(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5758992
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】ルーフ装置
(51)【国際特許分類】
B60J 7/08 20060101AFI20150716BHJP
B60J 10/12 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
B60J7/08 D
B60J7/195
【請求項の数】14
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-515930(P2013-515930)
(86)(22)【出願日】2012年3月9日
(65)【公表番号】特表2013-529571(P2013-529571A)
(43)【公表日】2013年7月22日
(86)【国際出願番号】EP2012054136
(87)【国際公開番号】WO2012123368
(87)【国際公開日】20120920
【審査請求日】2012年12月19日
(31)【優先権主張番号】102011013818.8
(32)【優先日】2011年3月14日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506027147
【氏名又は名称】ヴェバスト ソシエタス エウロペア
【氏名又は名称原語表記】Webasto Societas Europaea
(74)【代理人】
【識別番号】100061745
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】トーマス シュレーフェール
【審査官】
岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−168778(JP,A)
【文献】
特開昭57−121925(JP,A)
【文献】
特開平03−224844(JP,A)
【文献】
特開2000−255267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 7/08
B60J 10/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ルーフ(5)内の開口を閉鎖するためのカバー(2)と、
カバーの縁部の領域において前記カバー(2)に接続された固締板(3)と
を含むルーフ装置(1)であって、
前記カバー(2)が前記車両ルーフ(5)に対して高さ調整可能である、ルーフ装置において、
前記車両ルーフ(5)に対して前記固締板(3)の少なくとも数箇所を密封するために前記固締板(3)に密封リップ(4)が発泡塗布され、
前記密封リップ(4)が、前記固締板(3)と合わせて、又は前記固締板(3)のスプレーコーティングと合わせて、溝路を形成することを特徴とするルーフ装置。
【請求項2】
車両ルーフ(5)内の開口を閉鎖するためのカバー(2)と、
カバーの縁部の領域において前記カバー(2)に接続された固締板(3)と
を含むルーフ装置(1)であって、
前記カバー(2)が前記車両ルーフ(5)に対して高さ調整可能である、ルーフ装置において、
前記車両ルーフ(5)に対して前記固締板(3)の少なくとも数箇所を密封するために前記固締板(3)に密封リップ(4)が発泡塗布され、
水出口の領域において、前記密封リップ(4)が前記車両ルーフ(5)に又は前記車両ルーフ(5)の枠に接触しており、前記水出口から離間する領域において前記密封リップ(4)と前記車両ルーフ(5)との間に間隙があることを特徴とするルーフ装置。
【請求項3】
前記密封リップ(4)が、前記カバー(2)の高さ調整用の装置(6)と前記カバー(2)の縁部との間に、いずれの場合も装置及び縁部から離間して配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載のルーフ装置。
【請求項4】
前記密封リップ(4)と前記カバー(2)の前記縁部との間に、前記固締板(3)の発泡コーティングのない領域(7)が設置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のルーフ装置。
【請求項5】
前記密封リップ(4)がポリウレタン材料製であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のルーフ装置。
【請求項6】
前記密封リップ(4)が第1領域(8)及び第2領域(9)を含み、前記第1領域(8)が前記固締板(3)に接続され、前記第2領域(9)が前記第1領域(8)に対して屈曲することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のルーフ装置。
【請求項7】
前記屈曲が、10°〜40°の間の角度を有することを特徴とする請求項6に記載のルーフ装置。
【請求項8】
前記第2領域(9)が、前記第1領域(8)よりも少ない厚さを呈することを特徴とする請求項6又は7に記載のルーフ装置。
【請求項9】
前記第2領域(9)の自由端領域が増肉部(10)を呈することを特徴とする請求項6,7又は8に記載のルーフ装置。
【請求項10】
前記密封リップ(4)の幅が10mm未満であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のルーフ装置。
【請求項11】
前記密封リップの高さが、20mm未満、好ましくは15mm未満であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のルーフ装置。
【請求項12】
前記車両ルーフ(5)が、前記カバー(2)へ続く縁部領域において屈曲した縁部を呈することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のルーフ装置。
【請求項13】
前記車両ルーフ(5)と前記カバー(2)との間に、シール、特に中空のチャンバシールが配置され、前記カバー(2)及び前記車両ルーフ(5)の表面の領域において、前記シールが、前記車両ルーフ(5)と前記カバー(2)との間の間隙を閉鎖することを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のルーフ装置。
【請求項14】
前記カバーがガラス要素により形成されることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載のルーフ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ルーフ内の開口を閉鎖するためのカバーと、カバーの縁部領域においてカバーに接続された固締板とを含むルーフ装置であって、カバーが車両ルーフに対して高さ調整可能である、ルーフ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種類のルーフ装置は、固定式のガラス要素をカバーとして使用してしばしば実施される。この場合、固定式のガラス要素は車両ルーフ内の開口に充填される。固定式のガラス要素の高さは、表面が車両ルーフの周囲の表面と精密に整列するように調整されねばならない。カバーと車両ルーフとの間は、シールにより閉鎖される、しかしこの手段によって決して完全には密封されない間隙がある。この理由で、カバーと車両ルーフとの間の間隙の真下の領域に普通、溝路が提供され、そこでは浸透する水が補集される。出口があるので、補集された水は溝路から流れ出ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明により取り組まれる問題は、カバーの車両ルーフへの特にコンパクトな固締を設計し、これによって、水が車両内部へ浸入するのを確実に防止するという問題である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この問題は、本発明によれば、車両ルーフに対して固締板の少なくとも数箇所を密封するために固締板に密封リップが発泡塗布されることを特徴とする、上で言及された種類のルーフ装置により解決される。
【0005】
本発明による密封リップは、車両ルーフに対して固締板を密封するのに必要な据付空間がほんの少しになるように、幅を非常に狭くして実現することができる。本発明によるルーフ装置の特に好ましい実施形態では、密封リップは、出口の近くの或る部分では車両ルーフに凭れる。これによって、中に水を容易に貯めることのできるこの領域内の溝路が、車両内部に対する良好なシールを呈することが可能である。対照的に、この種類のシールは、出口からより遠くに離れたところにある領域では断固として不可欠であるというものではない。そのような場合には、密封リップは溝路の側壁を形成する。
【0006】
密封リップが固締板に発泡塗布される特別な利点として、シールが挿入又は接着される場合のような非防水領域がないということがある。
【0007】
本発明の特に有利な実施形態において、密封リップはポリウレタン製であり、これは、カバーの縁部領域の周りに発泡体を塗布するのに使用されるものと同じ材料とすることができる。このようにして、カバー縁部及び固締板の発泡コーティング全体が、そして密封リップも、単一の製造ステップで製造される。「スプレーコーティング」及び「発泡コーティング」という用語は、使用されるプラスチックによって単に区別されるだけであるので、記載されている本発明の文脈では同義語として使用される。一方、本発明は異なるプラスチックと共に使用することができる。このことは両方の用語を使用できることを意味する。
【0008】
本発明の有利な展開において、密封リップは、固締板に発泡塗布される第1領域と、第1領域に対して屈曲した、好ましくは第1領域よりも少ない厚さを有する、隣接する第2領域とを呈する。このことは、密封リップが特に良好に車両ルーフに適用され、これによって、この領域における特に良好なシールが促進されることを意味する。本発明の更に有利な実施形態は従属請求項に示されている。
【0009】
本発明は、以下で例示的な実施形態の助けを借りて説明される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明によるルーフ装置を通る、出口の近くの断面図。
【
図2】本発明によるルーフ装置を通る、出口から離間した領域における断面図。
【
図3】本発明によるルーフ装置の例示的な第2の実施形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明によるルーフ装置を断面図で示しており、本発明に関係する、カバー2と車両ルーフ5との間の移行領域のみが示される。ガラスカバー2に固締板3が固着され、固締板3とカバー2との間の接続は、縁部領域の発泡コーティング11により達成される。
【0012】
この場合の発泡コーティング11は接着剤様に作用し、このことにより、これらの2つの部品間での確実な防水接続が保証される。
【0013】
固締板3は、今度は車両ルーフ5に接続されるが、接続は高さ調整用の装置6によってなされる。この目的でねじが提供され、このねじは、固締板3内の空所(穴)を通して導かれ、その後、車両ルーフ5の枠にねじ込まれる。ねじを操作することにより、ガラスカバー2の高さを車両ルーフ5に対して非常に正確に調整することができる。ガラスカバー2と車両ルーフ5との間の間隙はシール12により閉鎖される。シール12は特に、汚れが間隙を通って内部へ進入できないようにする。一方、シールは、カバー2を車両ルーフ5に対して完全に防水のやり方で密封するのには適していない。
【0014】
浸透する水を補集するために、カバー2と車両ルーフ5との間の間隙の真下に溝路が形成される。
図1の例示的な実施形態において、溝路は、固締板3と、固締板3に発泡塗布される密封リップ4との間の相互作用により形成される。発泡塗布の間、又はスプレー塗布の間も、固締シート3上に射出成形物が装着され、この射出成形物はキャビティを呈するが、キャビティは、後に軟性のプラスチック材料で充填される。いったんプラスチック材料が硬化すると射出成形物は除去され、
図1の例では、密封リップ4が、そして発泡コーティング11もそのまま残される。
【0015】
通常、比較的にほんの少量の水が間隙を溝路へと通過するが、水は溝路から除去されねばならない。一方、浸透した水は出口の近くで補集されるので、いわゆるこの撥ね水は、比較的高いレベルまで溝路に充填することができる。従って、出口から開始して200〜300mm以上延びることのあるこの領域において、密封リップ4は車両ルーフ5と同程度に遠いところまで連続する。従って、溝路はこの領域において閉鎖チャネルを形成する。
【0016】
特に良好な密封特性を達成するために、密封リップ4は第1領域8及び第2領域9を含む。第1領域8は、固締板3に発泡塗布され、第2領域9内に続く。第2領域9は、第1領域8に対して屈曲しており、好ましくは第1領域の直線延長部に対して10°〜40°の範囲で屈曲している。更に、第2領域9の材料厚は、第1領域8における材料厚よりも少ない。これによって、密封リップ4の第1領域及び第2領域について同じ材料を使用できることが達成される。ただし、第2領域ではより大きい弾性が求められる。第2領域9の自由端領域に、ビード様の増肉部10が提供される。このことは、第2領域9の構成を、任意の摩滅なしに比較的薄くできることを意味する。
【0017】
この例示的な実施形態において、出口から200〜300mm以上離れた領域では、
図2に表されるように、密封リップ4がより短く構成される。この領域において密封リップの第2領域9は事実上、なしで済まされ、ビード形の増肉部のみが残り、この増肉部が密封リップの自由端を密封する。このことにより、密封リップ4と車両ルーフとの間に間隙が生成されるので、理論上、固締板3及び密封リップ4により形成される溝路は溢れることがあり、そして車両の内部に水が入り込むことがある。しかし、発生する大量の水が即座に出口に排出されることから、このことは実際には問題にならない。更に、固締板3と車両ルーフ5との間の重なり部分が比較的大きいので、カバー2と車両ルーフ5との間の間隙から入った水が密封リップ4を介して直に車両内部に滴り又は飛沫となって出ることはない。車両ルーフ5の、カバー2へ続く縁部領域の屈曲部分も、水が密封リップ4を乗り越えられないようにするのであり、密封リップはこの領域では単に溝壁を形成するのみである。
【0018】
出口から離間した領域で密封リップ4が車両ルーフ5まですっかり連続しているのではないという方策は、幾つかの利点を有する。主な利点として、固締板3の、車両ルーフ5への接触圧を比較的低くできるということがある。対抗圧力は、出口の領域において、密封リップ4の第2領域9により生成されるのみである。一方、カバー縁部の他の領域に接触圧は不要であり、このことは、高さ調整用の装置6が、カバー及び固締板の重量が掛かるのを遮るだけでよいことを意味する。この理由で、装置及び固締板3は、比較的薄い、従って軽量で手頃な価格の材料から作製することができる。
【0019】
図3に、本発明によるルーフ装置の、修正された実施形態を示す。
図1及び
図2の事例では、密封リップ4とカバー2の縁部との間の領域は発泡被覆されなかったが、
図3では、部分的な発泡コーティングが提供されている。この事例における発泡コーティングは、溝路の内側で密封リップ4から連続的に、カバー縁部の発泡コーティング11まで生成される。