(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0015】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0016】
また、実施の形態の各機能ブロックを構成する回路素子は、特に制限されないが、公知のCMOS(相補型MOSトランジスタ)等の集積回路技術によって、単結晶シリコンのような半導体基板上に形成される。なお、実施の形態では、MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)の一例としてMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)(MOSトランジスタと略す)を用いるが、ゲート絶縁膜として非酸化膜を除外するものではない。図面において、Pチャネル型MOSトランジスタ(PMOSトランジスタ)にはゲートに矢印の記号を付すことで、Nチャネル型MOSトランジスタ(NMOSトランジスタ)と区別することとする。図面にはMOSトランジスタの基板電位の接続は特に明記していないが、MOSトランジスタが正常動作可能な範囲であれば、その接続方法は特に限定しない。
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0018】
(実施の形態1)
《無線通信装置の主要部の概要》
図1は、本発明の実施の形態1による無線通信装置において、その主要部の概略構成例を示すブロック図である。
図1に示す無線通信装置は、ベースバンドの処理を行うベースバンドユニットBBUと、高周波帯の処理を行う高周波システム部RFSYSを備えている。高周波システム部RFSYSは、バイアス制御部BSCTLと電力増幅部HPABKを備える。HPABKは、バイアス設定用電圧Vbに応じたバイアスを生成し、高周波電力増幅器HPAに供給するバイアス生成回路BSGENと、当該バイアスを動作点として入力電力信号Pinを電力増幅し、出力電力信号Poutを出力するHPAと、当該バイアスのレベルを検出するバイアス検出回路SENSを備える。
【0019】
バイアス制御部BSCTLは、バイアス検出回路SENSの検出結果を所定の基準電圧Vrefと比較し、その誤差を増幅する誤差増幅器EAbと、EAbの出力に応じて所定のビット補正値ΔBCを生成する補正回路CCと、ディジタル・アナログ変換回路DACと、記憶部MEMを備える。DACは、ベースバンドユニットBBUより、送信電力レベルを指示するためのバイアス指示コードVBCDを受け、当該VBCDにビット補正値ΔBCを反映させたディジタルコードをアナログ変換することで前述したバイアス設定用電圧Vbを出力する。
【0020】
このような構成例において、例えば、ディジタル・アナログ変換回路DACにおけるバイアス指示コードVBCDとバイアス設定用電圧Vbとの関係や、バイアス生成回路BSGENにおけるVbと実際に生成されるバイアスとの関係は、各高周波システム部RFSYS毎の製造ばらつき等に起因してばらつきが存在する恐れがある。そこで、
図1の無線通信装置は、補正動作モードと通常動作モードを備え、このようなばらつきを補正動作モードを用いて補正する。
【0021】
補正動作モードの際には、まず、BBUからテスト用のバイアス指示コードVBCDが入力されると共に、誤差増幅器EAbに対して当該VBCDに対応して予め定められる所定の基準電圧Vrefが入力される。なお、バイアス指示コードVBCDは、BBUから入力されるものに限定されるわけではなく、外部検査装置およびそれに準ずる装置から入力されるものも含む。Vrefは、例えば外部検査装置等を代表に高精度な電圧値を設定可能な装置によって入力されることが望ましい。ディジタル・アナログ変換回路DACは、例えば初期状態のビット補正値ΔBCがゼロであるものとして、当該VBCDをアナログ変換することでバイアス設定用電圧Vbを生成する。バイアス生成回路BSGENは、当該Vbに応じたバイアス(バイアス電流又はバイアス電圧)を生成し、バイアス検出回路SENSは、当該バイアスのレベルを検出する。
【0022】
誤差増幅器EAbは、バイアス検出回路SENSからの検出レベルと、基準電圧Vrefとの誤差を増幅する。補正回路CCは、EAbによる誤差が小さくなるようにビット補正値ΔBCの値を変動させる。これにより、ディジタル・アナログ変換回路DACは、前述したテスト用のバイアス指示コードVBCDに当該ΔBCを反映させたディジタルコードをアナログ変換することでバイアス設定用電圧Vbの値を更新する。以降、このようなバイアス補正ループ上での処理が自動的に繰り返されることにより、EAbによる誤差が最小となるΔBCが生成される。補正回路CCは、この生成されたΔBCを記憶部MEMに保存する。MEMは、特に限定はされないが、例えば、不揮発性メモリ等で実現される。ただし、VBCDとΔBCの関係が一定あるいは一次関数で与えられるような場合には、フューズや、複数のボンディングワイヤ(接続先を電源電圧または接地電源電圧とすることで情報を保持)等で実現することも可能である。
【0023】
一方、通常動作モードの際、ディジタル・アナログ変換回路DACは、ベースバンドユニットBBUから通常動作用のバイアス指示コードVBCDを受けた際に、補正回路CCに対して補正値要求信号REQを発行し、CCは、これに応じてビット補正値ΔBCを返信する。DACは、当該VBCDにΔBCを反映させた(加えた)ディジタルコードをアナログ変換することでバイアス設定用電圧Vbを出力する。これにより、バイアス指示コードVBCDと実際に高周波電力増幅器HPAに供給されるバイアスとの関係が各無線通信装置において一定となるように補正することが可能になる。
【0024】
以上のように、本実施の形態による無線通信装置は、前述した
図14の方式と異なり、様々なばらつき要因を個別に解消していくことで、ばらつきの規則性をより単純化し、これによってバイアス指示コードVBCDと出力電力信号Poutとの関係の高精度化を図り、また、ばらつき補正に伴うリソースの低減を図るものである。その中でも特に、送信電力特性に与える影響が大きいバイアスに着目して、前述した高周波システム部RFSYS内に構築したバイアス補正ループによってバイアス自体を観測ならびに自動補正することが特徴となっている。
【0025】
このように、バイアス補正が行われた状態の高周波システム部RFSYSを予め構築することで、その後に、例えば、セットメーカ等が当該RFSYSにベースバンドユニットBBU等を組み合わせて無線通信システムを構築する際にも、その負担を軽減することが可能になる。すなわち、例えば
図14と同様な方式等を用いてBBUを含めたシステム全体のばらつき補正を行う場合であっても、ばらつき要素が既に減っているため、限られたリソース(相関テーブル作成時間、相関テーブルを保持するメモリ容量等)の中で最適な補正パラメータが得られ易くなる。最適な補正パラメータが得られ易くなると、結果として、バイアスの指示値と実際の送信電力レベルとの関係を高精度化でき、送信電力特性の向上(高周波電力増幅器HPAにおける電力付加効率の向上や歪みの低減等)が図れる。
【0026】
また、高周波電力増幅器HPAの送信電力等の検出を行うことなく、バイアス自体を観測ならびに補正する方式であるため、
図1から判るように、当該補正を行うのに必要なリソース(回路規模、回路設計時間、補正に伴う処理時間等)を小さくすることができる。このため、高周波システム部RFSYSを製造する部品メーカにおける負担の増大も抑制できる。このようなことから、全体として、ばらつき補正に伴うリソースの増大を抑制しつつ、送信電力特性の向上を図ることが可能になる。なお、バイアスを高精度に補正する点に着目すると、例えば特許文献2に示されるような技術を用いることが考えられる。ただし、当該技術のように、複数の電流検出回路、計算器、相関テーブル等を用いる方式では、リソースが過度に大きくなり、セットメーカの負担は軽減できる場合があるが、部品メーカの負担が著しく増大する恐れがある。
【0027】
また、別の観点では、
図1の方式を用いることで、例えば電力増幅部HPABKの製造歩留まりの向上が図れる。すなわち、例えばHPABKを一つの半導体チップで形成した場合、バイアス生成回路BSGENのばらつきに高周波電力増幅器HPAの製造ばらつきが加わることで送信電力特性として大きなばらつきが生じ、当該半導体チップの検査を介して歩留まりが低下する恐れがある。そこで、
図1の方式によってBSGENのばらつきを抑制できることを前提とすれば、当該HPABKの検査の際に、HPAの製造ばらつきのみを対象として検査を行えばよいため、製造歩留まりの向上が期待できる。具体的には、例えば、所定のバイアス設定用電圧Vbによって所定の送信電力特性が得られない場合であっても、Vbをある程度変動させることで所定の送信電力特性が得られるようになれば、当該半導体チップを良品とすることができる。
【0028】
《高周波電力増幅器およびバイアス生成回路の詳細》
図2は、
図1の無線通信装置において、そのバイアス生成回路および高周波電力増幅器の詳細な構成例を示す回路図である。例えば、W−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)用やLTE(Long Term Evolution)用等の無線通信装置では、
図2に示すような回路が用いられる場合がある。
図2において、高周波電力増幅器HPAは、エミッタ接地となる電力増幅用のバイポーラトランジスタQoutと、エミッタフォロワとなるバイアス用のバイポーラトランジスタQbsと、QbsのエミッタとQoutのベースの間に設けられる抵抗R1と、入力電力信号PinをQoutのベースに結合する結合容量Cin等を備えている。Qoutは、例えばHBT(Heterojunction Bipolar Transistor)等である。抵抗R1は、Pinがバイアス生成回路BSGEN側に漏洩するような事態を防止する機能等を担っている。
【0029】
バイアス生成回路BSGENは、バイアス設定用電圧Vbの供給ノードと接地電源電圧GNDの間で、Vb側から順に直列接続されたバイアス用抵抗Rb、ダイオードDb1、ダイオードDb2を備える。Db1,Db2は、GND側をカソードとし、Db1のアノードとRbの共通接続ノードからバイアス用バイポーラトランジスタQbsのベースに向けて信号が印加される。Db1,Db2は、例えば、ダイオード接続されたバイポーラトランジスタ等によって実現され、Qbsと共に電力増幅用バイポーラトランジスタQoutの温度依存性を補償する機能等を担う。また、Qbsは、例えばQoutからの送信電力レベルが大きい場合に、Qoutへのバイアス供給が不足するような事態を防止する機能等を担う。
【0030】
このような構成例において、バイアス設定用電圧Vbが印加されると、主に、抵抗Rbに応じたバイアス設定用電流Ibが流れ、当該Ibの大きさを反映したバイアス電流Iqが電力増幅用バイポーラトランジスタQoutに設定される。ただし、実際には、バイアス設定用電圧Vb自体のばらつきや、RbおよびダイオードDb1,Db2の製造ばらつき等に応じて、バイアス設定用電流Ibの大きさが設計値からずれ、これに応じてバイアス電流Iqにばらつきが生じる恐れがある。そこで、例えば、
図3に示すようなバイアス検出回路SENSが設けられる。
【0031】
《バイアス検出回路の詳細》
図3は、
図1および
図2の無線通信装置において、そのバイアス検出回路の詳細な構成例を示す回路図である。
図3に示すバイアス検出回路SENSは、一端がバイアス生成回路BSGENにおけるダイオードDb1のカソード(Db2のアノード)に結合され、他端が誤差増幅器EAbの2入力の一方に結合されるスイッチSWbと、当該EAbの2入力の一方と接地電源電圧GNDの間に結合される抵抗Rsmdを備える。Rsmdは、高精度な抵抗素子であることが望ましく、この観点でここでは半導体チップの外部部品となるSMD(Surface Mount Device)を用いている。
【0032】
また、ここでは、バイアス制御部BSCTLとバイアス生成回路BSGENが別の半導体チップで実現されることを前提とし、スイッチSWbは、バイアス制御部BSCTL側の半導体チップに形成されている。これに伴い、前述したダイオードDb1のカソードは、BSGENの外部端子PNoおよびBSCTLの外部端子PNiを介してSWbの一端に結合され、SWbの他端は、BSCTLの外部端子PNrを介して抵抗Rsmdに結合されている。
【0033】
ここで、ダイオードDb1,Db2の順方向電圧をVFとすると、抵抗Rsmdの抵抗値は、スイッチSWbをオンに駆動した際にRsmdの一端(PNr)に生成される電圧がVFよりも小さくなるような値に設定される。そうすると、スイッチSWbをオンに駆動した状態でバイアス生成回路BSGENにバイアス設定用電圧Vbを印加した場合、Db2は非活性状態(ほぼオープン状態)となり、Db1および抵抗Rb(ならびに抵抗Rsmd)の電気的特性を反映した電流Ib’が、Rb→Db1→SWb→Rsmdの経路で流れる。Rsmdの抵抗値は予め高精度に設定されているため、Ib’は、Rb,Db1の製造ばらつきを反映した値として得られ、
図2に示したバイアス設定用電流Ibに近い値となる。
【0034】
そこで、この電流Ib’を抵抗Rsmdを介して電圧(Ib’×Rsmd)に変換し、誤差増幅器EAbによって基準電圧Vrefと比較することで、ばらつきの補正が実現可能になる。すなわち、テスト用となる所定のバイアス設定用電圧Vbを印加した際にRsmdの一端に生じる理想的な電圧を予め算出しておき、前述した補正動作モード時に、当該算出した値をVrefとして印加することでばらつき補正が実現される。また、通常動作モード時には、スイッチSWbはオフに駆動される。
【0035】
なお、バイアス検出回路SENSの構成は、勿論、
図3のような構成例に限定されるものではなく、適宜変更することが可能である。例えば、バイアス生成回路BSGENと同一の半導体チップ内に、当該バイアス生成回路の回路構成ならびにプロセス構造を反映したレプリカ回路を設け、当該レプリカ回路を用いて検出を行うようなことも可能である。ただし、回路規模の観点や、実際には当該レプリカ回路とバイアス生成回路との間に若干の誤差が生じ得る観点からは
図3のような構成例を用いる方が望ましい。また、場合によっては、抵抗Rsmdを設けずに、電流検出ではなく電圧検出(例えばDb1のアノード電圧の検出)によってばらつき補正を行うことも可能である。ただし、ばらつき補正の更なる高精度化を図る観点からは
図3のような電流検出方式を用いる方が望ましい。さらに、バイアス生成回路や高周波電力増幅器も、勿論、
図2や
図3の構成例に限定されるものではなく、各回路構成に応じて適宜バイアス検出回路を設ければよい。
【0036】
《バイアス補正の動作概要》
図4は、
図1の無線通信装置において、バイアス設定用電圧と送信電力レベルとの関係例を示す説明図である。
図5(a)および
図5(b)は、
図1および
図4の無線通信装置において、バイアスにばらつきが存在する場合に補正が行われる様子を示すものであり、
図5(a)はバイアス生成回路内に素子ばらつきがある場合の説明図、
図5(b)はバイアス設定用電圧にばらつきがある場合の説明図である。例えば、
図4に示すように、バイアス設定用電圧Vbと出力電力信号Poutにおける送信電力レベルとの関係は、理想的には線形な関係であるものとする。
【0037】
図5(a)に示すように、バイアス生成回路BSGEN内の各素子(
図2の例では抵抗RbやダイオードDb1,Db2)に製造ばらつきがあると、ある所定のバイアス設定用電圧(V0)が印加された際に電力増幅用バイポーラトランジスタQoutの動作点が変わり、結果的に、送信電力レベル(Pout)が変わることになる。そこで、
図1のばらつき補正方式を用いると、例えば、
図3の例では当該ばらつきがバイアス設定用電流Ib’の変化として誤差増幅器EAbによって検出され、
図5(a)に示すように、補正回路CC(
図1)を介してこの変化量を相殺するようにV0にΔVのオフセットが加えられることになる。その結果、Qoutの動作点が一定となり、送信電力レベル(Pout)も一定(P0)となる。
【0038】
また、
図5(b)に示すように、バイアス設定用電圧Vb自体がV0からΔVだけばらつくと、電力増幅用バイポーラトランジスタQoutの動作点が変わり、結果的に、送信電力レベル(Pout)が変わることになる。そこで、
図1のばらつき補正方式を用いると、例えば、
図3の例では当該ばらつきがバイアス設定用電流Ib’の変化として誤差増幅器EAbによって検出され、
図5(b)に示すように、補正回路CC(
図1)を介してこの変化量を相殺するようにΔVのオフセットが加えられ、VbがV0に戻ることになる。その結果、Qoutの動作点が一定となり、送信電力レベル(Pout)も一定(P0)となる。
【0039】
《無線通信装置の製造フロー》
図6は、
図1の無線通信装置において、その製造工程の主要部の処理内容の一例を示すフロー図である。
図6においては、まず、図示しない前工程プロセスにおいて、半導体ウエハ上に
図1のバイアス制御部BSCTLや電力増幅部HPABKが形成される。特に限定はされないが、BSCTLとHPABKは、それぞれ異なる半導体ウエハ上に形成される。その後、当該半導体ウエハは、ダイシング工程等を経て各半導体チップに分断される。次いで、
図6のS11において、当該半導体チップ(BSCTL,HPABK)がモジュール配線基板(代表的にはセラミック配線基板)上に実装されたのち、S12において、バイアスの補正処理が行われる。
【0040】
S12では、補正システムがオンとなり(S121)、補正量の探索が行われたのち(S122)、補正システムがオフとなり(S123)、補正結果が保存される(S124)。すなわち、
図1で述べたように、高周波システム部RFSYSが補正動作モードに設定されることでバイアス補正ループが構築され(S121)、外部検査装置等からテスト用の所定のバイアス指示コードVBCDとこれに対応する基準電圧Vrefが与えられることで、最適なビット補正値ΔBCの探索が行われ(S122)、その結果がラッチされる。その後、例えば、バイアス制御部BSCTLが記憶部MEMとして不揮発性メモリを備える場合には、MEM内に当該ラッチ情報が保存される(S124)。一方、MEMとしてその他の手段(フューズやボンディングワイヤ等)を備える場合には、当該ラッチ情報が外部検査装置等に一旦読み出され、その後のフューズ切断工程やボンディングワイヤ工程で当該ラッチ情報が反映される。
【0041】
このようなバイアスの補正処理(S12)を経たのち、バイアス補正が行われた状態で高周波システム部RFSYSに対して送信電力特性を含む所定の電気的特性の検査が行われ(S13)、その結果、良品となったものが出荷される(S14)。この際には、バイアス補正が行われているため、高周波システム部RFSYSの歩留まり向上が期待できる。その後は、前述したように、セットメーカ等によって当該高周波システム部RFSYSとベースバンドユニットBBU等が組み合わされ、例えば
図14のような方式で補正が行われる。この際には、高周波システム部RFSYSのバイアス補正が行われているため、セットメーカの負担を軽減できる。
【0042】
以上、本実施の形態1の無線通信装置を用いることで、代表的には、送信電力特性の向上や、送信電力特性を向上させるために必要なリソースの低減が実現可能になる。
【0043】
(実施の形態2)
《無線通信装置の主要部の概要(変形例[1])》
図7は、本発明の実施の形態2による無線通信装置において、その主要部の概略構成例を示すブロック図である。
図7に示す無線通信装置は、
図1の構成例と比較して、高周波電力増幅器HPAが縦続接続された2段構成の回路を備える点と、これに応じて2個のバイアス検出回路SENS[1],SENS[2]が備わった点と、ディジタル・アナログ変換回路DACから2種類のバイアス設定用電圧Vb[1],Vb[2]が出力される点が異なっている。DACに対しては、当該Vb[1],Vb[2]にそれぞれ対応して、バイアス指示コードVBCDとして2種類のコードが入力される。HPAは、入力電力信号Pinが入力されるドライバ回路DRVと、その後段に配置され、出力電力信号Poutを出力する電力増幅回路PAを備える。バイアス生成回路BSGENは、Vb[1]に応じてDRVにバイアスを供給し、Vb[2]に応じてPAにバイアスを供給する。SENS[1]はDRVのバイアスを検出し、SENS[2]はPAのバイアスを検出する。
【0044】
《バイアス検出回路の詳細(変形例[1])》
図8は、
図7の無線通信装置において、そのバイアス検出回路周りの詳細な構成例を示す回路図である。
図8の構成例は、前述した
図3の構成例を拡張したものとなっており、
図8のバイアス生成回路BSGENは、それぞれが
図3に示した回路を持つ2組のバイアス生成回路BSGEN[1],BSGEN[2]を備える。BSGEN[1]は、バイアス設定用電圧Vb[1]を受けて動作し、BSGEN[2]は、バイアス設定用電圧Vb[2]を受けて動作する。
図8のバイアス検出回路SENSは、
図3で述べた抵抗Rsmdの一端(外部端子PNr)に2個のスイッチSWb[1],SWb[2]の一端が共通に接続された構成を備えている。SWb[1]の他端は、バイアス制御部BSCTLの外部端子PNi[1]およびBSGEN[1]の外部端子PNo[1]を介して前述したダイオードの一端に結合され、SWb[2]の他端は、BSCTLの外部端子PNi[2]およびBSGEN[2]の外部端子PNo[2]を介して前述したダイオードの一端に結合される。
【0045】
このような構成例を用いると、前述した補正動作モードの際に、所定のテスト用のバイアス設定用電圧Vb[1]ならびにそれに対応する基準電圧Vrefが印加された状態で、スイッチSWb[1]/SWb[2]をオン/オフに駆動することで、BSGEN[1]を流れる電流Ib’[1]に基づいてドライバ回路DRVのバイアスを補正できる。同様に、所定のテスト用のバイアス設定用電圧Vb[2]ならびにそれに対応するVrefが印加された状態で、SWb[1]/SWb[2]をオフ/オンに駆動することで、BSGEN[2]を流れる電流Ib’[2]に基づいて電力増幅回路PAのバイアスを補正できる。この際には、スイッチSWb[1],SWb[2]の切り替えによって、抵抗Rsmdを共有化できるため、回路規模(リソース)の増大を抑制できる。
【0046】
図9は、
図7の無線通信装置において、そのバイアス補正に伴う動作例を示す説明図である。例えば、各バイアス設定用電圧Vb(Vb[1],Vb[2])毎の補正観測ポイントが1点の場合、バイアス生成回路BSGEN内の各素子特性のバランスのズレや、ディジタル・アナログ変換回路DACの線形特性のズレ等に応じて、Vbの変化に対する実際のバイアスの変化量にばらつきが生じる恐れがある。すなわち、例えば
図8のVb[1]とIb’[1]との関係式が所望の特性からズレる場合がある。そこで、
図9に示すように、各Vb毎に補正観測ポイントを複数とすることで、Vbと実際のバイアスの関係式を補正することが可能になる。
【0047】
図9の例では、Vb[1]の値を補正観測ポイントV1_1に設定した場合の実際のバイアス(その反映値(
図8のIb’[1]))と補正観測ポイントV1_2に設定した場合の実際のバイアスと(その反映値)が、それぞれ所定の値となるようにVb[1]の補正を行っている。同様に、Vb[2]の値を補正観測ポイントV2_1に設定した場合の実際のバイアス(その反映値(
図8のIb’[2]))と補正観測ポイントV2_2に設定した場合の実際のバイアス(その反映値)とがそれぞれ、所定の値となるようにVb[2]の補正を行っている。なお、実際には、このような関係式を補正するために、例えば、各Vb(バイアス指示コードVBCD)の設定値毎にどの程度の補正を加えればよいかを定める相関テーブルが設けられ、当該相関テーブルの値が前述した補正によって定められ、記憶部MEMに保存されることになる。また、
図9の例では、実際のバイアスによって送信電力レベル(Pout)が一義的に定まることを前提として図示を行っている。
【0048】
以上、本実施の形態2の無線通信装置を用いることで、実施の形態1で述べた各種効果に加えて、更に、高周波電力増幅器HPAが複数段の回路で構成されていても、バイアス検出回路(抵抗Rsmd)および誤差増幅器EAb等の共通化によって送信電力特性を向上させるために必要なリソースの増大を抑制することが可能になる。また、補正観測ポイントを複数とすることによって、バイアス指示コードVBCDと送信電力レベルとの関係をより高精度化することが可能になる。
【0049】
(実施の形態3)
《無線通信装置の主要部の概要(変形例[2])》
図10は、本発明の実施の形態3による無線通信装置において、その主要部の概略構成例を示すブロック図である。
図10に示す無線通信装置は、コア用電力増幅部HPABK_CRと、追加用電力増幅部HPABK_AD1,HPABK_AD2を備えている。各電力増幅部は、それぞれ異なる半導体チップによって実現され、同一のシステム配線基板(代表的にはセラミック基板)上に実装される。コア用電力増幅部は、例えば、GSM(登録商標)(Global System for Mobile Communications)(所謂2G)、W−CDMA(所謂3G)、LTEといった複数の通信方式(マルチモード)、複数の周波数帯(マルチバンド)の中で、世界的に使用されることが多い通信方式および周波数帯の高周波電力増幅器を纏めたものである。一方、追加用電力増幅部は、コア用電力増幅部以外の通信方式および周波数帯に対応する高周波電力増幅器を含み、例えば、地域毎に異なる周波数帯に対応するために設けられるものである。
【0050】
コア用電力増幅部HPABK_CRは、
図1のバイアス制御部BSCTLで述べたディジタル・アナログ変換回路DAC、補正回路CC、記憶部MEM、および誤差増幅器EAbを備えている。更に、これに加えて、選択回路SEL、バイアス生成回路BSGEN_C、高周波電力増幅器HPA_C1,HPA_C2、バイアス検出サブ回路SSEN_C1,SSEN_C2、制御論理回路LOG、およびスイッチSWb_C1,SWb_C2,SWb_A1,SWb_A2を備えている。
【0051】
選択回路SELは、ディジタル・アナログ変換回路DACからの出力信号(バイアス設定用電圧Vb)をバイアス生成回路BSGEN_Cに出力するか、あるいは追加用電力増幅部HPABK_AD1,HPABK_AD2に向けて出力するかを選択する。BSGEN_Cは、高周波電力増幅器HPA_C1,HPA_C2に対してそれぞれバイアスを供給し、バイアス検出サブ回路SSEN_C1,SSEN_C2は、それぞれHPA_C1,HPA_C2に供給されるバイアスを検出する。SSEN_C1の検出結果(例えば電流)は、スイッチSWb_C1を介して外部に接続された共通の抵抗Rsmdに供給され、その電圧変換値が誤差増幅器EAbに入力される。同様に、SSEN_C2の検出結果(例えば電流)は、スイッチSWb_C2を介して共通のRsmdに供給され、その電圧変換値がEAbに入力される。
【0052】
制御論理回路LOGは、図示しないベースバンドユニットからの指示に応じて、例えば、使用する高周波電力増幅器の選択(これに伴う選択回路SELの選択先の決定)を行ったり、選択されない高周波電力増幅器を非活性化する等の処理を行う。また、LOGは、補正動作モード時に、高周波電力増幅器の補正対象に応じて前述した各スイッチSWb_C1,SWb_C2,SWb_A1,SWb_A2のいずれか1個をオンに制御し、通常動作モード時には、各スイッチを全てオフに制御する。バイアス検出サブ回路SSEN_C1,SSEN_C2のそれぞれは、例えば、
図3の例では、スイッチSWbの一端からダイオードの一端までの配線に該当することになる。このように、コア用電力増幅部HPABK_CRは、
図1におけるバイアス制御部BSCTLおよび電力増幅部HPABKを兼ね備えたような構成となっており、実施の形態1または実施の形態2と同様な動作によって、高周波電力増幅器HPA_C1,HPA_C2のバイアスをそれぞれ補正する。
【0053】
また、追加用電力増幅部HPABK_AD1は、バイアス生成回路BSGEN_A1、高周波電力増幅器HPA_A1、およびバイアス検出サブ回路SSEN_A1を備える。SSEN_A1の検出結果(例えば電流)は、コア用電力増幅部HPABK_CRに入力され、HPABK_CR内のスイッチSWb_A1を介して共通の抵抗Rsmdに供給され、その電圧変換値が誤差増幅器EAbに入力される。同様に、追加用電力増幅部HPABK_AD2は、バイアス生成回路BSGEN_A2、高周波電力増幅器HPA_A2、およびバイアス検出サブ回路SSEN_A2を備える。SSEN_A2の検出結果(例えば電流)は、HPABK_CRに入力され、HPABK_CR内のスイッチSWb_A2を介して共通のRsmdに供給され、その電圧変換値がEAbに入力される。
【0054】
このように、コア用電力増幅部HPABK_CR内に
図1のバイアス制御部BSCTLを設け、当該BSCTLをHPABK_CR内の高周波電力増幅器と追加用電力増幅部HPABK_AD1,HPABK_AD2内の各高周波電力増幅器で共通に使用することで、小さいリソース(回路規模等)で各高周波電力増幅器のバイアスを補正できる。また、HPABK_CRには、元々、不揮発性メモリが設けられる場合があり、このような場合には、記憶部MEMを当該不揮発性メモリで実現すれば、リソースの増大を抑制することが可能になる。
【0055】
(実施の形態4)
《無線通信装置の主要部の概要(変形例[3])》
図11は、本発明の実施の形態4による無線通信装置において、その主要部の概略構成例を示すブロック図である。
図11に示す無線通信装置は、
図1の構成例と比較して、
図1の電力増幅部HPABKが
図11の高周波電力増幅器モジュールHPAMDで実現され、
図1のバイアス制御部BSCTLが
図11の高周波信号処理装置RFICで実現されたものとなっている。HPAMDは、一つのモジュール配線基板で実現され、高周波電力増幅器HPA、バイアス生成回路BSGEN、およびバイアス検出回路SENSが形成された半導体チップのほかに、HPAの出力経路に、図示しない各種部品が当該モジュール配線基板上に実装されたものとなっている。各種部品は、代表的には、出力整合回路や、HPAの送信電力レベルを検出する方向性結合器(カプラ)や、送信信号と受信信号を周波数帯で分離するディプレクサ等に該当する。
【0056】
高周波信号処理装置RFICは、例えば、一つの半導体チップで実現され、
図1のバイアス制御部BSCTLを構成する各種回路に加えて、ロウノイズアンプ回路LNA、送信用/受信用ミキサ回路MIX、フェーズロックドループ回路PLL、直交変調器/直交復調器IQMOD等が備わっている。LNAは、アンテナ(図示せず)からの受信信号を増幅する。直交復調器IQMODは、例えば、2個の受信用ミキサ回路MIXによって実現され、各ミキサ回路が、PLLによって生成された位相が90°異なる局部発振信号を用いてLNAの出力信号をベースバンド信号にダウンコンバート(周波数変換)することで実現される。同様に、直交変調器IQMODは、例えば、2個の送信用ミキサ回路MIXによって実現され、各ミキサ回路が、PLLによって生成された位相が90°異なる局部発振信号を用いて直交ベースバンド信号(I信号、Q信号)をアップコンバート(周波数変換)し、その結果をベクトル合成することで実現される。
【0057】
このような高周波信号処理装置RFICは、近年、高機能化が進んでおり、場合によっては不揮発性メモリが搭載される場合がある。このような場合には、記憶部MEMを当該不揮発性メモリで実現すれば、リソースの増大を抑制することが可能になる。
【0058】
(実施の形態5)
《無線通信装置の主要部の概要(変形例[4])》
図12は、本発明の実施の形態5による無線通信装置において、その主要部の概略構成例を示すブロック図である。
図12に示す無線通信装置は、
図7の構成例と比較して、電力増幅部HPABK内に方向性結合器(カプラ)CPLおよび電力検出回路PDETCが追加され、バイアス制御部BSCTL内に選択スイッチSWS1、誤差増幅器EAapc、およびバイアス補正回路BCCが追加された構成となっている。CPLは電力増幅回路PAの出力電力を検波し、PDETCは、CPLによって検波された出力電力の大きさを検出し、その大きさに比例する電圧値を持つ検出電圧信号VDETを出力する。
【0059】
誤差増幅器EAapcは、検出電圧信号VDETとベースバンドユニットBBUからの電力指示信号Vrampとの誤差を増幅し、バイアス補正回路BCCは、当該誤差が小さくなるようにバイアス設定用電圧Vb[1],Vb[2]の値を自動調整する。このように、バイアス補正回路BCCからバイアス生成回路BSGEN、高周波電力増幅器HPA、カプラCPL、電力検出回路PDETC、誤差増幅器EAapcを介してBCCに戻るループはAPC(Automatic Power Control)ループ等と呼ばれ、GSM(登録商標)系の携帯電話機等で広く使用されている。選択スイッチSWS1は、誤差増幅器EAbの入力を、
図7で述べたバイアス検出回路SENS[1],SENS[2]側とするか、あるいは検出電圧信号VDETとするかを選択する。VDET側が選択された場合、ディジタル・アナログ変換回路DACからバイアス生成回路BSGEN、高周波電力増幅器HPA、カプラCPL、電力検出回路PDETC、誤差増幅器EAb、補正回路CCを介してDACに戻る電力補正ループが構築される。
【0060】
このような構成例においては、まず、選択スイッチSWS1がバイアス検出回路側とされ、これまでに述べたバイアス補正ループを用いてバイアスの補正が行われ、その前提で、SWS1が検出電圧信号VDET側に切り替えられ、電力補正ループを用いた電力の補正が行われる。具体的には、まず、バイアス補正ループによってディジタル・アナログ変換回路DACへのバイアス指示コードVBCDと実際の供給バイアス(例えば
図3のIb’)との関係が所定の関係となるように、DACから出力されるバイアス設定用電圧に加える第1補正量が決定される。
【0061】
これにより、バイアス指示コードVBCDと、バイアス設定用電圧およびそれに加える第1補正量との関係を表す第1相関テーブルが得られる。通常動作モードにおいて、あるVBCDを受けた際には、第1相関テーブルを参照することで、所定のバイアス設定用電圧(V1とする)に第1補正量(ΔV1とする)を加えた第1補正後のバイアス電圧(=V1+ΔV1)が得られることになる。ここで、第1補正量(ΔV1)は、DACやBSGENのばらつきを表す。
【0062】
電力補正ループにおいては、例えば、一定電力レベルの入力電力信号Pinを入力した状態で、バイアス補正が行われた状態のバイアス設定用電圧(第1補正後のバイアス設定用電圧)を変更しながら、検出電圧信号VDETの変化量が観測される。この際には、当該第1補正後のバイアス設定用電圧とVDETの理想的な関係に基づいて、当該第1補正後のバイアス設定用電圧の変更に応じた適切な基準電圧Vrefが印加され、補正回路CCは、当該VrefとVDETの誤差を無くすためにDACに加えるべき第2補正量を決定する。
【0063】
これにより、当該第1補正後のバイアス電圧とそれに加える第2補正量との関係を表す第2相関テーブルが得られる。通常動作モードにおいて、ある第1補正後のバイアス設定用電圧(=V1+ΔV1)を受けた際に、第2相関テーブルを参照することで、当該第1補正後のバイアス設定用電圧に第2補正量(ΔV2とする)を加えた第2補正後のバイアス設定用電圧(=V1+ΔV1+ΔV2)が得られることになる。そして、この第2補正後のバイアス設定用電圧が最終的なバイアス設定用電圧Vbとして出力される。ここで、第2補正量(ΔV2)は、HPA、CPL、およびPDETCのばらつきを表す。
【0064】
図12における補正回路CCは、このような第1相関テーブルおよび第2相関テーブルを参照しながらの補正処理を行うため計算部CALCが備わっている。ここで、第2相関テーブルを作成する際には、バイアスのばらつき補正に伴いばらつき要因が既に減っているため、限られたリソースの中で最適な補正パラメータが得られ易い状態になっている。このように、バイアスのばらつき補正に加えて、送信電力ならびにその検出電力のばらつき補正を行うことで、
図1で述べた各種効果に加えて、更に、例えば次のような効果が得られる。
【0065】
まず、前述した
図14の方式等によってシステム全体の補正を行う際に、ばらつき要因が更に減っていることから、よりセットメーカの負担が低減できる。また、送信電力レベルのばらつきをある程度補正できることから、部品メーカにおいて、補正に伴う負担が若干増大するものの、電力増幅部(半導体チップ)の歩留まりを更に向上させることが可能になる。
【0066】
なお、検出電圧信号VDETは、W−CDMA、LTE等では、入力電力信号Pinの出力元となる高周波電力増幅器HPA前段における可変利得増幅回路(図示せず)のゲイン等に反映されるが、GSM(登録商標)等では、
図12に示したように、電力補正ループの内側に設けられるAPCループに反映される。このようなAPCループでは、電力指示信号Vrampと検出電圧信号VDETが一致するようにバイアス補正回路BCCが自動的にバイアス電圧の調整を行ってしまうため、前述した第1補正および第2補正が反映されない場合がある。このような場合、例えばBCCにおいて、誤差増幅器EAapcの出力とバイアス設定用電圧Vb[1],Vb[2]との関係に、前述した第1および第2補正に応じたオフセットを持たせるようにすればよい。
【0067】
(実施の形態6)
《無線通信装置の主要部の概要(変形例[5])》
図13は、本発明の実施の形態6による無線通信装置において、その主要部の概略構成例を示すブロック図である。
図13に示す無線通信装置は、
図1の構成例と比較して、電力増幅部HPABK内のバイアス検出回路が削除され、その代わりに、バイアス制御部BSCTLにおいて、電流源IBSおよび選択スイッチSWS2が追加された構成となっている。SWS2は、ディジタル・アナログ変換回路DACの出力をバイアス生成回路BSGENに供給するか、電流源IBSからの出力をBSGENに供給するかを選択する。
【0068】
例えば、前述した
図2のようなバイアス生成回路BSGENを前提とする場合、バイアス設定用電圧Vbの印加ノードに電流源IBSからの所定の電流を印加することで、当該ノード(Vb)に抵抗RbやダイオードDb1,Db2の製造ばらつきが反映された電圧が生成される。そこで、誤差増幅器EAbを用いて当該ノード(Vb)に生成された電圧と予め算出される所定の基準電圧Vrefとの誤差を検出すれば、その大きさに応じて、通常動作モードの際にDACに反映させるべきビット補正値ΔBCの値をある程度見積もることができる。
【0069】
このような構成例を用いると、DACから出力されるバイアス設定用電圧Vb自体のばらつき補正は困難となるが、バイアス生成回路BSGEN内の製造ばらつきはある程度補正することが可能になる。この際には、
図1のようなバイアス検出回路SENSや、SENSからバイアス制御部BSCTLに戻す経路が不要となるため、簡素な構成(小さいリソース)で補正を実現することが可能になる。
【0070】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0071】
例えば、
図7や
図10の構成例では、複数のバイアス検出回路を設ける構成としたが、同一半導体チップ内のバイアス生成回路BSGENには同様な製造ばらつきが生じるという前提のもとで、1個の半導体チップ内に代表的に1個のバイアス検出回路を設けるようなことも可能である。また、例えば、
図1等の構成例では、誤差増幅器EAbとして差動増幅回路を用いたが、場合によっては、アナログ・ディジタル変換回路ならびにその出力に応じてビット補正値を算出する演算回路等で代替することも可能である。