(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記期間目標値設定部は、前記運転スケジュールリストの中の予め定めた基本運転スケジュールに基づいて前記熱負荷推定部が算出した前記熱負荷の推定値の範囲に対応した前記期間目標値を設定し、
前記熱負荷の推定値が大きい範囲に対応する前記期間目標値の方が、小さい範囲に対応する前記期間目標値よりも高くなるように設定する、
請求項1又は2に記載の空調機制御装置。
前記記憶部は、気象予測データ、過去の気象実績データ、前記空調機が稼働する空間の熱源に係るデータ、ビルの断熱データ、窓位置、窓開口面積の少なくともいずれか1つを含む環境情報を記憶し、
前記熱負荷推定部は、前記運転スケジュール選択部が選択した運転スケジュールと、前記環境情報に基づいて、前記一定期間の熱負荷の推定値を算出する、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の空調機制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
本発明の実施の形態1に係る空調機制御システム1は、
図1に示すように、制御装置10と、制御装置10が制御する空調機20と、から構成される。ここで、
図1は空調機20が1つのみの構成を示しているが、任意の数の空調機20を備えており、制御装置10がそれぞれの空調機20の制御を行っている。空調機は冷房機能又は暖房機能を有する空気調整機である。本実施の形態においては、夏期に冷房運転する場合について説明する。
【0013】
制御装置10は、演算処理部11と記憶部12を備える。制御装置10は、操作者がデータ入力するための操作部、データを出力表示する表示部、データの送受信を行う通信部等を更に備えてもよい。
【0014】
記憶部12は、例えば、フラッシュメモリ等の読み書き可能な不揮発性半導体メモリやハードディスクドライブ等の磁気記憶装置から構成される。記憶部12は月目標値リスト121、環境情報122、運転スケジュールリスト123、機器特性データ124、電気料金テーブル125を記憶する。また、記憶部12は、演算処理部11が実行するプログラム等も記憶する。
【0015】
月目標値リスト121は、月ごとの消費電力に係る目標値が記憶されている。本実施の形態では、この目標値は月ごとの電気料金の目標金額である。月目標値リスト121は、例えば、予め管理者によって制御装置10の操作部から入力された値、又は、前年度の実績に対して一定の率を乗じた値等である。
【0016】
環境情報122は、空調機20が稼働する空間の環境を示す情報であり、例えば、予め管理者によって制御装置10の操作部から入力された、人や照明やOA機器等の熱源に係るデータ、ビルの断熱特性、窓位置、窓の開口面積等を含む。また、制御装置10の通信部を用いて定期的に取得する気象予測データや過去の気象データ等の情報を含んでもよい。
【0017】
運転スケジュールリスト123は、月毎に設定されたリストであり、空調機20の複数の運転スケジュールを消費電力の大きさによって順位付けしてリスト化したものである。運転スケジュールリスト123は、予め管理者によって制御装置10の操作部から入力されて記憶されたものである。
図2の例は、夏期の特定の月の運転スケジュールリスト123を示しており、消費電力の大きい順に配列した最上位のレベル0から最下位のレベル10までの運転スケジュールからなる。
【0018】
各運転スケジュールは、冷暖房等の運転種別、運転開始時刻、運転終了時刻、基準温度の情報を含む。
図2は、それらの情報の一部を示している。各運転スケジュールは、さらに省エネルギーを実現する詳細な設定情報を含んでもよく、例えば、夏期の冷房運転時において、昼休みや、熱負荷の小さい時間帯は、目標温度を通常より高くする設定等が含まれる。
【0019】
最上位のレベル0の運転スケジュールが基本運転スケジュールであり、レベル1〜10の順で少しずつ消費電力が小さくなるように設定されている。例えば、レベル0の基本運転スケジュールは基準温度26℃を目標室温とする冷房運転である。レベル1は30分のうち3分間のみ基本運転スケジュールの基準温度に対して1℃上げた運転である。レベル2は30分のうち6分間のみ1℃上げた運転である。レベル3は30分のうち3分間運転停止し、レベル4は30分のうち6分間運転停止する運転である。レベル5は基本運転スケジュールの基準温度を1℃上げた27℃を目標室温とする冷房運転である。レベル6は基準温度27℃に対し、30分のうち3分間のみ1℃上げた運転である。
【0020】
なお、最も消費電力が小さくなる最下位のレベルの運転スケジュールで運転しても一定以上の快適性が確保できるように、運転スケジュールリスト123が構成されていることが望ましい。
図2の例であれば、レベル10の運転スケジュールの基準温度が冷房時で28℃になるように設定する。
【0021】
機器特性データ124は、空調機の出力能力毎に必要な入力電力を示したデータであり、例えば空調機のカタログ値が含まれる。電気料金テーブル125は、電力会社との契約に基づくものであり、時間帯毎の消費電力に対する電気料金を示したデータである。
【0022】
演算処理部11はCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)等から構成され、記憶部12に記憶されている各種プログラムを実行することにより、空調機制御機能等を実現する。演算処理部11は、空調機制御機能を実現するために、目標値設定部111、運転スケジュール選択部112、熱負荷推定部113、制御信号生成部114の各機能部から構成される。
【0023】
目標値設定部111は、1月の電気料金の目標金額である月目標値リスト121の月目標値を当月の日数で除算して、1日の電気料金の目標金額を算出する。そして、算出した目標金額に対して、熱負荷推定部113が推定した熱負荷の大きさに応じた係数を乗算して得られた値を日目標値として決定し、運転スケジュール選択部112に出力する。
【0024】
運転スケジュール選択部112は、レベル0の基本運転スケジュールから下位に向かって順に運転スケジュールを仮選択し、仮選択した運転スケジュールの内容を読込み熱負荷推定部113に出力する。また、運転スケジュール選択部112は、熱負荷推定部113から入力される熱負荷の推定値に基づいて空調機の消費電力を算出し、それに基づいて1日の電気料金を予測する。電気料金の予測は、記憶部に記憶されている機器特性データ124や電気料金テーブル125等のデータを参照して行う。この予測した電気料金と目標値設定部111から入力された日目標値とを比較した結果に基づいて、運転スケジュールリスト123から1つの運転スケジュールを最終選択し、制御信号生成部114に出力する。
【0025】
熱負荷推定部113は、運転スケジュール選択部112から入力される運転スケジュールの目標室温にするための熱負荷を、所定時間毎に記憶部12に記憶されている環境情報122から算出する。熱負荷を算出する期間は、5分、10分、30分、1時間などが好適である。
【0026】
熱負荷の算出は任意の既知の方法で行う。既存の熱負荷計算プログラムを利用しても良い。例えば、環境情報122に含まれる人や照明やOA機器等の熱源に係るデータや、ビルの断熱特性、窓位置、窓の開口面積、外気温の予測データ等から、人等の熱源からの発熱、建物外壁からの熱移動、窓からの日射、取り入れ外気による顕熱負荷を求める。また、人体や取り入れ外気等による水蒸気の出入りに起因する潜熱負荷を求める。そして、顕熱負荷と潜熱負荷の合計を熱負荷として算出する。
【0027】
制御信号生成部114は、運転スケジュール選択部112が選択した運転スケジュールに基づいて、空調機20に対する制御信号を生成し、空調機20に出力する。例えば、制御信号生成部114は、選択された運転スケジュールに則ったタイミングで、目標室温の変更や運転又は停止を指示する信号を含む制御信号を生成し、出力する。
【0028】
以上のように構成された空調機制御システム1の動作について説明する。
【0029】
制御装置10の演算処理部11が、記憶部12に記憶されている空調機制御処理のプログラムを実行することにより、月目標値リスト121、環境情報122、運転スケジュールリスト123、機器特性データ124、電気料金テーブル125に基づいて、日目標値の決定、熱負荷の推定、運転スケジュールの選択、制御信号の生成を行い、空調機20に対して制御信号を出力する。空調機20は、制御装置10から入力された制御信号に基づいて、空調運転を行う。
【0030】
演算処理部11が実行する空調機制御処理について、
図3に示すフローチャートに沿って詳細に説明する。
【0031】
まず、目標値設定部111が、記憶部12の月目標値リスト121から当月の月目標値を取得する(ステップS101)。取得した月目標値を当月の日数で除算し、日の目標値を決定する(ステップS102)。
【0032】
次に、運転スケジュール選択部112は、運転スケジュールのレベルxを0としてから(ステップS103)、レベルx(x=0)の運転スケジュールを記憶部12から取得する(ステップS104)。そして、取得した運転スケジュールを熱負荷推定部113に出力する。
【0033】
熱負荷推定部113は、運転スケジュール選択部112から入力された運転スケジュールの目標室温にするための熱負荷の推定値を、所定時間毎に、記憶部12から読み込む環境情報122に基づいて算出する(ステップS105)。熱負荷を算出する期間は、例えば、5分、10分、30分、1時間である。熱負荷推定部113は、算出した熱負荷を目標値設定部111と運転スケジュール選択部112に出力する。
【0034】
目標値設定部111は、熱負荷推定部113から入力された熱負荷のデータから当日の熱負荷の大小を示す熱負荷レベルを判定する(ステップS106)。ここでは、熱負荷の大きさに応じて大、中、小の3段階の判定レベルに分ける。熱負荷レベルの分類方法は任意の方法でよい。例えば、予め閾値を設定しておき、その閾値を境に熱負荷レベルを分けるようにしてもよい。
【0035】
その後、目標値設定部111は、判定した当日の熱負荷レベルに応じてステップS102で決定した日目標値Tdに所定の率βを乗じる(ステップS107)。例えば、ステップS106で熱負荷レベル大と判定した場合のβは1.1、熱負荷レベル中と判定した場合のβは1、熱負荷レベル小と判定した場合のβは0.9とする。このようにして再決定した日目標値Tdを運転スケジュール選択部112に出力する。
【0036】
運転スケジュール選択部112は、熱負荷推定部113から入力された熱負荷のデータに基づいて、その熱負荷を除去するために必要な空調機20の運転電力(消費電力)を記憶部12に記憶されている機器特性データ124を参照して求める。そして、記憶部12に記憶されている電気料金テーブル125を参照して、時間帯毎の運転電力から時間帯毎の電気料金を算出し、1日の合計金額を導出する(ステップS108)。そして、1日の電気料金の合計額がステップS107で決定した目標値Td以下であるか判定する(ステップS109)。
【0037】
1日の電気料金が目標値Td以下であった場合には(ステップS109:Yes)、運転スケジュール選択部112は、レベルx(x=0)の運転スケジュールを選択し制御信号生成部114に出力する(ステップS110)。
【0038】
1日の電気料金が目標値Tdを超えている場合には(ステップS109:No)、最初はx=0でありx=10でないため(ステップS111:No)、xを1増やし(ステップS112)、運転スケジュール選択部112はレベルxの運転プログラムを記憶部12より取得して熱負荷推定部113に出力する(ステップS113)。
【0039】
熱負荷推定部113は、運転スケジュール選択部112から入力された運転スケジュールの目標室温にするための熱負荷を、所定時間毎に、記憶部12から読み込む環境情報122に基づいて再度算出する(ステップS114)。熱負荷推定部113は、再算出した熱負荷を運転スケジュール選択部112に出力する。
【0040】
その後、ステップS108に戻り、運転スケジュール選択部112は、熱負荷推定部113から入力された熱負荷のデータに基づいて、時間帯毎の電気料金を算出し、1日の電気料金を求める(ステップS108)。
【0041】
ここで、ステップS114で熱負荷を再算出しているが、再算出した熱負荷を元にステップS107のような目標値Tdの変更は行わない。レベルを変えた運転スケジュールを選択した場合にも熱負荷レベルに応じて係数βを乗じると、さらに目標金額が少なく設定される可能性があり、必要以上に熱負荷を下げる運転スケジュールを選択することとなる。よって、本実施の形態では、目標値Tdは、基準となる運転を行った場合、例えばレベル0の運転スケジュールにて運転を行った場合の負荷を基に設定する。
【0042】
ステップS108で再算出した1日の電気料金が目標値Td以下であるか判定し、電気料金が目標値Td以下であった場合には(ステップS109:Yes)、運転スケジュール選択部112は、レベルxの運転スケジュールを選択し制御信号生成部114に出力する(ステップS110)。
【0043】
1日の電気料金が目標値Tdを超えている場合には(ステップS109:No)、x=10でないことを確認した上で(ステップS111:No)、xを1増やし(ステップS112)、運転スケジュール選択部112はレベルxの運転スケジュールを記憶部12より取得して熱負荷推定部113に出力する(ステップS113)。そして、熱負荷推定部113が熱負荷を再算出する(ステップS114)。
【0044】
このようにして、x=10とならない限り、ステップS108、S109、S111〜S114を1日の電気料金が目標値Td以下となるまで繰り返す。下位のレベルの運転スケジュールを選択した方が熱負荷は小さくなっているため、電気料金も低くなる。上記ステップにより運転スケジュール選択部112は1日の電気料金が目標値Td以下となったレベルの運転スケジュールを選択し制御信号生成部114に出力する。
【0045】
一方、1日の電気料金が目標値Td以下となることなくステップS110でx=10となった場合は(ステップS111:Yes)、レベル10の運転スケジュールを選択し(ステップS115)、制御信号生成部114に出力する。
【0046】
制御信号生成部114は、ステップS110又はS115で運転スケジュール選択部112から入力された運転スケジュールに基づいて、空調機20に対する制御信号を生成し、空調機20に出力する(ステップS116)。例えば、制御信号生成部114は、選択された運転スケジュールに則ったタイミングで、目標室温の変更や運転又は停止を指示する信号を含む信号を生成し、出力する。その後、処理を終了する。
【0047】
上記の空調機制御処理を実行することにより、制御装置10は、推定される熱負荷によって差を持たせた日目標値を設定する。そして、予測される電気料金が日目標値を初めて下回る運転スケジュール、つまり、予測される電気料金が日目標値を下回る運転スケジュールの中で最上位のレベルの運転スケジュールを選択する。いずれのレベルの運転スケジュールでも予測される電気料金が日目標値を下回らない場合は、最下位のレベル10の運転スケジュールを選択する。
【0048】
仮に、熱負荷によらず日目標値を一定とする制御を行った場合には、熱負荷レベルが小の場合には、レベル0のプログラムで運転するが、熱負荷レベルが大のときには、レベル6以上の運転になることもあり、快適性に大きな差が発生する。これに対し、本実施の形態のように熱負荷に応じて日目標値に差を持たせた場合には、熱負荷レベルが大の場合であっても、例えば、レベル2〜4の範囲での運転が可能になり、快適性の差を小さくすることが可能になる。
【0049】
以上説明したように、本実施の形態によれば、記憶部12に予め記憶しておいた運転スケジュールリスト123のうち、レベル0の運転スケジュールで運転したときの熱負荷を推定し、推定した熱負荷の大きさによって日目標値を決定し、レベルを0から順に下位に向かって仮選択した運転スケジュールに基づいて熱負荷を推定し、推定した熱負荷を除去するように空調機を運転した時の電気料金が初めて日目標値以下となる時の運転スケジュールを選択し、選択した運転スケジュールで運転するような制御信号を生成し、空調機20に出力することとした。これにより、電気料金が日目標値以下となる範囲内で最も高い快適性を保つことのできる空調運転が可能となる。
【0050】
また、予想される熱負荷の大小により、日目標値に差を持たせて、日目標値に合致した運転スケジュールを選択するため、日によって熱負荷の大小があっても、快適性を一定以上に保つことができる。例えば、夏期に、涼しい日(熱負荷が小さい日)は、快適性を損なわない範囲で電気料金を削減でき、暑い日(熱負荷が大きい日)には、緩和された目標値で運転するため、必要以上に快適性を悪化することがなく、室内にいる人に我慢を強いるといったことがなくなる。
【0051】
さらに、熱負荷の推定に用いる環境情報122には、気象予報の情報等も含むため、気象予報なども加味した熱負荷を推定し、その熱負荷に基づいて日目標値をより適切に設定することができ、より快適な空調運転が可能になる。
【0052】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2における空調機制御システム1の全体構成は、実施の形態1の構成と同じである。記憶部12に記憶する運転スケジュールリスト223の内容と演算処理部11が実行する空調機制御処理の内容が、実施の形態1と異なるため、これらについて
図4、5を用いて詳細に説明する。
【0053】
本実施の形態に係る運転スケジュールリスト223も実施の形態1の運転スケジュールリスト123と同様に、月毎に設定されたリストであり、空調機20の複数の運転スケジュールを消費電力の大きさによって順位付けしてリスト化したものである。
図4の例は、夏期の特定の月の運転スケジュールリスト223を示しており、消費電力の大きい順に配列した最上位のレベル0から最下位の10までの運転スケジュールからなる。
【0054】
運転スケジュールリスト223の各運転スケジュールは、実施の形態1の運転スケジュールリスト123と同様に冷暖房等の運転種別、運転開始時刻、終了時刻、基準温度等の情報を含む。運転スケジュールリスト223は、これに加えて、運転スケジュール選択部112が選択を開始する選択開始熱負荷のレベルの情報を含む。
【0055】
制御装置10の演算処理部11が、記憶部12に記憶されている空調機制御処理のプログラムを実行することにより、月目標値リスト121、環境情報122、運転スケジュールリスト223、機器特性データ124、電気料金テーブル125に基づいて、日目標値の決定、熱負荷の推定、運転スケジュールの選択、制御信号の生成を行い、空調機20に対して制御信号を出力する。空調機20は、制御装置10から入力された制御信号に基づいて、空調運転を行う。
【0056】
演算処理部11が実行する空調機制御処理について、
図5に示すフローチャートに沿って詳細に説明する。
【0057】
まず、目標値設定部111が、記憶部12の月目標値リスト121から当月の月目標値を取得する(ステップS201)。取得した月目標値を当月の日数で除算し、日の目標値を決定する(ステップS202)。
【0058】
次に、運転スケジュール選択部112は、運転スケジュールのレベルxを0としてから(ステップS203)、レベルx(x=0)の運転スケジュールを記憶部12から取得する(ステップS204)。そして、取得した運転スケジュールを熱負荷推定部113に出力する。
【0059】
熱負荷推定部113は、運転スケジュール選択部112から入力された運転スケジュールの目標室温にするための熱負荷の推定値を、所定時間毎に、記憶部12から読み込む環境情報122に基づいて算出する(ステップS205)。熱負荷を算出する期間は、例えば、5分、10分、30分、1時間である。熱負荷推定部113は、算出した熱負荷を運転スケジュール選択部112に出力する。
【0060】
運転スケジュール選択部112は、熱負荷推定部113から入力された熱負荷のデータから当日の熱負荷の大小を示す熱負荷レベルを判定する(ステップS206)。ここでは、熱負荷の大きさに応じて大、中、小の3段階の判定レベルにわける。
【0061】
その後、運転スケジュール選択部112は、運転スケジュールリスト223の選択開始熱負荷レベルを参照し、ステップS206で判定した熱負荷レベルに対応する運転スケジュールのレベルxを選択する(ステップS207)。
図4の例の場合、ステップS206で熱負荷レベル大と判定した場合はレベル0を選択し、熱負荷レベル中と判定した場合はレベル2を選択し、熱負荷レベル小と判定した場合はレベル4を選択する。
【0062】
運転スケジュール選択部112はステップS207で選択したレベルxの運転プログラムを記憶部12より取得して熱負荷推定部113に出力する(ステップS208)。
【0063】
熱負荷推定部113は、運転スケジュール選択部112から入力された運転スケジュールの目標室温にするための熱負荷を、所定時間毎に、記憶部12から読み込む環境情報122に基づいて再度算出する(ステップS209)。熱負荷推定部113は、再算出した熱負荷を運転スケジュール選択部112に出力する。
【0064】
運転スケジュール選択部112は、熱負荷推定部113から入力された熱負荷のデータに基づいて、その熱負荷を除去するために必要な空調機20の運転電力(消費電力)を記憶部12に記憶されている機器特性データ124を参照して求める。そして、記憶部12に記憶されている電気料金テーブル125を参照して、時間帯毎の運転電力から時間帯毎の電気料金を算出し、1日の合計金額を導出する(ステップS210)。そして、1日の電気料金の合計額が目標値Td以下であるか判定する(ステップS211)。
【0065】
1日の電気料金が目標値Td以下であった場合には(ステップS211:Yes)、運転スケジュール選択部112は、レベルxの運転スケジュールを選択し制御信号生成部114に出力する(ステップS212)。
【0066】
1日の電気料金が目標値Tdを超えている場合には(ステップS211:No)、最初はx=0、2、4でありx=10でないため(ステップS213:No)、xを1増やし(ステップS214)、運転スケジュール選択部112はレベルxの運転プログラムを記憶部12より取得して熱負荷推定部113に出力する(ステップS215)。
【0067】
熱負荷推定部113は、運転スケジュール選択部112から入力された運転スケジュールの目標室温にするための熱負荷の推定値を、所定時間毎に、記憶部12から読み込む環境情報122に基づいて再度算出する(ステップS216)。熱負荷推定部113は、再算出した熱負荷を運転スケジュール選択部112に出力する。
【0068】
その後、ステップS210に戻り、運転スケジュール選択部112は、熱負荷推定部113から入力された熱負荷のデータに基づいて、時間帯毎の電気料金を算出する(ステップS210)。算出した電気料金の1日の合計額が目標値Td以下であるか判定し、電気料金が目標値Td以下であった場合には(ステップS211:Yes)、運転スケジュール選択部112は、レベルxの運転スケジュールを選択し制御信号生成部114に出力する(ステップS212)。
【0069】
1日の電気料金が目標値Tdを超えている場合には(ステップS211:No)、x=10でないことを確認した上で(ステップS213:No)、xを1増やし(ステップS214)、運転スケジュール選択部112はレベルxの運転スケジュールを記憶部12より取得して熱負荷推定部113に出力する(ステップS215)。
【0070】
このようにして、x=10とならない限り、ステップS210、S111、S213〜S216を1日の電気料金が目標値Td以下となるまで繰り返す。レベルが下位の運転スケジュールを選択した方が熱負荷は小さくなっているため、電気料金も低くなる。上記ステップにより運転スケジュール選択部112は1日の電気料金が初めて目標値Td以下となったレベルの運転スケジュールを選択し制御信号生成部114に出力する。
【0071】
一方、電気料金が目標値Td以下となることなくステップS213でx=10となった場合は(ステップS213:Yes)、レベル10の運転スケジュールを選択し(ステップS217)、制御信号生成部114に出力する。
【0072】
制御信号生成部114は、ステップS212又はステップS217で運転スケジュール選択部112から入力された運転スケジュールに基づいて、空調機20に対する制御信号を生成し、空調機20に出力する(ステップS218)。例えば、制御信号生成部114は、選択された運転スケジュールに則ったタイミングで、目標温度の変更や運転又は停止を示す信号を含む信号を生成し、出力する。
【0073】
上記の空調機制御処理を実行することにより、推定される熱負荷の判定レベルによって、選択開始する運転スケジュールを設定し、予測される電気料金が日目標値を初めて下回る運転スケジュールを選択する。換言すると、推定される熱負荷の判定レベルによって、選択可能な運転スケジュールの上限の順位を設定し、予測される電気料金が日目標値を下回る運転スケジュールの中で、上限の順位以下で最上位のレベルの運転スケジュールを選択する。いずれのレベルの運転スケジュールでも予測される電気料金が日目標値を下回らない場合は、最下位のレベル10の運転スケジュールを選択する。
【0074】
以上説明したように、本実施の形態によれば、記憶部12に予め記憶しておいた運転スケジュールリスト223のうち、レベル0の運転スケジュールで運転したときの熱負荷を推定し、推定した熱負荷の大きさによって選択開始する運転スケジュールを決定し、その選択開始レベルから順にレベルを下位に向かって選択した運転スケジュールに基づいて熱負荷を推定し、推定した熱負荷を除去するように空調機を運転した時の電気料金が初めて日目標値以下となる時の運転スケジュールを選択し、選択した運転スケジュールで運転するような制御信号を生成し、空調機20に出力することとした。これにより、予想される熱負荷の大小により、選択可能な上限の順位の運転スケジュールを変えるため、快適性の変動が少なく消費電力量を抑制する空調機の運用が可能となる。つまり、熱負荷の小さい日はより消費電力が小さくなる運転スケジュールを選択し、熱負荷が大きい日は消費電力を大きくして快適性を保つ運転スケジュールを選択することとなる。
【0075】
実施の形態3.
本発明の実施の形態3に係る空調機制御システム3は、
図6に示すように、制御装置30と、制御装置30が制御する空調機23と、から構成される。ここで、
図6は空調機23が1つのみの構成を示しているが、任意の数の空調機23を備えており、制御装置30がそれぞれの空調機23の制御を行っている。空調機は冷房機能又は暖房機能を有する空気調整機である。本実施の形態においては、夏期などに冷房運転する場合について説明する。
【0076】
制御装置30は、演算処理部31と記憶部12を備える。記憶部12は、実施の形態1と同様に、月目標値リスト121、環境情報122、運転スケジュールリスト123、機器特性データ124、電気料金テーブル125と、演算処理部31が実行するプログラム等を記憶している。
【0077】
この中で機器特性データ124は、実施の形態1と同様の、空調機の出力能力毎に必要な入力電力等を示したカタログ値に加え、演算処理部31が空調機23から取得した実績データを含んでいる。
【0078】
演算処理部31は、実施の形態1と同様の、目標値設定部111、運転スケジュール選択部112、熱負荷推定部113、制御信号生成部114に加えて、運転実績取得部315を備えている。
【0079】
演算処理部31は、実施の形態1、2と同様の空調機制御処理を実行する。この空調機制御処理と並行して、演算処理部31の運転実績取得部315は、空調機制御処理により制御信号生成部114が生成した制御信号に基づいて空調機23を運転させたときの消費電力を取得する。その制御信号を生成する基礎となった運転スケジュールに基づいて算出した熱負荷の推定値と関連付けて、取得した消費電力を記憶部12に記憶する。
【0080】
例えば、運転実績取得部315が取得した消費電力の実績値と熱負荷の推定値との関係と、出力能力と消費電力のカタログ値の関係と、を比較する。ここで、空調機の出力能力は、空調機が目標温度で運転するときの熱負荷に相当する。
図7に示すように、実績値とカタログ値のずれが所定値以上であった場合には、実績値に対して最小二乗法等で求めた関係式を記憶部12に機器特性データ124の実績データとして記憶する。この実績データは外気温や空調負荷の大きさに応じて区分した範囲毎に求めてもよい。
【0081】
運転スケジュール選択部112が
図3のステップS108や
図5のステップS210で電気料金を算出する際は、機器特性データ124として、最新の実績データを用いる。
【0082】
また、運転実績取得部315は、空調機から取得した消費電力から1日の消費電力量の累計値Cdを求める。目標値設定部111は、
図3のステップS102や
図5のステップS202において、前日の日目標値Tdと累計値Cdとの差を求め、Td<Cdの場合は、(Cd−Td)を残りの日数で除算した値を、当該日の日目標値から差し引いた値を新たな日目標値Tdとして設定する。一方、Td>Cdの場合は、余剰分(Td−Cd)を月の残りの日数で除算した値を、当該日の日目標値に加算した値を新たな日目標値Tdとして設定する。
【0083】
以上説明したように、本実施の形態によれば、運転実績取得部315が空調機23より取得した消費電力の実績値に基づいて、消費電力と熱負荷の推定値との関係を求め、その結果を用いて運転スケジュール選択部112が電気料金を算出することとした。また、前日の消費電力の累計値と日目標値の差分を月の残りの日数で除算した値を当該日の日目標値に加算又は減算することとした。これにより、予想される電気料金の算出をより正確にできると共に、快適性及び省エネルギー性を考慮した適切な目標設定が可能となる。
【0084】
このように本発明は、空調機に係る複数の運転スケジュールを、消費電力が大きい方を上位として順位付けした運転スケジュールリストを記憶部に記憶しておき、運転スケジュールリストから選択した運転スケジュールで空調機を運転させた場合の所定期間の熱負荷の推定値を算出し、熱負荷の推定値に基づいて予測した所定期間の消費電力に係る期間予測値が期間目標値を下回る運転スケジュールの中で上位の運転スケジュールを選択し、選択した運転スケジュールに沿った制御信号を生成して空調機に出力することとした。これにより、快適性に大幅な差異を与えることなく、計画に沿った空調機の運用が可能となる。
【0085】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の変更は勿論可能である。
【0086】
例えば、上記実施の形態においては、目標値設定部111が、レベル0の運転スケジュールに基づいて熱負荷推定部113が算出した熱負荷の推定値に基づいて、熱負荷の大きさに応じて大、中、小の3段階の判定レベルに分けたが、判定レベルは任意数の段階に分けてもよい。
【0087】
また、熱負荷の大きさに応じた判定レベルの分類方法は、予め閾値を設定しておき、その閾値を境に判定レベルを分ける例を挙げたが、その他にも次のような方法であってもよい。
【0088】
第1の方法として、当月の1ヶ月の気象予報データを含む環境情報122に基づいて、当月の平均熱負荷Qmを算出し、当日の熱負荷とQmとの比率に応じて分類してもよい。例えば、
図8に示すように、当日の(Qm×90%)未満の場合は熱負荷レベルが小であると判定し、(Qm×90%)以上(Qm×110%)未満の場合は熱負荷レベルが中であると判定し、(Qm×110%)以上の場合は熱負荷レベルが大であると判定する。これにより、気象予報データ等に基づいた適切な熱負荷レベルの判定が可能となり、より快適な空調運転が可能になる。
【0089】
第2の方法として、1ヶ月の中でも気温差(熱負荷の差)が大きな3月、9月などは、上旬、中旬、下旬などの期間で負荷判定を行う。
図9は、9月の例である。9月上旬は熱負荷レベルが大、中旬は熱負荷レベルが中、下旬は熱負荷レベルが小と判定する。この場合には、負荷判断基準は日付となる。熱負荷レベルを切り替える日付は、
図9に示すように、過去数年間の気象実績から決定することが好ましい。これにより、日付のみで熱負荷レベルの判定が可能となり、熱負荷算出の処理を省略することができる。
【0090】
また、上記実施の形態1において、目標値の設定は、熱負荷の推定値の大、中、小の判定レベルに対応して目標値に予め定めた係数を乗算したが、熱負荷の推定値に比例する係数を乗算するようにしてもよい。
【0091】
また、上記実施の形態において、熱負荷の推定値から電気料金を予測し、初めて目標値を下回る運転スケジュールを選択するようにした。これは、予測される電気料金が目標値を下回る運転スケジュールの中で最上位の運転スケジュールを選択したこととなる。しかし、必ずしも最上位である必要はない。より高いエネルギー削減量を実現するために、最上位から予め定めたレベル数だけ下位の運転スケジュールを選択するようにしてもよい。
【0092】
また、熱負荷レベルを判定する元となる運転スケジュールを最上位のレベル0の運転スケジュールを基本運転スケジュールとして用いたが、熱負荷レベルを適切に分類できれば、基本運転スケジュールは他のレベルの運転スケジュールでもよい。例えば、最下位の運転スケジュールを基本運転スケジュールとしてもよい。
【0093】
また、上記実施の形態において、下記の冷房運転の例について説明したが、運転スケジュールリスト123、223を適切に設定し、熱負荷推定部113が暖房用の熱負荷の推定値の算出をすることで、暖房運転も同様に制御できる。
【0094】
また、目標値設定部が設定する目標値が1日の電気料金の場合について説明したが、他の期間の電気料金でもよいし、消費電力に係る他の値でもよい。例えば、半日、1日、1週間等の所定期間の消費電力量であってもよい。この場合、運転スケジュール選択部112が算出する電気料金に代えて、所定期間の消費電力量を算出し、目標値と比較することとなる。
【0095】
また、上記実施の形態の演算処理部11、31が実行した空調機制御処理のプログラムを、既存のサーバ等の情報端末に適用することで、当該情報端末を本発明に係る制御装置10、30として機能させることも可能である。
【0096】
このようなプログラムの配布方法は任意であり、例えば、CD−ROM(Compact Disk Read-Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)、MO(Magneto Optical Disk)、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布してもよいし、携帯電話網やインターネット等の通信ネットワークを介して配布してもよい。