特許第5758946号(P5758946)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5758946
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】凍結装置
(51)【国際特許分類】
   F25D 3/00 20060101AFI20150716BHJP
   A61K 35/14 20150101ALI20150716BHJP
   A61K 35/56 20150101ALI20150716BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20150716BHJP
   A61P 41/00 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
   F25D3/00 E
   A61K35/14
   A61K35/56
   A61K35/12
   A61P41/00
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-90634(P2013-90634)
(22)【出願日】2013年4月23日
(65)【公開番号】特開2014-214911(P2014-214911A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2014年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】592015293
【氏名又は名称】株式会社テクニカン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(72)【発明者】
【氏名】山田 義夫
【審査官】 藤崎 詔夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−324973(JP,A)
【文献】 特開2005−192533(JP,A)
【文献】 実開昭49−111864(JP,U)
【文献】 特開2000−043946(JP,A)
【文献】 特開平06−174353(JP,A)
【文献】 特開昭64−034226(JP,A)
【文献】 特開平10−253215(JP,A)
【文献】 特開昭60−017674(JP,A)
【文献】 実開昭63−069976(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 3/00
A61K 35/12
A61K 35/14
A61K 35/56
A61P 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍結溶媒を用いて被凍結物を凍結する凍結装置であって、
内部の温度を調節可能な第一の凍結空間および第二の凍結空間を有し、
前記第一の凍結空間には、前記凍結溶媒を封入した凍結溶媒袋が、前記被凍結物を接触可能に複数充填され、
前記第二の凍結空間には、前記凍結溶媒が、前記被凍結物を浸漬可能に収容されており、
前記第二の引き出し内に前記凍結溶媒が充填されており、
前記第二の引き出しが、当該第二の引き出しの引き出し時に引き出し方向手前側への前記凍結溶媒の越流を防止する液漏れ防止機構を備える、凍結装置。
【請求項2】
前記第一の凍結空間を形成する第一の引き出しと、前記第二の凍結空間を形成する第二の引き出しとを備える、請求項1に記載の凍結装置。
【請求項3】
前記第二の凍結空間では、前記凍結溶媒が、蓋付き容器に収納された状態で収容されている、請求項1または2に記載の凍結装置。
【請求項4】
前記第一の凍結空間と前記第二の凍結空間とが上下に隣接配置されており、
前記第一の凍結空間が前記第二の凍結空間の上側に位置する、請求項1〜の何れかに記載の凍結装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結溶媒を用いて被凍結物を凍結する凍結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブラインとも称される凍結溶媒を用いて被凍結物を凍結する技術として、例えば−20℃〜−35℃の凍結溶媒を用いて被凍結物を凍結する液体冷却式凍結法が知られている。具体的には、液体冷却式凍結法の一例として、凍結溶媒(ブライン)を封入したブライン袋を使用し、被凍結物を複数のブライン袋の間に挟み込むことで、被凍結物を凍結する技術が知られている。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−192533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような凍結溶媒を用いた凍結技術によれば、気体よりも熱伝導率の高い凍結溶媒を用いて被凍結物を凍結することができるので、送風凍結法(エアーブラスト式凍結法)とは異なり、被凍結物を凍結する際に最大氷結晶生成温度帯(0℃〜−5℃)を可能な限り早く通過させることができる。従って、凍結溶媒を用いた凍結技術を用いれば、細胞破壊や身割れ(クラック)を生じることなく被凍結物を凍結することができる。そのため、上記液体冷却式凍結法は、従来、主に食肉や魚肉等の食品を凍結する際に好適に用いられていた。
【0005】
ここで、近年では、食品分野以外の様々な分野においても被凍結物を効率的に凍結することが求められている。具体的には、例えば医療分野では、血液、皮膚細胞、iPS細胞などの様々な被凍結物を効率的に凍結することが求められている。そして、そのような被凍結物を凍結する技術として、凍結溶媒を用いた凍結技術が注目されている。
【0006】
しかしながら、従来、上述した凍結溶媒を用いた凍結装置は、主に食品を凍結することを目的として開発されていた。そのため、医療分野等の他分野での利用に伴い被凍結物の種類が多様化した場合には、従来の凍結装置では、被凍結物を効率的に凍結することができない場合があった。具体的には、例えば医療分野においては、輸血パックなどの比較的大きい(サイズが数cm〜数十cm程度の)被凍結物と、皮膚細胞やiPS細胞のサンプルなどの非常に小さい(サイズが数mm程度の)サンプルとを制御された温度条件下で凍結することが求められるが、従来の凍結装置では、素材や形態が大きく異なる被凍結物を一つの凍結装置内で効率的に凍結することができなかった。
【0007】
それゆえ本発明は、凍結溶媒を用いて被凍結物を凍結する際に、被凍結物の素材や形態に応じて効率的に被凍結物を凍結することが可能な凍結装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の凍結装置は、
凍結溶媒を用いて被凍結物を凍結する凍結装置であって、
内部の温度を調節可能な第一の凍結空間および第二の凍結空間を有し、
前記第一の凍結空間には、前記凍結溶媒を封入した凍結溶媒袋が、前記被凍結物を接触可能に複数充填され、
前記第二の凍結空間には、前記凍結溶媒が、前記被凍結物を浸漬可能に収容されており、
前記第二の引き出し内に前記凍結溶媒が充填されており、
前記第二の引き出しが、当該第二の引き出しの引き出し時に引き出し方向手前側への前記凍結溶媒の越流を防止する液漏れ防止機構を備えることを特徴とする。
【0009】
かかる凍結装置によれば、被凍結物を凍結溶媒袋の間に挟み込んで凍結する方法と、被凍結物を直接、または袋等に封入した状態で凍結溶媒に浸漬させて凍結する方法とを使い分けて被凍結物を凍結することができるので、被凍結物の素材や形態に応じて効率的に被凍結物を凍結することができる。また、凍結空間内の温度が調節可能なので、制御された温度条件下で凍結溶媒を用いて被凍結物を凍結することができる。また、第二の引き出し内に凍結溶媒が直接充填されている場合でも、引き出した時の勢いで凍結溶媒が作業者(引き出し者)側に越流することを抑制し、作業の安全性を高めることができる。
【0010】
なお、本発明の凍結装置にあっては、
前記第一の凍結空間を形成する第一の引き出しと、前記第二の凍結空間を形成する第二の引き出しとを備えることが好ましく、これによれば、第一および第二のそれぞれの凍結空間に対する被凍結物の導入および取り出しを容易に行うことができる。また、被凍結物の導入または取り出しの際に被凍結物の導入または取り出しを行っていない側の凍結空間の温度が上昇することを抑制することができる。
【0011】
また、本発明の凍結装置にあっては、
前記第二の凍結空間では、前記凍結溶媒が、蓋付き容器に収納された状態で収容されていることが好ましく、これによれば、凍結溶媒が、凍結装置の外部に誤って流出することを防止するとともに、第二の凍結空間内全体に凍結溶媒を満たす必要がないので、使用する凍結溶媒の量を低減することができる。また、凍結装置内で所望の温度に冷却された凍結溶媒を収容する蓋付き容器を第二の凍結空間から取り出して、蓋を開けて被凍結物を浸漬させることで、冷却装置の外部で被凍結物の凍結作業を行うことができる。従って、被凍結物の浸漬または取り出しの際に第二の凍結空間内の温度が上昇することを抑制することができる。
【0013】
また、本発明の凍結装置にあっては、
前記第一の凍結空間と前記第二の凍結空間とが上下に隣接配置されており、
前記第一の凍結空間が前記第二の凍結空間の上側に位置することが好ましく、これによれば、第一の凍結空間側からの冷気により第二の凍結空間内を効果的に冷却することができるので、第二の凍結空間内の温度を安定させることができる。また、第二の凍結空間が下側に位置することで、凍結溶媒が第二の凍結空間から流出した場合にも、作業者に凍結溶媒が付着する可能性を低減し、より安全性を高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、凍結溶媒を用いて被凍結物を凍結する際に、被凍結物の素材や形態に応じて効率的に被凍結物を凍結することが可能な凍結装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(a)は、本発明に係る一実施形態の凍結装置を示す斜視図であり、(b)は、図1(a)に示す凍結装置の、凍結空間の内部を示す図である。
図2】本発明に係る他の実施形態の凍結装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について例示説明する。
図1(a)に示す凍結装置1は、前面に開口部3を有する筐体5および片開き式の扉7を備え、扉7は開閉自在に筐体5に設けられて、閉じた状態で該開口部3を塞ぐ。なお、筐体5および扉7の形状および開口部3の位置は特に限定されるものではない。また、凍結装置1内の凍結空間を、所望の温度に維持する観点から、筐体5および扉7は断熱性を有することが好ましい。
【0017】
凍結装置1は筐体5の内部に、第一の凍結空間を形成する第一の引き出し9と、第二の凍結空間を形成する第二の引き出し11とを備える。なお、この例において、第一の凍結空間および第二の凍結空間は、上下に隣接配置されているが、左右に隣接配置されていてもよい。また、凍結空間は2つに限定されず、適切な形態の凍結空間をさらに追加で設けてもよい。また、第一および第二の凍結空間の形態は、引き出しに限定されず、例えば、筐体5内を仕切り部材等で棚状に区画し、開口部3側を扉7で閉止可能とした形態であってもよい。
【0018】
凍結装置1は、筐体5の内部で各引き出しの外側に配置された、例えば内部に所定温度の冷媒が流通する冷媒管等の冷却手段(図示しない)を備える。この冷却手段により、第一の引き出し9および第二の引き出し11をそれぞれ冷却し、各引き出し内部の温度を所望の温度に調節することができる。なお、温度調節の操作についても特に限定されるものではないが、例えば、図1(a)に示す画面部21に表示される設定温度や現在の内部温度等を確認しながら、ボタンやタッチパネル等で構成される操作部23を操作し、所望の設定温度を入力して流通する冷媒の温度や流量を既知の方法で変更することにより温度を調節することができる。なお、第一の引き出し9内の温度と、第二の引き出し11内の温度とは、同一の温度となるように制御してもよいし、異なる温度となるように制御してもよい。また、第一および第二の引き出し9、11の内部の温度は、0℃以下であればよいが、被凍結物を適切な速度で凍結する観点から、−45℃以下が好ましく、−60℃以下がより好ましい。
【0019】
第一の引き出し9および第二の引き出し11は、扉7を解放した状態で、それぞれの引き出しに設けられた取っ手13を手前に引くことによって、引き出すことができる。
【0020】
第一の引き出し9には、凍結溶媒Sを封入した凍結溶媒袋15が複数充填されている。この例において、第一の引き出し9には、凍結溶媒袋15が、3段に積重ねて配置(充填)されている。凍結溶媒袋15および凍結溶媒袋15内の凍結溶媒Sは、第一の引き出し9に充填されてから、次第に第一の引き出し9の内部の温度に近づき、当該温度に達した後は、当該温度に維持される。
【0021】
凍結溶媒袋15は、例えばプラスチック等の袋に凍結溶媒Sを封入したものであり、凍結溶媒袋15は、被凍結物の外形に追従して変形可能な程度に適度な柔軟性を有し、高い熱伝導性を有することが好ましい。また、凍結溶媒袋15の大きさは、第一の引き出し9内の底面と同等の幅を有する図示例のものに限定されず、任意の大きさとすることができる。凍結溶媒袋15としては、例えば特開2005-192533号に記載のブライン袋を使用することができる。
【0022】
第二の引き出し11には、凍結溶媒Sが、被凍結物を浸漬可能に収容されている。この例において、第二の引き出し11には、凍結溶媒Sが蓋付き容器17に収納された状態で収容されている。蓋付き容器17および蓋付き容器17内の凍結溶媒Sは、第二の引き出し11に収容されてから次第に第二の引き出し11の内部の温度に近づき、当該温度に到達後、維持される。なお、蓋付き容器17の形状は、特に限定されるものではないが、例えば図示のような円筒形状とすることができる。また、蓋付き容器17は、熱伝導性に優れた金属製であることが好ましく、低温状況下での使用に適したステンレスがより好ましい。
【0023】
被凍結物としては、特に限定されるものではないが、例えば、食肉や魚肉等の食品、ヒトを含む動物の器官、組織、細胞、血液、または培養細胞、培養組織、血液製剤等が挙げられる。
【0024】
凍結溶媒Sは、使用する温度範囲で液体であれば特に限定されるものではないが、例えばエチルアルコールやメチルブタンとすることができる。
【0025】
上記構成を有する凍結装置1を使用する場合には、予め、凍結溶媒袋15および蓋付き容器17をそれぞれ、所望の温度に調節した第一の引き出し9および第二の引き出し11内に一定時間放置し、所望の温度に達するまで冷却しておく。そして、被凍結物を凍結する際には、当該被凍結物の素材や形態等に応じて、第一の引き出し9に充填された凍結溶媒袋15の間に挟み込むか、第二の引き出し11に収容された凍結溶媒Sに浸漬させるかを選択して凍結する。例えば、被凍結物の比表面積が比較的大きい場合には、第一の引き出し9内で凍結溶媒袋15の間に挟み込み、逆に、比表面積が比較的小さい場合には、第二の引き出し11から蓋付き容器17を取り出して蓋を開けて凍結溶媒Sに浸漬し、被凍結物の凍結後に蓋付き容器17を引き出し11に戻すといった選択が可能となる。また、凍結手段の使い分けの他の判断基準としては、例えば、凹凸が少なく、凍結溶媒袋15との接触面積が十分に確保される被凍結物は凍結溶媒袋15の間に挟み込み、逆に、凹凸が多い被凍結物は、凍結溶媒Sに浸漬するといった判断基準が挙げられる。更に、凍結手段の使い分けの別の判断基準としては、輸血パックなどの薄厚で大型の被凍結物は凍結溶媒袋15の間に挟み込み、iPS細胞などの各種細胞サンプルを収容した小型の保存容器や培養容器などの被凍結物は凍結溶媒Sに浸漬するといった判断基準が挙げられる。
【0026】
したがって、本実施形態の凍結装置1によれば、個々の被凍結物の素材や形態に応じて、凍結手段を選択することで、凍結溶媒Sを用いた被凍結物の凍結を、効率的に行うことが可能となる。また、液体である凍結溶媒Sを用いた液面接触による凍結方法なので、一般的な冷凍庫のような気体接触の凍結方法に比べて急速に被凍結物を凍結し、被凍結物の細胞破壊等を抑制することができる。また、凍結空間内の温度が調節可能なので、制御された温度条件下で凍結溶媒Sを用いて被凍結物を凍結することができる。さらに、実際に接触させた凍結溶媒Sの温度が把握できるので、例えば細胞の凍結に適した温度の研究などが可能になる。
【0027】
なお、本実施形態の凍結装置1にあっては、第一および第二の凍結空間をそれぞれ引き出し9,11としたことで、被凍結物の導入および取り出しが容易となる。また、扉7が開いた状態でも、引き出し9,11を引き出さない限りは凍結空間を閉塞することができ、凍結空間内の温度上昇を抑制することができる。
【0028】
また、本実施形態の凍結装置1にあっては、第二の凍結空間を形成する第二の引き出し11内で、凍結溶媒Sが、蓋付き容器17に収納された状態で収容されているため、第二の引き出し11を引き出した際などに凍結溶媒Sが外部に誤って流出することを防止することができるとともに、第二の凍結空間内全体に凍結溶媒Sを満たす必要がないので、使用する凍結溶媒Sの量を低減することができる。また、蓋付き容器17を第二の凍結空間を形成する第二の引き出し11から取り出した状態で、被凍結物の凍結作業を行うことができるので、その間、第二の引き出し11および扉7を閉じることで、凍結空間内の温度上昇を抑制することができる。
【0029】
また、本実施形態の凍結装置1にあっては、第一の凍結空間を形成する第一の引き出し9と、第二の凍結空間を形成する第二の引き出し11とが上下に隣接配置されており、第一の凍結空間が第二の凍結空間の上側に位置している。これによれば、凍結溶媒袋15が密に充填された第一の引き出し9側からの冷気が第二の引き出し11に流れ込むため、凍結空間内の温度を安定させることができる。また、第二の引き出し11が下側に位置することで、蓋付き容器17が取り出し易いと共に、凍結溶媒Sが蓋付き容器17から流出した場合にも、作業者に凍結溶媒Sが付着する可能性を低減し、より安全性を高めることができる。
【0030】
ここで、被凍結物が血液である場合には、凍結溶媒Sの温度は、−80〜−50℃であることが好ましく、これによれば、細胞破壊等を生じることなく、適切な速度で、より確実に凍結することが可能となる。
【0031】
また、被凍結物が皮膚組織であり、凍結溶媒Sに浸漬させて凍結する場合の凍結溶媒Sの温度は、−50〜−30℃であることが好ましく、これによれば、細胞破壊等を生じることなく、適切な速度で、より確実に凍結することが可能となる。同様の観点から、凍結溶媒袋15の間に挟み込んで凍結する場合において、凍結溶媒袋15内の凍結溶媒Sの温度は、−80℃であることが好ましい。
【0032】
さらに、特に厚さの大きい被凍結物を超低温で凍結する場合には、クラックと呼ばれる亀裂が被凍結物の内部に生じる虞がある。これは、凍結が進むにつれて被凍結物が膨張して内部に熱を生じ、一方、表面側は急激に冷やされて温度が下がるため、逃げ場を失った熱によって亀裂が発生するものである。このクラックを防止するため、被凍結物の厚さに応じて、凍結溶媒Sの温度を調節することが好ましい。好適な温度は被凍結物の成分組成によっても異なるが、例えば、被凍結物の厚さが1cmを越える場合には、凍結溶媒Sの温度を−40℃以上とすることができる。
【0033】
ここで、被凍結物が、例えばパック内部に連通する管を備えた血液パック等の複雑な形状を有するものである場合、血液パック全体を袋等に入れて、血液パックと袋の間の空気を抜いた(脱気)状態で凍結することが好ましく、これによれば、複雑な形状でも、凍結溶媒の接触する表面積を確保して、容易に、且つ、安全に被凍結物を凍結することができる。
【0034】
なお、上述の実施形態では、第二の引き出し11には、凍結溶媒Sが、蓋付き容器17に収納された状態で収容されている例を示したが、凍結溶媒Sを直接、第二の引き出し11に充填してもよい。この場合、例えば図2に示すような、液漏れ防止機構としての板状の蓋部19を、第二の引き出し11の引き出し方向手前側の上部を覆って設けることにより、第二の引き出し11を引き出した際における、引き出し方向手前側への凍結溶媒Sの越流を防止することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
かくして本発明により、凍結溶媒を用いて被凍結物を凍結する際に、被凍結物の素材や形態に応じて効率的に被凍結物を凍結することが可能となる凍結装置を提供することが可能となった。
【符号の説明】
【0036】
1 凍結装置
3 開口部
5 筐体
7 扉
9 第一の引き出し(第一の凍結空間)
11 第二の引き出し(第二の凍結空間)
13 取っ手
15 凍結溶媒袋
17 蓋付き容器
19 蓋部(液漏れ防止機構)
S 凍結溶媒
図1
図2