(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5758426
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】硬貨入金装置
(51)【国際特許分類】
G07D 9/00 20060101AFI20150716BHJP
G07D 3/14 20060101ALN20150716BHJP
【FI】
G07D9/00 418Z
!G07D3/14
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-43545(P2013-43545)
(22)【出願日】2013年3月5日
(65)【公開番号】特開2014-174575(P2014-174575A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2014年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】森 英一
【審査官】
大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−226631(JP,A)
【文献】
実開昭60−184167(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 9/00
G07D 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬貨の下面を支える載置面と、硬貨の上面に接して搬送力を与える搬送ベルトと、硬貨の周面に接して硬貨を片寄せ案内する案内面を有する基準板と、を有し、硬貨を受け入れる受入部から硬貨を収納する収納部まで硬貨を送る搬送部と、
前記載置面と略同面に埋め込まれた下識別部と、該下識別部と少なくとも硬貨厚み分空けて少なくとも一部対向する上識別部とを有し、前記下識別部と前記上識別部とにより硬貨の正否を識別する識別部と、
前記案内面よりも前記載置面上へ突出せず硬貨送りを阻害しない第一の位置と前記案内面から前記載置面上へ突出して前記下識別部と前記上識別部との間へ入り込む第二の位置との間を移動可能な遥動部材、および、該遥動部材に前記第一の位置と前記第二の位置との間で移動する力を与える移動機構、を有する掻出部と、
を備え、
前記移動機構は、硬貨を前記搬送部の送り方向下流側へ向けて押し出すように前記遥動部材を移動させる
硬貨入金装置。
【請求項2】
前記遥動部材は、前記案内面の少なくとも一部を構成し、
前記移動機構は、前記遥動部材を前記案内面から離脱させて前記下識別部と前記上識別部との間を移動させる
請求項1に記載の硬貨入金装置。
【請求項3】
硬貨の下面を支える載置面と、硬貨の上面に接して搬送力を与える搬送ベルトと、硬貨の周面に接して硬貨を片寄せ案内する案内面を有する基準板と、を有し、硬貨を受け入れる受入部から硬貨を収納する収納部まで硬貨を送る搬送部と、
前記載置面と略同面に埋め込まれた下識別部と、該下識別部と少なくとも硬貨厚み分空けて少なくとも一部対向する上識別部とを有し、前記下識別部と前記上識別部とにより硬貨の正否を識別する識別部と、
前記案内面よりも前記載置面上へ突出せず硬貨送りを阻害しない第一の位置と前記案内面から前記載置面上へ突出して前記下識別部と前記上識別部との間へ入り込む第二の位置との間を移動可能な遥動部材、および、該遥動部材に前記第一の位置と前記第二の位置との間で移動する力を与える移動機構、を有する掻出部と、
前記載置面の一部に設けられた孔と、該孔を少なくとも一部塞ぐ蓋と、該蓋を移動させて前記孔を開閉する開閉機構とを有するリジェクト部と、
を備え、
前記開閉機構は、前記移動機構の一部としての機能を兼ねる
硬貨入金装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、硬貨入金装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、硬貨を取り込んで収納する硬貨入金装置がある。この硬貨入金装置において、取り込んだ硬貨に変形があると、収納部への搬送中に詰まることがある。硬貨詰まりは、搬送路に設けられた識別部で起こりやすい。
【0003】
識別部は、上識別部と下識別部が搬送路を挟むように配され、間を通過する硬貨の正否を識別する。下識別部は搬送路と略同面に埋め込まれているが、下識別部と搬送路との境目の僅かな隙間に変形硬貨が引っかかるなどして、硬貨詰まりが起こることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
識別部で硬貨詰まりが起こると、上識別部と下識別部との間に硬貨が挟まった状態になってしまう。このため、詰まった硬貨を取り除くためにピンセットなどの道具を要することもあり、煩雑である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の硬貨入金装置は、搬送部と、識別部と、掻出部とを備える。搬送部は、硬貨の下面を支える載置面と、硬貨の上面に接して搬送力を与える搬送ベルトと、硬貨の周面に接して硬貨を片寄せ案内する案内面を有する基準板と、を有し、硬貨を受け入れる受入部から硬貨を収納する収納部まで硬貨を送る。識別部は、載置面と略同面に埋め込まれた下識別部と、該下識別部と少なくとも硬貨厚み分空けて少なくとも一部対向する上識別部とを有し、下識別部と上識別部とにより硬貨の正否を識別する。掻出部は、遥動部材および移動機構を有する。遥動部材は、案内面よりも載置面上へ突出せず硬貨送りを阻害しない第一の位置と案内面から載置面上へ突出して下識別部と上識別部との間へ入り込む第二の位置との間を移動可能である。移動機構は、遥動部材に第一の位置と第二の位置との間で移動する力を与え
、硬貨を搬送部の送り方向下流側へ向けて押し出すように遥動部材を移動させる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、実施形態の釣銭機の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態の釣銭機の内部構造を概略的に示す平面図である。
【
図3】
図3は、実施形態の搬送部の構造を概略的に示す平面図である。
【
図4】
図4は、実施形態の識別部およびその周囲の部材の位置関係を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態の識別部での硬貨詰まりを解消する際の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態について図面を用いて説明する。
図1は、釣銭機1の外観を示す斜視図である。釣銭機1は、硬貨入金装置の一例である。
【0008】
釣銭機1は、奥行が長い直方体の筐体2を備え、筐体2の上面の手前側の右側に入金口3を、筐体2の前面左側に出金口4を、備えている。
【0009】
入金口3は、受入部の一例であって、筐体2内へ入れる硬貨を受け入れる口である。出金口4は、釣銭などの筐体2外へ出す硬貨を払い出す口である。釣銭機1は、さらに、出金口4の下から手前に突出した受皿5を備えている。受皿5は、出金口4が払い出した釣銭を受け止める。
【0010】
図2は、釣銭機1の内部構造を概略的に示す平面図である。釣銭機1は、筐体2内に、収納部6、搬送部7、識別部8およびリジェクト部9を備えている。
【0011】
収納部6は、入金口3が受け入れた硬貨を収納する。搬送部7は、入金口3から収納部6まで硬貨を送る。識別部8は、搬送部7の途中に配され、硬貨の種類の識別や、硬貨が正常か異常かの判別を行う。リジェクト部9は、識別部8によって異常とされた硬貨を搬送部から除く。
【0012】
そして、釣銭機1は、筐体2の前面右側にリジェクト口10(
図1参照)を備えている。リジェクト口10は、リジェクト部9によって除かれた硬貨を筐体2外へ出す口である。
【0013】
図3は、搬送部7の構造を概略的に示す平面図である。搬送部7は、載置面71、搬送ベルト72、および基準板73を有し、入金口3から収納部6まで硬貨Cを送る。
【0014】
載置面71は、金属製の平板の表面であって、硬貨Cの下面を支える。搬送ベルト72は、一対のプーリ(不図示)によって所定の張力で張られるとともに回転力を与えられたエンドレスベルトであって、硬貨Cの上面に接して、硬貨Cに搬送力を与える。基準板73は、硬貨Cの右端位置を規定する案内面74を有し、載置面71の右端に重ねられる。案内面74は、硬貨Cの周面に接して硬貨Cを片寄せ案内する。
【0015】
識別部8は、下識別部81および上識別部82を有している。下識別部81は、載置面71と略同面になるように、載置面71に埋め込まれている。下識別部81の周囲には、載置面71との境目の僅かな隙間71a(
図4参照)が存在する。上識別部82は、下識別部81と少なくとも硬貨Cの厚み分だけ間を空けて、少なくとも一部分で対向する。識別部8は、これら一対の下識別部81と上識別部82とにより、硬貨Cの正否を識別する。
【0016】
リジェクト部9は、孔91、蓋92、および、ソレノイド93を備えている。ソレノイド93は、開閉機構の一例である。
【0017】
孔91は、載置面71の一部をくりぬいて設けられている。蓋92は、孔91の右端を塞ぐ部分92aを備える板材で、回転軸92bを中心に回動自在である。蓋92は、少なくとも上記部分92aにおいて載置面71と略同面にされており、かつ、基準板73よりも下に位置している。ソレノイド93は、電力によって出入りする軸93aを有している。軸93aは、先端部を、蓋92の外周近くに、回動自在に取り付けられている。ソレノイド93が電力によって軸93aを出し入れすることにより、蓋92が、回転軸92bを中心に回動する。また、蓋92は、外周の一部に、レバー92cを有している。
【0018】
ここで、釣銭機1は、掻出部100を備えている。
図4は、識別部8およびその周囲の部材の位置関係を示す図であって、
図3における左側から識別部8周辺を見た図である。
【0019】
掻出部100は、掻出板110と、移動機構120とを有している。掻出板110は、遥動部材の一例であって、案内面74の一部を構成する平面部111を有している。掻出板110は、回転軸112を中心に載置面71および基準板73に対して回転自在であって、不図示のバネなどによって回転軸112を中心に
図3における反時計回り方向(矢印にて図示)に付勢されている。
【0020】
移動機構120は、レバー113を有している。レバー113は、掻出板110と一体であって、リジェクト部9の蓋92のレバー92cに引っかかる位置に掻出板110から突出している。レバー92cを介してレバー113にソレノイド93の力が伝えられることにより、掻出板110が回転軸112を中心に回動する。これにより、
図5に示すように、平面部111が案内面74から離脱して、下識別部81と上識別部82との間を移動する。上述のように、本実施形態の移動機構120は、レバー113、レバー92c、およびソレノイド93で実現されている。
【0021】
また、上述のように、開閉機構としてのソレノイド93は、掻出部100が有する移動機構120の一部としての機能を兼ね、移動機構120の動力源として機能している。
【0022】
なお、
図3における掻出板110の位置は第一の位置であり、
図5における掻出板110の位置は第二の位置である。
【0023】
このような構成において、本実施形態の釣銭機1は、以下のように動作する。まず、入金口3から硬貨Cを取り込むと、硬貨Cは搬送部7により収納部6へと送られる。この送り途中で、識別部8において、硬貨Cの正否を識別する。識別部8が正常であるとした硬貨Cは、収納部6に収納されて、釣銭などに循環使用される。リジェクト部9は、識別部8が異常であるとした硬貨Cをリジェクト口10へと排する。
【0024】
ここで、硬貨Cに変形があると、硬貨Cが下識別部81と上識別部82との間に詰まることがある。これは、硬貨Cの周縁がささくれてバリ状に変形している場合に顕著である。このような場合、硬貨Cの縁が下識別部81の周囲の僅かな隙間71aに引っかかってしまう。
【0025】
識別部8において硬貨Cが引っかかると、下識別部81または上識別部82の少なくともいずれかで硬貨Cが識別された状態が継続するので、これにより、硬貨Cの識別部8での滞留が検知される。このような場合、ソレノイド93を駆動させることにより、掻出板110を回動させて平面部111により硬貨Cを押し出す。押し出された硬貨Cは、リジェクト部9の孔91に落下し、リジェクト口10へ排される。
【0026】
ソレノイド93の軸93aが戻って蓋92が通常位置に戻ると(
図3参照)、掻出板110は、不図示のバネの付勢により、平面部111が案内面74の一部となる位置へ戻る。
【0027】
なお、本実施形態において、掻出部100を動作させると、リジェクト部9の孔91を開放して硬貨Cを落下させることとなるが、識別部8に詰まるほど変形のある硬貨Cはリジェクトの対象であるので、掻出部100とともにリジェクト部9が作動することによる不都合はない。
【0028】
以上のように、本実施形態によれば、識別部8における硬貨詰まりを解消することができる。また、硬貨詰まりの解消とともに、詰まりの原因となった硬貨Cをリジェクト部9により排除することができる。
また、本実施形態によれば、詰まりの原因となった硬貨Cを、搬送部7の送り方向へと押し出すので、詰まりの原因となった硬貨Cを再度詰まらせることなく、速やかにリジェクト部9へと送ることができる。
さらに、本実施形態によれば、リジェクト部9のソレノイド93が掻出部100の掻出板110を回動させる動力源を兼ねているので、掻出部100用の動力源を省くことができ、部品点数を減らすことができる。
【0029】
なお、本実施形態の移動機構120の構成は一例であって、実施にあたって、移動機構120が他の構成で実現されていてもよい。
また、本実施形態では、基準板73が有する案内面74の一部を構成する平面部111を有する掻出板110を設けているが、実施にあたっては、基準板73全体を掻出板110として用いてもよい。
【0030】
そして、本実施形態では、掻出部100は、案内面74の一部を構成する平面部111を有する掻出板110を遥動部材としているが、実施にあたっては、遥動部材が案内面74の一部を構成することは必須ではなく、遥動部材は、
図3において案内面74よりも左側へ出ない位置、つまり案内面74よりも載置面71上へ突出せず硬貨送りを阻害しない第一の位置と、案内面74から載置面71上へ突出して下識別部81と上識別部82との間へ入り込む第二の位置と、の間を移動可能であればよい。この場合の移動機構は、遥動部材を第一の位置と第二の位置との間で移動させる力を与える。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0032】
1…釣銭機(硬貨入金装置)、3…入金口(受入部)、6…収納部、7…搬送部、
71…載置面、72…搬送ベルト、73…基準板、74…案内面、
8…識別部、81…下識別部、82…上識別部、
9…リジェクト部、91…孔、92…蓋、93…ソレノイド(開閉機構)、
100…掻出部、110…掻出板(遥動部材)、120…移動機構。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0033】
【特許文献1】特許第2676445号公報