【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は独立請求項の諸対象によって解決される。さらに、諸対象の有利な実施形態と諸構成は、以下の明細書および図面から明らかとなる。
【0005】
積層素子の電気的特性は、幾つかの別要因の他に特に内部電極の幾何学的配置にも左右される。例えば、積層コンデンサにおける誘電体層の厚さ等の積層素子の機能層の厚さは、普通、生産に起因して一定に保つことがきわめて困難である。しかし、機能層の厚さ変動は、例えば積層コンデンサのキャパシタンスまたは積層抵抗素子の抵抗、つまり例えばPTC素子またはNTC素子の抵抗、等の積層素子の電気値に影響を及ぼす。機能層の生産に起因した厚さ変動によって積層素子の電気値が所定の設定値から過度に逸脱するのを防止するために、すなわち、公差域が幅広になるのを適宜に回避するために、例えば、完成素子の機能層を後に形成することになるフィルムが予め選択され、或いは完成素子の追加的選択が行われる。その際、その電気的特性が所定の設定値から過度に逸脱した素子は除かれる。さらに、素子の電気値はいわゆる調整によって、例えば削り落としまたは切り落として積層素子の諸部分を切り取ることによって、追加的に適合させることもできる。機能層の生産に起因した厚さ変動と結び付いた諸欠点を取り除き、または少なくとも緩和する上記可能性を組み合わせることも考えられる。
【0006】
本発明者達は、例えば積層素子の抵抗および/またはキャパシタンス等の積層素子の電気値をここに述べる内部電極配置によって機能層の厚さ変動に殆ど左右されないようにできることを発見した。
【0007】
一実施形態によれば、本発明に係る電気積層素子は、機能層から成る積層体と複数の内部電極と第1、第2外部接点とを有する。機能層は、電気積層素子がコンデンサ、バリスタまたはサーミスタとして実施されているか否かに応じて、例えば誘電体層または導電層とすることができる。それらの各特性によって機能層は素子の働きを決定する。機能層は、例えばプラスチック層またはセラミック層とすることができる。
【0008】
積層素子を製造するために機能層が上下で積層され、これにより積層方向が生じる。隣接する機能層の界面によって積層素子の層平面が決定され、これらの層平面は機能層の積層方向に沿って上下に配置されている。内部電極はこのような層平面に配置されている。
【0009】
内部電極を接触させるのに役立つ外部接点は、主に積層体の諸側面に配置されている。すなわち、外部接点は主に積層体の異なる側面に、例えば積層体の相反する側面に、または1側面の異なる諸領域に配置されている。
【0010】
他の一実施形態によれば、電気積層素子は第1外部接点に直接導電接続された第1
の内部電極層の少なくとも2つの内部電極を有する。電気積層素子はさらに、第2外部接点に直接導電接続された第2
の内部電極層の少なくとも2つの内部電極を有する。第1
の内部電極層の少なくとも1つの内部電極と第2
の内部電極層の少なくとも1つの内部電極は部分的に重なり合う。換言するなら、第1
の内部電極層の少なくとも1つの内部電極は、積層体の積層方向での想定投影時に第2
の内部電極層の少なくとも1つの内部電極の少なくとも1つの部分領域と合致させ得るような少なくとも1つの部分領域を有する。「直接導電接続」とはここでは、そして以下でも、内部電極が外部接点に接し、こうして外部接点に直接接続されていることを意味する。外部接点が積層体の1側面に配置されている場合、外部接点に直接導電接続された内部電極はこの側面まで延びている。
【0011】
さらに、第1
の内部電極層の少なくとも1つの内部電極と第2
の内部電極層の少なくとも1つの内部電極は、相互に離間して同じ1平面に配置されている。この平面は、積層体の積層方向に垂直に形成された層平面によって形成されており、以下で層延長平面と称することもできる。第1
の内部電極層の少なくとも1つの内部電極と第2
の内部電極層の少なくとも1つの内部電極との間にいわゆるギャップ、つまり空隙が存在している。この空隙は、層平面で第1
の内部電極層の少なくとも1つの内部電極と第2
の内部電極層の少なくとも1つの内部電極との間に、内部電極が配置されていない領域を具現する。
【0012】
本発明に係る素子のここに述べる内部電極配置によって、つまり重なり合う(オーバーラップする)内部電極と同じ層平面でギャップによって相互に分離された内部電極との組合せによって、機能層の製作に起因した層厚変動の否定的影響は減らすことができる。さらに後に図に関連して詳しく説明するように、特に第1、第2
の内部電極層の内部電極の異なる諸配置をここに述べるように組合せることによって、層厚変動によって引き起こされる相互に相殺し合う諸作用を生じることができる。ここに述べる素子では、公知素子と比較して、素子毎に機能層の厚さが変動する場合でも、これらの素子において実質的に同じ所定の目標抵抗および/または所定のキャパシタンスを達成することができる。
【0013】
一実施形態によれば、
一方の内部電極層の少なくとも1つの内部電極が
他方の内部電極層のすべての内部電極と重なり合う。例えば、第1
の内部電極層の少なくとも1つの内部電極は第2
の内部電極層のすべての内部電極と重ね合わせることができる。さらに、第1
の内部電極層の複数の内部電極を第2
の内部電極層のすべての内部電極と重ね合わせることもできる。さらに、第2
の内部電極層の少なくとも1つの内部電極は第1
の内部電極層のすべての内部電極と重ね合わせることができる。第2
の内部電極層の複数の内部電極を第1
の内部電極層のすべての内部電極と重ね合わせることも考えられる。さらに、第1
の内部電極層のすべての内部電極を第2
の内部電極層のすべての内部電極と重ね合わせることもできる。
【0014】
他の一実施形態によれば、
一方の内部電極層の少なくとも1つの内部電極は、積層体の積層方向に垂直な、
他方の内部電極層の内部電極のない1平面に配置されている。例えば、第1
の内部電極層の少なくとも1つの内部電極は第2
の内部電極層の内部電極のない1平面に配置しておくことができる。他の1実施形態によれば、第1
の内部電極層の少なくとも1つの内部電極は、第1
の内部電極層+の内部電極のない1平面に配置されている。
【0015】
他の一実施形態において、第1
の内部電極層のそれぞれ1つの内部電極と第2
の内部電極層の1つの内部電極は、積層方向に垂直な同じ1平面に配置されている。すなわち、第1
の内部電極層の各内部電極に対して同じ平面に第2
の内部電極層の1つの内部電極が設けられており、他方で第2
の内部電極層の各内部電極に対して同じ平面に第1
の内部電極層の1つの内部電極が設けられている。
【0016】
他の一実施形態によれば、各内部電極は積層方向でそれぞれ近接した内部電極に対して実質同じ距離を有する。換言するなら、直接隣接する内部電極は、それぞれ同じ相互距離を有する異なる層延長平面で積層方向に垂直に配置されている。「実質同じ」とはここでは、そして以下でも、偏差が製造方法の公差範囲内にあり、ここでは例えば機能層の層厚公差範囲内にあることを意味する。
【0017】
電気積層素子は主に対称に構成されている。積層素子は、例えば単数または複数の空間軸線に対して軸線対称に構成しておくことができる。素子は、点対称性を有することもできる。素子は主に、素子の相反する側面に対してそれぞれ同じ距離を有する素子中心点に関して点対称である。
【0018】
他の一実施形態によれば、第1
の内部電極層の内部電極と第2
の内部電極層の内部電極が矩形形状を有する。
【0019】
他の一実施形態によれば第1
の内部電極層の内部電極と第2
の内部電極層の内部電極が六角形形状を有する。第1
の内部電極層の内部電極と第2
の内部電極層の内部電極は、例えばL字形状に形成しておくことができる。
【0020】
他の一実施形態によれば、少なくとも部分的に重なり合う第1
の内部電極層の少なくとも1つの内部電極と第2
の内部電極層の少なくとも1つの内部電極は、それぞれ2つの第1領域と2つの第1領域の間にある各1つの第2領域とを有する。第1
の内部電極層の少なくとも1つの内部電極の
2つの第1領域と、第
2の内部電極層の少なくとも1つの内部電極の2つの第1領域は重なり合う。第1
の内部電極層の少なくとも1つの内部電極の第2領域は、第2
の内部電極層の少なくとも1つの内部電極の第2領域と重なり合うことなく配置されている。
【0021】
少なくとも1つの他の実施形態によれば、電気積層素子は第1外部接点に直接導電接続された第
1の内部電極層の少なくとも1つの内部電極と第2外部接点に直接導電接続された第
2の内部電極層の少なくとも1つの内部電極とを有する。積層素子はさらに、第1外部接点にも第2外部接点にも直接導電接続されておらずかつ互いに少なくとも部分的に重なり合う第3
の内部電極層の少なくとも2つの内部電極を有することができる。第1
の内部電極層の少なくとも1つの内部電極と第3
の内部電極層の1つの内部電極は相互に離間して同じ1平面に配置されている。さらに、第2
の内部電極層の少なくとも1つの内部電極と第3
の内部電極層の1つの内部電極は相互に離間して同じ1平面に配置されている。
【0022】
他の一実施形態によれば、電気積層素子は機能層の厚さ変動に対して実質的に不感な抵抗および/またはキャパシタンスを有する。こうして、ここに述べる素子の特別な内部電極配置によって有利なことに機能層の作製に起因した層厚変動の否定的影響は減らすことができる。
【0023】
他の一実施形態によれば、第1
の内部電極層の少なくとも1つの内部電極と第2
の内部電極層の少なくとも1つの内部電極は異なる平面に配置されている。すなわち、第1
の内部電極層の少なくとも1つの内部電極と第2
の内部電極層の少なくとも1つの内部電極は積層方向に垂直な異なる層延長平面に配置されている。
【0024】
他の一実施形態によれば、第1
の内部電極層の少なくとも1つの内部電極は、第2
の内部電極層の少なくとも1つの内部電極と重なり合うことなく配置されている。つまり、第1
の内部電極層の少なくとも1つの内部電極は第2
の内部電極層の少なくとも1つの内部電極と重なり合っていない。
【0025】
他の一実施形態によれば、第3
の内部電極層の少なくとも2つの内部電極は少なくとも部分的に重なり合う。換言するなら、第3
の内部電極層の少なくとも2つの内部電極は、積層方向での想定摺動または投影によって合致させ得るような部分領域を有する。
【0026】
他の1実施形態によれば、積層素子がNTCサーミスタ、PTCサーミスタ、バリスタまたはコンデンサ素子である。
【0027】
電気積層素子のその他の利点および有利な実施形態は、以下で
図1A〜
図5に関連して述べる実施形態から明らかとなる。