特許第5758756号(P5758756)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5758756
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/24 20060101AFI20150716BHJP
   H01R 12/57 20110101ALI20150716BHJP
【FI】
   H01R13/24
   H01R12/57
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-198234(P2011-198234)
(22)【出願日】2011年9月12日
(65)【公開番号】特開2013-62060(P2013-62060A)
(43)【公開日】2013年4月4日
【審査請求日】2014年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094330
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 正紀
(74)【代理人】
【識別番号】100109689
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 結
(72)【発明者】
【氏名】片野 哲也
【審査官】 楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】 特表平10−510947(JP,A)
【文献】 特開2002−031648(JP,A)
【文献】 米国特許第4778404(US,A)
【文献】 特開2012−107970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/24
H01R 12/00〜12/91
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に突出し相手接点に接触して該相手接点からの後方への押圧を受ける接触部と、該接触部よりも後方に位置し、該接触部の、該相手接点からの押圧を受けて弾性的に変形するばね部と、該ばね部よりもさらに後方に位置し電気的な接続を担う端子部とを有し、板金の打抜きおよび折曲げ加工を経て一体に形成されたコンタクトと、
前記コンタクトを収容し前記接触部を前方に突出させたハウジングとを備え、
前記ばね部は、打抜き時点では線材が左右方向に繰り返し折り返しながら前後に延び、該線材の左右方向への1回の往復のうちの往路における、左端から、左右方向中央から左右方向それぞれに逸れた2つの点のうちの左寄りの一方の点までの部分が、左右方向にのみ延び、該2つの点どうしを繋ぐ部分が前後方向に傾いて延び、該2つの点のうちの右寄りの一方の点から右端までの部分が、左右方向にのみ延び、折り返した復路である右端から左端までの部分が、左右方向にのみ延びた形状を有することで、該線材の、打抜き時点における1つの折り返し部分の内側の前後方向の間隔よりも、該線材の、打抜き時点における前後方向に互いに隣接する折り返し部分どうしの前後方向の間隔の方が広い形状に形成され、折曲げ加工を経ることにより、打抜き時点における左右方向の折り返し部分が、該ばね部の他の部分と対面する向き以上に折り曲げられていることを特徴とする電気コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯電話機に内蔵されてバッテリ接続用として使用される電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機には薄型化が要求されている。この要求に対応するために、特許文献1には、バッテリ等の相手接点に接触する接触部がハウジングから前方に突出し、その接触部の後部に弾性的に縮むコイルスプリングを配置した、いわゆるポゴピンコネクタが提案されている。しかしながら、この特許文献1に提案されたポゴピンコネクタは部品点数が多くコスト高である。
【0003】
特許文献2には、板金の打抜きおよび折曲げ加工により、上記のコイルスプリングの役割りを担うばね部を含むコンタクトが一体に形成された、部品点数の少ない電気コネクタが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−96606号公報
【特許文献2】特開平11−162592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に提案された電気コネクタは、接触部の十分な変位量を確保するためにはコンタクトの高さや前後方向の長さを大きくする必要がある。このため電気コネクタの小型化が困難である。また、この特許文献2の電気コネクタは、そのコンタクトのばね部の、打抜き加工により形成された打抜き面がハウジングの内壁面に対面している。このばね部は、相手接点が接触部を押すたびに変形するため、ばね部の打抜き面でハウジングが削れるおそれがあり、電気コネクタの耐久性にも問題が残る。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、小型化かつ耐久性の向上が図られた電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明の電気コネクタは、
前方に突出し相手接点に接触して相手接点からの後方への押圧を受ける接触部と、
その接触部よりも後方に位置し、接触部の、相手接点からの押圧を受けて弾性的に変形するばね部と、そのばね部よりもさらに後方に位置し電気的な接続を担う端子部とを有し、板金の打抜きおよび折曲げ加工を経て一体に形成されたコンタクトと、
上記コンタクトを収容し接触部を前方に突出させたハウジングとを備え、
上記ばね部は、打抜き時点では線材が左右方向に繰り返し折り返しながら前後に延び、線材の左右方向への1回の往復のうちの往路における、左端から、左右方向中央から左右方向それぞれに逸れた2つの点のうちの左寄りの一方の点までの部分が、左右方向にのみ延び、それら2つの点どうしを繋ぐ部分が前後方向に傾いて延び、それら2つの点のうちの右寄りの一方の点から右端までの部分が、左右方向にのみ延び、折り返した復路である右端から左端までの部分が、左右方向にのみ延びた形状を有することで、線材の、打抜き時点における1つの折り返し部分の内側の前後方向の間隔よりも、その線材の、打抜き時点における前後方向に互いに隣接する折り返し部分どうしの前後方向の間隔の方が広い形状に形成され、折曲げ加工を経ることにより、打抜き時点における左右方向の折り返し部分が、該ばね部の他の部分と対面する向き以上に折り曲げられていることを特徴とする。
【0008】
本発明の電気コネクタにおいて、そのコンタクトが板金の打抜きおよび折曲げ加工を経て一体に形成されている点は、前掲の特許文献2と同じである。ただし、本発明では、そのコンタクトのばね部の、打抜き時点における左右方向の折り返し部分が、ばね部の他の部分と対面する向き以上に折り曲げられている。このため、小型化が達成でき、かつ打抜き面がハウジングの内壁面とは対面しないことから耐久性も向上する。
【0010】
ここで、折り返し部分の内側と外側とを比べたとき、接触部が相手接点に押されたときに、折り返し部分が変形の抵抗となって内側の方が外側よりも変形しにくい。このため、接触部を後方に押し下げていったとき、内側と外側の間隔が互いに同一であると内側の変形には余裕がある段階で、外側の方は線材どうしが接触してしまってそれ以上変形できない状態となる。
【0011】
そこで、本発明では、線材の左右方向への1回の往復のうちの往路の、線材上の、左右方向中央から左右方向それぞれに逸れた2つの点どうしを繋ぐ部分を、前後方向に傾いて延びた形状に形成することで、内側よりも外側の間隔を広げておき、これによって、小さい寸法のばね部でより大きな変形量を確保することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上の通り、本発明の電気コネクタによれば、小型化かつ耐久性の向上が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態としての電気コネクタの外観斜視図である。
図2図1に示す電気コネクタを、そのハウジングの上壁面を破断して示した、コンタクト1本分の平面図である。
図3図1に示す電気コネクタの、図1に示すX−X断面図である。
図4図1に示す電気コネクタを構成するコンタクトの斜視図である。
図5】コンタクトの製造過程における、打抜き加工時のコンタクトの形状を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態としての電気コネクタの外観斜視図である。また、図2は、図1に示す電気コネクタを、そのハウジングの上壁面を破断して示した、コンタクト1本分の平面図である。また、図3は、図1に示す電気コネクタの、図1に示すX−X断面図である。
【0016】
さらに、図4は、図1に示す電気コネクタを構成するコンタクトの斜視図である。図5は、そのコンタクトの製造過程における、打抜き加工時のコンタクトの形状を示した斜視図である。
【0017】
この電気コネクタ10は、ハウジング20とコンタクト30とから構成されている。ここに示す電気コネクタ10にはコンタクト30は3本収容されており、図1には、それら3本のコンタクト30の接触部31がハウジング20から突出している。なお、コンタクト30の数は3本以外の数、例えば4本であってもよい。この電気コネクタ10は、携帯電話機(図示せず)に搭載されてバッテリと回路基板等を電気的に接続するためのコネクタである。コンタクト30の接触部31は、バッテリの接点と接触すると、ハウジング20内に引っ込む方向に押された状態となる。
【0018】
このコンタクト30は、金属板材の打抜き加工および折曲げ加工を経て、図4に示す形状に形成される。図5には、このコンタクトの製造過程における打抜き加工後、かつ折曲げ加工前の状態が示されている。この図5に示されているのは、折曲げ加工後にコンタクトとして機能する形状に打抜き加工された板材であってコンタクトではないが、ここでは、折曲げ加工後のものと同じ符号を使って示し、かつ折曲げ加工後の名称を使って説明する。
【0019】
このコンタクト30は、この図5に示す形状に打抜き加工された後、図4に示す形状に折曲げ加工される。
【0020】
このコンタクト30は、その前方に接触部31が形成され、その接触部31の後方にばね部32が形成されている。さらにばね部32の後方には固定部33および端子部34が形成されている。
【0021】
接触部31は、上述の通り、前方に突出し相手接点(ここではバッテリの接点を想定している)に接触してその相手接点からの後方への押圧を受ける部分である。
【0022】
また、ばね部32は、接触部31が、相手接点から押圧を受けたときに弾性的に変形する部分である。
【0023】
また、固定部33は、このコンタクト30がハウジング20内に差し込まれたときにハウジング20内に圧入されてハウジング20の内壁に圧接し、このコンタクト30をハウジング20内の所定位置に固定するための部分である。固定部33の端縁には圧入突起331が設けられている。
【0024】
さらに、端子部34は、図2図3に示すようにハウジング20の後方から露出し、回路基板等(図示せず)との間の電気的接続を担う部分である。
【0025】
ここで、ばね部32は、図5に示す打抜き時点では、線材が左右方向に繰り返し折り返しながら前後に延びた形状を有する。そしてこのばね部32は、折曲げ加工を経ることにより、図4に示すように、打抜き時点における左右方向の折り返し部分321がそのばね部32の他の部分と対面する向きに折り曲げられている。ばね部32は、接触部31が相手接点に押されるたびに伸縮する。このため、打抜き加工時に形成されたコンタクトの破断面がハウジングの内壁面に接している従来構造の場合は、ハウジングの内壁面が繰り返し削られるおそれがあり、耐久性に問題がある。これに対し、本実施形態では、折り返し部分321がそのばね部32の他の部分と対面する向きに折り曲げられているため、ばね部32が伸縮しても破断面でハウジング20の内壁面が削られることが緩和され、耐久性が向上する。また、ばね部32が図4に示す形状に折り曲げられることからコンタクト30の外形が小型化され、電気コネクタ10の全体の小型化が図られる。
【0026】
尚、その折り返し部分321は、この実施形態では他の部分と対面する向きに折り曲げられているが、折り返し部分321は、スペースに余裕があるときはさらに深く折り曲げられていてもよい。
【0027】
このばね部32はさらに、このばね部32を形成する線材どうしの間隔にも特徴を有する。ここでは、図2図4に示すように、このばね部32を形成する打抜き時点における1つの折り返し部分321の内側の前後方向の間隔をd1とし、打抜き時点における前後方向に互いに隣接する折り返し部分321どうしの前後方向の間隔をd2とする。このとき、ばね部32は、d1<d2となっている。
【0028】
接触部31が相手接点に押されてばね部32が縮んだとき、折り返し部分321が相対的に高い剛性を有し変形の抵抗として働く。すなわち、ばね部32が縮んだとき、折り返し部分321の内側(寸法d1の部分)と外側(寸法d2の部分)とを比べると、内側(寸法d1の部分)よりも外側(寸法d2の部分)の方が前後方向に大きく縮む。このため、d1=d2の場合は、ばね部32が縮んだとき外側(寸法d2の部分)の方が先に線材どうしが接触してそれ以上縮めない状態となる。
【0029】
本実施形態ではd1<d2となっているため、d1=d2の場合と比べ、より小さい寸法のばね部32でより大きな変形量を確保することができる。
【0030】
尚、ここでは、携帯電話機に内蔵することを予定した電気コネクタを取り上げて説明したが、本発明の電気コネクタは携帯電話機用に限らず、広く適用できるものである。
【符号の説明】
【0031】
10 電気コネクタ
20 ハウジング
30 コンタクト
31 接触部
32 ばね部
33 固定部
34 端子部
321 折り返し部分
図1
図2
図3
図4
図5