が確立した前記第4ユーザプレーン経路を、前記第3ユーザプレーン経路に関連付けるユーザプレーン経路処理部を備える。
【0010】
以上の構成によれば、第1基地局と第2基地局とに第3ユーザプレーン経路が確立され、ユーザ装置への制御プレーン経路を有さない(ユーザ装置の無線リソース制御を実行しない)第2基地局とユーザ装置とに第4ユーザプレーン経路が確立される。したがって、ユーザ装置は、ゲートウェイ装置と直接的に接続されない第2基地局を経由してユーザ信号を送受信することが可能となる。すなわち、ユーザ装置の無線リソース制御を実行しない(制御機能が限定的な)第2基地局を備える無線通信システムが実現される。
【0011】
本発明の好適な態様において、前記第1基地局の前記ユーザプレーン経路制御部は、前記第3ユーザプレーン経路と前記第4ユーザプレーン経路とが関連付けられた後に前記第1ユーザプレーン経路を解放する。
以上の構成によれば、ユーザ装置が第2基地局を経由してユーザ信号を送受信することが可能となった後に、ユーザ装置と第1基地局とに確立されている第1ユーザプレーン経路が解放されるので、無線通信の連続性が維持されると同時に無線リソースの効率的な利用が実現される。
【0012】
本発明の好適な態様において、前記第1基地局の前記ユーザプレーン経路制御部は、前記第1基地局の識別情報を含み、前記第3ユーザプレーン経路を確立することを要求する経路確立要求メッセージを第2基地局に送信し、前記第2基地局の前記ユーザプレーン経路処理部は、前記経路確立要求メッセージに応じて、前記第2基地局の識別情報を含む経路確立応答メッセージを送信し、前記第1基地局の前記無線接続設定部は、前記第2基地局の前記識別情報を含む前記無線接続再設定メッセージを前記ユーザ装置に送信し、前記ユーザ装置は、前記無線接続再設定メッセージに基づいて前記第2基地局にアクセスすることにより前記第4ユーザプレーン経路を確立する通信制御部を備える。
以上の構成によれば、ユーザ装置に対する制御プレーン経路を有する第1基地局が、ユーザ装置に対する制御プレーン経路を有さない第2基地局に代わってユーザ装置に無線接続再設定メッセージを送信することにより、ユーザ装置と第2基地局との無線接続(第4ユーザプレーン経路)が確立される。
【0013】
本発明の他の無線通信システムは、ユーザ装置と、前記ユーザ装置の無線リソース制御を、制御プレーン経路を介して実行可能である第1基地局と、前記ユーザ装置の無線リソース制御を実行しない第2基地局とを含む複数の基地局と、ゲートウェイ装置とを備え、前記第1基地局は、前記ユーザ装置から送信される、前記基地局が送信する電波に関する測定報告メッセージを受信する測定報告メッセージ受信部と、前記ユーザ装置と前記第1基地局とに制御プレーン経路が確立され、前記ゲートウェイ装置と前記第1基地局とに第2ユーザプレーン経路が確立され、前記第1基地局と前記第2基地局とに第3ユーザプレーン経路が前記第2ユーザプレーン経路と関連付けて確立され、前記第2基地局と前記ユーザ装置とに第4ユーザプレーン経路が前記第3ユーザプレーン経路と関連付けて確立されている場合に、前記ユーザ装置と前記第1基地局とに第1ユーザプレーン経路を確立すべきか否かを前記測定報告メッセージに基づいて判定する判定部と、前記第1ユーザプレーン経路を確立すべきと前記判定部が判定した場合に、前記ユーザ装置と前記第1基地局とに前記第1ユーザプレーン経路を確立するユーザプレーン経路制御部とを備える。
【0014】
以上の構成によれば、ユーザ装置と第1基地局とに第1ユーザプレーン経路が確立される。したがって、当初に第2基地局を経由して無線通信していたユーザ装置が、第1基地局を経由してユーザ信号を送受信することが可能となる。すなわち、ユーザ装置の無線リソース制御を実行しない(制御機能が限定的な)第2基地局を備える無線通信システムが実現される。
【0015】
本発明の好適な態様において、前記第1基地局の前記ユーザプレーン経路制御部は、前記第1ユーザプレーン経路を確立すべきと前記判定部が判定したときに、前記第4ユーザプレーン経路を解放することを要求する経路解放要求メッセージを前記第2基地局に送信し、前記第2基地局は、前記経路解放要求メッセージに基づいて前記第4ユーザプレーン経路を解放し、前記第4ユーザプレーン経路の解放後に、経路解放応答メッセージを前記第1基地局に送信するユーザプレーン経路処理部を備え、前記第1基地局の前記ユーザプレーン経路制御部は、前記経路解放応答メッセージを受信すると、前記第3ユーザプレーン経路を解放する。
以上の構成によれば、第1ユーザプレーン経路の確立に伴って、第1基地局と第2基地局とに確立された第3ユーザプレーン経路および第2基地局とユーザ装置とに確立された第4ユーザプレーン経路が解放されるので、無線リソースの効率的な利用が実現される。
【0016】
本発明の他の無線通信システムは、ユーザ装置と、前記ユーザ装置の無線リソース制御を、制御プレーン経路を介して実行可能である第1基地局と、前記ユーザ装置の無線リソース制御を実行しない第2基地局とを含む複数の基地局と、交換局と、ゲートウェイ装置とを備え、前記第1基地局は、前記ユーザ装置から送信される、前記基地局が送信する電波に関する測定報告メッセージを受信する測定報告メッセージ受信部と、前記測定報告メッセージを前記交換局に転送する転送部とを備え、前記交換局は、前記ユーザ装置と前記第1基地局とに制御プレーン経路が確立され、前記ゲートウェイ装置と前記第1基地局とに第2ユーザプレーン経路が確立され、前記第1基地局と前記第2基地局とに第3ユーザプレーン経路が前記第2ユーザプレーン経路と関連付けて確立され、前記第2基地局と前記ユーザ装置とに第4ユーザプレーン経路が前記第3ユーザプレーン経路と関連付けて確立されている場合に、前記ユーザ装置と前記第1基地局とに第1ユーザプレーン経路を確立すべきか否かを前記測定報告メッセージに基づいて判定する判定部と、前記判定部の判定結果を前記第1基地局に送信する判定結果送信部とを備え、前記第1基地局は、さらに 前記判定結果が前記第1ユーザプレーン経路を確立すべきとの判定を示すときに、前記ユーザ装置と前記第1基地局とに前記第1ユーザプレーン経路を確立するユーザプレーン経路制御部とを備える。
【0017】
以上の構成によれば、ユーザ装置と第1基地局とに第1ユーザプレーン経路が確立される。したがって、当初に第2基地局を経由して無線通信していたユーザ装置が、第1基地局を経由してユーザ信号を送受信することが可能となる。すなわち、ユーザ装置の無線リソース制御を実行しない(制御機能が限定的な)第2基地局を備える無線通信システムが実現される。
【0018】
本発明の好適な態様において、前記第1基地局の前記ユーザプレーン経路制御部は、前記判定結果が前記第1ユーザプレーン経路を確立すべきとの判定を示すときに、前記第4ユーザプレーン経路を解放することを要求する経路解放要求メッセージを前記第2基地局に送信し、前記第2基地局は、前記経路解放要求メッセージに基づいて前記第4ユーザプレーン経路を解放し、前記第4ユーザプレーン経路の解放後に、経路解放応答メッセージを前記第1基地局に送信するユーザプレーン経路処理部を備え、前記第1基地局の前記ユーザプレーン経路制御部は、前記経路解放応答メッセージを受信すると、前記第3ユーザプレーン経路を解放する。
以上の構成によれば、第1ユーザプレーン経路の確立に伴って、第1基地局と第2基地局とに確立された第3ユーザプレーン経路および第2基地局とユーザ装置とに確立された第4ユーザプレーン経路が解放されるので、無線リソースの効率的な利用が実現される。
【0019】
本発明の好適な態様において、前記第1基地局は、無線接続再設定メッセージを送信可能な無線接続制御部を備え、前記第1基地局の前記ユーザプレーン経路制御部は、前記第1ユーザプレーン経路を確立すべき場合であって、前記ユーザ装置と前記第1基地局とに既にユーザプレーン経路が存在するときには、当該ユーザプレーン経路を前記第2ユーザプレーン経路と関連付けて前記第1ユーザプレーン経路とし、前記ユーザ装置と前記第1基地局とにユーザプレーン経路が存在しないときには、前記ユーザ装置と前記第1基地局とに前記第1ユーザプレーン経路を確立することを指示する無線接続再設定メッセージを、前記ユーザ装置に送信するように前記無線接続制御部を制御する。
以上の構成によれば、第1ユーザプレーン経路を確立すべき場合に、既にユーザプレーン経路が確立されているときにはその既存のユーザプレーン経路を第1ユーザプレーン経路とするので、無線リソースが効率的に利用される。
【0020】
本発明の基地局は、ユーザ装置と、前記ユーザ装置の無線リソース制御を、制御プレーン経路を介して実行可能である第1基地局と、前記ユーザ装置の無線リソース制御を実行しない第2基地局とを含む複数の基地局と、ゲートウェイ装置とを備える無線通信システムで用いられる第1基地局であって、前記ユーザ装置から送信される、前記基地局が送信する電波に関する測定報告メッセージを受信する測定報告メッセージ受信部と、前記ユーザ装置と前記第1基地局とに制御プレーン経路及び第1ユーザプレーン経路が確立され、前記第1基地局と前記ゲートウェイ装置とに第2ユーザプレーン経路が確立されている場合に、前記第1基地局と前記第2基地局とに第3ユーザプレーン経路を確立すべきか否かを前記測定報告メッセージに基づいて判定する判定部と、前記第3ユーザプレーン経路を確立すべきと前記判定部が判定したときに、前記第1基地局と前記第2基地局とに前記第3ユーザプレーン経路を確立し、確立された前記第3ユーザプレーン経路を前記第2ユーザプレーン経路に関連付けるユーザプレーン経路制御部と、前記ユーザ装置と前記第2基地局とに第4ユーザプレーン経路を確立することを指示する無線接続再設定メッセージを、前記ユーザ装置に送信する無線接続設定部とを備える。
【0021】
本発明の他の基地局は、ユーザ装置と、前記ユーザ装置の無線リソース制御を、制御プレーン経路を介して実行可能である第1基地局と、前記ユーザ装置の無線リソース制御を実行しない第2基地局とを含む複数の基地局と、ゲートウェイ装置とを備える無線通信システムで用いられる第1基地局であって、前記ユーザ装置から送信される、前記基地局が送信する電波に関する測定報告メッセージを受信する測定報告メッセージ受信部と、前記ユーザ装置と前記第1基地局とに制御プレーン経路が確立され、前記ゲートウェイ装置と前記第1基地局とに第2ユーザプレーン経路が確立され、前記第1基地局と前記第2基地局とに第3ユーザプレーン経路が前記第2ユーザプレーン経路と関連付けて確立され、前記第2基地局と前記ユーザ装置とに第4ユーザプレーン経路が前記第3ユーザプレーン経路と関連付けて確立されている場合に、前記ユーザ装置と前記第1基地局とに第1ユーザプレーン経路を確立すべきか否かを前記測定報告メッセージに基づいて判定する判定部と、前記第1ユーザプレーン経路を確立すべきと前記判定部が判定した場合に、前記ユーザ装置と前記第1基地局とに前記第1ユーザプレーン経路を確立するユーザプレーン経路制御部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施形態に係る無線通信システムを示すブロック図である。
図2】第1実施形態のGTPトンネル確立動作の一例を示す説明図である。
図3】論理経路の構成の一例を示す図である。
図4】論理経路の構成の一例を示す図である。
図5】論理経路の構成の一例を示す図である。
図6】第1実施形態のユーザ装置の構成を示すブロック図である。
図7】第1実施形態の第1基地局の構成を示すブロック図である。
図8】第1実施形態の第2基地局の構成を示すブロック図である。
図9】第1実施形態の交換局の構成を示すブロック図である。
図10】第1実施形態のゲートウェイ装置の構成を示すブロック図である。
図11】第2実施形態のGTPトンネル解放動作の一例を示す図である。
図12】論理経路の構成の一例を示す図である。
図13】データ無線ベアラの設定動作の一例を示すフローチャートである。
図14】第3実施形態の第1基地局の構成を示すブロック図である。
図15】第3実施形態の交換局の構成を示すブロック図である。
図16】第3実施形態のGTPトンネル確立動作の一例を示す図である。
図17】第3実施形態のGTPトンネル解放動作の一例を示す図である。
図18】変形例に係る無線通信システムの構成を示すブロック図である。
図19】各無線基地局が形成するセルの構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
第1実施形態
1(1). 無線通信システムの構成
図1は、本発明の第1実施形態に係る無線通信システムCSを示すブロック図である。無線通信システムCSは、ユーザ装置UEと、第1基地局eNBと、第2基地局PhNBと、交換局MMEと、ゲートウェイ装置GWとを要素として備える。また、ネットワークNWは、無線通信システムCSが備える以上の要素のうちユーザ装置UE以外の要素を全て備える。
【0024】
無線通信システムCS内の各要素は、所定のアクセス技術(Access Technology)、例えば3GPP規格(Third Generation Partnership Project)に規定されるLTE/SAE(Long Term Evolution / System Architecture Evolution)に従って通信を実行する。3GPP規格に規定された用語に従うと、ユーザ装置UEはUser Equipmentであり、第1基地局eNBはevolved Node Bであり、交換局MMEはMobile Management Entityであり、ゲートウェイ装置GWはPacket-Data-Network/Serving Gateway、すなわちSAE Gatewayである。また、第2基地局PhNBは、その制御機能の全部又は一部を第1基地局eNBに依存する基地局である(詳細は後述される)。
本実施形態では、無線通信システムCSがLTE/SAEに従って動作する形態を例示して説明するが、本発明の技術的範囲を限定する趣旨ではない。本発明は、必要な設計上の変更を施した上で、他のアクセス技術にも適用可能である。
【0025】
ユーザ装置UEは、第1基地局eNBおよび第2基地局PhNBと無線通信することが可能である。ユーザ装置UEと各基地局(eNB,PhNB)との無線通信の方式は任意である。例えば、下りリンクではOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)が採用され得、上りリンクではSC−FDMA(Single-Carrier Frequency Division Multiple Access)が採用され得る。
【0026】
第1基地局eNBは、第2基地局PhNB、交換局MME、およびゲートウェイ装置GWと有線にて接続される。第2基地局PhNBは、第1基地局eNBと有線にて接続される。なお、第1基地局eNBと第2基地局PhNBとが無線にて接続される構成も採用可能である。ゲートウェイ装置GWは、第1基地局eNBおよび交換局MMEに接続される他、無線通信システムCSの外部ネットワークであるインターネットINに接続される。すなわち、ゲートウェイ装置GWは、外部ネットワークとの接続点(アクセスポイント)として機能し得る。
【0027】
図1において、実線がユーザ信号(音声信号、データ信号等のユーザデータを示す信号)の送受信に用いられる経路を示し、破線が制御信号の送受信に用いられる経路を示す。すなわち、実線はUプレーン(ユーザプレーン,User Plane)のインタフェースを示し、破線はCプレーン(制御プレーン,Control Plane)のインタフェースを示す。Uプレーンのインタフェースを介してUプレーン経路が確立され、Cプレーンのインタフェースを介してCプレーン経路が確立される。
【0028】
以上のインタフェースにおいては、原則として、3GPPに規定されるEPS(Evolved Packet System)のプロトコル構成が採用される。また、以上のプロトコル構成に定義されないインタフェースに関しては、第1基地局eNBと第2基地局PhNBとの間にX3インタフェースが存在し、第2基地局PhNBとユーザ装置UEとの間にPh−Uuインタフェースが存在する。なお、第2基地局PhNBとユーザ装置UEとの間にはCプレーンのインタフェースが存在しない。
【0029】
無線通信システムCS内において、論理的な経路であるベアラ(Bearer)を介して信号が送受信される。ベアラは、必要に応じて確立され解放される動的な論理経路である。Uプレーンに関して、ユーザ装置UEと第1基地局eNB、またはユーザ装置UEと第2基地局PhNBとにデータ無線ベアラDRBが確立される。第1基地局eNBと第2基地局PhNBとにX3ベアラX3Bが確立される。第1基地局eNBとゲートウェイ装置GWとにS1ベアラが確立される。なお、ネットワークNW内にて確立されるベアラ(X3ベアラX3B,S1ベアラ等)は、GTP(GPRS (General Packet Radio Service) Tunneling Protocol)トンネルとも称される。
【0030】
ユーザ装置UEは、ユーザ装置UEと第1基地局eNBとに確立されたデータ無線ベアラDRB及びS1ベアラを含む上位ベアラ(EPSベアラ)を介してインターネットINと通信可能であると共に、ユーザ装置UEと第2基地局PhNBとに確立されたデータ無線ベアラDRB、X3ベアラX3B、及びS1ベアラを含む上位ベアラを介してインターネットINと通信可能である。
【0031】
無線通信システムCS内のノードは、それぞれ固有の識別情報を有する。識別情報には、そのノードのIPアドレス、TEID(トンネルエンドポイントID)、ネットワークアドレス等が含まれ得る。また、第1基地局eNBおよび第2基地局PhNBの識別情報には、その基地局が形成するセルCを識別するための物理セルID(Physical Cell ID)が含まれ得る。IPアドレスは、無線通信システムCS内でそのノードを一意に識別するアドレス値である。TEIDは、ノード間を論理的に接続するGTPトンネルの端点を識別する識別子である。ネットワークアドレスは、無線通信システムCSが複数のサブネットに分割されている場合に、そのノードが属するサブネットを識別するアドレス値である。無線通信システムCS内のノードは、他のノードの識別情報に基づいて他のノードを識別する。
【0032】
1(2). 第1基地局−第2基地局間のGTPトンネルの確立
図2を参照して、第1実施形態のGTPトンネルの確立動作の一例を説明する。図2の例では、当初、S1ベアラS1Bがゲートウェイ装置GWと第1基地局eNBとに確立され、S1ベアラS1Bと関連付けられたデータ無線ベアラDRB1が第1基地局eNBとユーザ装置UEとに確立されていると想定する(図3)。したがって、以上の想定において、ユーザ装置UEは、当初、無線接続中の第1基地局eNBのみを経由してユーザ信号の送受信を実行する。また、図3に示すように、Cプレーンに関しては、当初、ユーザ装置UEと第1基地局eNBとにシグナリング無線ベアラSRBが確立されていると想定する。
【0033】
ユーザ装置UEは、近傍の基地局が送信する電波の受信電力(受信品質)を測定して、無線接続中の第1基地局eNBに報告する。より具体的には、ユーザ装置UEは、近傍の基地局(eNB,PhNB)が送信する電波(参照信号)の受信電力(受信品質)を示す情報を搭載したMeasurement Reportメッセージ(測定報告メッセージ)を、Cプレーン経路(シグナリング無線ベアラSRB)を介して第1基地局eNBに送信する(S100)。特に、本例では、Measurement Reportメッセージが、第1基地局eNBからの受信電力を示す情報と第2基地局PhNBからの受信電力を示す情報とを含む。
【0034】
第1基地局eNBは、ユーザ装置UEから送信されたMeasurement Reportメッセージを受信すると、ユーザ装置UEが第2基地局PhNBを経由してユーザ信号を送受信すべきか否か、すなわち、第1基地局eNBと第2基地局PhNBとにUプレーン経路(GTPトンネル)を確立すべきか否かを判定する(S120)。以上の判定は、例えば、「第2基地局PhNBからの電波の受信電力が、現在接続中の第1基地局eNBからの電波の受信電力よりも大きいか否か」という基準に基づいて実行される。本例では、ステップS120において、第1基地局eNBが、第1基地局eNBからの受信電力よりも第2基地局PhNBからの受信電力が大きいため、第1基地局eNBと第2基地局PhNBとにUプレーン経路を確立すべきと判定したと想定する。
【0035】
ステップS120の判定後、第1基地局eNBは、第1基地局eNBと第2基地局PhNBとにUプレーン経路を確立することを指示するTunnel Setup Requestメッセージ(トンネル確立要求メッセージ)を第2基地局PhNBに送信する(S140)。Tunnel Setup Requestメッセージには、第1基地局eNBの識別情報が含まれる。第2基地局PhNBは、Tunnel Setup Requestメッセージを受信すると、Tunnel Setup Requestメッセージに含まれる第1基地局eNBの識別情報に基づいて第1基地局eNBに対する論理接続(上り論理接続)を確立した後、第2基地局PhNBの識別情報およびアクセス層設定情報(AS Config)を含むTunnel Setup Completeメッセージ(トンネル確立完了メッセージ)を第1基地局eNBに送信する(S160)。アクセス層設定情報には、ユーザ装置UEと第2基地局PhNBとが同期するために必要なランダムアクセスチャネル(Random Access Channel,RACH)のタイミング情報等が含まれる。第1基地局eNBは、Tunnel Setup Completeメッセージを受信すると、Tunnel Setup Completeメッセージに含まれる第2基地局PhNBの識別情報に基づいて第2基地局PhNBに対する論理接続(下り論理接続)を確立する。以上のように、第1基地局eNBが主導して、第1基地局eNBと第2基地局PhNBとのUプレーン経路(GTPトンネル)であるX3ベアラX3Bを確立する(S180)。
【0036】
第1基地局eNBは、確立されたUプレーン経路(X3ベアラX3B)を、ゲートウェイ装置GWと第1基地局eNBとに確立されているS1ベアラS1Bに関連付ける(マッピングする)(S200)。図4は、ステップS200のマッピング後の論理経路を示す図であり、当初(図3)に確立されていたシグナリング無線ベアラSRB、データ無線ベアラDRB1、及びS1ベアラS1Bに加えて、X3ベアラX3Bが確立された状態を示す。
【0037】
ステップS200が完了すると、第1基地局eNBは、第2基地局PhNBとユーザ装置UEとに新たなデータ無線ベアラDRB2を確立することを指示するRRC Connection Reconfigurationメッセージ(無線接続再設定メッセージ)を、現在接続中のユーザ装置UEに送信する(S220)。RRC Connection Reconfigurationメッセージには、ユーザ装置UEが第2基地局PhNBと無線接続するのに必要な情報(第2基地局PhNBの識別情報およびアクセス層設定情報)が含まれる。
【0038】
ユーザ装置UEは、受信したRRC Connection Reconfigurationメッセージに従って、第2基地局PhNBへのデータ無線ベアラDRB2を確立する。より具体的には、受信したRRC Connection Reconfigurationメッセージに含まれる第2基地局PhNBの識別情報に基づいて、その第2基地局PhNBとの同期を実行した後、アクセス層設定情報を用いてその第2基地局PhNBにアクセスする(S240)。ユーザ装置UEが第2基地局PhNBへのアクセスに成功すると、新たなデータ無線ベアラDRB2の確立が完了する(S260)。すなわち、ユーザ装置UEは、RRC Connection Reconfigurationメッセージに従って第2基地局PhNBにアクセスすることにより、新たなデータ無線ベアラDRB2を確立する。
【0039】
第2基地局PhNBは、確立された新たなデータ無線ベアラDRB2を、第1基地局eNBと第2基地局PhNBとに確立されたX3ベアラX3Bに関連付ける(マッピングする)(S280)。なお、第2基地局PhNBは、以上のマッピングが完了したことを示す制御信号をユーザ装置UEおよび第1基地局eNBのいずれか一方または双方に送信すると好適である。図5は、ステップS280のマッピング後の論理経路を示す図であり、新たなデータ無線ベアラDRB2、X3ベアラX3B、及びS1ベアラS1Bを経由して、ユーザ装置UEとゲートウェイ装置GWとが論理的に接続されたことを示す。
【0040】
ステップS280の後、ユーザ装置UEは、新たなデータ無線ベアラDRB2が確立されたことを示すRRC Connection Reconfiguration Completeメッセージ(無線接続再設定完了メッセージ)を第1基地局eNBに送信する(S300)。なお、ユーザ装置UEは、新たなデータ無線ベアラDRB2の確立(S260)後に、RRC Connection Reconfiguration Completeメッセージを第1基地局eNBに送信してもよい。
【0041】
第1基地局eNBは、新しく確立されたデータ無線ベアラDRB2とX3ベアラX3Bとが関連付けられた後(または、RRC Connection Reconfiguration Completeメッセージを受信した後)に、ユーザ装置UEと第1基地局とに確立されているデータ無線ベアラDRB1を解放することが可能である(S320)。なお、ステップS320が実行されず、双方のデータ無線ベアラDRB1及びDRB2が維持されてもよい。いずれの場合であっても、ユーザ装置UEと第1基地局とに確立されているシグナリング無線ベアラSRBは維持される。
【0042】
以上に説明された動作により、第1基地局eNBと第2基地局PhNBとにUプレーン経路であるGTPトンネル(X3ベアラX3B)が確立され、第2基地局PhNBとユーザ装置UEとに新たなデータ無線ベアラDRB2が確立される。
【0043】
1(3). 各要素の構成
1(3)−1. ユーザ装置の構成
図6は、第1実施形態に係るユーザ装置UEの構成を示すブロック図である。ユーザ装置UEは、無線通信部110と制御部120と記憶部130とを備える。音声・映像等を出力する出力装置およびユーザからの指示を受け付ける入力装置等の図示は便宜的に省略されている。
【0044】
無線通信部110は、第1基地局eNBおよび第2基地局PhNBと無線通信を実行するための要素であり、送受信アンテナと、無線信号(電波)を受信して電気信号に変換する受信回路と、制御信号、ユーザ信号等の電気信号を無線信号に変換して送信する送信回路とを含む。記憶部130は、通信制御に関する情報、特に自局を含む各ノードの識別情報および通信経路(Cプレーン経路、Uプレーン経路)のコンテキスト情報を記憶する。
【0045】
制御部120は、通信制御部122とデータ送受信部124とを備える。通信制御部122は、ユーザ装置UEと各基地局(第1基地局eNB,第2基地局PhNB)との無線通信を制御する要素であり、シグナリング無線ベアラSRBを用いて、無線通信部110を介して各基地局と制御信号(制御メッセージ)を送受信する。すなわち、通信制御部122はCプレーン上の通信を実行する。例えば、前述したように、通信制御部122は、近傍の基地局からの電波の受信電力を測定してMeasurement Reportメッセージに搭載し、第1基地局eNBに送信する。また、通信制御部122は、第1基地局eNBが送信したRRC Connection Reconfigurationメッセージに基づいて第2基地局PhNBにアクセスし、データ無線ベアラDRB2をユーザ装置UEと第2基地局PhNBとに確立する。一方、データ送受信部124は、データ無線ベアラDRBを用いて、無線通信部110を介して各基地局とユーザ信号を送受信する。すなわち、データ送受信部124はUプレーン上の通信を実行する。
【0046】
制御部120並びに制御部120に含まれる通信制御部122及びデータ送受信部124は、ユーザ装置UE内の不図示のCPU(Central Processing Unit)が、記憶部130に記憶されたコンピュータプログラムを実行し、そのコンピュータプログラムに従って機能することにより実現される機能ブロックである。
【0047】
1(3)−2. 第1基地局の構成
図7は、第1実施形態に係る第1基地局eNBの構成を示すブロック図である。第1基地局eNBは、無線通信部210とネットワーク通信部220と記憶部230と制御部240とを備える。無線通信部210は、ユーザ装置UEと無線通信を実行するための要素であり、ユーザ装置UEの無線通信部110と同様の構成を有する。ネットワーク通信部220は、ネットワークNW内の他のノード(第2基地局PhNB、交換局MME、ゲートウェイ装置GW等)と通信を実行するための要素であり、他のノードと電気信号を送受信する。記憶部230は、通信制御に関する情報、特に自局を含む各ノードの識別情報および通信経路(Cプレーン経路、Uプレーン経路)のコンテキスト情報を記憶する。
【0048】
制御部240は、ユーザ装置UE、第2基地局PhNB等の他ノードとの通信を制御する要素であり、特に、測定報告メッセージ受信部242と判定部244とUプレーン経路制御部246と無線接続設定部248とデータ送受信部250とを備える。以下、前述のように、測定報告メッセージ受信部242は、ユーザ装置UEが送信したMeasurement Reportメッセージを無線通信部210を介して受信し、判定部244に供給する。判定部244は、前述のステップS120におけるUプレーン経路(GTPトンネル)の確立判定を実行する。Uプレーン経路制御部246は、判定部244の判定に基づいて、Uプレーン経路(特に、X3ベアラX3B)の確立を制御する。また、Uプレーン経路制御部246は、1つのUプレーン経路と他のUプレーン経路とを関連付ける(マッピングする)。無線接続設定部248は、Cプレーン経路(シグナリング無線ベアラSRB)を用いてRRC Connection Reconfigurationメッセージを送信して、ユーザ装置UEの無線リソース制御(無線ベアラRBの確立・解放等)を実行する。データ送受信部250は、データ無線ベアラDRBを介してユーザ装置UEとユーザ信号を送受信(中継)すると共に、S1ベアラS1Bを介してゲートウェイ装置GWとユーザ信号を送受信(中継)する。以上から理解されるように、制御部240は、Cプレーン上およびUプレーン上の通信を実行する。
【0049】
制御部240並びに制御部240に含まれる測定報告メッセージ受信部242、判定部244、Uプレーン経路制御部246、無線接続設定部248、およびデータ送受信部250は、第1基地局eNB内の不図示のCPUが、記憶部230に記憶されたコンピュータプログラムを実行し、そのコンピュータプログラムに従って機能することにより実現される機能ブロックである。
【0050】
1(3)−3. 第2基地局の構成
図8は、第1実施形態に係る第2基地局PhNBの構成を示すブロック図である。第2基地局PhNBは、無線通信部310とネットワーク通信部320と記憶部330と制御部340とを備える。無線通信部310は、ユーザ装置UEと無線通信を実行するための要素であり、第1基地局eNBの無線通信部210と同様の構成を有する。ネットワーク通信部320は、第1基地局eNBと通信を実行するための要素であり、第1基地局eNBと電気信号を送受信する。記憶部330は、通信制御に関する情報、特に自局を含む各ノードの識別情報および通信経路(Cプレーン経路、Uプレーン経路)のコンテキスト情報を有する。
【0051】
制御部340は、Uプレーン経路処理部342とデータ送受信部344とを備える。前述のように、Uプレーン経路処理部342は、第1基地局eNBの制御(Tunnel Setup Requestメッセージ)に応じて、第1基地局eNBとの論理接続を確立した後、Tunnel Setup Completeメッセージを第1基地局eNBに送信する。また、Uプレーン経路処理部342は、1つのUプレーン経路と他のUプレーン経路とを関連付ける(マッピングする)。なお、制御部340はユーザ装置UEの無線リソース制御を実行しない。
【0052】
データ送受信部344は、データ無線ベアラDRBを介してユーザ装置UEとユーザ信号を送受信(中継)すると共に、X3ベアラX3B及びS1ベアラS1Bを介して(すなわち、第1基地局eNB経由で)ゲートウェイ装置GWとユーザ信号を送受信(中継)する。すなわち、データ送受信部344はUプレーン上の通信を実行する。
【0053】
制御部340並びに制御部340に含まれるUプレーン経路処理部342およびデータ送受信部344は、第2基地局PhNB内の不図示のCPUが、記憶部330に記憶されたコンピュータプログラムを実行し、そのコンピュータプログラムに従って機能することにより実現される機能ブロックである。
【0054】
1(3)−4. 交換局の構成
図9は、第1実施形態に係る交換局MMEの構成を示すブロック図である。交換局MMEは、ネットワーク通信部410と記憶部420と制御部430とを備える。ネットワーク通信部410は、ネットワークNW内の他のノード(ゲートウェイ装置GW、第1基地局eNB等)と通信を実行するための要素であり、第1基地局eNBのネットワーク通信部220と同様の構成を有する。記憶部420は、通信制御に関する情報、特に自局を含む各ノードの識別情報および通信経路(Cプレーン経路、Uプレーン経路)のコンテキスト情報を記憶する。制御部430は、無線通信システムCSの通信制御を実行する通信制御部であり、他のノードと制御信号を送受信する。交換局MME(制御部430)は、Cプレーン上の通信を実行し、Uプレーン上の通信を実行しない。
【0055】
制御部430は、交換局MME内の不図示のCPUが、記憶部420に記憶されたコンピュータプログラムを実行し、そのコンピュータプログラムに従って機能することにより実現される機能ブロックである。
【0056】
1(3)−5. ゲートウェイ装置の構成
図10は、第1実施形態に係るゲートウェイ装置GWの構成を示すブロック図である。ゲートウェイ装置GWは、ネットワーク通信部510と外部ネットワーク通信部520と記憶部530と制御部540とを備える。ネットワーク通信部510は、ネットワークNW内の他のノード(第1基地局eNB、交換局MME等)と通信を実行するための要素であり、第1基地局eNBのネットワーク通信部220と同様の構成を有する。外部ネットワーク通信部520は、インターネットINと通信を実行するための要素であり、必要に応じてユーザ信号のプロトコル変換を実行する。記憶部530は、通信制御に関する情報、特に自局を含む各ノードの識別情報および通信経路(Cプレーン経路、Uプレーン経路)のコンテキスト情報を記憶する。
【0057】
制御部540は、通信制御部542とデータ送受信部544とを備える。通信制御部542は、無線通信システムCSの通信制御を実行する要素であり、ネットワーク通信部510を介して交換局MMEと制御信号を送受信する。すなわち、通信制御部542は、ネットワーク通信部510を介してCプレーン上の通信を実行する。データ送受信部544は、ネットワーク通信部510を介して受信したユーザ装置UE発のユーザ信号を、外部ネットワーク通信部520を介してインターネットIN(インターネットIN内の外部サーバ)に送信(中継)するとともに、外部ネットワーク通信部520を介してインターネットIN(インターネットIN内の外部サーバ)から受信したユーザ信号を、ネットワーク通信部510を介してユーザ装置UEに送信(中継)する。すなわち、データ送受信部524はUプレーン上の通信を実行する。
【0058】
制御部540並びに制御部540に含まれる通信制御部542及びデータ送受信部544は、ゲートウェイ装置GW内の不図示のCPUが、記憶部530に記憶されたコンピュータプログラムを実行し、そのコンピュータプログラムに従って機能することにより実現される機能ブロックである。
【0059】
1(4). 本実施形態の効果
以上に説明した第1実施形態によれば、第1基地局eNBと第2基地局PhNBとにUプレーン経路であるGTPトンネル(X3ベアラX3B)が確立され、ユーザ装置UEへのCプレーン経路を有さない第2基地局PhNBとユーザ装置UEとにUプレーン経路であるデータ無線ベアラDRB2が確立される。したがって、ユーザ装置UEは、ゲートウェイ装置GWと直接的に接続されない第2基地局PhNBを経由してユーザ信号を送受信することが可能となる。すなわち、ユーザ装置UEの無線リソース制御を実行しない(制御機能が限定的な)第2基地局PhNBを備える無線通信システムCSが実現される。
【0060】
第2実施形態
本発明の第2実施形態を以下に説明する。以下に例示する各実施形態において、作用、機能が第1実施形態と同等である要素については、以上の説明で参照した符号を流用して各々の説明を適宜に省略する。
【0061】
第1実施形態では、第1基地局eNBと第2基地局PhNBとにUプレーン経路が確立される。第2実施形態では、第1基地局eNBと第2基地局PhNBとに確立されたUプレーン経路が解放され得る。
【0062】
2(1). 第1基地局−第2基地局間のGTPトンネルの解放
図11を参照して、第2実施形態のGTPトンネルの解放動作の一例を説明する。図11の例では、当初、S1ベアラS1Bがゲートウェイ装置GWと第1基地局eNBとに確立され、S1ベアラS1Bと関連付けられたX3ベアラX3Bが第1基地局eNBと第2基地局PhNBとに確立され、X3ベアラX3Bと関連付けられたデータ無線ベアラDRB2が第2基地局PhNBとユーザ装置UEとに確立されていると想定する(図12)。すなわち、図11の例は、第1実施形態において第1基地局eNBと第2基地局PhNBとにGTPトンネルが確立され、ユーザ装置UEと第1基地局eNBとに確立されていたデータ無線ベアラDRB1が解放された後の状態であると表現され得る。したがって、以上の想定において、ユーザ装置UEは、当初、無線接続中の第2基地局PhNBを経由してユーザ信号の送受信を実行する。また、図12に示すように、Cプレーンに関しては、当初、ユーザ装置UEと第1基地局eNBとにシグナリング無線ベアラSRBが確立されていると想定する。
【0063】
ユーザ装置UEは、第1実施形態と同様に、近傍の基地局(eNB,PhNB)が送信する電波(参照信号)の受信電力(受信品質)を示す情報を搭載したMeasurement Reportメッセージを、Cプレーン経路を介して第1基地局eNBに送信する(S500)。第1基地局eNB(判定部244)は、ユーザ装置UEから送信されたMeasurement Reportメッセージを受信すると、ユーザ装置UEと第1基地局eNBとにUプレーン経路(データ無線ベアラDRB1)を確立すべきか否か(ひいては、第1基地局eNBと第2基地局PhNBとに確立されたUプレーン経路(GTPトンネル)を解放すべきか否か)を判定する(S520)。以上の判定は、例えば、第1実施形態と同様の基準に基づいて実行される。本例では、ステップS520において、第1基地局eNB(判定部244)が、第2基地局PhNBからの受信電力よりも第1基地局eNBからの受信電力が大きいため、ユーザ装置UEと第1基地局eNBとにデータ無線ベアラDRB1を確立すべきと判定したと想定する。
【0064】
ステップS520の判定後、第1基地局eNB(Uプレーン経路制御部246)は、現在ユーザ装置UEと第2基地局PhNBとに確立されているデータ無線ベアラDRB2を解放することを指示するBearer Release Requestメッセージ(ベアラ解放要求メッセージ)を、第2基地局PhNBに送信する(S540)。第2基地局PhNB(Uプレーン経路処理部342)は、受信したBearer Release Requestメッセージに基づいて、現在確立されているデータ無線ベアラDRB2を解放する(S560)。データ無線ベアラDRB2の解放に伴い、データ無線ベアラDRB2とX3ベアラX3Bとの関連付けが切り離される(disassociated)。ステップS560の後、第2基地局PhNB(Uプレーン経路処理部342)は、データ無線ベアラDRB2が解放されたことを示すBearer Release Responseメッセージ(ベアラ解放応答メッセージ)を、第1基地局eNBに送信する(S580)。第1基地局eNB(Uプレーン経路制御部246)は、Bearer Release Responseメッセージを受信すると、X3ベアラX3B(GTPトンネル)を解放する(S600)。X3ベアラX3Bの解放に伴い、X3ベアラX3BとS1ベアラS1Bとの関連付けが切り離される。
【0065】
ステップS600のGTPトンネル解放後、第1基地局eNBは、ユーザ装置UEと第1基地局eNBとにデータ無線ベアラDRB1を設定(確立)する(S620)。具体的には、図13に示すように、第1基地局eNBのUプレーン経路制御部246は、ユーザ装置UEと第1基地局eNBとの間にUプレーン経路(データ無線ベアラDRB)が既に存在するか否かを判定する(S622)。データ無線ベアラDRBが存在する場合(S622:YES)、第1基地局eNBは、その既存のデータ無線ベアラDRBを、ゲートウェイ装置GWと第1基地局eNBとに確立されているS1ベアラS1Bに関連付ける(マッピングする)(S624)。他方、データ無線ベアラDRBが存在しない場合(S622:NO)、第1基地局eNBのUプレーン経路制御部246は、無線接続設定部248を制御して、ユーザ装置UEと第1基地局eNBとに新たなデータ無線ベアラDRBを確立することを指示するRRC Connection Reconfigurationメッセージをユーザ装置UEに送信させる(S626)。Uプレーン経路制御部246は、確立された新たなデータ無線ベアラDRBを、S1ベアラS1Bに関連付ける(マッピングする)(S628)。ステップS620において、以上のようにしてユーザ装置UEと第1基地局eNBとにデータ無線ベアラDRB1が確立される。
【0066】
2(2). 第2実施形態の変形例
以上の第2実施形態の構成において、ステップS540からS600までの動作(データ無線ベアラDRB2およびX3ベアラX3Bの解放)がスキップされてもよい。すなわち、既に確立されているデータ無線ベアラDRB2およびX3ベアラX3Bが維持されたまま、ユーザ装置UEと第1基地局eNBとにデータ無線ベアラDRB1が設定されてもよい。
【0067】
2(3). 本実施形態の効果
以上に説明した第2実施形態によれば、第1基地局eNBと第2基地局PhNBとに確立されたUプレーン経路であるGTPトンネル(X3ベアラX3B)が解放され得ると共に、ユーザ装置UEと第1基地局eNBとにデータ無線ベアラDRB1が確立される。したがって、当初に第2基地局PhNBを経由して無線通信していたユーザ装置UEが、第1基地局eNBを経由してユーザ信号を送受信することが可能となる。すなわち、ユーザ装置UEの無線リソース制御を実行しない(制御機能が限定的な)第2基地局PhNBを備える無線通信システムCSが実現される。
【0068】
第3実施形態
以上の実施形態では、第1基地局eNBが、Uプレーン経路の確立および解放を実行すべきか否かを判定する判定部を備える。第3実施形態で、以上のような判定部を、交換局MMEが備える。
【0069】
3(1)−1. 第1基地局の構成
図14は、第3実施形態に係る第1基地局eNBの構成を示すブロック図である。第1基地局eNB(制御部240)が備える転送部243は、測定報告メッセージ受信部242が受信したMeasurement Reportメッセージを、ネットワーク通信部220を介して交換局へ転送する機能ブロックである。なお、第1基地局eNBの制御部240は、判定部244を備えない。
【0070】
3(1)−2. 交換局の構成
図15は、第3実施形態に係る交換局MMEの構成を示すブロック図である。交換局MMEの制御部430は、判定部432と判定結果送信部434とを備える。判定部432は、第1実施形態および第2実施形態の第1基地局eNBが備える判定部244と同様の機能ブロックである。判定部432は、第1基地局eNBから転送されたMeasurement Reportメッセージに基づいて、第1基地局eNBと第2基地局PhNBとにX3ベアラX3Bを確立すべきか否かを判定する。また、判定部432は、第1基地局eNBから転送されたMeasurement Reportメッセージに基づいて、ユーザ装置UEと第1基地局eNBとにデータ無線ベアラDRB1を確立すべきか否かを判定する。判定結果送信部434は、以上の判定部432による判定結果を、ネットワーク通信部410を介して第1基地局eNB(Uプレーン経路制御部246)に送信する機能ブロックである。
【0071】
3(2). 第1基地局−第2基地局間のGTPトンネルの確立
図16を参照して、第3実施形態のGTPトンネルの確立動作の一例を説明する。当初の想定は、第1実施形態(特に図3)と同様である。ユーザ装置UEは、第1実施形態と同様にして、Measurement Reportメッセージを第1基地局eNBに送信する(S100)。第1基地局eNBは、ユーザ装置UEからMeasurement Reportメッセージを受信すると、交換局MMEに転送する(S110)。交換局MME(判定部432)は、第1基地局eNBから転送されたMeasurement Reportメッセージを受信すると、第1実施形態の第1基地局eNBと同様、ユーザ装置UEが第2基地局PhNBを経由してユーザ信号を送受信すべきか否か、すなわち、第1基地局eNBと第2基地局PhNBとにUプレーン経路(GTPトンネル)を確立すべきか否かを判定する(S120)。交換局MME(判定結果送信部434)は、ステップS120における判定結果を第1基地局eNBに送信する(S130)。本例では、以上の判定結果が、第1基地局eNBと第2基地局PhNBとにUプレーン経路を確立すべきとの判定を示すと想定する。第1基地局eNB(Uプレーン経路制御部246)は、受信した判定結果に基づき、Tunnel Setup Requestメッセージを第2基地局PhNBに送信する(S140)。以降の動作は、第1実施形態(図2)と同様である。
【0072】
3(3). 第1基地局−第2基地局間のGTPトンネルの解放
図17を参照して、第3実施形態のGTPトンネルの解放動作の一例を説明する。当初の想定は、第2実施形態(特に図12)と同様である。ユーザ装置UEは、第2実施形態と同様にして、Measurement Reportメッセージを第1基地局eNBに送信する(S500)。第1基地局eNBは、ユーザ装置UEからMeasurement Reportメッセージを受信すると、交換局MMEに転送する(S510)。交換局MME(判定部432)は、第1基地局eNBから転送されたMeasurement Reportメッセージを受信すると、第2実施形態の第1基地局eNBと同様、ユーザ装置UEと第1基地局eNBとにUプレーン経路を確立すべきか否か(ひいては、第1基地局eNBと第2基地局PhNBとに確立されたUプレーン経路を解放すべきか否か)を判定する(S520)。交換局MME(判定結果送信部434)は、ステップS520における判定結果を第1基地局eNBに送信する(S530)。本例では、以上の判定結果が、ユーザ装置UEと第1基地局eNBとにデータ無線ベアラDRB1を確立すべきとの判定を示すと想定する。第1基地局eNB(Uプレーン経路制御部246)は、受信した判定結果に基づき、Bearer Release Requestメッセージを第2基地局PhNBに送信する(S540)。以降の動作は、第2実施形態(図11)と同様である。第2実施形態と同様、ステップS540からS600までの動作(データ無線ベアラDRB2およびX3ベアラX3Bの解放)がスキップされてもよい。
【0073】
3(4). 第3実施形態の効果
以上に説明した第3実施形態によれば、第1実施形態および第2実施形態と同様の作用および効果が奏される。また、交換局MMEがUプレーン経路を確立・解放すべきか否かを判定するので、第1基地局eNBが判定を実行する構成と比較して、第1基地局eNBの処理負荷がより低減される。
【0074】
変形例
以上の実施の形態は多様に変形される。具体的な変形の態様を以下に例示する。以上の実施の形態および以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない限り適宜に併合され得る。
【0075】
4(1). 変形例1
以上の実施形態では、交換局MMEと第2基地局PhNBとが直接に接続されない。しかしながら、図18に示すように、交換局MMEと第2基地局PhNBとの間にCプレーンのインタフェース(S1−MMEインタフェース)が存在する構成も採用可能である。また、無線通信システムCSに含まれる複数の第2基地局PhNBのうち、一部の第2基地局PhNBが図1のように交換局MMEと接続せず、他の一部の第2基地局PhNBが図18のように交換局MMEと接続する構成も採用可能である。
【0076】
4(2). 変形例2
以上の実施形態では、ゲートウェイ装置GWが単一の装置であるように記載される。しかしながら、ゲートウェイ装置GWが、複数の装置、例えば、LTE/SAE規格に規定されるサービングゲートウェイ(Serving Gateway)およびPDNゲートウェイ(Packet Data Network Gateway)により構成されてもよい。
【0077】
4(3). 変形例3
以上の実施形態では、各基地局がその周囲に形成するセルC(電波が有効に到達する範囲)の大きさは任意である。例えば、第1基地局eNBの無線送信能力(平均送信電力、最大送信電力等)が第2基地局PhNBの無線送信能力と比較して大きく、第1基地局eNBが形成するセル(マクロセルC1)の大きさが第2基地局PhNBが形成するセル(スモールセルC2)の大きさを上回る構成が採用され得る。以上の構成においては、例えば、図19に示すように、スモールセルC2がマクロセルC1の内部に重層的に形成される(オーバレイされる)と好適である(作図の便宜上、マクロセルC1が示される平面とスモールセルC2が示される平面とが相違しているが、実際には、同一の平面(地表等)上にマクロセルC1とスモールセルC2とが重畳され得る)。一方で、第1基地局eNBと第2基地局PhNBとが略同一の大きさのセルCを形成する構成も採用可能である。
【0078】
4(4). 変形例4
第1基地局eNBが送信する電波の周波数帯と第2基地局PhNBが送信する電波の周波数帯とが相違する構成も採用可能である。例えば、第1基地局eNBが第1周波数帯(例えば、2GHz帯)を用いて無線通信し、第2基地局PhNBが第1周波数帯より高い第2周波数帯(例えば、3.5GHz帯)を用いて無線通信する構成を想定する。周波数が高いほど伝搬損失が大きくなることから、第2周波数帯を用いた無線通信よりも第1周波数帯を用いた無線通信の方が安定性が高い場合が多い。以上の実施形態にて説明した通り、ユーザ装置UEとの制御信号(制御メッセージ)の送受信(Cプレーンの通信)は第1基地局eNBが実行する。したがって、この変形例の構成を採用すれば、より安定性の高い第1周波数帯にて制御信号の送受信(Cプレーンの通信)が実行されるので、より確実なユーザ装置UEの制御が実現され得る。
【0079】
4(5). 変形例5
以上の実施形態では、第2基地局PhNBはユーザ装置UEと制御信号を送受信しない。しかしながら、第2基地局PhNBが下位レイヤ(例えば、L1レイヤ,L2レイヤ)の制御信号を送受信可能な構成も採用可能である。以上の構成においても、第2基地局PhNBは、無線リソース制御に関する信号(RRCレイヤの制御信号)を送受信しない。
【0080】
4(6). 変形例6
ユーザ装置UEは、第1基地局eNBおよび第2基地局PhNBと無線通信が可能な任意の装置である。ユーザ装置UEは、例えば、フィーチャーフォンまたはスマートフォン等の携帯電話端末でもよく、デスクトップ型パーソナルコンピュータでもよく、ノート型パーソナルコンピュータでもよく、UMPC(Ultra-Mobile Personal Computer)でもよく、携帯用ゲーム機でもよく、その他の無線端末でもよい。
【0081】
4(7). 変形例7
無線通信システムCS内の各要素(ユーザ装置UE、第1基地局eNB、第2基地局PhNB、交換局MME、ゲートウェイ装置GW)においてCPUが実行する各機能は、CPUの代わりに、ハードウェアで実行してもよいし、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)等のプログラマブルロジックデバイスで実行してもよい。
【符号の説明】
【0082】
UE……ユーザ装置、110……無線通信部、120……制御部、122……通信制御部、124……データ送受信部、130……記憶部、eNB……第1基地局、210……無線通信部、220……ネットワーク通信部、230……記憶部、240……制御部、242……測定報告メッセージ受信部、243……転送部、244……判定部、246……Uプレーン経路制御部、248……無線接続設定部、250……データ送受信部、PhNB……第2基地局、310……無線通信部、320……ネットワーク通信部、330……記憶部、340……制御部、342……Uプレーン経路処理部、344……データ送受信部、MME……交換局、410……ネットワーク通信部、420……記憶部、430……制御部、432……判定部、434……判定結果送信部、GW……ゲートウェイ装置、510……ネットワーク通信部、520……外部ネットワーク通信部、524……データ送受信部、530……記憶部、540……制御部、542……通信制御部、544……データ送受信部、C(C1,C2)……セル、CS……無線通信システム、DRB……データ無線ベアラ、IN……インターネット、NW……ネットワーク、RB……無線ベアラ、S1B……S1ベアラ、SRB……シグナリング無線ベアラ、X3B……X3ベアラ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19