(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5758642
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】水晶振動子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H03H 3/02 20060101AFI20150716BHJP
H01L 41/18 20060101ALI20150716BHJP
H01L 41/22 20130101ALI20150716BHJP
H01L 41/09 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
H03H3/02 C
H01L41/18 101A
H01L41/22 Z
H01L41/08 C
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-25722(P2011-25722)
(22)【出願日】2011年2月9日
(65)【公開番号】特開2012-165303(P2012-165303A)
(43)【公開日】2012年8月30日
【審査請求日】2014年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズンホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】井口 康博
(72)【発明者】
【氏名】丸山 貴史
【審査官】
▲高▼橋 徳浩
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭57−174912(JP,A)
【文献】
特開2006−269738(JP,A)
【文献】
特開2008−072463(JP,A)
【文献】
特開平02−263426(JP,A)
【文献】
特開2007−142795(JP,A)
【文献】
特開2008−252769(JP,A)
【文献】
特開2009−027318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H3/007−H03H3/10
H03H9/00−H03H9/76
H01L 41/09
H01L 41/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一主表面と、第一主表面に対向する第二主表面とを備え、複数の水晶振動子が形成される製品領域を備えた水晶ウェハにおいて、
前記水晶ウェハの前記第一主表面と前記第二主表面に、耐蝕膜を成膜する工程と、
前記第一主表面の前記耐蝕膜上に第一レジストを塗布する工程と、
前記第二主表面の前記耐蝕膜上に第二レジストを塗布する工程と、
前記第一主表面の製品領域外に、アライメントマークを露光する工程と、
前記第一レジストを現像し、前記耐蝕膜を露出させ、前記アライメントマークを形成する工程と、
前記アライメントマークを認識して前記第一主表面に水晶振動子の外形パターンを露光する工程と、
前記第一主表面の前記アライメントマークを用いて第二主表面に水晶振動子の外形パターンを露光する工程と、
前記水晶ウェハを現像液に浸漬し、前記第一レジストと前記第二レジストとを同時に現像する工程と、
水晶振動子の外形パターンが形成された前記第一レジストおよび前記第二レジストを用いて、前記第一主表面と前記第二主表面の耐蝕膜をエッチングする工程と、
前記水晶ウェハをエッチングし、水晶振動子を形成する工程と、
を有することを特徴とする水晶振動子の製造方法。
【請求項2】
前記アライメントマークを形成する工程では、
前記製品領域外で、かつ前記アライメントマークを含む領域の前記第一レジストを現像することを特徴とする請求項1記載の水晶振動子の製造方法。
【請求項3】
第一主表面と、第一主表面に対向する第二主表面とを備え、複数の水晶振動子が形成される製品領域を備えた水晶ウェハにおいて、
前記水晶ウェハの前記第一主表面と前記第二主表面に、耐蝕膜を成膜する工程と、
前記第一主表面の前記耐蝕膜上に第一レジストを塗布する工程と、
前記第二主表面の前記耐蝕膜上に第二レジストを塗布する工程と、
前記第一主表面の製品領域に水晶振動子の外形パターンと製品領域外にアライメントマークとを露光する工程と、
前記水晶ウェハの製品領域外で、かつ前記アライメントマークを含む領域の前記第一レジストを現像し、前記耐蝕膜を露出させ、前記アライメントマークを形成する工程と、
前記アライメントマークを用いて第二主表面に水晶振動子の外形パターンを露光する工程と、
前記水晶ウェハを現像液に浸漬し、前記第一レジストと前記第二レジストを同時に現像する工程と、
水晶振動子の外形パターンが形成された前記第一レジストおよび前記第二レジストを用いて、前記第一主表面と前記第二主表面の耐蝕膜をエッチングする工程と、
前記水晶ウェハをエッチングし、水晶振動子を形成する工程と、
を有することを特徴とする水晶振動子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶ウェハから、エッチングによって水晶振動子を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化・薄型化に伴い、圧電振動デバイス、たとえば、クロック用の水晶振動子等も小型化への対応が求められている。
【0003】
特許文献1に示されるように、フォトリソグラフィ技術およびウェットエッチングによって、一枚の水晶ウェハから多数の水晶振動子を製造する方法が、知られている。
【0004】
従来の水晶振動子の製造方法を説明する。
図3、
図4、
図5は、従来の水晶振動子の製造方法を説明するの工程フロー図である。
まず、
図3(a):水晶ウェハ1の第一主表面2aと第二主表面2bとに水晶エッチング用の耐蝕膜3を、蒸着やスパッタで成膜する。
図3(b):耐蝕膜3は、例えば、クロム層3aと金層3bとからなる。
図3(c):耐蝕膜3を成膜した水晶ウェハ1の第一主表面2aと第二主表面2bにスピンコーターやスプレーコーターを用いてレジスト4を塗布する。第一主表面2aのレジストを第一レジスト4a、第二主表面2bのレジストを第二レジスト4bとする。
図4(a):所定の露光マスクを用いて、水晶ウェハ1の第一主表面2aの第一レジスト4aを露光する。
図4(b):露光した第一レジスト4aを現像し、アライメントマーク5や、水晶振動子の外形パターンなど所定のパターンを形成する。
図4(c):水晶ウェハ1のアライメントマーク5を認識し、所定の露光マスクを用いて、水晶ウェハ1の第二主表面2bの第二レジスト4bを露光する。
図4(d):露光した第二レジスト4bを現像し、所定のパターンを形成する。
図5(a):所定のパターンが形成されたレジスト4をマスクとして、耐蝕膜3の金層3bを、エッチングする。
図5(b):金層3bが除去されて露出したクロム層3aをエッチングし、耐蝕膜3に水晶振動子の外形パターンなど所定のパターンを形成する。
図5(c):耐蝕膜3に形成した所定のパターンで、水晶ウェハ1を、フッ酸溶液をエッチング液として、ウェットエッチングを行い、水晶ウェハ1の製品領域9に複数の水晶振動子を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−269738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の水晶振動子の製造方法では、水晶ウェハの第一主表面の製品領域に水晶振動子の外形パターンと製品領域外にアライメントマークとを露光して、第一レジストの現像を行い、耐蝕膜を露出して外形パターンとアライメントマークとした後、露出したアライメントマークを認識して、第二主表面の水晶振動子の外形パターンを露光して、第二レジストの現像を行っているため、第二レジストの現像の時に、既に第一レジストは一度現像を行っているので、第一レジストについては二度現像されてしまう。従って、第一レジストと第二レジストの現像条件が異なるため、水晶ウェハの第一主表面と第二主表面とで、レジストパターン形状に差異が発生し、耐蝕膜に形成する水晶振動子の外形パターンが、水晶ウェハの第一主表面と第二主表面とで一致せず、高精度に水晶振動子の外形パターンが出来ないという問題があった。
【0007】
本発明は、高精度に水晶振動子の外形パターンを形成する水晶振動子の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第一主表面と、第一主表面に対向する第二主表面とを備え、複数の水晶振動子が形成される製品領域を備えた水晶ウェハにおいて、前記水晶ウェハの前記第一主表面と前記第二主表面に、耐蝕膜を成膜する工程と、前記第一主表面の前記耐蝕膜上に第一レジストを塗布する工程と、前記第二主表面の前記耐蝕膜上に第二レジストを塗布する工程と、前記第一主表面の製品領域外に、アライメントマークを露光する工程と、前記第一レジストを現像し、前記耐蝕膜を露出してアライメントマークを形成する工程と、露出した前記アライメントマークを認識して前記第一主表面に水晶振動子の外形パターンを露光する工程と、前記第一主表面の前記アライメントマークを用いて第二主表面に水晶振動子の外形パターンを露光する工程と、
前記水晶ウェハを現像液に浸漬し、前記第一レジストと前記第二レジストとを
同時に現像する工程と、水晶振動子の外形パターンが形成された前記第一レジストおよび前記第二レジストを用いて、前記第一主表面と前記第二主表面の耐蝕膜をエッチングする工程と、前記水晶ウェハをエッチングし、水晶振動子を形成する工程と
、を有する水晶振動子の製造方法とする。
【0010】
前記第一レジストを現像し、前記耐蝕膜を露出してアライメントマーク
を形成する工程では、前記製品領域外で、かつ前記アライメントマークを含む領域の前記第一レジストを現像する水晶振動子の製造方法とする。
【0011】
第一主表面と、第一主表面に対向する第二主表面とを備え、複数の水晶振動子が形成される製品領域を備えた水晶ウェハにおいて、前記水晶ウェハの前記第一主表面と前記第二主表面に、耐蝕膜を成膜する工程と、前記第一主表面の前記耐蝕膜上に第一レジストを塗布する工程と、前記第二主表面の前記耐蝕膜上に第二レジストを塗布する工程と、前記第一主表面の製品領域に水晶振動子の外形パターンと製品領域外にアライメントマークとを露光する工程と、前記水晶ウェハの製品領域外で、かつ前記アライメントマークを含む領域の前記第一レジストを現像し、前記耐蝕膜を露出してアライメントマークを形成する工程と、露出した前記アライメントマークを用いて第二主表面に水晶振動子の外形パターンを露光する工程と、
前記水晶ウェハを現像液に浸漬し、前記第一レジストと前記第二レジストを
同時に現像する工程と、水晶振動子の外形パターンが形成された前記第一レジストおよび前記第二レジストを用いて、前記第一主表面と前記第二主表面の耐蝕膜をエッチングする工程と、前記水晶ウェハをエッチングし、水晶振動子を形成する工程と
、を有する水晶振動子の製造方法とする。
【発明の効果】
【0013】
水晶ウェハの第一主表面の製品領域外にあるアライメントマークを利用して、第一主表面と第二主表面の製品領域にそれぞれ水晶振動子の外形パターンを露光することで水晶ウェハの第一主表面と第二主表面との露光精度を向上し、かつ、製品領域のレジストへの現像条件を揃えることで、水晶ウェハ両面の耐蝕膜に水晶振動子の外形パターンを一致させることが可能となる。
【0014】
本発明によって、高精度に水晶振動子の外形パターンを形成する水晶振動子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明における実施例1の水晶振動子の製造方法を説明する工程フロー図
【
図2】本発明における実施例2の水晶振動子の製造方法を説明する工程フロー図
【
図3】従来の水晶振動子の製造方法を
説明する工程フロー図
【
図4】従来の水晶振動子の製造方法を
説明する工程フロー図
【
図5】従来の水晶振動子の製造方法を
説明する工程フロー図
【発明を実施するための形態】
【0016】
音叉型水晶振動子を例に実施の形態を、以下に説明する。
図1は、本発明における実施例1の水晶振動子の製造方法を説明する工程フロー図である。
図2は、本発明における実施例2の水晶振動子の製造方法を説明する工程フロー図である。
図6は、水晶振動子が形成された水晶ウェハの上面図である。
【実施例1】
【0017】
まず、水晶ウェハ1の第一主表面2aと第二主表面2bに耐蝕膜3をスパッタリングなどの方法によりに成膜する。耐蝕膜3としては、例えば金を使用して、下地をクロムとする。
【0018】
次に、クロム層3a及び金層3bからなる耐蝕膜3が形成された水晶ウェハ1の第一主表面2aと第二主表面2bに、スピンコートなどの方法によりレジスト4を均一に塗布する。第一主表面2aに塗布されたレジスト4を第一レジスト4a、第二主表面2bに塗布されたレジスト4を第二レジスト4bとする。水晶ウェハ1に、耐蝕膜3、レジスト4を形成する工程は、
図3に示す従来の製造方法と同様である
【0019】
次に、
図1(a)に示すように、露光装置を用いて、マスクに描かれたアライメントマーク5を第一レジスト4aが塗布された水晶ウェハ1の第一主表面2aの製品領域外に露光する。
【0020】
次に、
図1(b)に示すように、第一主表面2aの第一レジスト4aを現像液を用いて現像し、金層3bを露出させてアライメントマークを形成する。このとき、水晶ウェハ1の第一主表面2aの製品領域9に対応する第一レジスト4aと、水晶ウェハ1の第二主表面2bの第二レジスト4bとは、未露光であり、アライメントマーク5を露出する現像の影響を受けない。
【0021】
次に、
図1(c)に示すように、露光装置を用いて第一主表面2aの製品領域9に対応し、かつ未露光の第一レジスト4aに、マスクに描かれた音叉型水晶振動子の外形パターンを、第一主表面2aに形成したアライメントマーク5を認識して露光する。
【0022】
次に、
図1(d)に示すように、水晶ウェハ1の第二主表面2bの第二レジスト4bも、第一主表面2aに形成したアライメントマーク5を認識して、音叉型水晶振動子の外形パターンを露光する。尚、第一レジスト4aと第二レジスト4bの製品領域9への露光は、同時に行っても良い。
【0023】
次に、
図1(e)に示すように、水晶ウェハ1の第一主表面2aの第一レジスト4aと第二主表面2bの第二レジスト4bとを、現像液を用いて同条件で現像し、露光した音叉型水晶振動子の外形パターンを形成する。現像方法は、現像条件を揃えることが出来れば、水晶ウェハ1を現像液に浸漬させても、第一主表面2aと第二主表面2bとを別々に行っても良い。
【0024】
さらに、レジスト4を現像し露出した耐蝕膜3の金層3bを、例えば、ヨウ素とヨウ化カリウムの水溶液を用いて、エッチングする。金層3bが除去されて露出したクロム層3aを、例えば、硝酸第二セリウムアンモニウムと酢酸の水溶液でエッチングする。金層とクロム層をエッチングする事によって、耐蝕膜に水晶振動子の外形パターンを形成する。
【0025】
次に、フッ酸溶液をエッチング液として、レジスト4および耐蝕膜3から露出した水晶ウェハ1を、音叉型水晶振動子になるようにウェットでエッチングを行う。このエッチングは表裏両面から同時にエッチングが進行し、
図4に示すように、水晶ウェハ1の製品領域9に複数の音叉型水晶振動子10を形成することができる。耐蝕膜3のエッチング、水晶ウェハ1のエッチングは、
図5に示す従来の製造方法と同様である。
【0026】
レジストへの音叉型水晶振動子の外形パターンが正確に形成されることで、耐蝕膜のパターン、そして音叉型水晶振動子の外形形状を、高精度に形成することが可能となる。
【実施例2】
【0027】
実施例1では、水晶ウェハの第一主表面の第一レジストへの露光を、アライメントマークと水晶振動子の外形パターンとを異なるプロセスとしたが、実施例2では、第一レジストへの露光を、アライメントマークと水晶振動子の外形パターンとを同時に行う。尚、水晶ウェハへの耐蝕膜の成膜、およびレジストの塗布に関しては、実施例1と同様であるので、省略する。
【0028】
図2(a)に示すように、水晶ウェハ1の第一主表面2aの第一レジスト4aの製品領域外にアライメントマークを、製品領域9に音叉型水晶振動子の外形パターンを、露光装置で露光する。
【0029】
次に、
図2(b)に示すように、第一主表面2aの第一レジスト4aのアライメントマーク領域のみを、現像液を用いて部分的に現像し、金層を露出させて、アライメントマークを形成する。
【0030】
次に、
図2(c)に示すように、露光装置で水晶ウェハ1の第二主表面2bの第二レジスト4bに、マスクに描かれた音叉型水晶振動子の外形パターンを、第一主表面2aの形成したアライメントマーク5を認識して露光する。
【0031】
次に、
図2(d)に示すように、水晶ウェハ1の第一主表面2aの第一レジスト4aと第二主表面2bの第二レジスト4bとを現像液を用いて同条件で現像し、露光した音叉型水晶振動子の外形パターンを形成する。現像方法は、現像条件を揃えることが出来れば、水晶ウェハ1を現像液に浸漬させても、第一主表面と第二主表面とを別々に行っても良い。
【0032】
さらに、レジストから露出した金層を例えば、ヨウ素とヨウ化カリウムの水溶液を用いて、金層をエッチングする。金層が除去されて露出したクロム層を例えば、硝酸第二セリウムアンモニウムと酢酸の水溶液でエッチングする。金層とクロム層をエッチングする事によって、耐蝕膜に水晶振動子の外形パターンを形成する。
【0033】
次に、フッ酸溶液をエッチング液として、レジストおよび耐蝕膜から露出した水晶ウェハを、音叉型水晶振動子になるようにウェットでエッチングを行う。このエッチングは表裏両面から同時にエッチングが進行し、
図6に示すように、水晶ウェハ1の製品領域9に複数の音叉型水晶振動子10を形成することができる。耐蝕膜3のエッチング、水晶ウェハ1のエッチングは、
図5に示す従来の製造方法と同様である。
【0034】
実施例1および実施例2では、音叉型水晶振動子の形成について記載したが、音叉型水晶振動子の外形形状に限らず、音叉腕への溝形成にも本発明を用いることで、
図7に示すような溝付き音叉型水晶振動子の外形と溝とを、高精度で形成することが可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 水晶ウェハ
2a 第一主表面
2b 第二主表面
3 耐蝕膜
3a クロム層
3b 金層
4 レジスト
4a 第一レジスト
4b 第二レジスト
5 アライメントマーク
6 水晶音叉腕
7 水晶音叉基部
8 溝
9 製品領域
10 音叉型水晶振動子