【実施例】
【0043】
I.血中エタノール濃度に対するビサクロンの効果
ビサクロンの血中エタノール濃度に対する効果について以下のとおり試験した。
【0044】
1.供試動物
各試験対象物について、7週齢のオスSDラット(7匹)を使用した。
【0045】
2.試験対象物
コントロール:デキストリン(松谷化学工業株式会社)
ビサクロン:ウコン(Curcuma longa)の根茎部分の根茎部分を水を用いて抽出し、得られた水抽出液をメタノールにて再抽出し、得られたメタノール抽出液より分取カラムを用いて精製したものを使用した。
ビサクロンは、0.5w/v%メチルセルロース(和光純薬工業)に溶解した。
【0046】
3.試験方法
供試動物入荷時より本飼育開始前日まで1週間、予備飼育を行い馴化した。
試験対象物は胃ゾンデを用いて下記投与量となるように強制胃内投与した。エタノールは下記投与量となるように、同時に同じ経路で投与した。
デキストリン(コントロール):デキストリン 2010mg/kg
ビサクロン:ビサクロン 250mg/kg+デキストリン 1760mg/kg
エタノール:2g/kg
エタノール投与後、10、30、60、120、180、240分時に尾静脈よりヘパリン加採血を行い、F−キット エタノール(J.K.インターナショナル)を製造元の指示書に従い用いて、各時点の血中エタノール濃度を測定した。
【0047】
4.試験結果
結果を
図1に示す。各結果は各時点の血中濃度−時間曲線下面積(AUC)の合計をそれぞれ示す。ビサクロンを投与することにより、血中エタノール濃度を低下できることが確認された。
【0048】
II.血中エタノール濃度に対するビサクロン及びクルクミンの効果
ビサクロン及びクルクミンの血中エタノール濃度に対する効果について以下のとおり試験した。
【0049】
1.供試動物
各試験対象物について、7週齢のオスSDラット(8匹)を使用した。
【0050】
2.試験対象物
コントロール:デキストリン(松谷化学工業株式会社)
クルクミン:ターメリックカラーHJK(稲畑香料株式会社)
ビサクロン:ウコン(Curcuma longa)の根茎部分の根茎部分を水を用いて抽出し、得られた水抽出液をメタノールにて再抽出し、得られたメタノール抽出液より分取カラムを用いて精製したものを使用した。
クルクミン及びビサクロンは、0.5w/v%メチルセルロース(和光純薬工業)(以下、「0.5%MC」と記載する)に溶解した。
【0051】
3.試験方法
供試動物入荷時より本飼育開始前日まで1週間、予備飼育を行い馴化した。
試験対象物は胃ゾンデを用いて下記投与量となるように強制胃内投与した。エタノールは下記投与量となるように、同時に同じ経路で投与した。
クルクミンのみ:125mg/kg
クルクミン+ビサクロン:クルクミン125mg/kg+ビサクロン20mg/kg
エタノール:2g/kg
エタノール投与後、10、30、60、120、180、240分時に尾静脈よりヘパリン加採血を行い、F−キット エタノール(J.K.インターナショナル)を製造元の指示書に従い用いて、各時点の血中エタノール濃度を測定した。
【0052】
4.試験結果
結果を
図2に示す。各結果は各時点の血中濃度−時間曲線下面積(AUC)の合計をそれぞれ示す。クルクミンを単独で投与するよりも、クルクミン及びビサクロンの混合物を投与することにより、血中エタノール濃度をより低下できることが示され、ビサクロンが血中エタノール濃度を低下させる効果を有することが確認された。
【0053】
III.二日酔い症状に対する効果
ビサクロンの二日酔い症状に対する効果について以下のとおり試験した。
【0054】
1.試験組成物(飲料)
ビサクロン含有組成物(実施例A)は、水以外の成分(粉末原料)を混合した後、水に添加溶解して100mLの水溶液とし、93℃に加熱したものを金属缶にホットパックして作製した。比較例aはホットパックした後、さらに40℃にて一週間保存した以外は、上記実施例Aと同様に作製した。各試験飲料のpH値は3.1とした。ビサクロンは酸性水溶液中、40℃にて保存することによって分解が促進され、試験飲料中のビサクロンを減少させることができる。
【0055】
ウコン色素は、ウコン(Curcuma longa)の根茎部分をアセトンを用いて抽出し、減圧してアセトンを揮発させることにより得たものである。このウコン色素には30重量%のクルクミンが含有され、各組成物中にはクルクミンが30mg含まれた。
【0056】
ビサクロンはウコン抽出物の形態で用いた。すなわち、ビサクロンを所定量含有するウコン抽出物を各組成物中に配合した。ウコン抽出物はウコン(Curcuma longa)の根茎部分の根茎部分を水を用いて抽出して得たものである。各組成物中のビサクロンの量は、組成物を酢酸エチルと混合し、遠心分離して得られた上澄み液から酢酸エチルを減圧留去後、アセトニトリルに溶解した液を分析サンプルとして、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に付すことにより求めた。HPLCは以下の条件で行った。
【0057】
実施例A及び比較例aは以下の組成を有した。ビサクロンが実施例Aには0.15mg含まれ、比較例aにはビサクロンが検出されなかった。
【0058】
【表1】
【0059】
2.試験対象者
試験対象者は、アルコール飲料を飲むことができる20〜65才の男女から選抜した13名とした。アルコール飲料が飲めない人(自己申告)、通院中の人、服薬中の人、腎臓・肝臓疾患に疾病のある人、各種過敏症の人は試験対象者から除外した。
【0060】
3.試験方法
実施例A及び比較例aについて以下の手順により二日酔い抑制効果を確認した。
次の内容の試験を1週間を開けて2回実施した。
【0061】
試験前日に上記実施例A又は比較例aを摂取した後、2時間にわたって食事をしながら飲酒した。個人ごとに酒量並びに食事のメニュー及び量を管理し、2回の試験ともほぼ同じ酒量及び食事条件になるようにした。
【0062】
飲酒後に就寝し、7時間を目安として睡眠をとった。飲酒後摂取できる水の量は200mLまでとした。起床後に二日酔いに関するアンケートを行った。
【0063】
以下の事項は禁止した。
二日酔い改善効果のある医薬、食品の摂取
【0064】
4.試験スケジュール
試験対象者5名に対し、実施例Aについて前記試験(1回目の試験)を行い、次に比較例aについて前記試験(2回目の試験)を行った。また、試験対象者の残りの8名に対して比較例aについて前記試験(1回目の試験)を行い、次に実施例Aについて前記試験(2回目の試験)を行った。
【0065】
5.アンケートによる評価項目
アンケートでは、各試験対象者に、頭痛、頭重感、吐き気、倦怠感、アルコール残り感、胃の不快症状の6項目についてVAS法による自己評価結果を記入させた。
【0066】
VAS (Visual Analog Scale) 法とは、自覚的症状の程度を数値化して評価する検査である。直線状に、考えられうる最高の状態を右端、最低を左端としてその線分上に自分の状態の程度を示してもらう方法である。主観的な評価のために臨床医学でも広く用いられており、特に同被験者間の投与前後の状態の比較などに使われる。
【0067】
6.試験結果
各試験飲料を摂取した試験での個々の評価項目について、被験者全員のVAS記入値を集計した平均値を得た。結果を
図3に示す。
【0068】
ビサクロン0.15mgを含有する実施例Aでは、ビサクロンを含まない比較例aと比較して、二日酔い症状である頭痛、頭重感、吐き気、倦怠感、アルコール残り感、胃の不快症状のすべての項目について抑制がみられ、特に「頭重感」や「胃の不快症状」を抑制する作用が有意に高いことが確認された。
【0069】
以上の結果より、少なくとも0.15mgのビサクロンを摂取することによって、二日酔い症状抑制効果を得られることが明らかとなった。
【0070】
IV.保存試験
組成物の形態によるビサクロンの保存安定性について以下のとおり試験した。
試験には、顆粒状組成物の形態である実施例1(表2)と、飲料組成物の形態である比較例1−5(表3)を用いた。
顆粒状組成物は以下の手法により製造した。
【0071】
【表2】
【0072】
ウコン色素は上記「III.二日酔い症状に対する効果」に記載の手法により得たものを使用した。
【0073】
ビサクロンはウコン抽出物の形態で用いた。ウコン抽出物は上記「III.二日酔い症状に対する効果」に記載の手法により得たものを使用した。ウコン抽出物中のビサクロンの量は、抽出物を酢酸エチルと混合し、遠心分離して得られた上澄み液から酢酸エチルを減圧留去後、アセトニトリルに溶解した液を分析サンプルとして、上記「III.二日酔い症状に対する効果」に記載の組成物中のビサクロン量の測定方法と同様に、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて測定した。
【0074】
(1)上記表1の配合にしたがって、ウコン色素、ビサクロンを含有するウコン抽出物、還元麦芽糖、コーンスターチ、クエン酸、ビタミンE、ビタミンC、ナイアシン及び甘味料を混合し、「粉体配合」を製造した。
(2)水、ビタミンBを混合し、「加水配合」を製造した。
(3)混合機中で粉体配合に加水配合を滴下投入し、十分に混練してドウを作製した。
(4)押し出し造粒機にドウを投入し、加圧する事で粒長5mm程度の造粒物を作製した。
(5)造粒物を流動層乾燥機で水分値7%以下、水分活性(AW)0.7以下まで乾燥させた。
(6)目開き355μmの篩にて微粉を篩過して顆粒状組成物を得た。
飲料組成物は以下の手法により製造した。
【0075】
【表3】
【0076】
ウコン色素及びビサクロン(ウコン抽出物の形態)は上記「III.二日酔い症状に対する効果」に記載の手法により得たものを使用した。ウコン抽出物中のビサクロンの量は、上記手法により測定した。
【0077】
各飲料組成物のpH値の調整はクエン酸及び/又はクエン酸3ナトリウムを用いて行った。表中のpH値は品温20℃で測定された値を指す。
【0078】
各飲料組成物は水以外の成分(粉末原料)を混合した後、水に添加溶解して、液体原料を投入して100mLの水溶液とし、93℃に加熱殺菌したものを金属缶にホットパックして作製した。
【0079】
上記のようにして製造された顆粒状組成物及び各飲料組成物を、40℃の条件下に保存した後、各組成物中のビサクロンの量を上記「III.二日酔い症状に対する効果」の実験と同様に測定した。40℃の条件下保存する直前のサンプルのビサクロン含量を100%とした時の、各サンプルのビサクロン含量を百分率で算出した。
【0080】
結果を
図4に示す。飲料組成物においては、経時的にビサクロン含量が減衰することが確認された。特に、pH値が低いほど減衰速度(グラフ傾き)が早いことが確認された。一方、顆粒状組成物においては、ビサクロン含量がわずかに減少するのみであった。
【0081】
これらの結果は、一定の量(又は有効量)のビサクロンを長期間にわたって安定的に保持するためには、ビサクロン含有組成物を飲料組成物の形態とするよりも、低水分系の組成物の形態としたほうが有利であることを示す。特に、酸味料を加えて組成物に酸味を付与する場合においては、酸味料の添加によりpH値が低くなる飲料組成物中にビサクロンを含めるよりも、低水分系の組成物に含めた方が、ビサクロンの保存安定上、有利であるといえる。