特許第5759027号(P5759027)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5759027
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】杭圧入機
(51)【国際特許分類】
   E02D 7/20 20060101AFI20150716BHJP
   E02D 13/00 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
   E02D7/20
   E02D13/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-4982(P2014-4982)
(22)【出願日】2014年1月15日
(65)【公開番号】特開2015-132132(P2015-132132A)
(43)【公開日】2015年7月23日
【審査請求日】2014年5月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141521
【氏名又は名称】株式会社技研製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】北村 精男
(72)【発明者】
【氏名】田内 宏明
(72)【発明者】
【氏名】池田 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】掛水 翔太
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−350482(JP,A)
【文献】 特許第2826342(JP,B2)
【文献】 特開2000−2071(JP,A)
【文献】 実開昭58−50139(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 7/00〜13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼矢板とオーガ装置を地中に圧入する杭圧入機であって、
当該杭圧入機は、前記鋼矢板と前記オーガ装置のオーガケーシングを保持するチャック装置を備え、
前記チャック装置は、
前記鋼矢板の両側に設けられた鈎状の継手の内面に当接する第一爪部と、前記継手の外面に当接する第二爪部と、前記第一爪部と前記第二爪部とで前記継手を挟んだ状態で、前記第一爪部と前記第二爪部の少なくとも一方を他方に向けて移動させる爪移動部と、を有するパイルチャック部と、
前記オーガケーシングを掴むケーシングチャック部と、
を備えたことを特徴とする杭圧入機。
【請求項2】
前記第一爪部は、前記チャック装置が保持する前記鋼矢板の継手の位置形状に応じて、その向きを変更可能に備えられていることを特徴とする請求項1に記載の杭圧入機。
【請求項3】
前記パイルチャック部は、前記チャック装置が保持する前記鋼矢板の継手の位置に応じて、前記鋼矢板の長手方向と交差する方向に移動可能に備えられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の杭圧入機。
【請求項4】
前記ケーシングチャック部を、前記鋼矢板の圧入方向に進退させる移動手段を備えたことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の杭圧入機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭圧入機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、杭を地盤に打ち込んで埋設する装置として、既設の杭から反力を取って杭を地中に圧入する杭圧入機が知られている。
杭圧入機は、機械本体の下部に設けられ、既設の杭を掴むクランプ装置と、機械本体の前端部に設けられ、既設の杭に隣接した位置に圧入する杭を挟んで保持するチャック装置とを備えている。この杭圧入機は、クランプ装置で既設杭の上端側を掴み、その既設杭から反力を取った状態で、杭を把持するチャック装置を降下させるようにして、杭を地中に圧入するようになっている。
【0003】
この杭圧入機を用い、硬質地盤に対して杭(鋼矢板)の圧入施工を行う場合にオーガ装置を併用することがある。その際にオーガ装置のオーガケーシングをチャック装置で把持するために、チャック装置はケーシングチャックを備えている。
そして、非常に硬い岩盤などの硬質地盤に対する場合に地盤の抵抗力をなるべく小さくするため、鋼矢板の幅方向の両端に設けられた継手のほぼ平らな部分を把持することで、鋼矢板の凹部に対して目一杯の大きさのオーガケーシングを使用可能としたチャック装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−350482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、様々な種類の鋼矢板の凹部に対して目一杯の大きさのオーガケーシングを使用して、地盤の抵抗力をなるべく小さくすることが求められるが、U形鋼矢板等、幅方向の両端の継手に平らな部分を有しない鋼矢板については、オーガケーシングとは別に独立して鋼矢板を把持することができないという問題が生じる。
【0006】
本発明の目的は、オーガ装置を併用する際に、鋼矢板を好適に把持することができる杭圧入機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
鋼矢板とオーガ装置を地中に圧入する杭圧入機であって、
当該杭圧入機は、前記鋼矢板と前記オーガ装置のオーガケーシングを保持するチャック装置を備え、
前記チャック装置は、
前記鋼矢板の両側に設けられた鈎状の継手の内面に当接する第一爪部と、前記継手の外面に当接する第二爪部と、前記第一爪部と前記第二爪部とで前記継手を挟んだ状態で、前記第一爪部と前記第二爪部の少なくとも一方を他方に向けて移動させる爪移動部と、を有するパイルチャック部と、
前記オーガケーシングを掴むケーシングチャック部と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の杭圧入機において、
前記第一爪部は、前記チャック装置が保持する前記鋼矢板の継手の位置形状に応じて、その向きを変更可能に備えられていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の杭圧入機において、
前記パイルチャック部は、前記チャック装置が保持する前記鋼矢板の継手の位置に応じて、前記鋼矢板の長手方向と交差する方向に移動可能に備えられていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の杭圧入機において、
前記ケーシングチャック部を、前記鋼矢板の圧入方向に進退させる移動手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、オーガ装置を併用した杭圧入機を用いて鋼矢板を地中に圧入する過程で、鋼矢板を好適に保持することができるので、オーガ併用工法による杭圧入施工を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態の杭圧入機を側方視して示す概略図である。
図2】本実施形態のチャック装置を正面視して示す縦断面図である。
図3図2のIII−III線における断面図である。
図4】本実施形態のパイルチャック部が鋼矢板を掴んだ状態を示す説明図である。
図5】パイルチャック部が図4とは異なる形状の鋼矢板を掴んだ状態を示す説明図である。
図6】パイルチャック部の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明に係る杭圧入機の実施形態について詳細に説明する。
【0014】
杭圧入機10は、図1に示すように、鋼矢板Pをチャック装置15で掴んで地中に圧入する機械であり、既に地中に埋設された既設の鋼矢板P(既設杭P)の上端側を掴んで支持する複数のクランプ装置11…を備えたサドル12と、サドル12に対して前後動可能なスライドベース13と、スライドベース13上で左右に旋回可能なリーダーマスト14と、リーダーマスト14の前面に昇降可能に取り付けられたチャック装置15と、リーダーマスト14に対してチャック装置15を昇降駆動するメイン油圧シリンダ16等を備えている。
【0015】
この杭圧入機10は、硬質地盤に対して鋼矢板Pの圧入施工を行う場合にオーガ装置20を併用することができる。本実施形態では、杭圧入機10がオーガ併用工法による杭圧入施工を行うように、チャック装置15にオーガ装置20が挿通されている。つまり、杭圧入機10は、鋼矢板Pとオーガ装置20を地中に圧入する圧入装置として機能する。
オーガ装置20は、その先端部にオーガヘッドHを交換可能に備えるオーガスクリューSと、オーガスクリューSの周囲を覆う略円筒状のオーガケーシングKと、オーガスクリューSを回転させる駆動モーターM等を備えて構成されている(図1参照)。なお、オーガ装置20の構成や動作は従来公知のものと同様であるので、ここでは詳述しない。
【0016】
鋼矢板Pは、図3図4に示すように、例えばU形鋼矢板であり、矢板本体の両側に一対の継手Jが設けられている。
鋼矢板Pの継手Jは、その先端側を矢板本体に向けて屈曲した鈎状に形成されている。
【0017】
クランプ装置11は、サドル12の下面に設けられている。このクランプ装置11は、例えば、先に圧入された既設の鋼矢板Pの上端側を挟んだ状態で、図示しない油圧シリンダの駆動によりその鋼矢板Pの上端部を挟持して掴むことができる。つまり、クランプ装置11は、既設杭Pを掴むことで杭圧入機10を既設杭Pの上端部に固定する固定手段として機能する。
特に、クランプ装置11は、掴んで支持した既設の鋼矢板Pから反力を取って、杭圧入機10が新たに鋼矢板Pを圧入したり、埋設されている鋼矢板Pを引き抜いたりすることができるように、杭圧入機10を既設杭Pの上端部に固定し設置するようになっている。
なお、クランプ装置11が備える固定クランプ爪と可動クランプ爪とからなるクランプ爪や、可動クランプ爪を駆動させる油圧シリンダの構成や、クランプ爪が鋼矢板Pを掴む動作は周知であるので、ここでは詳述しない。
【0018】
スライドベース13は、サドル12に対し前方に移動して、リーダーマスト14とともにチャック装置15を水平に前側に移動させることにより、サドル12を移動することなく、先頭のクランプ装置11が支持している既設の鋼矢板Pの先に、新たな2本の鋼矢板を前後方向に並べて順次圧入することを可能にする。
【0019】
リーダーマスト14は、スライドベース13と一体的に前後に移動する。
また、リーダーマスト14は、スライドベース13に対し左右に旋回してチャック装置15の向きを変えることにより、順次並んで圧入される杭の列の方向を直角に曲げたり、湾曲して曲げたりすることが可能となっている。
【0020】
チャック装置15は、その背面側がリーダーマスト14の前面側に昇降可能に嵌合した状態とされるとともに、リーダーマスト14とチャック装置15に接続されたメイン油圧シリンダ16により昇降駆動されるようになっている。
このチャック装置15の内部には、図2に示すように、オーガ装置20のオーガケーシングKを掴むケーシングチャック部1と、鋼矢板Pを掴むパイルチャック部2と、オーガケーシングKおよび鋼矢板Pを掴むサブチャック部3とが設けられている。つまり、チャック装置15は、ケーシングチャック部1とパイルチャック部2とサブチャック部3とを備えて構成されている。なお、図2図5において、オーガケーシングK内のオーガスクリューSの図示は省略している。
【0021】
ケーシングチャック部1は、図2図3に示すように、オーガケーシングKの外周面に当接する爪部1aと、爪部1aを進退させる爪駆動部1bと、オーガケーシングKの外周面に沿わせて配置可能なバンド1cと、バンド1cを移動させるバンド駆動部1dとを備えている。また、チャック装置15内で、ケーシングチャック部1を鋼矢板Pの長手方向に沿って昇降させる油圧シリンダ1eが設けられている。
【0022】
爪部1aは、爪駆動部1bによってオーガケーシングKに向けて押し出されて、オーガケーシングKの外周面に押し付けられるように当接する。この爪部1aがオーガケーシングKに当接する面は、オーガケーシングKの円筒状の外周面と略同じ曲率の曲面に形成されている。また、その曲面には複数の凹凸が設けられておりカーブ状の歯部となっている。
爪駆動部1bは、例えば、油圧シリンダであり、爪部1aを進退移動させる駆動部として機能する。なお、爪駆動部1bは、油圧シリンダを用いることに限らず、例えば、モーター駆動によって爪部1aを進退移動させる駆動部であってもよい。また、ケーシングチャック部本体に螺着された爪部1aをオーガケーシングに向けて螺進させる万力のような構成を備えるものであってもよい。
【0023】
バンド1cは、例えば、強化繊維や樹脂、皮革などからなる帯状部材であり、その両端がバンド駆動部1dに固定されている。このバンド1cは、オーガケーシングKの外周面に密着するように変形可能な柔軟性と、強力な引張りにも耐え得る耐破断性を兼ね備えている。
バンド駆動部1dは、バンド1cを爪部1a側に引き寄せるように移動させる駆動部として機能する。
【0024】
そして、図3に示すように、オーガケーシングKにおける爪部1aが当接する面とは反対側の外周面にバンド1cを沿わせて配置し、爪部1aとバンド1cとでオーガケーシングKを挟んだ状態で、バンド駆動部1dがバンド1cを爪部1a側に引き寄せることで、オーガケーシングKを爪部1aに引き付けることができる。
つまり、チャック装置15にオーガケーシングKが上下に貫通するように配され、爪部1aとバンド1cとでオーガケーシングKを挟んだ状態で、爪部1aとバンド1cの少なくとも一方を他方に向けて移動させることで、ケーシングチャック部1がオーガケーシングKを把持するようになっている。
【0025】
また、爪部1aとバンド1cとでオーガケーシングKを挟んで、そのオーガケーシングKを把持しているケーシングチャック部1を油圧シリンダ1eが昇降させることで、オーガケーシングKを鋼矢板Pの長手方向であって、鋼矢板Pの圧入方向に進退させることができる。つまり、油圧シリンダ1eは、ケーシングチャック部1を鋼矢板Pの圧入方向に進退させる移動手段として機能する。
そして、オーガケーシングKを把持しているケーシングチャック部1を油圧シリンダ1eが昇降させることで、オーガケーシングKを鋼矢板Pよりも先行させて下降させたり、鋼矢板Pに対しオーガケーシングKを上下動させたりすることができ、鋼矢板Pの圧入に際して硬質地盤を先行掘削することが可能になる。
【0026】
パイルチャック部2は、図2図4に示すように、鋼矢板Pの両側に設けられた鈎状の継手Jの内面に当接する第一爪部2aと、継手Jの外面に当接する第二爪部2bと、第一爪部2aと第二爪部2bが配設されているパイルチャック本体2c等を備えている。
パイルチャック本体2cは、チャック装置15の内側の基部2dに取り付けられており、その基部2dはパイルチャック本体2cを鋼矢板Pの長手方向と交差する方向(直交する方向)に移動可能に支持している。また、パイルチャック本体2cには、第一爪部2aと第二爪部2bとで継手Jを挟んだ状態で、第二爪部2bを第一爪部2aに向けて移動させる爪移動部2eが備えられている。
このパイルチャック部2を構成する第一爪部2a、第二爪部2b、パイルチャック本体2c、爪移動部2eは、鋼矢板Pの両側の継手Jに対応して2組設けられている。
【0027】
第一爪部2aは、その向きを変更可能にパイルチャック本体2cに軸支されており、製造基準の公差内でのバラつきや、使用環境や保管環境等の外部要因に基づく継手部の変形により、誤差の存在する鋼矢板Pの継手Jの位置形状に応じて、その先端側が継手J内に収まるように回動して向きを切り替えることができるようになっている。
この第一爪部2aの先端側は、屈曲した形状を有しており、鋼矢板Pの継手Jと係合しやすくなっている
【0028】
第二爪部2bは、爪移動部2eの駆動により作動して第一爪部2a側に移動可能となっている。
爪移動部2eは、例えば、油圧シリンダであり、第二爪部2bを進退移動させる機能を有している。
つまり、第一爪部2aと第二爪部2bとで鋼矢板Pの継手Jを挟んだ状態で、第二爪部2bを第一爪部2aに向けて移動させることで、第一爪部2aと第二爪部2bとで継手Jを挟持することができ、パイルチャック部2で鋼矢板Pを掴むことができる。
【0029】
パイルチャック本体2cは、チャック装置15の内側に固設されている基部2dに嵌合した状態とされるとともに、パイルチャック本体2cと基部2dに設けられた図示しないスライド移動機構により、鋼矢板Pの長手方向と交差する方向にスライド移動されるようになっている。
【0030】
そして、図4に示す鋼矢板Pよりもフランジ部が長い形状の鋼矢板Pを使用する場合、例えば、図5に示すように、チャック装置15が保持する鋼矢板Pの継手Jの位置に応じて、パイルチャック本体2cを図中、下方に移動させることで、第一爪部2aと第二爪部2bとで継手Jを挟持することが可能になる。また、図4に示す鋼矢板Pよりもフランジ部が短い形状の鋼矢板Pを使用する場合、チャック装置15が保持する鋼矢板Pの継手Jの位置に応じて、パイルチャック本体2cを図中、上方に移動させることで、第一爪部2aと第二爪部2bとで継手Jを挟持することが可能になる。
このように、パイルチャック部2は、チャック装置15が保持する鋼矢板Pの継手Jの位置に応じて、鋼矢板Pの長手方向と交差する方向(直交する方向)に移動可能に備えられている。そして、パイルチャック本体2cを鋼矢板Pの長手方向と交差する方向にスライド移動させることで、パイルチャック部2で異なる形状の鋼矢板Pを掴むことが可能になる。
つまり、パイルチャック本体2cと基部2dとが、パイルチャック部2を鋼矢板Pの長手方向と交差する方向に移動させる配置切替手段として機能する。
【0031】
サブチャック部3は、図2に示すように、対向して配置された可動爪3aと固定爪3bを備えている。
可動爪3aは、図示しないシリンダの駆動により作動して固定爪3b側に移動可能となっている。また、固定爪3bがオーガケーシングKに当接する面は、オーガケーシングKの円筒状の外周面と略同じ曲率の曲面に形成されており、その曲面は複数の凹凸が設けられたカーブ状の歯部となっている。
そして、チャック装置15にオーガケーシングKと鋼矢板Pが上下に貫通するように配された状態でサブチャック部3を作動させ、サブチャック部3の可動爪3aをオーガケーシングKおよび鋼矢板Pに向けて押し出すことで、可動爪3aとオーガケーシングKの間に鋼矢板Pを挟み込み、チャック装置15でオーガケーシングKと鋼矢板Pを把持することができる。
例えば、ケーシングチャック部1がオーガケーシングKを把持していない状態や、パイルチャック部2が鋼矢板Pを把持していない状態で、このサブチャック部3を作動させて、チャック装置15でオーガケーシングKと鋼矢板Pを保持することができる。
また、チャック装置15に鋼矢板Pが挿通されていない状態において、サブチャック部3は、チャック装置15に挿通されたオーガケーシングKを可動爪3aと固定爪3bとで掴むことが可能になっている。
なお、オーガケーシングKを掴んでいるケーシングチャック部1を油圧シリンダ1eの駆動によって上下動させるときには、サブチャック部3は作動させていない。
【0032】
そして、チャック装置15が把持した鋼矢板PやオーガケーシングK(オーガ装置)を地中に圧入する際、チャック装置15の昇降範囲は限られているので、鋼矢板PやオーガケーシングKを把持してチャック装置15を下降させることと、鋼矢板PやオーガケーシングKを離してチャック装置15を上昇させることを繰り返すようになっている。これにより、チャック装置15が昇降する1ストローク分ずつ鋼矢板PおよびオーガケーシングKを圧入することが繰り返され、チャック装置15の昇降範囲より深く鋼矢板PやオーガケーシングKを地中に圧入することが可能になっている。
【0033】
上記した杭圧入機10は、既設杭P(既設の鋼矢板P)の先に新たな鋼矢板Pをチャック装置15で圧入する動作と、クランプ装置11による既設杭Pの上端部の挟持と解除の動作と、サドル12に対するスライドベース13の前後動の動作と、を組み合わせることで、既設杭Pからなる杭列上を自走し移動することができる。
なお、杭圧入機10が杭列上を自走する動作は周知であるので、ここでは詳述しない。
【0034】
以上のように、本実施形態の杭圧入機10のチャック装置15は、オーガケーシングKを掴むことができるケーシングチャック部1と、鋼矢板Pを掴むことができるパイルチャック部2を備えている。
そして、オーガケーシングKを掴んでいるケーシングチャック部1を油圧シリンダ1eの駆動によって上下動させることができるので、鋼矢板Pを圧入する過程で、オーガケーシングKを鋼矢板Pよりも先行させて下降させたり、鋼矢板Pに対しオーガケーシングKを上下動させたりすることで、硬質地盤を先行掘削することができる。
【0035】
特に、パイルチャック部2は、鋼矢板Pの両側に設けられた継手J内に第一爪部2aを係入し、継手Jと第一爪部2aとが係合した状態で第一爪部2aと第二爪部2bとで継手Jを挟んで鋼矢板Pを掴むことができるので、チャック装置15に挿通された鋼矢板Pをしっかりと保持することができる。
つまり、このパイルチャック部2は、幅方向両側の継手Jに平らな部分を有しない鋼矢板Pであってもしっかりと把持することができるので、鋼矢板Pの凹部に対して目一杯の大きさのオーガケーシングKを使用することができる。
そして、チャック装置15に挿通された鋼矢板Pをパイルチャック部2が単体で強固に保持していることで、ケーシングチャック部1がオーガケーシングKを上下動させる際に、鋼矢板Pの配置がずれてオーガケーシングKの妨げになることはないので、オーガケーシングK(オーガ装置20)による硬質地盤の先行掘削を良好に行うことができる。
【0036】
このように、本実施形態のケーシングチャック部1とパイルチャック部2とを備えたチャック装置15を有する杭圧入機10であれば、オーガ装置20を併用して鋼矢板Pを地中に圧入する過程で鋼矢板Pを好適に把持することができるので、杭圧入機10でオーガ併用工法による杭圧入施工を良好に行うことが可能になる。
【0037】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。
例えば、図6に示すように、パイルチャック部2は、鋼矢板Pの両側に設けられた鈎状の継手Jの内面に当接する第一爪部2aと、継手Jの外面に当接する第二爪部2bと、第一爪部2aと第二爪部2bとで継手Jを挟んだ状態で、第一爪部2aを第二爪部2bに向けて移動させる爪移動部2fを備える構成であってもよい。
つまり、パイルチャック部2は、第一爪部2aと第二爪部2bとで継手Jを挟んだ状態で、第一爪部2aと第二爪部2bの少なくとも一方を他方に向けて移動させる爪移動部(2e,2f)を有することで、第一爪部2aと第二爪部2bとで継手Jを挟持して鋼矢板Pを好適に掴むことができるようになっている。
【0038】
なお、本発明の適用は上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 ケーシングチャック部
1a 爪部
1b 爪駆動部
1c バンド
1d バンド駆動部
1e 油圧シリンダ(移動手段)
2 パイルチャック部
2a 第一爪部
2b 第二爪部
2c パイルチャック本体
2d 基部
2e 爪移動部
2f 爪移動部
3 サブチャック部
10 杭圧入装置
15 チャック装置
20 オーガ装置
K オーガケーシング
P 杭
J 継手
図1
図2
図3
図4
図5
図6