(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定するものではない。
【0022】
以下、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のペレットについて順に説明する。
【0023】
[ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物]
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、(B)下式(I)で表される、ポリグリセロールの飽和脂肪酸エステル0.01質量部以上5.0質量部以下を含んでなる。本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂、及び(B)ポリグリセロールの飽和脂肪酸エステルの他に、(C)添加剤、及び(D)充填材等を含んでいてもよい。
【0024】
【化2】
〔式(I)中、R
1はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、炭素原子数19以上30以下の飽和脂肪族アシル基であり、nは1以上10以下の整数である。〕
【0025】
以下、本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の成分について、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂、(B)ポリグリセロールの飽和脂肪酸エステル、(C)添加剤、(D)充填材、について、具体的に説明する。
【0026】
〔(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂〕
【0027】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、少なくともテレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体(C
1−6のアルキルエステルや酸ハロゲン化物等)を含むジカルボン酸成分と、少なくとも炭素原子数4のアルキレングリコール(1,4−ブタンジオール)又はそのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)を含むグリコール成分とを重縮合して得られるポリブチレンテレフタレート系樹脂である。(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂はホモポリブチレンテレフタレート樹脂に限らず、ブチレンテレフタレート単位を60モル%以上(特に75モル%以上95モル%以下)含有する共重合体であってもよい。
【0028】
本発明において用いる(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂において、テレフタル酸及びそのエステル形成性誘導体以外のジカルボン酸成分(コモノマー成分)としては、例えば、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル等のC
8−14の芳香族ジカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のC
4−16のアルカンジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等のC
5−10のシクロアルカンジカルボン酸;これらのジカルボン酸成分のエステル形成性誘導体(C
1−6のアルキルエステル誘導体や酸ハロゲン化物等)が挙げられる。これらのジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0029】
これらのジカルボン酸成分の中では、イソフタル酸等のC
8−12の芳香族ジカルボン酸、及び、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のC
6−12のアルカンジカルボン酸がより好ましい。
【0030】
本発明において用いるポリブチレンテレフタレートにおいて、1,4−ブタンジオール以外のグリコール成分(コモノマー成分)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−オクタンジオール等のC
2−10のアルキレングリコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール;シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA等の脂環式ジオール;ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシビフェニル等の芳香族ジオール;ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加体、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド3モル付加体等の、ビスフェノールAのC
2−4のアルキレンオキサイド付加体;又はこれらのグリコールのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)が挙げられる。これらのグリコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0031】
これらのグリコール成分の中では、エチレングリコール、トリメチレングリコール等のC
2−6のアルキレングリコール、ジエチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール、又は、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール等がより好ましい。
【0032】
本発明において用いる(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は本発明の目的を阻害しない範囲で特に制限されない。(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度(IV)は0.65dL/g以上1.4dL/g以下であるのが好ましい。かかる範囲の固有粘度のポリブチレンテレフタレートを用いる場合には、得られるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が特に成形性に優れたものとなる。また、異なる固有粘度を有するポリブチレンテレフタレート樹脂をブレンドして、固有粘度を調整することもできる。例えば、固有粘度1.0dL/gのポリブチレンテレフタレートと固有粘度0.7dL/gのポリブチレンテレフタレートとをブレンドすることにより、固有粘度0.9dL/gのポリブチレンテレフタレートを調製することができる。ポリブチレンテレフタレートの固有粘度(IV)は、例えば、o−クロロフェノール中で温度35℃の条件で測定することができる。
【0033】
本発明において用いる(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、本発明の目的を阻害しない限り特に制限されない。本発明において用いるポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、30meq/kg以下が好ましく、25meq/kg以下がより好ましい。かかる範囲の末端カルボキシル基量のポリブチレンテレフタレートを用いる場合には、得られるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が湿熱環境下での加水分解による強度低下を受けにくくなる。
【0034】
本発明において、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、本発明の目的を阻害しない範囲で、(A’)他の熱可塑性樹脂と共に使用することができる。(A’)他の熱可塑性樹脂を用いる場合の(A’)他の熱可塑性樹脂の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、典型的には、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して100質量部以下が好ましく、80質量部以下がより好ましく、50質量部以下が特に好ましい。
【0035】
本発明において使用できる、好適な(A’)他の樹脂の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート等の芳香族ジカルボン酸とジオール等からなる芳香族ポリエステル;ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステル;ナイロン46、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、MXDナイロン等のポリアミド樹脂;ポリスチレン;ポリ塩化ビニル;ポリアクリロニトリル;環状オレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマー等環状オレフィン系樹脂;アクリル樹脂;ポリカーボネート樹脂;AS樹脂;ABS樹脂;ポリオキシメチレン等のアセタール樹脂;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドケトン、ポリビフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン等のポリフェニレンスルフィド樹脂;ポリ(エーテルスルホン)、ポリ(4,4’−ビスフェノールエーテルスルホン)等のポリスルホン樹脂;ポリエーテルケトン樹脂;ポリエーテルエーテルケトン樹脂;液晶性ポリマー;フッ素樹脂等を挙げることができる。またこれらの(A’)他の熱可塑性樹脂は2種以上混合して使用することができる。
【0036】
なお、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂を(A’)他の熱可塑性樹脂と共に使用する場合、後述する(B)ポリグリセロールの飽和脂肪酸エステル、(C)添加剤、及び(D)充填材の使用量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(A’)他の熱可塑性樹脂との質量の合計に対する使用量である。
【0037】
〔(B)ポリグリセロールの飽和脂肪酸エステル〕
本発明において離型剤として用いる、(B)ポリグリセロールの脂肪酸エステルは、下式(I)で表される構造であれば特に限定されず、ポリグリセロール又はその誘導体と、飽和脂肪酸又はその誘導体とから合成されたものでも、市販品でも使用できる。
【0039】
〔式(I)中、R
1はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、炭素原子数19以上30以下の飽和脂肪族アシル基であり、nは1以上10以下の整数である〕
【0040】
式(I)における、R
1は、それぞれ、同一でも異なっていてもよい、炭素原子数19以上30以下の飽和脂肪族アシル基である。R
1は本発明の目的を阻害しない範囲で、分岐を有してもよく、直鎖状であるのがより好ましい。R
1の炭素原子数は19以上30以下であり、22以上28以下が特に好ましく、22が最も好ましい。R
1の炭素原子数が過小であると、離型性に優れるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を得難く、R
1の炭素原子数が過大であると、(B)ポリグリセロールの飽和脂肪酸エステルの原料である、飽和脂肪酸の入手が容易でなかったり、離型効果が不十分であったりする場合がある。
【0041】
R
1として好適な基の具体例としては、ノナデカノイル基、イコサノイル基(アラキジニル基)、ヘニコサノイル基、ドコサノイル基(ベヘニル基)、トリコサノイル基、テトラコサノイル基(リグノセリニル基)、ペンタコサイノイル基、ヘキサコサノイル基(セロチニル基)、ヘプタコサノイル基、オクタコサノイル基(モンタニル基)、ノナコサノイル基、トリアコンタノイル基(メリシニル基)、17−メチルオクタデカノイル基、16−メチルオクタデカノイル基、18−メチルノナデカノイル基、17−メチルノナデカノイル基、19−メチルイコサノイル基、18−メチルイコサノイル基、20−ヘニコサノイル基、19−メチルヘニコサノイル基等が挙げられる。これらの基の中では、離型性に優れるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が得られること、成形前に乾燥時の離型剤の染み出しによる問題が生じ難いこと、及び、離型剤の原料となる飽和脂肪酸の入手の容易性から、ドコサノイル基(ベヘニル基)が特に好ましい。
【0042】
式(I)におけるnは、1以上10以下の整数であり、1以上5以下であるのがより好ましく、1以上4以下であるのが特に好ましく、1又は2であるのが最も好ましい。式(I)におけるnが過大である場合、(B)ポリグリセロールの飽和脂肪酸エステルの原料となるポリグリセロールの入手が容易でなかったり、ポリグリセロールの水酸基数の増加に伴い、(B)ポリグリセロールの飽和脂肪酸エステルに含まれる水酸基量が増加しやすくなり、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の物性に悪影響を及ぼしたりする場合がある。
【0043】
(B)ポリグリセロールの飽和脂肪酸エステルを、ポリグリセロール又はその誘導体と飽和脂肪酸又はその誘導体とから合成する場合、その方法は特に限定されず、公知のエステル合成方法から選択できる。(B)ポリグリセロールの飽和脂肪酸エステルの好適な合成方法としては、例えば、以下の1)から3)の方法が挙げられる。
1)硫酸等の酸触媒による、ポリグリセロールと飽和脂肪酸とのエステル化反応。
2)酸塩化物等の飽和脂肪酸の酸ハライドと、ポリグリセロールとの反応。
3)ポリグリセロール又はその低級アシル化物(例えばアセチル化物)と、飽和脂肪酸の低級アルキルエステル(例えばメチルエステル)とのエステル交換反応。
【0044】
(B)ポリグリセロールの飽和脂肪酸エステルの原料として使用できる飽和脂肪酸の具体例としては、ノナデカン酸、イコサン酸(アラキジン酸)、ヘニコサン酸、ドコサン酸(ベヘン酸)、トリコサン酸、テトラコサン酸(リグノセリン酸)、ペンタコサン酸、ヘキサコサン酸(セロチン酸)、ヘプタコサン酸、オクタコサン酸(モンタン酸)、ノナコサン酸、トリアコンタン酸(メリシン酸)、17−メチルオクタデカン酸、16−メチルオクタデカン酸、18−メチルノナデカン酸、17−メチルノナデカン酸、19−メチルイコサン酸、18−メチルイコサン酸、20−メチルヘニコサン酸、19−メチルヘニコサン酸等が挙げられる。
【0045】
(B)ポリグリセロールの飽和脂肪酸エステルの製造原料として使用できるポリグリセロールの好適な例としては、ジグリセロール、トリグリセロール、テトラグリセロール、ペンタグリセロール、ヘキサグリセロール等が挙げられる。
【0046】
本発明において用いる(B)ポリグリセロールの飽和脂肪酸エステルは、水酸基を含まないものが好ましいが、その製造方法や、保管条件によっては不可避的に水酸基を有するポリグリセロールの飽和脂肪酸エステルが含まれる場合がある。かかる場合、(B)ポリグリセロールの飽和脂肪酸エステルに含まれる水酸基量は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されず、具体的には、水酸基価が80以下であるのが好ましく、10以下であるのがより好ましく、5以下であるのが特に好ましい。
【0047】
(B)ポリグリセロールの飽和脂肪酸エステルの水酸基価は、日本油化学会制定の基準である油脂分析試験法のヒドロキシル価測定法(ピリジン−無水酢酸法)に準拠して測定される。試料に無水酢酸液(ピリジン−無水酢酸溶液)を湯浴上で反応させ、その後、酢酸及び過剰酢酸を水酸化ナトリウムで滴定して水酸基価を求める。
【0048】
(B)ポリグリセロールの飽和脂肪酸エステルの水酸基価が過大である場合には、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリブチレンテレフタレート樹脂組成物に含まれる各成分とを溶融混練する際や、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を成形する際に、樹脂の機械的特性等が低下する場合がある。
【0049】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、所定の範囲の量の(B)ポリグリセロールの飽和脂肪酸エステルを含む限り、本発明の目的を阻害しない範囲で、ポリグリセロールの飽和脂肪酸エステル以外の離型剤を含んでいてもよい。他の離型剤の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来、ポリブチレンテレフタレート樹脂に対して使用されている離型剤の中から選択することができる。他の離型剤の量は、典型的には、(B)ポリグリセロールの飽和脂肪酸エステルと他の離型剤との質量の合計に対して、90質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、10質量%以下が特に好ましい。
【0050】
上記(B)ポリグリセロールの飽和脂肪酸エステルと共に用いることができる、好適な他の離型剤の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビタン、又は、ジペンタエリスリトール等のポリオールと、炭素原子数8以上30以下の飽和脂肪酸とから得られる、ポリオールの飽和脂肪酸エステル;縮合数2以上のポリグリセロールと、炭素原子数8以上30以下の飽和脂肪酸とから得られ、且つ、少なくとも1つの炭素原子数8以上18以下の飽和脂肪族アシル基を有するポリグリセロールの飽和脂肪酸エステル;天然パラフィン、合成パラフィン、マイクロワックス、及びポリオレフィンワックス等の炭化水素系化合物;ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、メチレンビスステアロアミド、及びエチレンビスステアロアミド等の脂肪酸アミド系化合物;セチルアルコール、ステアリルアルコール、及びミリスチルアルコール等のアルコール系化合物;及び、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレンオキシド等のポリアルキレングリコール化合物を挙げることができる。
【0051】
(B)ポリグリセロールの飽和脂肪酸エステルの形態は、特に限定されない。(B)ポリグリセロールの飽和脂肪酸エステルは、固体状又は油状で、そのままポリブチレンテレフタレート樹脂に配合することができ、ポリブチレンテレフタレート樹脂等の熱可塑性樹脂をマトリックスとするマスターバッチとしてポリブチレンテレフタレート樹脂に配合することもできる。
【0052】
(B)ポリグリセロールの飽和脂肪酸エステルの使用量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上5.0質量部以下であり、0.05質量部以上4.0質量部以下がより好ましく、0.1質量部以上3.0質量部以下が特に好ましい。(B)ポリグリセロールの飽和脂肪酸エステルの使用量が過少である場合には、離型性や離型剤の染み出しの抑制に関する所望の改良効果を得難い場合があり、(B)ポリグリセロールの飽和脂肪酸エステルの使用量が過多である場合には、離型剤の染み出しによって、金型の汚染、射出成形時の計量の不安定化等の問題が生じやすい。また、成形品表面に染み出した離型剤によって、成形品の耐トラッキング性や耐アーク性、表面抵抗率、体積抵抗率、絶縁破壊強度等の電気特性や接点汚染性が変化することもある。
【0053】
〔(C)添加剤〕
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、成形品の機械物性、熱安定性、難燃性等の特性の改良の目的等で、本発明の目的を阻害しない範囲で、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂、及び(B)ポリグリセロールの飽和脂肪酸エステルの他に、従来熱可塑性樹脂組成物に使用されている種々の(C)添加剤を含んでいてもよい。(C)添加剤の具体例としては、エラストマー、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、染料、顔料、潤滑剤、離型剤、結晶化促進剤、結晶核剤等が挙げられる。(C)添加剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、所望の添加剤の通常の使用量の範囲から適宜選択できる。
【0054】
〔(D)充填材〕
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、成形品の機械的特性の改良の目的等で、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂に対して、(B)ポリグリセロールの飽和脂肪酸エステルに加えて、(D)充填材を配合できる。本発明において用いる(D)充填材の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来から高分子材料の充填材として使用される種々の充填材を使用することができ、無機充填材及び有機充填材のいずれも使用できる。また、本発明で用いる(D)充填材の形状は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されず、繊維状充填材、粉粒状充填材、及び板状充填材のいずれも好適に使用できる。
【0055】
本発明において用いる好適な繊維状充填材として、例えば、ガラス繊維、アスベスト繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化珪素繊維、硼素繊維、チタン酸カリウム繊維、さらにステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属の繊維状物等の無機質繊維状物質が挙げられる。
【0056】
本発明において用いる好適な粉粒状充填材としては、例えば、カーボンブラック、黒鉛、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ミルドガラスファイバー、ガラスバルーン、ガラス粉、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、ウォラストナイトの如き珪酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、アルミナの如き金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムの如き金属の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムの如き金属の硫酸塩、その他フェライト、炭化珪素、窒化珪素、窒化硼素、各種金属粉末等が挙げられる。また、好適な板状充填材としては、マイカ、ガラスフレーク、各種の金属箔等が挙げられる。
【0057】
これらの(D)充填材の中では、コストと得られるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の物性とのバランスに優れることからガラス繊維を用いるのが特に好ましい。
【0058】
ガラス繊維としては、公知のガラス繊維がいずれも好ましく用いられ、ガラス繊維径や、円筒、繭形断面、長円断面等の断面形状、あるいはチョップドストランドやロービング等の製造に用いる際の長さやガラスカットの方法にはよらない。本発明において、ガラス繊維の原料となるガラスの種類は特に限定されないが、品質上、Eガラスや、組成中にジルコニウム元素を含む耐腐食ガラスが好ましく用いられる。
【0059】
また、(D)充填材と、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂からなる樹脂マトリックスとの界面特性を向上させる目的で、シラン化合物やエポキシ化合物等の有機処理剤で表面処理された充填材が好ましく用いられる。かかる充填材に用いられるシラン化合物やエポキシ化合物としては公知のものがいずれも好ましく用いることができ、本発明で充填材の表面処理に用いられるシラン化合物、エポキシ化合物の種類には依存しない。
【0060】
(D)充填材の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されないが、典型的には、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、5質量部以上200質量部以下が好ましく、10質量部以上150質量部以下がより好ましく、15質量部以上100質量部以下が特に好ましい。(D)充填材の使用量が多すぎる場合、成形時の樹脂組成物の流動性が損なわれる場合がある。
【0061】
[ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法]
本発明において、ポリブチレンテレフタレート樹脂の製造方法は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と、(B)ポリグリセロールの飽和脂肪酸エステルとを均一に混合できれば特に限定されず、従来知られる熱可塑性樹脂組成物の製造方法から適宜選択することができる。
【0062】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法として好適な方法としては、例えば、1軸又は2軸押出機等の溶融混練装置を用いて、各成分を溶融混練して押出した後、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を粉末、フレーク、ペレット等の所望の形態に加工する方法が挙げられる。
【0063】
[ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のペレット]
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の形態は、特に限定されないが、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物をペレットの形状とする場合、成形前の樹脂の乾燥による離型剤の染み出しの影響を特に低減することができる。
【0064】
なお、本発明において「ペレット」とは、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる均一な形状の塊状物であって、射出成形・押出し成形・ブロー成形などの成形加工に用いるものを意味する。ここで、ペレットの均一な形状は、幾何学的に完全に均一である必要はなく、目視による観察においてほぼ均一な形状と認められればよい。なお、数種類の均一な形状のペレットが混合された、ペレットの混合物も、本発明の「ペレット」に含まれる。本発明におけるペレットは、溶融状態のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を所望の形状に加工したものでもよく、例えば錠菓のように、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の粉体を圧縮して所望の形状に加工したものであってもよい。
【0065】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のペレットは、成形前の樹脂の乾燥後に、ペレット表面に離型剤が染み出し難いため、ペレットの成形機のスクリューへの食い込み不良や、成形機のスクリュー上でのペレットのすべりが生じ難くなる。このため、本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を成形材料として用いることにより、成形時の計量が安定化されるため、長時間安定して成形作業を実施でき、製品の寸法や機械的性質のバラツキを小さくすることができる。
【0066】
また、本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のペレットは、成形前の樹脂の乾燥後に、ペレット同士の凝集や、ペレットの乾燥に用いた容器へのペレットの付着が抑制されるため、成形機へのペレットの供給が極めて容易である。
【0067】
本発明において、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物をペレットとして用いる場合、ペレットの形状は、成形作業に大きな支障が出ない限り、特に限定されない。好適なペレットの形状の例としては、円柱、球、楕円球、立方体、直方体等が挙げられる。これらの形状の中では、ペレットの製造が容易であり、成形時の取り扱い性に優れることから、円柱がより好ましい。なお、これらのペレットの形状は、幾何学的に厳密な円柱や球である必要はなく、目視により概ね円柱、球等と判断できる形状も含まれる。
【0068】
円柱状のペレットの好適な製造方法としては、1軸又は2軸押出機で溶融混練されたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を、円形の吐出孔を備えるダイスを通じて、ストランドとして押出した後、冷却されたストランドを所望の長さに切断する方法が挙げられる。なお吐出口の径は、所望の径のペレットが得られるように、溶融混練条件に応じて選択される。
【0069】
本発明において、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のペレットが円柱状である場合、底面の直径は1.4mm以上3.4mm以下が好ましく、1.5mm以上3.2mm以下がより好ましく、また、高さは2.2mm以上4.2mm以下が好ましく、2.5mm以上3.8mm以下がより好ましい。
【0070】
円柱状のペレットについて、ペレットの底面の直径及び高さが過小である場合、ペレットの単位重量当たりの表面積が増加するために、離型剤がペレット表面に染み出しやすい場合がある。また、ペレットの底面の直径及び高さが過大である場合、射出成形時の計量時間が長くなる、計量時間がばらつく、計量しない等、計量性が悪化する。計量性の悪化は、成形時間が長くなる、連続成形が出来ない、ショットごとの充填ムラなどの問題を引き起こし、成形品の品質を悪化させる場合がある。
【0071】
以上説明した、本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物、及びポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のペレットによれば、成形前の乾燥時の離型剤のポリブチレンテレフタレート樹脂表面への染み出しを抑制できる。
【0072】
このため、本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物、及びポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のペレットによれば、離型剤の染み出しに起因する、成形機のスクリュウへの樹脂の食い込み不良や、スクリュウ上での樹脂のすべりの発生が抑制され、安定した成形が可能となる。
【0073】
特に、本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物がペレットである場合、成形前の乾燥によるペレットの凝集が起こり難く、成形機へのペレットの供給が容易となるため、成形安定性に加え、成形作業の効率を大きく向上することができる。
【0074】
また、本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物、及びポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のペレットは、離型性に優れ、成形品の離型時間を短縮できるため、成形サイクルの短縮による成形品の製造コストの低減が可能である。
【実施例】
【0075】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0076】
実施例、及び比較例で、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の材料として用いた、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂、(B)離型剤(式(I)で表されるポリグリセロールの飽和脂肪酸エステル)、(B’)式(I)で表されるポリグリセロール飽和脂肪酸エステル以外の離型剤、及び(C)添加剤を以下に記す。
【0077】
〔(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂〕
A−1:固有粘度0.88のポリブチレンテレフタレート樹脂(ウィンテックポリマー株式会社製、500FP)
〔(B)離型剤(式(I)で表されるポリグリセロールの飽和脂肪酸エステル)〕
B−1:ジグリセロールテトラベヘネート(理研ビタミン株式会社製リケマールB74)
B−2:トリグリセロールペンタベヘネート(理研ビタミン株式会社製、ポエムTR−FB)
〔(B’)式(I)で表されるポリグリセロールの飽和脂肪酸エステル以外の離型剤〕
B’−1:ジグリセロールテトラステアレート(理研ビタミン株式会社製、リケマールS−74)
B’−2:エチレングリコールジモンタネート(クラリアントジャパン株式会社製、Luzawax EP)
B’−3:プロピレングリコールジベヘネート
B’−4:ベヘン酸ベヘニルエステル(日本油化株式会社製、ユニスターM2222−SL)
B’−5:ジペンタエリスリトールヘキサステアレート
B’−6:グリセリントリステアレート(理研ビタミン株式会社製、ポエムS−95)
B’−7:エチレングリコールジステアレート(日本油化株式会社製、ユニスターE−275)
〔(C)添加剤〕
C−1:ペンタエリトリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート](チバジャパン株式会社製、IRGANOX1010)
【0078】
〔参考例〕
以下の、処方に従い、ジグリセロールテトラベヘネート(B−1)を調製した。
ベヘン酸2モルをクロロホルム1.5lに溶解し、5モルの塩化チオニルを加え、室温で4時間攪拌した。次いで、反応液を減圧濃縮し、過剰の塩化チオニルをクロロホルムと共に留去した。得られた残渣に750mlのクロロホルムを加え、ベヘン酸クロライドのクロロホルム溶液を得た。
ジグリセロール0.2モルとトリエチルアミン500mlとからなる溶液に、得られたベヘン酸クロライドのクロロホルム溶液を滴下した後、室温で12時間反応した。反応液を減圧濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、0.1モルのジグリセロールテトラベヘネートを得た。
B’−3、及びB’−5の離型剤は、原料のポリオールの使用量を水酸基の数に応じて変える他は、ジグリセロールテトラベヘネートと同様にして調製した。
【0079】
〔実施例1〕
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂A−1と、(B)離型剤(ポリグリセロールの飽和脂肪酸エステル)B−1と、(C)添加剤C−1を、表1に示す割合で二軸押出機(JSW製、TEX−30)を用いて、下記の条件にて溶融混練してポリブチレンテレフタレート樹脂組成物とした。溶融混練されたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を、孔径4mmの円形の吐出孔を備える二軸押出機の先端のダイスからストランド状に吐出し、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のストランドが冷却された後に、ストランドを3mm長に切断して、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のペレットを得た。得られたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を用いて、下記の方法に従い、離型性、離型剤の染み出し性、及び成形時の計量安定性を評価した。また、下記の方法に従い、離型剤の融点を評価した。離型剤の融点、離型性、染み出し性、及び計量安定性の評価結果を表1に記す。
【0080】
<溶融混練条件>
シリンダー温度:260℃
スクリュー回転数:130rpm
押出量:12kg/hr
【0081】
<融点測定>
表1に記載の離型剤の融点はJIS K0064(1992)に基づいて測定した。
【0082】
<離型性評価>
140℃の恒温機内で3時間保持されたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を用いて離型性の評価を行った。離型性の評価は、
図1に示す、平板11、第1離型抵抗部12、及び、円柱状の第2離型抵抗部13から構成される離型性評価用の試験片1を、射出成形機(東芝機械株式会社製、EC30)を用いて、以下の条件で成形することにより行った。試験片1の離型は、平板11上の、突き出し点14をイジェクトピンにより突くことにより行った。平板11の寸法は、長辺30mm、短辺15mm、厚さ1mmであり、第1離型抵抗部12の寸法は高さ10mm、幅15mm、中央薄肉部厚さ2mm、両端厚肉部厚さ3mmであり、第2離型抵抗部13の寸法は、底面直径3mm、高さ7mmである。離型時にイジェクトピンによる突き出し痕が発生しない最短冷却時間を、保圧力50MPaにおいて測定し、離型性を評価した。冷却時間60秒で離型しなかったものは、×と記載した。最短冷却時間が短いほど離型性に優れることを意味する。
【0083】
(射出成形条件)
シリンダ温度:250℃
金型温度:60℃
射出速度:20mm/秒
【0084】
<染み出し性>
底面内径43mm、容量50mlのガラス製ビーカーにポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のペレットを擦り切り一杯に充填し、ビーカーを恒温機内で、140℃で3時間保持した。次いで、恒温機からビーカーを取り出し、室内に静置して、ペレットを室温まで冷却した。その後、ビーカーを平滑な水平面上に開口部を下向きに乗せ、ビーカーを静かに持ち上げて、ペレットの分散状態を目視で確認した。ビーカーを持ち上げた後のペレットの状態を目視で観察し、離型剤の染み出し性を、下記の基準にて、++、+、−、及び−−の4段階で評価した。
【0085】
(染み出し性評価基準)
++:ペレットが流動して円錐状に堆積し、且つペレットの凝集が殆ど見られない。
+:ペレットが流動して円錐状に堆積するが、一部ペレットの凝集が見られる。
−:半分以上のペレットが凝集している。
−−:ペレットが凝集した状態でビーカーに付着し、ビーカーを取り去れない。
【0086】
<計量安定性評価>
ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレットを、恒温機内で、140℃で3時間乾燥した。次いで、乾燥後のペレットを用いて、射出成形機(東芝機械株式会社製、EC40)により、60mm×50mm×2mmの板状の成形品を連続成形した。計量安定性は、成形開始より20ショット成形後の、21ショットから120ショットまでの100ショット成形時の、1ショットあたりの平均計量時間により計量安定性を評価した。
【0087】
〔実施例2から4、及び比較例1から9〕
離型剤の種類を、表1に記載の(B)ポリグリセロールの飽和脂肪酸エステル、又は(B’)他の離型剤に変え、離型剤の使用量を表1に記載の量に変更する他は、実施例1と同様にしてポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のペレットを製造した。実施例2から4、及び比較例1から9で得られたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のペレットの、離型性、染み出し性、及び軽量安定性を、実施例1と同様に評価した。離型性、染み出し性、及び計量安定性の評価結果を表1に記す。
【0088】
【表1】
【0089】
表1中、(A)、(B)、(B’)、及び(C)の各成分の量は質量部を表す。
また、表中の離型剤の主骨格の略号は、離型剤が下記のアルコール又はポリオールに由来する主骨格を有することを意味する。
DG:ジグリセロール
TG:トリグリセロール
EG:エチレングリコール
PG:プロピレングリコール
BA:ベヘニルアルコール
DPE:ジペンタエリスリトール
GL:グリセリン
さらに、表中の離型剤の分子量は、小数点第一位で四捨五入したものである。
【0090】
実施例1から4と、比較例1及び2との比較から、離型剤の主骨格が、ポリグリセロールに由来するものであっても、離型剤の有するアシル基の炭素原子数が18以下である場合には、離型性に優れるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は得られず、離型剤の染み出しも改善できないことが分かる。
【0091】
実施例1から4と、比較例3から5との比較から、離型剤の主骨格がポリグリセロールの他のポリオール又はアルコールに由来する場合、離型剤の有するアシル基の炭素原子数が19以上であれば、離型性に優れるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は得られるが、離型剤の染み出しは改善できないことが分かる。
【0092】
比較例6では、トリグリセロールペンタベヘネート(実施例3及び4、B−2)と同様の分子量及び融点を有するジペンタエリスリトールテトラステアレートを用いたが、離型性に優れるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は得られなかった。また、乾燥後のペレットでは軽度の凝集が観測され、染み出し性の改良は十分ではなかった。
【0093】
比較例7及び8から、離型剤がポリグリセロールに由来する骨格を持たず、離型剤の有するアシル基の炭素原子数が18以下である場合には、離型剤の染み出し性が幾分改善されることがあっても、離型性に優れるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が得られないことが分かる。
【0094】
比較例9から、離型剤を添加していない場合には、染み出しは見られないが、十分な離型性がないことが分かる。計量安定性については、計量が安定せず連続成形が不可能であったため、測定を中断した。
【0095】
離型剤の染み出しによるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の凝集の原因としては、離型剤の融点が低い場合にポリブチレンテレフタレート樹脂組成物中で溶融した離型剤が容易に染み出すことが考えられる。
【0096】
比較例1及び2では、低融点の離型剤を用いた場合、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の凝集が観測されている。
【0097】
比較例3、5、及び7では、実施例の離型剤と同等かそれ以上の融点の離型剤を用いていているが、乾燥後のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の凝集が観測されている。
【0098】
さらに、比較例1と5と、及び比較例6と8とでは、離型剤の分子量が2から3倍異なっている。しかし、比較例1と5とでは、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の乾燥後に著しい凝集が観測され、比較例6と8とでは、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の乾燥後の凝集は僅かに観測されただけである。つまり、これらの比較例の結果によれば離型剤の分子量は、染み出し性に大きく影響しないことが分かる。
【0099】
以上により、実施例、及び比較例の結果によれば、本願発明による、ポリブチレンテレフタレート樹脂の、離型性、染み出し性、及び成形時の計量安定性の改善の効果は、離型剤の融点や分子量等から予測されるものではなく、ポリグリセロールに由来する骨格と、炭素原子数19以上のアシル基とを有するという、離型剤の構造の特徴によってもたらされることが分かる。