特許第5758800号(P5758800)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5758800-粉炭製造方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5758800
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】粉炭製造方法
(51)【国際特許分類】
   B02C 23/24 20060101AFI20150716BHJP
   C10B 57/10 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
   B02C23/24
   C10B57/10
【請求項の数】13
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-511036(P2011-511036)
(86)(22)【出願日】2009年6月2日
(65)【公表番号】特表2011-522916(P2011-522916A)
(43)【公表日】2011年8月4日
(86)【国際出願番号】EP2009056763
(87)【国際公開番号】WO2009147153
(87)【国際公開日】20091210
【審査請求日】2011年12月13日
(31)【優先権主張番号】91451
(32)【優先日】2008年6月2日
(33)【優先権主張国】LU
(73)【特許権者】
【識別番号】500173376
【氏名又は名称】ポール ヴルス エス.エイ.
【氏名又は名称原語表記】PAUL WURTH S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100096448
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 嘉明
(72)【発明者】
【氏名】シュミット、ルイス
(72)【発明者】
【氏名】スタマタキス、ジョルジュ
(72)【発明者】
【氏名】ジャンク、ガイ
【審査官】 ▲吉▼澤 英一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭51−046302(JP,A)
【文献】 特開昭60−143844(JP,A)
【文献】 特開昭54−108062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 57/10
C10B 57/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥気体を熱気体発生装置中において所定温度まで加熱する工程、
加熱された乾燥気体を粉砕機中へ送り込む工程、
原料炭を粉砕して粉炭とする粉砕機中に原料炭を投入する工程、
乾燥気体と粉炭の混合物を粉砕機から収集し、及び該混合物を乾燥気体から乾燥された粉炭を分離するためのフィルターへ送り込む工程、
乾燥された粉炭をさらなる使用のために収集し、及び乾燥気体の少なくとも一部を熱気体発生装置へ戻すため、乾燥気体をフィルターから再循環ラインへ送り込む工程、及び
乾燥気体中の酸素レベルを測定し、及び測定された酸素レベルを所定の酸素レベル閾値と比較する工程から構成される粉炭製造方法であって、
乾燥気体中の酸素レベルが、加熱された乾燥気体が供給されると共に原料炭を粉砕機に投入される粉砕サイクル中に測定され、
再循環ラインにおいて、乾燥気体中に新鮮空気が注入され、
もし測定された酸素レベルが所定の酸素レベル閾値より高い場合は、乾燥気体中へ注入される新鮮空気容積がまず減じられ、
注入される新鮮空気容積ゼロとしても、酸素レベルが猶所定の酸素閾値よりも高い場合は、乾燥気体が粉砕機中へ送り込まれる前に乾燥気体中に水が注入され、その注入される水量が、酸素レベルが所定の酸素レベル閾値以下まで減じられるように計算された量であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記所定の酸素閾値が0〜14容積%の範囲内で選定されることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記所定の酸素閾値が5〜12容積%の範囲内で選定されることを特徴とする請求項記載の方法。
【請求項4】
粉砕機から出てくる乾燥気体と粉炭の混合物の出口温度を測定する工程、及び
乾燥気体が粉砕機中へ送り込まれる前に加熱された乾燥気体中へ注入される水量を調節することによって出口温度を調節する工程が含まれ、その注入される水量は出口温度が好ましい処理温度となるように計算された量であることを特徴とする請求項1〜
のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
原料炭の投入がない状態で加熱された乾燥気体が粉砕機中へ送り込まれ、かつ出口温度が第一温度閾値以下に保持される作動開始サイクルと、
加熱された乾燥気体が粉砕機中に送り込まれ、原料炭が粉砕機中に投入され、出口温度が好ましい処理温度に保持される粉砕サイクルが含まれ、
前記処理開始段階において、前記乾燥気体が第一温度閾値以上の温度まで加熱され、加熱された乾燥気体中に水が注入され、その注入される水量は加熱された乾燥気体の温度を下げて第一温度閾値以下の出口温度が得られるように計算された水量であり、及び
粉砕サイクルの開始段階において、加熱された乾燥気体中へ注入される水量が出口温度の降下を補償するように減じられることを特徴とする請求項記載の方法。
【請求項6】
前記加熱された乾燥気体中へ注入される水量が出口温度によって決められる割合で減じられることを特徴とする請求項4又は記載の方法。
【請求項7】
前記加熱された乾燥気体中へ注入される水量が粉砕機の全体に亘って測定される圧力降下に基づいて決定される割合で減じられることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記粉砕サイクル処理工程中、かつ出口温度降下の補償後に、
乾燥気体の加熱程度を減ずる工程、及び
加熱された乾燥気体中へ注入される水量を減じて所望の出口温度に保持する工程が含められることを特徴とする請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
再循環ラインにおいて、乾燥気体の少なくとも一部が排ガスとして引き出されることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
再循環ラインにおいて、新鮮空気及び又は熱気体が乾燥気体中に注入されることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
出口温度を継続してモニターし、測定された出口温度を最高温度と比較する工程、及び
測定された出口温度が最高温度を超える場合において、加熱された乾燥気体中に注入される水量を増加させる工程が含まれることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
乾燥気体が、ランス型バーナーにより熱供給される熱気体発生装置中において加熱されることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
加熱された乾燥気体中に、熱気体発生装置と粉砕機の間に配置される水注入装置を用いて水が注入されることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉炭製造方法、特に冶金工業において用いられる粉炭製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冶金工業においては、通常粉炭が高炉中に可燃物として投入される。高炉の良好な機能を確保するために重要なことは、良質の粉炭を用いること、すなわち、粉炭の密度、大きさ、及び湿度レベルが適当なことである。粉炭は一般的には粉砕乾燥設備中において製造される。この場合、原料炭が粉砕機中において粉砕され、適当な乾燥レベルまで乾燥され、次いで生成された粉炭は貯蔵用ホッパーへ搬送されるか、あるいは直接高炉に使用される。粉砕したばかりの粉炭を熱気流中に晒して粉炭を乾燥させる方法も公知である。また、例えば粉炭を粉砕機からフィルターまで熱気体中に浮遊させて運び、次いで熱気体から粉炭を分離してホッパー中へ送り込むことも公知である。熱気体の一部は粉砕機中へ再度送り込まれる前に再循環及び加熱される。
【0003】
粉砕乾燥設備を正しく機能させるためには、通常フィルターの下流において乾燥気体中の酸素レベルをモニターすることが重要である。この酸素レベルが高くなり過ぎると、乾燥気体と粉炭の混合物が重大な危険性を孕んだ爆発性混合物となる可能性がある。そのため、一般的には、再循環ライン、すなわち乾燥気体を粉砕機まで戻すラインにおいて、乾燥気体からガスが抜き取り排出され、及び新鮮空気が注入される。
【0004】
既知の粉砕乾燥設備においては、乾燥気体中の酸素レベルがモニターされ、測定酸素量が高過ぎることが分かった場合には、再循環ラインにおいて乾燥気体中へ導入される新鮮空気量が減じられる。これによって乾燥気体中の酸素レベルを低下させることが可能となる。
【0005】
しかしながら、原料炭が極めて乾燥しているような状況、及び又は設備が負荷の低下した状態で作動されるような状況においては、乾燥気体中へ導入される新鮮空気量を減少させても酸素レベルを十分に低下させられなくなる可能性がある。実際、乾燥気体中へ導入される新鮮空気量をゼロにしても、すなわち新鮮空気を全く入れなくても、前述した状況において酸素レベルが猶高いまま推移する可能性がある。かかる状況においては、設備に対するいかなるダメージをも防止するためには粉砕乾燥設備を停止させることが必要となる。しかしながら、このように設備を停止させれば生産ロスが生ずるだけでなく、乾燥気体の置き換えあるいは調整に余分なコストを要することになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来方法における欠点を生じない改良された粉炭製造方法を提供することを目的とする。本目的は請求項1項記載の方法によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明により下記工程、すなわち、
熱気体発生装置中において乾燥気体、好ましくは不活性ガスを所定温度まで加熱する工程、
加熱された乾燥気体を粉砕機中へ送り込む工程、
原料炭を粉砕機中へ投入し、該粉砕機によって原料炭を粉砕して粉炭を生成する工程、
粉砕機から乾燥気体と粉炭の混合物を収集して該混合物をフィルターへ送り込み、該フィルターによって乾燥気体から乾燥された粉炭を分離させる工程、
乾燥粉炭をさらなる使用のために収集し、乾燥気体の少なくとも一部を熱気体発生装置へ戻すため、フィルターから乾燥気体を再循環ラインへ送り出す工程、及び
乾燥気体中の酸素レベルを好ましくは再循環ラインにおいて測定し、測定された酸素レベルを所定の酸素レベル閾値と比較する工程、から構成される粉炭製造方法が提供される。
【0008】
本発明の好ましい実施態様において、乾燥気体中の酸素レベルは、加熱された乾燥気体が粉砕機を通して送り込まれ、及び原料炭が粉砕機中へ投入される粉砕サイクル期間中に測定され、粉砕サイクル中に測定された酸素レベルが所定の酸素閾値よりも高い場合には、加熱乾燥気体が粉砕機中へ送り込まれる前に加熱乾燥気体中へ水が注入され、該注入水の容積は酸素レベルが所定の酸素レベル閾値以下まで減少するように計算される。粉砕サイクル中に乾燥気体中へ水を注入することにより、乾燥気体の全体容積が増大し、それによって相対酸素容積を減少させることが可能となる。従って、水の注入により許容可能レベルまで酸素レベルを下げることができ、これにより設備へのダメージを回避し、あるいは粉砕乾燥設備を停止させる必要性を回避することが可能となる。
【0009】
さらに別の好ましい実施態様において、本発明方法には再循環ラインにおいて乾燥気体中へ新鮮空気を注入する工程が含まれ、この工程において測定された酸素レベルが所定酸素レベル閾値よりも高い場合には乾燥気体中へ注入される新鮮空気の容積が減じられる。
【0010】
また、有利な態様として、本発明方法にはまず乾燥気体中へ注入される新鮮空気の容積を減じ、次いで注入される新鮮空気容積がゼロに達し、酸素レベルが猶所定酸素閾値よりも高い場合には、加熱された乾燥気体を粉砕機中へ送り込む前に加熱された乾燥気体中へ水を注入する工程が含まれる。この注入される水量は酸素レベルが所定の酸素レベル閾値以下まで下がるように計算される。
【0011】
好ましくは、前記所定の酸素閾値は、0〜14容積%の範囲内、好ましくは5〜12容積%の範囲内において選定される。
【0012】
本発明のさらに別の観点によれば、本発明方法には、乾燥気体と粉炭から成る混合物の粉砕機からの出口温度を測定し、加熱された乾燥気体が粉砕機中へ送り込まれる前に加熱乾燥気体中に注入される水量を制御することによって該出口温度を制御する工程がさらに含まれる。粉砕機の上流において乾燥気体中へ注入される水量を制御することにより、粉砕機中へ投入される様々な湿気レベルの原料炭によって生ずる温度差を考慮して、粉砕機へ入る乾燥気体の温度が迅速に調節される。これにより、以下において出口温度と記載されるところの、粉砕機から出る乾燥気体の温度を可能な限り一定に保持することが可能となる。
【0013】
本観点は、原料炭の導入なしに加熱された乾燥気体が粉砕機中を通して送り込まれ、かつ出口温度が第一温度閾値以下に保持される作動開始サイクルと、加熱された乾燥気体が粉砕機中を通して送り込まれ、及び原料炭が粉砕機中へ投入され、かつ出口温度が好ましい処理温度に保持される粉砕サイクルから構成される本発明方法において、本発明方法の実施設備の作動開始段階において特に有利である。本発明の重要な観点に従い、本発明方法には、
作動開始サイクルにおいて、前記乾燥気体を第一温度閾値以上まで加熱し、及び加熱された乾燥気体の温度を低下させて出口温度を第一温度閾値以下にするように計算された一定容量の水を加熱された乾燥気体中へ注入する工程と、
粉砕サイクルの開始時点において、出口温度の低下を補償するように加熱された乾燥気体中へ注入される水量を減ずる工程が含まれる。
【0014】
設備の作動開始段階においては、乾燥気体は、通常原料炭が粉砕機中へ投入される前に、設備を通して送り込まれる。これにより、個々の要素を所望される処理温度まで加熱させることが可能となる。この作動開始段階において粉砕機の上流において乾燥気体中へ注入される水量を調節することにより、最大限許容される出口温度以上まで加熱可能な乾燥気体を再度冷却して温度を降下させて粉砕機下流の温度が第一温度閾値を越えないようにすることが可能である。
【0015】
次いで原料炭の投入が開始されると、冷たくかつ湿った原料炭の添加による出口温度の急激な降下が生ずる。熱気体発生装置中における乾燥気体の過熱と該乾燥気体の水注入を介した急激な冷却を行うことにより、粉砕機中へ入り込む乾燥気体の温度を新たな処理条件まで迅速に適合させることが可能である。注入水量を減ずることにより、粉砕機中へ入り込む乾燥気体の温度を急激に上昇させて原料炭の投入により起こる温度降下を補償することが可能である。その結果として、粉炭が低温で製造されるまでの移行時間が明らかに減じられ、あるいは全く必要とされなくなる。使用不能な石炭スラリーの量も大幅に減少され、結果として設備効率が向上される。
【0016】
加熱された乾燥気体中へ注入される水量を出口温度を基準として測定することが可能である。あるいは、加熱された乾燥気体中へ注入される水量を粉砕機の全体に亘って測定した圧力降下を基準として測定することが可能である。また、他の測定方法を単独又は組み合わせて加熱された乾燥気体中へ注入される水量を測定することも可能である。
【0017】
好ましくは、本発明方法に、粉砕サイクル中であって、かつ出口温度の温度降下補償後に乾燥気体の加熱程度を減ずる工程と、加熱された乾燥気体中へ注入される水量を減じて所望の出口温度を保持する工程がさらに含められる。これにより、設備が一旦作動した後のエネルギー消費を軽減することが可能となる。実際、乾燥気体の過熱と後続の冷却は、これらが原料炭投入が開始された時に生ずる温度降下を補償する緩衝的役割を果たすことから、設備の作動開始段階において特に重要である。設備が一旦作動すれば小規模な温度降下が起こるだけであり、緩衝作用を減ずることも可能である。従って、粉砕乾燥設備が正常に作動している状態においては熱気体発生装置中において乾燥気体を過熱させる必要はなく、また後続して処理温度まで冷却させる必要もない。
【0018】
再循環ラインにおいて、乾燥気体の一部を排ガスとして除去することも可能である。再循環ラインにおいて、新鮮空気とは別に、熱気体を乾燥気体中へ注入することも可能である。
【0019】
本発明方法にはさらに、出口温度を継続してモニターし、測定された出口温度を最高温度と比較し、測定された出口温度が最高温度を超えている場合に加熱された乾燥気体中へ注入される水量を増やす工程を含めることも可能である。かかる工程を含めることにより、全般的工程制御に用いられる水注入手段を緊急時の冷却にも用いることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明方法の実施に用いられる粉砕乾燥設備の模式図である。
【発明を実施するための手段】
【0021】
以下に本発明の非限定的な実施態様について記載し、添付図面を参照しながら本発明についてさらに明らかにする。
【0022】
図1は本発明方法を用いた粉炭製造用の粉砕乾燥設備を示す図である。
【0023】
前記粉砕乾燥設備10は、原料炭がコンベア22を経由して送られる該粉砕機20を含んで構成される。粉砕機20中において、原料炭は内部移動片(図示せず)あるいはいずれか他の従来型粉砕手段間において摩砕されて微細粉とされる。同時に、熱乾燥気体が粉砕機20中へ送り込まれることにより粉砕された粉炭が乾燥される。乾燥気体は気体取込口24を通して粉砕機20中へ入る。本粉砕乾燥設備10において、粉砕機20の上流には熱気体発生装置26が配置され、本装置26中において乾燥気体が所定温度まで加熱される。この熱気体発生装置には、例えば複数ランス型バーナー等のバーナー27が備えられる。加熱された乾燥気体は熱気体発生装置26から導管28を通って粉砕機20へ運ばれる。加熱された乾燥気体が粉砕機20を通って気体取入口24から出口30へと通過する時に粉炭が浮遊されて運ばれる。粉炭と乾燥気体の混合物が粉砕機20から導管32を経由してフィルター34へ運ばれ、そこで粉炭が乾燥気体から再度取り除かれて粉炭収集機36へ送られて使用に供される。フィルター34から出た乾燥気体は熱気体発生装置26へ送り戻すため再循環ライン38へ送られる。再循環ライン38には設備全体へ乾燥気体を循環させるためのファン手段40が設けられる。ファン手段40は、再循環ライン38から乾燥気体の一部を取り出すためにライン42、例えばスタックの上流又は下流に配置される。
【0024】
再循環ライン38にはさらに、新鮮空気及び又は熱気体を再循環ライン38中へ注入するための気体注入手段44が設けられる。注入された新鮮空気及び又は熱気体はリサイクル乾燥気体と混合される。新鮮空気の注入により乾燥気体の露点を低下させることが可能となり、この新鮮空気注入熱気体を用いることによって粉砕乾燥回路の熱バランスが改善される。
【0025】
本発明の重要な観点によれば、設備10には水注入手段46が熱気体発生装置26の下流の、かつ粉砕機20の上流となる位置に配備される。この水注入手段46の重要性については以下における説明において明らかにする。
【0026】
水注入手段46は、乾燥気体中の酸素レベルを調節することによって乾燥気体の露点調節を行う際に役立つ。再循環ライン38において、乾燥気体の一部はライン42を介して取り出される一方、気体注入手段44を通して新鮮空気を注入することが可能である。従来型設備においては、安全上の理由から酸素レベルが酸素センサ45を用いてモニターされ、酸素レベルが高過ぎると認められた場合、気体注入手段44に乾燥気体中へ導入される新鮮空気量を減ずるよう指示が為される。しかしながら、気体注入手段44が閉鎖点に達した時、すなわち気体注入手段44が完全に止められて新鮮空気が乾燥気体中へ注入されなくなった時に問題が生ずる。すなわち、酸素レベルが猶高過ぎると分かった時、乾燥気体中へ注入される新鮮空気をさらに減ずることができないため、設備を停止させる必要が生ずる。
【0027】
本発明によれば、水注入手段46を用いて乾燥気体中へ水を注入することにより乾燥気体中の酸素レベルを減少させることが可能である。酸素センサ45によって測定された酸素レベルが高過ぎる時、乾燥気体中へ注入される水量を増やすように水注入手段46に指示が与えられ、これによりフィルター34の下流における酸素レベルを減少させることが可能である。
【0028】
好ましくは、酸素レベルは、まず気体注入手段44によって乾燥気体中へ注入される新鮮空気の容量を減ずる従来方法によって減じられ、それでは十分でない場合に、水注入手段46によって乾燥気体中へ注入される水量が増加されて酸素レベルがさらに引き下げられる。
【0029】
水注入手段46には、なお別に、粉砕機20の出口において乾燥気体の温度調節を補助する機能がある。作動中、乾燥気体は熱気体発生装置26中において所定温度まで加熱され、粉砕機20中へ送り込まれる。乾燥気体の温度は、粉炭を乾燥させるために乾燥気体からの熱が消費されるため、粉砕機20中において低下する。原料炭の湿気レベルによって乾燥気体の温度ロスが決まってくる。フィルター34に対するダメージを防止するため、例えば温度センサ48を用いて粉砕機20から出てくる粉炭と乾燥気体の混合物の温度(以下において出口温度と称する)がモニターされる。
【0030】
出口温度を正確に保持するため、粉砕機へ入る乾燥気体の温度は制御される必要があり、この温度制御は通常熱気体発生装置26に備えられるバーナー27の出力を制御することによって達成される。残念なことに、この制御過程の応答時間が比較的緩慢なため、一旦設備によって出口温度が高過ぎる、あるいは低過ぎると測定されたら、出口温度が正確な出口温度に再度達する時点よりある程度早めに、温度に対応してバーナー27が反応するように構成される。
【0031】
この応答時間は設備の作動開始段階において特に重要である。実際、最初に、原料炭が投入される前に加熱された乾燥気体が設備中へ送り込まれる。これにより設備が加熱されて理想的な処理温度まで達することが可能となる。一定時間経過後、原料炭が粉砕機20中へ投入される際、出口温度が所望の出口温度よりもかなり低温まで急激に低下する。従来技術では、乾燥気体をさらに加熱することによってバーナー27が反応して所望される出口温度に達していた。しかしながら、所望の出口温度に達するまでの時間が大幅に遅れ、その間に得られる粉炭は乾燥が不十分なため廃棄処分しなければならなかった。実際、出口温度が低過ぎる場合の移行期間中には、乾燥された粉炭に代わり、概して使用不能の石炭スラリーが生成される。
【0032】
本発明によれば、作動開始段階において、バーナー27は、乾燥気体を加熱し乾燥気体が所望の出口温度より十分高い温度になるように設定されている。加熱された乾燥気体は、次いで加熱された乾燥気体中への水注入手段46を介した水注入により制御状態下で冷却され、乾燥気体が冷却されることによって所望の出口温度に到達することが可能とされる。粉砕乾燥設備を一定時間加熱した後、原料炭が粉砕機20中へ投入される時に、出口温度が所望された出口温度よりもかなり低温まで急激に降下する。バーナー27の加熱温度を適合させてこの急激な温度降下を補償する操作に代えて、水注入手段46によって乾燥気体中へ注入される水量を減ずる操作が行われる。これにより、加熱された乾燥気体の冷却程度が減じられ、所望された出口温度を安定して保持することが可能となる。この処理に要する反応時間は従来技術に比べてかなり短くなっているため、出口温度が低過ぎる場合の移行期間が短縮され、及び使用不能な石炭スラリーの生成も低減あるいは防止される。
【0033】
本方法は作動開始段階において、すなわち原料炭が粉砕機中へ最初に投入されてからすぐ後の移行期間において、最大かつ劇的な利点を示すことに注目すべきである。しかしながら、本方法には設備の標準的操作においても利点がある。原料炭中の水分が減少して、急激な温度降下が起こっても出口温度を迅速に所望の出口温度に戻すことが可能である。
【0034】
エネルギー消費を最適化するために、一旦出口温度が安定したら、乾燥気体の加熱及び後続する冷却の双方を減ずる方が有利である。このような後続冷却が不要な場合は、水注入装置の供給を止めることも可能である。
【0035】
利点として、水注入手段46は緊急時の冷却にも利用される。本発明方法には出口温度を継続してモニターして、測定された出口温度を最高温度と比較する操作を含めることも可能である。測定された出口温度が最高温度を超える場合には、水注入手段46に加熱された乾燥気体中へ注入される水量を増やすように指示が伝えられ、これによって粉砕機20中へ入る乾燥気体の温度が低下され、結果として粉砕機20から出る乾燥気体の温度も低下される。
【符号の説明】
【0036】
10:粉砕乾燥設備
20:粉砕機
22:コンベア
24:気体取り込み口
26:熱気体発生装置
27:バーナー
28:導管
30:気体出口
32:導管
34:フィルター
36:粉炭収集装置
38:再循環ライン
40:ファン手段
42:ライン
44:気体注入手段
45:酸素センサ
46:水注入手段
48:温度センサ
図1