(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
生成物(A)が、エチレン、飽和カルボン酸ビニルエステルおよび不飽和エポキシドのコポリマー、またはエチレン、アルキル(メタ)アクリレートおよび不飽和エポキシドのコポリマーであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
生成物(B)が、エチレン、飽和カルボン酸ビニルエステルおよび不飽和カルボン酸無水物のコポリマー、またはエチレン、アルキル(メタ)アクリレートおよび不飽和カルボン酸無水物のコポリマーであることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
生成物(C)が、エチレンおよび(メタ)アクリル酸のコポリマー、またはエチレン、アルキル(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリル酸のコポリマーであることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
加工助剤、可塑剤、充填剤、安定剤、染料、離型剤、難燃剤、界面活性剤、光学的光沢剤、酸化防止剤、およびそれらの混合物から選択される少なくとも1種の添加剤を含むことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
ポリアミド、ポリアミド−ブロック−エーテル、ポリエーテルアミド、ポリエステルアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、非架橋ポリオレフィンおよびフルオロポリマーからなる群から選択される少なくとも1種の追加的ポリマーを含むことを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のさらなる特徴、態様、目的および利点は、下記の詳細な説明および実施例を読むことでさらに明らかとなる。
【0017】
ポリアミドの定義に使用されている命名法は、ISO基準1874−1:1992「Plastics−Polyamide(PA) molding and extrusion materials−Part1:Designation」、特に第3頁(表1および2)に記載されており、当業者にとって周知である。
【0018】
また、本明細書で用いられている「...から...の間」および「...から...」という表現は、それぞれ示された範囲の終点を含むものとして理解されるべきあることに留意されたい。
【0019】
半芳香族ポリアミド
本発明の組成物は、少なくとも1種の半芳香族ポリアミドを含む。
【0020】
この半芳香族ポリアミドは、ジアミンおよび芳香族ジカルボン酸の重縮合から得られる、少なくとも1種の第1の半芳香族繰り返し単位を含む。
【0021】
ジアミンは、有利には、4から36個の間の炭素原子を含む。
【0022】
ジアミンは、脂肪族ジアミン、環状脂肪族ジアミンおよびアルキル芳香族ジアミンから選択してもよい。これらのジアミンは、直鎖状であってもよい。それらは分岐状であってもよく、少なくとも1種のアルキル分岐を主鎖に含んでもよく、このアルキル分岐自体は直鎖状であっても分岐状であってもよい。
【0023】
ジアミンが脂肪族で直鎖状であるとき、式H
2N−(CH
2)
x−NH
2にしたがう。それゆえ、このジアミンは、ブタンジアミン(x=4)、ペンタンジアミン(x=5)、ヘキサンジアミン(ヘキサメチレンジアミンとも呼ばれる。)(x=6)、ヘプタンジアミン(x=7)、オクタンジアミン(x=8)、ノナンジアミン(x=9)、デカンジアミン(x=10)、ウンデカンジアミン(x=11)、ドデカンジアミン(x=12)、トリデカンジアミン(x=13)、テトラデカンジアミン(x=14)、ヘキサデカンジアミン(x=16)、オクタデカンジアミン(x=18)、オクタデセンジアミン(x=18)、エイコサンジアミン(x=20)、ドコサンジアミン(x=22)および脂肪酸から得られるジアミンから選択され得る。これらの種類のジアミンは、全て、生物由来のものとすることができ、ASTM基準D6866によって測定され得るように、バイオマス由来の有機炭素を含み得るという利点がある。
【0024】
ジアミンが、環状脂肪族であるとき、ビス(3,5−ジアルキル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3,5−ジアルキル−4−アミノシクロヘキシル)エタン、ビス(3,5−ジアルキル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3,5−ジアルキル−4−アミノ−シクロヘキシル)ブタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン(BMACMまたはMACM)、p−ビス(アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)およびイソプロピリデンジ(シクロヘキシルアミン)(PACP)から選択され得る。環状脂肪族ジアミンは、以下の炭素骨格も含み得る:ノルボルニルメタン、シクロヘキシルメタン、ジシクロヘキシルプロパン、ジ(メチルシクロヘキシル)、ジ(メチルシクロヘキシル)プロパン。これらの環状脂肪族ジアミンの非網羅的リストは、刊行物「Cycloaliphatic Amines」(Encyclopaedia of Chemical Technology、Kirk−Othmer、4th Edition(1992)、pp.386−405)に示されている。
【0025】
ジアミンがアルキル芳香族であるとき、1,3−キシリレンジアミンおよび1,4−キシリレンジアミンから選択してもよい。
【0026】
有利には、ジアミンは、脂肪族ジアミンである。
【0027】
好ましくは、ジアミンは、直鎖状脂肪族ジアミンである。
【0028】
この芳香族ジカルボン酸は、テレフタル酸(Tで表される。)、イソフタル酸(Iで表される。)、フタル酸およびナフタレン酸から選択することができる。この言及した芳香族ジカルボン酸は、1つ以上のアルキル分岐を有してもよく、これらのアルキル分岐自体は直鎖状でも分岐状であってもよい。したがって、2−メチルテレフタル酸が挙げられる。
【0029】
有利には、半芳香族ポリアミドは、240℃超、有利には240℃から310℃の間、特に260℃から280℃の間の融点を有する。
【0030】
特に好ましくは、芳香族ジカルボン酸は、テレフタル酸(T)である。
【0031】
本発明の1つの特別なバージョンによれば、半芳香族ポリアミドは、第1の繰り返し単位を50モル%超、有利には60モル%超、含むことができる。
【0032】
特に1種以上の第1の繰り返し単位で100モル%構成されている半芳香族ポリアミドの使用を考慮することも可能である。
【0033】
特に、本発明の第1の態様によれば、この半芳香族ポリアミドは、ジアミンおよび芳香族ジカルボン酸の重縮合反応から得られる第1の繰り返し単位のみで構成されているホモポリマーであってもよい。
【0034】
したがって、半芳香族ポリアミドは、ホモポリアミド6.T、9.T、10.T、11.T、12.T、14.T、18.T、6.I、9.I、10.I、11.I、12.I、14.Iおよび18.Iから選択することができる。
【0035】
本発明の第2の態様によれば、この半芳香族ポリアミドは、ジアミンおよび2つの芳香族ジカルボン酸の重縮合反応から得られる第1の繰り返し単位または2つのジアミンおよび芳香族ジカルボン酸の重縮合反応から得られる第1の繰り返し単位で構成されているコポリマーであってもよい。
【0036】
したがって、第1の例において、半芳香族ポリアミドは、コポリアミド6.T/6.I、9.T/9.I、10.T/10.I、11.T/11.Iおよび12.T/12.Iから選択され得る。第2の例において、半芳香族ポリアミドは、コポリアミド6.T/9.T、6.T/10.T、6.T/11.T、6.T/12.T、9.T/10.T、9.T/11.T、9.T/12.T、10.T/11.T、10.T/12.Tおよび11.T/12.Tから選択され得る。同様のリストが、テレフタル酸(T)を、イソフタル酸(I)に置き換えることによって、作成され得る。
【0037】
本発明の第3の態様によれば、この半芳香族ポリアミドは、少なくとも2種のジアミンおよび少なくとも2種の芳香族ジカルボン酸の重縮合反応から得られる第1の繰り返し単位を含むコポリマーであってもよい。
【0038】
このジアミンおよび芳香族ジカルボン酸の重縮合から得られる前述した少なくとも1種の第1の半芳香族繰り返し単位に加えて、本発明の組成物における半芳香族ポリアミドは、第1の繰り返し単位以外の必要な繰り返し単位である少なくとも1種の第2の繰り返し単位を含んでもよい。
【0039】
この第2の繰り返し単位は、アミノカルボン酸から得られる単位、ラクタムから得られる単位および式(Caジアミン)・(Cb二官能酸)(式中、「a」は、ジアミン中の炭素原子の数を表し、「b」は、二官能酸中の炭素原子の数を表す。)に一致する単位からなる群から選択され得る。
【0040】
有利には、aおよびbは、それぞれ4から36の間である。
【0041】
この第2の繰り返し単位がアミノカルボン酸から得られるとき、このアミノカルボン酸は、9−アミノノナン酸(9)、10−アミノデカン酸(10)、10−アミノウンデカン酸(11)、12−アミノドデカン酸(12)および11−アミノウンデカン酸(11)から選択することができる。アミノカルボン酸は、分岐状であってもよい。考えられる例は、N−へプチル−11−アミノウンデカン酸である。
【0042】
この第2の繰り返し単位がラクタムから得られるとき、このラクタムは、ピロリジノン、2−ピペリジノン、エナントラクタム、カプリロラクタム、ペラルゴラクタム、デカノラクタム(10)、ウンデカノラクタム(11)およびラウリルラクタム(12)から選択され得る。
【0043】
この第2の繰り返し単位が、式(Caジアミン)・(Cb二官能酸)に一致する単位であるとき、この単位は、ジアミン、Caジアミンおよびジカルボン酸、Cb二官能酸の重縮合から得られるが、このジカルボン酸が、芳香族ジカルボン酸でないことを条件とする。
【0044】
このCaジアミンは、脂肪族ジアミン、環状脂肪族ジアミンおよびアルキル芳香族ジアミンから選択され得る。これらのCaジアミンは、直鎖状であり得る。それらは分岐状であってもよく、少なくとも1種のアルキル分岐を主鎖に含んでもよく、このアルキル分岐自体は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。
【0045】
上述の第1の繰り返し単位を調製するためのジアミンは、第2の繰り返し単位を得るためのCaジアミンとして使用してもよい。したがって、第2の繰り返し単位を得るために使用され得るCaジアミンの例として、第1の繰り返し単位を得るために使用され得るジアミンに関する段落が言及される。
【0046】
第2の繰り返し単位を得るために用いられるジカルボン酸(Cb二官能酸)は、脂肪族ジカルボン酸および環状脂肪族ジカルボン酸から選択することができる。これらのジカルボン酸は、直鎖状であってもよい。それらは分岐状であってもよく、少なくとも1種のアルキル分岐を主鎖に含んでもよく、このアルキル分岐自体は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。
【0047】
ジカルボン酸(Cb二官能酸)が、脂肪族および直鎖状であるとき、コハク酸(4)、ペンタン二酸(5)、アジピン酸(6)、ヘプタン二酸(7)、オクタン二酸(8)、アゼライン酸(9)、セバシン酸(10)、ウンデカン二酸(11)、ドデカンニ酸(12)、ブラシル酸(13)、テトラデカン二酸(14)、ヘキサデカン二酸(hexadecanedioic)(16)、オクタデカン二酸(18)、オクタデセン二酸(18)、エイコサン二酸(20)、ドコサン二酸(22)および36個の炭素を含む脂肪酸二量体から選択され得る。
【0048】
上記で言及した脂肪酸二量体は、特に文献EP0471566に記載されているような、不飽和一塩基脂肪酸および長鎖炭化水素(例えばリノール酸およびオレイン酸)のオリゴマー化または重合化により得られる二量体化脂肪酸である。
【0049】
ジカルボン酸(Cb二官能酸)が、環状脂肪族であるとき、以下の炭素骨格:ノルボルニルメタン、シクロヘキサン、シクロヘキシルメタン、ジシクロヘキシルメタン、ジシクロヘキシルプロパン、ジ(メチルシクロヘキシル)、ジ(メチルシクロヘキシル)プロパンを含み得る。
【0050】
したがって、半芳香族ポリアミドの第2の繰り返し単位は、特に、以下の単位:6、11、12、6.10、6.12、6.14、6.18、10.10、10.12、10.14、10.18および12.12を示し得る。
【0051】
本発明の第4の態様によれば、この半芳香族ポリアミドは、ジアミンおよび芳香族ジカルボン酸の重縮合反応から得られる第1の繰り返し単位ならびにアミノカルボン酸もしくはラクタムから択一的に得られるまたは上述のCaジアミンおよびCb二官能酸の重縮合から得られる第2の繰り返し単位で構成されているコポリマーであってもよい。
【0052】
考えられ得る組合せの中でも、以下のコポリアミドが、特に着目され、これらは、11/6.T、12/6.T、6.10/6.T、6.12/6.T、10.10/6.T、10.12/6.T、12.12/6.T、11/9.T、12/9.T、6.10/9.T、6.12/9.T、10.10/9.T、10.12/9.T、12.12/9.T、11/10.T、12/10.T、6.10/10.T、6.12/10.T、10.10/10.T、10.12/10.Tおよび12.12/10.Tから選択される式の1つに一致するコポリアミドである。
【0053】
本発明の第5の態様によれば、この半芳香族ポリアミドは、少なくとも1種のジアミンおよび少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸の重縮合反応から得られる第1の繰り返し単位ならびに少なくとも1種のアミノカルボン酸、少なくとも1種のラクタムおよび/または上述のCaジアミンおよびCb二官能酸の重縮合から得られる第2の繰り返し単位を含むコポリマーであってもよい。
【0054】
考えられ得る複数の組合せの中でも、特に、以下から選択される式の1つに一致するコポリアミドが言及され得る:
−6/11/10.T、6/12/10.T、11/12/10.T、11/6.10/10.T、12/6.10/10.T、11/10.6/10.T、12/10.6/10.T(これらのコポリアミドは、全て、第1の繰り返し単位10.Tおよび2つの第2の繰り返し単位を含む。)、
−6/6.T/10.T、11/6.T/10.T、12/6.T/10.T(これらのコポリアミドは、全て、2つの第1の繰り返し単位6.Tおよび10.Tならびに1つの第2の繰り返し単位を含む。)、
−11/9.T/9.I、12/9.T/9.I、11/10.T/10.I、12/10.T/10.I(これらのコポリアミドは、全て、2つの第1の繰り返し単位および1つの第2の繰り返し単位を含む。)、
−6/11/6.T/10.T、11/12/6.T/10.T(これらのコポリアミドは、両方とも、第1の繰り返し単位6.Tおよび10.Tならびに2つの第2の繰り返し単位を含む)。
【0055】
本発明の内容において、有利には、生物由来のジアミン、ジカルボン酸、アミノカルボン酸および/またはラクタムから全体的にまたは部分的に得られるまたは得られ得る、別言すると、ASTM基準D6866にしたがって測定され得るようなバイオマスに由来する有機炭素を含有する第1および適切な場合に第2の繰り返し単位を使用することが可能である。
【0056】
架橋ポリオレフィン
本発明による組成物は、少なくとも1種の架橋ポリオレフィンを含み、架橋ポリオレフィンは、半芳香族ポリアミドによって形成されているマトリックスに分散した相として存在している。
【0057】
この架橋ポリオレフィンは、互いに反応性の基を有する2種のまたは少なくとも2種の生成物から生じる。
【0058】
特に、架橋ポリオレフィンは、不飽和エポキシドを含む少なくとも1種の生成物(A)および不飽和カルボン酸無水物を含む少なくとも1種の生成物(B)から得られる。
【0059】
生成物(A)は、有利には、不飽和エポキシドを含むポリマーであり、この不飽和エポキシドは、グラフトまたは共重合のいずれかによりポリマーに導入されたものである。
【0060】
不飽和エポキシドは、特に、以下のエポキシドから選択され得る:
−脂肪族グリシジルエーテルおよびエステル、例えばアリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、グリシジルマレエートおよびイタコネート、グリシジルアクリレートおよびメタクリレートならびに
−脂環式グリシジルエーテルおよびエステル、例えば2−シクロヘキセン−1−イルグリシジルエーテル、ジグリシジルシクロヘキセン−4,5−ジカルボキシレート、グリシジルシクロヘキセン−4−カルボキシレート、グリシジル5−ノルボルネン−2−メチル−2−カルボキシレートおよびジグリシジルエンド−cis−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボキシレート。
【0061】
第1の形態によれば、生成物(A)は、不飽和エポキシドでグラフトされたポリオレフィンである。ポリオレフィンにより、1種以上のオレフィン単位、例えばエチレン、プロピレン、ブタ−1−エンまたは任意の他のα−オレフィン単位を含むホモポリマーまたはコポリマーが意味される。ポリオレフィンの例としては、以下が挙げられる:
−ポリエチレン、特に、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)および超低密度ポリエチレン(VLDPE)、ポリプロピレン、エチレン/プロピレンコポリマー、エラストマーポリオレフィン(例えばエチレン−プロピレン(EPRもしくはEPM)もしくはエチレン−プロピレン−ジエンモノマー(EPDM)またはシングルサイト触媒を用いて得られるメタロセンポリエチレン、
−スチレン/エチレン−ブテン/スチレンブロックコポリマー(SEBS)、スチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン/イソプレン/スチレンブロックコポリマー(SIS)またはスチレン/エチレン−プロピレン/スチレンブロックコポリマー、
−エチレンならびに不飽和カルボン酸の塩、不飽和カルボン酸のエステルおよび飽和カルボン酸のビニルエステルから選択される少なくとも1種の生成物のコポリマー(このポリオレフィンは、特に、エチレンおよびアルキル(メタ)アクリレートのコポリマーまたはエチレンおよび酢酸ビニルのコポリマーであり得る)。
【0062】
第2の形態によれば、生成物(A)は、α−オレフィンおよび不飽和エポキシドのコポリマー、有利には、エチレンおよび不飽和エポキシドのコポリマーである。有利には、不飽和エポキシドの量は、コポリマー(A)の15重量%までであり、エチレンの量については、コポリマー(A)の少なくとも50重量%であり得る。
【0063】
特に、エチレン、飽和カルボン酸ビニルエステルおよび不飽和エポキシドのコポリマーならびにエチレン、アルキル(メタ)アクリレートおよび不飽和エポキシドのコポリマーが言及され得る。好ましくは、アルキル(メタ)アクリレートは、2から10個の炭素原子を含む。使用し得るアルキルアクリレートまたはメタクリレートの例としては、特に、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレートである。
【0064】
本発明の1つの有利なバージョンによれば、生成物(A)は、エチレン、メチルアクリレートおよびグリシジルメタクリレートのコポリマーまたはエチレン、n−ブチルアクリレートおよびグリシジルメタクリレートのコポリマーである。特に、Arkemaにより、名称Lotader(登録商標)AX8900で販売されている生成物が使用可能である。
【0065】
本発明の別の形態によれば、生成物(A)は、2つのエポキシド官能基を有する生成物、例えばビスフェノールAのジグリシジル−エーテル(DGEBA)である。
【0066】
生成物(B)は、有利には、不飽和カルボン酸無水物を含むポリマーであり、この不飽和カルボン酸無水物は、グラフトまたは共重合のいずれかによりポリマーに導入されたものである。
【0067】
生成物(B)の構成成分として使用し得る不飽和ジカルボン酸無水物の例としては、特に、無水マレイン酸、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物およびテトラヒドロフタル酸無水物である。
【0068】
第1の形態によれば、生成物(B)は、不飽和カルボン酸無水物でグラフトされたポリオレフィンである。上記に見られるように、ポリオレフィンは、1種以上のオレフィン単位、例えばエチレン、プロピレン、ブタ−1−エンまたは他のα−オレフィン単位を含むホモポリマーまたはコポリマーである。このポリオレフィンは、後者が不飽和エポキシドでグラフトされたポリオレフィンであるとき、特に、生成物(A)について上記に列挙したポリオレフィンの例から選択され得る。
【0069】
第2の形態によれば、生成物(B)は、α−オレフィンおよび不飽和カルボン酸無水物のコポリマー、有利には、エチレンおよび不飽和カルボン酸無水物のコポリマーである。有利には、不飽和カルボン酸無水物の量は、コポリマー(B)の15重量%までであり、エチレン自体の量については、コポリマー(B)の少なくとも50重量%であり得る。
【0070】
特に、エチレン、飽和カルボン酸ビニルエステルおよび不飽和カルボン酸無水物のコポリマーならびにエチレン、アルキル(メタ)アクリレートおよび不飽和カルボン酸無水物のコポリマーが言及され得る。好ましくは、アルキル(メタ)アクリレートは、2から10個の炭素原子を含む。アルキルアクリレートまたはメタクリレートは、生成物(A)に関して、上記に引用したものから選択し得る。
【0071】
本発明の1つの有利なバージョンによれば、生成物(B)は、エチレン、アルキル(メタ)アクリレートおよび不飽和カルボン酸無水物のコポリマーである。好ましくは、生成物(B)は、エチレン、エチルアクリレートおよび無水マレイン酸のコポリマーまたはエチレン、ブチルアクリレートおよび無水マレイン酸のコポリマーである。特に、Arkemaにより、名称Lotader(登録商標)4700およびLotader(登録商標)3410の名称で販売されている生成物を使用することが可能である。
【0072】
上記第1および第2の形態によれば、生成物(B)の無水マレイン酸の一部が部分的に加水分解されていても、本発明の範囲を逸脱するものではない。
【0073】
本発明によれば、生成物(A)および生成物(B)の重量は、それぞれ[A]および[B]として表すとき、比[B]/[A]が、3から14の間、有利には4から9の間になるような量である。
【0074】
本発明による組成物において、架橋ポリオレフィンは、上記の生成物(A)、(B)および不飽和カルボン酸またはα、ω−アミノカルボン酸を含む少なくとも1種の生成物(C)から得られてもよい。
【0075】
生成物(C)は、有利には、不飽和カルボン酸またはα,ω−アミノカルボン酸を含むポリマーであり、共重合によりポリマーに導入されたこれらの酸の一方または他方を有するポリマーである。
【0076】
生成物(C)の構成成分として使用され得る不飽和カルボン酸の例は、特に、アクリル酸、メタクリル酸および生成物(B)の構成成分として引用した上記カルボン酸無水物であり、これらの無水物は完全に加水分解されている。
【0077】
生成物(C)の構成成分として使用され得るα、ω−アミノカルボン酸の例は、特に、6−アミノヘキサン酸、11−アミノウンデカン酸および12−アミノドデカン酸である。
【0078】
生成物(C)は、α−オレフィンおよび不飽和カルボン酸のコポリマー、有利には、エチレンおよび不飽和カルボン酸のコポリマーである。特に、生成物(B)の完全に加水分解されたコポリマーが挙げられる。
【0079】
本発明の1つの有利なバージョンによれば、生成物(C)は、エチレンおよび(メタ)アクリル酸のコポリマーまたはエチレン、アルキル(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリル酸のコポリマーである。(メタ)アクリル酸の量は、コポリマー(C)の10重量%まで、好ましくは、0.5から5重量%であり得る。アルキル(メタ)アクリレートの量は、一般に、コポリマー(C)の5から40重量%の間である。
【0080】
好ましくは、生成物(C)は、エチレン、ブチルアクリレートおよびアクリル酸のコポリマーである。特に、BASFにより、名称Lucalene(登録商標)3110で販売されている生成物が使用可能である。
【0081】
本発明によれば、生成物(A)、生成物(B)および生成物(C)の重量は、それぞれ[A]、[B]および[C]として表すとき、比[B]/([A]+[C])が1.5から8の間であり、生成物(A)および(B)の重量が[C]≦[A]となるような量である。
【0082】
有利には、比[B]/([A]+[C])は、2から7の間である。
【0083】
分散した架橋ポリオレフィン相は、1種以上の生成物(A)、1種以上の生成物(B)および適切な場合によって1種以上の生成物(C)の反応から、当然生じ得る。
【0084】
既に文献WO2011/015790に記載されているように、生成物(A)および(B)の反応性官能基の間の反応を加速させる触媒を使用することも可能である。したがって、触媒の例に関して前述の文献の教示が言及され、触媒は、生成物(A)、(B)および適切な場合によって(C)の合計重量に関して、0.1から3%の間、有利には、0.5から1%の間の量で使用し得る。
【0085】
本発明の組成物は、組成物の全重量に対して、
−45から95重量%、有利には55から90重量%の半芳香族ポリアミドおよび
−5から55重量%、有利には10から45重量%の架橋ポリオレフィンを含む。
【0086】
この組成物は、主にこれらの2種類の化合物、即ち、少なくとも1種の半芳香族ポリアミドおよび少なくとも1種の架橋ポリオレフィンで構成され得る。
【0087】
しかし、組成物は、これらの前述した化合物に加えて、他の化合物を含んでもよい。本発明の組成物は、特に、少なくとも1種の添加剤および/または少なくとも1種のさらなるポリマーを含み得る。
【0088】
添加剤
本発明の組成物は、同様に少なくとも1種の添加剤をさらに含み得る。
【0089】
この添加剤は、特に、加工助剤、可塑剤、充填剤、安定剤(UVおよび/または熱)、染料、離型剤、難燃剤、界面活性剤、光学的光沢剤、酸化防止剤およびそれらの混合物から選択され得る。
【0090】
加工助剤の中では、例えばステアリン酸カルシウムもしくは亜鉛のようなステアリン酸塩、天然ワックスおよびテトラフルオロエチレン(TFE)を含むポリマーなどが挙げられる。
【0091】
加工助剤の重量割合は、組成物の全重量に対して、通常0.01から0.3重量%の間、有利には0.02から0.1重量%の間である。
【0092】
可塑剤の中では、特にベンゼンスルホンアミド誘導体、中でもn−ブチルベンゼンスルホンアミド(BBSA)が使用され得る。
【0093】
可塑剤の重量割合は、組成物の全重量に対して、最大25重量%であり、有利には3から20重量%の間である。
【0094】
充填剤としては、シリカ、黒鉛、膨張黒鉛、カーボンブラック、炭素繊維、ガラスビーズ、カオリン、マグネシア、スラグ、タルク、ナノ充填剤(カーボンナノチューブ)、顔料、金属酸化物(酸化チタン)、金属およびファイバ(アラミド、ガラス、炭素)が挙げられる。
【0095】
充填剤の性質により、充填剤の量は、組成物の全重量に対して、50重量%まで、有利には30重量%までの量であり得る。
【0096】
さらなるポリマー
本発明による組成物は、1種以上のさらなるポリマー、特に少なくとも1種の第3のポリマー、例えば上記で参照した半芳香族ポリアミドおよび架橋ポリオレフィンとは異なるポリマーを含み得る。
【0097】
有利には、このさらなるポリマーは、特に、ポリアミド、ポリアミド−ブロック−エーテル、ポリエーテルアミド、ポリエステルアミド、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、(上記で検討した架橋ポリオレフィンと対照的に)非架橋ポリオレフィン、フルオロポリマーおよびその混合物から選択され得る。非架橋ポリオレフィンに関して、「架橋ポリオレフィン」の項目に記載したポリオレフィン、別言すると、架橋しないように単独で使用される場合の生成物(A)、(B)または(C)を言及することができ、これらの非架橋ポリオレフィンは知られており、さらに耐衝撃性改良剤として知られていることに留意されたい。
【0098】
さらなるポリマーは、同様に、デンプン(改変および/または配合されたものであり得る。)、セルロースまたはその誘導体(例えば酢酸セルロースもしくはセルロースエーテル)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸およびポリヒドロキシアルカノエートから選択されたものであり得る。
【0099】
好ましくは、さらなるポリマーは、脂肪族ポリアミドおよびポリアミド−ブロック−エーテルから選択される。
【0100】
組成物は、組成物の全重量に対して、20重量%までの少なくとも1種のさらなるポリマーを含み得る。
【0101】
また本発明は、上記組成物を調製するための方法に関する。この方法によれば、組成物は、溶融状態での押出、圧縮またはロールミル粉砕(roll milling)などの均一な混合物を得ることを可能にする任意の方法によって調製し得る。
【0102】
特に、本発明の組成物は、半芳香族ポリアミドならびに架橋ポリオレフィンを生成するための生成物(A)、(B)および場合によって(C)を、溶融状態で混合することによって調製することができる。
【0103】
場合によって用いられる添加剤および/またはさらなるポリマーは、半芳香族ポリアミドならびに生成物(A)、(B)および適切には(C)と同時に導入してもよく、または後の工程で導入してもよい。
【0104】
有利には、組成物は、圧縮により、特に、2軸押出機、混練り装置または密閉式混合機により、ペレットの形態で得ることができる。上述の調製方法によって得られる本発明による組成物のペレットは、その後、当業者に知られる手段(例えば射出成形機または押出機)を用いて、フィラメント、チューブ、フィルムおよび/または成形物などの形に転換することができる。
【0105】
また本発明の組成物の調製方法は、中間ペレット化を経ずに射出成形機への供給を行う二軸押出機またはフィラメント、チューブ、フィルムおよび/もしくは成形物を製造するための押出機を使用してもよい。
【0106】
それゆえ、本発明は、射出成形、押出、押出ブロー成形、共押出または多重射出(multiple injection)などの公知の転換プロセスによって上記の組成物から得られる材料または物品にも関するものである。
【0107】
本発明は、同様に、構造を形成するための、上述の組成物の使用に関する。この構造は、本発明の組成物のみから形成されるとき、単層構造であり得る。この構造は、少なくとも2つの層を含み、これらの異なる層の少なくとも1つが本発明の組成物で構成されるとき、多層であり得る。
【0108】
同様に、本発明は、本発明の組成物で全部または一部が形成されている部品に関する。この部品は、すぐ上に記載した単層または多層構造を含み得る。そのような部品は、特に射出成形部品、特に、押出、共押出または押出ブロー成形部品であり得る。チューブ、パイプ、リザーバ、ファイバ、フィルム、シートまたはプレートの形態をとり得る。
【0109】
本発明は、最後に、流体を保存または運搬するための該部品の使用に関する。この種の流体は、特に、燃料、冷媒、冷却液、ブレーキ流体、油、潤滑剤、油圧作動流体、尿素溶液をベースとする液体、化学的生成物、水または超過圧もしくは減圧下であり得る気体もしくは気体状のエマネーションもしくは蒸気から選択し得る。
【0110】
本発明の組成物から全部または一部が形成されている部品は、特に、手術用機器、包装、スポーツまたはレジャー用品の部品の全部または一部を製造するために使用され得る。この部品は、電気および電子部品の要素、例えば上記に列挙した流体の保存、運搬または移動のための工業用設備または自動車もしくはトラック用設備の全部または一部を製造するために使用することもできる。
【0111】
本発明の他の目的および利点は、下記の実施例を読むことでより明白となる。この実施例は、例示として提供されるものであって、何ら限定的なものではなく、以下のように特定される図に示す試験から得られるものである:
−
図1は、キシレンを用いて150℃で30分間処理することにより、分散した架橋ポリオレフィン相を溶解させた後の組成物9の試料の走査電子顕微鏡写真(SEM)である。
−
図2は、キシレンを用いて150℃で30分間処理することにより、分散した架橋ポリオレフィン相を溶解させた後の組成物1の試料の走査電子顕微鏡写真(SEM)である。
これらの2つの顕微鏡写真は同じ縮尺である。
【実施例】
【0112】
組成物の処方
試験した組成物は、以下の生成物から調製した:
11/10.T:半芳香族ポリアミド[11/10.Tのモル比が0.7であり、11−アミノカルボン酸、1,10−デカンジアミンおよびテレフタル酸の重縮合から得られ、ガラス転移温度Tgが88℃であり、融解温度Tfが260℃であり、固有粘度が1.22であり(ISO基準307にしたがって測定)、融解エンタルピーが47J/gである。]
Lotader AX8900:生成物(A)に対応する、エチレン、メチルアクリレートおよびグリシジルメタクリレートのコポリマー[Et/MA/GMA−68/24/8(重量比)]
Lotader 4700:生成物(B)に対応する、エチレン、エチルアクリレートおよび無水マレイン酸のコポリマー[Et/EA/MAH−69/30/1(重量比)]
Lotader 3410:生成物(B)に対応する、エチレン、ブチルアクリレートおよび無水マレイン酸のコポリマー[Et/BA/MAH−81/16/3(重量比)]
Lucalene 3110:生成物(C)に対応する、エチレン、ブチルアクリレートおよびアクリル酸のコポリマー[Et/BA/AA−88/8/4(重量比)]
Iodine 201:KIおよびCuIをベースとする酸化防止添加剤
【0113】
組成物1から9は、全て、下記表1に詳細に設定されている処方にしたがって二軸押出機で調製した。架橋ポリオレフィンの量は、組成物1から9のそれぞれの全重量の30重量%に相当する。
【0114】
組成物4、5および7から9は、本発明による組成物であり、一方、組成物1、2、3および6は、本発明の範囲外の組成物である。特に、組成物2は、文献WO2011/015790に記載の組成物Eに対応する。
【0115】
実施した試験
組成物1から9のモルホロジーを、走査電子顕微鏡(SEM)で観察した。架橋ポリオレフィンのノジュールの体積平均径(Dvと示す。)を測定し、表1に示した。
【0116】
溶融状態の流動性についての指数[流動性指数またはメルト・フロー・インデックス(MFI)とも呼ばれる。]を、ASTM基準D1238にしたがって、300℃で5kg重量下に測定し、値を表1に示した。
【0117】
プレート/プレート粘度測定は、300℃(10rad/秒)で実施した。初期値および30分後の値ならびに30分後の値と初期値との差を、表1に示す。
【0118】
次いで、組成物1から9を押出し、直径8mmおよび厚さ1mm(8*1mm)のチューブを形成した。押出転換の間、堆積物(「ドロール」)が、押出ダイ上に形成されるのが観察された。押出チューブの内表面および外表面の外観も調べた。観察結果を表1に示す。表中、以下の略称は、それぞれ以下の意味を有する。
−「−」:チューブの表面は粗く、ダイドロールがある。
−「+」:チューブの表面は平滑であるが、光沢がなく、ダイドロールはわずかしかない。
−「++」:チューブの表面は平滑で光沢があり、ダイドロールはごくわずかしかないまたは全くない。
【0119】
【表1】
【0120】
比較組成物1および2とは対照的に、本発明の組成物4、5および7から9は全て、架橋ポリオレフィンのノジュールの体積平均径Dvの値が1μm未満である細かなモルホロジーを有していることが認められる。特に言及されるのは
図1であり、この図は、
図2に示される組成物1のノジュールと比較して、組成物9のノジュールが細かく分散していることを明確に示している。
【0121】
組成物1から5を一方の事例および組成物6から9を他方の事例として、[B]/[A]または[B]/([A]+[C])が大きいほど、モルホロジー(Dv)が細かいことが示される。同様に、[B]/[A]または[B]/([A]+[C])が高くなるほどレオロジーが良好となるが、この理由は、組成物がより流動的でより安定である(熱による変化が大きくないことを意味する。)ためであり、押出による転換がより容易になる。
【0122】
さらに、本発明の組成物4、5および7から9の押出転換において、押出ダイ上へのドロールの発生がなく(またはほとんどなく)、これらの組成物4、5および7から9から押出されたチューブは全て、内表面および外表面が平滑で光沢を有するものであったことが認められる。