特許第5758506号(P5758506)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5758506
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】電気積層素子
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20150716BHJP
   H01G 4/232 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
   H01G4/30 301D
   H01G4/30 301C
   H01G4/12 352
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-550916(P2013-550916)
(86)(22)【出願日】2012年3月13日
(65)【公表番号】特表2014-504029(P2014-504029A)
(43)【公表日】2014年2月13日
(86)【国際出願番号】EP2012054381
(87)【国際公開番号】WO2012126774
(87)【国際公開日】20120927
【審査請求日】2013年7月24日
(31)【優先権主張番号】102011014965.1
(32)【優先日】2011年3月24日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510263560
【氏名又は名称】エプコス アーゲー
【氏名又は名称原語表記】EPCOS AG
(74)【代理人】
【識別番号】100080089
【弁理士】
【氏名又は名称】牛木 護
(74)【代理人】
【識別番号】100161665
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 知之
(74)【代理人】
【識別番号】100121153
【弁理士】
【氏名又は名称】守屋 嘉高
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,ヨハン
【審査官】 田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−237078(JP,A)
【文献】 特開2010−021523(JP,A)
【文献】 特開平11−297509(JP,A)
【文献】 特開平07−135124(JP,A)
【文献】 特開2006−190774(JP,A)
【文献】 特開平07−263270(JP,A)
【文献】 特開2010−003891(JP,A)
【文献】 特開平11−074149(JP,A)
【文献】 特開平10−335179(JP,A)
【文献】 特開2000−311830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
H01G 4/232
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気積層素子(1)であって、
機能層(2)から成る積層体(8)を有し、
第1、第2外部接点(3,4)を有し、前記外部接点(3,4)が前記積層体(8)の側面(91,92)に配置されており、
前記第1外部接点(3)に直接導電接続された第1の内部電極層(5)少なくとも2つの内部電極(51,52)を有し、
前記第2外部接点(4)に直接導電接続された第2の内部電極層(6)少なくとも2つの内部電極(61,62)を有し、
前記第1の内部電極層(5)の少なくとも1つの内部電極(51)と前記第2の内部電極層(6)の少なくとも1つの内部電極(61)はそれぞれ異なる平面に配置され、部分的に重なり合い、
前記第1の内部電極層(5)の少なくとも1つの内部電極(51,52)と前記第2の内部電極層(6)の少なくとも1つの内部電極(61,62)が相互に離間して同じ1平面に配置され、
前記第1の内部電極層(5)の全ての内部電極(51,52)と前記第2の内部電極層(6)の全ての内部電極(61,62)はL字形状に形成され、
少なくとも部分的に重なり合う前記第1の内部電極層(5)の前記少なくとも1つの内部電極(51)と前記第2の内部電極層(6)の前記少なくとも1つの内部電極(61)がそれぞれ2つの第1領域(110,111,120,121)と前記2つの第1領域(110,111,120,121)の間にある1つの第1領域(112,122)とを有し、
前記第1の内部電極層(5)の前記少なくとも1つの内部電極(51)の前記2つの第1領域(110,111)と前記第2の内部電極層(6)の前記少なくとも1つの内部電極(61)の前記2つの第1領域(120,121)が重なり合い、
前記第1の内部電極層(5)の前記少なくとも1つの内部電極(51)の前記第2領域(112)は前記第2の内部電極層(6)の前記少なくとも1つの内部電極(61)の前記第2領域(122)と重なり合うことなく配置されている素子。
【請求項2】
一方の内部電極層の少なくとも1つの更なる内部電極が他方の内部電極層のすべての内部電極と重なり合う請求項1記載の素子。
【請求項3】
一方の内部電極層の少なくとも1つの内部電極が他方の内部電極層の内部電極のない1平面に配置されている請求項1または2記載の素子。
【請求項4】
前記第1の内部電極層(5)の少なくとも2つの内部電極(52)がそれぞれ前記第2の内部電極層(6)の1つの内部電極(62)と同じ1平面に配置されており、前記第1、第2の内部電極層(5,6)の互いに少なくとも部分的に重なり合う前記内部電極(51,61)が積層方向で互いに直接隣接している請求項1〜3のいずれか1項に記載の素子。
【請求項5】
前記第1、第2の内部電極層(5,6)の重なり合う前記内部電極(51,61)が、積層方向で、それぞれ同じ1平面に配置される前記第1、第2の内部電極層(5,6)の前記内部電極(52,62)の間に配置されている請求項4記載の素子。
【請求項6】
前記第1の内部電極層(5)の前記内部電極(51,52)のそれぞれが前記第2の内部電極層(6)の1つの内部電極(61,62)と同じ1平面に配置されており、前記第2の内部電極層(6)の前記内部電極(61,62)のそれぞれが前記第1の内部電極層(5)の1つの内部電極(51,52)と同じ1平面に配置されている請求項1記載の素子。
【請求項7】
前記第2の内部電極層(6)の少なくとも1つの内部電極(61)と重なり合う前記第1の内部電極層(5)の前記各内部電極(51)が前記第2の内部電極層(6)の重なり合う1つの内部電極(61)に直接隣接して配置されている請求項6記載の素子。
【請求項8】
前記各内部電極は積層方向(S)で近接した内部電極に対して実質同じ距離を有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の素子。
【請求項9】
前記第1の内部電極層(5)の前記内部電極(51,52)と前記第2の内部電極層(6)の前記内部電極(61,62)が矩形形状を有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
明示されるのは、機能層から成る積層体とその間に配置される内部電極とを備えた電気積層素子である。
【背景技術】
【0002】
内部電極を電気的に接触させるために、積層体の側面に外部接点を固着しておくことができる。このような電気積層素子は、例えば積層抵抗素子、積層バリスタまたは積層コンデンサとして実施しておくことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特定実施形態の解決すべき課題は、公知積層素子と比較して改善された特性を有する電気積層素子の幾何学形状、特に電気積層素子の内部電極・外部電極配置を明示することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は独立請求項の諸対象によって解決される。さらに、諸対象の有利な実施形態と諸構成は、以下の明細書および図面から明らかとなる。
【0005】
積層素子の電気的特性は、幾つかの別要因の他に特に内部電極の幾何学的配置にも左右される。例えば、積層コンデンサにおける誘電体層の厚さ等の積層素子の機能層の厚さは、普通、生産に起因して一定に保つことがきわめて困難である。しかし、機能層の厚さ変動は、例えば積層コンデンサのキャパシタンスまたは積層抵抗素子の抵抗、つまり例えばPTC素子またはNTC素子の抵抗、等の積層素子の電気値に影響を及ぼす。機能層の生産に起因した厚さ変動によって積層素子の電気値が所定の設定値から過度に逸脱するのを防止するために、すなわち、公差域が幅広になるのを適宜に回避するために、例えば、完成素子の機能層を後に形成することになるフィルムが予め選択され、或いは完成素子の追加的選択が行われる。その際、その電気的特性が所定の設定値から過度に逸脱した素子は除かれる。さらに、素子の電気値はいわゆる調整によって、例えば削り落としまたは切り落として積層素子の諸部分を切り取ることによって、追加的に適合させることもできる。機能層の生産に起因した厚さ変動と結び付いた諸欠点を取り除き、または少なくとも緩和する上記可能性を組み合わせることも考えられる。
【0006】
本発明者達は、例えば積層素子の抵抗および/またはキャパシタンス等の積層素子の電気値をここに述べる内部電極配置によって機能層の厚さ変動に殆ど左右されないようにできることを発見した。
【0007】
一実施形態によれば、本発明に係る電気積層素子は、機能層から成る積層体と複数の内部電極と第1、第2外部接点とを有する。機能層は、電気積層素子がコンデンサ、バリスタまたはサーミスタとして実施されているか否かに応じて、例えば誘電体層または導電層とすることができる。それらの各特性によって機能層は素子の働きを決定する。機能層は、例えばプラスチック層またはセラミック層とすることができる。
【0008】
積層素子を製造するために機能層が上下で積層され、これにより積層方向が生じる。隣接する機能層の界面によって積層素子の層平面が決定され、これらの層平面は機能層の積層方向に沿って上下に配置されている。内部電極はこのような層平面に配置されている。
【0009】
内部電極を接触させるのに役立つ外部接点は、主に積層体の諸側面に配置されている。すなわち、外部接点は主に積層体の異なる側面に、例えば積層体の相反する側面に、または1側面の異なる諸領域に配置されている。
【0010】
他の一実施形態によれば、電気積層素子は第1外部接点に直接導電接続された第1の内部電極層の少なくとも2つの内部電極を有する。電気積層素子はさらに、第2外部接点に直接導電接続された第2の内部電極層の少なくとも2つの内部電極を有する。第1の内部電極層の少なくとも1つの内部電極と第2の内部電極層の少なくとも1つの内部電極は部分的に重なり合う。換言するなら、第1の内部電極層の少なくとも1つの内部電極は、積層体の積層方向での想定投影時に第2の内部電極層の少なくとも1つの内部電極の少なくとも1つの部分領域と合致させ得るような少なくとも1つの部分領域を有する。「直接導電接続」とはここでは、そして以下でも、内部電極が外部接点に接し、こうして外部接点に直接接続されていることを意味する。外部接点が積層体の1側面に配置されている場合、外部接点に直接導電接続された内部電極はこの側面まで延びている。
【0011】
さらに、第1の内部電極層の少なくとも1つの内部電極と第2の内部電極層の少なくとも1つの内部電極は、相互に離間して同じ1平面に配置されている。この平面は、積層体の積層方向に垂直に形成された層平面によって形成されており、以下で層延長平面と称することもできる。第1の内部電極層の少なくとも1つの内部電極と第2の内部電極層の少なくとも1つの内部電極との間にいわゆるギャップ、つまり空隙が存在している。この空隙は、層平面で第1の内部電極層の少なくとも1つの内部電極と第2の内部電極層の少なくとも1つの内部電極との間に、内部電極が配置されていない領域を具現する。
【0012】
本発明に係る素子のここに述べる内部電極配置によって、つまり重なり合う(オーバーラップする)内部電極と同じ層平面でギャップによって相互に分離された内部電極との組合せによって、機能層の製作に起因した層厚変動の否定的影響は減らすことができる。さらに後に図に関連して詳しく説明するように、特に第1、第2の内部電極層の内部電極の異なる諸配置をここに述べるように組合せることによって、層厚変動によって引き起こされる相互に相殺し合う諸作用を生じることができる。ここに述べる素子では、公知素子と比較して、素子毎に機能層の厚さが変動する場合でも、これらの素子において実質的に同じ所定の目標抵抗および/または所定のキャパシタンスを達成することができる。
【0013】
一実施形態によれば、一方の内部電極層の少なくとも1つの内部電極が他方の内部電極層のすべての内部電極と重なり合う。例えば、第1の内部電極層の少なくとも1つの内部電極は第2の内部電極層のすべての内部電極と重ね合わせることができる。さらに、第1の内部電極層の複数の内部電極を第2の内部電極層のすべての内部電極と重ね合わせることもできる。さらに、第2の内部電極層の少なくとも1つの内部電極は第1の内部電極層のすべての内部電極と重ね合わせることができる。第2の内部電極層の複数の内部電極を第1の内部電極層のすべての内部電極と重ね合わせることも考えられる。さらに、第1の内部電極層のすべての内部電極を第2の内部電極層のすべての内部電極と重ね合わせることもできる。
【0014】
他の一実施形態によれば、一方の内部電極層の少なくとも1つの内部電極は、積層体の積層方向に垂直な、他方の内部電極層の内部電極のない1平面に配置されている。例えば、第1の内部電極層の少なくとも1つの内部電極は第2の内部電極層の内部電極のない1平面に配置しておくことができる。他の1実施形態によれば、第1の内部電極層の少なくとも1つの内部電極は、第1の内部電極層+の内部電極のない1平面に配置されている。
【0015】
他の一実施形態において、第1の内部電極層のそれぞれ1つの内部電極と第2の内部電極層の1つの内部電極は、積層方向に垂直な同じ1平面に配置されている。すなわち、第1の内部電極層の各内部電極に対して同じ平面に第2の内部電極層の1つの内部電極が設けられており、他方で第2の内部電極層の各内部電極に対して同じ平面に第1の内部電極層の1つの内部電極が設けられている。
【0016】
他の一実施形態によれば、各内部電極は積層方向でそれぞれ近接した内部電極に対して実質同じ距離を有する。換言するなら、直接隣接する内部電極は、それぞれ同じ相互距離を有する異なる層延長平面で積層方向に垂直に配置されている。「実質同じ」とはここでは、そして以下でも、偏差が製造方法の公差範囲内にあり、ここでは例えば機能層の層厚公差範囲内にあることを意味する。
【0017】
電気積層素子は主に対称に構成されている。積層素子は、例えば単数または複数の空間軸線に対して軸線対称に構成しておくことができる。素子は、点対称性を有することもできる。素子は主に、素子の相反する側面に対してそれぞれ同じ距離を有する素子中心点に関して点対称である。
【0018】
他の一実施形態によれば、第1の内部電極層の内部電極と第2の内部電極層の内部電極が矩形形状を有する。
【0019】
他の一実施形態によれば第1の内部電極層の内部電極と第2の内部電極層の内部電極が六角形形状を有する。第1の内部電極層の内部電極と第2の内部電極層の内部電極は、例えばL字形状に形成しておくことができる。
【0020】
他の一実施形態によれば、少なくとも部分的に重なり合う第1の内部電極層の少なくとも1つの内部電極と第2の内部電極層の少なくとも1つの内部電極は、それぞれ2つの第1領域と2つの第1領域の間にある各1つの第2領域とを有する。第1の内部電極層の少なくとも1つの内部電極のつの第1領域と、第2の内部電極層の少なくとも1つの内部電極の2つの第1領域は重なり合う。第1の内部電極層の少なくとも1つの内部電極の第2領域は、第2の内部電極層の少なくとも1つの内部電極の第2領域と重なり合うことなく配置されている。
【0021】
少なくとも1つの他の実施形態によれば、電気積層素子は第1外部接点に直接導電接続された第1の内部電極層の少なくとも1つの内部電極と第2外部接点に直接導電接続された第2の内部電極層の少なくとも1つの内部電極とを有する。積層素子はさらに、第1外部接点にも第2外部接点にも直接導電接続されておらずかつ互いに少なくとも部分的に重なり合う第3の内部電極層の少なくとも2つの内部電極を有することができる。第1の内部電極層の少なくとも1つの内部電極と第3の内部電極層の1つの内部電極は相互に離間して同じ1平面に配置されている。さらに、第2の内部電極層の少なくとも1つの内部電極と第3の内部電極層の1つの内部電極は相互に離間して同じ1平面に配置されている。
【0022】
他の一実施形態によれば、電気積層素子は機能層の厚さ変動に対して実質的に不感な抵抗および/またはキャパシタンスを有する。こうして、ここに述べる素子の特別な内部電極配置によって有利なことに機能層の作製に起因した層厚変動の否定的影響は減らすことができる。
【0023】
他の一実施形態によれば、第1の内部電極層の少なくとも1つの内部電極と第2の内部電極層の少なくとも1つの内部電極は異なる平面に配置されている。すなわち、第1の内部電極層の少なくとも1つの内部電極と第2の内部電極層の少なくとも1つの内部電極は積層方向に垂直な異なる層延長平面に配置されている。
【0024】
他の一実施形態によれば、第1の内部電極層の少なくとも1つの内部電極は、第2の内部電極層の少なくとも1つの内部電極と重なり合うことなく配置されている。つまり、第1の内部電極層の少なくとも1つの内部電極は第2の内部電極層の少なくとも1つの内部電極と重なり合っていない。
【0025】
他の一実施形態によれば、第3の内部電極層の少なくとも2つの内部電極は少なくとも部分的に重なり合う。換言するなら、第3の内部電極層の少なくとも2つの内部電極は、積層方向での想定摺動または投影によって合致させ得るような部分領域を有する。
【0026】
他の1実施形態によれば、積層素子がNTCサーミスタ、PTCサーミスタ、バリスタまたはコンデンサ素子である。
【0027】
電気積層素子のその他の利点および有利な実施形態は、以下で図1A図5に関連して述べる実施形態から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1A】複数の実施例による積層素子の横断面図である。
図1B】複数の実施例による積層素子の横断面図である。
図2A】複数の実施例による積層素子の横断面図である。
図2B】複数の実施例による積層素子の横断面図である。
図3】他の実施例による積層素子の内部電極の略図である。
図4A参考例による積層素子の横断面図である。
図4B参考例による積層素子の横断面図である。
図5】積層素子の抵抗もしくはキャパシタンスと機能層の厚さとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
実施例と図において同一の構成部品または同一の働きの構成部品にそれぞれ同じ符号を付けておくことができる。図示した要素とそれらの相互寸法比は、基本的に縮尺どおりと見做すべきでなく、むしろ例えば層、部材、諸領域等の個々の要素は、図示改善のためにおよび/または理解を深めるために厚さまたは大きさを誇張して図示してあることがある。
【0030】
図1Aが横断面図で示す一実施例による電気積層素子1は、機能層2から成る積層体8を有し、機能層は積層方向Sで上下に配置されている。積層素子1がさらに内部電極51,52,61,62を有し、内部電極は積層素子1の層平面に配置されている。層平面は、相隣接した機能層の界面によって決定されている。図1Aに示したモノリシック体は、例えば焼結によって形成され、このモノリシック体内で機能層2と内部電極51,52,61,62は互いに接続されている。
【0031】
機能層2は、例えば誘電体層として実施しておくことができ、こうして積層素子は、コンデンサとして形成されている。その代案として、機能層は特に可変抵抗材料から成る導電層としておくこともでき、こうして電気積層素子は、バリスタまたはサーミスタとして実施しておくことができる。
【0032】
積層体8の2つの側面91,92に、外部接点3,4が配置されている。側面91,92は、図1Aに示すように相反する側面である。その代案として、側面は、例えば積層体8の相接する側面とすることもできる。図示実施例において外部接点3,4は、それぞれ積層体8の側面91,92全体を覆っている。その代案として、外部接点3,4は、積層体8の側面の部分領域を覆うこともでき、または縁を重ねて積層体8の複数の側面上に配置されるキャップ状外部接点として実施しておくこともできる。このようなキャップ状外部接点は、例えば素子を導電性ペーストに浸漬することによって製造可能である。
【0033】
さらに、積層素子1は、第1外部接点3に直接導電接続された第1の内部電極層5の2つの内部電極51,52を有する。第1の内部電極層5の内部電極51,52は、第1外部接点3から積層体8内に突出している。さらに、積層素子1は、第2外部接点4に直接導電接続されて積層体8内に突出する第2の内部電極層6の2つの内部電極61,62を有する。第1の内部電極層5の内部電極51は、第2の内部電極層6の内部電極61と重なり合う。
【0034】
さらに、第1の内部電極層5の内部電極52と第2の内部電極層6の内部電極62が同じ1平面に配置されており、両方の内部電極の間には内部電極のない領域が存在し、この領域がいわゆるギャップを形成する。
【0035】
主に、第2の内部電極層6の内部電極61は、積層方向Sで近接した第1の内部電極層5の内部電極51に対して距離を有し、この距離は積層方向で近接した第1の内部電極層5の内部電極52もしくは第2の内部電極層6の内部電極62に対する第1の内部電極層5の内部電極51の距離に実質一致している。
【0036】
さらに、図示実施例において、第1の内部電極層5、第2の内部電極層6の互いに少なくとも部分的に重なり合う内部電極51,61は、それぞれ他方の内部電極層の電極のない平面に配置されている。
【0037】
図5に示したグラフは、このような積層素子のコンダクタンス1/RもしくはキャパシタンスCと機能層の層厚dとの関係を定性的に示す。曲線Aは、その内部電極がいわゆる「ギャップ設計」501で配置され、すなわちその内部電極が重なり合うことなく空隙、つまりギャップをもって配置された公知積層素子における代表的コンダクタンス曲線もしくはキャパシタンス曲線に一致している。このような「ギャップ設計」では、電界または電流の流れが内部電極と実質平行に生じ、このような素子のキャパシタンスまたはコンダクタンスは、層厚に概ね比例して上昇する。
【0038】
曲線Bは、その内部電極がいわゆる「オーバーラップ設計」502または「T形設計」503で配置された公知積層素子の代表的コンダクタンス曲線もしくはキャパシタンス曲線を示す。オーバーラップ設計では、積層方向で交互に配置される内部電極がそれぞれ重なり合う。オーバーラップ設計では、電界または電流の流れが実質的に積層方向で生じ、つまり内部電極に垂直に生じる。T形設計は、2つのオーバーラップ設計の直列接続を実質的に具現する。このような素子のキャパシタンスまたはコンダクタンスは層厚の増加に伴って概ね間接的に比例して低下する。
【0039】
つまり公知の素子設計では層厚変化が電気値に直接影響し、これにより、プロセスに起因した層厚変動は異なる電気値を有する素子をもたらす。
【0040】
ここに述べる積層素子では、図5で曲線Zを基に示したように公知素子の前記諸作用の重畳を達成することができる。特別な内部電極配置によって、曲線A、曲線Bに関連して述べた機能層の層厚に対する電気値の依存関係が重畳する。十分に認めることができるように、曲線Zは破線で示した2つの垂直線98,99によって明示された領域内でほぼ平らな曲線を有する。これは、ここに述べる積層素子の抵抗もしくはキャパシタンスがこの領域内で機能層の生産に起因した厚さ変動に殆ど左右されないことを意味する。
【0041】
図1Bが横断面図で示す他の実施例による積層素子1では、図1Aに示した積層素子と比較して第1の内部電極層5、第2の内部電極層6の他の内部電極52,62が設けられており、内部電極は同じ1平面で相互に離間して配置されている。図1Bの積層素子1は、第1の内部電極層5の多数の内部電極51,52と第2の内部電極層6の多数の内部電極61,62とを有し、第1の内部電極層5の少なくとも2つの内部電極52は、それぞれ第2の内部電極層6の1つの内部電極62と同じ1平面に配置されており、第1の内部電極層5の少なくとも1つの内部電極51は、積層方向でこれに直接隣接した第2の内部電極層6の1つの内部電極61と重なり合う。
【0042】
さらに、図示実施例において第1の内部電極層5の内部電極51は、第2の内部電極層6のすべての内部電極61,62と重なり合う。第2の内部電極層6の内部電極61は、第1の内部電極層5のすべての内部電極51,52と重なり合う。第1の内部電極層5の内部電極51は、第2の内部電極層6の内部電極のない平面に配置されている。同様に、第2の内部電極層6の内部電極61は、第1の内部電極層5の内部電極のない平面に配置されている。
【0043】
さらに、図示実施例において第1の内部電極層5、第2の内部電極層6の重なり合う内部電極51,61は、積層方向で、それぞれ同じ1平面に配置される第1の内部電極層5、第2の内部電極層6の内部電極52,62の間に配置されている。
【0044】
主に、すべての内部電極51,52,61,62は、それぞれ積層方向Sで近接した単数もしくは複数の内部電極に対して実質同じ距離を有する。
【0045】
図1Bに示す積層素子の内部電極配置は、ギャップ設計とオーバーラップ設計との組合せと見做すことができ、ギャップ設計とオーバーラップ設計は垂直に積層され、電流の流れ方向で並列に接続されている。図1Aに示す実施例と比較して図1Bに示す積層素子1では積層方向でも層平面に沿っても比較的小さな距離を選択することができ、これにより比較的高いキャパシタンスもしくは比較的低い抵抗を達成することができる。
【0046】
その代案として、オーバーラップ設計の割合もしくは作用の比較的大きい方が望ましいとき、重なり合う第1の内部電極層の多数の内部電極と第2の内部電極層の多数の内部電極とを設けておくこともできる。同じ1平面に配置される内部電極は、積層方向で、第1の内部電極層、第2の内部電極層の重なり合う内部電極から成る少なくとも2つの対の間に配置しておくこともできる。
【0047】
図2Aが示す他の実施例による電気積層素子1は、第1外部接点3に直接導電接触した第1の内部電極層5の2つの内部電極51,52と、第2外部接点4に直接導電接続された第2の内部電極層6の2つの内部電極61,62とを有する。第1の内部電極層5の内部電極51と第2の内部電極層6の内部電極61は重なり合う。第1の内部電極層5の内部電極51と第2の内部電極層6の内部電極62は、相互に離間して同じ1平面に配置されている。同様に、第1の内部電極層5の内部電極52と第2の内部電極層6の内部電極61は、同じ1平面で相互に離間して配置されている。
【0048】
さらに、図示実施例において第1の内部電極層5の内部電極51,52は、それぞれ第2の内部電極層6の内部電極61,62と同じ1平面に配置されている。他方で、第2の内部電極層6の内部電極61,62は、それぞれ第1の内部電極層5の内部電極51,52と同じ1平面に配置されている。
【0049】
図2Aに示す積層素子1の内部電極配置は、やはりギャップ設計とオーバーラップ設計との組合せと見做すことができ、ギャップ設計とオーバーラップ設計は、電流の流れ方向または印加電界の方向で水平に並列接続されている。
【0050】
図2Bに示す他の実施例による積層素子1では、図2Aの積層素子による内部電極配置が多重に設けられている。図2Bの積層素子1は、第1の内部電極層5の多数の内部電極51,52と第2の内部電極層6の多数の内部電極61,62とを有し、第1の内部電極層5の内部電極51,52は、それぞれ第2の内部電極層6の1つの内部電極61,62と同じ1平面に配置されており、第2の内部電極層6の内部電極61,62は、それぞれ第1の内部電極層5の1つの内部電極51,52と同じ1平面に配置されている。
【0051】
さらに、図示実施例において第2の内部電極層6の少なくとも1つの内部電極61と重なり合う第1の内部電極層5の各内部電極51は、第2の内部電極層6の重なり合う内部電極61に直接隣接して配置されている。他方で、第1の内部電極層5の少なくとも1つの内部電極51と重なり合う第2の内部電極層6の各内部電極61は、第1の内部電極層5の重なり合う内部電極51に直接隣接して配置されている。
【0052】
特に、図2Bの積層素子1は、純例示的に第1の内部電極層5の6つの内部電極と第2の内部電極層6の6つの内部電極とを有し、そのうちそれぞれ第1の内部電極層5の1つの内部電極51,52と第2の内部電極層6の1つの内部電極61,62は、相互に離間し、6つの相隣接する同じ平面に配置されており、それぞれ第1の内部電極層5の3つの内部電極51と第2の内部電極層6の3つの内部電極61は重なり合う。
【0053】
図1A図2Bに示す実施例の内部電極は、主に矩形形状を有する。代案として、内部電極は別の幾何学形状を有することもできる。
【0054】
図3には、他の実施例による積層素子の4つの内部電極が略示してある。第1の内部電極層5の内部電極51,52と第2の内部電極層6の内部電極61,62は、それぞれL字形状を有する。図3に示す積層素子の内部電極配置は、ギャップ設計とオーバーラップ設計との組合せと見做すことができ、ギャップ設計とオーバーラップ設計は、電流の流れ方向または印加電界の方向を横切って並列に接続されている。
【0055】
第1の内部電極層5の内部電極51と第2の内部電極層6の内部電極62は、相互に離間して同じ1平面に配置されている。同様に、第1の内部電極層5の内部電極52と第2の内部電極層6の内部電極61は、相互に離間して同じ1平面に配置されている。第1の内部電極層5の内部電極51と第2の内部電極層6の内部電極61が、それぞれ2つの第1領域110,111,120,121を有し、第1領域は、それぞれ第2領域112,122によって相互に分離されている。第1の内部電極層5の内部電極51の2つの第1領域110,111と第2の内部電極層6の内部電極61の2つの第1領域120、121は重なり合う。それぞれ重なり合う領域110,120もしくは111,121が、図3ではそれぞれ矢印96,97で結んで図示されている。第1の内部電極層5の内部電極51の第2領域112と第2の内部電極層6の内部電極61の第2領域122は、相互に重なり合うことなく配置されている。
【0056】
図3に示す内部電極配置によって、積層素子の抵抗もしくはキャパシタンスを機能層2の生産に起因した厚さ変動に殆ど左右されないようにし得ることはやはり達成することができる。
【0057】
図4Aが横断面図で示す参考例による積層素子1は、機能層2から成る積層体8と第1、第2外部接点3,4とを有し、外部接点3,4は積層体8の側面に配置されている。さらに、積層素子1は、第1外部接点3に直接導電接続された第1の内部電極層5の内部電極51と第2外部接点4に直接導電接続された第2の内部電極層6の内部電極61とを有する。
【0058】
第3の内部電極層7の2つの内部電極71,72が設けられており、この内部電極は、第1外部接点3とも第2外部接点4とも直接導電接続されていない。第1の内部電極層5の内部電極51と第3の内部電極層7の内部電極71は、相互に離間して同じ1平面に配置されている。同様に、第2の内部電極層6の内部電極61と第3の内部電極層7の内部電極72は、相互に離間して同じ1平面に配置されている。第1の内部電極層5の内部電極51と第2の内部電極層6の内部電極61は、異なる平面に配置されている。第3の内部電極層7の2つの内部電極71,72は重なり合う。それに対して、第1の内部電極層5の内部電極51と第2の内部電極層6の内部電極61は、重なり合うことなく配置されている。
【0059】
図4Aに示す積層素子1の内部電極配置は、水平に直列接続されたギャップ設計とオーバーラップ設計との組合せと見做すことができる。
【0060】
図4Bに示す電気積層素子1では、図4Aの積層素子の電極構成が反復して実施されている。図4Bの積層素子1は、第1の内部電極層5の多数の内部電極51と第2の内部電極層6の多数の内部電極61と第3の内部電極層7の多数の内部電極71,72とを有する。第3の内部電極層7の内部電極71,72は、積層方向Sで互いに直接隣接して上下に配置され、かつそれぞれ交互に第1の内部電極層5の1の内部電極51および第2の内部電極層6の1つの内部電極61と同じ1平面に配置されている。それとともに、第3の内部電極層7の1つの内部電極71が第1の内部電極層5の1つの内部電極51とともに、また第3の内部電極層7の1つの内部電極72が第2の内部電極層6の1つの内部電極61とともに、互いに直接隣接する平面に交互に配置されている。特に、図4Bの積層素子1は、純例示的に第1の内部電極層5の3つの内部電極51と第2の内部電極層6の3つの内部電極61と第3の内部電極層7の6つの内部電極71,72とを有する。
【0061】
内部電極の図示した多重配置によって、図4A参考例と比較して、積層素子1のキャパシタンスまたは抵抗は適合させることができる。
【0062】
本発明は、実施例に基づく説明によってこれらの実施例に限定されるものでなく、新規なあらゆる特徴またはあらゆる特徴の組合せを含む。このことは、これらの特徴またはこれらの組合せ自体が、特許請求の範囲または実施例のなかで明確には述べられていないとしても、特に特許請求の範囲における特徴のあらゆる組合せを内容として含む。
【符号の説明】
【0063】
1 積層素子
2 機能層
3 第1外部接点
4 第2外部接点
5 内部電極の第1の内部電極層
51,52 第1の内部電極層の内部電極
6 内部電極の第2の内部電極層
61,62 第2の内部電極層の内部電極
7 内部電極の第3の内部電極層
71,72 第3の内部電極層の内部電極
8 積層体
91,92 積層体の側面
96,97 矢印
98,99 線
110,111,120,121 第1領域
112,122 第2領域
501 ギャップ設計
502 オーバーラップ設計
503 T形設計
S 積層方向
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5