【実施例】
【0094】
以下の実施例は、それらの内部に生物活性化合物、特に葉酸を組み込むことが可能なカゼイン粒子の製造を説明する。これらは、既に述べた複数の因子が原因で食品中で起こり得る分解から、当該化合物を保護する。これら例は、葉酸を、その摂取の後、胃における状態から保護し、そして葉酸を腸液中に放出する、これらナノ粒子の能力をも示す。
【0095】
空のカゼインナノ粒子を製造するための一般的方法
カゼインナノ粒子を製造する方法は、水性溶媒中にカゼインナトリウム(ANVISA、マドリッド、スペイン)を規定量の塩基性アミノ酸と共に溶解し、続いてマグネチックスターラーによる連続流の下に、規定量のカルシウム溶液を添加して、乳白色の懸濁液の見掛けを有するナノ粒子を形成させることを含む。
【0096】
ナノ粒子の物理化学的性質の決定
ナノ粒子の物理化学的性質の完全な決定を達成するために必要な様々な試験について以下に記載する。
【0097】
ナノ粒子の径および表面電荷は物理化学的試験から決定し、後者はゼータ電位の測定を通して決定した。第1のパラメータはZetasizer nano Z−S(Malvern Instruments/Optilas、スペイン)を用いて光子相関分光法によって得て、一方、ゼータ電位はZeta Potential Analyzer(Brookhaven Instruments Corporation、ニューヨーク、米国)を用いて測定した。
【0098】
ナノ粒子を形成する方法の収率は、製剤を遠心分離(17,000×g、20分)して得た上清から回収したナノ粒子を得た後に残った遊離カゼインの定量化を通して算出した。従って、製剤中で粒子を形成するカゼインの量は、最初に添加した量と、精製工程の間に回収した上清中に定量された量との間の差異として概算した。前記定量化は、282nmにおける紫外(UV)分光法(Agilent 8453、UV−可視分光光度システム)によって行った。収率は下記のとおり概算した:
収率(%)=[(総カゼイン塩のmg−上清中のカゼイン塩のmg)/総カゼイン塩のmg]×100[方程式1]
【0099】
様々な計算を行うため、150ないし1,500μg/mLの検量曲線(R
2=0.9992;LD=36μg/mL;LQ=119μg/mL)を用いた。
【0100】
加えて、総カゼイン塩と上清中に含有されるカゼイン塩との間の差異によって得られた結果を確認するために、遠心分離後に得られたペレットを定量する試験を行った。この場合、粒子の破壊のために、0.05M NaOHを用い、これは検量曲線の用意に用いた媒体と同じであった。従って、この場合に収率は、下記のとおり概算した:
収率(%)=[(ペレット中のカゼイン塩のmg)/総カゼイン塩のmg]×100[方程式2]
【0101】
前記媒体中で調製したカゼイン塩として見られた最大吸光度は300nmであった。検量線作成のために用いた濃度もまた、150ないし1,500μg/mLの範囲であった(R
2=0.9996;LD=26μg/mL;LQ=85μg/mL)。
【0102】
ナノ粒子の形態は、走査型電子顕微鏡(Zeiss、DSM 940A、独国)によって観察した。そのために、凍結乾燥ナノ粒子を9nmの金分子層(Emitech K550 Team、Sputter−Coater、英国)によってコーティングし、Zeiss DMS 940A顕微鏡(米国)によって写真撮影した。
【0103】
葉酸を含有するカゼインナノ粒子を製造するための一般的方法
葉酸を含有するカゼインナノ粒子を製造する方法は、水性溶媒中にカゼインナトリウムを規定量の塩基性アミノ酸と共に溶解し、続いてマグネチックスターラーの下に、水性溶媒中に予め調製した規定量の葉酸溶液を規定量の塩基性アミノ酸と共に添加することを含む。混合液を数分間インキュベートした後、最終工程は、カルシウム塩を添加して、乳白色−黄色がかった懸濁液の見掛けを有するナノ粒子を形成させることからなる。
【0104】
場合により、形成されたナノ粒子は、それらを安定化させるため、100ないし800MPa下で1ないし5分間のサイクルで高圧静水圧処理(Stansted Fluid Power、ISOLABモデルFPG11500B110;シリーズ番号:7844)に付してよい。
【0105】
続いて、撹拌による3分間の均質化の後、撹拌を停止することなく、規定量の糖類溶液(ラクトース、トレハロース、マンニトール、グルコース、ソルビトール、マルトデキストリン、またはマルトース)を添加する。最終的に、懸濁液は凍結乾燥するか、またはスプレー乾燥機(Buchi Mini Spray Drier B−191、Buchi Labortechnik AG、スイス)内で以下の条件においてスプレーする:
−空気注入口温度:60〜100℃
−空気排出口温度:30〜90℃
−空気圧:2〜10bars[2〜10×10
5Pa]
−サンプルポンプ流量:2〜9mL/分
−吸引:30〜100%
−空気流:200〜900L/h。
【0106】
場合により、製剤は糖類を添加した後、スプレー乾燥の代わりに凍結乾燥によって乾燥させることができる。
【0107】
カゼイン粒子に結合する葉酸量の決定
ナノ粒子に結合する葉酸の量を、Faye[Faye Russell,L.,Quantitative Determination of Water−Soluble Vitamins.In Food Analysis by HPLC,Nollet,L.M.L.(Ed.),Marcel Dekker,Inc.,New York,Second Edition,Chapter 10(2000)pp.444−445]によって記載された方法に従って、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により定量した。分析は、ダイオードアレイUV検出システムと組み合わせた、モデル1100 LCシリーズクロマトグラフ(Agilent、ワルドブロン、独国)において行った。データは、Hewlett−Packardコンピュータにおいて、Chem−Station G2171ソフトウェアにより分析した。葉酸の分離のため、40℃に加熱したAlltech C18 Alltima(商標)カラム(5μm、150mm×2.1mm)を、適合するGemini(登録商標)C18 AJO−7596カラムと共に用いた。移動相は、リン酸(33mM、pH2.3)/アセトニトリル混合液から勾配(第1表)をつけて作られ、0.25mL/分の流速でポンプ注入した。検出は290nmで行った。サンプル注入量は10μLであった。葉酸の保持時間は22.6±0.5分である。
【0108】
【表2】
【0109】
サンプルの定量化の前に、溶液中のカゼインおよび/またはアミノ酸の存在が葉酸の正しい定量化を妨げ得ないことが確認され、95%超の正確かつ的確な結果が得られる、2ないし400μg/mLの濃度の異なる検量線を準備した。
【0110】
製造直後のサンプルの分析のため(それらの乾燥前)、製剤の規定量を濾過した後に得られた上清を、Vivaspin(登録商標)300,000 MWCO透析チューブ(VIVASPIN 2、Sartorius stedim Biotech、独国)を通して定量した。次に、ペレットを0.05M NaOHに溶解して粒子を破壊し、そして溶液中のカゼインおよび葉酸およびアミノ酸を維持し、そしてその結果それらの定量化を進めた。両画分(上清およびペレット)に見出された葉酸含有量の和は、最初に添加した総量と常に一致した。さらに、1mLの製剤を1mLの0.05M NaOHに溶解することによって、葉酸の総量を定量することも可能であった。この試験により、添加した葉酸の量と、記載したクロマトグラフィー法を通した定量化によって得られた葉酸の量との間の差異が、全ての試験例で10%を超えることが確認された。
【0111】
加えて、粉末サンプルの定量化のために10mgのナノ粒子を用い、これらを2mLの水に再懸濁し、遠心分離して、その後製造直後のサンプルと同様の方法によって進めた。
【0112】
模擬胃腸液中のナノ粒子からの葉酸の放出に対する放出動態試験
ナノ粒子からの葉酸の放出に対する放出動態は、その約10mgを、2mLの模擬胃液中に37±1℃で分散させることによって決定した(0ないし2時間)(USP XXIII)。規定時間に、ナノ粒子懸濁液を遠心分離して(17,000×g、20分)、上清中の葉酸の量を前述のHPLC法によって定量した。胃液から上清を除いた後、37±1℃で模擬腸液を加え(2ないし24時間)(USP XXIII)、その後上記の試験例と同じ方法によって進めた。
【0113】
各試験で用いた製剤中に存在するビタミンの総含有量を考慮して、全時間に放出された葉酸のパーセンテージを算出した。
【0114】
薬物動態試験。カゼインナノ粒子内にカプセル化された葉酸のバイオアベイラビリティ
薬物動態試験は、施設内の治験倫理委員会の規則および実験動物に関する欧州の法律(86/609/EU)に従って行った。そのために、平均体重25gの雄ウィスターラット25匹を通常の明−暗(12時間−12時間)状態に付し、試験前の一週間に、要求に応じて葉酸欠乏性の飼料(Folic Acid Deficient Diet.TD.95247.Harlan、米国)および水を摂取させた。製剤投与の12時間前に、ラットを、飼料は摂取できないが水は自由に摂取できるメタボリックケージへ隔離した。
【0115】
動物を5つの処置群(1群あたり5匹のラット)に分けた。第1群には1mLのPBS(リン酸緩衝液、pH7.4)のみを経口投与した。続く3群は、以下の製剤:(i)遊離葉酸(カプセル化されていない)(Aditio、Panreac Quimica、バルセロナ、スペイン)、(ii)葉酸をカプセル化しているカゼインナノ粒子、(iii)高圧処理により、葉酸をカプセル化しているカゼインナノ粒子のいずれかに組み込まれた葉酸の1mg/kg(200μg/ラット)のみの経口用量で処置した。水中に分散した異なる製剤の各1mLを、胃−食道カニューレを通して投与した。最後に、生理食塩水血清(0.5mL)に溶解した同用量の遊離葉酸(1mg/kg)を、第5群の伏在静内へ静脈内経路により投与した。
【0116】
製剤の投与に先立ち、各ラットの基本的なビタミン濃度を調べるため、尾の伏在静脈から血液を採取した。投与後、血清分離管(SARSTEDT Microtube 1.1mL Z−Gel)を用いて、異なる時間に約500μL量の血液を採取した。全ての試験例で、ラットが疼痛を感じることを防止するため、吸入麻酔(イソフルラン:酸素)を用いて動物を眠らせた後に血液を採取し、常時これらの定数を調べた。
【0117】
続いて、血液量を、予め動物の体温に温めた500μLの生理食塩水血清を腹腔内投与することによって置換した。この間に動物の状態を試験したが(移動性、積極性、アレルギー性反応、及び体温)、有意な変化は観察されなかった。
【0118】
血清サンプルの葉酸の前処置および定量
血液を入れたチューブを遠心分離(6,000rpm、20分、20℃)した後に得られた血清サンプル中の葉酸の定量化を、酵素免疫アッセイ法によって行った。そのために、食品中の葉酸の定量のためにFDAによって承認されたElisaキット(Diagnostic automation,INC.カラバサス、カリフォルニア州、米国)を用いた。血清サンプルは、前処理なしで製造業者の説明書に従って定量した。
【0119】
該キットは食品における使用のために設計されているため、一連の予備試験を、血清サンプル中のビタミンを定量するその能力を確認するために行った。前記試験は、以下の前準備過程:1%(w/v)アスコルビン酸ナトリウム中に調製した50mMの四ホウ酸ナトリウム溶液中に溶解した葉酸の可変量(0〜300μL)を50μLの血清に添加する過程によって、該キットを用いて得られた結果と、前項に記載した高速液体クロマトグラフィー法によって得られた結果との徹底的な比較を行うことからなる。得られた溶液を、50mMの四ホウ酸ナトリウム溶液で最終量350μL(血清希釈1:7)とした。各混合液を30分間煮沸し、続いて2℃に冷却して、前記温度で一晩保持した。
【0120】
得られたサンプルを20,000rpmで、20分間遠心分離し、次に20μmのフィルターを通して濾過した後、既に記載した高速液体クロマトグラフィー法を用いることによってそれらの葉酸含有量を定量した。この場合、血清のビタミン濃度が低いため、定量化における誤差を最小限に抑えるため、かついかなるマトリックスによる干渉を除くため、標準添加法を用いた。
【0121】
試験を行った全ての例において、両方法による血清葉酸濃度の差異は10%未満であった。従って、分析に必要とされる血清量が少なく、そしてより簡便で迅速な方法であり、その検出限界(2ng/mL)はクロマトグラフィー技術のそれよりもかなり低いため、サンプル全体の定量のために、酵素免疫アッセイ法が選択された。
【0122】
脂溶性活性物質:ケルセチンを含有するカゼインナノ粒子を製造するための一般的方法
ケルセチンを含有するカゼインナノ粒子を製造する方法は、水性溶媒中にカゼインナトリウムを規定量の塩基性アミノ酸と共に溶解し、続いてマグネチックスターラーの下に、水性溶媒中に規定量のアスコルビン酸溶液、そして続いて予めエタノールに溶解したケルセチンを添加することを含む。混合液を数分間インキュベートした後、最終工程は、カルシウム塩を添加し、乳白色−黄色がかった懸濁液の見掛けを有するナノ粒子を形成させることからなる。
【0123】
場合により、形成されたナノ粒子は、それらを安定化させるため、100ないし800MPa下で1ないし5分間のサイクルで高圧静水圧処理(Stansted Fluid Power、ISOLABモデルFPG11500B110;シリーズ番号:7844)に付してよい。
【0124】
続いて、撹拌による3分間の均質化の後、撹拌を停止することなく、規定量の糖類溶液(ラクトース、トレハロース、マンニトール、グルコース、ソルビトール、マルトデキストリン、またはマルトース)を添加する。最終的に、懸濁液は凍結乾燥するか、またはスプレー乾燥機(Buchi Mini Spray Drier B−191、Buchi Labortechnik AG、スイス)内で以下の条件においてスプレーする:
−空気注入口温度:60〜100℃
−空気排出口温度:30〜90℃
−空気圧:2〜10bars[2〜10×10
5Pa]
−サンプルポンプ流量:2〜9mL/分
−吸引:30〜100%
−空気流:200〜900L/h。
【0125】
場合により、糖類を添加した後、製剤はスプレー乾燥の代わりに凍結乾燥によって乾燥させることができる。
【0126】
カゼイン粒子に結合するケルセチン量の決定
ナノ粒子に結合するケルセチンの量を、Lacopini(Lacopini et al.,J Food Comp Anal 2008;21:589−598)によって記載された方法に幾つかの変更を加え、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により定量した。分析は、ダイオードアレイUV検出システムと組み合わせた、モデル1100 LCシリーズクロマトグラフ(Agilent、ワルドブロン、独国)において行った。データは、Hewlett−Packardコンピュータにおいて、Chem−Station G2171ソフトウェアにより分析した。葉酸の分離のため、40℃に加熱したAlltech C18 Alltima(商標)カラム(5μm、150mm×2.1mm)を、適合するGemini(登録商標)C18 AJO−7596カラムと共に用い、勾配(第2表を参照)を有する水/メタノール/氷酢酸混合液を移動相として、0.25mL/分の流速でポンプ注入した。検出は260nmで行い、サンプル注入量は10μLで、ケルセチンの保持時間は24.2±0.2分であった。
【0127】
【表3】
【0128】
サンプルの定量化の前に、95%超の正確かつ的確な結果が得られる、含水アルコール溶媒(75%エタノール)中の1ないし100μg/mLの濃度の異なる検量線を準備した。
【0129】
製造直後のサンプルの分析のため(それらの乾燥前)、濾過(17000rpm、20分)によりナノ粒子の精製過程後に得られた上清を、50%(w/v)エタノール含有量の含水アルコール溶液が得られるまで希釈した。
【0130】
最後に、ナノ粒子に結合したケルセチン量[カプセル化効率(E.E.)]を、最初に添加したケルセチン量(Q)と上清中に定量されたケルセチン量との間の差異として、以下の方程式に従って算出した。
【数1】
【0131】
実施例1
空のカゼインナノ粒子の調製および性質決定、それらを得るための方法の収率、用いるアミノ酸の型の、ナノ粒子の安定性および物理化学的特性に対する影響
1gのカゼインナトリウムを、90mgのリジンと共に75mLの水に溶解した。続いて、マグネチックスターラーによる連続流の下に、この溶液に40mLの0.8%CaCl
2を加えた。この方法は3回行った。
【0132】
図2(AおよびB)に、透過型電子顕微鏡によって得た、この方法によって得られたカゼイン粒子の写真を示す。
【0133】
加えて、粒子の物理化学的特性に対するアミノ酸の型の影響を理解するために、同試験をアミノ酸の非存在下で、またはリジンの代わりに50mgのアルギニンを用いて行った。
【0134】
第3表に、得られたナノ粒子の主な物理化学的パラメータを要約する。
【0135】
【表4】
【0136】
実施した統計学的試験(ノンパラメトリック独立標本検定:クラスカル・ウォリス)により、製剤の物理化学的パラメータの間に差異があるということが認められる、統計学的に有意な証拠は存在しないことが示された。従って、アミノ酸の型は空のナノ粒子の前記特性に干渉しないと結論することができる。
【0137】
製剤に加えるアミノ酸の比を変化させて同じ試験を行っても、同様の結論、すなわちアミノ酸の比および型は空のナノ粒子の最終的な特性に干渉しないという結論に達した。
【0138】
製剤の安定性について理解するため、3つの型のナノ粒子の物理化学的パラメータを長時間に亘って測定した。得られた結果を第4表に収載する。
【0139】
【表5】
【0140】
それらを得た時点で、3つの型のナノ粒子は同一オーダーの径および比較的低い多分散度を有していた(PDI値が0.3未満で、粒径分布が均一であることから考えられる)。これらの径および分散値は、アミノ酸と共に製剤化したナノ粒子の例における試験の全体を通して有意な変動を示さない。しかしながら、それらを得てから2時間後、アミノ酸と共に製剤化しなかったナノ粒子は、それらの平均径およびそれらの多分散度の双方が著しく増加し(0.3を超える多分散値に対しては粒径値は表現されず、直径における不均一性が大きいという指針のみである)、試験後には非常に高い多分散値に達した。前記増加は、粒子間の凝集現象の存在を示している。3つの製剤を経時的に観察したとき、アミノ酸なしのナノ粒子の沈殿物が乳白色の層を生じるのに対し、アミノ酸と共に製剤化したナノ粒子は均質な懸濁液を形成することが確認されたため、これらの現象は巨視的規模においてさえも確認された。これらの結果に鑑みると、経時的に安定な粒子を得るためにアミノ酸の存在は必須であると考えられる。
【0141】
加えて、再び3つの型の製剤を調製し、スプレー乾燥技術により乾燥させた後、それらの物理化学的特性について試験した。該方法の条件は下記の通りであった:
−空気注入口温度:90℃
−空気排出口温度:49℃
−空気圧:6bar[6×10
5Pa]
−サンプルポンプ流量:4.5mL/分
−吸引:100%
−空気流:600L/h。
【0142】
この試験は、ナノ粒子を得た時点でそれらを乾燥させたときのアミノ酸の影響を理解する目的で行ったが、その理由は、その時にいずれの製剤も凝集現象を示さなかったためである。得られた結果を第5表に収載する。
【0143】
【表6】
【0144】
粉末状に乾燥させたアミノ酸を有するナノ粒子を水性溶媒に再懸濁させることにより、径分布は単分散のままであり、それらの径は、スプレー乾燥による乾燥前のそれらの同族体の径よりもわずかに大きいことが観察された。しかしながら、アミノ酸なしで製剤化されたナノ粒子は、より大きな径と多分散値を有しており、このことは乾燥中に凝集現象を受けた可能性を示す。従って、アミノ酸の存在は、粒子をスプレー乾燥によって乾燥させるときにも必要である。
【0145】
このことに鑑みると、アミノ酸を有するナノ粒子の物理化学的特性は、アミノ酸を有さないナノ粒子のそれとは異なっており;それらは凝集傾向が少ないことから、生物活性化合物をカプセル化するために選択される製剤であると結論付けられる。
【0146】
実施例2
葉酸を含有するカゼインナノ粒子の調製および性質決定、カプセル化効率に対するリジンおよび葉酸含有量の影響
全てが最終量7.5mLの水に100mgのカゼインナトリウムおよび可変量のリジン(0〜8.5mg)を含有する異なる溶液を調製した。
【0147】
加えて、50mLの水に、300mgの葉酸を400mgのリジンと共に溶解した。
【0148】
続いて、カゼイン塩溶液に1mLの葉酸溶液を加えた。5分間のインキュベーションの後、マグネチックスターラーによる連続流の下に、この混合液に4mLの0.8%CaCl
2を加えた。この方法は、それぞれの型の製剤について3回に行った。
【0149】
図3に、透過型電子顕微鏡によって得た、この方法によって得られた葉酸をカプセル化したカゼイン粒子の画像を示す。
【0150】
各例において得られた物理化学的特性を第6表に収載する。
【0151】
【表7】
【0152】
実施した統計学的検定(ノンパラメトリック独立標本検定:クラスカル・ウォリス)により、表に収載されている最後の3つの製剤(リジン含有量が3.9、4.5、および8.5mgである)の物理化学的特性に差異があると考えられる、統計学的に有意な証拠は存在しないことが示された。第1の例では、葉酸溶液はリジンを含んでいるが、最初のカゼイン塩溶液中にアミノ酸が存在しないために葉酸がカルシウムと共に部分的に沈殿しやすくなり、遠心分離後のペレット中の葉酸の全てがカプセル化されたものではないことから、ビタミンの定量化における誤差の原因となることが確認された。
【0153】
さらなる試験により、ビタミン溶液がアミノ酸を含有するが、カゼイン塩溶液がアミノ酸を含有しない場合、沈殿することなく製剤中に組み込むことのできる葉酸の最大量は4mgであることが確認され、得られた結果は第6表のものと同様であった(25.5±1μgFA/mgNP、およびカプセル化効率:68.7±0.5)。従って、アミノ酸の存在はカプセル化されるビタミンの量には影響しないことが確認された。しかしながら、アミノ酸なしで製剤化されたナノ粒子の安定性は低く、さらに凝集傾向が高いため(実施例1を参照)、製剤化はこのようなアミノ酸の存在下で行った。
【0154】
粒子の物理化学的特性に対する、製剤に添加した葉酸量の影響を理解するために、全ての例において、最初のカゼイン溶液中のアミノ酸量を一定:8.5mgとし、添加する葉酸溶液の量のみを変化させることによって同様の試験を行った。
【0155】
図4に、カプセル化された葉酸量と製剤に添加したビタミン量との間の比を関数として示す。
【0156】
試験を行った製剤に見られた径は132ないし140nmの範囲であり、全ての例で多分散度は0.2未満であった。この例では、各製剤に添加した葉酸量が異なるため、カプセル化効率値は同等ではない。重量比13.5:1のカゼイン:葉酸に対する最大値は73.1±7.5であった。
【0157】
この試験の結果として、製剤中のカゼインのmg/FAのmgの比が減少するため(すなわち、製剤に最初に添加した葉酸量が増加するため)、ナノ粒子内部でカプセル化された葉酸量の増加が得られると結論することができる。しかしながら、製剤中に存在するカゼイン量(mgで)が、葉酸の各mgに対して経験値よりも少ない場合には、リジンの非存在下で起こるような沈殿および不安定な製剤が観察される。
【0158】
実施例3
スプレー乾燥によって乾燥させた、葉酸を含有するカゼインナノ粒子の調製および性質決定、最終製剤に対する乾燥過程の影響
最終量75mLの水に、双方とも1,000mgのカゼインナトリウムおよび90mgのリジンを含有する、2つの溶液を調製した。
【0159】
加えて、100mLの水に、600mgの葉酸を800mgのリジンと共に溶解した。
【0160】
続いて、各カゼイン塩溶液に7.5mLの葉酸溶液を加えた。5分間のインキュベーションの後、マグネチックスターラーによる連続流の下に、この混合液に40mLの0.8%CaCl
2を加えた。
【0161】
最後に、製剤の1つを、上清およびペレット中の葉酸の定量化のために遠心分離を行い、一方もう1つには、スプレー乾燥機を用いた乾燥の前に1,900mgのラクトースを加えた。該方法の条件は下記の通りであった:
−空気注入口温度:90℃
−空気排出口温度:45℃
−空気圧:6bar[6×10
5Pa]
−サンプルポンプ流量:4.5mL/分
−吸引:95%
−空気流:600L/h。
【0162】
双方の例において観察された物理化学的特性を第7表に収載する。
【0163】
【表8】
【0164】
実施した統計学的検定(ノンパラメトリック独立標本検定:クラスカル・ウォリス)により、両製剤に対して得られたカプセル化効率の間には統計学的に有意な差異(p<0.05)が存在することが示された。この差異は、既にカプセル化された葉酸の一部を放出させる、カゼインナノ粒子の部分的な分解の原因となる、意図した温度でのスプレー乾燥による製剤の乾燥過程に起因する可能性がある。
【0165】
これらの結果は、方法を粒子の架橋に応用する必要を示しており、そうすることによって粒子の安定性を改善することができ、そして製剤を遠心分離または乾燥させる過程における前述のカプセル化効率の低下を防止することができる。
【0166】
実施例4
高圧で安定化させ、スプレー乾燥技術によって乾燥させた、葉酸を含有し、リジンを有するカゼインナノ粒子の調製および性質決定、ナノ粒子の物理化学的特性に対する処理の影響
全てが最終量75mLの水に1,000mgのカゼインナトリウムおよび90mgのリジンを含有する、異なる溶液を調製した。
【0167】
加えて、100mLの水に、600mgの葉酸を800mgのリジンと共に溶解した。
【0168】
続いて、カゼイン塩溶液に7.5mLの葉酸溶液を加えた。5分間のインキュベーションの後、マグネチックスターラによる連続流の下に、この混合液に40mLの0.8%CaCl
2を加えた。
【0169】
粒子が一旦形成されたら、製剤を密閉したプラスチックバッグへ移し、高圧静水圧処理に付した(0MPa;100MPa、5分;200MPa、5分;400MPa、5分;600MPa、5分、または800MPa、5分)。
【0170】
過程が一旦終了したら、水に溶解した1,900mgのラクトースを各製剤に加え、以下の条件下でスプレー乾燥技術を用いてそれらを乾燥させた:
−空気注入口温度:85℃
−空気排出口温度:45℃
−空気圧:6bar[6×10
5Pa]
−サンプルポンプ流量:4.5mL/分
−吸引:95%
−空気流:600L/h。
【0171】
第8表に、得られたナノ粒子の主な物理化学的特性を要約する。
【0172】
【表9】
【0173】
第8表に見られるように、製剤に適用される処理の型にかかわらず、ナノ粒子は同様の表面電荷を有している。しかしながら、データは、処理に適用する圧力が増加するにつれて、得られる粒径がより小さくなり、最大7%までの減少に達することを検出した。しかしながら、適用する圧力が高くなるにつれて、カプセル化されたビタミンの量(そしてその結果としてのカプセル化効率)の値はより大きくなり、処理なしの製剤に対して65%増加した(800MPaで処理したサンプルの場合)。
【0174】
加えて、
図5は、高圧処理なし、ならびに100、400、および800MPaで処理した製剤の、走査型電子顕微鏡によって得られた顕微鏡写真を示す。これらは、高圧静水圧処理なしのナノ粒子が、それらが得られた後に付される様々な過程(スプレー乾燥による乾燥、遠心分離、高温に達する過程での顕微鏡観察)によってどのように部分的に変化するかを確認したことを示すが、様々な高圧処理に供されたナノ粒子の方がより安定であった。
【0175】
これらの結果は、適用した高圧静水処理はナノ粒子を架橋し、それらをより安定させ、遠心分離、乾燥、および写真撮影後にそれらが分解するのを防止することを示す。乾燥または遠心分離を行うこれらの過程の幾つかにおけるナノ粒子の部分的な分解は、葉酸の放出を伴い、その結果得られるカプセル化効率をより低下させる可能性があるため、これは全て、処理されたサンプルにおいてより高いカプセル化効率が得られることを説明している。
【0176】
実施例5
高圧を用い、スプレー乾燥によって乾燥させた、葉酸を含有し、アルギニンを有するカゼインナノ粒子の調製および性質決定、最終結果において用いたアミノ酸の影響
最終量210mLの、3,065mgのカゼインナトリウムおよび123mgのアルギニンの水溶液を調製した。
【0177】
加えて、100mLの水に、605mgの葉酸を800mgのアルギニンと共に溶解した。
【0178】
続いて、カゼイン塩溶液に27mLの葉酸溶液を加えた。5分間のインキュベーションの後、マグネチックスターラーによる連続流の下に、この混合液に120mLの0.8%CaCl
2を加えた。
【0179】
粒子が一旦形成されたら、製剤を密閉したプラスチックバッグへ移し、400MPaで5分のサイクルからなる高圧静水圧処理に付した。
【0180】
過程が一旦終了したら、水に溶解した5,880mgのマンニトールを高圧処理された300mLの製剤に加え、以下の条件下でスプレー乾燥技術を用いてその乾燥を行った:
−空気注入口温度:85℃
−空気排出口温度:45℃
−空気圧:6bar[6×10
5Pa]
−サンプルポンプ流量:4.5mL/分
−吸引:95%
−空気流:600L/h。
【0181】
得られた製剤の主な物理化学的特性を第9表に要約する。
【0182】
【表10】
【0183】
図6は、400MPa、5分間の処理で製剤中に葉酸をアルギニンと共に含有するカゼインナノ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。
【0184】
観察されるように、得られた製剤は、アルギニンの代わりにリジンを用いて得たナノ粒子と同様の特性を有している。
【0185】
実施例6
模擬胃腸液中でのナノ粒子からの葉酸の放出に対する放出動態試験、放出動態における高圧処理の影響
放出試験を行うために、実施例4に記載した粉末製剤(高圧処理なし、100MPaおよび400MPaで処理)を用いた。
【0186】
図7は、高圧処理なしのサンプルの例に対して得られた放出動態を示す。これにおいて、胃液中での2時間のインキュベーション後に、最大の葉酸放出値である4%に達したことが観察される。しかしながら、腸の状態では、カゼイン粒子は増大したパーセンテージのビタミンを放出して(試験24時間目で90%に達する)、溶解した。さらに、この媒体中では、インキュベーション後に遠心分離したサンプルには、それらの溶解、そしてそれゆえのビタミンの放出の証拠となるカゼインペレットがほとんど存在しなかった。従って、設計された製剤は、胃の管の至る所で葉酸をカプセル化し、胃の状態がバイオアベイラビリティを減少させるのを防止すると考えられる。さらに、ナノ粒子が腸内で溶解することで、ビタミンの放出を助け、ナノ粒子の存在によって起こり得る任意の毒性問題を排除する。
【0187】
高圧処理したサンプルの場合について、
図8(AおよびB)にそれらの放出動態を示す。それらにおいては、高圧処理なしのサンプルに見出されるものと非常に類似したプロファイルが見られ、模擬腸液中での6時間後の最大放出パーセンテージ(70%)は、同今回の処理なしのサンプルに見出されるもの(80%)よりもわずかに低い。
【0188】
従って、カゼインナノ粒子の架橋のためにそれらへ高静水圧を適用することによって、それらからの成分放出のプロファイルは有意に変化しないが、放出されたビタミンの総量は6時間後に10%低下する。
【0189】
実施例7
カゼインナノ粒子内にカプセル化された葉酸の薬物動態学的試験
第10表に、薬物動態学的試験において試験したナノ粒子の主な物理化学的特性を要約する。実施例5に記載した方法に従って、双方の型のナノ粒子(高圧処理あり及びなし)を得た。
【0190】
【表11】
【0191】
薬物動態学的試験を3段階に分けた。第1段階は、リン酸緩衝液に溶解した1mg/kgの葉酸を静脈内投与することからなり;第2段階は、5匹の雄ウィスターラット群(このラット群では、経時的な基礎ビタミン濃度について試験した)のラットに1mLのリン酸緩衝液を経口投与することからなる。最後に、第3段階は、1mg/kgの(i)水に溶解した葉酸、(ii)カゼインナノ粒子内にカプセル化された葉酸、および(iii)高圧処理した、カゼインナノ粒子内にカプセル化された葉酸を、5匹の動物から構成されるラット群へ経口投与することからなる。
【0192】
投与後、約500μL量の血液を異なる時間に採取して(0、1、2、3、8、および24時間)、血清分離管に回収し、続いて動物の血液量を同等の生理食塩水血清で腹腔内経路によって戻した。葉酸の投与後に得られたデータの薬物動態学的分析を、WiNNonlin 1.5薬物動態調整プログラム(Pharsight Corporation、マウンテンビュー、米国)の、ノンコンパートメント調整の方法を用いて行った。
【0193】
得られた結果(基礎濃度を差し引いた後)を
図9に収載する。観察されるように、葉酸の静脈内投与(
図9A)は、最初のサンプル摂取による血清薬物濃度のピークに続いて、血清薬物濃度の大幅な減少を示している。ビタミンを経口投与した際に得られるプロファイル(
図9B)は、最大濃度が有意に低いために異なっており、これはより長時間現れ、よりゆっくりと減少する。しかしながら、遊離型(カプセル化されていない)またはカゼインナノ粒子内にカプセル化された(高圧処理あり又はなし)葉酸の経口投与後に見られるビタミン濃度を比較すると、濃度プロファイルは同様の時間において見られたが、最大値はカプセル化されたビタミンを投与した時の方がより大きかった。
【0194】
本試験の実験データのノンコンパートメント解析を行った後に得られた薬物動態学的なパラメータの値を第11表に収載する。
【0195】
【表12】
【0196】
観察されるように、用いた製剤の型に依存してAUC値は有意に変動する。ビタミンがカゼインナノ粒子内にカプセル化されている場合、AUC値は遊離型の葉酸を投与した後のものよりも有意に高く、これらはさらに投与後24時間までにわたって維持される。2つのナノ粒子製剤において血漿中の葉酸の平均滞留時間(MRT)は同様であり、遊離型と比較した場合にはそれよりも長いことが観察された(経口および静脈内)。
【0197】
これらの結果により、葉酸をカプセル化したカゼインナノ粒子の経口によるバイオアベイラビリティは双方の製剤で52%であり、経口経路による遊離葉酸の経口投与後に得られた値よりも45%高いと計算された。
【0198】
実施例8
葉酸をカプセル化したカゼインナノ粒子を有する化粧品製剤[1]
最終量15mLの水に、200mgのカゼインナトリウムおよび18mgのリジンを含有する溶液を調製した。
【0199】
加えて、100mLの水に、600mgの葉酸を800mgのリジンと共に溶解した。
【0200】
続いて、カゼイン塩溶液に1.5mLの葉酸溶液を加えた。5分間のインキュベーションの後、マグネチックスターラーによる連続流の下に、この混合液に8mLの0.8%CaCl
2を加えた。
【0201】
最後に、製剤を17,000×gで、20分間遠心分離した。上清を廃棄し、ペレットを25mLの水に再懸濁した。
【0202】
加えて、42mLの水に、7gのグリセリンおよび0.2gのニパギンナトリウムを含有する溶液を調製した。該溶液を水浴中で50℃まで加熱し、続いて葉酸を含有するカゼインナノ粒子の水溶液を加えて、それにより化粧品製剤を調製し得る最終水溶液を得た。
【0203】
加えて、25gのNeo PCL O/Wをも、70℃で加熱してそれを完全に融解した。この脂肪層が一旦融解したら、経時的に正確で安定なO/Wエマルションが得られるまで、持続的に撹拌しながら前述の水溶液を加えた。得られたクリームの官能評価は、均質な見掛けを有し、かつ塊が見られないことから肯定できるものであった。
【0204】
この同試験を、実施例4に記載される、高圧処理(400MPa、5分)して、かつスプレー乾燥機によって乾燥させたナノ粒子の製剤を用いても行った。600mgの製剤を25mLの水に再懸濁後、既に上記した同じ方法を行った。得られたクリームもまた均質な見掛けを有し、かつ塊が見られなかった。
【0205】
実施例9
葉酸をカプセル化したカゼインナノ粒子を有する化粧品製剤[2]
最終量15mLの水に、200mgのカゼインナトリウムおよび18mgのリジンを含有する溶液を調製した。
【0206】
加えて、100mLの水に、600mgの葉酸を800mgのリジンと共に溶解した。
【0207】
続いて、各カゼイン塩溶液に1.5mLの葉酸溶液を加えた。5分間のインキュベーションの後、マグネチックスターラーによる連続流の下に、この混合液に8mLの0.8%CaCl
2を加えた。
【0208】
最後に、製剤を17,000×gで、20分間遠心分離した。上清を廃棄し、ペレットを25mLの水に再懸濁した。
【0209】
加えて、0.5gのカーボポールUltrez 10を75mLの水に溶解した。該溶液にナノ粒子の懸濁液を加えた。混合液が一旦均質になったら、pH10になるまで十分な量のトリメチルアミンを加えた。均質かつ安定で、わずかに黄色がかったカーボポールゲルが得られるまで混合液を均質化した。
【0210】
この同じ試験を、実施例4に記載される、高圧処理(400MPa、5分)して、かつスプレー乾燥機によって乾燥させたナノ粒子の製剤を用いても行った。600mgの製剤を25mLの水に再懸濁後、既に上記した同じ方法を行った。得られたゲルもまたわずかに黄色がかった色であり、均質かつ安定な見掛けであった。
【0211】
実施例10
葉酸をカプセル化したカゼインナノ粒子を有する化粧品製剤[3]
3gのモノステアリン酸グリセリンを、5gのミリスチン酸イソプロピルおよび2gのセチルアルコールと混合した。この混合液を水浴中で70℃で加熱した。
【0212】
加えて、実施例8に記載した、葉酸を有するカゼインナノ粒子を含有する87gのカーボポールゲルを、3gのソルビトール液と共に水浴中で50℃まで加熱した。この溶液を前者に加え、均質なエマルションが得られるまで穏やかに撹拌した。
【0213】
実施例11
ケルセチンを含有するカゼインナノ粒子の調製および性質決定
7.5mLの水に、100mgのカゼインナトリウムおよび8.5mgのリジン(または5.5mgのアルギニン)を含有する溶液を調製した。
【0214】
加えて、濃度12mg/mLのアスコルビン酸ナトリウム水溶液を調製し、その0.5mLをカゼイン塩およびリジンの混合物に加えた。アスコルビン酸ナトリウムを用いる理由は、ナノ粒子を得る過程の間に、ケルセチンの酸化を防止するためであった。
【0215】
加えて、50mgのケルセチンを5mLのエタノールに溶解した。
【0216】
続いて、カゼイン塩溶液に0.15mLのケルセチン溶液を加えた。5分間のインキュベーションの後、マグネチックスターラーによる連続流の下に、この混合液に4mLの0.8%CaCl
2を加えた。この方法は、それぞれの型の製剤について3回行った。
【0217】
各例において得られた物理化学的特性を第12表に収載する。
【0218】
【表13】
【0219】
得られた結果により、本発明のナノ粒子は、脂溶性の特性を有する生物活性化合物のカプセル化にも適し、そして高いカプセル化効率パーセンテージを得られることが示された。
【0220】
加えて、この結果により、一つまたは別のアミノ酸の存在は、得られたナノ粒子の物理化学的特性に影響しないことが確認される。
【0221】
カプセル化されたケルセチンの量を増大させるため、アミノ酸としてリジンおよび可変量のケルセチン(0.05ないし0.50mLのケルセチンエタノール溶液)を用いて試験を反復した。得られた結果を第13表に収載する。
【0222】
【表14】
【0223】
得られた結果により、製剤中のケルセチン量の増加に伴って、カプセル化されたケルセチンの量も同比率で増加するが、カプセル化効率は一定のままであることが示される。
【0224】
さらに、先に記載した方法に従って試験を行ったが、カゼイン塩溶液へのケルセチン添加に先立ち、ケルセチンを(それをエタノール中に溶解する代わりに)水中に分散させた。得られた結果により、ケルセチンの一部はカゼインナノ粒子内にカプセル化されたが、カゼイン塩溶液へのケルセチン添加に先立ちケルセチンをエタノールに溶解した先の例よりもカプセル化効率は低いことが示された。