特許第5759047号(P5759047)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5759047ウコン中の有用成分を含有する低水分系組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5759047
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】ウコン中の有用成分を含有する低水分系組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 1/30 20060101AFI20150716BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20150716BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20150716BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20150716BHJP
   A61P 1/08 20060101ALI20150716BHJP
   A61P 1/14 20060101ALI20150716BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20150716BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20150716BHJP
   A61P 25/32 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
   A23L1/30 B
   A61K9/20
   A61K9/16
   A61P1/00
   A61P1/08
   A61P1/14
   A61P3/00
   A61P25/04
   A61P25/32
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-134265(P2014-134265)
(22)【出願日】2014年6月30日
(62)【分割の表示】特願2014-48155(P2014-48155)の分割
【原出願日】2014年3月11日
【審査請求日】2014年12月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000111487
【氏名又は名称】ハウス食品グループ本社株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】山口 悠
(72)【発明者】
【氏名】田口 修也
(72)【発明者】
【氏名】岸 孝礼
(72)【発明者】
【氏名】松田 良仁
(72)【発明者】
【氏名】平山 善丈
【審査官】 鳥居 敬司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−068569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 1/00−1/48
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一回の経口摂取量当たり、ビサクロンを0.15mg以上、0.3mg未満含有する組成物であって、水分量が7重量%以下であり、及び/又は水分活性(Aw)が0.7以下である、上記組成物。
【請求項2】
ビサクロンがウコン抽出物に由来する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
クルクミンをさらに含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
組成物が、顆粒状、チュアブル錠、又は粉末飲料の形態を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
食品又は医薬品である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物を含む、二日酔いの症状の抑制剤。
【請求項7】
二日酔いの症状が頭重感、吐き気、倦怠感、アルコール残り感、及び/又は、胃の不快感である、請求項6に記載の抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二日酔いの症状を抑制することが可能な、ビサクロンを含有する低水分系組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ウコン(ショウガ科ウコン,Curcuma longa LINNE)は東南アジアを中心に、世界中の熱帯・亜熱帯地域で栽培されるショウガ科ウコン属の薬用植物である。
【0003】
ウコンの根茎には3〜5%のクルクミン(黄色色素)が含有される。ウコン抽出物及びクルクミンには様々な有用性が知られている。例えば非特許文献1ではウコン抽出物含有飲料はアルコールと一緒に摂取することにより、アルコール本来の「酔い」を適度に発現させながら、悪酔いを防止する作用を有することが示唆されている。
【0004】
特許文献1にはウコン又はその抽出物を、オウバク又はその抽出物、オウレン又はその抽出物及びショウキョウ又はその抽出物と組み合わせて含有する、二日酔いの予防・治療のための医薬用組成物が開示されている。
【0005】
特許文献2にはウコンを、ニンニク加工物とともに含有する、アルコール摂取後のムカツキ、吐き気、二日酔い等の不快な症状を改善する作用を有する医薬組成物が開示されている。
【0006】
一方、依然として二日酔いの症状に対して有効な治療剤及び予防剤が求められており、しかも食経験が豊富で安全性の高い天然由来の成分を有効成分とする治療剤及び予防剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−226650号公報
【特許文献2】WO 2005/032569
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】浜野拓也ら、「ウコン抽出物が健常成人のアルコール代謝に及ぼす影響の検討」、応用薬理、72(1/2)、31−38(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、食経験が豊富な安全性の高い食品素材から得られる天然化合物を有効成分とする、二日酔いの症状を抑制することが可能な組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、ウコン抽出物に含まれるビサクロンが二日酔い症状の抑制作用を有することを見出した。
また、ビサクロンを低水分系の組成物とすることによって、ビサクロンの保存安定性が高く、かつ経口摂取しやすい組成物が得られることを見出した。
本発明はこれらの知見に基づくものである。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の特徴を有する。
[1] 一回の経口摂取量当たり、ビサクロンを0.15mg以上含有する組成物であって、水分量が7重量%以下であり、及び/又は水分活性(Aw)が0.7以下である、上記組成物。
[2] ビサクロンがウコン抽出物に由来する、[1]の組成物。
[3] クルクミンをさらに含む、[1]又は[2]の組成物。
[4] 組成物が、顆粒状、チュアブル錠、又は粉末飲料の形態を有する、[1]〜[3]のいずれかの組成物。
[5] 食品又は医薬品である、[1]〜[4]のいずれかの組成物。
[6] [1]〜[4]のいずれかの組成物を含む、二日酔いの症状の抑制剤。
[7] 二日酔いの症状が頭重感、吐き気、倦怠感、アルコール残り感、及び/又は、胃の不快感である、[6]の抑制剤。
[8] ビサクロンと食用原料を混合して、水分量が7重量%以下であり、及び/又は水分活性(Aw)が0.7以下である組成物を得る工程を含む、ビサクロン含有組成物の製造方法。
[9] ビサクロンがウコン抽出物に由来する、[8]の方法。
[10] 一回の経口摂取量当たり0.15mg以上となる量にてビサクロンを食用原料と混合する、[8]又は[9]の方法。
[11] ビサクロンと食用原料を混合して、水分量が7重量%以下であり、及び/又は水分活性(Aw)が0.7以下とする工程を含む、組成物中のビサクロンの安定性を向上させる方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、天然化合物を有効成分とする、二日酔いの症状を抑制することが可能な低水分系の組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1はビサクロンの摂取による血中エタノール濃度に対する効果を示す。
図2図2はビサクロン及びクルクミンの摂取による血中エタノール濃度に対する効果を示す。
図3図3はビサクロン(0.15mg)の摂取による、二日酔い症状の抑制効果を示す。
図4図4は飲料組成物中のビサクロン並びに、顆粒状組成物中のビサクロンに関する保存試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.ビサクロン
本発明において「ビサクロン」とは、ビサボラン型セスキテルペン類に分類される化合物であり、下記の平面構造式を有する化合物又はその塩を意味する。ビサクロンは平面構造式中*印で示した位置に不斉炭素を有し、そのため数種の光学異性体が存在するが、本明細書におけるビサクロンとはそのいずれの光学異性体も包含する概念である。
【化1】
【0015】
ビサクロンは植物原料から抽出又は精製したものであってもよいし、人為的に合成されたものであってもよいが、安全性の観点から植物原料から抽出又は分離/精製したものを用いることが好ましい。
【0016】
前記植物原料としては、ショウガ科植物が好ましく、特にCurcuma longa(ウコン)、Curcuma aromatica、Curcuma zedoaria、Curcuma phaeocaulis、Curcuma kwangsiensis、Curcuma wenyujin、Curcuma xanthorrhizaが好ましい。植物原料の根茎等の適当な部位を原型のまま、あるいは適当な寸法又は形状にカットした形態で、あるいは粉砕物の形態で、ビサクロンの製造のための原料として使用することができる。これらの原料は適宜乾燥されたものであってよい。
【0017】
植物原料からのビサクロンの抽出方法は特に限定されない。例えば、水、エタノール、メタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、ジエチルエーテル、石油エーテル、ヘキサン、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル、動植物油脂、又はそれらの溶媒の2種以上の混合物等の、ビサクロンを溶解可能な溶媒を用いて、植物原料から溶媒可溶性成分を抽出する。抽出溶媒としては、アルコール等の親水性抽出溶媒及び/又は水が好ましい。アルコールとしてはエタノールが好ましい。アルコールと水を混合して用いる場合の混合比は特に限定されないが、例えば重量比で10:90〜90:10の範囲が好ましく、20:80〜50:50の範囲がより好ましい。
【0018】
得られた植物原料の抽出物を必要に応じてさらに、溶媒分画、クロマトグラフィー(カラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等)及び/又は再結晶等の精製手段に付して、ビサクロンを分離又は精製してもよい。例えば、ビサクロンはウコンを植物原料とするメタノール抽出物を得て、当該抽出物をシリカゲルカラムでメタノール及びクロロホルムを用いて溶出させ、クルクミノイド(クルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミンの混合物)よりも高極性の画分より分取用HPLCカラムを用いて分離又は精製することができる。
【0019】
本発明の組成物又は二日酔いの症状の抑制剤(以下、「本発明の組成物又は抑制剤」と記載する。)中には、好ましくは一回の経口摂取量当たり、ビサクロンを0.15mg以上配合する。ビサクロンは植物原料の抽出物の形態であってもよい。すなわち、本発明の組成物又は抑制剤中には、一回の経口摂取量当たり、ビサクロンを0.15mg以上含有する、上記抽出溶媒を用いて得られた植物原料の抽出物を含めることができる。あるいは、ビサクロンは、植物原料の抽出物より分離/精製された形態であってもよい。
【0020】
なお、本発明の組成物又は抑制剤中のビサクロンの量は、本発明の組成物又は抑制剤を酢酸エチル中に溶解し、遠心分離して得られた上澄み液から酢酸エチルを減圧留去後、アセトニトリルに溶解した液を分析サンプルとして、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に付すことにより求めることができる。
【0021】
本発明において「一回の経口摂取量」とは、本発明の組成物又は抑制剤が一度に経口摂取される量、あるいは短い時間間隔(例えば10分以下、好ましくは5分以下の時間)をおいて連続的に複数回で経口摂取される総量を意味する。本発明の組成物又は抑制剤の一回の経口摂取量とは、例えば200mg〜2500mg、好ましくは1000mg〜2000mg(典型的には、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1000mg、1100mg、1200mg、1300mg、1400mg、1500mg、1600mg、1700mg、1800mg、1900mg、2000mg、2100mg、2200mg、2300mg、2400mg、又は2500mg)が挙げられる。以下でも「一回の経口摂取量」をこの意味で用いる。
【0022】
また、本発明において「ビサクロンを0.15mg以上」とは、本発明の組成物又は抑制剤の一回の経口摂取量当たり、0.15mg以上のビサクロンが含まれる限り特に限定はされないが、典型的には0.15mg以上、0.2mg以上、0.3mg以上、0.4mg以上、0.5mg以上、0.6mg以上、0.7mg以上、0.8mg以上、0.9mg以上、1.0mg以上、又はそれ以上の量のビサクロンを含有していることを意味する。
【0023】
2.ウコン色素
本発明の組成物又は抑制剤には、ウコン色素を含めることができる。
ウコン色素は、ウコンの根茎部分より、温時エタノールで、熱時油脂若しくはプロピレングリコールで、又は室温時〜熱時ヘキサン若しくはアセトンで抽出して得られるものであり、このようにして得られたウコン色素は主にクルクミンを含む。本発明の組成物又は抑制剤におけるウコン色素の量は一回の経口摂取量当たり、クルクミンが3mg〜100mg、より好ましくは5mg〜70mg、更に好ましくは20〜45mg、典型的には5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、又は40mgとなる量のウコン色素が配合されるのがよい。
【0024】
ウコン色素は微粒子化されたものを用いても良い。ウコン色素の微粒子化は、例えば以下のような方法により、所望の微粒子サイズが得られるように粉砕処理(微粒子化処理)して行うことができる。
【0025】
微粒子化処理方法としては、水難溶性物質の微粒子化処理方法として公知の方法を用いることができる。例えば、ウコン色素を親水性有機溶媒に溶解させた溶液を水系溶媒中に分散させて微粒子化する方法や、ウコン色素を、乳化剤と混合した混合物を粉砕処理することにより、或いは、ウコン色素を乳化剤、多糖類等を含む水系溶媒中に分散させて得た分散液を粉砕処理することにより微粒子化する方法等が挙げられる(特開2005−328839号公報、特開2004−208555号公報、特開2009−201371号公報、特開2009−263638号公報)。
【0026】
3.酸味料
本発明の組成物又は抑制剤には、食品や医薬品などの最終的な形態において許容される酸味料を含めることができる。酸味料としては例えば、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、酒石酸、乳酸、リン酸、又はこれらの塩等があり、これらのうちの1種又は2種以上を利用することができる。
【0027】
酸味料を含めることによって、本発明の組成物又は抑制剤を喫食した場合に、酸味料が舌に触れて唾液分泌を促進し、口腔内で固形化基材が崩壊、分散し、迅速に溶解し、そのまま唾液と一緒にのみ込むことができる。すなわち、本発明の組成物又は抑制剤は、水を飲まずに摂取することができる。
【0028】
酸味料の量は特に限定されないが、次の態様で含むことが望ましい。すなわち、ビーカーに入れた20℃の水100mlに一回の経口摂取量の本発明の組成物又は抑制剤を入れた場合に、水のpHが2.0〜5.0、好ましくは2.5〜4.5(典型的には、2.5以上、2.6以上、2.7以上、2.8以上、2.9以上、3.0以上、3.1以上、3.2以上、3.3以上、3.4以上、3.5以上、3.6以上、3.7以上、3.8以上、3.9以上、及び、4.0以下、4.5以下、5.0以下)になる量で含むことが望ましい。これにより、本発明の組成物又は抑制剤を口の中に入れた場合に、酸味料の作用で唾液分泌を促進して、固形化基材を容易に崩壊、分散、溶解して喫食でき、同時に、喫食に適した酸味、あるいはウコン抽出物及び/又はウコン色素に起因する、「苦味」や「渋み」等の不快な呈味を抑制することができる酸味を達成することが可能となる。酸味料として、クエン酸を用いる場合には、組成物中に固形分として1〜20重量%含むのがよい。
【0029】
4.他の成分
本発明の組成物又は抑制剤には、食品や医薬品などの最終的な形態において許容される成分であって、経口摂取可能な成分を含めることができる。
【0030】
このような成分としては例えば、固形化基材、甘味料、ビタミン類、ミネラル類、酸化防止剤などが挙げられる。また、必要により、色素、香料、保存料、防腐剤、防かび剤などを添加してもよい。
【0031】
固形化基材としては、上記成分を固めて成形するためのバインダーとしての機能を果たし、かつ水に容易に分散する性質を有するものであればよく、例えば、糖、糖アルコール、澱粉、各種澱粉、デキストリン、アミノ酸等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を利用することができる。固形化基材はさらに、一般的に結着剤として利用される、水あめ、結晶セルロース、各種ガム剤、デキストリンと組み合わせて用いることができる。
【0032】
甘味料としては、ブドウ糖、果糖、ショ糖、乳糖、麦芽糖、パラチノース、トレハロース、キシロース等の単糖や二糖、異性化糖(ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖、砂糖混合異性化糖等)、糖アルコール(エリスリトール、キシリトール、ラクチトール、パラチニット、ソルビトール、還元水飴等)、はちみつ、高甘味度甘味料(スクラロース、アセスルファムカリウム、ソーマチン、ステビア、アスパルテーム等)などが挙げられる。
【0033】
ビタミン類としては、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンE、ナイアシン、イノシトールなどが挙げられる。
【0034】
ミネラル類としては、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄などが挙げられる。
【0035】
酸化防止剤としては、ビタミンC、トコフェロール(ビタミンE)、酵素処理ルチン、カテキン等が挙げられる。
【0036】
これらの成分は、それぞれ当業者が食品や医薬品において通常採用する範囲内の量で適宜配合することができる。
【0037】
5.組成物の製造方法
本発明の組成物又は抑制剤は、低水分系の組成物を製造するために一般的に用いられる手法を用いて製造することができる。
【0038】
特に限定されないが、例えば、上記成分を含む原料を適量の水と共に混合し、造粒(噴霧造粒、押出造粒、撹拌造粒、流動層造粒、転動造粒及び圧縮造粒等)、整粒、圧縮成型、打錠等の処理を一又は複数組合わせて処理することにより製造することができる。造粒処理としては押出造粒が特に好ましい。押出造粒の処理を施して製造された顆粒状組成物においては、構成成分に偏りのない、均一な顆粒を得ることができる。
【0039】
本発明の組成物の形態は特に限定されず、顆粒剤、丸剤、錠剤、粉末剤、チュアブル錠等の形態とすることができるが、好ましくは、水を飲まずに摂取することができる顆粒剤やチュアブル錠、あるいは粉末飲料の形態である。
【0040】
本発明の組成物は、当該組成物の全重量あたりの水分量が7重量%以下、典型的には7重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、4重量%以下、またはそれ以下であることを特徴とする。水分量の下限値は特に限定されないが、組成物の全重量あたり3重量%以上であることが望ましい。水分量の測定は、公知の方法を用いて測定することができる。例えば、常圧加熱乾燥法を用いたのちに乾燥助剤法(105℃で16時間)にて測定することができる。また、本発明の組成物は、水分活性(Aw)が0.7以下、典型的には0.7以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下、またはそれ以下であることを特徴とする。水分活性の値は、組成物中に含まれる、糖質や塩等の量を調整することによって調節することができる。水分活性の測定は公知の水分活性測定装置を用いて測定することができ、例えば、ノバシーナ社製の水分活性測定装置を用いて測定することができる。本発明の組成物において、水分量及び/又は水分活性を上記値とすることによって、組成物中におけるビサクロンの減衰を抑制し、保存安定性を高めることができる。
【0041】
6.組成物及びその用途
本発明の組成物は、アルコール摂取後の起床時のいわゆる二日酔い症状(特に、頭重感、吐き気、倦怠感、アルコール残り感、胃の不快症状)の軽減作用を有する食品組成物又は医薬品組成物として使用することができる。
【0042】
本発明の組成物は、食品として提供されてもよいし、経口投与用の医薬品として提供されてもよいが、好ましくは食品である。かかる組成物は、食品や医薬品用の容器や袋として使用される容器や袋に収容することが可能であり、例えば、紙、プラスチック、ガラス、金属製の容器や袋等が挙げられる。本発明の組成物は一回の経口摂取量ごとに分包することができる。組成物を容器や袋に収容する手段は任意である。
【実施例】
【0043】
I.血中エタノール濃度に対するビサクロンの効果
ビサクロンの血中エタノール濃度に対する効果について以下のとおり試験した。
【0044】
1.供試動物
各試験対象物について、7週齢のオスSDラット(7匹)を使用した。
【0045】
2.試験対象物
コントロール:デキストリン(松谷化学工業株式会社)
ビサクロン:ウコン(Curcuma longa)の根茎部分の根茎部分を水を用いて抽出し、得られた水抽出液をメタノールにて再抽出し、得られたメタノール抽出液より分取カラムを用いて精製したものを使用した。
ビサクロンは、0.5w/v%メチルセルロース(和光純薬工業)に溶解した。
【0046】
3.試験方法
供試動物入荷時より本飼育開始前日まで1週間、予備飼育を行い馴化した。
試験対象物は胃ゾンデを用いて下記投与量となるように強制胃内投与した。エタノールは下記投与量となるように、同時に同じ経路で投与した。
デキストリン(コントロール):デキストリン 2010mg/kg
ビサクロン:ビサクロン 250mg/kg+デキストリン 1760mg/kg
エタノール:2g/kg
エタノール投与後、10、30、60、120、180、240分時に尾静脈よりヘパリン加採血を行い、F−キット エタノール(J.K.インターナショナル)を製造元の指示書に従い用いて、各時点の血中エタノール濃度を測定した。
【0047】
4.試験結果
結果を図1に示す。各結果は各時点の血中濃度−時間曲線下面積(AUC)の合計をそれぞれ示す。ビサクロンを投与することにより、血中エタノール濃度を低下できることが確認された。
【0048】
II.血中エタノール濃度に対するビサクロン及びクルクミンの効果
ビサクロン及びクルクミンの血中エタノール濃度に対する効果について以下のとおり試験した。
【0049】
1.供試動物
各試験対象物について、7週齢のオスSDラット(8匹)を使用した。
【0050】
2.試験対象物
コントロール:デキストリン(松谷化学工業株式会社)
クルクミン:ターメリックカラーHJK(稲畑香料株式会社)
ビサクロン:ウコン(Curcuma longa)の根茎部分の根茎部分を水を用いて抽出し、得られた水抽出液をメタノールにて再抽出し、得られたメタノール抽出液より分取カラムを用いて精製したものを使用した。
クルクミン及びビサクロンは、0.5w/v%メチルセルロース(和光純薬工業)(以下、「0.5%MC」と記載する)に溶解した。
【0051】
3.試験方法
供試動物入荷時より本飼育開始前日まで1週間、予備飼育を行い馴化した。
試験対象物は胃ゾンデを用いて下記投与量となるように強制胃内投与した。エタノールは下記投与量となるように、同時に同じ経路で投与した。
クルクミンのみ:125mg/kg
クルクミン+ビサクロン:クルクミン125mg/kg+ビサクロン20mg/kg
エタノール:2g/kg
エタノール投与後、10、30、60、120、180、240分時に尾静脈よりヘパリン加採血を行い、F−キット エタノール(J.K.インターナショナル)を製造元の指示書に従い用いて、各時点の血中エタノール濃度を測定した。
【0052】
4.試験結果
結果を図2に示す。各結果は各時点の血中濃度−時間曲線下面積(AUC)の合計をそれぞれ示す。クルクミンを単独で投与するよりも、クルクミン及びビサクロンの混合物を投与することにより、血中エタノール濃度をより低下できることが示され、ビサクロンが血中エタノール濃度を低下させる効果を有することが確認された。
【0053】
III.二日酔い症状に対する効果
ビサクロンの二日酔い症状に対する効果について以下のとおり試験した。
【0054】
1.試験組成物(飲料)
ビサクロン含有組成物(実施例A)は、水以外の成分(粉末原料)を混合した後、水に添加溶解して100mLの水溶液とし、93℃に加熱したものを金属缶にホットパックして作製した。比較例aはホットパックした後、さらに40℃にて一週間保存した以外は、上記実施例Aと同様に作製した。各試験飲料のpH値は3.1とした。ビサクロンは酸性水溶液中、40℃にて保存することによって分解が促進され、試験飲料中のビサクロンを減少させることができる。
【0055】
ウコン色素は、ウコン(Curcuma longa)の根茎部分をアセトンを用いて抽出し、減圧してアセトンを揮発させることにより得たものである。このウコン色素には30重量%のクルクミンが含有され、各組成物中にはクルクミンが30mg含まれた。
【0056】
ビサクロンはウコン抽出物の形態で用いた。すなわち、ビサクロンを所定量含有するウコン抽出物を各組成物中に配合した。ウコン抽出物はウコン(Curcuma longa)の根茎部分の根茎部分を水を用いて抽出して得たものである。各組成物中のビサクロンの量は、組成物を酢酸エチルと混合し、遠心分離して得られた上澄み液から酢酸エチルを減圧留去後、アセトニトリルに溶解した液を分析サンプルとして、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に付すことにより求めた。HPLCは以下の条件で行った。
【0057】
実施例A及び比較例aは以下の組成を有した。ビサクロンが実施例Aには0.15mg含まれ、比較例aにはビサクロンが検出されなかった。
【0058】
【表1】
【0059】
2.試験対象者
試験対象者は、アルコール飲料を飲むことができる20〜65才の男女から選抜した13名とした。アルコール飲料が飲めない人(自己申告)、通院中の人、服薬中の人、腎臓・肝臓疾患に疾病のある人、各種過敏症の人は試験対象者から除外した。
【0060】
3.試験方法
実施例A及び比較例aについて以下の手順により二日酔い抑制効果を確認した。
次の内容の試験を1週間を開けて2回実施した。
【0061】
試験前日に上記実施例A又は比較例aを摂取した後、2時間にわたって食事をしながら飲酒した。個人ごとに酒量並びに食事のメニュー及び量を管理し、2回の試験ともほぼ同じ酒量及び食事条件になるようにした。
【0062】
飲酒後に就寝し、7時間を目安として睡眠をとった。飲酒後摂取できる水の量は200mLまでとした。起床後に二日酔いに関するアンケートを行った。
【0063】
以下の事項は禁止した。
二日酔い改善効果のある医薬、食品の摂取
【0064】
4.試験スケジュール
試験対象者5名に対し、実施例Aについて前記試験(1回目の試験)を行い、次に比較例aについて前記試験(2回目の試験)を行った。また、試験対象者の残りの8名に対して比較例aについて前記試験(1回目の試験)を行い、次に実施例Aについて前記試験(2回目の試験)を行った。
【0065】
5.アンケートによる評価項目
アンケートでは、各試験対象者に、頭痛、頭重感、吐き気、倦怠感、アルコール残り感、胃の不快症状の6項目についてVAS法による自己評価結果を記入させた。
【0066】
VAS (Visual Analog Scale) 法とは、自覚的症状の程度を数値化して評価する検査である。直線状に、考えられうる最高の状態を右端、最低を左端としてその線分上に自分の状態の程度を示してもらう方法である。主観的な評価のために臨床医学でも広く用いられており、特に同被験者間の投与前後の状態の比較などに使われる。
【0067】
6.試験結果
各試験飲料を摂取した試験での個々の評価項目について、被験者全員のVAS記入値を集計した平均値を得た。結果を図3に示す。
【0068】
ビサクロン0.15mgを含有する実施例Aでは、ビサクロンを含まない比較例aと比較して、二日酔い症状である頭痛、頭重感、吐き気、倦怠感、アルコール残り感、胃の不快症状のすべての項目について抑制がみられ、特に「頭重感」や「胃の不快症状」を抑制する作用が有意に高いことが確認された。
【0069】
以上の結果より、少なくとも0.15mgのビサクロンを摂取することによって、二日酔い症状抑制効果を得られることが明らかとなった。
【0070】
IV.保存試験
組成物の形態によるビサクロンの保存安定性について以下のとおり試験した。
試験には、顆粒状組成物の形態である実施例1(表2)と、飲料組成物の形態である比較例1−5(表3)を用いた。
顆粒状組成物は以下の手法により製造した。
【0071】
【表2】
【0072】
ウコン色素は上記「III.二日酔い症状に対する効果」に記載の手法により得たものを使用した。
【0073】
ビサクロンはウコン抽出物の形態で用いた。ウコン抽出物は上記「III.二日酔い症状に対する効果」に記載の手法により得たものを使用した。ウコン抽出物中のビサクロンの量は、抽出物を酢酸エチルと混合し、遠心分離して得られた上澄み液から酢酸エチルを減圧留去後、アセトニトリルに溶解した液を分析サンプルとして、上記「III.二日酔い症状に対する効果」に記載の組成物中のビサクロン量の測定方法と同様に、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて測定した。
【0074】
(1)上記表1の配合にしたがって、ウコン色素、ビサクロンを含有するウコン抽出物、還元麦芽糖、コーンスターチ、クエン酸、ビタミンE、ビタミンC、ナイアシン及び甘味料を混合し、「粉体配合」を製造した。
(2)水、ビタミンBを混合し、「加水配合」を製造した。
(3)混合機中で粉体配合に加水配合を滴下投入し、十分に混練してドウを作製した。
(4)押し出し造粒機にドウを投入し、加圧する事で粒長5mm程度の造粒物を作製した。
(5)造粒物を流動層乾燥機で水分値7%以下、水分活性(AW)0.7以下まで乾燥させた。
(6)目開き355μmの篩にて微粉を篩過して顆粒状組成物を得た。
飲料組成物は以下の手法により製造した。
【0075】
【表3】
【0076】
ウコン色素及びビサクロン(ウコン抽出物の形態)は上記「III.二日酔い症状に対する効果」に記載の手法により得たものを使用した。ウコン抽出物中のビサクロンの量は、上記手法により測定した。
【0077】
各飲料組成物のpH値の調整はクエン酸及び/又はクエン酸3ナトリウムを用いて行った。表中のpH値は品温20℃で測定された値を指す。
【0078】
各飲料組成物は水以外の成分(粉末原料)を混合した後、水に添加溶解して、液体原料を投入して100mLの水溶液とし、93℃に加熱殺菌したものを金属缶にホットパックして作製した。
【0079】
上記のようにして製造された顆粒状組成物及び各飲料組成物を、40℃の条件下に保存した後、各組成物中のビサクロンの量を上記「III.二日酔い症状に対する効果」の実験と同様に測定した。40℃の条件下保存する直前のサンプルのビサクロン含量を100%とした時の、各サンプルのビサクロン含量を百分率で算出した。
【0080】
結果を図4に示す。飲料組成物においては、経時的にビサクロン含量が減衰することが確認された。特に、pH値が低いほど減衰速度(グラフ傾き)が早いことが確認された。一方、顆粒状組成物においては、ビサクロン含量がわずかに減少するのみであった。
【0081】
これらの結果は、一定の量(又は有効量)のビサクロンを長期間にわたって安定的に保持するためには、ビサクロン含有組成物を飲料組成物の形態とするよりも、低水分系の組成物の形態としたほうが有利であることを示す。特に、酸味料を加えて組成物に酸味を付与する場合においては、酸味料の添加によりpH値が低くなる飲料組成物中にビサクロンを含めるよりも、低水分系の組成物に含めた方が、ビサクロンの保存安定上、有利であるといえる。
【要約】
【課題】本発明は、食経験が豊富な安全性の高い食品素材から得られる天然化合物を有効成分とする、二日酔いの症状を抑制することが可能な組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】一回の経口摂取量当たり、ビサクロンを0.15mg以上含有する組成物であって、水分量が7重量%以下であり、及び/又は水分活性(Aw)が0.7以下である、上記組成物。
【選択図】なし
図1
図2
図3
図4