(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5758835
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】バリアブルリラクタンス型レゾルバの設計方法
(51)【国際特許分類】
G01D 5/20 20060101AFI20150716BHJP
【FI】
G01D5/20 110B
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-91806(P2012-91806)
(22)【出願日】2012年4月13日
(65)【公開番号】特開2013-221774(P2013-221774A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2014年4月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】594183299
【氏名又は名称】株式会社松尾製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳田 英治
(72)【発明者】
【氏名】南 彰一
(72)【発明者】
【氏名】関冨 勇治
(72)【発明者】
【氏名】高橋 亨
(72)【発明者】
【氏名】今枝 宏旨
(72)【発明者】
【氏名】小木曽 紀春
(72)【発明者】
【氏名】山下 重利
【審査官】
岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−251733(JP,A)
【文献】
特開2008−164435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00− 5/252
G01D 5/39− 5/62
G01B 7/00− 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータの内部に、非真円形状のコアからなるロータを回転可能に軸支したバリアブルリラクタンス型レゾルバ
の設計方法であって、
回転角度θにおけるギャップをδ
θ、最小ギャップをδ
min、ロータの外径振幅をr、軸倍角をNとした場合、前記ロータの外形形状を、
【数1】
の式を
用いて設計する、ことを特徴とするバリアブルリラクタンス型レゾルバ
の設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリアブルリラクタンス(VR)型レゾルバ
の設計方法に関し、特に、レゾルバのロータの外形形状
の設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、回転角度や転位置の計測等に用いられるVR型レゾルバが広く知られている。VR型レゾルバは、磁路中に設けたギャップの変動によりトランスの効率が変化することを利用したレゾルバである。かかるVR型レゾルバでは、ロータとステータとの間に形成されるギャップが、ロータの回転に伴い周期的に変化するように、ロータの形状が設定されている。このロータの形状(ひいては、ギャップの変動パターン)は、レゾルバの精度等に大きな影響を与える。そのため、従来からレゾルバのロータの形状に関して種々の技術が提案されていた。
【0003】
たとえば、特許文献1には、回転角度θにおけるギャップδ
θが下記式1を満たすように、ロータの外形形状を設定することが提案されている。なお、式1において、δ
0は90度および270度位置におけるステータとロータの間のギャップであり、δ
1は0度位置におけるステータとロータの間のギャップ、nは軸倍角、Kは定数である。この特許文献1の技術によれば、精度をより向上することができる。
【数1】
【0004】
また、特許文献2には、ステータとロータとの間のギャップgが下記式2および式3で表される値をとるように構成することも提案されている。なお、式2,3において、δ
0は90度および270度位置におけるステータとロータの間のギャップであり、δ
1は0度位置におけるステータとロータの間のギャップ、mは軸倍角、kは誤差補正定数である。
【数2】
【数3】
【0005】
さらに、特許文献3には、ステータとロータの間のギャップδが下記式4の値をとるように構成することが提案されている。なお、式4において、Rsはステータ内半径、Aはオフセット値(定数)、Nは軸倍角、rは突極の半径(定数)である。
【数4】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−118416号公報
【特許文献2】特開2008−164435号公報
【特許文献3】特開2005−49183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1,2の技術では、軸倍角の値によっては、ロータ形状を適切に設定できないという問題があった。例えば、軸倍角が4の倍数の場合、δ
0=δ
1となる。この場合、式1で定義されるギャップδ
θは、δ
θ=δ
0となり、回転角度に関わらず常に一定の値となるという問題が生じる。また、δ
0=δ
1の場合、式3で定義されるβが無限大になってしまい、式2に基づいて、ギャップg(ひいては、ロータ外形)を求めることができない。
【0008】
特許文献3の技術によれば、軸倍角に関わらず、ギャップを求めることができる。しかし、特許文献3の技術では、ギャップが正弦波の逆数で変化しないという問題があった。すなわち、VR型レゾルバでは、ギャップパーミアンス(ギャップの逆数)が正弦波で変化することが望ましい。しかし、特許文献3の技術の場合、オフセット値Aと突極の半径rを調整したとしても、ギャップパーミアンスを正弦波状に変化させることはできなかった。
【0009】
つまり、従来、ギャップ、ひいては、ロータ外形を、軸倍角に関わらず、適切に設定でき得る技術はなかった。そこで、本発明では、ロータ外形が、軸倍角に関わらず、適切に設定されたレゾルバ
の設計方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のレゾルバ
の設計方法は、ステータの内部に、非真円形状のコアからなるロータを回転可能に軸支したバリアブルリラクタンス型レゾルバ
の設計方法であって、回転角度θにおけるギャップをδ
θ、最小ギャップをδ
min、ロータの外径振幅をr、軸倍角をNとした場合、前記ロータの外形形状を、
【数5】
の式を
用いて設計する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、軸倍角の値に関わらず、常に、ロータを適切な形状に設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態であるレゾルバの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態であるVR型レゾルバ10を示す図である。VR型レゾルバ10は、磁性体からなるステータ12と、当該ステータ12の内部に回転可能に配置されたロータ14と、を備えている。ステータ12には、ロータ14の回転中心に向かって突出した複数の磁極(図示せず)が設けられている。これら磁極には、励磁巻線、出力巻線(S
IN巻線、COS巻線)が設けられている。このステータ12の内形は、ロータ14の回転中心を中心とした円形となっている。
【0014】
ロータ14は、ステータ12の内部に回転可能に設けられており、磁性体からなる。このロータ14は、回転に伴い、ステータ12との間のギャップδ
θが周期的に変化し得る外形に設定されている。より具体的に説明すると、本実施形態では、ロータ14の外形を、下記式5,6を満たすような形状としている。
【数6】
【数7】
【0015】
ここで、式5,6において、R
θはロータの外径(半径)、Rsはステータの内径、δ
θは回転角度(機械角度)θにおけるステータ12とロータ14との間のギャップ、δ
minは、ステータ12とロータ14との間のギャップの最小値であり、Nは軸倍角である。また、rは、ロータ14の外径振幅(ロータ14の半径の最大値R
maxとR
minの差の1/2、r=(R
max−R
min)/2)である。また、
図1は、軸倍角N=4の場合を示している。
【0016】
ここで、ギャップδ
θを式6のように設定する理由について説明する。レゾルバ10の出力電圧V
outは、ファラデーの電磁誘導の法則により以下の式7,8で計算される。なお、式7,8においてV
outは出力電圧、N
inは励磁巻数、Rmは磁気抵抗、Sは断面積、N
outは出力巻数、Iは電流、δはギャップ、μは透磁率である。
Rm=δ/μS ・・・ 式7
V
out∝(N
in・N
out)/Rm ・・・ 式8
【0017】
式8から明らかなとおり、出力電圧V
outは、巻数N
in,N
outに比例し、磁気抵抗Rmに反比例する。また、式7から明らかなとおり、磁気抵抗Rmは、ギャップδに比例している。したがって、出力電圧V
outは、ギャップδに反比例(キャップδの逆数に比例)しているといえる。
【0018】
レゾルバ10では、ロータ14の回転によってステータ12とロータ14間のギャップを変化させてSIN波とCOS波を出力し、角度を検出している。したがって、出力電圧V
outは、ロータ14の回転に伴い、正弦波状に変化することが望ましいといえる。そして、出力電圧V
outを正弦波状に変化させるためには、ギャップδの逆数が正弦波状に変化することが必要となる。
【0019】
δ
θの逆数が、正弦波状に変化する場合、δ
θは、式9のように表すことができる。なお、式9において、A,Bは定数である。
1/δ
θ=A・sin(θN)+B ・・・ 式9
【0020】
ここで、上述したとおり、ギャップδ
θの最小値をδ
minとし、外径振幅をrとした場合、ギャップδ
θの最大値は(δ
min+2r)となる。また、ギャップの逆数(1/δ
θ)は、θN=90度のとき最大値(1/δ
min)となり、θN=270度のとき最小値(1/(δ
min+2r))となる。これを、式9にあてはめると、次の式10,11が得られる。
1/δ
min=A・sin(90)+B ・・・ 式10
1/(δ
min+2r)=A・sin(270)+B ・・・ 式11
【0021】
この式10,11を解くと定数A,Bは、それぞれ、式12,13のようになる。
A=r/{δ
min(δ
min+2r)} ・・・ 式12
B=(δ
min+r)/{δ
min(δ
min+2r)} ・・・ 式13
そして、この式12,13を式9に代入し、整理すると、
【数8】
となり、ギャップδ
θは、式6になることがわかる。つまり、本実施形態によれば、ギャップδ
θは、正弦波の逆数で変化するようになり、出力電圧V
outが正弦波で変化する。
【0022】
また、式6から明らかなとおり、本実施形態では、ギャップδ
θを定義するにあたって、特許文献1,2のように、δ
0(回転角度90度および270度位置におけるステータ12とロータ14の間のギャップ)や、δ
1(0度位置におけるステータ12とロータ14の間のギャップ)のようなパラメータを利用していない。その結果、軸倍角Nの値に関わらず、常に、ロータ14を適切に設定することができる。
【0023】
つまり、式5,6に基づいてギャップδ
θ、ロータ14の外形を設定する本実施形態によれば、ギャップδ
θを、軸倍角に関わらず、常に、正弦波の逆数で変化させることができ、ひいては、出力電圧V
outを正弦波状に変化させることができる。なお、本実施形態では、軸倍角が4の場合を例に挙げて説明したが、当然ながら、軸倍角の値は適宜、変更されてよい。
【符号の説明】
【0024】
10 レゾルバ、12 ステータ、14 ロータ。