特許第5758982号(P5758982)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5758982過分極基質の製造方法およびMRIのための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5758982
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】過分極基質の製造方法およびMRIのための方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20150716BHJP
   G01R 33/28 20060101ALI20150716BHJP
   G01N 24/12 20060101ALI20150716BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
   A61B5/05 383
   G01N24/02 B
   A61B5/05 382
   G01N24/12 510L
   A61K49/00 C
【請求項の数】16
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2013-503125(P2013-503125)
(86)(22)【出願日】2011年4月8日
(65)【公表番号】特表2013-523298(P2013-523298A)
(43)【公表日】2013年6月17日
(86)【国際出願番号】EP2011055485
(87)【国際公開番号】WO2011124672
(87)【国際公開日】20111013
【審査請求日】2013年10月8日
(31)【優先権主張番号】10159303.6
(32)【優先日】2010年4月8日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504448162
【氏名又は名称】ブラッコ・イメージング・ソシエタ・ペル・アチオニ
【氏名又は名称原語表記】BRACCO IMAGING S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100068526
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭生
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100138900
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 昌宏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】シルヴィオ・アイメ
(72)【発明者】
【氏名】ジョヴァンニ・バッティスタ・ジョヴェンツァーナ
(72)【発明者】
【氏名】ファビオ・テドルディ
(72)【発明者】
【氏名】アレッサンドロ・マイオッキ
(72)【発明者】
【氏名】フルヴィオ・ウッジェ−リ
(72)【発明者】
【氏名】ペルニル・ローセ・イェンセン
(72)【発明者】
【氏名】マグヌス・カールソン
(72)【発明者】
【氏名】マティルデ・ホ・レルケ
(72)【発明者】
【氏名】マッシモ・ヴィシガッリ
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・クロセッティ
(72)【発明者】
【氏名】ルイーザ・ポッジ
【審査官】 宮澤 浩
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−527768(JP,A)
【文献】 特開2009−261937(JP,A)
【文献】 特表2001−522819(JP,A)
【文献】 特表2004−512882(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/037771(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0264732(US,A1)
【文献】 GOLDMAN M,HYPERPOLARIZATION OF <13>C THROUGH ORDER TRANSFER FROM PARAHYDROGEN: A NEW CONTRAST AGENT FOR MRI,MAGNETIC RESONANCE IMAGING,米国,ELSEVIER SCIENCE,2005年 2月 1日,V23 N2,P153-157
【文献】 REINERI F,NEW HYPERPOLARIZED CONTRAST AGENTS FOR <13>C-MRI FROM PARA-HYDROGENATION 以下備考,JOURNAL OF AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,米国,AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,2008年11月12日,V130 N45,P15047-15053,OF OLIGOOXYETHYLENIC ALKYNES
【文献】 WILSON DAVID M,GENERATION OF HYPERPOLARIZED SUBSTRATES BY SECONDARY LABELING WITH [1,1-C-13] ACETIC ANHYDRIDE,PROCEEDINGS OF THE NATIONAL ACADEMY OF SCIENCES OF THE UNITED STATES OF AMERICA,2009年 4月,V106 N14,P5503-5507
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
A61K 49/00
G01N 24/12
G01R 33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)動的核分極(DNP)法により過分極活性基質の過分極前駆体を製造し、
b)該前駆体を適切な水性担体と接触させてそれを過分極活性基質に変換する
工程を含む磁気共鳴研究法に用いるための過分極活性基質の製造方法であって、該変換が該前駆体の加水分解により行われる製造方法
【請求項2】
該加水分解が該前駆体の少なくとも50%の変換をもたらす請求項1記載の方法。
【請求項3】
該加水分解が該前駆体の少なくとも75%の変換をもたらす請求項1記載の方法。
【請求項4】
該前駆体が、有機環状または直鎖無水物、環状または非環状ジケテン、エステル、ラクトン、およびアミドから選ばれる請求項1、2、または3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
該前駆体が、13C、19F、および/または15N核から選ばれる各非ゼロ核スピン核で豊富化されている請求項4記載の方法。
【請求項6】
該前駆体がさらに重水素化されている請求項5記載の方法。
【請求項7】
該前駆体が、酪酸無水物、酪酸-酢酸無水物、シス-アコニット酸無水物、4-メチリデンオキセタン-2-オン、エチルアセトアセテート、コハク酸モノエチルエステルもしくはコハク酸ジエチルエステル、エチルピログルタメート、ジメチルグリシンエチルエステル、2-オキソチアゾリジン-4-カルボン酸エチルエステル、2-オキソグルタル酸モノエチルエステルもしくは2-オキソグルタル酸ジエチルエステル、リンゴ酸モノエチルエステル(またはリンゴ酸ジエチルエステル、フェニルアラニンエチルエステル、N-アセチルグルタミン、およびN-アセチルグリシンから選ばれる請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
該前駆体が、1,1’−13C2−酪酸無水物、1-13C-酪酸-酢酸無水物、6-13C-シス-アコニット酸無水物、4-メチリデンオキセタン-2-13C-オン、1-13C-エチルアセトアセテート、1,3-13C2-エチルアセトアセテート、1,4-13C2-スクシネート-(1)-エチルエステル、1-13C-エチルピログルタメート、2-13C-d2-ジメチルグリシンエチルエステル、1-13C-エチル 2-オキソチアゾリジン-4-カルボキシレート、1-13C-2-オキソグルタレート-(1)-エチルエステル、1,4-13C2-エチルマレート、5-13C-N-アセチルグルタミン、および2-13C-2d-N-アセチルグリシンから選ばれる請求項7記載の方法。
【請求項9】
該水性担体が水、生理食塩水溶液、および緩衝溶液から選ばれる請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
該水性担体が、さらにアルカリ塩基、および有機酸もしくは無機酸から選ばれる添加剤を含む請求項9記載の方法。
【請求項11】
該添加剤が水酸化ナトリウムおよび塩化水素酸から選ばれる請求項10記載の方法。
【請求項12】
該過分極前駆体の変換が酵素の存在下で行われる請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
該酵素が、エステラーゼ、アシラーゼ、およびリパーゼから選ばれる請求項12記載の方法。
【請求項14】
該前駆体が、100℃以下で液体であり、急速に凍結すると非結晶固体を形成するエステルである請求項1記載の方法。
【請求項15】
該過分極前駆体の変換が酵素の存在下で行われる請求項14記載の方法。
【請求項16】
該エステルが、エチルアセトアセテート、エチルピログルタメート、2-オキソチアゾリジン-4-カルボン酸エチルエステル、ジメチルグリシンエチルエステル、コハク酸-(1)-エチルエステル、2-オキソグルタル酸-(1)-エチルエステル、リンゴ酸-(1)-エチルエステル、およびフェニルアラニンエチルエステルからなる群から選ばれる請求項14または15記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、磁気共鳴画像法(MRI)の分野に関する。より具体的には、本発明は、in vivo MR診断画像法に使える状態の過分極分子水性溶液の製造方法、および該過分極分子水性溶液の、ヒトまたは非ヒト動物体の器官、領域、または組織の診断的MR画像を得るための研究方法におけるMRI造影剤としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
MRIは、広い診断的価値を有する非侵襲性技術である。該技術は、広い臨床的支持を得ており、診断医学における重要性は大きい。しかしながら、顕著な技術的進歩(電界強度の増加および電子機器の冷却)にも関わらず、MRIの適用は、本質的に検出感度が低いために限られていた。
【0003】
投与前に薬剤をex vivo核スピン分極、次いでin vivoMR信号測定を含む、その感度を上げるための代替法が開発されてきた。
【0004】
EP1544634は、とりわけ、動的核分極(DNP)、パラ水素誘導(PHI)分極、および過分極希ガスからの分極移動を含む代替技術を開示する。
【0005】
特に、US6466814は、可能性のある候補のシリーズから選ばれた適切な高T1剤の過分極溶液を製造し、次いで該溶液を対象に投与することを含む磁気共鳴研究法について記載している。
【0006】
適切な固体形の試料を分極させるために、試料の過分極(特にDNP法に関して)中、非常に低い温度にする必要があることが多い。これに関して、有効な分極レベルは、一般的には、凍結時に混合物が結晶試料よりガラスを形成する場合に、DNP技術により達成されることが当該分野(例えばUS2008095713参照)で知られている。
【0007】
本出願人は、多くの分子(例えばカルボン酸)が純粋な形のガラスを形成することができず、それにガラス形成剤を加える必要があるが、そのある前駆体(例えば無水物またはエステル)は、むしろ実質的にいかなるガラス形成添加剤も必要とせずに純(neat)ガラスを形成することができることをみいだした。
【0008】
さらに、他の基質は、容易に急速に分解して非活性物質または望ましくない化合物になるという安定性の問題があるかもしれない。例えば、ある活性基質は、少なくとも部分がそのそれぞれの非活性異性体に変換されうる。
【0009】
したがって、本発明では、適切な担体(例えば、カルボン酸の無水物またはエステル前駆体)に溶解すると所望の過分極基質に容易に変換することができる安定なDNP過分極前駆体を使用するのが特に好都合である。出願人は、さらに、DNP分極が基質それ自身の分子(例えば各カルボン酸)よりもその各前駆体(例えばエステル)にもたらされると、ある最終基質を高極性度で得ることができることをみいだした。
【0010】
したがって、本発明では、水性担体に溶解すると所望の過分極基質に容易に変換することができる安定な前駆体、例えば、カルボン酸の無水物またはエステル前駆体を用いることが特に好都合である。
【0011】
好都合には、適切に選択した前駆体を用いてそれから2またはそれ以上の異なる過分極基質、または過分極基質と過分極MR造影剤または過分極pHレポーターの混合物を製造することができる。
【0012】
本発明の詳細な説明を読んだ当業者がよりよく理解するであろうこれらおよび他の利点に関して、本発明は当該分野の状況に対する実質的に革新的な寄与をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
(発明の要約)
本発明の第一の局面は、a)動的核分極(DNP)法により過分極活性基質の過分極前駆体を製造し、
b)該過分極前駆体を適切な担体と接触させてそれを過分極活性基質に変換する
工程を含む磁気共鳴研究法に用いるための過分極活性基質の製造方法に関する。
【0014】
本発明の好ましい態様において、該前駆体は、水と接触すると、好ましくはその加水分解により、対応する分極活性化合物、好ましくは1またはそれ以上の、非溶解(すなわち中性)または溶解(すなわちアニオン性)形のカルボン酸に変換される化合物である。さらなる好ましい態様では、該前駆体は、無水物、ジケテン、エステル、ラクトン、およびアミドからなる群から選ばれる。
【0015】
加水分解すると、該酸それ自身を直接過分極することにより得ることができる分極度より高い分極度を有する対応する過分極酸をもたらすそれらのエステル前駆体がより好ましい。この点で、好ましいエステルは、130℃以下、好ましくは100℃、最も好ましくは35℃以下で液体であり、急速凍結、例えば液体窒素や液体ヘリウム中に入れるとガラス(非結晶固体)を形成する。本発明の前駆体は、酸性(すなわち、pH<7)、塩基性(すなわち、pH>7)、または中性(すなわち、pH=7)水性担体中で加水分解することができる。
【0016】
典型的には、担体は、水性担体、例えばイオン水、所望により緩衝剤、酵素などの添加物を含む生理食塩水溶液から選ばれる。
【0017】
別の好ましい態様では、本発明による該前駆体の該活性基質への変換は、酵素の存在下での加水分解により行われる。
【0018】
適切な酵素の例には、加水分解酵素(一般的にはEC3、またはEC3.x.x.xで示される)があり、エステラーゼ、アシラーゼ、リパーゼが特に好ましい。
【0019】
別の局面において、本発明は、
a)MRIシステム中に乗せ、上記方法に従って前駆体から得た過分極活性基質で処置した対象を、該活性基質の非ゼロ核スピン核中の核スピン遷移を励起するために選択した電磁波の周波数にかけて、
b)該励起した核からのMR信号を記録する
工程を含むMRIシステムの操作方法に関する。
【0020】
さらなる局面において、本発明は、
a)MRIシステム中に乗せ、上記方法に従って前駆体から得た過分極活性基質で前処置した対象を、該活性基質の非ゼロ核スピン核中の核スピン遷移を励起するために選択した電磁波の周波数にかけて、
b)該励起した核からのMR信号を記録する
工程を含むMRIシステムの操作方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
(発明の詳細な説明)
本発明は、生物学的興味がある分子、特に、代謝経路、例えばトリカルボン酸(TCA)回路(クエン酸回路としても知られる)、解糖、β酸化、尿素サイクル、およびケト体代謝経路の部分である分子(代謝物)のex vivo過分極の代替法を提供する。
【0022】
したがって、本発明は、
a)動的核分極(DNP)法により過分極活性基質の過分極前駆体を製造し、
b)該過分極前駆体を適切な担体と接触させて活性過分極基質に変換する
工程を含む、過分極活性基質の製造方法に関する。
【0023】
用語「過分極前駆体」は、その意味内に水性担体と接触すると少なくとも1の活性基質に変換されるあらゆる過分極分子を含む。
【0024】
用語「水性担体」は、その意味内にin vivo診断適用に用いるためのヒトまたは非ヒト動物体が許容するあらゆる水性溶媒、溶媒混合物、または溶液を含む。
【0025】
一般的には、該担体は、無菌で生理学的に許容される、例えば無菌水、精製水、例えば注射用水(WFI)、所望により適切に緩衝された生理食塩水溶液である。該担体は、所望により、適切な量の、過分極前駆体の水溶性活性基質への急速な選択的変換を促進することができる選択した添加剤(例えば、塩基または酸)を含むことができる。
【0026】
この点で、該添加剤は、存在する場合は、医薬的に許容されるものであり、注射できる状態の医薬的に許容される溶液を得るために、0.1モル当量〜10モル当量、好ましくは1モル当量〜4モル当量(ここで、モル当量は過分極前駆体の量に対する添加剤の量を意味する)を含む比較的低量で用いられる。ある場合、例えば、該前駆体の変換を促進するために添加した添加剤の量が比較的高い場合は、次いで、得られた水性溶液(過分極活性基質を含む)を、該前駆体がin vivo診断適用のために医薬的に許容されるようにするためにさらに添加剤と混合することができる。例えば、該溶液のpHを、次いで、それを投与する前に、それに適切な酸または塩基性緩衝液を加えることにより医薬的に許容される値に調整することができる。この点で、適切な添加剤の例には、pH調節剤、例えば有機塩基または無機塩基(例えば、アルカリ金属塩基)または有機酸もしくは無機酸、または緩衝剤がある。
【0027】
好ましい態様によれば、該前駆体の該活性基質への変換は加水分解により行われる。
【0028】
本明細書で用いている用語「加水分解」は、水が出発化合物と反応して1またはそれ以上の得られる化合物が生じる化学反応を含み、典型的には、出発化合物上の結合を開裂し、出発化合物の構造に水素カチオンおよび/または水酸化物アニオンを付加して生じる化合物を得ることを含む。
【0029】
該加水分解反応は、酸性(pH<7)、塩基性(pH>7)、または中性条件(pH=7)下で行うことができるが、本明細書で以下により詳細に記載するように塩基性条件が好ましい。この方向および先に記載したように、選択した水性溶液は添加物として適切な量のアルカリ塩基、例えば水酸化物またはカーボネート、例えばNaOH、またはNaHCO3もしくはNa2CO3、および塩基性水性反応をする他の有機化合物または無機化合物(例えば、トリメチロールアミノメタン、トリメチロールアミノメタンとしても知られる、トロメタミンとしても知られる、またはリン酸3ナトリウム);または過分極前駆体の加水分解を促進することができる無機酸または有機酸、例えば、特にリン酸、塩化水素酸、クエン酸、または酢酸のいずれかを含むことができる。
【0030】
本発明の方法に特に好ましい添加剤は、水酸化ナトリウム(NaOH)および塩酸(HCl)である。
【0031】
特に好ましい態様によれば、濃度10〜100mMの過分極前駆体の水性溶液を10〜400mM NaOHの存在下で加水分解する。該過分極前駆体の加水分解は、実際的には約20℃〜100℃、好ましくは40℃〜70℃の温度で先に記載したように選択した担体に該前駆体を加えることにより生じ、基本的に該前駆体の化学的性質に応じて所望の過分極活性産物または該産物の混合物を含む水性溶液が得られる。
【0032】
この点で、該前駆体は、先に記載したように水性担体と接触させると所望の過分極活性基質に定量的に変換することができる。用語「過分極活性基質」(本明細書では以下「基質」ともいう)は、その意味中に、長T1緩和時間を示すことができる非ゼロ核スピン核を含む高T1化合物を含む。長T1緩和時間は、該信号の効果的な検出を可能にする充分な長さの時間値を意味する。
【0033】
本願において用語「定量的変換」は、該前駆体の量の20%またはそれ以上、好ましくは50%またはそれ以上、より好ましくは75%またはそれ以上、さらにより好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95%が該活性基質に変換(好ましくは加水分解)されることを意味する。
【0034】
本発明のそれぞれ好ましい態様において、該前駆体は、加水分解すると対応するカルボン酸(非溶解形または溶解形の)を単独でまたは1またはそれ以上の副反応産物(後者は好ましくは医薬的に許容される)との混合物で生じる化合物を含む。
【0035】
好ましくは、該前駆体化合物は、非ゼロ核スピン核、例えば、13C、19F、および/または15N核、好ましくは13Cが豊富化される。用語「豊富化(された)」は、該化合物中の非ゼロスピン核の濃度が該核の天然の存在量の典型的値より大きい、天然の存在量の少なくとも10%大きい、より好ましくは該天然の存在量の少なくとも25%、さらにより好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも90%大きいことを意味する。該豊富化は、特に、該分子の化学的変換、または該分子の環境の化学的または磁気的変化がその化学的シフトの変化として測定可能な原子の位置に集中するだろう。該非ゼロ核は、約0.5mT〜約20T(Tesla)の磁場をかけた溶液中で測定すると、該基質に少なくとも5秒(sで示す)、好ましくは少なくとも10秒、好ましくは少なくとも20秒、好ましくは30秒、さらにより好ましくは40秒のT1緩和時間をもたらす。豊富化は、該分子内の1またはそれ以上の部位の選択的豊富化または全ての部位の均一な豊富化を含みうる。この点で、市販の豊富化前駆体を適切に用いることができるか、または選択した豊富化を当該分野で良く知られた開示内容に従って化学合成または生物学的標識により達成することができる。
【0036】
各前駆体から得ることができる活性基質は、対応して、各非ゼロ核スピン核、例えば、13C、19F、および/または15N核、好ましくは13Cで豊富化される。
【0037】
あらゆる過分極造影剤の信号はスピン緩和により減衰することがわからねばならない。したがって、最終過分極活性基質は、特に溶液の場合は、画像法が比較的快適な時間枠内で行われるのを可能にするために、十分長い時間その分極を維持すべきである。好ましくは、該過分極前駆体および加水分解基質のT1値は、少なくとも5秒またはそれ以上、好ましくは10秒またはそれ以上、より好ましくは少なくとも30秒、さらにより好ましくは50秒またはそれ以上である。T1値が70秒またはそれ以上の該基質が特に好ましく、T1値が100秒またはそれ以上の該基質がさらに特に好ましい。該T1値は、典型的には、磁場強度0.5mT〜20Tおよび温度25℃〜70℃、特に磁場強度1.5〜3Tおよび温度37℃で測定した値が好ましい。身体外でも、該T1値は、一般的には磁場強度0.5mTおよび温度60℃で測定される。さらなる態様によれば、上記非ゼロスピン核は、典型的には最終過分極化合物のT1値を延長するために1またはそれ以上の重水素原子と直接結合させることができる(これについてはUS 2008/0287774 A1参照。(この内容は本明細書の一部を構成する))。それにより、より多くの代謝物を、利用可能なより大きな化学シフト分散に基づいてそれらの基質と好都合に区別することができ、さらにより好都合には、過分極非ゼロ核スピンの重水素化は、最終過分極化合物およびその代謝物の造影に有用な可能性のある非ゼロ核スピンの群を拡大することができる。実際に、重水素化は、例えば、該基質の化学シフトおよびその代謝物の化学シフトが、互いに非常に類似しているか、または別の方法で区別または検出するには互いに近すぎる場合に特に有用である。上記の代表例は、基質グリシンが重水素化しないと1つの長T1位(1-C)、重水素化すると2つの長T1位(1-Cおよび2-C)を含む化合物グリシンの場合があり得る。注目すべきは、1-C位は、その予期される主な代謝物との化学シフト差がわずか(0.5ppm以下)であるのに対して、2-C位は予期される代謝物の等価な位置と数ppm(9ppm以下)の化学シフト差を示す。
【0038】
驚くべきことに、本発明にしたがって対応する過分極前駆体から得られた活性物質は、特に、生理学的条件の変化(例えば、血管系のpH、pO2、pCO2、酸化還元電位、温度、またはイオン濃度を含む)、または代謝活性、例えば、細胞取込み、細胞室反応、例えばトランスアミナーゼ反応(アミノ酸、例えばアスパラギン酸、およびケト酸、例えばオキザロ酢酸を含む)、および解糖(炭水化物、例えばグルコースを含む)、ミトコンドリア反応、例えばTCA回路反応(水和する分子、例えばシス−アコンテートを含む)、酸化還元反応(ケト体、例えばアセトアセテートを含む)、またはβ酸化(短鎖および中鎖脂肪酸、例えばブチレートを含む)の結果に応じた化学シフトの変化を示すことができる。
【0039】
好ましい活性基質は、例えば、3Tの磁場で、4級炭素が1.5ppm、重水素メチンが2.1ppm、重水素化メチレンが4.2ppm、重水素化メチル基が5.4ppmより大きい化学シフト差を示すだろう。本発明の方法は、あらゆるそのような分子を製造するのに適しているが、特にその直接ex vivo過分極がいくつかの問題を生じうるか、または得られる程度が低いかまたは解るのが困難である過分極分子の製造に特に好都合である。実際に、多くの分子(例えば、カルボン酸)がその純粋な形でガラスを形成することができず、該基質とガラス形成添加剤を混合する必要があるが、本発明によれば該前駆体、例えば、無水物またはエステル、好ましくはエチルエステルが特にさらにいかなるガラス形成添加剤も必要とせずに目的とする生(き)のガラスを形成することができる。他の例では、該活性基質、例えば、カルボン酸またはカルボキシレートも、異性化や化学分解などのいくつかの安定性問題をもたらすかもしれない。すなわち、本発明によれば、安定性問題をもたらさず、適切な担体(例えば、カルボン酸の無水物前駆体またはエステル前駆体)に溶解すると所望の過分極基質に容易に変換することができる前駆体の使用が特に好都合である。
【0040】
さらに、本発明の方法は、過分極前駆体、例えば、カルボン酸のエステル前駆体がその対応する活性基質に比べて有利な特性(例えば、より高度の過分極をもたらすガラス形成特性)を有することを特徴とし、これにより、その加水分解は、他の方法で該活性基質自身を直接過分極することにより得ることができる程度より高い分極度(典型的には1.5〜4倍増加する)を有する対応する活性基質をもたらすことも非常に好都合である。より詳細には、上記のすべての好ましい態様によれば、好ましい前駆体は、その加水分解産物とともに、例えば、以下の誘導体、およびその各加水分解基質を含む。
1a)
【0041】
【化1】

[式中、Halはハロゲン原子(F、Cl、Br、I)である;Rは、C1-C6アルキルもしくはアルケン、シクロアルキルもしくはシクロアルケン、アリールアルキルもしくはヘテロアリールアルキルラジカル(これらは所望により分枝状、および/または1またはそれ以上のさらなる官能基、例えば、-OH、COOH、-NH2、-NHCH3、-N(CH3)2、SH、SCH3で置換されている)であるか、またはRは、式-CO-Zのカルボニル基である(ここで、Zは、水素、-OH、所望により置換されたC1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ、アリール、またはベンジル基である)]。
1b)
【0042】
【化2】

[式中、Rはポイント1a)と同意義である;R’は、所望により置換されたアルキル、アリール、シクロアルキル、アリールラジカル(またはそのあらゆる組み合わせ)である。
これは、加水分解によってRCOOHおよびR’COOHの放出をもたらし、R’COOHはRCOOH(対称無水物)と同じであるか、または異なる生理学的に許容されるカルボン酸(混合無水物)である。この後者の場合、それは種々の活性基質、医薬活性化合物、または単に無毒性基質(ここで、本明細書に記載の「無毒性基質」は、LD50>0.1mmol/Kgの化合物を表す。)でありうる。
1c)
【0043】
【化3】

[式中、Rはポイント1a)と同意義である;R’は、アルキル、アリール、シクロアルキル、アリールラジカル(またはそのあらゆる組み合わせ)である。これは、加水分解によりRCOOHおよびR’OHの放出をもたらし、R’OHは、ヒドロキシルまたはヘミアセタールで官能化された生理学的に許容される化合物(すなわち、種々の活性基質、医薬活性化合物、または無毒性基質)である。
1d)
【0044】
【化4】

[式中、Rはポイント1a)と同意義である;R’はポイント1b)と同意義である;AおよびBは、例えば加水分解によって、RCOOH、R’COOH(上記)、および生理学的に許容されるカルボニル化合物 A-C(=O)-Bの放出をもたらす。
1e)下記一般式の化合物:
【0045】
【化5】

[式中、Rはポイント1a)と同意義である;R’はポイント1b)と同意義であるかまたは水素である;X=B、P;m+n=3; r=0〜1。]。
1f)下記一般式の化合物:
【0046】
【化6】

[式中、Rはポイント1a)と同意義である;R’はポイント1b)と同意義であるかまたは水素である;m+n=4;r=0〜1;t=1〜2。シリコン含有分子は生理学的に許容される化合物であるか、または当該分野で知られた方法により容易に速やかに除去される。]。
1g)下記一般式の化合物:
【0047】
【化7】

[式中、Rはポイント1a)と同意義である;m+n=2、r=1〜2。硫黄含有イオンは、生理学的に許容される化合物であるか、または当該分野で知られた方法により容易に速やかに除去される。]。
1h)下記一般式の化合物:
【0048】
【化8】

[式中、Rはポイント1a)と同意義である;Yは、カルボン酸RCOOHの放出によりB、N、Si、P、Sの非金属化合物をもたらすような基で置換されたB、N、Si、P、Sから選ばれる非金属である。]。
1i)下記一般式の化合物:
【0049】
【化9】

[式中、Rはポイント1a)と同意義である;R’およびR”は、それぞれ独立して水素であるか、またはポイント1a)と同意義のR基に対応するか、またはより速い加水分解をもたらす置換基、例えばアゾール、例えば、
【0050】
【化10】

またはそれらの環置換およびN-四級化誘導体である。]。
1l)下記一般式の化合物:
【0051】
【化11】

[式中、Rはポイント1a)と同意義である;R’およびR”は、適切なアシル基、例えば:
【0052】
【化12】

またはそれらの環置換および所望により塩化誘導体である。]。
1m)下記一般式の化合物:
【0053】
【化13】

[式中、Rはポイント1a)と同意義である。]。
2)下記一般式の環状無水物:
【0054】
【化14】

[式中、n= 1、2。
P= 水素またはアミノ保護基。
P’= 水素またはヒドロキシ保護基。]。
2a)下記式の飽和または不飽和環状無水物:
【0055】
【化15】

[式中、
Rはポイント1a)と同意義である。
R’、R’’は、独立してRと同意義または水素である。
n’ =0、1。]
(これは、下記加水分解反応式に従って、対応する以下のカルボキシレートをもたらす:
【0056】
【化16】

3)下記一般式のエステルおよび加水分解基質:
【0057】
【化17】

[式中、Rはポイント1a)と同意義である。R’は1b)と同意義である。]。
4)下記一般式のケテン:
【0058】
【化18】
[式中、Rはポイント1a)と同意義である。R’は独立してRと同意義であるかまたは水素である。]。
4a)下記式に従って加水分解すると所望のカルボキシレートを生じるケテン環状ダイマー(ジケテン):
【0059】
【化19】

[式中、Rおよび各R’は、それぞれ独立してポイント4)と同意義である。]。
4b)下記式に従って加水分解すると所望のカルボキシレートを生じるケテン非環状ダイマー(アシルケテン):
【0060】
【化20】

[式中、各Rは独立してポイント1a)と同意義である。]。
4c)下記式に従って加水分解すると所望のカルボキシレートを生じるカルボニル化合物のケテン付加物:
【0061】
【化21】

[式中、各Rは、独立してポイント1a)と同意義である。AおよびBは、ポイント1)iv)と同意義である。]。
5)下記式に従って選択されるアミノ酸特異的前駆体:
5a)下記式に従って加水分解すると所望のカルボキシレートを生じる下記一般式のN-カルボキシ無水物:
【0062】
【化22】

「式中、RおよびR’は、式R’NH-CH(R)-COOHの天然アミノ酸に対応するよう選ばれる。]
5b)下記式に従って加水分解すると所望のカルボキシレートを生じる一般式のアミノ酸の金属キレート:
【0063】
【化23】

[式中、RおよびR’は、式R’NH-CH(R)-(CH2)m-COOHの天然アミノ酸に対応するよう選ばれる(m=0〜3、n=1〜3)。x-は該複合体の全荷電であり、-1<x<+1である。y+は金属イオンの荷電である。y=1〜3。Mは生物適合性反磁性金属イオンである。]。荷電した複合体は、好ましくはポリヒドロキシアミンまたはポリヒドロキシ酸で塩化される。
6)下記式のヒドロキシ酸特異的前駆体:
6a)下記一般式のO-カルボキシ無水物:
【0064】
【化24】

[式中、RおよびR’は、式HO-CRR’-COOHの天然ヒドロキシ酸に対応するよう選ばれる。]。
6b)下記一般式のラクトン:
【0065】
【化25】

[式中、Rはポイント1a)と同意義であり、n=0〜3である。]。
6c)下記一般式のジラクトン:
【0066】
【化26】

[式中、RおよびR’は、それぞれ独立して式HO-CRR’-COOHの天然ヒドロキシ酸に対応するように選ばれる。]。
6d)下記一般式のヒドロキシ酸の金属キレート:
【0067】
【化27】

[式中、RおよびR’は、ポイント5b)と同意義である。m=0〜2。n=1〜3。x-は該複合体の全荷電であり、-2<x<4である。y+は、金属イオンの荷電であり、y=1〜3である。Mは生物適合性反磁性金属イオンである。]。荷電複合体は好ましくはポリヒドロキシアミンまたはポリヒドロキシ酸で塩化される。
7)下記加水分解反応式に従ったケト酸特異的前駆体:
7a)下記一般式のケト酸のエノール形:
【0068】
【化28】

[式中、Rはポイント1a)と同意義である。n=0〜2である。]、および1またはそれ以上の生物適合性金属イオンを有するか、または好ましくはポリヒドロキシアミンまたはポリヒドロキシ酸で塩化されたその対応する塩(「エノレート」)。
7b)下記一般式のケト酸の金属キレート(後者はその脱プロトン化ケト酸または脱プロトン化エノール):
【0069】
【化29】

[式中、Rはポイント1a)と同意義である。Mは金属イオンである。n=1〜3。x-は、該複合体の全荷電であり、-2<x<4である。y+は金属イオンの荷電である。y=1〜3。Mは生物適合性反磁性金属イオンである。]。荷電複合体は、好ましくはポリヒドロキシアミンまたはポリヒドロキシ酸で塩化される。
【0070】
該前駆体の特に好ましい例には、限定されるものではないが、有機環状または直鎖無水物(対称または混合)、例えば、酪酸無水物、酪酸-酢酸無水物、コハク酸無水物、またはシス-アコニット酸無水物;環状または非環状ジケテン、例えば、4-メチリデンオキセタン-2-オン;エステル誘導体(環状(すなわち、ラクトン)または直鎖)、例えば、アセトアセテート誘導体、例えば、エチルアセトアセテート、エチルスクシネート(モノまたはジエステル)、エチルピログルタメート、ジメチルグリシンエチルエステル、エチル2-オキソチアゾリジン-4-カルボキシレート、2-オキソグルタレートエチルエステル(モノまたはジエステル)、エチルマレート(モノまたはジエステル);アミド、例えば、N-アセチルアミノ酸(例えば、N-アセチルグルタミンまたはN-アセチルグリシン)が含まれる。
【0071】
さらに好ましい態様において、該前駆体は以下から選ばれる。
酪酸無水物:
【0072】
【化30】

酪酸-酢酸無水物:
【0073】
【化31】

シス-アコニット酸無水物:
【0074】
【化32】

4-メチリデンオキセタン-2-オン:
【0075】
【化33】

エチルアセトアセテート(ethylacetotacetate):
【0076】
【化34】

コハク酸エチルエステル(モノまたはジエステル):
【0077】
【化35】

エチルピログルタメート:
【0078】
【化36】

ジメチルグリシンエチルエステル:
【0079】
【化37】

2-オキソチアゾリジン-4-カルボン酸エチルエステル:
【0080】
【化38】

2-オキソグルタル酸エチルエステル(モノまたはジエステル):
【0081】
【化39】

リンゴ酸エチルエステル(モノまたはジエステル):
【0082】
【化40】

フェニルアラニンエチルエステル:
【0083】
【化41】

N-アセチルグルタミンまたはN-アセチルグリシン:
【0084】
【化42】
【0085】
さらにより好ましくは、該前駆体は13Cで標識され、所望により重水素化されるが、好ましいものは、以下から選ばれる:1,1’-13C-2-酪酸無水物、1-13C-酪酸-酢酸無水物、6-13C-シス-アコニット酸無水物、4-メチリデンオキセタン-2-13C-オン、1-13C-エチルアセトアセテート(ethylacetotacetate)、1,3-13C-2-エチルアセトアセテート、1,4-13C-2-スクシネート-(1)-エチルエステル、1-13C-エチルピログルタメート、2-13C-d2-ジメチルグリシンエチルエステル、1-13C-エチル2-オキソチアゾリジン-4-カルボキシレート、1-13C-2-オキソグルタレート-(1)-エチルエステル、1,4-13C-2-エチルマレート、5-13C-N-アセチルグルタミン、または2-13C-2d-N-アセチルグリシン。
【0086】
より詳細には、好ましい基質には、所望により下記部分:ヒドロキシル(ヒドロキシ酸)、カルボキシ(ケト酸)、またはアミノ(アミノ酸)の1またはそれ以上を含む、解離形(好ましい)または非解離形のモノ、ジ、およびトリカルボン酸を含むカルボン酸が含まれる。
【0087】
適切なカルボン酸基質(好ましくはそのカルボキシレート形)の例には以下のものが含まれる:
R-COOH(ここで、Rは、C1-C10アルキル、C1-C10オキソ-アルキル、C1-C10ヒドロキシ-アルキル、C1-C10アミノ-アルキル、C1-C10アルケンを表す)、
R-(COOH)2(ここで、Rは、C1-C10アルキル、C1-C10オキソ-アルキル、C1-C10ヒドロキシ-アルキル、C1-C10アミノ-アルキル、C1-C10アルケンを表し、カルボキシル基はRの2つの異なる炭素原子と結合している)、
R-(COOH)3(ここで、Rは、C1-C10アルキル、C1-C10オキソ-アルキル、C1-C10ヒドロキシ-アルキル、C1-C10アミノ-アルキル、C1-C10アルケンを表し、カルボキシル基はRの3つの異なる炭素原子と結合している)。
【0088】
高T1過分極カルボン酸基質(そのカルボキシレート形)の具体例には、例えば、ブチレート、アセトアセテート、シス-アコニテート、2-オキソブチレート、2-ヒドロキシブチレート、(R)-3-ヒドロキシブチレート、クロトネート、スクシネート、オキザロアセテート、マレート、フマレート、シトレート、イソシトレートが含まれる。適切な基質の例は、例えばUS 6,278,893に開示されている(この内容は本明細書の一部を構成する)。
【0089】
すなわち、好ましい過分極基質/前駆体系は、アセトアセテート/アセトアセテートエチルエステル、ブチレート/酪酸無水物、グリシン/N-アセチルグリシン、スクシネート/コハク酸-(1)-エチルエステル、フェニルアラニン/フェニルアラニンエチルエステル、グルタミン/N-アセチルグルタミン、2-オキソグルタレート/2-オキソグルタル酸-(1)-エチルエステル、マレート/リンゴ酸-(1)-エチルエステル、ピログルタメート/ピログルタメートエチルエステル、2-オキソチアゾリジン-4-カルボキシレート/2-オキソチアゾリジン-4-カルボキシレートエチルエステル、およびジメチルグリシン/ジメチルグリシンエチルエステルから選ばれる。
【0090】
さらにより好ましくは、上記アセトアセテート、グリシン、グルタミン、およびジメチルグリシン基質は、本発明のさらなる態様に従って以下に記載する酵素的加水分解により示した前駆体から得られる。
【0091】
過分極前駆体の製造、次いで過分極活性基質への変換に関する好ましい態様を以下に示すが、好ましい豊富化された13C位は、*、#、または同様の記号で標識されている。
【0092】
本発明の好ましい態様では、酪酸の前駆体を製造する。酪酸は脂肪酸代謝経路の代謝物である。酪酸代謝の主要産物の一つは、アシル-CoA合成酵素(EC 6.2.1.2)により触媒される反応において形成されたブタノイル-CoAである。ブタノイル-CoAは、下記式に従ってクロトノイル-CoAに変換されてβ酸化経路に入り、最終的にアセチル-CoA 2分子になるか、またはそのカルニチンエステルブタノイルカルニチンに変換することができる。
【0093】
【化43】
【0094】
しかしながら、酪酸は、所要量のラジカルの存在下でも急速凍結すると結晶する。したがって、一定量のガラス形成剤(例えばグリセロールまたはDMSO)を該酪酸のDNP-調製物に加える必要がある。これは、それ自体実質的な欠点ではないかもしれないが、酪酸をガラス形成剤と混合するとDNP-調製物における該酸の最終濃度を減少させる。これに対して、酪酸無水物は、いかなるガラス形成剤も添加せずに急速凍結するとガラスを形成する。さらに、塩基性pHの水性溶液(例えば1モル当量の塩基、例えばNaOHを有する水性溶液)中で溶解すると、無水物DNP-試料の加水分解が急速に進行する。過分極試料中の該無水物の濃度はガラス形成混合物中の該酸の濃度とほぼ同じであるが、無水物分子のその後の加水分解は酪酸分子の2倍量をもたらし、酪酸のほぼ二倍の濃度を得ることができる。同様に、混合酪酸-酢酸無水物もいかなるガラス形成剤も添加せずに急速凍結するとガラスを形成する。この場合も、該過分極前駆体の加水分解は、該前駆体をNaOHの1モル当量を有する水性溶液と接触させると急速に進行する。この後者では、該混合無水物の加水分解は、酪酸に加えて同量のさらなる過分極基質をもたらすと認識することができる。
【0095】
別の好ましい態様では、アセトアセテートの前駆体を製造する。アセトアセテートは、ケトン体代謝経路の代謝物である。
【0096】
D-3-ヒドロキシブチレート脱水素酵素(HBDH、EC 1.1.1.30)により触媒される反応であるアセトアセテート代謝の1つの産物は3-ヒドロキシブチレートである。この酸化還元反応は補酵素のNAD/NADHを含む。下記式の反応平衡は補酵素比に依存する。
【0097】
【化44】
【0098】
アセトアセテートの別の反応は、下記式に従ってアセトアセチル-CoAを形成するアセトアセテートCoA-トランスフェラーゼ(EC 2.8.3.5)による触媒反応である。
【0099】
【化45】
【0100】
しかしながら、アセト酢酸とその塩アセトアセテートは、その固有の不安定性から直接過分極させるのが難しい。特に、β-ケト酸であるこの分子は、軽度の加熱でも脱カルボキシル化する傾向がある。したがって、DNP-プロセスにおける製造および溶解工程は、この化合物の分解をもたらす。すなわち、本発明では、ジケテン(4-メチリデンオキセタン-2-オン)をアセトアセテートの前駆体として用いる。ジケテンは、少量のガラス形成剤(例えば、比2:1)の存在下で急速凍結するとガラスを形成することができる。過分極すると、次いでジケテンは、下記加水分解反応式に従って、水性担体と接触すると該基質をあまり分解せずに速やかにアセトアセテートに変換される。
【0101】
【化46】
【0102】
別の好ましい態様では、シス-アコニテートの前駆体を製造する。シス-アコニテートはTCA回路の代謝物である。
【0103】
シス-アコニテートは、アコニターゼ(EC 4.2.1.3)により触媒される反応においてシトレートとイソシトレートを形成する。この酵素はシス-アコニテートとシトレートおよびシス-アコニテートとイソシトレートの間の変換を触媒するが、該平衡は下記反応式に従ってシトレートの方へと移動する。
【0104】
【化47】
【0105】
しかしながら、DNPにおけるシス-アコニテートの製造では、かなりの量のガラス形成剤、例えばDMSOに溶解し、該基質をかなり低い最終濃度(2〜3M)にする必要がある。さらに、熱力学的に安定な形はトランス-アコニテート(アコニターゼの阻害剤)であり、溶液中で該シス形は、例えばDNP-試料の製造中に徐々にトランス形に変換される。これに対して、N2中のシス-アコニテート無水物の(その融点の約75〜80℃からの)急速凍結はガラス形を生成する。さらに、必要なシス-異性体は、全DNPプロセスおよび該無水物の水への溶解において維持される。水性塩基溶液の存在下で過分極シス-アコニット酸無水物の加水分解が急速に進行し、所望の過分極シス-アコニテートが形成される。
【0106】
上記のように、加水分解すると、酸自身の過分極により得ることができる分極度より高い分極度を示す対応する酸をもたらすそのエステル前駆体がさらにより好ましい。この方向で、そのようなエステルの例には、130℃以下、好ましくは100℃以下、最も好ましくは35℃以下で液体であり、急速凍結する、例えば液体窒素や液体ヘリウム中に入れるとガラス(非晶質固体)を形成する該化合物がある。典型的にはDNP法により過分極すると、本発明に従って上記エステルを水性担体に加え、好ましくは加水分解により、該基質の直接過分極により得ることができるものより少なくとも1.2倍の、好ましくは活性基質それ自身を直接過分極することにより得ることができるものより少なくとも1.5倍、例えば最大4倍までの分極度を有する対応する活性基質誘導体を得る。
【0107】
これに関して、好ましいエステル前駆体の例は、下記実験の部に示すように、イタコネート、ピログルタメート、2-オキソチアゾリジン-4-カルボキシレート、およびジメチルグリシンから選ばれる。
【0108】
さらにより好ましくは、上記エステル前駆体を、塩基性条件下(すなわちpH>7)、無機アルカリ塩基、例えばNaOH、または有機塩基、例えばトリメチロールアミノメタン(トロメタミンとしても知られる)、所望により触媒酵素、例えばカルボキシルエステラーゼの存在下で加水分解する。
【0109】
この方向および本発明の別の態様において、該前駆体の活性基質への変換は、酵素的加水分解によっても行うことができる。本明細書で用いている用語「酵素的加水分解」は、加水分解反応の速度が加速し、および/または該加水分解反応の変換収率が増加する酵素反応、例えば、非酵素的加水分解に対して少なくとも2倍、好ましくは少なくとも10倍の変換収率の増加をもたらし、1またはそれ以上の結果化合物を生じる出発化合物の定量的(例えば、少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、さらにより好ましくは95%)変換をもたらす酵素反応を含む。本発明のこの態様によれば、該過分極前駆体を、酵素存在下で、過分極試料を融解するのに充分な高温で前記適切な担体と接触させ、次いで生理的温度(例えば約35〜40℃)にする。溶解および加熱中に、該前駆体は、典型的にはその酵素的加水分解により所望の過分極活性基質に変換され、得られた溶液は、所望により分極剤および/または前駆体変換の他の副産物を除去した後、必要に応じて患者に投与される。選択した前駆体は、少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、さらにより好ましくは最高95%以上まで適切に酵素的に加水分解することができる。
【0110】
該酵素の量は、特定の酵素の比活性に応じて変えることができるが、典型的量は、約50 U〜30 KU、好ましくは60 U〜300 U、さらにより好ましくは90〜270 U/mg酵素であり、該量を加え、一般的には2分間以内またはそれより速く、例えば10秒以内に加水分解を達成する。また、該酵素は、本発明に用いる比較的低量で生理学的に許容される。ある場合、例えば該前駆体の変換を促進するために加える添加剤の量が比較的高い場合は、次に、水性溶液中の酵素(過分極活性基質を含む)を、例えば当該分野で知られたあらゆる方法(例えばイオン交換またはサイズ分離)により除去するか、または使用前に、適用した酵素を固定化し、加水分解した過分極生成物を投与する前に濾過して除去することができる。用いることができる酵素の例は、一定の濃度(例えばmMで表す)内で該方法の時間尺度(分で表す)で該過分極前駆体を加水分解する、加水分解酵素と呼ばれる酵素のクラス中にみいだすことができる(一般的にはEC3またはEC3.x.x.xで示す)酵素から選ぶことができる。
【0111】
さらなる好ましい態様では、該酵素は、エステラーゼ、アシラーゼ、およびリパーゼからなる群から選ばれるが、該前駆体は、生物学的に許容される加水分解産物を生じる該基質から適切に選ぶことができる。特に、この点で好ましい基質は以下からなる群から選ばれる:生物活性基質のエチルエステルおよびN-アシル化誘導体、特に好ましいのは、N-アセチル化アミノ酸、例えば、N-アセチルグルタミン(したがって、グルタミンおよびアセテートに酵素的に加水分解される)、N-アセチルグリシン(グリシンおよびアセテートに酵素的に加水分解される)、エチルエステル、例えば、エチルアセトアセテート(したがって、アセトアセテートおよびエタノールに酵素的に加水分解される)(所望により重水素化形)である。酵素的加水分解は、上記の同じ好ましい水性担体内で、酵素の非存在下、例えば、酸性(pH<7)、塩基性(pH>7)、または中性条件(pH7)下で、本発明について先に記載した加水分解反応と同様に適切に行うことができる。
【0112】
好ましくは、酵素的加水分解は、緩衝水性溶液中、該酵素に最適なpHと温度で行う。したがって、特に好ましい態様において、本発明は、トリメチロールアミノメタン(トロメタミンとしても知られる)、緩衝液、またはリン酸緩衝液中で、エチルアセトアセテートおよびN-アセチルグルタミンまたはN-アセチルグリシンから選ばれるDNP過分極前駆体を酵素的加水分解して最適な最終代謝造影剤を得ることを含む過分極活性基質の製造方法(ここで、該加水分解はカルボキシルエステラーゼ(EC 3.1.1.1。温度40〜60℃およびpH7〜9)またはアミノアシラーゼ(EC 3.5.1.14。温度40〜60℃およびpH7〜9)の存在下で行う)に関する。実際的態様では、選択した過分極前駆体の酵素的加水分解は以下のごとく行う:
過分極前駆体を、従来技術の方法に従って過分極させ、適切な媒質に溶解させる。そうして得られた過分極前駆体含有溶液を、先に記載のごとく酵素的加水分解のために最適化させた(緩衝液のタイプ、pH、および温度)。次に、該過分極前駆体を含む溶液を、所望の酵素活性を有する酵素溶液または固定化酵素と混合し、加水分解が完結した後、所望により該酵素を反応媒質から除去した。
【0113】
本発明の前駆体化合物を過分極するには種々の方法を用いることができることに留意すべきである。可能な分極法に関するさらなる詳細は、例えば、WO 99/35508(Nycomed Imaging AS)、WO 98/58272(Nycomed Imaging AS)、およびWO99/24080(Nycomed Imaging AS)に記載されている(これらの内容は本明細書の一部を構成する)。
【0114】
本発明によれば、該過分極前駆体は、例えばWO-A-99/35508に記載のごとく、好ましくは分極剤の存在下で、動的核分極(DNP)法により得られる。特に、その効率的な分極特性により、例えばWO-A-99/35508、WO-A-88/10419、WO-A-90/00904、WO-A-91/12024、WO-A-93/02711、またはWO-A-96/39367に記載のトリチルラジカルを分極剤として使用するのが好ましい(これらの内容は本明細書の一部を構成する)。
【0115】
簡単には、該方法は、一般的には以下の工程を含む:
(a)均一な磁場の存在下、低温で高T1前駆体と分極剤(DNP調製物)を接触させ、
(b)該分極剤に電子スピン遷移を引き起こすために適切に選択された周波数の超音波照射に該分極剤を暴露し、
(c)該DNP調製物を適切な担体(過分極溶液)に溶解し、所望により
(d)該過分極溶液から分極剤を除去する。
【0116】
効率的DNPプロセスは、高磁場(3-8 T)および低温(0.5〜4°K)で最高に得られ、典型的には、少なくとも1%、好ましくは少なくとも5%、さらにより好ましくは少なくとも10%の分極レベルが得られる。ここで、分極は下記式で定義される:
【化48】

[式中、Nαは、核スピン相αにおけるスピン数であり、
Nβは核スピン相βにおけるスピン数である。]
【0117】
該分極剤は、該核スピンに対する電子スピンの均質な分布と最適濃度を得るために、高T1前駆体の調製物中および所望により混合ガラス形成剤中で安定で可溶性でなければならない。典型的には、該分極剤は、DNPを受ける混合物に5mM〜50mM、より好ましくは8〜18mMの量で加える。
【0118】
さらに好ましい態様では、下記一般式(I)のラジカルを好都合に用いることができる。
【0119】
【化49】
式(I)

[式中、Rは、同じかまたは異なって、所望により1またはそれ以上のヒドロキシル基、メトキシ基、または式-(CH2)n-O-R2の基(ここで、nは、1、2、または3である)で置換された直鎖または分岐鎖C1-C6-アルキル基を表す;
R2は、所望により1またはそれ以上のヒドロキシル基またはメトキシ基により置換された直鎖または分岐鎖C1-C6-アルキル基である;
Xは、独立してH、アルカリ金属、例えば、Na、K、Cs、
所望により置換された直鎖または分岐鎖C1-C6アルキル基(所望により硫黄または酸素原子が割り込んでいる)、所望により置換された脂肪族または芳香族C3-C8環状基またはヘテロ基から選ばれる。]
【0120】
好ましくは、該ラジカルは、有機液体前駆体に溶解して少なくとも5mM溶液になる上記式(I)の化合物、例えば、Xが水素であるか、またはXが疎水性部分、例えば、メチル、エチル、ter-ブチル、またはフェニルから選ばれる式(I)の化合物である。水に不溶性の該ラジカル、例えば、XおよびRが疎水性部分である式(I)の化合物も好ましい。前駆体の水性DNP調製物の場合、好ましいラジカルは、(トリス(8-カルボキシ-2,2,6,6-(テトラ(ヒドロキシエチル)-ベンゾ-[1,2-4,5’]-ビス-(1,3)-ジチオール-4-イル)-メチルナトリウム塩、またはトリス(8-カルボキシル-2,2,6,6-テトラメチル-ベンゾ(1,2-d:4,5-dS)ビス(1,3)ジチオール-4-イル)メチルナトリウム塩である。所望により、常磁性金属イオンをDNP調製物に加え、分極する化合物の分極レベルを増大させることができる。適切な常磁性金属イオンの例は、例えばWO-2007/064226に開示されている(この内容は本明細書の一部を構成する)。好ましくは、該常磁性金属イオンは、金属イオン濃度について濃度0.3〜4mMのGd3+イオンを含む常磁性キレートである。
【0121】
DNPプロセスに次いで、そのように過分極した固体試料を液相に移す。これは、典型的には、該試料を、例えばWO-02/37132に記載の適切な装置を用いて適切な溶媒または溶媒混合物に溶解することにより行う。in vivoで使用するには、該過分極液試料からトリチルラジカルおよび所望により常磁性金属イオンを除去することが好ましい。これに関して、トリチルラジカルおよび常磁性金属イオンを除去するのに有用な方法は当該分野で知られており、例えばWO-2007/064226に記載されている。本発明によれば、上記各前駆体から得られる過分極化合物は、MR分光法(MR spectroscopy)またはMRI技術を用いてモニターすることができる。該分析は、一般的方法、例えば、適切な時間間隔で行う一連の分離した測定の連続モニタリングまたは1回の分離した測定により行うことができる。
【0122】
したがって、別の局面において、本発明は、以下の工程を含む、試料、好ましくは人体または非ヒト動物体の磁気共鳴画像法に関する:
a)i)該基質の過分極前駆体を調製し、
ii)該過分極前駆体を適切な担体と接触させて該前駆体を過分極活性基質に変換することを含む方法により過分極活性基質を調製し、
b)該過分極活性基質を該試料に投与し、
c)該試料を該過分極活性基質中で核スピン遷移をもたらすように選択した周波数の放射線に暴露し、
d)該活性物質からMR信号を検出し、
e)所望により、該検出した信号から画像、生理学的データ、または代謝データを得る。
【0123】
該前駆体の過分極を分極剤の存在下で行う場合は、投与前に分極剤を活性基質から全てまたは部分的に分離することが好ましい。
【0124】
本発明の方法では、適切な前駆体は、適切な担体と接触させると、先に記載のごとく好ましくは加水分解により少なくとも1の活性基質に変換される過分極物質から選択される。この点で、該前駆体は、特に、無水物、混合無水物、エステル、ジケテンなどであり得る。該活性基質は一般的には溶液中に存在し、該溶液のpHは、投与前に適切な酸または塩基緩衝剤を加えることにより医薬的に許容される値に調整することができる。もちろん、正確な濃度は、一定の因子、特に毒性や投与経路などに依存する。一般的には、最適濃度は、ほとんどの場合、10mM〜150mM、特に40〜80mMの範囲である。いずれにしても、該溶液の用量は、検出可能な造影反応をもたらす範囲でできるだけ低く保つべきである。本発明に用いるMR造影基質の用量は、例えば用いるMR造影剤の性質、目的とする組織や器官、および測定装置によって変化する。
【0125】
過分極加水分解基質は、血管系に、または器官や筋肉組織に直接、または皮下(subdermalまたはsubcutaneous)経路により投与することができる。次に、本発明の方法では、該試料を、該過分極活性基質の核スピン遷移をもたらすために選択した周波数の放射線の均一磁場(「一次磁場」としても知られる)に暴露する。該前駆体、次いでその活性基質の過分極は、磁気共鳴信号をもたらす励起核スピン状態と基礎核スピン状態との間のポピュレーション差の増加をもたらす。MR信号強度は、このポピュレーション差に比例するので、検出される最終MR信号はより大きな振幅の信号を生じる。誘導されたMR信号の振幅も種々の他の因子、例えば、磁場の強度、試料の温度、アイソトープの性質、および造影する核の化学的環境などに依存する。
【0126】
この点で、MR信号を検出するために選ばれる方法には、常套的MRスキャンニングで通常知られているもの、例えば、多核スキャナー検出法、ファーストシングルショットイメージングシーケンス、EPI、RAREなどがある。同様に、本発明の方法で得られるMR信号は、常套的操作により、2または3次元画像データ;機能的、フロー、または環流データ;および生理学的もしくは代謝データ(例えば、pH、pCO2、温度、またはイオン濃度)に好都合に変換することができる。特に、該基質の代謝的変換は、患者の体内での代謝プロセスを研究し、および/または(健康または病的)組織の代謝状態の情報を得ることを可能にする。本発明の方法は、該過分極活性基質が、該前駆体を化学的変換(例えば加水分解)した直後に顕著に分極したままである時間枠内で行うべきであることは明らかであろう。したがって、そのような活性基質の投与、次いでMR測定は、好ましくはできるだけ速やかに行う。これは、試料(人体または非ヒト動物体)が分極が起きる領域の近くで利用可能である必要があることを意味する。この点で、投与すべき溶液の物理的特徴(例えば温度、密度など)は、選択した投与経路に関連したリスクを減らすために生理学的に許容されなければならないことに注意すべきである。
【0127】
前駆体(特に混合無水物に関して)の多様性により、本発明の方法は、種々の画像診断、例えば、限定されるものではないが、血管/血管造影画像化、介入的適用、環流マッピング、または代謝/分子画像化において臨床的適用をみいだすことができる。
下記の実施例は本発明をより良く定義するためのものであって、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0128】
材料
下記材料を以下の実施例で使用する。
実施例1a
DNP剤としてのトリチルラジカルの存在下での酪酸のDNP製造
【0129】
酪酸(11.7mg、0.13mmol)をエッペンドルフチューブに入れ、39mMのラジカル1を含む9.0mgのグリセロール溶液と混合した。この調製物は酪酸について7Mであった。該調製物は、液体窒素中で急速凍結するとガラスを形成した。
実施例1b
DNP剤としてのトリチルラジカルの存在下での酪酸無水物のDNP製造
【0130】
酪酸無水物(40μl、0.24mmol)を、エッペンドルフチューブに入れ、1mgのラジカル3と混合し、総濃度を15mMとした。この調製物は酪酸無水物に関して6.5Mであった(これは加水分解すると13M濃度の酪酸分子をもたらす)。この無水物は、ガラス形成剤を添加せずに急速凍結するとガラスを形成した。実施例1aと比較して、ガラス形成剤を添加せずに、調製物1aの濃度の二倍の酪酸濃度の、酪酸無水物を調製することができた。
実施例1c
DNP剤としてのトリチルラジカルの存在下での酪酸酢酸無水物のDNP製造
【0131】
酪酸酢酸無水物(36μl、0.28mmol)を、エッペンドルフチューブに入れ、0.85mgのラジカル3の酸形と混合し、総濃度を15mMとした。この調製物は、酪酸酢酸について7.5Mであった。この混合無水物は、ガラス形成剤を添加せずに急速凍結するとガラスを形成した。実施例1aに比べて、本実施例ではガラス形成剤を添加せずに酪酸酢酸無水物の製造が可能であった。さらに、第2活性代謝造影剤(酢酸)が得られる。
実施例1d
DNP剤(予測的)としてのトリチルラジカルの存在下での酪酸炭酸エチル無水物のDNP製造
【0132】
酪酸炭酸エチル無水物は室温で液体であり、ガラス形成剤非存在下で実施例1bの方法に従って急速凍結するとガラスを形成する。活性代謝造影剤に加えて、この前駆体の加水分解は、さらにpHマーカー(H2CO3)とMR造影剤(エタノール)を生じる。
実施例1e
酪酸無水物のDNP過分極、および加水分解のための強塩基の存在下での溶解
【0133】
実施例1bから得た組成物(25mg、0.16mmol)を、エッペンドルフチューブからサンプルカップに移し、サンプルカップをDNP過分極装置に挿入した。該組成物を超音波(93.915 GHz)照射下、3.35T磁場中1.2KのDNP条件下で過分極した。試料を75分間過分極した。
【0134】
試料を、NaOH(12M溶液を50μl)を加えた水4mlに溶解した。溶解した試料のpHは12であった。該溶液を直接10mm NMRチューブに回収し、14.1T磁石に移し、時系列的に5度1D 13C-NMRスペクトルを1sのパルス間総遅延で記録した。10s後に該無水物を定量的に加水分解した(少なくとも95%以下)。酪酸無水物は十分分極し、実験時間中に容易にブチレートに加水分解された。
実施例1f
酪酸酢酸無水物のDNP過分極、および加水分解のための強塩基の存在下での溶解
【0135】
実施例1cから得た組成物(33mg、0.25mmol)を、エッペンドルフチューブからサンプルカップに移し、サンプルカップをDNP過分極装置に挿入した。該組成物を超音波(93.915 GHz)照射下、3.35T磁場中1.2KのDNP条件下で過分極した。試料を90分間過分極した。
【0136】
試料を、NaOH(12M溶液を125μl)を加えた水5mlに溶解した。該溶液を、直接10mm NMRチューブに回収し、14.1(pH12.8、および50℃)T磁石に移した。時系列的に5度1D 13C-NMRスペクトルを1sのパルス間総遅延で記録した。10s後に酪酸酢酸無水物を少なくとも95%まで定量的に加水分解した。該酪酸酢酸無水物は十分分極し、実験時間中に容易にブチレートに加水分解された。
実施例2a
常磁性金属イオンとしてのGd-キレートおよびDNP剤としてのトリチルラジカルの存在下でのLi-アセトアセテートのDNP調製
【0137】
Li-アセトアセテート(22.4mg、0.21mmol)を、エッペンドルフチューブに入れ、28μlのDMSO調製物(25mM ラジカル3および0.8mM 3-Gd)と混合した。この調製物はLi-アセトアセテートについて4Mであった。該調製物は液体窒素中で急速凍結するとガラスを形成した。
実施例2b
常磁性金属イオンとしてのGd-キレートおよびDNP剤としてのトリチルラジカルの存在下でのジケテンのDNP調製
【0138】
エッペンドルフチューブにジケテン(9.6mg、0.11mmol)を加え、ラジカル3(45mM)および3-Gd(1.5mM)のDMSO調製物4.7mgと混合した。この調製物はジケテンについて8.5Mであった。該調製物は液体窒素中で急速凍結するとガラスを形成した。実施例2aに比べて、アセト酢酸の濃度は2倍である。
実施例2c
DNP剤としてのトリチルラジカル存在下でのエチルアセトアセテートのDNP調製
【0139】
エチルアセトアセテート(45μl、0.34mmol)を、エッペンドルフチューブに入れ、ラジカル2の酸形(0.7mg、0.65μmol)と混合し、総濃度を15mMとした。この調製物はエチルアセトアセテートについて8Mであった。このエステルはガラス形成剤を添加せずに急速凍結するとガラスを形成した。実施例2aに比べて、本実施例では、ガラス形成剤を添加せずにエチルアセトアセテートを調製することが可能であり、エチルアセトアセテートの濃度は2倍である。
実施例2d
Li-アセトアセテートのDNP過分極、およびリン酸緩衝液への溶解
【0140】
実施例2aから得た全組成物を、エッペンドルフチューブからサンプルカップに移し、サンプルカップをDNP過分極装置に挿入した。該組成物を超音波(93.915 GHz)照射下、3.35T磁場中1.2KのDNP条件下で過分極した。該試料を75分間過分極した。
該試料を5mlリン酸緩衝液pH 7.3(40mM+EDTA)に溶解した。
【0141】
溶解後pH7.4。該溶液を、直接10mm NMRチューブに回収し、14.1T磁石に移し、次いで、90度1D 13C-NMRスペクトルを記録した。アセトアセテートのビカーボネートとアセトンへの脱カルボキシル化が検出された。分解量は、溶解後のDNP試料において1H NMRにて40%と同定された。
実施例2e
ジケテンのDNP過分極、および加水分解のための強塩基の存在下での溶解
【0142】
実施例2bから得た全組成物をエッペンドルフチューブからサンプルカップに移し、サンプルカップをDNP過分極装置に挿入した。該組成物を超音波(93.915 GHz)照射下、3.35T磁場中1.2KのDNP条件下で過分極した。該試料を3時間過分極した。
【0143】
該試料をNaOH(12Mを125μl)を加えた5mlの水に溶解した。該溶液を、直接10mm NMRチューブに回収し、14.1T磁石(pH 13)に移し、時系列的に64の5度1D 13C-NMRスペクトルを3sのパルス間総遅延で記録した。10s後に該ラクトンは少なくとも95%までが定量的に加水分解された。該ジケテンは十分分極し、実験時間中にアセトアセテートに容易に加水分解された。アセトアセテートの実質的分解(脱カルボキシル化)はみられなかった。加水分解産物、アセトアセテートのT1は、32s(14.1Tおよび37℃)である。
実施例2f
エチルアセトアセテートのDNP過分極、および加水分解のための強塩基の存在下での溶解
【0144】
実施例1cから得た組成物(20.5mg、0.16mmol)を、エッペンドルフチューブからサンプルカップに移し、サンプルカップをDNP過分極装置に挿入した。該組成物を超音波(93.915 GHz)照射下、3.35T磁場中1.2KのDNP条件下で過分極した。該試料を2時間過分極した。
【0145】
該試料をNaOH(12Mを200μl)を加えた5mlの水に溶解した。該溶液を、直接10mm NMRチューブに回収し、14.1T磁石(pH 12.8)に移し、時系列的に5度1D 13C-NMRスペクトルを3sのパルス間総遅延で記録した。該エステルは部分的にのみ加水分解された。該エステルは十分分極し、10s後に約20%がアセトアセテートに加水分解された。該アセトアセテートについて実質的な分解(脱カルボキシル化)は測定されなかった。加水分解産物、アセトアセテートのC1位のT1は32s(14.1Tおよび37℃)である。
実施例2g
エチルアセトアセテートのDNP過分極、および加水分解のためのエステラーゼ存在下での溶解
【0146】
実施例2cから得た組成物(13.2mg、0.1mmol)を、エッペンドルフチューブからサンプルカップに移し、サンプルカップをDNP過分極装置に挿入した。組成物を超音波(93.915 GHz)照射下、3.35T 磁場中1.2kで2時間、DNP条件下で過分極した。
該試料を5mlの40mMリン酸緩衝液pH 7.3+100mg/l EDTAに溶解し、エステル濃度を20mMとした。1mlの該エステル溶液を、輸送ラインを介して、14.1Tおよび37℃においた10mm NMRチューブに注射した。10mm NMRチューブに、約270Uのブタ肝臓由来カルボン酸エステル加水分解酵素の500μl溶液を加えた。時系列的に10度1D 13C-NMRスペクトルを3sのパルス間総遅延で記録した。12s後、該エステルをアセトアセテートの完全に加水分解した。アセトアセテートの分解(脱カルボキシル化)は検出されなかった。
実施例3a
常磁性金属イオンとしてのGd-キレートおよびDNP剤としてのトリチルラジカルの存在下でのシス-アコニット酸のDNP調製
【0147】
シス-アコニット酸(18.6mg、0.11mmol)を、エッペンドルフチューブに入れ、32.5μl DMSO調製物(25mM ラジカル3および0.8mM 3-Gd)と混合した。この調製物はシス-アコニット酸について2.5Mであった。該調製物は液体窒素中で急速凍結するとガラスを形成した。
実施例3b
常磁性金属イオンとしてのGd-キレートおよびDNP剤としてのトリチルラジカルの存在下でのシス-アコニット酸無水物のDNP調製
【0148】
シス-アコニット酸無水物(188mg、1.2mmol)を、エッペンドルフチューブに加え、2.85mg(2μmol)のラジカル1および0.98mgの3-Gdの83μmol/g溶液と混合した。この調製物はシス-アコニット酸無水物について9Mであった。融解した調製物は、ガラス形成剤を添加せずに急速凍結するとガラスを形成した。実施例3aに比べて、本実施例ではガラス形成剤を添加せずにシス-アコニット酸無水物を調製することができ、シス-アコニット酸の濃度は3倍以上である。
実施例3c
シス-アコニット酸のDNP過分極、および中和のため塩基存在下での溶解
【0149】
実施例2aから得た全組成物をエッペンドルフチューブからサンプルカップに移し、サンプルカップをDNP過分極装置に挿入した。該組成物を超音波(93.915 GHz)照射下、3.35T磁場中1.2KのDNP条件下で過分極した。該試料を75分間過分極した。
【0150】
該試料を30μlの12M NaOHを加えた5 mlリン酸緩衝液(40mM、pH 7.3)に溶解した。溶解後のpHは7.2であった。該溶液を、直接10mm NMRチューブに回収し、14.1T磁石に移し、時系列的に5度1D 13C-NMRスペクトルを3sのパルス間総遅延で記録した。アコニテートのトランス異性体の存在が約10%の量で検出された。
実施例3d
シス-アコニット酸無水物のDNP過分極、および加水分解のための強塩基の存在下での溶解
【0151】
実施例2bから得た組成物を水浴にて融解し、マグネチックスターラーで撹拌した。45mgのこの調製物(0.29mmol)をエッペンドルフチューブからサンプルカップに移し、サンプルカップをDNP過分極装置に挿入した。該組成物を超音波(93.915 GHz)照射下、3.35T磁場中1.2KのDNP条件下で過分極した。該試料を90分間過分極した。
【0152】
該試料をNaOH(12Mを190μl)を加えた水6mlに溶解した。該溶液を、直接10mm NMRチューブに回収し、14.1T磁石(pH 12.8)に移し、時系列的に64の5度1D 13C-NMRスペクトルを3sのパルス間総遅延で記録した。10s後にシス-アコニット酸無水物は、少なくとも95%まで定量的に加水分解された。シス-アコニット酸無水物は十分分極し、実験時間中にシス-アコニテートに容易に加水分解された。加水分解産物、シス-アコニテートのT1は24s(14.1Tおよび37℃)である。実施例3bとは対照的に、トランス-アコニテートの存在はごくわずかであった。
実施例4a
常磁性金属イオンとしてのGd-キレートおよびDNP剤としてのトリチルラジカルの存在下でのコハク酸のDNP調製
【0153】
コハク酸(42.1mg、0.35mmol)を、エッペンドルフチューブに加え、混合し、次いで92mgのDMSO調製物(20mM ラジカル3および0.8mM 3-Gd)と混合した。この調製物はコハク酸について4Mであった。該調製物は液体窒素中で急速凍結するとガラスを形成した。
実施例4b
常磁性金属イオンとしてのGd-キレートおよびDNP剤としてのトリチルラジカルの存在下でのコハク酸無水物のDNP調製
【0154】
コハク酸無水物(21.5mg、0.21mmol)を、エッペンドルフチューブに加え、ラジカル3(30mM)および3-Gd(1mM)の21.8mgのDMSO溶液と混合した。この調製物はコハク酸無水物について6Mであった。この無水物は急速凍結するとガラスを形成した。実施例4aに比べて、本実施例では、より高濃度のコハク酸無水物の調製が可能である。
実施例4c
コハク酸無水物のDNP過分極、および加水分解のための強塩基の存在下での溶解
【0155】
実施例4bから得た全組成物をエッペンドルフチューブからサンプルカップに移し、サンプルカップをDNP過分極装置に挿入した。該組成物を超音波(93.915 GHz)照射下、3.35T磁場中1.2KのDNP条件下で過分極した。該試料を60分間過分極した。
【0156】
該試料を NaOH(12Mを150μl)を加えた5mlの水に溶解した。該溶液を、直接10mm NMRチューブに回収し、14.1T磁石(pH 12.8)に移し、時系列的に5度1D 13C-NMRスペクトルを3sのパルス間総遅延で記録した。該無水物は、10s後に少なくとも95%まで定量的に加水分解された。該コハク酸無水物は十分分極し、実験時間中容易に加水分解された。加水分解産物、スクシネートのT1は33s(14.1 Tおよび37℃)である。
実施例4d
常磁性金属イオンとしてのGd-キレートおよびDNP剤としてのトリチルラジカルの存在下でのコハク酸-(1)-エチルエステルのDNP調製
【0157】
コハク酸-(1)-エチルエステル(111mg、0.75mmol)を、エッペンドルフチューブに加え、ラジカル2(2.4mg、1.5μmol)および3-Gd(14.5mM水溶液を3.4μl)のカルボン酸形と混合した。この調製物はコハク酸-(1)-エチルエステルについて6Mであった。このエステルは、急速凍結するとガラスを形成した。実施例4aに比べて、本実施例では、添加物なしに、より高濃度のコハク酸-(1)-エチルエステルの調製が可能である。
実施例4e
コハク酸-(1)-エチルエステルのDNP過分極、および加水分解のための強塩基の存在下での溶解
【0158】
実施例4cから得た組成物45.4mgを、エッペンドルフチューブからサンプルカップに移し、サンプルカップをDNP過分極装置に挿入した。該組成物は、超音波(93.900 GHz)照射下、3.35T磁場中1.2Kで60分間DNP条件下で過分極であった。
【0159】
該試料をNaOH(12Mを195μl)を加えた6mlの水に溶解した。該溶液を、直接10mm NMRチューブに回収し、14.1T磁石(pH13)に移し、時系列的に5度1D 13C-NMRスペクトルを3sのパルス間総遅延で記録した。該エステルは、20s後に少なくとも95%まで加水分解された。
実施例5a
水酸化ナトリウム、常磁性金属イオンとしてのGd-キレート、およびDNP剤としてのトリチルラジカルの存在下でのL-グルタミンのDNP調製
【0160】
L-グルタミン(50.9mg、0.35mmol)を、エッペンドルフチューブに加え、29μlの12M NaOHに溶解し、次いで1.7mgのラジカル1および3-Gd(14.5mM水ストック溶液、2.3μl)と混合した。この調製物はL-グルタミンについて4Mであった。該調製物は液体窒素中で急速凍結するとガラスを形成した。L-グルタミンはDNP調製条件下で不安定な化合物である。分解量は、可溶化した上記DNP試料について1H NMRで14%と定量された。
実施例5b
水酸化ナトリウム、常磁性金属イオンとしてのGd-キレート、およびDNP剤としてのトリチルラジカルの存在下でのN-アセチル-L-グルタミンのDNP調製
【0161】
N-アセチル-L-グルタミン(57.2mg、0.3mmol)を、エッペンドルフチューブに加え、25.3μlの12M NaOHに溶解し、1.9mgのラジカル1および3-Gd(14.5mM水ストック溶液、2.3μl)と混合した。該調製物は液体窒素中で急速凍結するとガラスを形成した。この調製物は、実施例5aに比べて、N-アセチル-L-グルタミンについてわずかに高い濃度の4.5Mを示し、N-アセチルグルタミンは、可溶化した上記DNP試料を1H NMRで測定すると、DNP調製物中で分解しない。
実施例5c
N-アセチル-L-グルタミンのDNP過分極、溶解、および加水分解のためのN-アセチラーゼの添加
【0162】
実施例5bから得た組成物94.5mgを、エッペンドルフチューブからサンプルカップに移し、サンプルカップをDNP過分極装置に挿入した。該組成物を、超音波(93.900 GHz)照射下、3.35T磁場中1.2KのDNP条件下で過分極した。該試料を60分間過分極した。
【0163】
該試料を5mlの40mMリン酸緩衝液(40mM、pH 7.3)に溶解した。500μlの過分極N-アセチル-L-グルタミン溶液を14.1Tおよび37℃においた10mm NMRチューブに輸送ラインを介して注射した。10mm NMRチューブは、約90Uのブタ腎由来アシラーゼの1mlリン酸溶液を含んだ。時系列的に5度1D 13C-NMRスペクトルを3sのパルス間総遅延で記録した。
【0164】
N-アセチル-L-グルタミンは45s後に完全に加水分解された。L-グルタミンの分解(望ましくない環状形のピログルタメートを形成するL-グルタミンの傾向)は、熱および酸で誘導され、溶解プロセス(高温および塩基性調製物を中和するための酸の添加)を増強する。N-アセチル-L-グルタミンは該溶解プロセス中で分解しない。
実施例6a
水酸化ナトリウム、常磁性金属イオンとしてのGd-キレート、およびDNP剤としてのトリチルラジカルの存在下での2-13C-d2-グリシンのDNP調製
【0165】
2-13C-d2-グリシン(19.3mg、0.25mmol)を、エッペンドルフチューブに加え、16μlの12M NaOHに溶解し、次いでラジカル1(100μmol/g)およびガドテリドール(10μmol/g)の4mgのNaOH溶液と混合した。この調製物はグリシンについて7Mである。該調製物は液体窒素中で急速凍結するとガラスを形成する。
実施例6b
水酸化ナトリウム、常磁性金属イオンとしてのGd-キレート、およびDNP剤としてのトリチルラジカルの存在下での2-13C-d2-N-アセチルグリシンのDNP調製
【0166】
2-13C-d2-N-アセチルグリシン(30.7mg,0.255mmol)を、エッペンドルフチューブに加え、ラジカル1(3.4mg、2.4μmol)およびガドテリドール(2.5mg、100μmol/g溶液)の12M NaOH溶液(73μl、100mg)22μlに溶解した。この調製物は、実施例6aに比べて、N-アセチルグリシンについてより低濃度の5.5Mである。該調製物は液体窒素中で急速凍結するとガラスを形成した。
実施例6c
2-13C-d2-グリシンのDNP過分極、および中和のための強酸存在下での溶解
【0167】
実施例6aから得た組成物を、超音波(93.900 GHz)照射下、3.35T磁場中1.2Kで60分間、DNP条件下で過分極した。
【0168】
該試料を1当量のHClを加えた5mlリン酸緩衝液(100mM、pH 7)に溶解した。溶解後のpHは7.1である。該溶液を、直接10mm NMRチューブに回収し、14.1T磁石に移し、時系列的に3度1D 13C-NMRスペクトルを3sのパルス間総遅延で記録した。
固体状態の信号は280(面積、任意単位/mmol 13C)であり、液体状態の分極は、46sの高磁場液体状態T1で12.5%であった。
実施例6d
2-13C-d2-N-アセチルグリシンのDNP過分極、および溶解
【0169】
実施例6bから得た組成物を、超音波(93.900 GHz)照射下、3.35T磁場中1.2Kで60分間、DNP条件下で過分極した。
【0170】
該試料を5mlリン酸緩衝液(40mM、pH 7.3)に溶解した。溶解後のpHは7.2である。該溶液を、直接10mm NMRチューブに回収し、14.1T磁石に移し、次いで、時系列的に3度1D 13C-NMRスペクトルを3sのパルス間総遅延で記録した。
【0171】
固体状態の信号は376(面積、任意単位/mmol 13C)であり、液体状態の分極は、40sの高磁場液体状態T1で21%であった。
【0172】
実施例6bに比べて、より高い固体状態信号が得られ、分極の損失のない溶解とより高い液体状態分極が得られた。
実施例6e
N-アセチルグリシンのDNP過分極、および加水分解のためのN-アセチラーゼ存在下での溶解
【0173】
35mgのN-アセチルグリシン(117.1 g/mol、0.298mmol)を26μlの12M NaOHに溶解した。加熱、超音波処理、および渦巻き撹拌(vortexing)を用いて透明な、ガラスを形成する溶液を作製した。試料の総重量は71mg(50μl、重量65mg)であった。1.05mg ラジカル1および1.5μlの3-Gdストック溶液(14.5mmol/g)を加えた。試料中の総N-アセチルグリシン濃度は13.5mMであり、3-Gd濃度は0.4mMであった。
【0174】
35.8mgの該組成物をエッペンドルフチューブからサンプルカップに移し、サンプルカップをDNP過分極装置に挿入した。該組成物は、超音波(93.900 GHz)照射下、3.35T磁場中1.2Kで60分間、DNP条件下で過分極した。
【0175】
該試料を7ml 40mMリン酸緩衝液(40mM、pH 7.3)に溶解した。1mlの過分極 N-アセチルグリシン溶液を、輸送ラインを介して、14.1Tおよび37℃においた10mm NMRチューブに注射した。10mm NMRチューブは、約230Uのブタ由来アシラーゼ(5.2mg)の500μlリン酸溶液を含んだ。時系列的に5度1D 13C-NMRスペクトルを3sのパルス間総遅延で記録した。
N-アセチルグリシンは30s後に完全に加水分解した。
実施例7a
常磁性金属イオンとしてのGd-キレートおよびDNP剤としてのトリチルラジカルの存在下での2-オキソグルタレート2ナトリウム塩2ナトリウム塩のDNP調製
【0176】
2-オキソグルタレートナトリウム塩(137mg、0.61mmol)を100μlの温水に溶解した。2.06mg ラジカル1をエッペンドルフチューブ中で計量し、111μlの2-オキソグルタレート/水溶液を加えて総試料量143mgを得た。この試料に、2.7mgの14.5μmol/g 3-Gdストック溶液を加えた。この調製物を徐々に加熱し、次いで渦撹拌にて混合して溶解した。この調製物は2-オキソグルタレートについて3.4Mであった。該調製物は液体窒素中で急速凍結するとガラスを形成した。
実施例7b
常磁性金属イオンとしてのGd-キレートおよびDNP剤としてのトリチルラジカルの存在下での2-オキソグルタル酸-(1)-エチルエステルのDNP調製
【0177】
2-オキソグルタル酸-(1)-エチルエステル(31mg、0.18mmol)を、エッペンドルフチューブに加え、0.7mg(0. 45μmol)のラジカル3と混合した。この調製物は2-オキソグルタレートについて6.5Mであった。このエチルエステルは急速凍結するとガラスを形成した。実施例7aと対照的に、本実施例では、より高濃度の2-オキソグルタル酸-(1)-エチルエステルを製造することができる。
実施例7c
2-オキソグルタル酸-(1)-エチルエステルのDNP過分極、および加水分解のための強塩基の存在下での溶解
【0178】
実施例7bから得た組成物31mgを、エッペンドルフチューブからサンプルカップに移し、をエッペンドルフチューブからサンプルカップに移し、サンプルカップをDNP過分極装置に挿入した。該組成物は、超音波(93.900 GHz)照射下、3.35T磁場中1.2KのDNP条件下で過分極した。該試料を90分間過分極した。
【0179】
該試料をNaOD(10Mを35μl)を加えた6mlのD2Oに溶解した。該溶液を、直接10mm NMRチューブに回収し、14.1T磁石(pH 11)に移し、次いで時系列的に5度1D 13C-NMRスペクトルを3sのパルス間総遅延で記録した。該エステルは15s後に少なくとも95%まで加水分解された。該2-オキソグルタル酸-(1)-エチルエステルは実験時間中2-オキソグルタレートに容易に加水分解された。
実施例8a
DNP剤としてのトリチルラジカル存在下でのリンゴ酸のDNP調製
【0180】
リンゴ酸(49mg、0.365mmol)を100mgのDMSOストック溶液(320mg DMSOおよび8.6mg(5.4μmol)のラジカル3)に溶解した。この調製物はリンゴ酸について4Mであった。該調製物は液体窒素中で急速凍結するとガラスを形成した。
実施例8b
DNP剤としてのトリチルラジカル存在下でのリンゴ酸-(1)-エチルエステルのDNP調製
【0181】
リンゴ酸-(1)-エチルエステル(108mg、0.66mmol)を、エッペンドルフチューブに入れ、1.7mg(1.1μmol)のラジカル3と混合した。この調製物はマレートについて7.4Mであった。このエチルエステルは急速凍結するとガラスを形成した。実施例8aと対照的に、添加物なしにより高濃度のリンゴ酸-(1)-エチルエステルの調製を可能にする。
実施例8c
リンゴ酸-(1)-エチルエステルのDNP過分極、および加水分解のための強塩基の存在下での溶解
【0182】
実施例8bから得た組成物39.9mgを、エッペンドルフチューブからサンプルカップに移し、サンプルカップをDNP過分極装置に挿入した。該組成物を、超音波(93.900 GHz)照射下、3.35T磁場中1.2KのDNP条件下で過分極した。該試料を80分間過分極した。
【0183】
該試料をNaOH(12Mを92μl)を加えた水6mlに溶解した。該溶液を、直接10mm NMRチューブに回収し、14.1T磁石(pH 12.9)に移し、次いで時系列的に5度1D 13C-NMRスペクトルを3sのパルス間総遅延で記録した。このエステルは、20s後に少なくとも95%まで加水分解された。該リンゴ酸-(1)-エチルエステルは、実験時間中マレートに容易に加水分解された。
実施例9a
DNP剤としてのトリチルラジカル存在下でのL-フェニルアラニンのDNP調製
【0184】
L-フェニルアラニン(126.3mg、0.76mmol)を69.5μlの12M NaOH+69.5μl水に溶解した。この溶液を4.6mg(3.2μmol)ラジカル1と混合した。この調製物はL-フェニルアラニンについて3.5Mであった。該調製物は液体窒素中で急速凍結するとガラスを形成した。
実施例9b
DNP剤としてのトリチルラジカル存在下でのエチルフェニルアラニンのDNP調製
【0185】
エチルフェニルアラニン(49mg、0.25mmol)を、エッペンドルフチューブに入れ、1.2mg(0. 78μmol)のラジカル3と混合した。この調製物は、フェニルアラニンについて5.5Mであった。このエチルエステルは急速凍結するとガラスを形成した。実施例9aと対照的に、本実施例ではより高濃度のエチルフェニルアラニンの調製が可能である。
実施例9c
エチルフェニルアラニンのDNP過分極、および加水分解のための強塩基の存在下での溶解
【0186】
実施例9bから得た組成物49mgを、エッペンドルフチューブからサンプルカップに移し、サンプルカップをDNP過分極装置に挿入した。該組成物を、超音波(93.900 GHz)照射下、3.35T磁場中1.2KのDNP条件下で過分極した。該試料を60分間過分極した。
【0187】
該試料をNaOH(12Mを83μl)を加えた水7mlに溶解した。該溶液を、直接10mm NMRチューブに回収し、14.1T磁石(pH 12.2)に移し、次いで時系列的に5度1D 13C-NMRスペクトルを3sのパルス間総遅延で記録した。該エステルは、15s後に少なくとも95%まで加水分解された。該エチルフェニルアラニンは実験時間中にフェニルアラニンに容易に加水分解された。
実施例10a
DNP剤としてのトリチルラジカル存在下での1-13C-ピログルタメートのDNP過分極
【0188】
1-13Cピログルタミン酸(35.9mg、0.276mmol)を24μlの12M NaOHと混合した。この溶液に、1.1mg(0.77μmol)のラジカル1を加えた。この調製物はピログルタメートについて5.5Mであった。該調製物は液体窒素中で急速凍結するとガラスを形成した。この全試料を、分極が完全に達成されるまで、超音波(93.900 GHz)照射下、3.35T磁場中1.2KのDNP条件下で過分極した。分極を300s毎に回収する小パルス角(5度)で固体状態でモニターした。分極達成時間定数は2000sと計算され、固体状態信号は75(面積、任意単位/mmol 13C)であった。
実施例10b
DNP剤としてのトリチルラジカル存在下での1-13C-ピログルタミン酸エチルエステルのDNP分極
【0189】
1-13Cピログルタミン酸エチルエステル(61.3mg、0.387mmol)を0.71mg(0.46μmol)のラジカル3と混合した。この調製物はエチルピログルタメートについて7.5Mであった。該調製物は液体窒素中で急速凍結するとガラスを形成した。この全試料を、分極が完全に達成されるまで、超音波(93.900 GHz)照射下、3.35T磁場中1.2KのDNP条件下で分極した。分極を300s毎に回収する小パルス角(5度)で固体状態でモニターした。分極達成時間定数は2070sと計算され、固体状態の分極は350(面積、任意単位/mmol 13C)であった。実施例10aに比べて、本実施例では、より高濃度のピログルタメートエチルエステルの調製が可能であり、該エチルピログルタメートは4.5倍以上分極し、該ピログルタメートは同じ分極達成時間定数を有し、試料中で低ラジカル濃度であった。
実施例10c
加水分解のための強塩基の存在下でのDNP過分極エチルピログルタメートの溶解
【0190】
実施例10bから得た組成物36.8mgを、サンプルカップに移し、サンプルカップをDNP過分極装置に挿入した。該組成物を、超音波(93.900 GHz)照射下、3.35T磁場中1.2KのDNP条件下で過分極した。該試料を60分間過分極した。
【0191】
該試料をNaOH(12Mを95μl)を含む水5mlに溶解した。該溶液を、直接10mm NMRチューブに回収し、14.1T磁石(pH 11)に移し、時系列的に5度1D 13C-NMRスペクトルを3sのパルス間総遅延で記録した。該エステルは、10s以内で少なくとも95%まで加水分解された。該エチルピログルタメートは実験時間中に容易にピログルタメートに加水分解された。
実施例11a
DNP剤としてのトリチルラジカル存在下での1-13C-L-オキソチアゾリジン-4-カルボン酸(OTZ)のDNP分極
【0192】
1-13C OTZ(36mg、0.24mmol)を21μlの12M NaOHと混合した。この溶液に0.77mg(0.54μmol)ラジカル1を加えた。この調製物はOTZについて4Mであった。該調製物は液体窒素中で急速凍結するとガラスを形成した。この全試料を、分極が完全に達成されるまで、超音波(93.900 GHz)照射下、3.35T磁場中1.2KのDNP条件下で分極した。分極を300s毎に回収する小パルス角(5度)で固体状態でモニターした。分極達成時間定数は3500sと計算された。固体状態の信号は305(面積、任意単位/mmol 13C)であった。
実施例11b
DNP剤としてのトリチルラジカル存在下での1-13C-OTZ エチルエステルのDNP分極
【0193】
1-13C OTZ エチルエステル(84.8mg、0.48mmol)を0.98mg(0.94μmol)ラジカル2と混合し、14mM ラジカルを含む溶液(溶液Aという)を得た。22.1mg(0.125mmol)の溶液Aに、さらなる量の1-13C OTZ エチルエステル(6mg、0.034mmol)を加え、ラジカル濃度11mMとした。この調製物はOTZエチルエステルについて7Mであった。該調製物は液体窒素中で急速凍結するとガラスを形成した。この全試料を、分極が完全に達成されるまで、超音波(93.900 GHz)照射下、3.35T磁場中1.2KのDNP条件下で分極した。分極を300s毎に回収する小パルス角(5度)で固体状態でモニターした。分極達成時間定数は1925sと計算され、固体状態の信号は380(面積、任意単位/mmol 13C)であった。
【0194】
実施例11aに比べて、本実施例はより高濃度のOTZ エチルエステルを調製することができ、該OTZエステルは1.2倍分極し、OTZは同じ分極達成時間定数と試料中の低ラジカル濃度を示した。
実施例11c
加水分解のための強塩基の存在下でのDNP過分極エチルOTZの溶解
【0195】
エチルOTZ(78.4mg、0.448mmol)を1.49mg(0.97μmol)ラジカル3と混合し、これをサンプルカップに移し、次いで、サンプルカップをDNP過分極装置に挿入した。該組成物を、超音波(93.900 GHz)照射下、3.35T磁場中1.2KのDNP条件下で過分極した。該試料を60分間過分極した。
【0196】
該試料をNaOH(12Mを73μl)を加えた水5mlに溶解した。該溶液を、直接10mm NMRチューブに回収し、14.1T磁石(pH 12.6)に移し、次いで、時系列的に5度1D 13C-NMRスペクトルを3sのパルス間総遅延で記録した。該エステルは10s以内に少なくとも95%まで加水分解された。エチルOTZは実験時間中OTZに容易に加水分解された。
実施例12a
DNP剤としてのトリチルラジカル存在下での1-13C-イタコン酸のDNP過分極
【0197】
1-13C イタコン酸(39.7mg、0.3mmol)を51.1mg 12M NaOHと混合した。この溶液に、1.65mg(1.15μmol)ラジカル1を加えた。この調製物はイタコン酸について4.5Mであった。該調製物は液体窒素中で急速凍結するとガラスを形成した。この全試料を、分極が完全に達成されるまで、超音波(93.900 GHz)照射下、3.35T磁場中1.2KのDNP条件下で分極した。分極を300s毎に回収する小パルス角(5度)で固体状態でモニターした。分極達成時間定数は1790sと計算された。固体状態の信号は150(面積、任意単位/mmol 13C)であった。
実施例12b
DNP剤としてのトリチルラジカル存在下での1-13C-イタコネートジエチルエステルのDNP過分極
【0198】
1-13C イタコネートジエチルエステル(127.9mg、0.686mmol)を1.5mg(1μmol)ラジカル3と混合した。この調製物はイタコネートジエチルエステルについて5.6Mであった。該調製物は液体窒素中で急速凍結するとガラスを形成した。63.2mg(0.33mmol)のこの試料を、分極が完全に達成されるまで、超音波(93.900 GHz)照射下、3.35T磁場中1.2KのDNP条件下で過分極した。分極を300s毎に回収する小パルス角(5度)で固体状態でモニターした。分極達成時間定数は2120sと計算された。固体状態の信号は340(面積、任意単位/mmol 13C)であった。実施例12aに比べて、本実施例では、より高濃度の調製が可能であり、該イタコネートエチルエステルは2.3倍分極し、該イタコネートはより小さい分極達成時間定数を示した。