特許第5758900号(P5758900)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5758900グルコピラノシル置換ベンジルベンゼン誘導体の調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5758900
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】グルコピラノシル置換ベンジルベンゼン誘導体の調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 407/12 20060101AFI20150716BHJP
   C07H 7/04 20060101ALI20150716BHJP
   C07F 3/02 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
   C07D407/12
   C07H7/04
   C07F3/02 B
【請求項の数】20
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2012-531333(P2012-531333)
(86)(22)【出願日】2010年9月24日
(65)【公表番号】特表2013-505975(P2013-505975A)
(43)【公表日】2013年2月21日
(86)【国際出願番号】EP2010064120
(87)【国際公開番号】WO2011039108
(87)【国際公開日】20110407
【審査請求日】2012年3月29日
(31)【優先権主張番号】61/247,144
(32)【優先日】2009年9月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503385923
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーバー ディルク
(72)【発明者】
【氏名】フィードラー トビアス
(72)【発明者】
【氏名】フィルザー クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ハム ライナー
(72)【発明者】
【氏名】オルリッヒ シモーネ
(72)【発明者】
【氏名】ポシュト マティアス
(72)【発明者】
【氏名】レンナー スヴェーニャ
(72)【発明者】
【氏名】ワン シァオ−ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルト トーマス
【審査官】 村守 宏文
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/120208(WO,A1)
【文献】 Handbook of Grignard Reagents,Marcel Dekker, Inc.,1996年,p.79-82
【文献】 Tetrahedron Letters (1986), 27(22), 2435-2438
【文献】 Angewandte Chemie International Edition (2004), 43(25), 3333-3336
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 407/12
C07F 3/02
C07H 7/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式III
【化1】
(式中、R1は、(R)-テトラヒドロフラン-3-イル、(S)-テトラヒドロフラン-3-イルを示し;
R2は、トリメチルシリルを示し;
R'は、水素またはC1-6-アルキルを示す)
のグルコピラノシル置換ベンジルベンゼン誘導体を調製する方法であって、
工程(S2)、(S3)、(S4)及び(S5):
(S2): 下記式VI
【化2】
(式中、R1は、上文のように定義され、Mは、Li、MgまたはMgQを示し、ここで、Qは、Cl、Br、IまたはC3-4-アルキルを示す)
の有機金属化合物と下記一般式IV
【化3】
(式中、R2は、上文で定義された通りである)
のグルコノラクトンとを有機溶媒または2つ以上の有機溶媒の混合物中で反応させる工程; (S3): 1つ以上の酸を含む水溶液を添加して、反応混合物が水相と有機相を形成し、それによって、有機相が1〜6の範囲にあるpHを有する工程;
(S4): 工程(S2)で得られた付加物を含む有機相を水相から分離する工程; および
(S5): 得られた付加物と水またはアルコールR'-OH(ここで、R'は、C1-6-アルキルを示す)、またはその混合物とを1つ以上の酸の存在下に反応させる工程
を含む、前記方法。
【請求項2】
工程(S1):
(S1): 式V
【化4】
(式中、R1は、請求項1に記載のように定義され、Xは、Br、Iまたはトリフレートを示す)の化合物とマグネシウム、リチウム、マグネシウムグリニャール試薬またはリチウム有機化合物とを有機溶媒または2つ以上の有機溶媒の混合物中で反応させて、式VI
【化5】
(式中、R1は、上文のように定義され、Mは、Li、MgまたはMgQを示し、ここで、Qは、Cl、Br、IまたはC3-4-アルキルを示す)
の有機金属化合物を得る工程
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(S1)における式Vの化合物を、C3-4-アルキルマグネシウムクロリドまたはC3-4-アルキルマグネシウムブロミドと反応させる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(S1)の始めに、その間にまたはその終りにおよび/または工程(S2)の始めにまたはその間に、臭化リチウムおよび/または塩化リチウムを反応混合物に添加し、それによって、C3-4-アルキルマグネシウムクロリドまたはC3-4-アルキルマグネシウムブロミドと臭化リチウムおよび/または塩化リチウムとのモル比が1 : 10〜10 : 1の範囲にある、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
式Vの化合物に対するマグネシウム、リチウム、マグネシウムグリニヤール試薬又はリチウム有機化合物の量が、0.5〜2モルの範囲である請求項2〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
工程(S1)及び/又は工程(S2)における有機溶媒が、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、tert-ブチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ヘプタン、トルエン、ベンゼン、ジオキサン、メチルシクロヘキサン、ヘキサン、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタンおよびクロロホルムからなる群から選ばれる請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
工程(S1)及び/又は工程(S2)における反応を、-70℃〜10℃の温度範囲で行う請求項2〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
工程(S2)における式VIの有機金属化合物に対する式IVのグルコノラクトンの量が、0.8〜3モルの範囲である請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
工程(S3)における水溶液が、クエン酸、酒石酸、シュウ酸、コハク酸、酢酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸および硝酸からなる群より選ばれる1つ以上の酸を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
工程(S3)における水溶液が、2〜30質量%のクエン酸を含有する請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程(S3)における水溶液が、5〜20質量%のクエン酸を含有する請求項10記載の方法。
【請求項12】
工程(S3)により有機相のpHが1〜4の範囲となる請求項1〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
工程(S3)における反応混合物の有機相が、2-メチルテトラヒドロフランを反応混合物の有機相の全量に対して2〜60質量%の範囲にある量で含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
反応混合物の有機相の全量に対し、2-メチルテトラヒドロフランの量が10〜40質量%である請求項13記載の方法。
【請求項15】
R'が、水素、メチル又はエチルである請求項1〜14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
工程(S5)において、得られる付加物をアルコールR'-OH(R'-OHは、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノールまたはこれらの混合物からなる群より選ばれる)と反応させる請求項1〜15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
工程(S5)において、一種以上の酸を添加することにより、pHを0〜7にする請求項1〜16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
工程(S5)において、一種以上の酸が、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、酒石酸、シュウ酸およびコハク酸からなる群より選ばれる請求項1〜17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
工程(S5)において、反応温度が-50〜50℃である請求項1〜18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
下記一般式II
【化6】
(式中、R1は、R-テトラヒドロフラン-3-イル又はS-テトラヒドロフラン-3-イルである)
のグルコピラノシル置換ベンジルベンゼン誘導体の合成方法であって、
下記一般式III
【化7】
(式中、R1は、上で定義したとおりであり;
R2は、トリメチルシリルであり;
R'は、水素またはC1-6-アルキルを示す)
のグルコピラノシル置換ベンジルベンゼン誘導体を、請求項1〜19のいずれか1項記載の方法により調製する工程、次いで、
工程(S6):
(S6)一般式IIIのグルコピラノシル置換ベンジルベンゼン誘導体と還元剤とを反応させる工程
を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下記式III
【0002】
【化1】
【0003】
(式中、置換基R1、R2およびR'は、以下のように定義される)
のグルコピラノシル置換ベンジルベンゼン誘導体の調製方法に関する。さらに、本発明は、グルコピラノシル置換ベンジルベンゼン誘導体の調製方法の中間体および出発材料の調製方法に関する。さらに、本発明は、本発明の方法の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
国際公開第2005/092877号パンフレットにおいて、下記一般式
【0005】
【化2】
【0006】
(式中、基R1〜R6、R7a、R7b、およびR7cは、本明細書に定義される通りである)
のグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体が記載されている。このような化合物は、ナトリウム依存性グルコース共輸送体SGLT、特にSGLT2に対して有効な阻害作用を有する。
国際公開第2006/117359号パンフレットにおいて、1-クロロ-4-(β-D-グルコピラノス-1-イル)-2-[4-((S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ)ベンジル]ベンゼンの結晶形およびその合成が記載されている。
国際公開第2006/120208号パンフレットにおいて、下記式
【0007】
【化3】
【0008】
(式中、R1は、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、R-テトラヒドロフラン-3-イル、S-テトラヒドロフラン-3-イルまたはテトラヒドロピラン-4-イルを示す)
の化合物のいくつかの合成方法が記載されている。その中の実施例XVIIIは、1-クロロ-4-(β-D-グルコピラノス-1-イル)-2-(4-(S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシベンジル)ベンゼンの合成に関する。その中の変形例Eによれば、(S)-3-[4-(5-ヨード-2-クロロベンジル)フェノキシ]テトラヒドロフランをi-PrMgCl/LiClとTHF中で低温で反応させて、有機金属中間体を形成する。水中急令工程において、NH4Cl水溶液(25質量%)を添加する。メチル-tert-ブチルエーテルを添加した後、中間生成物を含む有機層を分離する。このプロセスをアップスケールする試みにおいて、水相と有機相を分離すると、例えば3相の形成によって、問題点が生じ得ることが見られた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、式IIIのグルコピラノシル置換ベンジルベンゼン誘導体を調製する有利な方法を見つけることである; 特に生成物が高収量、高エナンチオマーまたはジアステレオマー純度で得ることができ、さらに技術上の支出が少なくかつ反応容器の時間あたりの生産量が大きい工業規模で生成物の製造を可能にする確固たる方法を見出すことである。
本発明の他の目的は、式IIIのグルコピラノシル置換ベンジルベンゼン誘導体を調製する商業的に実行可能な方法であって、水相と有機相の信頼性が高くかつ簡単な分離を可能にする水中急冷工程を含む、前記方法である。
本発明の他の目的は、前述の製造方法の出発材料を調製する方法を提供することである。
本発明の他の目的は、上記や下記の説明から直接当業者に明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様において、本発明は、下記一般式III
【0011】
【化4】
【0012】
(式中、R1は、C1-3-アルキル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、(R)-テトラヒドロフラン-3-イル、(S)-テトラヒドロフラン-3-イルまたはテトラヒドロピラン-4-イルを示し;
R2は、各々独立して、水素、(C1-8-アルキル)カルボニル、(C1-8-アルキル)オキシカルボニル、フェニルカルボニル、フェニル-(C1-3-アルキル)カルボニル、フェニル-C1-3-アルキル、アリル、RaRbRcSi、CRaRbORcを示し、ここで、2つの隣接する基R2は、相互に結合して、架橋基SiRaRb、CRaRbまたはCRaORb-CRaORbを形成してもよく;
R'は、水素またはC1-6-アルキルを示し;
Ra、Rb、Rcは、各々独立して、C1-4-アルキル、フェニルまたはフェニル-C1-3-アルキルを示すが、アルキル基は、ハロゲンによって一置換または多置換されていてもよく;
L1は、各々独立して、フッ素、塩素、臭素、C1-3-アルキル、C1-4-アルコキシおよびニトロより選ばれ;
上記基の定義に挙げられるフェニル基は、L1によって一置換または多置換されていてもよい)
のグルコピラノシル置換ベンジルベンゼン誘導体を調製する方法であって、
工程(S2)、(S3)および(S4):
(S2): 下記式VI
【0013】
【化5】
【0014】
(式中、R1は、上文のように定義され、Mは、Li、MgまたはMgQを示し、ここで、Qは、Cl、Br、Iまたは有機部分を示す)
の有機金属化合物と下記一般式
【0015】
【化6】
【0016】
(式中、R2は、上文で定義された通りである)
のグルコノラクトンとを有機溶媒または2つ以上の有機溶媒の混合物中で反応させる工程;
(S3): 1つ以上の酸を含む水溶液を添加して、反応混合物が水相と有機相を形成し、それによって、有機相が約0〜7の範囲にあるpHを有する工程;
(S4): 工程(S2)で得られた付加物を含む有機相を水相から分離する工程; および
(S5): 得られた付加物と水またはアルコールR'-OH(ここで、R'は、C1-6-アルキルを示す)、またはその混合物とを1つ以上の酸の存在下に反応させる工程
を含む、前記方法に関する。
工程(S3)における水相と有機相の分離がより信頼性が高いので、有機相が約0〜7の範囲にあるpHを有するときに工業規模プロセスにより適していることがわかった。したがって工程(S3)において、1つ以上の酸を含む水溶液を反応混合物に添加すると、有機相が約0〜7の範囲にあるpHを有する。相分離の改善の結果として、一般式IIIのグルコピラノシル置換ベンジルベンゼン誘導体を調製する方法全体が高収量でかつ商業的に実行可能な規模において高純度で生成物が得られる確固たるプロセスであることがわかった。さらに、プロセスの間の溶媒の交換が最低限に保たれかつプロセス全体の時間が最小限になるという利点がある。
国際公開第2006/120208号パンフレットの実施例XVIIIの前に記載されている変形例Eにおいて、NH4Cl水溶液(25質量%)による水中急冷も行われた。しかし、このプロセスをアップスケールする試みにおいて、水相と有機相の分離が、例えば3相の形成によって問題点が生じ得ることが見られた。この実施例によれば、有機相において約9〜10のpHが測定され、本発明の工程(S3)の好適なpHの範囲外にある。
他の態様において、本発明は、上文や下文に記載されている下記一般式III
【0017】
【化7】
【0018】
(式中、R1は、C1-3-アルキル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、R-テトラヒドロフラン-3-イル、S-テトラヒドロフラン-3-イルまたはテトラヒドロピラン-4-イルを示し;
R2は、各々独立して、水素、(C1-8-アルキル)カルボニル、(C1-8-アルキル)オキシカルボニル、フェニルカルボニル、フェニル-(C1-3-アルキル)カルボニル、フェニル-C1-3-アルキル、アリル、RaRbRcSi、CRaRbORcを示し、ここで、2つの隣接する基R2は、相互に結合して、架橋基SiRaRb、CRaRbまたはCRaORb-CRaORbを形成してもよく;
R'は、水素またはC1-6-アルキルを示し;
Ra、Rb、Rcは、各々独立して、C1-4-アルキル、フェニルまたはフェニル-C1-3-アルキルを示すが、アルキル基はハロゲンによって一置換または多置換されていてもよく;
L1は、各々独立して、フッ素、塩素、臭素、C1-3-アルキル、C1-4-アルコキシおよびニトロより選ばれ;
上記の基の定義で挙げたフェニル基は、L1によって一置換または多置換されていてもよい)
のグルコピラノシル置換ベンジルベンゼン誘導体を調製する方法の使用であって、一般式II
【0019】
【化8】
【0020】
(式中、R1は、上文のように定義される)
のグルコピラノシル置換ベンジルベンゼン誘導体の合成であって、工程(S6):
(S6)一般式IIIのグルコピラノシル置換ベンジルベンゼン誘導体と還元剤とを反応させる工程
を含む、前記合成のための前記使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
特に明記しない限り、基、残基および置換基、特にR1、R2、R'、Ra、Rb、Rc、L1、M、Xは、上文や下文のように定義される。
残基、置換基または基が化合物の中に数回出てくる場合には、これらは同じかまたは異なる意味を有してもよい。
本発明の方法および化合物においては、以下の基および置換基の意味が好ましい:
R1は、好ましくはR-テトラヒドロフラン-3-イルまたはS-テトラヒドロフラン-3-イルを示す。
Ra、Rb、Rcは、各々独立して、好ましくはメチル、エチル、n-プロピルまたはi-プロピル、tert-ブチルまたはフェニル; 最も好ましくはメチルを示す。
R2は、好ましくは水素、メチルカルボニル、エチルカルボニルまたはトリメチルシリルを示す。最も好ましくは、R2は、トリメチルシリルを示す。
R'は、好ましくは水素、メチルまたはエチル、最も好ましくはメチルを示す。
式VIの出発材料は、当業者に既知の方法によって得ることができる。本発明の方法は、好ましくは、式VIの有機金属化合物を得るために追加の工程(S1):
(S1): 式V
【0022】
【化9】
【0023】
(式中、R1は、上文のように定義され、Xは、Br、Iまたはトリフレートを示す)
の化合物とマグネシウム、リチウム、マグネシウムグリニャール試薬またはリチウム有機化合物とを有機溶媒または2つ以上の有機溶媒の混合物中で反応させて、式VI
【0024】
【化10】
【0025】
(式中、R1は、上文のように定義され、Mは、Li、MgまたはMgQを示し、ここで、Qは、Cl、Br、Iまたは有機部分を示す)
の有機金属化合物を得る工程
を含む。
以下において、本発明の方法を詳述する。
式IIIのグルコピラノシル置換ベンジルベンゼン誘導体は、D-グルコノラクトンまたはその誘導体から所望のベンジルベンゼン化合物を式VIの有機金属化合物の形で反応させることによって合成することができる(スキーム1)。
スキーム1: 有機金属化合物のグルコノラクトンへの付加
【0026】
【化11】
【0027】
工程(S1)において、式VIの有機金属化合物は、式Vの化合物とマグネシウム、リチウム、マグネシウムグリニャール試薬またはリチウム有機化合物とを有機溶媒または2つ以上の有機溶媒の混合物中で反応させることによって調製される。反応は、いわゆるハロゲン-金属交換反応または炭素-ハロゲン結合への金属の挿入である。基Xは、好ましくはヨウ素を示す。反応は、元素のマグネシウムまたはリチウムによって行われ得る。自然反応が起こらない場合には、ヨウ素、テトラクロロメタンまたはヨードメタンのようなプロモーターが添加され得る。あるいは、反応は、リチウム有機化合物、例えばC1-6-アルキルリチウム、好ましくはn-、sec-またはtert-ブチルリチウムによって行われ得る。好ましくは、反応は、C3-4-アルキル-またはアリール-マグネシウムクロリドまたはブロミド、例えば、イソプロピルまたはsec-ブチルマグネシウムクロリドまたはブロミド、tert-ブチルマグネシウムクロリドまたはブロミド、フェニルマグネシウムクロリドまたはブロミドのようなマグネシウムグリニャール試薬で行われる。このようにして得られたマグネシウムまたはリチウム誘導体化された化合物は、必要により、金属塩、例えば、三塩化セリウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、塩化インジウム、臭化インジウム、臭化銅、または塩化銅でトランスメタル化して、付加に適している別の有機金属化合物(VI)を形成してもよい。プロモーターとして、臭化リチウムおよび/または塩化リチウムのような付加塩を、工程(S1)の始めに、その間にまたはその終りに添加することができる。あるいは、このようなプロモーターを、工程(S2)の始めにまたはその間に添加することができる。最も好ましくは、式Vの化合物を、塩化イソプロピルマグネシウムと塩化リチウムの混合物と反応させる。グリニャール試薬、特にC3-4-アルキルマグネシウムクロリドまたはブロミド、例えば、iPrMgClと、臭化リチウムおよび/または塩化リチウム、特にLiClのモル比は、好ましくは1 : 10〜10 : 1、最も好ましくは約1 : 1の範囲にある。iPrMgCl:LiClの1:1の混合物は、例えば、テトラヒドロフラン中約12〜16% w/wの濃度で市販され、“ターボグリニャール溶液”とも呼ばれる。式Vの化合物に対するマグネシウム、リチウム、マグネシウムグリニャール試薬またはリチウム有機化合物の好適な量は、約0.5〜2モルの範囲にあり、最も好ましくは等モルである。約1モルより少ない量が結果として収量の減少につながり、約1モルより多い量が結果として望まれていない副生成物の形成につながることがわかった。反応は、有機溶媒または2つ以上の有機溶媒の混合物中で行われる。好適な溶媒は、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、tert-ブチルメチルエーテル(TBME)、ジエチルエーテル、ヘプタン、トルエン、ベンゼン、ジオキサン、メチルシクロヘキサン、ヘキサン、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタンおよびクロロホルムからなる群より選ばれる。最も好適な溶媒は、テトラヒドロフランまたは2-メチルテトラヒドロフランである。反応は、-100〜+50℃、好ましくは-70〜10℃、最も好ましくは-40〜-10℃の温度範囲において行われ得る。反応は、例えば、HPLC-、NIR-、IR-技術によってモニタされ得る。好適な作用時間は、10分と600分の間にある。式VIの反応生成物を分離することができるが、このような分離は必要でない。上記の反応は、好ましくは不活性ガス雰囲気下で行われる。アルゴンや窒素が好適な不活性ガスである。
【0028】
工程(S2)において、式IVのグルコノラクトンが、式VIの化合物に有機溶媒または2つ以上の有機溶媒の混合物中で添加される。好適な溶媒は、前の工程(S1)に関して記載されているものである。好ましくは、工程(S1)で得られた反応混合物にグルコノラクトンが添加される。置換基R2は、好ましくはトリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピル、トリブチルシリル、tert-ブチルジメチルシリル、tert-ブチルジフェニルシリル、アセチル、ベンジル、ベンゾイル、アリル、メトキシメチル、テトラヒドロピラニルを示す。最も好ましくは、R2は、トリメチルシリルを示す。式VIの有機金属化合物に対するグルコノラクトンの好適な量は、約0.8〜3モル、より好ましくは約1〜2モルの範囲にあり、最も好ましくは約1.06モルである。反応は、-100〜+50℃、好ましくは-70〜10℃、最も好ましくは-20〜-5℃の温度範囲において行われ得る。反応は、例えば、HPLC-、NMR、GC-、NIR-またはIR-技術によってモニタされ得る。好適な作用時間は、15分と600分の間にある。式VIの反応生成物は、分離され得る。上記の反応は、好ましくは、不活性ガス雰囲気下で行われる。アルゴンや窒素が好適な不活性ガスである。
工程(S3)において、1つ以上の酸を含む水溶液を工程(S2)において得られた反応混合物に添加して、反応混合物が水相と有機相を形成し、それによって、有機相は、約0〜7の範囲にあるpHを有する。原則として、全ての無機酸または有機酸を用いて、所望のpH範囲を得ることができる。好適な酸は、有機酸、例えば、クエン酸、酒石酸、シュウ酸、コハク酸、酢酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸またはトリフルオロ酢酸、または無機酸、例えば、塩酸、硫酸または硝酸である。酸は、アンモニウム塩、例えば塩化アンモニウムでもよい。酸は、酢酸/酢酸塩(例えば、酢酸、酢酸ナトリウム)、2水素リン酸塩/水素リン酸塩(例えば、KH2PO4/Na2HPO4)、TRIS(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)またはHEPES(2-(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル)エタンスルホン酸)のような緩衝系の一部でもよい。より好適な酸は、クエン酸および酢酸、特にクエン酸である。水溶液は、さらに、上述した酸の混合物またはさらに塩、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、塩化リチウム、臭化リチウムまたはこれらの混合物を含むことができる。水溶液中の1つ以上の酸の量は、好ましくは、反応混合物が水相と有機相を形成するような量であり、それによって、有機相は約0〜7の範囲にあるpHを有する。より好適なpH範囲は、約1〜6、より好ましくは約1〜4、最も好ましくは約2〜3である。上記の好適なpH範囲のpHが水相と有機相の良好な分離を可能にすることがわかった。いかなる理論にも縛られることなく、好適範囲のpH値で、中間生成物の安定性が最も高いことが仮定される。好適なものより低いpH値で、3相の発生が観察された。また、いかなる理論にも縛られることなく、低pH値で、グルコピラノシル環の保護基が切断され得るので、脱保護された中間生成物が追加相を形成することになると思われる。好適なものより高いpH値で、相分離が、エマルジョンの形成のため困難であるかまたは不可能であることがわかった。
【0029】
pH値は、計測記録用紙や試験スティックを含む、pH電極やpH指示薬のような化学者に周知の方法を使って有機相において測定することができる。pH値は、好ましくは有機相の所定の温度で、より好ましくは約0℃と40℃の間、さらにより好ましくは約10℃と30℃の間の温度で、例えば室温(約20〜25℃)で測定される。pH値は、相分離後、例えば、分離の直後または数時間に、有機相において測定することができる。
水溶液中1つ以上の酸、例えばクエン酸、の好適な濃度は、約2〜30質量%、より好ましくは約5〜20質量%の範囲にあり、最も好ましくは10質量%である。工程(S2)で得られた反応混合物の容積に対する水溶液の容積は、好ましくは約0.1〜5、より好ましくは約0.2〜2、さらにより好ましくは約0.2〜1、最も好ましくは約0.3〜0.6の範囲にあり、例えば約0.4である。水溶液は、反応混合物に、好ましくは約-50〜40℃、さらにより好ましくは約-10〜25℃の範囲にある温度で添加され得る。水溶液の添加は、好ましくは少なくとも15分以内に、より好ましくは60分以内に行われ得る。
水相と有機相のより改善された分離を達成するために、この反応工程においてまたは前の反応工程(S1)または(S2)の間に1つ以上の追加の有機溶媒を反応混合物に添加することが有利であり得る。好適な追加の有機溶媒は、2-メチルテトラフラン、トルエン、酢酸イソプロピル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、tert-ブチルメチルエーテル、n-ヘプタン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルシクロヘキサンおよびヘキサンからなる群より選ばれ得る。最も好適な追加の有機溶媒は、2-メチルテトラヒドロフランである。反応混合物の有機相の全量に対する追加の有機溶媒の量は、好ましくは約2質量%〜60質量%、より好ましくは約5質量%〜50質量%、さらにより好ましくは約10質量%〜40質量%、最も好ましくは約15〜35質量%の範囲にある。
【0030】
追加の有機溶媒の添加の前に、反応混合物の蒸留によって、好ましくは減圧下で有機相の容積を減少させてもよい。蒸留は、好ましくは約35℃以下の温度で行われる。工程(S3)の性能の後に得られる反応混合物は、水相と有機相を示し、それによって、工程(S2)の反応の生成物は、主に有機相に見られる。
工程(S4)において、工程(S2)で得られた付加物を含む有機相を水相から分離する。液相の分離方法は、当業者にとって周知である。相の分離は、好ましくは約-20〜50℃、より好ましくは約0〜30℃の範囲にある温度で行われる。得られた有機相は、工程(S2)で得られた大部分の付加物を含む。水相を有機溶媒または有機溶媒の混合物で1回以上洗浄してもよく、有機相を合わせてもよい。好適な有機溶媒は、工程(S1)、(S2)および(S3)に関して上で記載されている。次の反応工程を行う前に、好ましくは、部分容積または全容積の1つ以上の有機溶媒が、好ましくは減圧下で、留去される。蒸留は、好ましくは35℃以下の温度で行われる。
【0031】
工程(S5)において、工程(S4)で得られた付加物を、1つ以上の酸の存在下に水またはアルコールR'-OH (ここで、R'は、C1-6-アルキルを示す)またはその混合物と反応させる。アルコールR'-OHは、好ましくは、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノールまたはこれらの混合物からなる群より選ばれる。好適なアルコールは、メタノールである。アルコールは、好ましくは、等モル量を超える量で使われて、溶媒としても使用する。原則として、反応工程に全ての無機酸または有機酸を用いることができる。1つ以上の酸の添加によって、好ましくは約7より低いpHが得られるべきである。好適なpH範囲は、約0〜7、より好ましくは約0〜4、さらにより好ましくは約1〜2である。酸は、好ましくは、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、酒石酸、シュウ酸およびコハク酸からなる群より選ばれる。より好適な酸は、例えば、エタノール中の塩酸、プロパノール中の塩酸、ジオキサン中のHClの溶液として使うことができる塩酸である。あるいは、HClガスを用いることができる。好適な反応温度は、約-50〜50℃、より好ましくは約0〜30℃、最も好ましくは約15〜25℃の範囲にある。式IIIの生成物への完全な変換は、有利には、後続の蒸留によって、好ましくは減圧で、好ましくは約35℃以下の温度で、達成される。蒸留の間、アルコールR'-OHの後続の量が反応混合物に添加されるときに、完全な変換を改善することがわかった。反応は、好ましくは120分以内に完了する。反応は、例えばHPLCによってモニタされ得る。反応の完了後、反応混合物に残存する酸は、好ましくは、1つ以上の塩基の添加によって部分的にまたは全体に中和される。塩基の添加後に好適なpHは、好ましくは約5〜6の範囲にある。好適な塩基は、例えば、トリエチルアミン、アンモニア、トリメチルアミン、n-アルキルアミン(例えば、メチルアミン、エチルアミン)、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、エタノールアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)である。トリエチルアミンが最も好適な塩基である。溶媒の一部分または全量が、好ましくは減圧で、好ましくは留去される。再び、溶媒または溶媒の混合物が、有利には添加され、少なくとも部分的に留去される。反応混合物の含水量を減少するために、後続の蒸留によって溶媒の添加が1回以上反復され得る。溶媒は、好ましくは、アセトニトリル、プロピオニトリル、テトラヒドロフランおよびジオキサンからなる群より選ばれる。最後に、他の溶媒または溶媒の混合物が添加されてもよい。好適な溶媒は、塩化メチレン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、ジメトキシエタン、N,N'-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテルおよびtert-ブチルメチルエーテルからなる群より選ばれる。好適な溶媒は、ジクロロメタンである。有利には、得られた反応混合物の含水量は、例えばカールフィッシャー滴定、GC、NMR、IRまたはNIRによって定量される。得られた反応混合物の含水量は、好ましくは5000ppmより少なく、より好ましくは2000ppmより少ない。
式IIのグルコース誘導体は、化合物IIIのアノマー炭素-酸素結合の還元である工程(S6)によって合成され得る(スキーム2)。
スキーム2: 化合物IIIの還元
【0032】
【化12】
【0033】
R'、R1およびR2は、上文のように定義される。R2の好適な意味は、水素またはトリ-(C1-3-アルキル)シリル、例えばトリメチルシリルである。R'は、好ましくは水素またはC1-4-アルキル、特にメチルまたはエチルである。
工程(S6)において、還元は、1つ以上のルイス酸の存在下にまたはルイス酸を存在させずに1つ以上の還元剤によって行われ得る。適切な還元剤としては、例えば、シラン(例えば、トリエチルシラン、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン(TMDS)、トリプロピルシラン、トリイソプロピルシラン(TIPS)、ジフェニルシラン)、ボラン錯体(例えば、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH3)、水素化ホウ素亜鉛)または水素化アルミニウム(例えば、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)、水素化ジイソブチルアルミニウムまたは水素化リチウムトリイソプロピルアルミニウム(Li(iPr)3AlH))が挙げられる。好適な還元剤は、トリエチルシランである。式IIIの化合物に対する還元剤の量は、好ましくは約1〜5モル、より好ましくは2〜4モルの範囲にあり、最も好ましくは2.7モルである。適切なルイス酸は、例えば、塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素エーテラート、トリメチルシリルトリフレート、四塩化チタン、四塩化スズ、スカンジウムトリフレート、ヨウ化亜鉛、または銅(II)トリフレートである。塩化アルミニウムは、好適なルイス酸である。式IIIの化合物に対するルイス酸の量は、好ましくは約1〜5モル、より好ましくは約2〜4モルの範囲にあり、最も好ましくは2.1モルである。反応は、有機溶媒または有機溶媒の混合物中で行われる。好適な溶媒は、例えば、アセトニトリル、ジクロロメタン、プロピオニトリル、テトラヒドロフランまたはジオキサンである。好適な溶媒は、アセトニトリル、塩化メチレンおよびこれらの混合物である。好適な反応温度は、約-50℃と50℃の間、より好ましくは約0と30℃の間、最も好ましくは約10と20℃の間にある。好ましくは、工程(S4)で得られた反応混合物は、1つ以上のルイス酸と1つ以上の有機溶媒と1つ以上の還元剤の混合物に添加される。反応成分の添加は、好ましくは約15〜600分の範囲で、より好ましくは45と120分の間の範囲で行われる。反応混合物は、例えば、約-80〜50℃、好ましくは約0〜35℃、最も好ましくは約15〜25℃の範囲の温度で、約0〜600分間、より好ましくは約30〜120分間撹拌される。
【0034】
あるいは、工程(S6)において、水素を還元剤として用いることができる。この反応は、パラジウム/木炭、ラネーニッケル、酸化白金、酸化パラジウムのような遷移金属触媒の存在下で達成され得る。水素化に適切な反応条件および溶媒は、当業者に既知である。例えば、適切な溶媒は、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、水、または酢酸であり、適切な反応温度は、約-40℃〜100℃の範囲にあり、適切な水素圧は、約1〜10トールの範囲にある。
上記の還元合成工程は、好ましくは不活性ガス雰囲気下で行われる。アルゴンや窒素が好適な不活性ガスである。
反応の完了後、水が反応混合物に添加される。添加の間、内部温度は、好ましくは20〜40℃の範囲にある。添加に好適な時間範囲は、好ましくは15〜120分である。水の代わりに、水溶液が添加されてもよい。適切な水溶液は、例えば、塩化ナトリウム溶液(食塩水)、塩化カリウム溶液、NaHCO3溶液、Na2CO3溶液またはK2CO3溶液のような塩溶液である。あるいは、塩化アンモニウム、酢酸/酢酸塩、KH2PO4/Na2HPO4、TRIS(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、HEPES(2-(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル)エタンスルホン酸)の溶液のような緩衝水溶液が使われてもよい。
好ましい実施態様によれば、反応は、減圧下または大気圧下で、約35℃以下、より好ましくは約55℃以下の温度で部分的に蒸留される。
次に反応混合物を約30〜35℃に冷却し、水相と有機相を分離する。水相を有機溶媒または有機溶媒の混合物で1回以上洗浄し、有機相を合わせることができる。
【0035】
有利には、有機溶媒または有機溶媒の混合物が有機相に添加され、溶媒の一部または全量が、好ましくは減圧下に約35℃以下、より好ましくは約40〜50以下の温度で留去される。適切な溶媒は、トルエン、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸エチル、tert-ブチルメチルエーテル、n-ヘプタン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ベンゼン、メチルシクロヘキサン、ヘキサン、2-メチルテトラヒドロフランまたはこれらの混合物である。トルエンが好適な溶媒である。
生成物は、例えば国際公開第2006/117359号パンフレットに記載されるように、または後述されるように、結晶化によって得ることができる。
あるいは、結晶化の前の工程において、さらに、有機溶媒または有機溶媒の混合物が約40〜50℃以下の温度で有機相に添加される。適切な溶媒は、アセトニトリル、プロピオニトリル、トルエン、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸エチル、tert-ブチルメチルエーテル、n-ヘプタン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ベンゼン、メチルシクロヘキサン、ヘキサン、2-メチルテトラヒドロフランまたはこれらの混合物である。アセトニトリルが好適な溶媒である。
次に、有機相におけるアセトニトリルのパーセントがGC(ガスクロマトグラフィ)技術によって定量される。アセトニトリルのパーセントは、約10〜40%の範囲に、好ましくは約20と30%の間にある。
次に、種結晶が、約40〜48℃の温度範囲で、好ましくは約45℃で有機相に添加される。有利にはこの温度範囲で約10〜240分間、より好ましくは15〜120分間、撹拌が続けられる。
次に、有機相が、約40〜48℃の温度範囲から約15〜20℃の温度範囲に、30〜120分の時間範囲で、好ましくは60分間冷却される。
【0036】
次に、水または水溶液が有機相に添加される。水または水溶液の添加は、好ましくは約15〜25℃の温度範囲で、好ましくは20℃で行われる。さらに、添加は、好ましくは約30〜120分間、好ましくは約60分間行われる。適切な水溶液は、例えば、塩化ナトリウム溶液(食塩水)、塩化カリウム溶液、NaHCO3溶液、Na2CO3溶液またはK2CO3溶液のような塩溶液、または緩衝水溶液である。緩衝水溶液は、例えば、塩化アンモニウム、酢酸/酢酸塩、KH2PO4/Na2HPO4、TRIS(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、HEPES(2-(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル)エタンスルホン酸)の溶液である。
次に、好ましくは、混合物が約0〜5℃の温度範囲に約45〜120分間、好ましくは60分間冷却される。次に、好ましくは、混合物が約0〜5℃の温度範囲で約3〜24時間、好ましくは12時間撹拌が続けられる。
次に、生成物が適切なろ過または遠心技術を用いて収集され、次に、収集した生成物が有機溶媒で洗浄される。適切な溶媒は、アセトニトリル、プロピオニトリル、トルエン、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸エチル、tert-ブチルメチルエーテル、n-ヘプタン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ベンゼン、メチルシクロヘキサン、ヘキサン、2-メチルテトラヒドロフランまたはこれらの混合物である。好ましい溶媒は、トルエンである。
次に、有利には、分離された生成物を適切な乾燥装置を用いて約20〜120℃、好ましくは20〜70℃の温度で約1〜192時間、好ましくは約5〜96時間の時間範囲で乾燥する。乾燥は、好ましくは減圧下に不活性ガス雰囲気下で行われる。アルゴンや窒素が好適な不活性ガスである。
下記式IVのグルコノラクトンは、下記式IVのD-(+)-グルコン酸-デルタ-ラクトンから開始して合成され得る(スキーム3)。
スキーム3: グルコノラクトンIVの合成
【0037】
【化13】
【0038】
式IV (式中、R2は、上文のように定義される)の所望のグルコノラクトンを得る式IVaのD-(+)-グルコン酸-デルタ-ラクトンの変換方法は、当業者に周知である。以下に、R2がトリメチルシリルを示す好適な方法を詳述する。
有機溶媒または有機溶媒の混合物中の式IVのD-(+)-グルコン酸-デルタ-ラクトンの懸濁液、1つ以上の塩基および1つ以上の触媒を、1つ以上のシリル化剤で処理する。好適な有機溶媒は、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、またはtert-ブチルメチルエーテル(TBME)、ジエチルエーテル、ヘプタン、トルエン、ベンゼンまたはこれらの混合物である。好適な塩基は、4-メチルモルホリン、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、トリエチルアミン(TEA)、NaHCO3、K2CO3、Na2CO3、KOH、NaOHである。好適な触媒は、4-ジメチルアミノピリジン、ピリジン、トリエチルアミンである。好適なシリル化剤は、クロロトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、トリメチルシリルイミダゾール、トリメチルシリルジメチルジアミン、N,N'-ビストリメチルシリル尿素またはこれらの混合物である。塩基は、好ましくは、式IVの出発化合物に対して、より好ましくは約4〜10モル、最も好ましくは約5〜8モルの範囲にあるモル過剰量で使われる。触媒の好適な量は、式IVの出発化合物に対して約0.001〜0.5モル、より好ましくは約0.01〜0.2モルの範囲にある。シリル化剤に関して、好適な量は、式IVの出発化合物に対して約4〜10モルの範囲にある。反応は、好ましくは約-50〜100℃、より好ましくは約-10〜30℃の範囲にある温度で行われる。シリル化剤の添加は、好ましくは約1〜6時間行われる。添加の終了後、反応混合物は、好ましくは約-50〜100℃、より好ましくは約-10〜30℃、特に0〜20℃の温度で約1〜6時間撹拌される。変換は、周知の方法、例えば、HPLC分析、GC、NMR、IRによってモニタされ得る。次に、有機溶媒または有機溶媒の混合物を添加し、混合物を好ましくは約0〜10℃に冷却する。好適な有機溶媒は、n-ヘプタン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、tert-ブチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、トルエン、ベンゼン、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸エチルである。次に、水または水溶液を、好ましくは0-10℃の範囲にある温度で添加される。水溶液は、塩化ナトリウム溶液、塩化カリウム、NaHCO3、Na2CO3、K2CO3のような塩、または塩化アンモニウム、酢酸、酢酸塩、2水素リン酸塩、水素リン酸塩、TRIS(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、HEPES(2-(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル)エタンスルホン酸のような緩衝系を含むことができる。添加の終了後、混合物は、好ましくは約-50〜100℃、より好ましくは約0〜35℃の範囲にある内部温度で撹拌され続けてもよい。撹拌の中止後、相を分離し、有機層を水または上文に記載されている水溶液で1回以上連続して洗浄する。次に、有機溶媒を、好ましくは約40℃以下の温度で、特に減圧下で留去する。残留物に1つ以上の有機溶媒を添加する。好適な有機溶媒は、n-ヘプタン、メチルシクロヘキサン、tert-ブチルメチルエーテル、2-メチルテトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、トルエン、ベンゼンである。得られた溶液をろ過してもよい。次に、溶媒を、好ましくは約40℃以下の温度で、好ましくは減圧下で留去する。残留物の含水量は、カール-フィッシャー分析、GC、NMRまたはIRによって定量され得る。生成物は、油状物として得られる。
式Vの化合物は、式VIIのケトンから開始して還元によって合成され得る(スキーム4)。
スキーム4: 式Vの化合物の合成
【0039】
【化14】
【0040】
式V(式中、XがBr、Iまたはトリフレートであり、R1は、上文のように定義される)の所望の化合物を得る式VIIのケトンの還元方法は、当業者に周知である。以下に、Xがヨウ化を示す好適な方法を詳述する。
有機溶媒または有機溶媒の混合物中の式VIIのケトンおよびルイス酸の溶液に還元剤を添加する。適切な還元剤は、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、トリエチルシラン、トリイソプロピルシランのようなシラン、またはNaBH4のようなボロハイドライド、またはLiAlH4のような水素化アルミニウムである。好適なルイス酸は、塩化アルミニウム、BF3*OEt2、トリ(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリフルオロ酢酸、塩酸、またはInCl3である。適切な有機溶媒は、例えば、ジクロロメタンや1,2-ジクロロエタンのようなハロゲン化炭化水素、トルエン、ベンゼン、ヘキサン、アセトニトリルまたはこれらの混合物、最も好ましくはトルエンである。反応温度は、好ましくは、約-30〜80℃、好ましくは10〜30℃、より好ましくは約0〜25℃の範囲にある。還元剤の量およびルイス酸の量は、ケトンに対して、好ましくは約1〜2モルの範囲にあり、より好ましくは1.2モルである。添加は、好ましくは約1〜5時間以内に、より好ましくは約1と2時間の間にある。添加の終了後、混合物は、好ましくはさらに1〜2時間撹拌される。変換は、HPLC分析、GC、NMRまたはIRによって定量され得る。引き続き、好ましくは、過剰量の還元剤が当業者に既知の方法によって急冷される。例えば、反応混合物をケトンまたはアルコール、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、2-プロパノールまたはn-ブタノールで処理し、好ましくは約20〜30℃の範囲にある温度で、約1〜5時間撹拌する。還元剤の残存する含量も、GC、NMRまたはIRによって分析され得る。反応混合物が水溶液によって急冷される反応工程をさらに含むことも有利である。水溶液(好適なpH範囲1〜14)は、塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸、酒石酸、シュウ酸、コハク酸、酢酸、トリフルオロ酢酸のような酸、または塩化アンモニウム、酢酸/酢酸塩、二水素リン酸塩、水素リン酸塩、TRIS(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、HEPES(2-(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル )エタンスルホン酸)のような緩衝系、またはNaHCO3、K2CO3、Na2CO3、KOH、NaOHのような塩基を含むことができる。反応混合物は、例えば、約40〜60℃の内部温度で約30〜120分間撹拌される。終了後、相は分離し、有機溶媒の一部または全量を有機相から、好ましくは約80℃以下の温度で、好ましくは減圧下で留去される。式Vの生成物は、結晶化によって得ることができる。これのために、有機溶媒または有機溶媒の混合物が残留物に、好ましくは約50〜80℃の範囲の温度で添加される。トルエンとエタノールの混合物が好ましく、好適な質量比は約1 : 1〜1 : 20、より好ましくは約1 : 8である。トルエンは、アセトニトリル、tert-ブチルメチルエーテル、n-ヘプタン、ベンゼン、メチルシクロヘキサン、2-メチルテトラフラン、酢酸イソプロピル(IPAc)、酢酸エチル(EtOAc)または酢酸n-ブチルによって置換されてもよい。エタノールは、2-プロパノール、n-ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、水またはテトラヒドロフランによって置換されてもよい。反応混合物は、好ましくは約0〜50℃、より好ましくは20-40℃の範囲にある温度に冷却される。好ましくは、例えば国際公開第2006/117359号パンフレットに従って得ることができる種結晶が添加される。この温度で、例えば30〜60分間、撹拌が続けられてもよい。次に、混合物は、さらに、例えば約-10℃〜5℃に冷却され、追加の時間撹拌されてもよい。式Vの生成物は、例えば、フィルターまたは遠心機によって収集することができ、適切な溶媒または溶媒の混合物、例えばエタノールで洗浄されてもよい。生成物は、好ましくは約60℃以下、より好ましくは約40℃の温度で、減圧下で乾燥され得る。
式VIIのケトンは、式VIIIのケトンから開始して合成することができる(スキーム5)。
スキーム5: 式VIIのケトンの合成
【0041】
【化15】
【0042】
基Zを基O-R1(ここで、R1は、上文のように定義され、Zは、好ましくはフッ素を示す)で、特に求核置換によって置換する方法は、当業者に周知である。基Xは、上文のように定義される。以下に、好適な方法を詳述する。
式VIIIのケトンをアルカノールR1-OH(ここで、R1は、上文のように定義される)と有機溶媒または2つ以上の有機溶媒の混合物中で反応させる。アルカノールR1-OHの量は、1モルの式VIIIのケトンにつき、好ましくは約1〜2モルの範囲にあり、より好ましくは1.1モルである。この反応は、好ましくは、アルカリC1-4-アルコキシド、アルカリ炭酸塩、アルカリ水酸化物、アルカリリン酸塩、トリ(C1-3アルキル)アミン、他のN含有有機塩基のような塩基の存在下に行われる。好適な塩基の例は、リチウムまたはナトリウムまたはカリウムtert-ブタノレート、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムまたは炭酸セシウム、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム、リン酸三カリウム、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド(NaHMDS)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)またはこれらの混合物である。より好適な塩基は、ナトリウムtert-ブタノレートまたはカリウムtert-ブタノレート、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム、炭酸セシウム、炭酸セシウムと炭酸カリウムの混合物、またはこれらの混合物より選ばれる。塩基の量は、1モルの中間体VIIIにつき、好ましくは1〜5モル、より好ましくは1〜2モルの範囲にあり、特に約1.2の塩基である。塩基が炭酸塩、リン酸塩またはこれらの混合物である場合、塩基の全量は、1モルの中間体VIIIにつきより好ましくは2〜4モルの塩基の範囲にあり、最も好ましくは約3モルの塩基である。より好適な塩基カリウム-tert-ブタノレートは、例えば、テトラヒドロフラン中の約10〜30質量%の溶液である。適切な有機溶媒は、例えば、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフランまたはジオキサンである。反応成分の添加に好適な時間は、約1〜20時間、好ましくは2.5〜6.5時間である。反応成分の添加の間の好適な温度は、約-20〜70℃、より好ましくは約15〜25℃の範囲にある。添加の終了後、混合物は、好ましくは約-20〜70℃、より好ましくは約15〜25℃の範囲にある温度で約5〜500分間撹拌される。反応は、例えば、HPLC分析、NMRまたはIRによってモニタされ得る。次に、水または水溶液が添加される。水溶液は、塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸、酒石酸、シュウ酸、コハク酸、酢酸、トリフルオロ酢酸のような酸、塩化アンモニウム、酢酸/酢酸塩、二水素リン酸塩、水素リン酸塩、TRIS(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、HEPES(2-(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル)エタンスルホン酸)のような緩衝系、またはNaHCO3、K2CO3、Na2CO3、KOH、NaOHのような塩基を含むことができる。反応混合物は、例えば、約-20〜70℃、より好ましくは15-30℃の内部温度で約5〜500分間撹拌される。
【0043】
終了後、相を分離し、有機溶媒の一部または全量を有機相から、好ましくは減圧下で、好ましくは約50℃以下の温度で留去する。式VIIの生成物を、さらに精製し、分離することができる。これのために、有機溶媒または有機溶媒の混合物が残留物に、好ましくは約40〜50℃の範囲の温度で添加される。好適な溶媒は、例えば、2-プロパノール、メタノール、エタノール、1-プロパノール、n-ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸イソプロピル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、tert-ブチルメチルエーテル、n-ヘプタン、メチルシクロヘキサン、2-メチルテトラヒドロフラン、アセトニトリル、水、トルエン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、塩化メチレン、N-メチルピロリドン、N,N'-ジメチルホルムアミドまたはこれらの混合物である。反応混合物は、好ましくは-25〜40℃、より好ましくは約-5〜5℃の範囲の温度に冷却される。冷却は、約0.1〜20時間行われ得る。式VIIの生成物は、例えば、フィルターまたは遠心機により収集され、適切な溶媒または溶媒の混合物、例えば、2-プロパノールおよび/またはtert-ブチルメチルエーテルで洗浄され得る。他の適切な溶媒は、上文に記載されている。生成物は、好ましくは約70℃以下、より好ましくは約45℃の温度で減圧下に乾燥することができる。
式VIIIのケトンは、式IXの安息香酸誘導体から開始して合成することができる(スキーム6)。
スキーム5: 式VIIIのケトンの合成
【0044】
【化16】
【0045】
式IX(式中、Xは、Br、Iまたはトリフレート、好ましくはヨウ素を示す)の安息香酸誘導体から開始して、有利には、オキサリルクロリドとの反応によって対応するクロロ安息香酸が得られる。この反応は、好ましくは、触媒、例えばジメチルホルムアミドの存在下に行われる。反応条件および溶媒は、当業者に周知である。例えば、第1の反応工程i.)における溶媒としてフルオロベンゼンを用いることができ、次に、第2の反応工程ii.)における反応成分(Zは、フッ素を示す)を形成する。
第2の反応工程ii.)は、フリーデル-クラフツまたはフリーデル-クラフツ型アシル化、有機合成において周知の方法としての特徴を有し得る。原則として、クロロ安息香酸を、他の安息香酸誘導体、例えばベンゾイル無水物、エステル、またはベンゾニトリルによって置き換えることができる。この反応は、有利には、AlCl3、FeCl3、ヨウ素、鉄、ZnCl2、硫酸、またはトリフルオロメタンスルホン酸のような触媒の存在下で行われ、その全てが触媒量でまたは化学量論量まで用いられる。好適な触媒は、AlCl3である。反応は、追加の溶媒の有無にかかわらず行われ得る。追加の溶媒は、塩素化炭化水素、例えば、ジクロロメタンまたは1,2-ジクロロエタン、または炭化水素、例えばヘキサンまたはその混合物である。好ましい実施態様によれば、反応は、さらに溶媒としても役立つ過剰量のフルオロベンゼンを用いて行われる。反応の間の好適な温度は、-30〜140℃、好ましくは15〜60℃の範囲にある。反応の完了後、反応混合物は、水で急冷され得る。好ましくは、有機溶媒が除去される。中間体VIIIは、好ましくは、例えば、水、C1-3-アルカノールまたはこれらの混合物、(例えば水/2-プロパノールから結晶化によって分離することができる。
さらに、得られた化合物および中間体を、上文に述べたように、そのエナンチオマーおよび/またはジアステレオマーに分割することができる。したがって、例えば、シス/トランス混合物をそのシス異性体とトランス異性体に分割することができ、少なくとも1つの光学活性炭素原子を有する化合物をそのエナンチオマーに分離することができる。
【0046】
したがって、例えば、シス/トランス混合物は、クロマトグラフィによってそのシス異性体とトランス異性体に分割することができ、ラセミ化合物として生じる得られた化合物と中間体をそれ自体既知の方法 (Allinger N. L. and Eliel E. L. in "Topics in Stereochemistry", Vol. 6, Wiley Interscience, 1971を参照のこと) によって鏡像異性体に分離することができ、少なくとも2つの不斉炭素原子を有する化合物または中間体は、それ自体既知の方法、例えばクロマトグラフィおよび/または分別結晶によって物理化学的差異に基づいてそのジアステレオマーに分割することができ、これらの化合物がラセミ体で得られる場合には、引き続き上述されるエナンチオマーに分割することができる。
エナンチオマーは、好ましくは、キラル相によるカラム分離によってまたは光学活性溶媒からの再結晶によってまたは塩または誘導体を形成する光学活性物質、例えば、ラセミ化合物を有するエステルまたはアミド、特に酸と活性化誘導体またはそのアルコールと反応させ、このようにして得られた塩または誘導体のジアステレオマー混合物を、例えば溶解度の差に基づいて分離することによって、分離され、遊離対掌体は適切な薬剤の作用によって純粋なジアステレオマー塩または誘導体から放出され得る。慣用の光学活性酸は、例えば、D型およびL型の酒石酸またはジベンゾイル酒石酸、ジ-o-トリル酒石酸、リンゴ酸、マンデル酸、カンファスルホン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸またはキナ酸である。光学活性アルコールは、例えば、(+)または(-)-メントールでもよく、例えば、アミドにおける光学活性アシル基が(+)または(-)-メンチルオキシカルボニルでもよい。
【0047】
さらに、本発明の化合物および中間体は、その塩、特に医薬使用のために無機酸または有機酸による生理的に許容され得る塩に変換することができる。このために用いることができる酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、メタンスルホン酸、リン酸、フマル酸、コハク酸、乳酸、クエン酸、酒石酸またはマレイン酸が挙げられる。
本発明の化合物は、有利には、以下の実施例に記載されている方法を用いても得られ、このために文献から当業者に既知の方法、例えば、特に国際公開第2006/120208号パンフレット、同第2006/117359号パンフレット、同第2005/092877号パンフレットに記載されている方法と組み合わせてもよい。
上記や下記の本文において、ヒドロキシル基の水素原子は、構造式のあらゆる場合に明確に示されていない。以下の実施例は、本発明を制限することなく具体的に説明するものである。用語“室温”または“周囲温度”は、約20℃の温度を意味する。
GC ガスクロマトグラフィ
hrs 時間
i-Pr イソプロピル
Me メチル
min 分
THF テトラヒドロフラン
実験手順:
【0048】
【化17】
【0049】
実施例1: フッ化物VIII.1の合成
塩化オキサリル(176kg; 1386モル; 1,14当量)を2-クロロ-5-ヨード安息香酸(343kg; 1214モル)(化合物IX.1)、フルオロベンゼン(858kg)およびN,N-ジメチルホルムアミド(2kg)の混合物に約25〜30℃の範囲にある温度で3時間以内に添加する(ガス発生)。添加の終了後、反応混合物を、約25〜30℃の温度でさらに2時間を撹拌する。溶媒(291kg)を40と45℃の間の温度(p=200mbar)で留去する。次に、反応溶液(911kg)を、塩化アルミニウムAlCl3(181kg)およびフルオロベンゼン(192kg)に約25と30℃の間の温度で2時間以内に添加する。反応溶液を同一温度でさらに1時間撹拌する。次に、反応混合物を570kgの量の水に約20と30℃の間の温度で約2時間以内に添加し、さらに1時間撹拌する。相分離の後、有機相(1200kg)を二等分(それぞれ600kg)に分ける。有機相の第1の半分から溶媒(172kg)を約40〜50℃の温度(p=200mbar)で留去する。次に、2-プロパノール(640kg)を添加する。溶液を約50℃に加熱し、次に木炭カルトゥーシュでろ過する(透明なろ過)。カルトゥーシュをろ過の間に交換し、ろ過後にフルオロベンゼン/2-プロパノール混合物(1:4; 40kg)で洗浄してもよい。溶媒(721kg)を約40〜50℃の温度、p=200mbarで留去する。次に、2-プロパノール(240kg)を約40と50℃の間の範囲にある温度で添加する。フルオロベンゼンの含量がGCによって定量される1%より多い場合には、他の140kgの溶媒を留去し、2-プロパノール(140kg)を添加する。次に、この溶液を約50℃から40℃に1時間以内に冷却し、種結晶(50g)を添加する。この溶液を、約40℃から20℃に2時間以内でさらに冷却する。水(450kg)を約20℃で1時間以内に添加し、懸濁液を約20℃でさらに1時間撹拌した後、懸濁液をろ過する。ろ過ケークを2-プロパノール/水(1:1; 800kg)で洗浄する。<0.06%w/wの水分レベルが得られるまで生成物を乾燥する。有機相の第2の半分を同様に処理する。白色からオフホワイトの結晶の外見を有する生成物の合計410kg(収率94%)を得る。生成物の同一性は、赤外分光光度法によって求める。
【0050】
実施例2: ケトンVII.1の合成
フッ化物VIII.1(208kg)、テトラヒドロフラン(407kg)および(S)-3-ヒドロキシテトラヒドロフラン(56kg)の溶液にテトラヒドロフラン(388kg)中のカリウム-tert-ブタノレート溶液(20%)を16〜25℃の温度で3時間以内に添加する。添加の終了後、この混合物を20℃の温度で60分間撹拌する。次に、変換をHPLC分析によって求める。水(355kg)を21℃の温度で20分以内に添加する(水中急冷)。反応混合物を30分間撹拌する(温度: 20℃)。スターラーのスイッチを切り、この混合物を60分間放置する(温度: 20℃)。相を分離し、溶媒を減圧下に19〜45℃の温度で有機相から留去する。残留物に2-プロパノール(703kg)を40〜46℃の温度で添加し、溶媒を減圧下に41〜50℃の温度で留去する。残留物に2-プロパノール(162kg)を47℃の温度で添加し、溶媒を減圧下に40〜47℃の温度で留去する。次に、この混合物を0℃に1時間55分以内に冷却する。生成物を遠心機により集め、2-プロパノール(158kg)の混合物で、引き続きtert-ブチルメチルエーテル(88kg)で洗浄し、減圧下に19〜43℃で乾燥する。227kg(91.8%)の生成物を無色の固形物として得る。生成物の同一性を赤外分光光度法によって求める。
【0051】
実施例3: ヨウ化物V.1の合成
トルエン(366.8kg)中のケトンVII.1(217.4kg)および塩化アルミニウム(AlCl3; 81.5kg)の溶液に1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン(TMDS、82.5kg)を1時間30分以内に添加する(温度: 18-26℃)。添加の終了後、この混合物を24℃の温度でさらに1時間撹拌する。次に、変換をHPLC分析によって求める。引き続き、反応混合物をアセトン(15.0kg)で処理し、27℃の温度で1時間5分間撹拌し、残留TMDS含量をGCによって分析する。次に、反応混合物に水(573kg)と濃塩酸(34kg)の混合物を20〜51℃の温度で添加する(水中急冷)。反応混合物を30分間撹拌する(温度: 51℃)。スターラーのスイッチを切り、この混合物を20分間放置する(温度: 52℃)。相を分離し、有機相から溶媒を減圧下に53-73℃の温度で留去する。残留物にトルエン(52.8kg)とエタノール(435.7kg)を61〜70℃の温度で添加する。反応混合物を36℃の温度に冷却し、種結晶(0.25kg)を添加する。この温度で35分間撹拌を続ける。次に、この混合物を0〜5℃に冷却し、さらに30分間撹拌する。生成物を遠心機により集め、エタノール(157kg)で洗浄し、減圧下に15〜37℃で乾燥する。181kg(82.6%)の生成物を無色の固形物として得る。生成物の同一性をHPLC保持時間によって求める。
【0052】
実施例4: ラクトンIV.1の合成
D-(+) -グルコン酸-デルタ-ラクトンIVa.1(42.0kg)、テトラヒドロフラン(277.2kg)、4-メチルモルホリン(NMM; 152.4kg)および4-ジメチルアミノピリジン(DMAP; 1.44kg)の懸濁液をクロロトリメチルシラン(TMSCl; 130.8kg)で13〜19℃において50分以内に処理する。添加の終了後、20〜22℃で1時間30分間撹拌を続け、変換をHPLC分析によって求める。次に、n-ヘプタン(216.4kg)を添加し、この混合物を5℃に冷却する。水(143kg)を3〜5℃で15分以内に添加する。添加の終了後、この混合物を15℃に加熱し、15分間撹拌する。スターラーのスイッチを切り、この混合物を15分間放置する。次に、相を分離し、有機層を水で2回連続して洗浄する(それぞれ143kg)。次に、溶媒を減圧下に38℃で留去し、残留物にn-ヘプタン(130kg)を添加する。得られた溶液をろ過し、フィルターをn-ヘプタン(63kg)ですすぐ(フィルター溶液と生成物溶液を合わせる)。次に、溶媒を減圧下に39〜40℃で留去する。残留物の含水量をカール-フィッシャー分析によって求める(結果: 0.0%)。112.4kgの生成物を油状物として得る(残留n-ヘプタンを含有し、このことにより収率>100%が説明される)。生成物の同一性を赤外分光光度法によって求める。
【0053】
実施例5a: グルコシドII.1の合成
テトラヒドロフラン(429kg)中のヨウ化物V.1(267kg)の溶液にターボグリニャール溶液(イソプロピルマグネシウムクロリド/塩化リチウム溶液、14質量%のiPrMgCl/THF、LiCl:iPrMgClモル比 = 0.9-1.1モル/モル)(472kg)を-21〜-15℃の温度で1時間50分以内に添加する。添加の終了後、変換をHPLC分析によって求める。ヨウ化物V.1に対応するピークの領域が双方のピーク、ヨウ化物V.1とヨウ化物V.1の対応するデスヨード化合物の全面積の5.0%より小さいときに、反応が完了したとみなされる。反応が完了しない場合には、基準が満たされるまでさらにターボグリニャール溶液を添加する。この具体的な場合、結果は3.45%である。次に、ラクトンIV.1(320kg)を-25〜-18℃の温度で1時間25分以内に添加する。得られた混合物を-13〜-18℃でさらに1時間30分間撹拌する。添加の終了後、変換をHPLC分析によって求める(情報のために)。終了時に、水中のクエン酸の溶液(938L; 濃度: 10質量%)を約2500L容積の反応混合物に13〜19℃で1時間25分以内に添加する。反応混合物(残留量: 1816-1905L)から溶媒を減圧下に20〜30℃で部分的に留去し、2-メチルテトラヒドロフラン(532kg)を添加する。次に、スターラーのスイッチを切り、相を29℃で分離する。相分離の後、有機相のpH値を、pH電極(Mettler Toledo MT HA 405 DPA SC)あるいはpH試験紙(例えばpH-Fix 0-14、Macherey and Nagel)で測定する。測定したpH値は、2〜3である。次に、有機相から溶媒を減圧下に30〜33℃で留去し、メタノール(1202kg)を添加し、続いてメタノール(75kg)中の1.25NHClの溶液を20℃(pH = 0)で添加する。引き続き減圧下に20〜32℃で蒸留し、メタノール(409kg)を添加することによって、アセタールIII.1へ完全な変換が達成される。
【0054】
2つの基準が満たされるときに反応の完了が得られる:
1)中間体III.1のアルファ形+ベータ形のHPLC-領域の合計と中間体IIIa.1の領域との比が96.0%以上 : 4.0%である。
2)中間体III.1のアルファ形のHPLC-領域とIII.1のベータ形との比が97.0% 以上 : 3.0%である。この具体的な場合、双方の基準が満たされている。トリエチルアミン(14kg)を添加し(pH = 7,4)、溶媒を減圧下で留去し、アセトニトリル(835kg)を添加し、減圧下でさらに蒸留する。この手順を反復し(アセトニトリルの添加: 694kg)、得られた混合物に塩化メチレン(640kg)を添加して、アセトニトリルと塩化メチレン中のアセタールIII.1の混合物を得る。カールフィッシャー滴定によって混合物の含水量を求める(結果: 0.27%)。次に、反応混合物を、AlCl3(176kg)、塩化メチレン(474kg)、アセトニトリル(340kg)およびトリエチルシラン(205kg)の予め形成された混合物に10〜19℃で1時間40分以内に添加する。得られた混合物を18〜20℃で70分間撹拌する。反応の完了後、水(1263L)を20〜30℃で1時間30分以内に添加し、この混合物を大気圧下30〜53℃で部分的に蒸留し、相を分離する。トルエン(698kg)を有機相に添加し、溶媒を減圧下に22〜33℃で留去する。次に、種結晶(0.5kg)を31℃で添加することによって生成物を結晶化し、20℃に冷却した後に水(267kg)を添加する。反応混合物を5℃に55分以内に冷却し、3〜5℃で12時間撹拌する。最後に、生成物を遠心機により無色の結晶固形物として集め、トルエン(348kg)で洗浄し、22〜58℃で乾燥する。211kg(73%)の生成物を得る。生成物の同一性をHPLC保持時間によって求める。
【0055】
実施例5b: グルコシドII.1の合成
テトラヒドロフラン(55mL)中のヨウ化物V.1(30g)の溶液にターボグリニャール溶液(イソプロピルマグネシウムクロリド/塩化リチウム溶液、14質量%のiPrMgCl/THF、LiCl:iPrMgClモル比 = 0.9-1.1モル/モル)(53g)を-14〜-13℃の温度で35分以内に添加する。添加の終了後、変換をHPLC分析によって求める。ヨウ化物V.1に対応するピークの領域が双方のピーク、ヨウ化物V.1とヨウ化物V.1の対応するデスヨード化合物の全面積の5.0%より小さいときに、反応が完了したとみなされる。反応が完了しない場合には、基準が満たされるまでさらにターボグリニャール溶液を添加する。この具体的な場合、結果は0.35%である。次に、ラクトンIV.1(36g)を-15〜-6℃の温度で15分以内に添加する。得られた混合物を-6〜-7℃でさらに1時間撹拌する。添加の終了後、変換をHPLC分析によって求める(情報のために)。終了時に、水中のクエン酸の溶液(105mL;濃度: 10質量%)を反応混合物に15〜10℃で30分以内に添加する。反応混合物(残留量: 200mL)から溶媒を減圧下に20〜30℃で部分的に留去し、2-メチルテトラヒドロフラン(71mL)を添加する。次に、この混合物を30℃で25分間撹拌する。次に、スターラーのスイッチを切り、相を30℃で分離する。相分離の後、有機相のpH値を、pH電極(Mettler Toledo MT HA 405 DPA SC)あるいはpH試験紙(例えばpH-Fix 0-14、Macherey and Nagel)で測定する。測定したpH値は、3である。次に、有機相から溶媒を減圧下に35℃で留去し、メタノール(126mL)を添加し、続いてメタノール(10.1mL)中の1.25NHClの溶液を25℃(pH = 1-2)で添加する。引き続き減圧下に35℃で蒸留し、メタノール(47mL)を添加することによって、アセタールIII.1へ完全な変換が達成される。
【0056】
2つの基準が満たされるときに反応の完了が得られる:
1)中間体III.1のアルファ形+ベータ形のHPLC-領域の合計と中間体IIIa.1の領域との比が96.0%以上 : 4.0%である。この具体的な場合、比は、99.6% : 0.43%である。
2)中間体III.1のアルファ形のHPLC-領域とIII.1のベータ形との比が97.0%以上 : 3.0%である。この具体的な場合、比は、98.7% : 1.3%である。トリエチルアミン(2.1mL)を添加し(pH = 9)、溶媒を減圧下に35℃で留去し、アセトニトリル(120mL)を添加し、減圧下に30〜35℃でさらに蒸留する。この手順を反復し(アセトニトリルの添加: 102mL)、得られた混合物に塩化メチレン(55mL)を添加して、アセトニトリルと塩化メチレン中のアセタールIII.1の混合物を得る。カールフィッシャー滴定によって混合物の含水量を求める(結果: 0.04%)。次に、反応混合物を、AlCl3(19.8g)、塩化メチレン(49mL)、アセトニトリル(51mL)およびトリエチルシラン(23g)の予め形成された混合物に20℃で1時間5分以内に添加する。得られた混合物を20〜30℃で60分間撹拌する。反応の完了後、水(156mL)を20℃で25分以内に添加し、この混合物を大気圧下55℃で部分的に蒸留し、相を33℃で分離する。この混合物を43℃に加熱し、トルエン(90mL)を有機相に添加し、溶媒を減圧下に41〜43℃で留去する。次に、アセトニトリル(10mL)を41℃で添加し、アセトニトリルのパーセントをGC測定によって求める。この具体的な場合、アセトニトリルパーセントは、27%質量である。次に、種結晶(0.1g)を44℃で添加することによって生成物を結晶化し、この混合物を44℃で15分間さらに撹拌する。次に、この混合物を20℃に60分以内に冷却し、水(142mL)を20℃で30分間添加する。反応混合物を0〜5℃に60分以内に冷却し、3℃で16時間撹拌する。最後に、生成物をフィルターにより無色の結晶固形物として集め、トルエン(80mL)で洗浄し、20〜70℃で乾燥する。20.4kg(62.6%)の生成物を得る。生成物の同一性をHPLC保持時間によって求める。