【実施例1】
【0025】
図1はIPS方式の液晶表示装置の表示領域における構造を示す断面図である。
図1の構造は、現在広く使用されている構造であって、簡単に言えば、平面ベタで形成された対向電極108の上に絶縁膜109を挟んで櫛歯状の画素電極110が形成されている。そして、画素電極110と対向電極108の間の電圧によって液晶分子301を回転させることによって画素毎に液晶層300の光の透過率を制御することにより画像を形成するものである。
【0026】
図1において、ガラスで形成されるTFT基板100の上に、ゲート電極101が形成されている。ゲート電極101は走査線と同層で形成されている。ゲート電極101はAlNd合金の上にMoCr合金が積層されている。
【0027】
ゲート電極101を覆ってゲート絶縁膜102がSiNによって形成されている。ゲート絶縁膜102の上に、ゲート電極101と対向する位置に半導体層103がa−Si膜によって形成されている。a−Si膜はTFTのチャネル部を形成するが、チャネル部を挟んでa−Si膜上にドレイン電極104とソース電極105が形成される。なお、a−Si膜とドレイン電極104あるいはソース電極105との間には図示しないn+Si層が形成される。半導体層とドレイン電極104あるいはソース電極105とのオーミックコンタクトを取るためである。
【0028】
ドレイン電極104は映像信号線が兼用し、ソース電極105は画素電極110と接続される。ドレイン電極104もソース電極105も同層で同時に形成される。本実施例では、ドレイン電極104あるいはソース電極105はMoCr合金で形成される。ドレイン電極104あるいはソース電極105の電気抵抗を下げたい場合は、例えば、AlNd合金をMoCr合金でサンドイッチした電極構造が用いられる。
【0029】
TFTを覆って無機パッシベーション膜106がSiNによって形成される。無機パッシベーション膜106はTFTの、特にチャネル部を不純物401から保護する。無機パッシベーション膜106の上には有機パッシベーション膜107が形成される。有機パッシベーション膜107はTFTの保護と同時に表面を平坦化する役割も有するので、厚く形成される。厚さは1μmから4μmである。
【0030】
有機パッシベーション膜107の上には対向電極108が形成される。対向電極108は透明導電膜であるITO(Indium Tin Oxide)を表示領域全体にスパッタリングすることによって形成される。すなわち、対向電極108は面状に形成される。対向電極108を全面にスパッタリングによって形成した後、画素電極110とソース電極105を導通するためのスルーホール111部だけは対向電極108をエッチングによって除去する。
【0031】
対向電極108を覆って層間絶縁膜109がSiNによって形成される。層間絶縁膜109が形成された後、エッチングによってスルーホール111を形成する。この層間絶縁膜109をレジストにして無機パッシベーション膜106をエッチングしてスルーホール111を形成する。その後、層間絶縁膜109およびスルーホール111を覆って画素電極110となるITOをスパッタリングによって形成する。スパッタリングしたITOをパターニングして画素電極110を形成する。画素電極110となるITOはスルーホール111にも被着される。スルーホール111において、TFTから延在してきたソース電極105と画素電極110が導通し、映像信号が画素電極110に供給されることになる。
【0032】
図2に画素電極110の1例を示す。画素電極110は、櫛歯状の電極である。画素電極110の両側には映像信号線1041が存在している。櫛歯と櫛歯の間にスリット112が形成されている。画素電極110の下方には、平面状の対向電極108が形成されている。画素電極110に映像信号が印加されると、スリット112を通して対向電極108との間に生ずる電気力線によって液晶分子301が回転する。これによって液晶層300を通過する光を制御して画像を形成する。
【0033】
図2において、画素電極110はTFTのソース電極105とスルーホール111を介して接続している。ソース電極105と画素電極110はオーバーラップしている。ソース電極105は金属で形成されているので、ソース電極105と画素電極110がオーバーラップしている部分では画素電極110の上に形成される配向膜113にはバックライトの光は照射されない。配向膜113は光導電特性を有しているので、ソース電極105とオーバーラップした部分では、しない部分に比較して配向膜113の抵抗が高くなる。
【0034】
画素電極110の上には液晶分子301を配向させるための配向膜113が形成されている。本発明においては、配向膜113は、液晶層300と接する光配向膜1131と、光配向膜1131の下層に形成される低抵配向膜1132の2層構造となっている。配向膜の113の構成については、後で詳細に説明する。
【0035】
図1において、液晶層300を挟んで対向基板200が設置されている。対向基板200の内側には、カラーフィルタ201が形成されている。カラーフィルタ201は画素毎に、赤、緑、青のカラーフィルタ201が形成されており、カラー画像が形成される。カラーフィルタ201とカラーフィルタ201の間にはブラックマトリクス202が形成され、画像のコントラストを向上させている。なお、ブラックマトリクス202はTFTの遮光膜としての役割も有し、TFTに光電流が流れることを防止している。
【0036】
カラーフィルタ201およびブラックマトリクス202を覆ってオーバーコート膜203が形成されている。カラーフィルタ201およびブラックマトリクス202の表面は凹凸となっているために、オーバーコート膜203によって表面を平らにしている。
【0037】
オーバーコート膜203の上には、液晶の初期配向を決めるための配向膜113が形成されている。対向基板側の配向膜113もTFT基板側の配向膜113と同様に、液晶層300と接する光配向膜1131と、光配向膜1131の下層に形成される低抵抗配向膜1132の2層構造となっている。対向基板200の外側には液晶パネル内部の電位を安定化するために、外部導電膜210が形成され、この外部導電膜210に所定の電圧を印加している。
【0038】
図3は本発明による配向膜113を示す模式図である。
図3において、配向膜113は画素電極110の上に形成され、光配向膜113である上層配向膜1131と、上層配向膜1131よりも抵抗が低い下層配向膜1132から形成されている。
【0039】
上層配向膜1131は光配向性の優れたポリアミド酸エステルを前駆体とするポリイミドで形成されている。化学式(1)は光配向性の優れたポリアミド酸エステルの構造式である。
【0040】
【化1】
【0041】
化学式(1)において、R1は、それぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基であり、R2は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、フェニル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ビニル基(−(CH2)m−CH=CH2,m=0,1,2)又はアセチル基(−(CH2)m−C≡CH,m=0,1,2)であり、Arは芳香族化合物である。
【0042】
光配向性の優れたポリアミド酸エステルは光分解性の部位を有しており、このポリアミド酸エステルを前駆体とするポリイミドに偏光された紫外線を照射すると、紫外線の偏光方向に平行なポリイミドの光分解性部位が分解され、配向膜が一軸異方性を持つようになる。このようにして形成された光配向膜は、プレティルト角がほとんどゼロである。ただし、配向膜の表面のプレティルトを測定すると、−0.1度から+0.1度程度の数値が出るが、この程度はプレティルト角がゼロであると考えて良い。特にIPS方式においては、配向膜のプレティルトをゼロに出来れば、液晶分子による光制御を効率的に行うことが出来る。
【0043】
このように、ポリアミド酸エステルを前駆体とするポリイミドからなる配向膜1131は光配向には優れた特性を示すが、電気抵抗が高く、DC残像を早期に消滅させることは難しい。そこで、本発明による配向膜では、電気抵抗をより低くすることが出来るポリアミド酸を前駆体とするポリイミドを下層配向膜1132として使用する。
【0044】
このポリアミド酸を前駆体とするポリイミドからなる配向膜は、通常光導電特性を有し、光が照射されると電気抵抗が低くなる。光導電特性は、配向膜にチャージした電荷を早く逃がすことが出来るので、DC残像を早期に消失させるためには有利である。しかし、光導電特性効果によって、光が照射された部分と照射されない部分における配向膜の電気抵抗の差が大きく異なると、先に説明したような、第2のDC残像が生ずる。
【0045】
したがって、第2のDC残像の発生を防止するには、ポリアミド酸を前駆体とするポリイミドによって形成された下層配向膜1132の光導電特性は小さいほうが良い。つまり、本発明では、下層配向膜1132の電気抵抗は上層配向膜1131の電気抵抗よりは低いほうがよいが、下層配向膜1132の光導電特性も同時に小さいほうが良い。
【0046】
光導電特性は、照射されるバックライトからの光の強度すなわち、輝度依存性がある。例えば、輝度が10000cd/m
2の光を照射した場合の電気抵抗のほうが、輝度が1000cd/m
2の光を照射した場合の電気抵抗よりも低くなる。本発明では、1000cd/m
2の光を照射した場合の配向膜の電気抵抗と、10000cd/m
2の光を照射した場合の配向膜の電気抵抗の比が所定の値以下であることを必要とする。
【0047】
これを具体的に規定するために、DC輝度緩和時定数なるパラメータを導入する。DC輝度緩和時定数は例えば、
図4に示すような等価回路を基準に求めることが出来る。
図4は
図1に示す液晶パネルの部分断面図である。
図4のTFT基板100側において、有機パッシベーション膜107の上に対向電極108が形成され、その上に層間絶縁膜109を介して画素電極110が形成されている。画素電極110および層間絶縁膜109を覆って配向膜113が形成されている。また、対向基板200におけるオーバーコート膜203の上に配向膜113が形成され、配向膜113と配向膜113の間に液晶層が存在している。
【0048】
図4において、スイッチをONし、画素電極110と対向電極108の間に電圧を印加すると、
図4の矢印で示すような電気力線が発生する。この電気力線によって液晶分子が回転し、液晶層300を通過する光の量が制御される。画素電極110から対向電極108にいたるまでの電界に沿って、
図4に示すような等価回路が形成されていると考えることが出来る。なお、
図4に示す等価回路と
図17に示す等価回路は異なるモデルによるものである。
【0049】
図4において、画素電極110からの電荷は、配向膜113、液晶層300、層間絶縁膜109を直列に移動して対向電極108に達すると考えることが出来る。各層は容量と抵抗の並列回路である。画素電極にDC電圧を印加すると、まず、各層の容量に応じてDC電圧が分割され、各層の表面に発生する。この場合、液晶の容量CLは他の容量、つまり、配向膜の容量CA、層間絶縁膜の容量CIに比べて小さい。そうすると、DC電圧を加えた瞬間は液晶層に大きな電圧が印加される。したがって、液晶パネルがノーマリブラックであれば、画面は明るくなる。
【0050】
一方、各層にはリーク抵抗が存在するので、時間が経つにしたがって、各層の電位は配向膜113のリーク抵抗RA、液晶層のリーク抵抗RL、層間絶縁膜109のリーク抵抗CIによって決まる電位に集束する。つまり、液晶層300に印加される電圧は徐々に小さくなる。したがって、液晶パネルがノーマリブラックであれば、DC電圧を印加した瞬間は輝度が高くなり、その後、徐々に輝度が低下しつつ一定の明るさに近づく。
【0051】
この様子を
図5に示す。
図5において、横軸は時間t、縦軸は液晶表示装置の輝度である。すなわち、時間0において、
図4に示す画素電極と対向電極との間にDC電圧を印加すると、液晶分子が回転して、バックライトからの光が透過して液晶表示装置における輝度が上昇する。
【0052】
図4の回路において説明したように、DC電圧を印加した直後は、配向膜113、液晶層300、層間絶縁膜109等の各要素の容量に応じてDC電圧が分割されるので、液晶に印加される電圧が大きい。したがって、その時点での液晶表示装置の輝度は高く、例えば、
図5におけるB1である。しかし、各要素に印加される電圧は、除々に各要素のリーク抵抗によって決まる電圧に落ち着き、最終的には、輝度は
図5に示すB2になる。
図5に示す過度現象において、輝度B1からB2に至る時定数がDC輝度緩和時定数Tである。すなわち、
図5における輝度の変化をコンデンサの放電として近似した場合、時定数Tは、初期の輝度B1から、B2+(B1−B2)×0.368になる場合の時間と定義する。ここで、0.368=1/eである。
【0053】
DC輝度緩和時定数Tは、
図4に示すように、各要素のリーク抵抗の大きさによって変化する。配向膜には光導電性があるので、光導電性を生じさせ易い光が照射された場合と、光導電性を生じさせにくい光が照射された場合とでは、配向膜のリーク抵抗が異なり、DC輝度緩和時定数Tも異なる。
【0054】
光導電性は高輝度の光、例えば、10000cd/m
2の光を照射する場合の方が、低輝度の光、例えば、1000cd/m
2の光を照射する場合よりも効果が大きい。すなわち、輝度の高い光を照射するほうが配向膜の抵抗は小さくなる。つまり、
図5に示すDC輝度緩和時定数Tは1000cd/m
2の光を照射した場合は大きく、例えば、T1であり、10000cd/m
2の光を照射した場合は小さく、例えば、T2である。
【0055】
本発明においては、バックライトによる可視光を照射した時の配向膜の光導電性は小さいほうがよい。配向膜の光導電性を評価する方法は、低輝度、例えば1000cd/m
2、を照射した場合のDC輝度緩和時定数T1と、高輝度、例えば10000cd/m
2、を照射した場合のDC輝度緩和時定数T2との比によって評価する方法である。すなわち、T1とT2の差が大きいほど、光導電性がより顕著であるといえる。
【0056】
以上の知見を基に、第2のDC残像を評価した結果、輝度Iの光を照射した場合のDC輝度緩和時定数T1と、輝度I×10の光を照射した場合のDC輝度緩和時定数T2との比、T1/T2が3以下である配向膜を用いることによって、第2の残像が生ずる現象を防止できることがわかった。
【0057】
一方、第2のDC残像が顕著に検出されるのは、通常のDC残像が30分以下というように短い場合である。この現象を低輝度の光で代表させて評価する。つまり、本発明は、1000cd/m
2の光を照射した場合のDC輝度緩和時定数T1が30分以下の場合に、特に効果があるといえる。
【0058】
本発明においては、配向膜は2層であるが、以上の説明は、2層の配向膜全体としての評価である。しかし、実際には、上層の配向膜は、光配向特性の要請から、材料を大きく変えることが出来る余地は小さい。これに対して下層の配向膜は、第2のDC残像を小さくするように材料を変化させる余地は大きい。
【0059】
下層配向膜はポリアミド酸を前駆体とするポリイミドからなる配向膜である。
図6は、配向膜の形成を示す構造式である。
図6に示すように、酸二無水物とジアミンを混合するとポリアミド酸が形成される。このポリアミド酸を加熱することによってイミド化し、ポリイミドが生成され、これが下層の配向膜となる。通常の加熱プロセスでは、ポリアミド酸は100%イミド化されるのではなく、10%から50%は未反応物として残る。なお、上層配向膜1131と下層配向膜1132は別々に作製する必要はなく、上層の配向膜の前駆体であるポリアミド酸エステルと下層の配向膜の前駆体であるポリアミド酸を混合した液を塗布すると、その後の乾燥(レベリング)工程において、それらが下層と上層に分かれるので、上層1131と下層1132を同時に形成することが出来る。
【0060】
図6において、酸二無水物の構造式におけるAの部分は、化学式(2)あるいは化学式(3)に示す物質であることが望ましい。
【0061】
【化2】
【0062】
【化3】
【0063】
従来は、酸二無水物のAの部分として化学式(4)に示すようなベンゼン環、すなわちPMDA(Pyromellitic Dianhyderide)が使用されてきた。
【0064】
【化4】
【0065】
しかし、酸二無水物としてPMDAを用いると、形成された配向膜は光導電性が強くなり、第2の残像を生じやすくなる。したがって、本発明における下層の配向膜には、
図6の酸二無水物の構造式に示すAとしてベンゼン環、すなわちPMDAを使用しない。
【0066】
図6のジアミンにおけるBの部分は、例えばベンゼン環であり、ジアミンの具体的な構造式の例を化学式(5)に示す。
【0067】
【化5】
【0068】
本発明では、好ましいポリアミド酸の他の例として、スルホン酸基またはカルボキシル基の導入されたジアミンを用いる。このようなジアミンの構成を化学式(6)、化学式(7)、化学式(8)、化学式(9)、化学式(10)、化学式(11)に示す。
【0069】
【化6】
【0070】
【化7】
【0071】
【化8】
【0072】
【化9】
【0073】
【化10】
【0074】
【化11】
【0075】
このようなポリアミド酸を用いることによって、上層のポリアミド酸エステルを前駆体とするポリイミドからなる配向膜よりも、抵抗率が小さい、かつ、光導電性の小さい下層配向膜を形成することが出来る。
【0076】
図12で説明したように、第2の残像は、バックライトが照射されなかった配向膜に帯電した電荷が、バックライトから照射された光を受けて抵抗が小さくなった配向膜に移動することによって生ずる。この現象は層間絶縁膜の厚さの影響を受ける。
【0077】
層間絶縁膜の厚さが大きいと、配向膜に帯電した電荷の移動がしやすくなり、その結果、第2の残像が生じにくくなる。従来、層間絶縁膜は500nm程度であるが、層間絶縁膜の厚さを770nm以上にすると、配向膜に帯電した電荷の移動が容易になり、第2の残像が生じにくくなった。
【0078】
図7は以上で説明した構成の第2の残像に対する効果を示すものである。
図7において、種々のパラメータを変化させた13個のサンプルについて評価した。
図7の表において、低抵抗成分材料は、配向膜の下層を構成する、ポリアミド酸を前駆体とした材料である。低抵抗材料成分として、前駆体であるポリアミド酸がPMDAを原料とする場合としない場合、スルホン酸基やカルボキシル基を含む場合と含まない場合を比較している。
【0079】
光配向は、配向膜に対して紫外線を照射することと配向膜を加熱する必要がある。この工程として、配向膜への紫外線の照射と加熱を同時に行う場合(
図7における同時加熱)と、配向膜に紫外線を照射した後、加熱する場合(
図7における後加熱)とがある。また、加熱温度として、180℃、200℃、230℃のように変化させ評価用配向膜を形成している。液晶としては、すべて同じ液晶を用いている。層間絶縁膜としては、膜厚が従来例である500nmのものと、これよりも厚い770nmのものを比較している。
【0080】
以上のようにして作成した13個のサンプルに対して、
図5に示すDC輝度緩和定数を、輝度が1000cd/m
2の光を照射した場合のDC輝度緩和時定数T1と、輝度が10000cd/m
2の光を照射した場合のDC輝度緩和時定数T2とを比較した。
図7ではT1/T2の値も記載している。そして、各サンプルについて第2の残像の有無を評価した。
【0081】
図7において、第2の残像が生ずる場合を×で、生じない場合を○で示している。
図7に示すように、配向膜下層(低抵抗成分材料)にPMDAを原料とするポリアミド酸を前駆体として用いると全て第2の残像が現れる。また、配向膜下層(低抵抗成分材料)にPMDAを原料とするポリアミド酸を前駆体として用いない場合でも、スルホン酸基やカルボキシル基が存在せず、かつ、層間絶縁膜が従来のように500nmの場合は、第2の残像が生じている。
【0082】
これに対して、PMDAを原料とするポリアミド酸を前駆体として用いず、スルホン酸基またはカルボキシル基が存在するサンプルNo9、10、11、13は全て、第2の残像は生じていない。また、PMDAを原料とするポリアミド酸を前駆体として用いず、かつ、スルホン酸基またはカルボキシル基も存在しない場合でも、層間絶縁膜が770nmであれば、第2の残像は生じなかった。
【0083】
また、光配向のプロセス、すなわち、偏光された紫外線の照射を加熱前に行うか否か、あるいは加熱温度等は、第2のDC残像に対しては有意な差は現れなかった。
【0084】
以上のように、下層配向膜(低抵抗成分材料)にPMDAを原料とするポリアミド酸を前駆体として用いず、かつ、スルホン酸基またはカルボキシル基を含むポリアミド酸を用いた場合は、すべて第2の残像は生じない。一方、下層配向膜(低抵抗成分材料)にPMDAを原料とするポリアミド酸を前駆体として用いず、かつ、スルホン酸基もカルボキシル基も含まないポリアミド酸を用いた場合でも、層間絶縁膜が770nmである場合は、第2の残像は生じない。