(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5758970
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】スラブのインライン表面処理のための方法および装置
(51)【国際特許分類】
B21B 45/06 20060101AFI20150716BHJP
B21B 1/46 20060101ALI20150716BHJP
B22D 11/12 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
B21B45/06 S
B21B1/46 B
B22D11/12 A
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-235833(P2013-235833)
(22)【出願日】2013年11月14日
(62)【分割の表示】特願2012-548394(P2012-548394)の分割
【原出願日】2011年1月10日
(65)【公開番号】特開2014-65080(P2014-65080A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2013年11月15日
(31)【優先権主張番号】102010004563.2
(32)【優先日】2010年1月14日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390035426
【氏名又は名称】エス・エム・エス・ジーマーク・アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】ビルゲン・クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ベーヒャー・ティルマン
(72)【発明者】
【氏名】ノイマン・ルク
(72)【発明者】
【氏名】ガトマン・マルツェル
(72)【発明者】
【氏名】クリンケンベルク・クリスティアン
【審査官】
坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−116704(JP,A)
【文献】
特開平08−215735(JP,A)
【文献】
特開2003−200210(JP,A)
【文献】
特開2008−221234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 45/06
B21B 1/46
B22D 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造装置(2)と熱間圧延区間(4)の間に設けられた一つの加熱炉(3)を有する、連続鋳造から熱間圧延までの一つの連続するシーケンス中で製造されるスラブ(5)のインライン表面処理による表面品質の向上の方法であって、
その際、ノズルを有する酸化装置(21)によってスラブ(5)の上面および下面に付勢される酸化炎または酸化ガス混合物によって、スラブ(5)の各スラブ面4mmまでの所定の表面層が意図的に酸化され、その際、スラブ表面上の酸化生成物が固体である方法において、
酸化炎又は酸化ガス混合物によるスラブ表面の酸化処理が、以下のように作動するインライン方法ステップにより行われることを特徴とする方法。
酸化処理の前に、低圧又は高圧スケール除去スプレー(22)によって、スラブ表面から、元来存在しているスケールを取り除く。
酸化処理の後、生成された酸化物層と新たに形成されたスケールが、湿化ノズル(23)または媒体吐出により冷却され、ロール対(8)により機械的に打ち割られ、そして低圧スケール除去スプレー(9)又は高圧スケール除去スプレー(10)によって、スラブ表面から取り除かれる。
その際、酸化された層の厚さの意図した生成の為に、酸化装置(21)の、個々にまたは組み合わせられて行われることができる以下の事項が実施される。
− スラブ表面の酸化の為に、これに付勢される酸化炎または酸化ガス混合物の酸化比率を変更する。
− 酸化の為に使用される酸化ガス混合物の体積流量を変更する。
− 酸化の為に使用される酸化ガス混合物の体積流量及び/又は酸化比率を、プロセスパラメータに応じて変更する。
− スラブ表面を酸化するための酸化装置(21)のノズルの角度及び間隔を変更する。− ノズルの形成および数量決定。
【請求項2】
スラブ(5)の表面処理が、現状のスペース状況に応じて、鋳造装置(2)から出た後加熱炉(3)に進入する前、又は代替として、加熱炉(3)から出た後熱間圧延区間(4)に進入する前にインライン的に実施されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
スラブのインライン表面処理による表面品質の向上のための装置であって、当該スラブが、鋳造装置(2)と熱間圧延区間(4)の間に設けられる加熱炉(3)を有する、連続鋳造から熱間圧延の連続的プロセス中で製造される装置であって、請求項1または2に記載の方法の実施により製造される装置において、表面処理装置(20)が、以下を備えることを特徴とする装置。
− 低圧領域または高圧領域において作動可能なスケール除去スプレー(22)。
− 酸化炎または酸化ガス混合物をスラブ表面に付勢するための、ノズルを有する酸化装置(21)。
− 酸化装置(21)のノズルによってスラブ表面に酸化により生成される層の冷却および脆弱化の為の湿化ノズル(23)、
及びこの表面処理装置(20)に後置される、脆弱化さえた層の機械的打ち割りの為のロール対(8)と、
破壊された層をスラブ表面から取り除くための、低圧領域または高圧領域において作動可能なスケール除去スプレー(9,10)、
その際、表面処理装置(20)が、意図的に、スラブ幅またはスラブ長の局地的部分または孤立した部分に対して、変動的に限定されて作用するよう形成されている。
【請求項4】
表面処理装置(20)の酸化装置(21)、スケール除去スプレー(22)、および湿化ノズル(23)と、ロール対(8)および低圧スケール除去スプレー(9)が、可変式に、個々にまたは共通して生産ラインへと移動可能および生産ラインから移動可能であるよう形成されていることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
表面処理に必要な機器及び装置、すなわち、表面処理装置(20)の酸化装置(21)、スケール除去スプレー(22)、および湿化ノズル(23)と、ロール対(8)および低圧スケール除去スプレー(9)が移動可能であることの他に、表面処理が、全てのスラブ幅にわたって実施されることが可能であるよう、形成されおよび生産ライン中に設けられるか、または、表面処理が、スラブ幅又はスラブ長の局所的な部分または孤立した部分に対して意図的に実施されることが可能であるよう、形成されおよび生産ライン中に設けられることを特徴とする請求項3または4に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラブのインライン表面処理による表面品質の向上のための方法および装置に関する。当該スラブは、連続鋳造から熱間圧延へとおよぶ連続的なプロセス中で製造され、例えば鋳造装置と熱間圧延区間の間に設けられる加熱炉を有するCSP方法により製造される。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造設備、特にCSP設備のようなスラブ鋳造設備においては、鋳造ストランドは、最終生産物に近い寸法で製造される。スラブは、最終生産物に対してわずかな作業ステップ残すのみであるから、滑らかで不良の無いスラブ表面が重要である。
【0003】
連続鋳造設備において製造される400mmまでの厚さの薄肉および厚肉スラブは、表面上および表面近傍にわずかに不連続性や残留鋳造パウダーを有し、表面近傍の周辺領域には化学組成の変化がある。
【0004】
不連続性は、例えば、生産技術上の理由から不可避であるオシレーションマークであり、そして例えば孔部でもある。表面近傍の周辺領域における鋼組成の化学的変化は、鋳型内で高温のもと拡散過程が行われる結果として鋼と鋳造パウダーの間の物質交換が行われることにより進行することが可能性がある。よりわずかな不連続性、残留鋳造パウダーおよび科学的表面組成の変化は、鋳造プロセスおよび加熱プロセス中に、スラブの圧延によって大幅に取り除かれる。しかし不都合な場合、例えばオシレーションマークの陰影のような、「外観上の」表面現象が処理されたホットストリップ上に視える状態で残る。
【0005】
特許文献1には、幅広ホットストリップの製造の為の方法が記載される。その際、鋳造されるスラブストランドは断片へと分割され、貫通炉内における温度処理の後、圧延される。スラブ片の表面品質を圧延の前に改善するために、表面処理の為の、表面処理装置内における研磨またはスケール除去による不完全なスラブ片の温度処理が中断されるか、又は、鋳造速度から切り離された可変式の速度による表面処理が実施されるということが、が提案される。必要な場合、表面処理の為にスラブ片は、製造ラインの側方に設けられた貫通炉のセグメント内へと搬送される。
【0006】
鋳造ストランド表面のインライン除去による、好ましくはスラブ鋳造設備の鋳造ストランドの表面を改善するための装置及び方法が特許文献2から公知である。当該除去は、加熱炉を通過した後、鋳造ストランドのインライン式の圧延の前に実施される。ここでは、電気アーク、レーザー光線、または機械的手段、好ましくは、鋳造ストランド表面の機械式の後処理を伴う又は伴わないインライン式の火炎装置を有する高温火炎が使用される。処理された表面の後酸化または二次的スケール形成を防止するため、又は少なくともかなり防止するために、高温火炎に引き続いて直ぐに圧延を行う、または鋳造ストランドを不活性ガスまたは燃焼排ガスの下で保持すると有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第0 867 239号明細書
【特許文献2】欧州特許出願第1 093 866号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した先行技術より出発して、本発明の課題は、連続的な方法、例えばCSP法により製造されるスラブのインライン表面処理の方法および装置を完成させることである。これによって、ホットストリップは、高生産高かつ素晴らしい表面品質で製造されることが可能であり、また、冒頭に記載したような「外観上の」表面現象が残留するということも完全に回避される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、請求項1に記載の、ノズルまたはノズルに類する装置を有する酸化装置によって、スラブの上面および下面に付勢される酸化炎または酸化ガス混合物によって、各スラブ側面に対して4mmまでの層厚さの所定のスラブの表面層が、意図的に参加され、その際酸化生成物がスラブ表面上において固体または流体であるという特徴によって解決される。
【0010】
酸化された厚さの意図的な生成の為に、個々にまたは組合として行われることが可能である以下の事項が実施されることができる。
− スラブ表面の酸化の為にこれに付勢される火炎またはガス混合物の酸化比率が変更される。
− 酸化の為に使用されるガスの体積流量が変更される。
− 酸化の為に使用されるガスの酸化比率及び/又は体積流量を、例えばスラブ搬送速度や鋼品質といったプロセスパラメータに応じて変更する。
− スラブ表面に対するノズルまたはノズルに類する装置の角度及び間隔を変更する。
− ノズルまたはノズルに類する装置の形成および数量決定。
【0011】
極端に薄い、薄肉スラブと称されるスラブにも使用可能である、本発明に係る酸化炎または酸化ガス混合物によるスラブ表面のインライン酸化処理は、以下の、前置されてまたは後置されて作動するインライン方法ステップとリンクされている。
【0012】
酸化処理の前に、スラブ表面から、自然に存在するスケールが除去される。これは、低圧領域または高圧領域で動作することができるスケール除去スプレーにより行われる。
【0013】
酸化処理の後、形成された層(酸化物層及び新たに形成されたスケール)の脆弱化の為に、これらは湿化ノズルによって例えば水により冷却される。後続するロール対によって、その後これらの層は機械的に打ち割られ、および引き続いてスケール除去スプレーによって除去される。
【0014】
現状のスペース状況に応じて、スラブのインライン表面処理が、鋳造装置から出た後加熱炉に進入する前、又は代替的に、加熱炉から出た後熱間圧延区間に進入する前に実施される。加熱炉の前に表面処理が実施されるとき、形成された層の除去のために、低圧スケール除去スプレー(スラブ 圧力100barのリンサー)が使用されることができ、またはローター式スケール除去装置が使用されることが可能である。
【0015】
加熱炉の後に表面処理が実施されるとき、熱間圧延区間の前に存在する、高圧駆動される(100bar)従来式の高圧スケール除去スプレーが、表面処理装置に引き続いて使用されることが可能である。この場合、形成された層の機械的破壊の為に使用されるロール対が、存在する高圧除去スプレーの為の駆動ロール対としても使用される。
【0016】
発明にしたがい、表面処理に必要なすべての機器及び装置は、有利には、個々にまたは一緒に、生産ライン内および生産ラインから移動可能に形成されるので、例えば鋼種類、鋳造速度、非定常状態のプロセス状態といってプロセスパラメータに応じて、表面処理は、全製品には行われず、選択的に製造部分量に限定されることが可能である。
【0017】
さらに、これら機器および装置は、その移動可能性の他に、以下のように形成され、かつ以下のように製造ライン内に配置される。つまり、表面処理が、全スラブ幅にわたって行われるか、又は意図的に、スラブ幅またはスラブ長の局所的部分または孤立した部分に対し限定して行われることが可能であるよう形成され、製造ライン内に配置される。
【0018】
以下に、簡略的に表した図面に表された実施例に基づき、本発明の更なる詳細および利点について記載する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】加熱炉の前に設けられた表面処理部を有するCSP生産ライン
【
図3】
図1のカット図。表面処理装置の代替的装置を有する。
【
図4】加熱炉の後方に設けられた表面処理部を有するCSP生産ライン。
【0020】
図1には、CSP製造ライン1、その主設備部材、CSP鋳造装置2、加熱炉3および熱間圧延区間4の設備フロー図が斜視図で表されている。この製造ラインにおいて、製造方向11中向かって(図中左がから右)、スラブ5は鋳造され、加熱され、そして熱間圧延される。この設備フロー図中において、本発明に係る表面処理が実施される鋳造装置2と加熱炉3の間の製造ライン1の領域は、破線で際立たせてある。
【0021】
図2は、
図1の破線の領域を拡大して側面図として示す。これはCSP鋳造装置2の退出転向ドライバー6と、スラブの部分長さを製造するための後続するシャー7から始まっている。製造方向11においてシャー7の後方には、表面処理装置20が存在している。この表面処理装置は、自然に存在するスケールを除去するための低圧又は高圧スケール除去スプレー22、ノズルまたはノズルに類する装置を有する酸化装置21、および、生成された酸化物層と新たに形成されたスケールを例えば水により冷却し、そして脆弱化するための湿化ノズル23から成っている。酸化装置によって、酸化炎又は酸化ガス混合物は、スラブの表面に対して付勢される。製造方向11においてこの表面処理装置20の後方には、ロール対8が設けられている。その目的は、脆弱化された酸化生成物を機械的に打ち割ることである。この酸化生成物は、引き続いて、追加的に設け有られた低圧スケール除去スプレー9によってスラブ表面から除去される。
【0022】
図2には、表面処理装置20が、一つの閉じられたユニットして黒く縁取りして表されており、表面処理装置20が全体として製造ライン1から取り出されることが可能であることを表している。
【0023】
図3は、シャー7の前方に設けられる代替としての表面処理装置20を示す。
図2に対して他の変更は無いので、ここで使用される参照符号と、
図2に説明される表面処理の実施は、
図3に対してもまた有効である。
【0024】
表面処理装置20の他の可能なスライドが、
図4および5に表されている。
図1に対応するCSP製造ライン1´を示す
図4には、本発明に係る表面処理が実施される加熱炉3と熱間圧延区間4の間のCSP製造ライン1´の領域が、同様に破線で際立たせてある。
【0025】
図5中には、
図4のこの破線の領域が側面図として拡大して表されている。図において左から、加熱炉3の出口でもって始まり、製造方向11中には表面処理装置20が加熱炉3とシャー7の間に存在する。
図2および3と相違して、この装置においては、(この図面においては表されていない)熱間圧延区間4の前方に存在する従来式の高圧スケール除去スプレー10が使用されるので、
図2および3において使用される低圧スケール除去スプレー9は省略されることが可能である。さらに有利には、形成される表面層の機械的打ち割りの為に必要とされるロール対8が、存在する高圧スケール除去スプレー10の為の駆動ロール対としても使用される。上述した逸脱点を除いては、他の同じ参照符号を有する装置、および、表面処理の実施は、
図2に対する記載の説明に相当する。
【符号の説明】
【0026】
1, 1´ CSP製造ライン
2 CSP鋳造装置
3 加熱炉
4 熱間圧延区間
5 スラブ
6 鋳造装置の転向ドライバー
7 シャー
8 ロール対
9 低圧スケール除去スプレー
10 高圧スケール除去スプレー
11 製造方向
20 表面処理装置
21 ノズルまたはノズルに類する装置を有する酸化装置
22 低圧又は高圧スケール除去スプレー
23 湿化ノズル