特許第5758535号(P5758535)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5758535
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】金属成形品の製造方法、及び、画像
(51)【国際特許分類】
   B22C 9/00 20060101AFI20150716BHJP
   B22D 21/04 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
   B22C9/00 A
   B22D21/04 A
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-198418(P2014-198418)
(22)【出願日】2014年9月29日
【審査請求日】2014年10月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514246680
【氏名又は名称】株式会社日▲高▼合金
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100174528
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 晋朗
(74)【代理人】
【識別番号】100121049
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 正義
(72)【発明者】
【氏名】日▲高▼ 義昭
【審査官】 川崎 良平
(56)【参考文献】
【文献】 実開平02−138056(JP,U)
【文献】 特開2012−121040(JP,A)
【文献】 特開2014−018835(JP,A)
【文献】 特開2003−311371(JP,A)
【文献】 特開昭63−168250(JP,A)
【文献】 特開平02−117743(JP,A)
【文献】 特開2013−233564(JP,A)
【文献】 特開2013−237093(JP,A)
【文献】 特開2002−370231(JP,A)
【文献】 特開平09−314281(JP,A)
【文献】 特開平08−022487(JP,A)
【文献】 実開昭63−025234(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属成形品を形成するための成形部の内面であって、前記金属成形品の薄肉部を形成する前記成形部の内面及び、前記金属成形品の肉厚部を形成する前記成形部の内面の夫々に、形状が異なる複数の金属の冷し金が正しく配置されるとともに、いくつかの形状が異なる複数の前記冷し金が同一の平面に配置されるように、予め用意した、砂型の模型上の前記冷し金の配置を表示した画像に基づいて、形状が異なる複数の前記冷し金を配置して前記砂型を形成し、前記型を用いて前記金属成形品を製造することを特徴とする金属成形品の製造方法。
【請求項2】
前記成形部には大きさの異なる少なくとも第1の空間と第2の空間とが存在し、前記第1の空間は前記第2の空間よりも大きく、前記第1の空間と前記第2の空間との内面の夫々に、前記冷し金が配置される際、前記第1の空間の内面には第1の冷し金が、前記第2の空間の内面には前記第1の冷し金よりも小さい第2の冷し金がそれぞれ正しく配置されるように、
予め用意した前記画像に基づいて、大きさが異なる各冷し金を配置して前記型を形成することを特徴とする請求項1に記載の金属成形品の製造方法。
【請求項3】
前記冷し金を、前記画像に示される冷し金の向きに合わせて配置することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の金属成形品の製造方法。
【請求項4】
前記冷し金には配置の際の向きを示す切欠きが設けられていることを特徴とする請求項3に記載の金属成形品の製造方法。
【請求項5】
複数の前記冷し金を、前記画像に示される各冷し金の位置関係に合わせて配置することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の金属成形品の製造方法。
【請求項6】
前記冷し金の個数を、前記画像に示される冷し金の個数に合わせて配置することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の金属成形品の製造方法。
【請求項7】
アルミニウムあるいはアルミニウム合金を前記砂型により鋳造することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の金属成形品の製造方法。
【請求項8】
金属成形品を形成するための成形部の内面位置であって、前記金属成形品の薄肉部を形成する前記成形部の内面位置及び、前記金属成形品の肉厚部を形成する前記成形部の内面位置の夫々に対応した形状の異なる複数の金属の冷し金が砂型の模型上に配置されるとともに、いくつかの形状が異なる複数の前記冷し金の同一の平面上への配置を表示することを特徴とする画像。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷し金を配置して製造される金属成形品の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋳物を製造する鋳造技術として、溶融状態の金属又は合金(以下、適宜「溶湯」と表記)を鋳型の内部空間に注入し、溶湯を凝固、冷却させた後、鋳型より取り出す技術が知られている。
【0003】
下記特許文献1では、冷し金を鋳型の内部空間の表面に沿って配置している。冷し金は、通常、内部空間のうちで体積が大きい部分に接する鋳型の表面に配置される。体積が大きい部分が他の部分に比べて肉厚であると、体積が大きい部分に注入された溶湯は、他の部分に比べて冷却速度が遅くなる。この結果、鋳物の肉厚部の内部に引けによる空隙が生じることがある。
【0004】
そこで、体積が大きい空間部分の表面に沿って冷し金を配置して、注入された溶湯の冷却速度を上げることができる。これにより、鋳物の内部に引けによる空隙が生じるのを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−121040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら従来では、作業者が冷し金を配置するときに誤って配置することがあった。例えば冷し金の向き、複数の冷し金の相対的な位置関係、又は、冷し金の個数等を誤ることがある。このように冷し金の配置を誤ると、溶湯の冷却速度を適切に制御することができず、引けによる空隙などの不良が発生することがあった。
【0007】
さらに、鋳物を砂型で鋳造する場合には、鋳物の製造の都度、冷し金を配置して砂型を作る。また、冷し金の配置が手作業で行われることがある。この場合、特に冷し金の配置を誤りやすいといった問題があった。
【0008】
本発明は、係る点に鑑みてなされたものであり、冷し金の配置の誤りを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の金属成形品の製造方法は、金属成形品を形成するための成形部の内面であって、前記金属成形品の薄肉部を形成する前記成形部の内面及び、前記金属成形品の肉厚部を形成する前記成形部の内面の夫々に、形状が異なる複数の金属の冷し金が正しく配置されるとともに、いくつかの形状が異なる複数の前記冷し金が同一の平面に配置されるように、予め用意した、砂型の模型上の前記冷し金の配置を表示した画像に基づいて、形状が異なる複数の前記冷し金を配置して前記砂型を形成し、前記型を用いて前記金属成形品を製造することを特徴とする。
本発明では、前記成形部には大きさの異なる少なくとも第1の空間と第2の空間とが存在し、前記第1の空間は前記第2の空間よりも大きく、前記第1の空間と前記第2の空間との内面の夫々に、前記冷し金が配置される際、前記第1の空間の内面には第1の冷し金が、前記第2の空間の内面には前記第1の冷し金よりも小さい第2の冷し金がそれぞれ正しく配置されるように、予め用意した前記画像に基づいて、大きさが異なる各冷し金を配置して前記型を形成することができる。
【0010】
本発明では、正しい冷し金の配置を示す見本の画像を予め用意し、この画像に基づいて冷し金を配置する。したがって、従来に比べて、冷し金の配置の誤りを抑制することができる。この結果、金属成形品の引けによる空隙の発生を抑制することができる。
【0011】
本発明では、前記冷し金を、前記画像に示される冷し金の向きに合わせて配置することができる。本発明では、前記冷し金には配置の際の向きを示す切欠きが設けられていることが好ましい。また、複数の前記冷し金を、前記画像に示される各冷し金の位置関係に合わせて配置することができる。さらに、前記冷し金の個数を、前記画像に示される冷し金の個数に合わせて配置することができる。
【0012】
このように、手作業において誤りやすい冷し金の配置を、画像に示される冷し金の配置に合わせて行うことで、配置の誤りを抑制することが可能になる。
【0013】
また本発明は、アルミニウムあるいはアルミニウム合金を前記砂型により鋳造する構成に適している。
【0016】
本発明における画像は、金属成形品を形成するための成形部の内面位置であって、前記金属成形品の薄肉部を形成する前記成形部の内面位置及び、前記金属成形品の肉厚部を形成する前記成形部の内面位置の夫々に対応した形状の異なる複数の金属の冷し金が砂型の模型上に配置されるとともに、いくつかの形状が異なる複数の前記冷し金の同一の平面上への配置を表示することを特徴とする。この画像を用いることで、模型上に適切に冷し金を配置できるので、鋳物を製造するための型において、冷し金を所定の位置に配置することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、従来に比べて、冷し金の配置の誤りを抑制することができる。この結果、金属成形品の引けによる空隙の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施の形態に係る鋳物の製造に使用される鋳型の断面模式図である。
図2】本実施の形態に係る鋳物の断面模式図である。
図3】所定の位置に各冷し金を配置した平面模式図である。
図4図3に示す冷し金の配置を示す写真と、模型の平面図と、配置する冷し金とを示す模式図である。
図5】本実施の形態に係る鋳物の製造方法における模型及び冷し金の断面模式図である。
図6】本実施の形態に係る鋳物の製造方法における模型、冷し金及び鋳型の断面模式図である。
図7】本実施の形態に係る鋳物の製造方法における模型、並びに、冷し金及び鋳型の断面模式図である。
図8】本実施の形態に係る鋳物の製造方法における鋳型の断面模式図である。
図9】本実施の形態に係る鋳物の製造方法における鋳型及び鋳物の断面模式図である。
図10】本実施の形態に係る冷し金の配置が表示されたタブレット画面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について、実施例に基づきさらに詳述するが、これらは説明のために記述されるものであって、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
【0020】
図1は、本実施の形態に係る鋳物の製造に使用される鋳型20の断面模式図である。図2は、本実施の形態に係る鋳物37の断面模式図である。
【0021】
鋳型20は、上型21及び下型24を有する。鋳型20は砂型や金型等の別を問わないが、本実施の形態の冷し金を設けたことの利点及びコスト面等により砂型が好ましく用いられる。砂型の場合、強度を上げるために、粘結剤として水ガラスや、セメント、樹脂等を混合することもできる。
【0022】
上型21と下型24との間には、鋳型20の内部空間(成形部)30が形成される。内部空間30には、内部空間30を構成する内面に沿って、冷し金31〜36が配置される。内部空間30に図示しない流路から溶湯を注入する。注入された溶湯は冷却されて凝固する。その後、鋳型20が除去されると、図2に示す鋳物(金属成形品)37が得られる。
【0023】
金属成形品は、例えば、工作機械、自動車、航空機、日用品等に使用される他、様々な分野に用いられる。金属成形品のうち鋳造により形成されたものが鋳物である。本実施の形態は、鋳物の製造方法に特に適したものであるが、押し出し成形等によって製造された金属成形品にも適用することができる。
【0024】
また、鋳物(金属成形品)37の材質を特に限定するものでない。例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、青銅、ニッケル合金、ステンレス鋼等を例示できるが、このうち本実施の形態は、アルミニウムやアルミニウム合金を砂型により鋳造してなる鋳物に特に適している。
【0025】
冷し金31〜36は、鋳型20の内部空間30の大きさ、溶湯が注入される位置、その他の条件に応じて、適切に配置される。以下に冷し金31〜36の配置の例を説明する。鋳型20は内部空間30に、小空間30a、中空間30b及び大空間30cを有する。ここで小空間30a、中空間30b及び大空間30cは、それぞれの空間の体積、縦断面における断面積、又は、高さ寸法h1,h2及びh3が小さい順に定義することができる。
【0026】
例えば、中空間30b及び大空間30cに接する領域に冷し金31〜36が配置され、小空間30aに接する領域に冷し金が配置されない。中空間30bに接する領域に配置される冷し金33〜36に比べて、大空間30cに接する領域に配置される冷し金31及び32は、体積が大きくてもよい。あるいは、中空間30bに配置される冷し金33〜36に比べて、大空間30cに配置される冷し金31及び32が肉厚であってよい。また、中空間30bが鋳型20に接する面積と、中空間30bが冷し金33〜36に接する面積との比率よりも、大空間30cが鋳型20に接する面積と、大空間30cが冷し金31、32に接する面積との比率が大きくてもよい。冷し金の材料は、特に限定されないが、溶湯の温度よりも融点が高い金属で構成することができる。
【0027】
このように内部空間30の大きさその他の要素を考慮して冷し金を配置するので、冷し金31〜36の配置を間違えずに適切に配置する必要がある。鋳型20が砂型である場合には鋳物37の製造のたびに鋳型20の作製が必要なので、冷し金の配置をその都度、間違えないようにする必要がある。
【0028】
本実施の形態では、以下に説明するように、冷し金の正しい配置を予め画像化し、その画像を見本として使用して、冷し金を配置できるようにした。これにより、冷し金の配置の誤りを効果的に且つ簡単に抑制できるようにした。
【0029】
以下、本実施の形態の鋳物37の製造方法について説明する。まず、冷し金を正しく配置し、その配置を撮像する。図3は、所定の位置に各冷し金を配置した状態を示す平面模式図である。即ち、図3に示すように、鋳型を製造するための模型40上に各冷し金31〜36、41〜44を正しく配置する。模型40には、内部空間30の下型24側の領域と同じ形状を有する台座40aが突出して形成されている。台座40aの上面や側面に各冷し金31〜36、41〜44を配置する。
【0030】
図3に示すように冷し金31〜36、41〜44は、複数であり、かつ、形状は複数種類であって一様でない。ここで正しく冷し金を配置するとは、冷し金の向き、各冷し金の位置関係及び冷し金の配置数のいずれか1つ以上、又は、すべてを考慮して冷し金を配置し、かつ、冷し金を配置するべきではない位置には冷し金を配置しないことをいう。
【0031】
冷し金の向きについて説明する。図3に示すように、冷し金32は矩形状の四つ角のうち2つの角を斜めに切り欠いた形状となっている。符号32aは切欠き部を示す。これら切欠き部32aの向きが、予め定めた配置に対して90度、あるいは180度異なると、冷し金32を配置したことによる所定の冷却効果が得られなくなる。したがって各冷し金の向きを正しく配置することが必要になる。冷し金33、34及び36にも同様に切欠き部が形成されており、これら切欠き部を適正な向きに向けた状態で各冷し金33、34及び36を配置する。また冷し金の形状は限定されるものでなく矩形状以外に湾曲形状、楕円形、円形等、内部空間の形状に合わせて適宜決定される。このように冷し金がどのような形状であっても本実施の形態によれば冷し金の向きの誤りを防止することができる。
【0032】
各冷し金の位置関係について説明する。図3に示すように各冷し金の間の距離や、異形状の冷し金の配置を調整する。例えば、冷し金32と冷し金33との間の距離(冷し金同士の間隔又は中心間の距離)は、冷し金41と冷し金42との間の距離よりも長い。また、冷し金34及び36と冷し金35とは異形状であり、冷し金35を真ん中に配置し、その両側に冷し金34、36を配置した配置となっている。これら冷し金同士の間の距離、及び/又は、異形状の冷し金の配置関係が正しくないと、所定の冷却効果が得られない。したがって、複数の冷し金を互いに正しく配置することが必要とされる。例えば、図3に示すように、冷し金32と冷し金33との間の模型40上にマーク45を記しておき、このマーク45の部分には冷し金を配置しないことがわかるようにしておくこともできる。
【0033】
また配置される冷し金の数も配置の概念に含まれる。例えば、各冷し金の位置関係については、マーク45の部分に冷し金を置かない等の最低限の条件をクリアしていればよい場合もある。そのような場合であっても冷し金の配置数を間違えないようにすることが好ましい。
【0034】
各冷し金31〜36、41〜44を正しく配置し、各冷し金の配置を撮像する。例えば市販のデジタルカメラで撮像するが、特に撮像手段を限定するものではない。また冷し金の配置については全体画像、部分画像、平面画像、側面画像及び鳥瞰画像等を用いることができるが、平面での全体画像を有することが好適である。画像には、冷し金の配置と共に、識別番号又は識別記号等が掲載されることが好ましい。識別番号又は識別記号等は、例えば、冷し金を配置して撮像する際に、識別番号又は識別記号等を記載したプレート等を模型40と共に配置して撮像したものでもよいし、デジタルカメラで画像に入力されたものであってもよい。これにより、模型40を識別することができる。
【0035】
上記のように、各冷し金を正しく配置した画像を印刷して写真にする。図4は、図3に示す冷し金の配置を示す写真と、模型の平面図と、配置する冷し金とを示す模式図である。図4に示すように、作業者は、写真(見本画像)50を使用して、各冷し金31〜36、41〜44を模型40上に正しく配置することができる。写真50を使用するとは、例えば、写真50を見る、又は見て記憶する等、写真50を確認する行為を挙げることができる。これにより鋳物製造の経験年数にかかわらず、また新たな鋳物を製造するに際して、どの作業者であっても、各冷し金の配置を誤ることなく適切に且つスピーディに実行することが可能である。
【0036】
特に上記したように冷し金の向き、複数の冷し金の位置関係、又は、冷し金の配置数を誤る確率を従来に比べて効果的に低下させることが可能である。
【0037】
図5から図9は、本実施の形態に係る鋳物の製造方法を説明するための断面模式図である。
【0038】
図5に、模型40上に冷し金31〜36、41〜44が正しく配置されている状態を示す。また、模型40の周囲には鋳枠25が配置され、模型40が鋳枠25により囲まれている。なお、特に限定されないが、模型40の材料としては、例えば、木、金属、又は熱硬化性樹脂が挙げられ、鋳枠25の材料としては、例えば、木又は金属が挙げられる。
【0039】
次に、図6に示すように、模型40の鋳枠25に囲まれた空間に鋳砂26を充填し、型込めを行う。続いて図7に示すように、型込めされた鋳砂(砂型)26を模型40から型抜きし、これにより、図1に示す冷し金を備えた下型24を成形することができる。なお図7では、鋳枠25が模型40とともに下型24から外れているが、下型24に付いていてもよい。図7に示す下型24を上下反転させることで、図1に示す下型24と同図になる。
【0040】
上型21及び図示しない中子を製造し、図8に示すように、上型21と下型24とを重ね合わせる。鋳型20には内部空間30が設けられる。
【0041】
そして図9に示すように、図示しない流路から溶湯60を注入する。注入された溶湯60は、鋳型20の内部空間30で冷却されて凝固する。そして鋳型20を除去することで、所定形状からなる鋳物37(図2参照)を製造することができる。本実施の形態では、注入された溶湯60の肉厚部分には、冷し金が接している。このため注入された溶湯のうち、冷し金に近い領域における放熱が促進され、溶湯の凝固を早めることができる。これにより、鋳物37(図2参照)の肉厚部分と薄肉部分とにおける、溶湯が凝固する早さのばらつきを抑えることができるので、製造された鋳物37の内部欠陥を抑制できる。特に、本実施の形態では、予め冷し金の配置を正しく示す見本の画像を用意しておき、この画像に基づいて冷し金を配置する。したがって、冷し金の配置の誤りを抑制することができる。この結果、鋳物37の肉厚部分での引けによる空隙の発生を抑制でき、不良品率を効果的に抑制することができる。
【0042】
本実施の形態では、アルミニウムあるいはアルミニウム合金を砂型により鋳造する構成に特に適している。アルミニウム等の軽合金を用いることで軽い鋳物37を作ることができる。またアルミニウムあるいはアルミニウム合金では鉄などに比べて熱伝導率及び熱膨張率が高いために、肉厚部分での冷却速度を促進させることが必要とされる。したがって鋳型20内に冷し金を配置するとともに、冷し金を内部空間30の所定の位置に適切に配置することで、鋳物37の肉厚部分での冷却速度を速めて、鋳物37の肉厚部分での引けによる空隙の発生を従来に比べて高精度に抑制することが可能になる。
【0043】
また本実施の形態による製造方法により製造された鋳物37は、特に研磨加工等を施していない状態では、表面や側面の表面状態により冷し金が鋳型20の内部空間30内に配置されていたか否かを知ることができる。
【0044】
図4に示すように、冷し金が正しく配置された見本の画像として写真50を例示したが、写真50に限定されるものではない。また、冷し金の配置を示す画像は、2次元の画像に限られず、3次元画像であってもよい。その場合は、冷し金の配置を示す3次元画像が、3次元表示装置を用いて表示されてもよいし、ミニチュア又は実物大の模型を製造してもよい。
【0045】
図10は、本実施の形態に係る冷し金の配置が表示されたタブレット画面の模式図である。図10に示すように、タブレット75の表示画面75aや、携帯電話、スマートフォン等の表示画面に画像を映すことができる。また、例えば、冷し金が正しく配置された画像を、ハードディスク装置やメモリに記憶させパーソナルコンピュータの表示画面、又は、テレビの画面に表示させることもできる。これにより、作業者は画像を使用して、冷し金を正しく配置することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、工作機械や自動車、航空機、日用品等に使用される金属成形品の製造に際し、冷し金を有する構成に適用することができる。特に、砂型等の鋳型の内部空間に溶湯を注入して行われる鋳物の製造方法に適している。
【符号の説明】
【0047】
20 鋳型
21 上型
24 下型
25 鋳枠
26 鋳砂
30 内部空間
30a 小空間
30b 中空間
30c 大空間
31、32、33、34、35、36 冷し金
32a 切欠き部
37 鋳物
40 模型
40a 台座
41、42、43、44 冷し金
45 マーク
50 写真(見本画像)
60 溶湯
【要約】
【課題】冷し金の配置の誤りを抑制することができる金属成形品の製造方法、鋳物、及び、画像を提供する。
【解決手段】鋳物の製造方法は、予め用意した画像(50)に基づいて、冷し金を配置して製造する。冷し金を、画像(50)に示す冷し金の向き、位置関係、及び個数に合わせて配置する。正しい冷し金の配置を示す見本の画像に基づいて冷し金を配置することで、冷し金の配置の誤りを抑制することができ、金属成型品の引けによる空隙の発生を抑制できる。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10