(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記漏洩磁場抑制部材は、前記磁気回路に対して移動可能であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のオープン型磁気共鳴イメージング装置用の梱包部材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記した従来の磁気回路の梱包では、搬送経路に移動不可能な電子機器が設置されている場合や、搬送経路が途中で狭くなる場合を考慮して、梱包サイズを予め小さくしている。したがって、従来の磁気回路の梱包では、磁気回路と板が接触または近接しており、漏洩磁場の強度が大きい領域が板よりも外側に広がるため、漏洩磁場を抑制する効果が小さいという問題がある。
また、板が磁性層を備えている構成では、磁気回路から板に作用する吸引力(磁着力)が大きくなるため、板を磁気回路から取り外し難くなるという問題がある。
【0006】
本発明では、前記した問題を解決し、漏洩磁場を十分に抑制するとともに、磁性体を磁気回路から簡単に着脱することができ、搬送の途中で梱包サイズを変えることができるオープン型磁気共鳴イメージング装置用の梱包部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、ヨークの開口部内に永久磁石が設けられた磁気回路を梱包するものであり、オープン型磁気共鳴イメージング装置用の梱包部材であって、前記磁気回路を収容するための箱体と、前記箱体に取り付けられる漏洩磁場抑制部材と、を備え、
前記漏洩磁場抑制部材は、前記箱体の搬送方向の側方に配置され、前記箱体の搬送方向の前方および後方は開放されており、前記漏洩磁場抑制部材は、前記箱体の外面に着脱自在な非磁性体のスペーサと、前記スペーサに取り付けられた磁性体と、を有し、前記磁性体は前記磁気回路に対して間隔を空けて配置されることを特徴としている。
【0008】
また、本発明の他の構成は、ヨークの開口部内に永久磁石が設けられた磁気回路を梱包するものであり、オープン型磁気共鳴イメージング装置用の梱包部材であって、前記ヨークに取り付けられる漏洩磁場抑制部材を備え、
前記漏洩磁場抑制部材は、前記ヨークの搬送方向の側方に配置され、前記ヨークの搬送方向の前方および後方は開放されており、前記漏洩磁場抑制部材は、前記ヨークの外面に着脱自在な非磁性体のスペーサと、前記スペーサに取り付けられた磁性体と、を有し、前記磁性体は前記磁気回路に対して間隔を空けて配置されることを特徴としている。
【0009】
これらの構成では、磁性体を磁気回路に対して間隔を空けて配置することで、磁気回路からの漏洩磁場の強度が大きい領域が、磁性体に効果的に引き付けられるため、梱包用の材料を大幅に増加することなく、梱包部材の周囲の漏洩磁場を十分に抑制することができる。
【0010】
また、磁性体と磁気回路を間隔を空けて配置することで、磁気回路から磁性体に作用する吸引力(磁着力)が小さくなるため、漏洩磁場抑制部材を箱体またはヨークから取り外し易くなる。
したがって、漏洩磁場抑制部材を箱体またはヨークに対して簡単に着脱することができるため、搬送経路の幅に合わせて、搬送の途中で梱包サイズを適宜に変えることができる。また、磁気回路と磁性体との間に介設する非磁性体を少なくすることができるため、梱包部材を軽量化することができる。
【0011】
前記した梱包部材において、前記ヨークの開口部が前方および左右方向から被験者の撮影対象部位を挿入可能に形成されている場合には、前記磁性体を前記ヨークの開口部の左右側方に配置し、前記磁性体を前記ヨークの開口部よりも前後方向および上下方向に大きく形成することで、漏洩磁場を確実に抑制することができる。
さらに、前記磁性体を前記ヨークよりも前後方向および上下方向に大きく形成することで、漏洩磁場をより確実に抑制することができる。
【0012】
前記した梱包部材において、前記漏洩磁場抑制部材を前記磁気回路に対して移動可能に構成した場合には、漏洩磁場抑制装置を磁気回路から取り外すことなく、磁気回路と磁性体の間隔を変えることができるため、梱包サイズを簡単に変えることができる。
【0013】
前記した梱包部材において、前記磁性体を板状に形成した場合には、磁性体を軽量化することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の磁気共鳴イメージング装置用の梱包部材では、漏洩磁場を十分に抑制することができるため、搬送経路や保管場所に設置された電子機器に、漏洩磁場が与える影響を防ぐことができる。
また、搬送の途中で梱包サイズを適宜に変えることができるため、搬送経路に移動不可能な電子機器が設置されている場合や、搬送経路が途中で狭くなる場合でも、磁気回路をスムーズに搬送することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態の梱包部材1は、
図1に示すように、オープン型のMRI装置の磁気回路100を搬送または保管するときに梱包するものである。
【0017】
磁気回路100は、
図2に示すように、前方および左右側方に開口した開口部120が形成され、側面視でコの字形状に形成されたヨーク(継鉄)110と、開口部120内に設けられた上下一対の永久磁石130,130と、ヨーク110を支持する脚部140と、を備えた所謂ガントリであり、開口部120の前方および左右側方から被験者の撮影対象部位(患部)を挿入可能となっている。
このように、永久磁石130を用いた磁気回路100では、MRI装置を稼動していないときでも、磁気回路100の周囲に漏洩磁場が生じている。
【0018】
梱包部材1は、
図1に示すように、磁気回路100を収容するための箱体10と、箱体10の上面11に取り付けられる左右二つの漏洩磁場抑制部材20,20と、を備えている。
箱体10は、
図2に示すように、木材等の非磁性体によって形成された直方体の箱であり、下面が開口している。この箱体10をヨーク110に被せた状態では、箱体10によってヨーク110全体が覆われ、脚部140が箱体10の下方に露出する。
箱体10の上面11には、前後左右の四隅に対応する位置に、四つのねじ穴11aが形成されている。
【0019】
漏洩磁場抑制部材20は、
図1に示すように、箱体10の上面11に着脱自在なスペーサ21と、スペーサ21に取り付けられた磁性体22と、を備えている。
なお、左右二つの漏洩磁場抑制部材20,20は、左右対称の構成であるため、以下の説明では、箱体10を前方から見たときに右側に配置される漏洩磁場抑制部材20について詳細に説明し、左側に配置される漏洩磁場抑制部材20の説明は省略する。
【0020】
スペーサ21には、
図3(a)および(b)に示すように、水平に配置された長方形の横板21aと、横板21aの外端部に垂直に形成された長方形の縦板21bと、を備えている。横板21aおよび縦板21bは、木材等の非磁性体によって形成されている。
【0021】
横板21aは、箱体10の上面11に載置して取り付けられる部位であり、
図3(c)に示すように、前後方向の長さは上面11と同じ長さに形成されている。また、横板21aの内端部を上面11の左右方向の中間位置に配置したときに、縦板21bと箱体10の側面が間隔を空けて配置されるように、横板21aの左右方向の長さが設定されている(
図3(c)参照)。
【0022】
横板21aには、二つの取付穴21c,21cが前後方向に間隔を空けて形成されている。取付穴21cは、上下方向に貫通するとともに、左右方向に延ばされた長穴である。両取付穴21c,21cは、横板21aを箱体10の上面11に載置したときに、上面11のねじ穴11a(
図2参照)にそれぞれ連通するように形成されている。
【0023】
縦板21bは、
図3(b)に示すように、両平面が左右に向けて配置されている。縦板21bは、横板21aよりも上側に突出した部位よりも、横板21aよりも下側に突出した部位が大きく形成されている。
この縦板21bは、
図1に示すように、ヨーク110の開口部120の左右側方に配置され、開口部120よりも前後方向および上下方向に大きく、さらには、ヨーク110の側面よりも前後方向および上下方向に大きく形成されている。
また、縦板21bは、
図3(c)に示すように、横板21aよりも後方に突出し、ヨーク110よりも後方に大きく形成されている。
【0024】
前記した漏洩磁場抑制部材20では、
図1に示すように、横板21aを箱体10の上面11に載置し、横板21aの上側から取付穴21cに挿入した取付ボルト21dを、上面11のねじ穴11a(
図2参照)に螺合させることで、スペーサ21を箱体10に取り付けることができる。
【0025】
また、漏洩磁場抑制部材20は、両取付ボルト21d,21dを緩めた状態で、スペーサ21を両取付穴21c,21cに沿って左右方向に移動可能となっている。そして、箱体10に対するスペーサ21の位置を調整した後に、取付ボルト21dを締め込むことで、スペーサ21を箱体10の上面11に位置決めすることができる。
【0026】
磁性体22は、スペーサ21の縦板21bの外面に貼り付けられた板状の部材であり、本実施形態では、
図3(a)に示すように、縦板21bよりも薄く形成された複数の鋼板22aによって構成されている。
具体的には、縦板21bの外面全体を覆うように三枚の鋼板22aを三箇所に配置し、さらに、一枚の鋼板22aに対して、同じ形状の鋼板22aを二枚重ねている。このように、磁性体22は、九枚の鋼板22aによって構成されている。
【0027】
磁性体22は、磁気回路100からの漏洩磁場を引き付けることで、梱包部材1の周囲の漏洩磁場の強度を低下させるものである。
磁性体22の厚さや面積は限定されるものではないが、本実施形態では、
図5(a)に示すように、縦板21bを箱体10の側面から最も離した状態、つまり、梱包部材1を最大幅に設定した状態で、漏洩磁場の強度が大きい領域が磁性体22に効果的に引き付けられ、漏洩磁場の強度が低下するように、磁性体22の厚さや面積が設定されている。
なお、本実施形態の磁性体22のように、ヨーク110の側面よりも前後方向および上下方向に大きく形成することで、漏洩磁場の強度を確実に低下させることができる。
具体的には、漏洩磁場抑制部材20の縦板21bから左右側方に330mm離れた位置(永久磁石130(
図1参照)の中心位置からは1100mm離れた位置)で、漏洩磁場の強度が5G以下となるように、磁性体22の厚さや面積を設定することが好ましい。
【0028】
次に、本実施形態の梱包部材1を用いた磁気回路100の搬送方法について、病院の廊下を通過させて搬送する場合を例として説明する。
まず、
図2に示すように、ヨーク110に箱体10を被せるとともに、
図1に示すように、箱体10の上面11に両漏洩磁場抑制部材20,20を取り付け、梱包部材1が最大幅となるように、両漏洩磁場抑制部材20,20を箱体10に固定する。
【0029】
梱包部材1によって梱包された磁気回路100を、
図4に示すように、ハンドリフト200の積載面210に載置する。これにより、作業者は手押しで磁気回路100を移動可能となる。そして、
図5(a)に示すように、磁気回路100を廊下300で移動させる。なお、
図5ではハンドリフト200(
図4参照)の図示を省略している。
このとき、磁気回路100からの漏洩磁場が磁性体22に引き付けられることで、梱包部材1の周囲の漏洩磁場が抑制され、漏洩磁場の強度が低減されるため、漏洩磁場が搬送経路に設置された電子機器に与える影響を防ぐことができる。
【0030】
図5(b)に示すように、廊下300に設置された移動不可な電子機器310が、梱包部材1の片側(進行方向の右側)に干渉する場合には、電子機器310側(進行方向の右側)の漏洩磁場抑制部材20を、箱体10の内側(進行方向の左側)に向けて移動させて、梱包サイズを小さくする。これにより、磁気回路100は電子機器310の側方を通過することができる。なお、梱包サイズを小さくした状態でも、磁気回路100からの漏洩磁場は磁性体22に引き付けられるため、漏洩磁場抑制部材20を用いないときよりも、梱包部材1の周囲の漏洩磁場を抑制し、漏洩磁場の強度を低減することができる。
【0031】
さらに、
図5(c)に示す区間320のように、両壁の間が狭くなり、両壁が梱包部材1の両側に干渉する場合には、両漏洩磁場抑制部材20,20を、箱体10の内側に向けて移動させて、梱包サイズを最も小さくする。これにより、磁気回路100は区間320を通過することができる。
【0032】
図5(b)および(c)に示すように、梱包部材1を小さくして移動させた後は、漏洩磁場抑制部材20を箱体10の外側に移動させることで、梱包部材1を最大幅に戻すことができる。
【0033】
なお、両漏洩磁場抑制部材20,20を箱体10の内側に移動させ、梱包部材1を最小幅に設定した状態よりも、搬送経路の通行可能な幅が狭い場合には、漏洩磁場抑制部材20を箱体10から取り外すことで、梱包サイズを更に小さくすることができる。
本実施形態の漏洩磁場抑制部材20は、
図1に示すように、取付ボルト21dによって、箱体10の上面11に取り付けられているため、漏洩磁場抑制部材20を箱体10に対して簡単に着脱することができる。
【0034】
以上のような梱包部材1によれば、
図1に示すように、磁性体22を磁気回路100に対して間隔を空けて配置することで、磁気回路100からの漏洩磁場の強度が大きい領域が、磁性体22に効果的に引き付けられるため、梱包部材1の周囲の漏洩磁場を十分に抑制することができる。
したがって、梱包用の材料を大幅に増加することなく、梱包部材1の周囲の漏洩磁場の強度を低減することができるため、搬送経路や保管場所に設置された電子機器に、漏洩磁場が与える影響を防ぐことができる。
【0035】
また、漏洩磁場抑制部材20は、箱体10に対して左右方向にスライド可能に構成されている。さらに、磁性体22と磁気回路100の間隔を空けて配置することで、磁気回路100から磁性体22に作用する吸引力(磁着力)が小さくなっており、漏洩磁場抑制部材20は箱体10に対して着脱自在に構成されている。
このように、梱包部材1では、搬送の途中で磁気回路100の梱包サイズを適宜に変えることができるため、
図5(b)および(c)に示すように、搬送経路が途中で狭くなる場合でも、磁気回路100をスムーズに搬送することができる。
【0036】
また、磁気回路100から磁性体22に作用する吸引力が小さいため、磁気回路100と磁性体22との間に介設する非磁性体を少なくすることができ、さらに、磁性体22は板状に形成されているため、梱包部材1を軽量化することができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
例えば、
図6に示す梱包部材1Aの漏洩磁場抑制部材20のように、スペーサ21の縦板21bの外周縁部に、内側に向けてリブ21eを立設し、横板21aがリブ21eの内側に嵌め込まれるように形成した場合には、スペーサ21の強度を高めることができる。
【0038】
また、
図1に示すスペーサ21の縦板21bの外周縁部に、延長用の平板を取り付け可能に構成してもよい。この構成では、延長用の平板に鋼板22aを貼り付けることで、磁性体22を拡張することができ、搬送経路や保管場所の環境に合わせて、漏洩磁場を抑制する範囲を広げることができる。
【0039】
また、
図7に示すように、左右二つの漏洩磁場抑制部材20,20によって梱包部材1Bを構成してもよい。この構成では、ヨーク110の上面110aに形成されたねじ穴に取付ボルト21dを螺合させることで、両漏洩磁場抑制部材20,20をヨーク110の上面110aに直接取り付けている。