(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態につき、
図1〜
図8を参照しつつ詳細に説明する。本実施の形態は、打ち込み工具の一例として電気−空気式釘打機を用いて説明する。
図1及び
図2に示すように、釘打機100は、概括的に見て、本体ハウジング101と、マガジン105を主体として構成される。本体ハウジング101は、工具本体して規定されており、釘打機100の外郭を形成している。マガジン105には、被加工材に打ち込まれる釘(図示省略)が装填されている。本体ハウジング101は、ほぼ対称形の1対のハウジングを合わせて結合して形成されている。当該本体ハウジング101は、ハンドル103、打ち込み機構収容部101A、圧縮装置収容部101B、モータ収容部101Cを一体に備えている。
【0022】
ハンドル部103、打ち込み機構収容部101A、圧縮装置収容部101B及びモータ収容部101Cは、概ね方形状に配置されている。ハンドル部103は、所定長さで延在する長尺状の部材であり、その延在方向一端側が打ち込み機構収容部101Aの一端側に連接され、延在方向他端側がモータ収容部101Cの一端側が連接されている。一方、圧縮装置収容部101Bは、ハンドル部103に対して概ね並行状に延在され、その延在方向の一端部が打ち込み機構収容部101Aの他端側に連接され、延在方向他端側がモータ収容部101Cの他端側に連接されている。これにより釘打機100は、ハンドル部103、打ち込み機構収容部101A、圧縮装置収容部101B及びモータ収容部101Cによって囲まれた空間Sを形成している。
【0023】
図1に示すように、釘打機100は、先端部(
図1の右端)にドライバガイド141とLED107が配置されている。
図1において右方向が釘の打ち出し方向である。なお、説明の便宜上、釘打機100の先端側(
図1の右側)を前側又は前方、その反対側(
図1の左側)を後側又は後方という。また、釘打機100におけるハンドル部103の打ち込み機構収容部101Aとの連接側(
図1の上側)を上側又は上方、ハンドル部103のモータ収容部101Cとの連接側(
図1の下側)を下側又は下方という。
【0024】
図3に示すように、打ち込み機構収容部101Aは、釘打ち込み機構120収容している。釘打ち込み機構120は、打ち込みシリンダ121及び打ち込みピストン123を主体として構成される。この打ち込みシリンダ121が、本発明における「第2シリンダ」に対応し、打ち込みピストン123が、本発明における「第2ピストン」に対応する実施構成例である。
【0025】
打ち込みシリンダ121内には、釘を打込む打ち込みピストン123が前後方向(長軸方向)に摺動自在に収容されている。打ち込みピストン123は、打ち込みシリンダ121内に摺動自在に収容されたピストン本体部124と、当該ピストン本体部124に一体状に設けられて前方へと延在する釘打ち込み用の長尺状のドライバ125とから構成されている。ピストン本体部124とドライバ125は、シリンダ室121aに供給される圧縮空気によって打ち込みシリンダ121の長軸方向に直線状に移動可能に構成されている。これにより、ドライバ125がドライバガイド141の打ち込み通路141a内を前方に移動することで釘を打ち出すように構成されている。打ち込みシリンダ室121aは、打ち込みシリンダ121の内壁面とピストン本体部124の後側の面とにより囲まれる空間として形成されている。ドライバガイド141は、打ち込みシリンダ121の先端部に配置され、先端に釘の射出口を有する打ち込み通路141aを備えている。
【0026】
図1に示すように、マガジン105は、本体ハウジング101の先端側、すなわち、圧縮装置収容部101Bの前方に配置されている。このマガジン105は、釘を収容している。また、マガジン105は、ドライバガイド141に連結されており、打ち込み通路141aに対して、釘を供給するよう構成されている。なお、
図3に示すように、マガジン105には、釘を供給方向(
図3の上方)に押すためのプッシャプレート105aが設けられている。このプッシャプレート105aによって釘がドライバガイド141の打ち込み通路141aに打ち込み方向と交差する方向から1本ずつ供給される。
【0027】
図3に示すように、圧縮装置収容部101Bは、圧縮装置130を収容している。圧縮装置130は、圧縮シリンダ131と、圧縮ピストン133と、クランク機構115を主体として構成される。圧縮ピストン133は、圧縮シリンダ131内を上下方向に摺動自在に配置されている。この圧縮シリンダ131が、本発明における「第1シリンダ」に対応し、圧縮ピストン133が、本発明における「第1ピストン」に対応する実施構成例である。
【0028】
圧縮シリンダ131は、マガジン105に沿って配置され、その上端側が打ち込みシリンダ121の前側端部に連接されている。そして、圧縮ピストン133がマガジン105に沿って上下方向に摺動動作するように配置されている。この圧縮ピストン133の動作方向は、打ち込みピストン123の動作方向と概ね直交している。圧縮ピストン133が上下方向に摺動動作することで、圧縮シリンダ131の内部空間である圧縮室131aの容積が変化する。すなわち、圧縮ピストン133が圧縮室131aの容積を減少する上方側へと移動することで圧縮室131aの空気を圧縮する。この圧縮室131aは、打ち込みシリンダ121と近接する上部側に形成されている。また、圧縮シリンダ131は、大気解放バルブ(図示省略)を備えており、圧縮室131aを大気に解放可能に構成されている。大気開放バルブは、常時は閉状態に保持されている。
【0029】
図3に示すように、モータ収容部101Cは、電動モータ111を収容している。電動モータ111は、その回転軸線が打ち込みシリンダ121の長軸線に対して概ね平行となるように配置されている。従って、電動モータ111の回転軸線は、圧縮ピストン133の動作方向に対しては直交している。なお、モータ収容部101Cの下部側には、バッテリ装着領域が形成されており、電動モータ111に電力を供給する充電式のバッテリパック110が着脱可能に装着される。このバッテリパック110が、本発明における「バッテリ」に対応する実施構成例である。
【0030】
図3に示すように、電動モータ111の回転出力は、遊星歯車式の減速機構113によって適宜減速された後、クランク機構115に伝達される。そして、電動モータ111の回転出力は、クランク機構115によって直線運動に変換されて圧縮ピストン133に伝達される。減速機構113及びクランク機構115は、圧縮装置収容部101Bの後方領域とモータ収容部101Cの前方領域にわたって配置された内側ハウジング102内に収容されている。
【0031】
クランク機構115は、クランク軸115aと偏心ピン115bと連接ロッド115cを主体として構成されている。クランク軸115aは、遊星歯車式の減速機構113に連接し、減速機構113で減速回転された電動モータ111の回転出力によって回転駆動される。偏心ピン115bは、クランク軸115aの回転中心から偏心した位置に設けられている。連接ロッド115cは、一端が偏心ピン115bに相対回動自在に連接され、他端が圧縮ピストン133に相対回動自在に連接されている。このクランク機構115は、圧縮シリンダ131の下方に配置されている。以上の構成により、圧縮装置130として、圧縮シリンダ131、圧縮ピストン133及びクランク機構115を主体としたレシプロ式の圧縮装置が構成されている。このクランク機構150と電動モータ111をあわせた構成が、本発明における「駆動機構」に対応する実施構成例である。また、クランク軸115a、電動モータ111がそれぞれ、本発明における「クランク部材」、「モータ」に対応する実施構成例である。
【0032】
ハンドル部103には、トリガ103aとトリガスイッチ103bと制御装置109が設けられている。そして、電動モータ111は、ハンドル部103に設けられたトリガ103aと本体ハウジング101の先端領域に設けられたドライバガイド141の操作に応じて、制御装置109によって駆動と停止が制御される。すなわち、トリガ103aが引き操作されることでトリガスイッチ103bがオン状態となる。一方、トリガ103aの引き操作が解除されることでトリガスイッチ103bがオフ状態となる。なお、トリガ103aは、ハンドル部103、打ち込み機構収容部101A、圧縮装置収容部101B及びモータ収容部101Cによって囲まれる空間Sに向かって突出して配置されている。
【0033】
他方、コンタクトアームとしてのドライバガイド141は、釘打機100の前後方向に移動可能に本体ハウジング101の先端領域に配置されている。
図6に示すように、ドライバガイド141は、付勢ばね142により前方に向かって付勢されている。ドライバガイド141が前方に位置するときには、コンタクトアームスイッチ143がオフ状態となる。一方、ドライバガイド141が本体ハウジング107側に移動されたときには、コンタクトアームスイッチ143がオン状態となる。そして、電動モータ111は、トリガスイッチ103bとコンタクトアームスイッチ143が共にオン状態に切替えられたときに通電駆動され、いずれか一方がオフ状態に切替えられたときに停止される。
【0034】
図5に示すように、釘打機100は、圧縮シリンダ131の圧縮室131aと打ち込みシリンダ121のシリンダ室121aとを連通する空気通路135およびバルブ室137aを備えている。
【0035】
図5に示すように、空気通路135は、連通ポート135a、連通ポート135b、連通路135c、環状溝121cおよびバルブ室137aを主体として構成されている。
図4に示すように、連通ポート135aは、圧縮シリンダ131のシリンダヘッド131bに形成されている。この連通ポート135aは、圧縮室131aに連通している。また、
図5に示すように、連通ポート135bは、打ち込み用シリンダ121のシリンダヘッド121bに形成されている。この連通ポート135bは、バルブ室137aに連通している。連通路135cは、連通ポート135aと連通ポート135bを連通させている。この連通路135cは、パイプ状部材により形成され、打ち込みシリンダ121に沿って前後方向に直線状に延在している。
【0036】
図5に示すように、打ち込み連通ポート135bは、バルブ室137aの周面に形成された環状溝121cに連通している。この環状溝121cは、バルブ室137aに連通している。さらに、バルブ室137aは、シリンダ室121aに連通している。これにより、連通ポート135bは、環状溝121cおよびバルブ室137aを介してシリンダ室121aに連通している。バルブ室137aには、空気通路135を開放及び閉鎖する電磁バルブ137が収容されている。この電磁バルブ137が、本発明における「弁部材」に対応する実施構成例である。
【0037】
電磁バルブ137は、打ち込みピストン123のピストン本体部124とほぼ同じ直径を有する円柱状部材である。電磁バルブ137は、バルブ室137a内を前後方向に移動可能に配置されている。電磁バルブ137の後方には、電磁石138が配置されている。そして、電磁石138に対する通電を切り替えることで、電磁バルブ137は前後方向に移動する。電磁バルブ137の外周には、前後方向に所定間隔で2個のOリング139a,139bが配置されている。電磁バルブ137は、後方へ移動することで環状溝121cを開放し、前方へ移動することで環状溝121cを閉じる。
【0038】
具体的には、
図6に示すように、前側のOリング139aは、環状溝121cの前方においてバルブ室137aの内壁面と接触することで、環状溝121cとシリンダ室121aとの連通を遮断する。また、
図7に示すように、Oリング139aが、環状溝121cの領域内へ移動すると、環状溝121cがシリンダ室121aと連通する。なお、後側のOリング139bは、圧縮空気が連通ポート135bから外側へ漏れ出ることを防止するためものであり、環状溝121cの開閉には関与しない。このように、空気通路135を開閉する電磁バルブ137は、空気通路135のうち、打ち込みシリンダ121のシリンダ室121aとの接続側に設けられている。
【0039】
電磁バルブ137は、
図6に示すように、常時には電磁石138によって環状溝121cを閉じる前方に配置されている。また、ストッパ136は、電磁バルブ137の前方に配置され、電磁バルブ137の前方への移動を規制している。このストッパ136は、シリンダ室121a内に径方向に突出するフランジ状の部材によって形成されている。さらに、ストッパ136は、後方へ移動する打ち込みピストン123の後端位置を規定している。
【0040】
次に、釘打機100の作用および使用方法について説明する。釘打機100は、
図3に示すように、打ち込みピストン123が最後端位置(
図3の左端位置)に位置し、かつ圧縮ピストン133が最下端位置(下死点)に位置した状態が初期位置として定められている。すなわち、クランク角度が0度(下死点)のときを初期状態としている。
【0041】
図3に示す初期状態において、ドライバガイド141が被加工材に押し当てられてコンタクトアームスイッチ143(
図6参照)がオン状態とされるとともに、トリガ103aが引き操作されてトリガスイッチ103bがオン状態に切替えられると、電動モータ111が通電駆動される。これによって減速機構113を介してクランク機構115が駆動され、圧縮ピストン133が上方へと移動する。このとき、電磁バルブ137は、空気通路135を閉鎖しているため、圧縮ピストン133の移動によって、圧縮室131a内に閉じ込められた空気が圧縮される。
【0042】
クランク角度が180度である圧縮ピストン133が最上端位置(上死点)に達したとき、すなわち、圧縮室131a内の圧縮空気が最大圧縮状態とされたとき、電磁石138によって、電磁バルブ137が後方へ移動される。これにより、環状溝121cがシリンダ室121aに連通する。これにより、圧縮室131a内の圧縮空気が空気通路135を経てシリンダ室121a内へと供給される。シリンダ室121a内に圧縮空気が供給されると、当該圧縮空気による空気ばねの作用によって、
図7に示すように、打ち込みピストン123が前方へ移動される。そして、前方へと移動された打ち込みピストン123のドライバ125がドライバガイド141の打ち込み通路141aに待機している釘を打撃する。これにより、釘が打ち出される、いわゆる打ち出し動作が行われ、打ち出された釘が被加工材に打込まれる。
【0043】
打ち出し動作後、圧縮ピストン133は下死点へ向かって移動する。すると、圧縮室131aの容積が増加されて当該圧縮室131a内の空気が大気圧よりも低い負圧となる。圧縮室131a内に発生した負圧は、空気通路135及びシリンダ室121aを通じて打ち込みピストン123に作用する。これにより、
図8に示すように、打ち込みピストン123が吸引されて後方へと移動される。そして、打ち込みピストン123は、ストッパ136と当接して初期位置に位置する。電磁バルブ137は、打ち込みピストン123が初期位置に移動されるまでは、空気通路135の開放状態を維持する。打ち込みピストン123が初期位置に位置すると、電磁バルブ137が前方に移動され、空気通路135を閉じる。なお、圧縮ピストン133が初期位置に復帰すると、トリガスイッチ103b及びコンタクトアームスイッチ143がオン状態に維持されていても、電動モータ111に対する通電が遮断され、電動モータ111が停止される。このように、打ち出し動作の1サイクルが終了する。なお、打ち出し動作中には、LED107が、ドライバガイド141の先端領域を照射している。
【0044】
以上の釘打機100においては、釘の打ち出し動作中に、バッテリパック110の充電切れやバッテリパック110が意図せず外れること等により電動モータ111に対して通電が停止されることがある。また、その他の打ち出し動作時のトラブルなどが生じる可能性がある。上記の場合において、圧縮ピストン133が下死点に停止していない場合がある。圧縮ピストン133が下死点に停止していない場合において、打ち出し動作を開始すると、打ち出し動作開始時の圧縮ピストン133の位置によって、圧縮ピストン133が生成する圧縮空気の圧縮量が異なる。そのため、打ち出し動作毎に打ち出される釘のスピードが一定とならず、被加工材に対する釘の打ち込み量が異なってしまう。そのため、本実施形態においては、打ち出し動作を行う前に、圧縮ピストン133が下死点に位置してない場合には、圧縮ピストン133を下死点に移動させる復帰動作が行われる。なお、復帰動作は、圧縮シリンダ131に形成された大気解放バルブを開いて、圧縮室131aを大気に解放した状態で行われる。
【0045】
具体的には、
図3に示すように、釘打機100は、磁気センサ150を備えている。磁気センサ150は、磁石151、ホール素子152を主体として構成されている。磁石150は、クランク軸115aに設けられている。一方、ホール素子151は、圧縮装置収容部101Bの磁石150と対向する位置に設けられている。ホール素子151は、バッテリパック110と電気的に接続されており、さらに、制御装置109に接続されている。この磁気センサ150が、本発明における「センサ」に対応する実施構成例である。
【0046】
磁気センサ150は、打ち出し動作を行う前に、磁石151の磁界によってホール素子152に生じるホール効果に基づいて、クランク軸115aの位置を測定している。すなわち、磁石150の位置によって磁束密度が異なるため、磁束密度に応じたホール素子151の出力電圧に基づいて、制御装置109がクランク軸115aの位置を測定している。これにより、クランク軸115aに連接された圧縮ピストン133の位置を検出している。
【0047】
磁気センサ150が、圧縮ピストン133の位置を検出するタイミングは、打ち出し動作を行う前である。具体的には、以下の各タイミングで、磁気センサ150がクランク軸115aの位置を測定している。
タイミング1:バッテリパック110がバッテリ装着領域に装着された時
タイミング2:トリガ103aが操作された時
タイミング3:ドライバガイド141が被加工材に押し当てられた時
【0048】
磁気センサ150は、タイミング1〜3の少なくとも1つのタイミングにおいて、クランク軸115aの位置を測定する。すなわち、タイミング1〜3のうち選択されたタイミングにおいて、磁気センサ150がクランク軸115aの位置を測定するように構成されている。磁気センサ150がクランク軸115aの位置を測定するタイミングは、制御装置109に予め設定されている。
【0049】
例えば、打ち込み具の打ち出し動作中に、バッテリパック110の充電切れや、意図せずバッテリパック110が外れることによって、圧縮ピストン133が下死点以外の位置で停止してしまうことがある。そこで、タイミング1において、磁気センサ150がクランク軸115aの位置を測定することで、圧縮ピストン133の位置を検出する。そして、圧縮ピストン133が下死点以外の位置に位置している場合には、制御装置109が電動111モータを駆動させて、圧縮ピストン133を下死点に移動させる。
【0050】
また一方で、釘打機100は、1回の打ち出し動作が終了すると、圧縮ピストン133は上死点から下死点に移動し、下死点に停止するよう構成されている。しかしながら、圧縮ピストン133の移動によって生じる慣性力によって、圧縮ピストン133が正確に下死点に停止しない場合がある。また、打ち出し動作開始後に、トリガ103aの操作を中止したり、ドライバガイド141の押し当てが解除されたりした場合には、打ち出し動作を途中で圧縮ピストン133が停止することになる。そこで、タイミング2において、打ち出し動作を開始しようとして、ユーザがトリガ103aを操作した際に、磁気センサ150がクランク軸115aの位置を測定する。この場合は、タイミング2において磁気センサ150がクランク軸115aの位置を測定することなく、タイミング3において、磁気センサ150がクランク軸115aの位置を測定してもよい。クランク軸115aの位置を測定することで、圧縮ピストン133の位置を検出する。そして、圧縮ピストン133が下死点以外の位置に位置している場合には、制御装置109が電動111モータを駆動させて、圧縮ピストン133を下死点に移動させる。
【0051】
また、釘打機100においては、複数の釘を任意の時間間隔で連続して打ち出す連発動作が行われることがある。すなわち、1回の打ち出し動作の後、トリガ103aを引いた状態で、被加工材に押し当てられたドライバガイド141の押し当てを解除し、被加工材における他の部分に再度ドライバガイド141を押し当てることによって、次の釘の打ち出し動作を行う連発動作が行われる。言い換えると、通常の打ち出し動作においては、トリガ103aに対する1度の操作毎に1つの釘が打ち出されるが、連発動作においては、トリガ103aが1度操作された状態で、複数の釘が打ち出される。この連発動作においては、タイミング2において、最初に打ち出し動作を開始しようとして、ユーザがトリガ103aを操作した際に、磁気センサ150がクランク軸115aの位置を測定する。これにより、複数の打ち出し動作のうち、最初の打ち出し動作の開始前にのみ、磁気センサ150がクランク軸115aの位置を測定する。なお、連発動作を行う場合に、各打ち出し動作の前のドライバガイド141が押し当てられたタイミング3において、磁気センサ150がクランク軸115aの位置を測定してもよい。また、連発動作においては、タイミング2とタイミング3において、磁気センサ150がクランク軸115aの位置を測定してもよい。クランク軸115aの位置を測定することで、圧縮ピストン133の位置を検出する。そして、圧縮ピストン133が下死点以外の位置に位置している場合には、制御装置109が電動111モータを駆動させて、圧縮ピストン133を下死点に移動させる。
【0052】
圧縮ピストン133を下死点に移動させる復帰動作においては、圧縮室131a内の空気を圧縮しないように、制御装置109は、圧縮ピストン133を移動させる。すなわち、圧縮ピストン133は、上死点を通過することなく、下死点まで移動される。
【0053】
具体的には、磁気センサ150が、クランク軸115aがクランク角度0度から180度の間に位置していることを測定した場合、言い換えると、打ち出し動作における下死点から上死点に向かう途中の位置に圧縮ピストン133が位置していると検出された場合には、制御装置109は、電動モータ111を逆回転させて圧縮ピストン133を下死点に移動させる。
【0054】
一方、磁気センサ150が、クランク軸115aがクランク角度180度から360度の間に位置していることを測定した場合、言い換えると、打ち出し動作における上死点から下死点に向かう途中の位置に圧縮ピストン133が位置していると検出された場合には、制御装置109は、電動モータ111を正回転させて圧縮ピストン133を下死点に移動させる。以上のように電動モータ111を制御することで、圧縮ピストン133は、上死点を通過することなく、下死点まで移動される。
【0055】
以上の復帰動作は、圧縮ピストン133を下死点まで一度に移動させる第1復帰動作と、圧縮ピストン133を下死点まで移動させる間に圧縮ピストン133を間欠的に移動させる第2復帰動作を選択するように構成されている。すなわち、第1復帰動作においては、圧縮ピストン133は、加速された後、等速移動し、その後減速されて下死点で停止する。一方、第2復帰動作においては、圧縮ピストン133は、等速移動と停止とを繰り返して、最終的に下死点で停止される。したがって、第2復帰動作においては、圧縮ピストン133は、間欠的に移動される。
【0056】
ユーザが打ち出し動作を開始する際に、圧縮ピストン133が下死点以外に位置することが検出された場合には、第1復帰動作によって、圧縮ピストン133が下死点に移動される。すなわち、タイミング2あるいはタイミング3における復帰動作は、第1復帰動作によって行われる。ユーザが打ち出し動作を開始する際には、素早く圧縮ピストン133を下死点に移動させる必要があり、第1復帰動作によって圧縮ピストン133を下死点に移動させることが合理的である。
【0057】
一方、バッテリパック110が装着された際に、圧縮ピストン133が下死点以外に位置することが検出された場合には、第2復帰動作によって、圧縮ピストン133が下死点に移動される。すなわち、タイミング1における復帰動作は、第2復帰動作によって行われる。バッテリパック110が装着されただけでは、ユーザが即時に打ち出し動作を開始するか否かが不明である。そのため、バッテリパック110が装着された際には、第2復帰動作によって、圧縮ピストン133を下死点に移動させることにより復帰動作を行う。これにより、圧縮ピストン133の間欠移動によって生じる振動によって、ユーザに復帰動作が行われていることを報知する。この第2復帰動作が、本発明における「報知手段」に対応する実施構成例である。
【0058】
また、LED107は、打ち出し動作の際には、ドライバガイド141の先端領域を照射している。一方、復帰動作の際には、制御装置109は、LED107を点滅させる。これにより、ユーザに対して、復帰動作が行われていることを報知する。なお、LED107が点滅する構成に限られず、LED107が照射する光の色を打ち出し動作と復帰動作とで変えるように構成してもよい。このLED107が、本発明における「報知手段」に対応する実施構成例である。
【0059】
本実施形態によれば、打ち出し動作を開始する前に、圧縮ピストン133を下死点に移動させているため、打ち出し動作において、空気に対して圧縮ピストン133が圧縮する圧縮量を一定にすることができる。これにより、打ち出し動作毎における、打ち出される打ち込み具を所定のスピードで打ち出すことができる。
【0060】
また、本実施形態によれば、磁気センサ150は、圧縮ピストン133を直接測定する必要がない。すなわち、圧縮ピストン133のように圧縮シリンダ131などで囲まれた部材の位置を直接測定する必要がない。したがって、クランク軸115aや電動モータ111のモータ軸の位置を測定することで、容易に圧縮ピストン133の位置を検出することができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、バッテリパック110を装着した際に、復帰動作を行うため、打ち出し動作を行う前に、圧縮ピストン133を下死点に位置させることができる。特に、バッテリパック110が外される際には、バッテリパック110の充電切れが生じていたり、バッテリパック110が意図せず外されてしまったりする場合がある。そのような場合であっても、バッテリパック110を装着した際に、常に圧縮ピストン133を下死点に移動させることができる。
【0062】
また、本実施形態によれば、圧縮ピストン133が上死点を通過することなく、圧縮ピストン133を下死点に移動させることができる。これにより、圧縮ピストン133を移動させる際に、圧縮シリンダ131内の空気を圧縮することがない。したがって、圧縮ピストン133を移動させる際に、意図せず釘が打ち出されることを防止できる。
【0063】
また、本実施形態によれば、報知手段であるLED107や復帰動作のうち第2復帰動作等が設けられているため、ユーザに復帰動作が行われていることを知らせることができる。
【0064】
以上の本実施形態においては、空気通路135を開閉させるための弁部材として、電磁バルブ137を用いて説明したが、機械的に動作するメカニカルバルブを用いてもよい。
【0065】
また、本実施形態においては、第2復帰動作は、圧縮ピストン133を間欠的に移動させる構成であるが、第1復帰動作と異なる動作であれば、圧縮ピストン133の間欠的な移動には限定されない。例えば、第2復帰動作は、圧縮ピストン133が加速と減速を繰り返して下死点まで移動する構成であってもよい。
【0066】
また、本実施形態においては、第2復帰動作における圧縮ピストン133の間欠移動によって生じる振動や、LED107による光の照射によって、復帰動作が行われていることをユーザに報知していたが、これには限られない。例えば、釘打機100の後方に設けられたLED108が光を照射することで、復帰動作が行われていることをユーザに報知してもよい。また、報知手段として、スピーカを備えた音源発生装置が釘打機100に搭載されていてもよい。
【0067】
また、本実施形態においては、バッテリパック110の装着や、トリガ103aおよびドライバガイド141の操作によって、磁気センサ150が、クランク軸115aの位置を測定するように構成されていたが、これには限られない。例えば、磁気センサ150がクランク軸115aの位置を測定するための、ユーザが操作可能なリセットスイッチが設けられていてもよい。
【0068】
また、本実施形態においては、磁気センサ150は、クランク軸115aの位置を測定していたが、これには限られない。例えば、電動モータ111のモータ軸に磁石151が取り付けられており、磁気センサ150は、当該モータ軸の回転位置を測定することで、圧縮ピストン133の位置を検出してもよい。また、磁気センサ150が圧縮ピストン133の位置を測定するように構成されていてもよい。また、センサとしては、磁気センサの他に、受光部と発光部を備えたフォトインタラプタなどを用いてもよい。
【0069】
また、本実施形態においては、磁気センサ150が圧縮ピストン133の位置を検出すると同時に圧縮ピストン133を下死点に移動させているが、これには限られない。例えば、バッテリパック110が装着された時や、打ち出し動作終了後の所定時間経過した時に、予め磁気センサ150が圧縮ピストン133の位置を検出しておき、ユーザが打ち出し動作を開始しようとしてトリガ103aを操作した時に、圧縮ピストン133を下死点に移動させるように構成されていてもよい。この場合には、釘打機100は、圧縮ピストン133の位置を記憶する記憶装置を備えていることが好ましい。
【0070】
なお、本実施形態は、打ち込み工具として釘打機100を例にして説明したが、釘打機以外のタッカー、ステープラーと呼ばれる打ち込み工具に適用してもよい。また、打ち込み工具としてバッテリパック110が装着される工具に限られず、電源コードから電力が供給される工具であってもよい。また、駆動機構として、電動モータ111以外にもエンジン等を用いてもよい。
【0071】
以上の発明の趣旨に鑑み、本発明に係る打ち込み工具は、下記の態様が構成可能である。
(態様1)
「請求項1に記載の打ち込み工具であって、
前記復帰動作は、前記第1ピストンが前記下死点まで一度に移動する第1復帰動作と、前記第1ピストンを間欠的に移動させて前記下死点まで移動させる第2の復帰動作を有することを特徴とする打ち込み工具。」
【0072】
(態様2)
「請求項7に記載の打ち込み工具であって、
前記駆動機構は、モータを有し、
前記センサが、前記第1シリンダが前記下死点と上死点の間の当該上死点に向かう位置に位置することを検出した場合には、
前記モータが逆回転されて、前記第1シリンダを前記下死点に移動させることを特徴とする打ち込み工具。」
【0073】
(態様3)
「態様2に記載の打ち込み工具であって、
前記センサが、前記第1シリンダが前記下死点と前記上死点の間の当該下死点に向かう位置に位置することを検出した場合には、
前記モータは正回転されて、前記第1シリンダを前記下死点に移動させることを特徴とする打ち込み工具。」
【0074】
(態様4)
「請求項8に記載の打ち込み工具であって、
前記報知手段は、発光手段であることを特徴とする打ち込み工具。」
【0075】
(態様5)
「態様4に記載の打ち込み工具であって、
前記発光手段は、前記打ち込み具を打ち出す際には、前記打ち込み具が打ち出される領域を照射する第1照射態様で光を照射し、
前記復帰動作を行う際には、前記第1照射態様とは異なる第2照射態様で光を照射する構成であることを特徴とする打ち込み工具。」
【0076】
(態様6)
「請求項8に記載の打ち込み工具であって、
前記報知手段は、前記打ち込み工具を振動させる振動発生手段であることを特徴とする打ち込み工具。」
【0077】
(本実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係)
本実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係を以下の通りである。なお、本実施形態は、本発明を実施するための形態の一例を示すものであり、本発明は、本実施形態の構成に限定されるものではない。
圧縮シリンダ131は、本発明の「第1シリンダ」に対応する構成の一例である。
圧縮ピストン133は、本発明の「第1ピストン」に対応する構成の一例である。
打ち込みシリンダ121は、本発明の「第2シリンダ」に対応する構成の一例である。
打ち込みピストン123は、本発明の「第2ピストン」に対応する構成の一例である。
電磁バルブ137は、本発明の「弁部材」に対応する構成の一例である。
磁気センサ150は、本発明の「センサ」に対応する構成の一例である。
クランク機構115は、本発明の「駆動機構」に対応する構成の一例である。
クランク軸115aは、本発明の「クランク部材」に対応する構成の一例である。
電動モータ111は、本発明の「駆動機構」に対応する構成の一例である。
電動モータ111は、本発明の「モータ」に対応する構成の一例である。
バッテリパック110は、本発明の「バッテリ」に対応する構成の一例である。
LED107は、本発明の「報知手段」に対応する構成の一例である。
第2復帰動作は、本発明の「報知手段」に対応する構成の一例である。