(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5758498
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】超低遊離モノマーイソシアナートを有するプレポリマーに由来するMDIベースのライニングおよびメンブラン
(51)【国際特許分類】
C08G 18/10 20060101AFI20150716BHJP
C08G 18/72 20060101ALI20150716BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20150716BHJP
C09D 175/02 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
C08G18/10
C08G18/72 W
C09D175/04
C09D175/02
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-544870(P2013-544870)
(86)(22)【出願日】2011年12月19日
(65)【公表番号】特表2014-507495(P2014-507495A)
(43)【公表日】2014年3月27日
(86)【国際出願番号】US2011065768
(87)【国際公開番号】WO2012087897
(87)【国際公開日】20120628
【審査請求日】2013年8月6日
(31)【優先権主張番号】61/424,934
(32)【優先日】2010年12月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500286643
【氏名又は名称】アクゾ ノーベル コーティングス インターナショナル ビー ヴィ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ウルケム,イルハン
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュース,エィドリアン,ファーグソン
(72)【発明者】
【氏名】ウィンター,マイケル
【審査官】
福井 悟
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭59−081323(JP,A)
【文献】
特表2008−521953(JP,A)
【文献】
特表2004−512420(JP,A)
【文献】
特表2003−519243(JP,A)
【文献】
特開平08−169930(JP,A)
【文献】
特開2008−285616(JP,A)
【文献】
特表2003−515635(JP,A)
【文献】
特表2002−506896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマーおよび/またはプラスチック様材料を作製するためのポリウレタンおよび/またはポリウレタンポリウレアハイブリッドをベースにした2成分型系であって、Iso成分とアミン/ポリオール成分とを含み、
Iso成分は、
(i)ジイソシアン酸トルエン(TDI)に由来するイソシアナート基でキャップされた、MDIベースのプレポリマーであり、全遊離モノマーを0.3%未満しか含まず、0.1〜10重量%の範囲のNCO%を有するプレポリマー、及び、
(ii)ジイソシアン酸ヘキサメチレン(HDI)トリマー、ジイソシアン酸イソホロン(IPDI)、ジイソシアン酸テトラメチルキシリレン(TMXDI)、脂環式ジイソシアナート、またはそれらの組合せから選択される追加のイソシアナート
を含み、
アミン/ポリオール成分は、
(i)ポリエステルおよび/またはポリエーテルポリオールから選択された少なくとも1つのポリオール、及び
(ii)第二級アミン
を含む、ポリウレタンおよび/またはポリウレタンポリウレアハイブリッドをベースにした2成分型系。
【請求項2】
プレポリマーが、遊離MDIモノマーを含まない、請求項1に記載のポリウレタンおよび/またはポリウレタンポリウレアハイブリッドをベースにした2成分型系。
【請求項3】
プレポリマーが、0.5〜5重量%の範囲のNCO%を有する、請求項1または2に記載のポリウレタンおよび/またはポリウレタンポリウレアハイブリッドをベースにした2成分型系。
【請求項4】
プレポリマーが、1〜4重量%の範囲のNCO%を有する、請求項3に記載のポリウレタンおよび/またはポリウレタンポリウレアハイブリッドをベースにした2成分型系。
【請求項5】
ポリエステルおよび/またはポリエーテルポリオールから選択された少なくとも1つのポリオールが、分枝状ポリエステルおよびポリエーテルをベースとしたポリオールである、請求項1から4のいずれか一項に記載のポリウレタンおよび/またはポリウレタンポリウレアハイブリッドをベースにした2成分型系。
【請求項6】
追加のイソシアナートがHDIトリマーである、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリウレタンおよび/またはポリウレタンポリウレアハイブリッドをベースにした2成分型系。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のポリウレタンおよび/またはポリウレタンポリウレアハイブリッドをベースにした2成分型系を含むコーティング組成物。
【請求項8】
エラストマーおよび/またはプラスチック様材料の作製における、請求項1から6のいずれか一項に記載のポリウレタンおよび/またはポリウレタンポリウレアハイブリッドをベースにした2成分型系の使用。
【請求項9】
追加のイソシアナートがHDIトリマーであり、ポリエステルおよび/またはポリエーテルポリオールから選択された少なくとも1つのポリマーが、分枝状ポリエステルおよびポリエーテルをベースとした2〜5の官能価を有するポリオールである、請求項1から6のいずれか一項に記載のポリウレタンおよび/またはポリウレタンポリウレアハイブリッドをベースにした2成分型系。
【請求項10】
分枝状ポリエステルおよびポリエーテルをベースとしたポリオールが、3〜4の官能価を有する、請求項9に記載のポリウレタンおよび/またはポリウレタンポリウレアハイブリッドをベースにした2成分型系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メンブランまたはライニングなどのエラストマーおよび/またはプラスチックに関する。
【背景技術】
【0002】
産業界におけるこれらのタイプの材料/製品の一部は、イソシアナートの化学的性質を利用してこれまで作製されてきた。イソシアナートの化学的性質を利用した製品の例としては、純ポリウレタンもしくは純ポリウレア、またはポリウレタンとポリウレアとのハイブリッドが挙げられる。これらの製品は、通常2つの成分からなるものであり、製品のA成分とB成分を使用時に混合することによって作製される。一方の成分は、通常Iso成分と呼ばれ、イソシアナート材料を含有するものであり、他方の成分は、通常アミン/ポリオール成分と呼ばれ、ポリオール、アミン、または一群の活性水素含有相溶性材料の組合せを含有するものである。産業界でよく使用されるIso成分は、ジイソシアン酸メチレンジフェニル(MDI)モノマーまたはMDIモノマーおよびMDIポリマー/オリゴマーの組合せである。一般に、産業界で理解されていることは、製品の一方の成分中で、モノマーMDIを単独で、ときにはポリマーMDIと組み合わせて、製品の他方の成分中の芳香族ジアミンと共に利用すると、より良い製品(例えば、より良い機械的性能および耐薬品性を有する)が得られるということである。産業界におけるこのような材料の使用は、良好な耐透水性および耐薬品性を良好な耐食性および機械的性能と共に備えた製品を製造するものとして一般に公知である。このような系におけるモノマーMDIの使用は、粘度を下げ、反応速度を調整し、より良い架橋を得るのに役立って、最終生成物の良好な機械的特性と化学的諸特性とを実現することが示唆されている。
【0003】
しかし、モノマーMDIはモノマーであるため、その使用には、潜在的に健康および安全性に関する否定的な問題がある。これは、一般にほとんどすべてのモノマーイソシアナート系に当てはまることである。この点で、超低レベルの遊離モノマーを含むが(または遊離モノマーを全く含まないが)、所望の機械的、化学的および塗布性能の目的を依然として実現している製品を作製すれば有益なことになる。芳香族ジアミンは発がん性であると報告されている芳香族ジアミン由来の種を生成する可能性があるため、このような製品が、そのアミン/ポリオール成分中に芳香族ジアミンを含まなければ、毒物学的観点からも有利なことになる。
【0004】
Iso成分がモノマー材料を全く含まず、または超低レベルのモノマー材料を含み、アミン/ポリオール成分が芳香族ジアミンを含有しないような状況においては、反応速度を含めて、材料の特性が悪影響を受けると一般に考えられる。したがって、遊離のモノマーMDIおよび芳香族ジアミンを使用して作製された製品と同様な様々な反応速度において所望の特性を実現する必要がある。その結果、上述されたようなよく用いられる材料を使用することなく、望ましい製品特性が得られれば有利なことになり、特に、よく使用される材料の場合と同様の反応速度および適用条件でも製品を機能するようにできれば有利なことになる。
【発明の概要】
【0005】
本発明においては、上記のMDIモノマーの使用および芳香族ジアミンの使用に伴う難点を回避しながら、ライニングおよびメンブランを作製できることが明らかになった。一態様において、本発明は、ライニング材料を作製するための2成分型系であって、イソシアナートとして超低レベルの遊離モノマーを含むIso成分と、芳香族ジアミンを使用しないアミン/ポリオール成分とを含み、したがって高レベルの遊離イソシアナートおよび芳香族ジアミンを使用する毒性および危険性を打ち消す2成分型系を対象とする。
【0006】
一態様において、Iso成分は、ポリウレタンのプレポリマーを含む。一実施形態において、プレポリマーは、遊離MDIモノマーを実質的にまたは全く含まず、ジイソシアン酸トルエン(TDI)基でキャップされたMDIベースのプレポリマーである。別の実施形態において、プレポリマーは、ジイソシアン酸イソホロン(IPDI)でキャップすることができる。一実施形態において、プレポリマーは、全遊離イソシアナートモノマーを0.3重量%未満しか、または全イソシアナートモノマーを0.2重量%未満しか、または遊離モノマー、すなわち遊離TDIモノマーを含めた全モノマーを約0.1重量%未満しか、もしくは遊離モノマーを約0.05重量%未満しか含まない。一実施形態において、プレポリマーは、低い全遊離モノマーと組み合わせて、遊離MDIモノマーを0.2重量%未満しか、または0.1重量%未満しか、または0.05重量%未満しか、または0.025重量%未満しか、または実質的に含まない。
【0007】
別の実施形態において、プレポリマーは、約0.1〜約10%、または約0.5〜約5%、または約1〜約4%、または約2〜約3%の範囲のNCO%を有する。
【0008】
一実施形態において、Iso成分は、追加のイソシアナートをさらに含む。一実施形態において、追加のイソシアナートは、HDIトリマー、IPDI、ジイソシアン酸テトラメチルキシリレン(TMXDI)、Desmodur Wなどの脂環式ジイソシアナート、またはそれらの組合せから選択することができる。一実施形態において、追加のイソシアナートトリマーは、ジイソシアン酸ヘキサメチレン(HDI)トリマーである。一実施形態において、追加のイソシアナートに対するMDIベースのプレポリマーの比は、約0.5〜約1.4、または約0.6〜約1.2、または0.7〜約1.1の範囲にある。
【0009】
一実施形態において、アミン/ポリオール成分は、ポリエステル/ポリエーテルポリオールのブレンドから選択されたポリオールを含む。ポリオールは、第一級、第二級、および/もしくは第三級アルコール基を有する、ジオール、トリオール、もしくはテトラオール、またはそれらの組合せとすることができる。一実施形態において、ポリオールは、官能価3.5で、すべてのアルコール官能基が第二級ヒドロキシルで形成された、分枝状ポリエステルおよびポリエーテルをベースとしたポリオールである。
【0010】
一実施形態において、アミン/ポリオール成分は、第二級アミンをさらに含む。一実施形態において、第二級アミンは、Desmophen NH1220、NH1420、もしくはNH 1520、またはそれらの組合せから選択することができる。
【0011】
別の実施形態において、ポリオールは、ヒドロキシル基がすべて第一級アルコールである、カプロラクトンベースのポリオールとすることができ、第二級アミンは、やはり上記のDesmophenシリーズの1つから選択される。このような一実施形態において、ポリオールは、多官能性ポリオール、または異なる多官能性ポリオールの組合せとすることができる。一実施形態において、ポリオールは、2官能性、3官能性、4官能性、またはそれらの組合せから選択することができる。1つのタイプのポリオールの代わりに、様々なタイプのポリオールのブレンドを使用することも可能である。
【0012】
本発明は、遊離MDIモノマーおよび芳香族ジアミンを含有する2成分型ポリウレタン(またはポリウレア)に伴う欠点を有することなく、このようなよく使用される材料を使用することによって実現される反応速度に匹敵する反応速度で所望の性能特徴を依然として実現可能にする、ライニングおよびメンブランを製造する利点を提供する。
【0013】
本発明の追加の目的、利点、および新規特徴は、後述の説明および実施例に一部述べられ、一部は、下記を読めば当業者に明らかとなり、または本発明の実施によって理解することができる。本発明の目的および利点は、特に添付の特許請求の範囲で指摘される手段および組合せによって実現および達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
一実施形態において、MDIベースのプレポリマーは、まず、系における過剰のポリオールを使用することによって、すべてまたは実質的にすべてのモノマーMDIの消費が確実になるように、MDIモノマーとポリオールとを反応させることによって調製される。一実施形態において、プレポリマーを作製するために使用されるポリオールは、2官能性ポリオールである。
【0015】
次いで、プレポリマーと、相対的により高い蒸気圧を有する別のイソシアナートとを反応させて、追加のイソシアナートでMDIプレポリマー分子鎖の両末端をキャップするまたは追加のイソシアナートをMDIプレポリマー分子鎖の両末端に結合させることができる。一実施形態において、この第2のイソシアナートの蒸気圧は十分に高く、したがって、未反応のイソシアナートを反応混合物からストリッピングさせると、真空下でのストリッピング後に全遊離イソシアナート含有量0.3重量%未満または0.2重量%未満を実現することができる。一実施形態において、プレポリマー分子鎖の末端に結合する追加のイソシアナートは、ジイソシアン酸トルエン(TDI)、ジイソシアン酸イソホロン(IPDI)、ジイソシアン酸テトラメチルキシリレン(TMXDI)、脂環式ジイソシアナート(t−CHDI)、ジイソシアン酸キシレン(XDI)、ジイソシアン酸メチレンジシクロヘキシル(H12MDI)、またはそれらの混合物から選択することができる。一実施形態において、追加のイソシアナートはTDIである。
【0016】
一実施形態において、相対的に高い蒸気圧のイソシアナート、例えばTDIを、得られたプレポリマー反応混合物から真空ストリッピングして、過剰のモノマーイソシアナートを除去する。TDIを使用する一実施形態において、最終のプレポリマー生成物は、その中にモノマーTDIを約0.3%未満しか含まず、遊離モノマーMDIも全く(または実質的に)含まない。一実施形態において、得られた生成物は、ポリマー分子鎖の末端を第2のイソシアナート、例えばTDIでキャップされた、MDIベースのPUであり、約0.1〜約10%、または約0.5〜約5%、または約1.5〜約3.5%、または約2約3%、または約2.5%の範囲のNCO%を有する。
【0017】
このプレポリマーのNCOレベルによって、プレポリマー自体の性能特徴は追加されているが、より高いレベルの機械的性能および耐薬品性を実現するための網目形成能および/または架橋能は限定されている最終生成物が製造されることが明らかになった。しかし、このようにして作製されたプレポリマーは、最終生成物の系中にある他の種に共有結合、したがって化学的に結合することができる非常に好適な強化剤であることがわかった。
【0018】
別の実施形態において、Iso成分は、1つまたは複数の追加のイソシアナート、例えばより高い架橋レベルを実現するための反応性および多官能性を高めることができるHDIのトリマーをさらに含む。一実施形態において、プレポリマー材料は、超低レベルのモノマー遊離イソシアナート(例えば、0.3%未満)を含む。このようにして、反応性強化剤(TDIでキャップされたMDIベースのポリウレタンプレポリマー)および粘度がより低いが多官能性の材料(例えば、トリマーHDI)を含有する、二成分型材料の一部が提供される。本発明者らは、最終生成物のiso成分にこのような系を使用することによって、所望の反応速度および所望の潜在的な架橋密度が、実現可能および制御可能であることを見出した。
【0019】
本発明に係るプレポリマーの反応性末端基によって、プレポリマーを反応性材料として使用することが可能になり、このことによって、非反応性可塑剤のように最終生成物の表面に移動することによる相分離の可能性がなくなると考えられる。他のイソシアナートを有するプレポリマーの化学安定性は、超低レベルの全遊離モノマー(例えば、約0.3%未満)を含む相対的に安定なA成分の作製に寄与する。
【0020】
化学的に安定であることに加えて、本発明者らは、追加のイソシアナート(例えば、HDIトリマー)を、本発明に係るプレポリマーと組み合わせて使用すると、追加されたイソシアナート、例えばHDIトリマーに起因する寄与として、粘度低下による良好な塗布性能にも寄与しながら、反応速度の増加、および良好な機械的性能と耐薬品性との両方のために十分に緻密な三次元網目構造の形成が行われることを見出した。さらに、プレポリマーは、反応性の強化剤として機能し、それによって、最終生成物の硬化条件と使用条件の両方において内部応力を分散することができる最終生成物が生成すると考えられる。したがって、本発明に係るプレポリマーは、遊離イソシアナートモノマーを実質的に含まないが、同時に複数の製品性能特性を実現するために、他の材料と組み合わせると、非常に有用であると考えられる。
【0021】
本発明の系のアミン/ポリオール成分も、芳香族ジアミンを使用することなく、同時に所望の反応速度および架橋密度の実現に寄与する。一実施形態において、ポリエーテル−ポリエステルをベースとした分枝状ポリオールを使用することによって、このような結果が得られる。一実施形態において、ポリオールは、2〜5、または3〜4の官能価を有する。いくつかの実施形態において、ポリオールの分子量は、800グラム/モル〜1800グラム/モルで変わる。いくつかの実施形態において、このポリオールの粘度は、25℃において約2800〜4000cpsであり得る。
【0022】
ポリオールのポリエーテル部分は、主鎖上で反応性種が欠如しているため所望の耐薬品性に寄与すると考えられ、ポリエステル部分が主に寄与していることは、強度の改善であると考えられる。ポリオールのポリエーテルおよびポリエステル成分は、官能価と共にすべて、系の機械的性能、耐薬品性、結晶化度、靭性および反応性に寄与すると考えられる。本発明の一実施形態において、ポリオールは分枝状ポリオールである。ポリオールの分枝状構造は、上記の他の特徴と共に、系のTgにも寄与すると考えられる。
【0023】
別の実施形態において、アミン/ポリオール成分は、第二級アミンをさらに含む。本発明と共に第二級アミンを使用すると、速すぎない硬化速度が実現されるが、(速すぎると)他の利用可能な活性種が、反応する機会を有すること、製品を許容できる速度に設定することを可能にすること、基材への塗布およびウェッティングをより制御することを妨げる恐れがあることが明らかになった。
【0024】
一実施形態において、上述した材料をすべて、本発明において利用し、例えば、低モノマー(遊離MDI)をベースとした、TDIでキャップされた、イソシアナート含有量の低いポリウレタンプレポリマー、およびHDIトリマーを含有するIso成分と、分枝状ポリエーテルおよびポリエステルをベースとしたポリオールベースの系、および第二級アミンを含有するアミン/ポリオール成分とを、当量で0.1〜2、または0.25〜1.5、または0.75〜1.25の範囲の化学量論指数を実現する量で組み合わせると、溶媒を含まないハイブリッドポリウレア−ポリウレタン製品を生じる。
【0025】
上述されたように調製すると、得られた最終生成物は、遊離MDIモノマーおよび芳香族ジアミンを含有する系を使用することによって作製されたものに少なくとも匹敵する引張強さ、伸び%および耐薬品性の値をもたらす。このような本発明の2成分型系は、遊離モノマーMDIを有することなく、またいずれの芳香族ジアミンも使用することなく、市販のメンブランおよびライニングに所望の性能要件を実現する。
【0026】
本発明の成分は、場合によってはポリウレタン触媒の存在下で反応させてもよい。好適なポリウレタン触媒は、通常のものであり、通常の量で使用することができる。
【0027】
使用することができる様々なタイプの架橋剤としては、ポリオールおよび/またはアミンに対して反応性を示すイソシアナート、ブロックイソシアナート、および/または他の架橋剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
本発明のコーティング組成物は、アクリル、ポリエステル、アルキド、フェノール類、エポキシ(epoxies)、ポリエーテル、ポリウレタン、およびそれらの混合物など、樹脂(バインダー)を約1〜約50重量パーセント含有することもできる。
【0029】
本明細書に記載されるコーティング組成物を、プライマー、ベースコート、トップコート、中間層、およびクリアコートとして使用することができるが、金属基材およびコンクリート基材の両方で、プライマーを使用した場合または使用しない場合にトップコートとして使用するのが好ましい。
【0030】
場合によっては、本発明のコーティング組成物中に顔料を存在させてもよい。有用な顔料は、当技術分野に共通の様々なタイプのものがあり、例としては、二酸化チタン、グラファイト、カーボンブラック、酸化亜鉛、硫化カルシウム、酸化クロム、亜鉛スルフィド、クロム酸亜鉛、クロム酸ストロンチウム、クロム酸バリウム、黄色ニッケルチタン、黄色クロムチタン、赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄、ナフトール赤色および茶色、アントラキノン、ジオキサジンクバイオレット(dioxa zinc violet)、イソインドリン黄色、アリライドイエローおよびオレンジ、群青、フタロシアニン錯体、アマランス、キナクリドン、ハロゲン化チオインジゴ顔料;ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、ヒュームドシリカ、硫酸バリウム、およびリン酸亜鉛などの体質顔料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
本発明のコーティング組成物は、溶媒、触媒、安定剤、充填剤、レオロジー調節剤、フロー添加剤、レベリング性添加剤、分散剤、および他の成分などの当業者に公知の追加の成分も含むことができる。
【0032】
本発明のコーティング組成物は、複数コンポーネント高圧スプレー塗布技法(plural component high pressure spray application technique)を使用することによって多数の周知基材に塗布することができる。好ましい1つの基材は金属である。別の好ましい基材は、コンクリートの物体/構造物である。上記の2成分型系の硬化は、好ましくは周囲温度条件下、通常、周囲温度〜約40℃で実施されるが、コーティングの硬化は、当業者に公知の種々の条件下で行うことができる。
【0033】
組成物は、一般に金属基材およびコンクリート基材の両方を保護する目的で、保護コーティング産業、特に金属および鉱業、水および廃水市場、産業機械用途、ならびに建設産業で特に好適である。
【0034】
本発明の好ましい塗布技法は、通常のより高圧における複数コンポーネント機の使用である。この技法では、1組のスタティックミキサーも利用し、塗布は、容量比1対1で行われる。この技法では、両方の粘度、安定なスプレー条件および所望の硬化速度を制御するために熱も利用する。
【0035】
前述の本発明の全体的な考察を、以下の特定の、しかし非限定的な実施例によって、さらに説明する。
【0036】
以下の実施例は、本発明に従って、本発明の2成分型系のIso成分およびポリオール/アミン成分の調製、および系のコーティングにおける本発明の使用を含む。本発明に従って製造されたライニング/メンブラン材料の性能試験も含まれる。
【0037】
方法
後述の実施例において、ASTM D−412に従って、張力および伸びの試験を行った。耐薬品性試験は、ASTM D−543の試験方法と非常に類似している試験方法を用いて行った。接着試験は、ASTM D−4541のタイプ4試験方法を用いて行った。摩耗試験は、ASTM D4060に従って行った。衝撃試験の成績は、ASTM G−14の方法と非常に類似している方法を用いることによって評価した。
【0038】
本製品のいくつかの化学物質に対する耐薬品性は、試験片を液体化学物質に浸漬することによって評価した。これは、実際には、必要とされる架橋密度の間接的尺度であった。
【実施例】
【0039】
実施例1
ポリウレタンおよび/またはポリウレタンポリウレアハイブリッドの2成分型系のIso成分は、18gのMDIベースのプレポリマーと25gのHDIトリマー(Bayer社製のXP−2410)とを混ぜ合わせることによって調製した。使用したMDIベースのプレポリマーは、2官能性ポリオールとMDIとの反応生成物であり、末端はTDIでキャップされており、遊離MDIモノマーを実質的に含まず、全遊離モノマーは、0.1%未満であり、NCO%は2〜3%である。プレポリマー/トリマーの混合物は、ジャイロミキサーを使用して、第1の小型密閉容器中、約1500〜2000RPMの速度で2分間混合した。
【0040】
実施例2
ポリウレタンおよび/またはポリウレタンポリウレアハイブリッドの2成分型系のアミン/ポリオール成分は、10gの分枝状ポリエーテル−ポリエステルをベースとしたポリオール(Sovermol 1080)(11.6%)と、33.5gの第二級アミン(Bayer NH−1420)(38.7%)とを混ぜ合わせることによって調製した。ポリオール/アミンの混合物は、ジャイロミキサーを使用して、第2の小型密閉容器中、約1500〜2000RPMの速度で2分間混合した。
【0041】
実施例3
試験コーティングは、第2の容器の内容物を第1の容器に注ぎ込み、次いでジャイロミキサーを使用して、約1500〜2000RPMの速度で約1.5〜2分間混合することによって調製した。得られた混合物を、水平なTeflonプレート(約25cm×25cm)に注ぎ、ピンホールなく平ら(厚さ約3mm)に広げ、次いで周囲温度で硬化させた。約1週間後、硬化したコーティングから、実施例5に後述する試験用の試料を裁断した。
【0042】
実施例4
追加の試験試料は、エラストマーコーティングを、プライマー付きおよびプライマーなしの金属基材およびコンクリート基材にスプレーすることによって調製した。スプレー塗布装置は、スプレー塗布中、それぞれ12個の要素が含まれている2台のスタティックミキサーを利用した。実施例1と同様のIso成分は32℃(90°F)に加熱し、実施例2と同様のポリオール/アミン成分は21℃(70°F)に加熱した。スプレー塗布時の圧力は、約2800〜3000psiであった。使用したスプレーガンのチップサイズは、0.021インチであった。塗布時に金属基材およびコンクリート基材が維持されていた外部温度は、13℃(55°F)であった。金属基材およびコンクリート基材の一部に、Interseal 1036でプライマーがけした(塗布前24時間)一方、他の基材は、金属およびコンクリートに直接塗布して使用した。金属基材の凹凸は約1.5ミルであった。
【0043】
実施例5
実施例3および4の試験試料を様々な試験にかけた。その結果を下記の表に示す。*は、実施例3に従って作製された試験試料であることを示し、***は、実施例4に従って作製された試験試料であることを示す。
【0044】
この試験試料の初期性能特性を以下の表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
試験試料の耐薬品性を以下の表2に示す。
【0047】
【表2】