特許第5758631号(P5758631)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5758631タッチ面上の制御軌跡の角度変化の検出方法、およびそれに対応する制御モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5758631
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】タッチ面上の制御軌跡の角度変化の検出方法、およびそれに対応する制御モジュール
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20150716BHJP
【FI】
   G06F3/041 380H
   G06F3/041 310
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2010-538759(P2010-538759)
(86)(22)【出願日】2008年12月19日
(65)【公表番号】特表2011-507120(P2011-507120A)
(43)【公表日】2011年3月3日
(86)【国際出願番号】EP2008068025
(87)【国際公開番号】WO2009083497
(87)【国際公開日】20090709
【審査請求日】2011年12月6日
【審判番号】不服2014-13404(P2014-13404/J1)
【審判請求日】2014年7月10日
(31)【優先権主張番号】07/08910
(32)【優先日】2007年12月20日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505140568
【氏名又は名称】ダヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【弁理士】
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100087893
【弁理士】
【氏名又は名称】中馬 典嗣
(72)【発明者】
【氏名】ブリュノ コッタレル
(72)【発明者】
【氏名】フローラン ドゥ ヴォー ビドン
(72)【発明者】
【氏名】セドリック シャルトラン
【合議体】
【審判長】 小曳 満昭
【審判官】 和田 志郎
【審判官】 千葉 輝久
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−136891(JP,A)
【文献】 特開平11−219432(JP,A)
【文献】 特開2003−92607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチ面上の制御軌跡の要素角度の特定方法であって、
− あらかじめ定められた期間(dT)において、直交し合う2つの軸(X、Y)に沿って、2つの要素経路の絶対値(|dX|、|dY|)を測定するステップと、
− 前記要素経路の絶対値(|dX|、|dY|)と、参照データ表の要素経路の単位値(Xu、Yu)の範囲とを比較するステップと、
− 角度を表わす参照データを、前記制御軌跡の要素角度(dθ)に割り当てるステップとを含むことを特徴とする特定方法。
【請求項2】
角度を表わす前記参照データは、整数または文字であることを特徴とする、請求項1に記載の特定方法。
【請求項3】
中間要素角度(dθ’)を、まず特定し、その後、前記要素経路の各々の向きに基づいて、該中間要素角度(dθ’)から、1つの軸(X、Y)に相対的に、前記制御軌跡の要素角度(dθ)を特定することを特徴とする、請求項1または2に記載の特定方法。
【請求項4】
前記2つの要素経路の絶対値(|dX|、|dY|)の和が、あらかじめ定められた閾値未満である場合には、前記参照データは、角度0°を表わすものとすることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1つに記載の特定方法。
【請求項5】
1つの軸(X、Y)に沿う要素経路の絶対値(|dX|、|dY|)が、その軸に沿う、前記参照データ表中の要素経路の最大単位値(|Xu|、|Yu|)を超過している場合には、その軸に沿う要素経路の絶対値(|dX|、|dY|)を整数値で割ることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1つに記載の特定方法。
【請求項6】
タッチ面上の制御軌跡の角度変化の検出方法であって、
− 基本プロセスとして、請求項1〜5のいずれか1つに記載の、制御軌跡の要素角度の特定方法を実行して、割り当てられた要素角度(dθ)を記憶させるステップと、
− 前記基本プロセスを繰り返して、前記制御軌跡の角度変化を特定するために、前記割り当てられた要素角度(dθ)を連続的に収集するステップとを含むことを特徴とする検出方法。
【請求項7】
前記制御軌跡は、あらかじめ定められた形状判定基準に十分に一致する形状を呈する制御軌跡を保有する参照制御軌跡ライブラリと比較することを特徴とする、請求項6に記載の検出方法。
【請求項8】
前記制御軌跡の形状を、連続する少なくとも2つの要素角度(dθ)の差に基づいて特定することを特徴とする、請求項6に記載の検出方法。
【請求項9】
前記制御軌跡の回転の向きを、連続する少なくとも2つの要素角度(dθ)の差に基づいて特定することを特徴とする、請求項6または8に記載の検出方法。
【請求項10】
前記制御軌跡に、リング形状を有するタッチ面上の位置を割り当てるために、前記回転の向き、および前記要素角度(dθ)と、さらなる参照データ表とを比較することを特徴とする、請求項9に記載の検出方法。
【請求項11】
前記制御軌跡が360°を超過するときに、回転カウンタをインクリメントすることを特徴とする、請求項9または10に記載の検出方法。
【請求項12】
請求項6〜11のいずれか1つに記載の、制御軌跡の角度変化の検出方法を実行するための処理ユニットを備えていることを特徴とする、タッチ面を有する制御モジュール。
【請求項13】
前記制御軌跡を表示することができる、前記処理ユニットに接続されたディスプレイスクリーンを備えていることを特徴とする、請求項12に記載の制御モジュール。
【請求項14】
空調システム、オーディオシステム、ナビゲーションシステム、電話システム、電動窓開閉装置、車外バックミラーを調整するための制御、サンルーフの位置を調整するための制御、車内照明の制御、車内の座席を調整するための制御、などの自動車用電気機器または電子機器の少なくとも1つのセットの機能の制御を行うことができることを特徴とする、請求項12または13に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチ面上の制御軌跡の要素角度の特定方法、およびタッチ面上の制御軌跡の角度変化の検出方法に関する。
【0002】
本発明は、さらに、特に感圧抵抗体素子(「感圧抵抗体素子」を表わすFSRという名称によっても知られているセンサ)を用いた、対応するタッチ面を有する制御モジュールにも関する。
【0003】
本発明は、マルチメディアスクリーン、または空調システムの制御などの、自動車の電気機器または電子機器の制御に適用しうるものである。
【背景技術】
【0004】
最近になって、これらの制御のために、ユーザの指による単純な押圧を検出し、検出されたタッチ面上の押圧位置、および/またはこの押圧によるタッチ面の変位に応じて、特定のタイプの作用または制御を行うことができるタッチ面を利用することが提案されている。
【0005】
このタッチ面には、設置の容易さおよび強健さのゆえに、例えばキャパシタ技術や光学技術などの他の同様の技術を凌ぐような感圧抵抗体素子技術が、ますます用いられている。
【0006】
このようなセンサは、例えば「デジタイザパッド」という名称で知られており、特許文献1〜4に、従来技術として記載されている。
【0007】
これらのセンサは、例えば導電層と抵抗層との間に挟まれた半導電層を有している。FSR層に圧力をかけると、FSR層のオーム抵抗は低下する。したがって、適切な電圧を印加することによって、かけられた圧力、および/または圧力をかけられた表面の位置を特定することができる。
【0008】
センサから伝達された座標が、その後、ユーザの指によって触れられたゾーンに関連した特定の電気的機能の制御のために利用される。
【0009】
例えば円形の制御軌跡などの、ユーザの指の特定の軌跡を検出したいような場合には、指を案内する形状を有するタッチ面が、利用されている。例えばリング状、円弧バンド状、または直線バンド状のタッチ面を有するセンサが公知である。
【0010】
さらに、タッチ面が任意の形状を有しているときに、指によってなされた制御軌跡の角度変化を計算するためのアルゴリズムを実行する処理ユニットを有する、別の制御モジュールが公知である。
【0011】
このような角度変化の計算は、具体的には、制御のために指によってたどられた経路に関する情報に基づいて、かつ「逆正接」関数などの三角関数を用いて行われる。
【0012】
しかしながら、このような関数を用いるためには、相当な記憶容量を必要とし、多くの場合、自動車産業に関わる規制と両立しないほどの長い計算時間を要する。
【0013】
実際には、自動車の電子機器または電気機器を制御するためのコストおよび寸法に関する要件として、例えば車両の正面コンソールに組み込むことができる、低容量で小型のマイクロコントローラの使用が必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第4810992号公報
【特許文献2】米国特許第5008497号公報
【特許文献3】フランス国特許公開第2683649号公報
【特許文献4】ヨーロッパ特許公開第0541102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、低容量かつ低価格のマイクロコントローラの使用に適する、タッチ面上の制御軌跡の角度変化を特定することができる検出方法、およびタッチ面を有する制御モジュールを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的を達成するために、本発明は、次のステップを含むことを特徴とする、タッチ面上の制御軌跡の要素角度の特定方法を提供するものである。
− あらかじめ定められた期間において、直交し合う2つの軸に沿って、2つの要素経路の絶対値を測定するステップ。
− これらの要素経路の絶対値と、参照データ表の要素経路の単位値の範囲とを比較するステップ。
− 角度を表わす参照データを、制御軌跡の要素角度に割り当てるステップ。
【0017】
タッチ面上の制御軌跡の要素角度のこの特定方法の他の特性として、次のことが挙げられる。
− 角度を表わす参照データは、整数または文字である。
− 中間要素角度が、まず特定され、その後、要素経路の各々の向きに基づいて、この中間要素角度から、1つの軸に相対的に、制御軌跡の要素角度が特定される。
− 2つの要素経路の絶対値の和が、あらかじめ定められた閾値未満である場合には、上述の参照データは、角度0°を表わす。
− 1つの軸に沿う要素経路の絶対値が、その軸に沿う、参照データ表中の要素経路の最大単位値を超過している場合には、その軸に沿う要素経路の絶対値が整数値で割られる。
【0018】
本発明は、さらに、次のステップを含むことを特徴とする、タッチ面上の制御軌跡の角度変化の検出方法を提供するものである。
− 基本プロセスとして、上述の、制御軌跡の要素角度の特定方法を実行して、割り当てられた要素角度を記憶させるステップ。
− この基本プロセスを繰り返して、制御軌跡の角度変化を特定するために、割り当てられた要素角度を連続的に収集するステップ。
【0019】
タッチ面上の制御軌跡の角度変化のこの検出方法の他の特性として、次のことが挙げられる。
− 制御軌跡は、あらかじめ定められた形状判定基準に十分に一致する形状を有する制御軌跡を保有する参照制御軌跡ライブラリと比較される。
− 制御軌跡の形状は、連続する少なくとも2つの要素角度の差に基づいて特定される。
− 制御軌跡の回転の向きは、連続する少なくとも2つの要素角度の差に基づいて特定される。
− 制御軌跡に、リング形状を有するタッチ面上の位置を割り当てるために、回転の向きおよび要素角度と、さらなる参照データ表とが比較される。
− 制御軌跡が360°を超過するときに、回転カウンタがインクリメントされる。
【0020】
本発明は、さらに、上述の、制御軌跡の角度変化の検出方法を実行するための処理ユニットを備えていることを特徴とする、タッチ面を有する制御モジュールを提供するものである。
【0021】
この制御モジュールの他の特性として、次のことが挙げられる。
− この制御モジュールは、制御軌跡を表示することができる処理ユニットに接続されたディスプレイスクリーンを備えている。
− この制御モジュールは、空調システム、オーディオシステム、ナビゲーションシステム、電話システムなどの自動車用電気機器または電子機器の少なくとも1つを含むセットの動作の制御、電動窓開閉装置の制御、車外バックミラーを調整するための制御、サンルーフの位置を調整するための制御、車内照明の制御、車内の座席を調整するための制御のうちの少なくとも1つを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】制御軌跡の種々の形状が示されているタッチ面の略図である。
図2】参照データ表を表わす図である。
図3】中間要素角度を例示的に説明する図である。
図4】制御軌跡の要素角度の特定方法の各ステップを例示的に示すフローチャートである。
図5】制御軌跡の角度変化の検出方法の各ステップを例示的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
添付図面を参照して、本発明に関する以下の説明を読むことによって、本発明の他の利点および特性が明白になると思う。
【0024】
添付図面において、同等の部分には、同一の符号が付してある。明瞭化のために、制御軌跡の要素角度を特定する方法のステップには、100からの符号を付してあり、角度変化を検出する方法のステップには、200からの符号が付してある。
【0025】
図1は、例えば空調システム、オーディオシステム、ナビゲーションシステム、電話システムなどの自動車用電気機器、または電子機器の少なくとも1つを含むセットの動作の制御、電動窓開閉装置の制御、車外バックミラーを調整するための制御、サンルーフの位置を調整するための制御、車内照明の制御、または車内の座席を調整するための制御を行うための電気的制御モジュールに組み込みうるようになっているタッチ面1を示している。
【0026】
タッチ面1には、例えば感圧抵抗体素子から成るセンサ(「感圧抵抗体素子」を表わすFSRという名称によっても知られているセンサ)が用いられており、ユーザの指によって押されたタッチ面1上の押圧ゾーンに対応する信号を、タッチ面1から制御モジュールの処理ユニットに供給することができる。
【0027】
押圧ゾーンは、制御のために指によって加えられた圧力に応答して、例えばタッチ面1の感圧抵抗体素子から成るセンサのオーム抵抗が変化したゾーンである。
【0028】
適切な電圧の印加によって、処理ユニットは、タッチ面1にかけられた圧力、および/または圧力がかけられた表面部分の位置に対応する信号を測定することができる。
【0029】
例えば8ビットタイプのマイクロコントローラなどの、制御モジュールの処理ユニットは、制御軌跡の角度変化を検出する方法を実行することができるソフトウェアを格納するためのプログラムメモリを有している。
【0030】
制御軌跡の4つの例が、図1に示されている。その第1の例は直線形状aを呈しており、第2の例は楕円形状bを呈しており、第3の例は螺旋形状cを呈しており、第4の例は任意の形状dを呈している。
【0031】
制御モジュールは、図1に示されているような制御軌跡を表示することができる、処理ユニットに接続されたディスプレイスクリーンを備えていてもよい。
【0032】
タッチ面1上の制御軌跡の要素角度を特定する方法は、あらかじめ定められた期間dTにおいて、互いに直交する2つの軸X、Yに沿って、2つの要素経路の絶対値|dX|、|dY|を測定する最初のステップを含んでいる。
【0033】
あらかじめ定められた期間dTは、処理ユニットのクロックの周期であり、例えば約10ミリ秒であることが好ましい。
【0034】
要素経路の絶対値|dX|、|dY|は、あらかじめ定められた期間dTにおける、タッチ面1上の制御軌跡の要素経路の、互いに直交する2つの軸X、Yに沿った投影を表わしている。図1は、経路AB、および軸X、Yに沿った投影である要素経路の絶対値|dX|、|dY|の一例を示している。
【0035】
次に、要素経路の絶対値|dX|、|dY|を、参照データ表(図2)の要素経路の単位値YuおよびYuの範囲と比較する。図2の例においては、要素経路の単位値Xu、Yuの範囲が、互いに直交する2つの軸XおよびYの各々に対して、0〜6の範囲の整数として概略的に示してある。
【0036】
一例として、要素経路の単位値Xu、および/またはYuの1範囲長は、約2mmである。これは、タッチ面上の指の動きの検出には十分である。
【0037】
要素経路の単位値Xu、Yuの範囲の各対に対して、参照データ表は、対応する角度を表わす参照データを与える。
【0038】
この比較によって、その後、制御軌跡の要素角度dθに対応する角度を表わす参照データを割り当てることができる。
【0039】
したがって、この方法には、三角関数の機能を部分的に行うために、あらかじめ入力された参照データ表を用いる。それによって、制御軌跡の要素角度dθに関する情報を、迅速に、かつ計算の必要なく得ることができる。
【0040】
参照データは、整数または文字であることが好ましい。それによって、多量の記憶容量を必要とする10進数を用いることを避けることができる。図2の参照データ表においては、角度を表わす参照データとして、正又は負の整数(−1、0、1、2、3、4、5、6)が割り当てられている。
【0041】
角度を特定するこの方法は、まず、中間要素角度dθ’(図3)を特定し、次に、各要素経路dX、dYの向きに基づいて、この中間要素角度dθ’から、制御軌跡の、軸Xに対する要素角度dθを特定する、さらなるステップを含んでいると有利である。
【0042】
最初に、中間要素角度dθ’を、第1四半円Q1上で特定し、次いで、制御軌跡の要素角度dθが、第1四半円Q1(0°〜90°)、第2四半円Q2(90°〜180°)、第3四半円Q3(180°〜270°)、第4四半円Q4(270°〜360°)のいずれに存在しているかを特定することが好ましい。
【0043】
例えば要素経路dX、dYが、それぞれ軸X、Yと同じ向きを向いていれば、要素角度dθは、第1四半円Q1内、すなわち0°〜90°の範囲にある。したがって、要素角度dθは、中間要素角度dθ’に等しい。
【0044】
他方、第1の軸Xに沿う要素経路dXが、この軸Xと同じ向きを向いているが、第2の軸Yに沿う要素経路dYが、この軸Yと逆の向きを向いている場合には、要素角度dθは、第4四半円Q4内、言い換えると、0°〜−90°、すなわち270°〜360°の範囲にある。したがって、要素角度dθは、中間要素角度dθ’と大きさが等しいが、符号が逆である。
【0045】
また、要素経路dXが、軸Xと逆の向きを向いているが、要素経路dYが、軸Yと同じ向きを向いている場合には、要素角度dθは、第2四半円Q2内、言い換えると、90°〜180°の範囲にある。したがって、要素角度dθは、180°から中間要素角度dθ’を引いた角度に等しい。
【0046】
最後に、要素経路dXおよびdYが、それぞれ軸XおよびYの向きと逆の向きを向いている場合には、要素角度dθは、第3四半円Q3内、すなわち、180°〜270°の範囲にある。したがって、要素角度dθは、180°と中間要素角度dθ’との和に等しい。
【0047】
このように、要素角度dθを計算するために、このように角度を分割することによって、参照データ表の規模を小さくすることができる。実際、第1四半円Q1の部分の角度を表わす値を考慮するだけで十分である。それによって、全円にわたる角度を特定することができる。したがって、参照データ表の規模は、要素角度dθに対する所望の解像度に依存する。
【0048】
したがって、図2に示されている例においては、参照データ表は、0°〜90°の範囲にある角度を表わすデータを有している。第1四半円Q1は、複数のセクタに分割されており、各セクタは、そのセクタの角度を表わすデータを割り当てられている。例えば第1四半円Q1は、11.25°の角度分解能を有する8つのセクタに分割されている(図3を参照)。
【0049】
2つの要素経路の絶対値|dX|と|dY|との和が、あらかじめ定められた閾値未満であるときに、参照データは角度0°を表わすとすることが有利である。
【0050】
図2の参照データ表においては、負の数(−1)が、角度0°を表わしている。この例においては、実際、2つの要素経路の絶対値|dX|と|dY|との和が2mm以下である経路においては、制御軌跡の要素角度dθは0°であるとみなされる。
【0051】
軸X、Yに沿う要素経路の絶対値|dX|、|dY|が、参照データ表中の、この軸X、Yに沿う要素経路の最大単位値|Xu|、|Yu|より大きいときには、要素経路の絶対値|dX|、|dY|を整数値で、望ましくは2で割ることが好ましい。
【0052】
そのように、参照データ表の規模が限定され、さらに、異常な要素経路値を識別して取り除くことができる。
【0053】
制御軌跡の角度変化を特定するために、角度変化検出方法は、制御軌跡の要素角度を特定する前述の方法を実行し、かつ割り当てられた要素角度dθを記憶する基本プロセスを含んでいる。
【0054】
次いで、この基本プロセスが繰り返され、割り当てられた要素角度dθが、制御軌跡の角度変化を特定するために連続的に収集される。
【0055】
したがって、制御軌跡の形状を識別することができる。
【0056】
例えば得られた制御軌跡が、あらかじめ定められた形状判定基準に十分に合致する形状を呈する制御軌跡を保有する参照制御軌跡ライブラリと比較される。
【0057】
あるいは、連続する少なくとも2つの、軸X、Yに相対的な要素角度dθの差に基づいて、制御軌跡の形状が特定される。
【0058】
実質的に円形形状の制御軌跡が特定された場合には、さらに、連続する少なくとも2つの、軸X、Yに相対的な要素角度dθの差に基づいて、制御軌跡の回転の向きを特定することができる。
【0059】
制御軌跡に、タッチ面上の、リング形状を有する位置を割り当てるために、回転の向きおよび要素角度を、さらなる参照データ表と比較すると有利である。
【0060】
それによって、ユーザの指によってたどられた、実質的に円形の運動の中心位置について知る必要がなくなる。また、中心位置は、制御軌跡が例えば楕円形状を示す場合には、さまざまに変化し得る。
【0061】
さらに、制御軌跡の角度変化が360°を超過するたびに、回転カウンタをインクリメントすることもできる。
【0062】
図4は、要素角度を特定するための例示的な一方法の各ステップを示している。
【0063】
この方法の実行は、その初期段階において、タッチ面1への最初の押圧点Aの座標X0およびY0を測定することによって開始される(ステップ100)。
【0064】
あらかじめ定められた期間dTの後、タッチ面1への2番目の押圧点Bの新しい座標X1およびY1が測定され、次に、2つの要素経路の絶対値|dX|および|dY|が特定される(ステップ101)。
【0065】
その後、ステップ102において、2つの要素経路の絶対値|dX|、|dY|の和があらかじめ定められた閾値より大きい否かを検証するためのチェックがなされる。
【0066】
2つの要素経路の絶対値|dX|、|dY|の和が、あらかじめ定められた閾値以下である場合には、要素角度dθに、角度0°を表わす参照データが割り当てられ(ステップ103)、制御軌跡の要素角度を特定する方法は終了する(ステップ104)。
【0067】
反対に、2つの要素経路の絶対値|dX|、|dY|の和が、あらかじめ定められた閾値より大きい場合には、十分な精度で要素角度dθを特定することができると評定される。
【0068】
後者の場合には、次に、2つの要素経路の絶対値|dX|、|dY|の一方(または両方)が、参照データ表の要素経路の最大単位値|Xu|、|Yu|より大きいか否かが特定される(菱形105)。
【0069】
大きい場合には、参照データ表の要素経路の最大単位値|Xu|、|Yu|より小さい、要素経路の絶対値|dX|、|dY|が得られるまで、要素経路の絶対値|dX|、|dY|が、例えば2で割られる(ステップ106)。
【0070】
次に、ステップ107において、この時点では、要素経路の絶対値|dX|、|dY|は、参照データ表の要素経路の最大単位値|Xu|、|Yu|と矛盾しておらず、これらの要素経路の絶対値|dX|、|dY|が、参照データ表の要素経路の単位値Xu、Yuの範囲と比較された後、制御軌跡の中間要素角度dθ’に、角度を表わす参照データが割り当てられる。
【0071】
その後、各要素経路dX、dYの向きに基づいて、軸X、Yに相対的に、制御軌跡の要素角度dθが特定される。
【0072】
これをなすために、第1の軸Xに沿う要素経路dXが、軸Xと逆向きであるか否かが特定される(菱形108)。
【0073】
要素経路dXが、軸Xと逆向きである場合には、第2の軸Yに沿う要素経路dYが、この軸Yと逆向きであるか否かが特定される(菱形109)。
【0074】
要素経路dYが、軸Yと逆向きである場合には、ステップ110において、要素角度dθは、180°に中間要素角度dθ’を加えた角度に等しいとされる。
【0075】
要素経路dYが、軸Yと同じ向きである場合には、ステップ111において、要素角度dθは、180°から中間要素角度dθ’を引いた角度に等しいとされる。
【0076】
他方、第1の軸Xに沿う要素経路dXが、軸Xと同じ向きであり、かつ第2の軸Yに沿う要素経路dYが、この軸Yと逆向きである場合には、ステップ113において、要素角度dθは、中間要素角度dθ’と大きさが等しく、符号が逆であるとされる。
【0077】
最後に、要素経路dX、dYが、それぞれ軸X、Yと同じ向きである場合には、ステップ114に進んで、要素角度dθに中間要素角度dθ’が割り当てられる。
【0078】
次に、特定された要素角度dθが記憶され、第2の押圧点Bの座標Y1、X1の値が、第1の押圧点Aの座標X0、Y0に割り当てられ、ステップ104において、この方法は終了する。
【0079】
この基本プロセスを繰り返して、制御軌跡の角度変化を特定するために、割り当てられた要素角度dθを連続的に収集することが有利である。
【0080】
図5は、制御軌跡が、実質的に円形の形状を有していることが特定されているか、または、タッチ面が、リングなどの実質的に円形の形状を呈している場合の、角度変化を検出する方法の特定の一実施形態の各ステップを示している。
【0081】
この方法は、前の要素角度dθの値を初期化する第1の初期化段階(ステップ200)を含んでいる。
【0082】
次に、ステップ201において、タッチ面上で、経路が作成されつつあるか否かが特定される。経路が観察されない場合には、ステップ202において、前の要素角度dθの値が再初期化されて、この方法は、ステップ203で終了する。
【0083】
経路が観察される場合には、基本プロセスであるステップ204において、制御軌跡の要素角度dθを特定する方法が実行され、割り当てられた要素角度dθが記憶される。
【0084】
要素角度dθが0°である場合には、この方法はステップ205で終了する。
【0085】
要素角度dθが0°でない場合には、ステップ206において、前の要素角度dθが0°であれば、ステップ207において、その要素角度dθが、前の要素角度dθに割り当てられ、この方法はステップ205において終了する。
【0086】
ステップ206において、前の要素角度dθが0°でなければ、ステップ207において、連続する2つの要素角度dθの間の差が計算され、かつこの差が180°であるか否かが特定される。この差が180°である場合には、ステップ208において、制御軌跡が完全に半回転していることが特定され、ステップ209に進む。
【0087】
この差が180°でない場合には、連続する2つの要素角度dθの間の差の符合が特定される。この符合が正の場合には、要素角度dθは前の要素角度dθより大きく、したがって、制御軌跡は先験的に反時計回りの向きに回転している。
【0088】
その後、ステップ211において、前のステップで、やはり、反時計回りの向きの回転が特定されていたか否かを検証するためのチェックがなされる。反時計回りの向きの回転が特定されていた場合には、ステップ212において、反時計回りの向きの回転であると確認される。
【0089】
前のステップにおいて、反時計回りの向きの回転が特定されていなかった場合には、ステップ213において、回転の向きは不定であるとされ、この方法は、次のステップ209に進む。
【0090】
他方、上述の符合が負の場合には、要素角度dθは前の要素角度dθより小さく、制御軌跡は先験的に時計回りの向きに回転している(ステップ214)。
【0091】
次に、ステップ215において、前のステップで、やはり、時計回りの向きの回転が特定されていたか否かを検証するためのチェックがなされる。やはり、時計回りの向きの回転が特定されていた場合には、ステップ216において、時計回りの向きの回転であると確認される。
【0092】
前のステップにおいて、時計回りの向きの回転が特定されていなかった場合には、ステップ213において、回転の向きは不定であるとされ、この方法は、次のステップ209に進む。
【0093】
タッチ面がリング形状を呈しており、かつステップ209において、回転の向きが不定でない場合には、ステップ210において、回転の向きおよび要素角度dθが、制御軌跡にタッチ面上の位置を割り当てるためのさらなる参照データ表と比較される。
【0094】
次に、ステップ207において、特定されたばかりの要素角度dθの値が、直前の要素角度dθの値に割り当てられて、直前の要素角度dθの値が再初期化される。したがって、この方法を繰り返すことができる。
【0095】
このような検出方法によって、タッチ面上で制御を行っている指の位置を、迅速かつ低費用で特定することができることは明らかである。
【符号の説明】
【0096】
a 直線形状
b 楕円形状
c 螺旋形状
d 任意の形状
dX、dY 要素経路
dθ 要素角度
dθ’ 中間要素角度
Q1 第1四半円
Q2 第2四半円
Q3 第3四半円
Q4 第4四半円
X、Y 軸
Xu、Yu 要素経路の単位値
図1
図2
図3
図4
図5