(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来の装置は、把手杆4を倒伏させるときに、ガイド板41の先端(適所c)を中心として、後端が持ち上がりやすかった。また把手杆4を倒伏させるときにバランスを崩して支柱19が左右に倒れることが多かった。そのため、作業性が非常に悪く実用的ではなかった。
【0005】
またガイド板41が大きいため、自動車の下部(たとえばロッカーパネル)の凹みを修復するには適さず、そのような箇所を修復するには、従前通り、車両をリフトアップしてスライドハンマーで凹み箇所を引き出す必要があった。
【0006】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされた。本発明の目的は、作業性に優れる自動車ボデー修復装置及び自動車ボデー修復方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下のような解決手段によって前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために本発明の実施形態に対応する符号を付するが、これに限定されるものではない。また符号を付して説明した構成は適宜改良してもよく、さらに少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
【0008】
第1の発明は、一対のレールバー(11)と、前記レールバー(11)の前側に設けられ、平面視において軸線が前記一対のレールバー(11)に交叉する前側ガイド(112)と、前記レールバー(11)の前側に設けられ、自動車ボデー修復作業時に、前記レールバー(11)と自動車との隙間に合わせて高さが調整されるジャッキ(14)と、前記レールバー(11)の後側に設けられる牽引機(13)と、一端にフック(20)が設けられ、前記前側ガイド(112)の下を通されて他端が前記牽引機(13)に接続されて、その牽引機(13)で引かれる被牽引部材(130)と、を備える自動車ボデー修復装置である。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記レールバー(11)の後側であって前記牽引機(13)よりも低い位置に設けられ、平面視において軸線が前記一対のレールバー(11)に交叉する後側ガイド(124)を備え、前記被牽引部材(130)は、一端にフック(20)が設けられ、前記前側ガイド(112)及び前記後側ガイド(124)の下を通されて前記他端が前記牽引機(13)に接続される。
【0010】
第3の発明は、第2の発明において、前記牽引機(13)を載置する台座(12)を備え、前記後側ガイド(124)は、前記台座(12)の脚(122)又は前記レールバー(11)に形成されている。
【0011】
第4の発明は、第2又第3の発明において、前記牽引機(13)を地面に繋ぐチェーン(15)を備える。
【0012】
第5の発明は、第1の発明において、前記レールバー(11)の後側であって前記牽引機(13)よりも高い位置に設けられ、平面視において軸線が前記一対のレールバー(11)に交叉する後側ガイド(51d)を備え、前記被牽引部材(130)は、一端にフック(20)が設けられ、前記前側ガイド(112)の下及び前記後側ガイド(51d)の上を通されて前記他端が前記牽引機(13)に接続される。
【0013】
第6の発明は、第5の発明において、前記レールバー(11)の後側に設けられた支柱(50)を備え、前記後側ガイド(51d)は、前記支柱(50)に取り付けられている。
【0014】
第7の発明は、第6の発明において、前記支柱(50)を地面に繋ぐチェーン(15)を備える。
【0015】
第8の発明は、第1から第7までのいずれかひとつの発明において、前記後側ガイド(124,51d)及び前記牽引機(13)の位置は、前記後側ガイド(124,51d)を通過した被牽引部材(130)が、鉛直方向に延びて前記牽引機(13)に引かれるように、定められる。
【0016】
第9の発明は、第1から第8までのいずれかひとつの発明において、前記牽引機(13)は、前記被牽引部材(130)を巻き上げるウィンチである。
【0017】
第10の発明は、第1から第8までのいずれかひとつの発明において、前記牽引機(13)は、シリンダーに供給された油圧によって作動するピストンで前記被牽引部材(130)を引くポートパワーである。
【0018】
第11の発明は、第1から第8までのいずれかひとつの発明において、前記牽引機(13)は、前記被牽引部材(130)を巻き上げるラチェット荷締機である。
【0019】
第12の発明は、第11の発明において、前記ラチェット荷締機は、前記レールバー(11)に直接固定されている。
【0020】
第13の発明は、第1から第12までのいずれかひとつの発明において、前記被牽引部材(130)は、平帯である。
【0021】
第14の発明は、第1から第13までのいずれかひとつの発明において、前記レールバー(11)に設けられ、自動車ボデー修復作業時に、自動車ボデー(100)に当接して、前記牽引機(13)が前記被牽引部材(130)を引くときに前記レールバー(11)が前方に移動することを防止する突張アーム(80)をさらに備える。
【0022】
第15の発明は、第1から第14までのいずれかひとつの発明において、前記ジャッキ(14)を前記レールバー(11)に沿ってスライド自在にするアタッチメント(110)をさらに備える。
【0023】
第16の発明は、第15の発明において、前記アタッチメント(110)は、上面(113a)に内向きフランジ(113b)が形成されたスライダー(113)を含み、前記ジャッキ(14)は、脚座部(142)が前記スライダー(113)の上面(113a)かつ前記内向きフランジ(113b)の下側に配置される。
【0024】
第17の発明は、第15又は第16の発明において、前記前側ガイド(112)は、前記アタッチメント(110)の一部である。
【0025】
第18の発明は、第1から第17までのいずれかひとつの発明を使用する自動車ボデー修復方法であって、自動車ボデー(100)の修復対象箇所に結合されたワッシャー(30)に前記フック(20)を接続する接続工程と、前記前側ガイド(112)の位置を調整する位置調整工程と、位置が調整されたレールバー(11)のジャッキ(14)の高さを調整して、ジャッキ上部を自動車の底面に当接させる高さ調整工程と、前記ジャッキ(14)の高さが調整された後に、前記牽引機(13)によって前記被牽引部材(130)を引く牽引工程と、を含む。
【0026】
第19の発明は、第18の発明において、前記位置調整工程は、前記被牽引部材(130)が、自動車ボデー(100)を凹ませた力の方向と略一致するように、前記前側ガイド(112)の位置を調整する。
【0027】
第20の発明は、第18又は第19の発明において、前記位置調整工程は、前記被牽引部材(130)が、鉛直軸線と略一致するように、前記前側ガイド(112)の位置を調整する。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、自動車をリフトアップすることなく、自動車の下部(たとえばロッカーパネル)の凹みを引き出して修復することができる。そして自動車ボデーの修復作業中に、自動車ボデーを下げることなく、また自動車ボデー修復装置が持ち上がることがない。したがって、非常に安定して自動車ボデーを綺麗に修復できる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0031】
(第1実施形態)
図1は、本発明による自動車ボデー修復装置の第1実施形態を示す斜視図である。
【0032】
自動車ボデー修復装置10は、レールバー11と、台座12と、ウィンチ13と、ジャッキ14と、を含む。
【0033】
レールバー11は、
図1では、互いに平行な2本の部材である。なお
図1では、互いに平行であるが、たとえばV字状のように非平行であってもよい。2本のレールバー11は、桟柱111で連結されている。また2本のレールバー11の間には、丸棒112が渡されている。後述のように、この丸棒112の下にベルト130が通される。なお本実施形態では、丸棒112は、レールバー11に直接溶接されているが、これには限られない。たとえば、2本のレールバー11の上にそれぞれ直立する2本の縦棒を設け、その縦棒に丸棒112を渡してもよい。いずれにしても、平面視において、丸棒112の軸線が、レールバー11に交叉した構造になっていればよい。そして本実施形態では、レールバー11は、上述のように、互いに平行な2本の部材であり、丸棒112の軸線は、平面視においてレールバー11に直交する。
【0034】
台座12は、レールバー11の後側に載置される。なお本実施形態では、台座12はレールバー11に溶接されているが、必ずしも溶接されていなくてもよい。台座12は、胴部121と、脚部122と、座部123とを含む。胴部121は、2本の円筒(外筒及び内筒)が摺動可能に挿嵌された構造であり、伸縮自在である。簡易的には、
図1に示されているように、内筒に複数の孔を形成し、外筒及び内筒を貫通するシャフト(ピン)を挿入することで長さ調整すればよい。また外筒の内周面に形成した雌ネジと、内筒の外周面に形成した雄ネジとを螺合してネジ長さによって長さ調整してもよい。脚部122は、胴部121に溶接固定される。脚部122は、本実施形態では、前側2本、後側1本の合計3本で構成される。各脚部122の間には、補強棒124が溶接される。前方に位置する補強棒124は、軸線が平面視においてレールバー11に交叉する。本実施形態では、レールバー11は、上述のように、互いに平行な2本の部材であり、前方に位置する補強棒124の軸線は、平面視においてレールバー11に直交する。
【0035】
座部123は、胴部121の上端に溶接固定される。座部123の後端には、庇片1231が一体形成されている。庇片1231には、円孔1231a及び円孔1231aに連続する角孔1231bが形成されている。チェーン15が、円孔1231aに通されて、角孔1231bに掛け止められる。このチェーン15の他端は、地面に繋がれている。具体的には、自動車ボデーの修復場所(自動車整備工場)には、地面に凹状のレールが形成されている。このレールにチェーンブロックを差し込み、このチェーンブロックにチェーン15の他端を掛け止める。このようにすることで、台座12がチェーン15によって地面に繋がれる。
【0036】
ウィンチ13は、台座12の座部123に溶接又はボルト締めなどで固定される。ウィンチ13は、巻き上げローラー131と、歯車132(
図5参照)と、レバー133と、ガイド134と、部品取付ケース135とを含む。ウィンチ13は、巻き上げローラー131でベルト130を引く牽引機である。なお
図1では、ウィンチ13として、手動タイプを例示するが、モーターなどのアクチュエーターで作動する電動タイプであってもよい。
【0037】
巻き上げローラー131は、部品取付ケース135に軸支されている。巻き上げローラー131の円盤面には、歯車131aが形成されている。
【0038】
ベルト130は、巻き上げローラー131によって巻き上げられて引っ張られる被牽引部材である。ベルト130の一端には、フック20が設けられている。このフック20の詳細については、後述する。ベルト130の他端は、巻き上げローラー131に接続されている。ベルト130は、丸棒112及び補強棒124の下を通過するとともに、ガイド134の上を通過して、巻き上げローラー131に巻き上げられる。なお本実施形態では、被牽引部材として、ベルトを例示しているが、これには限定されない。たとえば紐状のもの(たとえば金属ワイヤーなどが例示できるが、十分な強度があれば材料は問わない)であってもよい。ただしベルトであれば、フック20との接触面積が広く、フック20が移動しにくく、またベルトであれば、強度も高いので、特に好適である。
【0039】
歯車132は、
図5に示されるように部品取付ケース135に軸支されている。歯車132は、巻き上げローラー131の歯車131aに噛合する。また歯車132には、ラチェット機構が設けられており、通常は一方向(ベルト巻き上げ方向)にのみ回転が許容される。
【0040】
レバー133は、歯車132の回転軸に固設されている。したがって、レバー133を回すと、歯車132が回転する。その回転トルクが歯車131aを介して巻き上げローラー131に伝達されて、ベルト130を巻き上げる。
【0041】
ガイド134は、部品取付ケース135に軸支されている。ガイド134は、補強棒124を通過したベルト130が鉛直方向に(真上に)延びるように、位置が定められている。このガイド134は、シャフトであってもローラーであってもよい。
【0042】
ジャッキ14は、レールバー11の前側(ウィンチ13と反対側)に設けられる。ジャッキ14は、雄ネジが形成されたシャフトと、そのシャフトの雄ネジに螺合する雌ネジが形成されたシリンダーとを備えており、伸縮自在である。ジャッキ14の頂面には、凹部141が形成されている。この凹部141に、自動車のジャッキポイントが形成されるフランジに当てられる。後述のように、ジャッキ14は、高さが、レールバー11の上部と自動車ボデー100の下部との隙間に合うように調整されて使用される。このようにすることで、自動車ボデーの修復作業中に、自動車ボデーが下方に移動することが防止される。
【0043】
図2は、フック20を示す平面図である。
【0044】
フック20は、本体21と、連結板22と、シャフト23とを備える。
【0045】
本体21の元には、丸棒211が固設されている。この丸棒211にベルト130の一端が通されて固定される。本体21の先には、一定間隔で多数突出する櫛歯21aが形成されている。各櫛歯21aには、円孔が形成されている。
【0046】
連結板22は、各櫛歯21aの間にそれぞれ配置される部材である。各連結板22には、長孔が穿設されている。
【0047】
シャフト23は、各櫛歯21aの円孔及び各連結板22の長孔のすべてを通貫する部材である。シャフト23の径は、櫛歯21aの円孔径と同じである。連結板22の長孔は、短径がシャフト23の径と同じ又はやや大きい。このような構造であるので、シャフト23は、本体21の櫛歯21aに保持され、各連結板22は長孔に沿ってシャフト23の上をスライド移動可能である。
【0048】
(自動車ボデー修復方法)
次に自動車ボデーの修復方法について説明する。
【0049】
自動車ボデー100の修復対象箇所には、
図3に示されるようにワッシャー30を一列に溶着しておく。なお右側にひとつだけ離れたワッシャー31は、ワッシャー30を溶接するときにアースを取るためのものである。
【0050】
最初に、
図4に示されるようにワッシャー30にフック20を接続する。具体的には、ワッシャー30及びフック20の連結板22の長孔を貫通するようにピン40を挿入する(接続工程)。また、丸棒112の位置、すなわちレールバー11の位置を適宜調整する(位置調整工程)。本実施形態では、ベルト130が鉛直軸線と略一致するように(すなわちベルト130が真下に垂れるように)、丸棒112の位置(すなわちレールバー11の位置)を調整している。なおこの接続工程及び位置調整工程の先後は問わない。先にレールバー11の位置を調整してから、フック20を接続してもよい。
【0051】
次に、レールバー11の上部と自動車ボデー100の下部との隙間に合うように、ジャッキ14の高さを調整する(高さ調整工程)。
【0052】
以上の工程を経て
図5に示される状態になる。
【0053】
そして、ウィンチ13を作動させてベルト130を引く(牽引工程)。
【0054】
このようにすることで、自動車ボデーの修復対象箇所が下方に引っ張られて、凹みが引き出される。
【0055】
(作用効果)
本実施形態では、自動車をリフトアップすることなく、自動車の下部(たとえばロッカーパネル)の凹みを引き出して修復する。この際、万一自動車ボデー100が下がると、上下方向のみならず前後方向や左右方向にも揺れ動いて、綺麗な修復が阻害されるおそれがある。これに対して、本実施形態では、レールバー11の上部と自動車ボデー100の下部との隙間に合うように、ジャッキ14の高さが調整されるので、自動車ボデー100の修復作業中に、自動車ボデー100が下がらないとともに、自動車ボデー修復装置10が持ち上がらない。したがって、非常に安定して自動車ボデー10を綺麗に修復できる。
【0056】
また本実施形態では、ベルト130が鉛直軸線と略一致するように、丸棒112の位置、すなわちレールバー11の位置を調整する。このようにするので、自動車ボデー100の修復作業中に、自動車ボデー100には下方(真下)にのみ力がかかることとなる。そしてその力をジャッキ14が受けることとなり、力のバランスがよい。
【0057】
なお自動車ボデー100の凹みは、凹んだときの入力と同じ方向に引き出すことが望ましい。そこで、斜め下に引き出すこともある。そのような場合には、斜め下に引き出せるように、丸棒112の位置、すなわちレールバー11の位置を調整すればよい。この場合、自動車に対して、横方向に作用する力も発生するが、ジャッキ14の力が作用しているので、自動車が横方向に移動することはない。
【0058】
また補強棒124を通過したベルト130が鉛直方向に(真上に)延びるように、ガイド134の位置が定められているので、自動車ボデー100の修復作業中に、ウィンチ13には下方にのみ力がかかることとなる。補強棒124が脚部122に溶接されているので、ウィンチ13に作用する力方向の延長線は、
図5からも判るように、3本の脚部122の着座ポイントを結んだ領域の内側に位置することとなり、この力は、脚部122に受け止められ、ウィンチ(台座)が倒れにくい。またウィンチ(台座)がチェーン15によって地面に繋がれているので、万一の場合でもウィンチ(台座)が倒れない。
【0059】
(第2実施形態)
図6は、本発明による自動車ボデー修復装置の第2実施形態を示す斜視図である。
【0060】
なお以下では前述と同様の機能を果たす部分には同一の符号を付して重複する説明を適宜省略する。
【0061】
第1実施形態では、丸棒112は、レールバー11に直接溶接されていた。これに対して、この第2実施形態では、丸棒112は、スライドアタッチメント110の一部として構成される。スライドアタッチメント110は、2つのスライダー113と、そのスライダー113に溶接された丸棒112とを含む。スライダー113は、レールバー11に嵌められて、レールバー11に対してスライド自在である。そして、適切な位置に調整された後、ボルト締めされて固定される。
【0062】
このような構造であれば、レールバー11を動かすことなく、スライダー113を移動させて丸棒112の位置を調整することができる。そのため作業性に優れる。
【0063】
(第3実施形態)
図7は、本発明による自動車ボデー修復装置の第3実施形態を示す側面図である。
【0064】
この第3実施形態では、ベルト130が直接巻き上げローラー131に巻かれる。このような構成であれば、巻き上げローラー131に対しては、力は真下にしか作用しない。そのため、ウィンチ(台座)が倒れにくい。なお巻き上げローラー131の回転軸が台座12の胴部121の真上になるようにすることで、ウィンチ(台座)が一層倒れにくくなる。
【0065】
(第4実施形態)
図8は、本発明による自動車ボデー修復装置の第4実施形態を示す側面図である。
【0066】
この第4実施形態では、アンダーパネルやオイルパンのように、ロッカーパネルよりも車両の奥側の凹み箇所を修復する。このような場合でも、上述した手法と同様に凹み箇所を修復することができる。
【0067】
(
参考使用方法)
図9は、本発明による自動車ボデー修復装置を用いてドアパネルなどの凹みを横に引き出す
参考使用方法を示す側面図である。
【0068】
上述した自動車ボデー修復装置を使用して、ドアパネルなどの凹みを横に引き出してもよい。この場合は、
図9に示されるように、ウィンチ13が引き出し箇所の真横になるように、台座12の胴部121の長さを調整する。ベルト130は、丸棒112や補強棒124に通すことなく、ワッシャー30にフック20を接続して作業する。ウィンチ(台座)がチェーン15によって地面に繋がれているので、引き出し作業中にウィンチ(台座)が自動車に近づいてしまうことが無く、またジャッキ14が荷重を受けることで自動車が揺れ動くことが無く、そのため凹み箇所を綺麗に引き出すことができる。
【0069】
(第5実施形態)
図10は、本発明による自動車ボデー修復装置の第5実施形態を示す斜視図である。
【0070】
この第5実施形態の自動車ボデー修復装置10は、レールバー11と、ウィンチ13と、ジャッキ14と、支柱50とを含む。
【0071】
この第5実施形態のウィンチ13は、電動タイプである。ウィンチ13は、レールバー11の間に渡された桟柱111に固定されている。ウィンチ13は、電源から供給される電力で駆動する。電源としては、たとえばバッテリーを使用すればよい。またコンバーターを使用して系統電源を直流に変換して供給してもよい。
【0072】
支柱50は、レールバー11の後側であってかつウィンチ13の後側に設けられる。支柱50は、レールバー11の間に渡された桟柱111に直立する。支柱50の周囲に上下スライダー51が設けられる。上下スライダー51は、カラー部51aと、平行プレート部51bと、庇片51cとを含む。カラー部51aは、支柱50に挿入され、支柱50に沿って上下にスライド移動可能である。カラー部51aは、貫通ピン52によって支柱50に位置決めされる。平行プレート部51bは、2枚の平行なプレートからなり、カラー部51aの前側に延設される。平行プレート部51bには、ピン51dが挿通される。このピン51dは、平面視において軸線が一対のレールバー11に交叉する。ピン51dは、ウィンチ13よりも高い場所に位置する。ベルト130は、このピン51dの上に通される。庇片51cは、第1実施形態の庇片1231と同様である。すなわち、庇片51cには、円孔及びその円孔に連続する角孔が形成されている。この角孔にターンバックル16のフックが引っかけられて、もう一方のフックにチェーン15が引っかけられる。そして、このチェーン15の他端が地面に繋がれる。具体的には、自動車ボデーの修復場所(自動車整備工場)には、地面に凹状のレール71が形成されている。このレール71にチェーンブロック72を差し込み、このチェーンブロック72にチェーン15の他端を掛け止める。このようにすることで、上下スライダー51がチェーン15によって地面に繋がれる。ターンバックル16が調整されてチェーン15の弛みが無くなる。
【0073】
(自動車ボデー修復方法)
図11は、本発明による自動車ボデー修復装置の第5実施形態を使用して自動車ボデーの修復方法について説明する側面図である。
【0074】
第1実施形態(
図3,
図4)と同様に、自動車ボデー100の修復対象箇所に、ワッシャー30を一列に溶着して、そのワッシャー30にフック20を接続し、レールバー11の上部と自動車ボデー100の下部との隙間に合うように、ジャッキ14の高さを調整する。なおベルト130は、丸棒112の下及びピン51dの上に通される。このようにすることで、
図11の状態になる。
【0075】
そして、ウィンチ13を作動させてベルト130を巻き上げることで、自動車ボデーの修復対象箇所が下方に引っ張られて、凹みが引き出される。
【0076】
(作用効果)
本実施形態によっても、自動車をリフトアップすることなく、自動車の下部(たとえばロッカーパネル)の凹みを引き出して修復する。
【0077】
また本実施形態でも、ベルト130が鉛直軸線と略一致するように、丸棒112の位置を調整する。このようにするので、自動車ボデー100の修復作業中に、自動車ボデー100には下方(真下)にのみ力がかかることとなる。そしてその力をジャッキ14が受けることとなり、力のバランスがよい。
【0078】
また電動モーターを使用することで作業者の負担が軽減される。
【0079】
電動ウィンチ13を、レールバー11の間に渡された桟柱111に固定することで、重量物である電動ウィンチ13を低い位置に配置でき、安定性を高めることができる。
【0080】
また、ターンバックル16を使用することで、チェーン15の弛みを防止でき、自動車ボデーの修復作業中に、自動車ボデー修復装置が前方(自動車ボデー側)に移動することを防ぐことができる。また上下スライダー51がチェーン15によって地面に繋がれているので、万一の場合でも支柱50が倒れない。
【0081】
(第6実施形態)
図12は、本発明による自動車ボデー修復装置の第6実施形態の要部(レールバー11に嵌めるスライドアタッチメント110)を示す斜視図である。
【0082】
この第6実施形態のスライドアタッチメント110の各スライダー113の上面113aには、内側に向けてフランジ113bが形成されている。このフランジ113bによって、ジャッキ14の脚座部142が抜けることなくスライド移動可能になる。
【0083】
この第6実施形態でも、第2実施形態と同様に、レールバー11を動かすことなく、スライダー113を移動させて丸棒112の位置を調整することができる。そのため作業性に優れる。また、ジャッキ14がスライダー113の上面から抜けることなくスライド移動可能になるので、ジャッキ14をレールバー11の上から外れてしまうことがなく、立てやすいので、その点でも作業性に優れる。またジャッキ14の紛失を防止できる。
【0084】
(
参考形態)
図13は、
参考形態による自動車ボデー修復装置
の要部(突張アーム80)を示す斜視図である。
【0085】
突張アーム80は、レールバー11に取付可能な2本のスライダー113の間に渡された桟柱111の上に、ピン111cを中心として回動可能な内角筒81及び外角筒83を備える。
【0086】
桟柱111の上面には、2枚の互いに平行な平行プレート部111aが立設されている。内角筒81は、2枚の平行プレート部111aの間にあって、ピン111cによって平行プレート部111aに軸支されている。内角筒81の後端には、庇片81aが一体形成されている。この庇片81aには、雌ネジが形成されており、その雌ネジに角度調整ネジ82が螺合する。角度調整ネジ82は、桟柱111の後方の斜面111bに着座している。角度調整ネジ82が、ねじ込まれて前進するにつれて、内角筒81が立っていく。角度調整ネジ82が、緩められて後退するにつれて、内角筒81が寝ていく。
【0087】
外角筒83は、内角筒81に対して前側から被せられている。外角筒83は、上面に位置決め孔83aが穿孔されている。
図13では、7つの位置決め孔83aが例示されている。内角筒81にも不図示のひとつの孔が穿孔されており、その孔と位置決め孔83aとが合わされて、位置決めピン84が挿入される。このようにして、内角筒81及び外角筒83の全長が調整される。
【0088】
図14は、
参考形態による自動車ボデー修復装置を用いてドアパネルなどの凹みを横に引き出す場合を示す側面図である。
【0089】
上述した突張アーム80は、ドアパネルなどの凹みを横に引き出す場合に好適である。
図14に示されるように、突張アーム80を装着し、外角筒83の先端が、自動車下部のフランジに当たるように、内角筒81及び外角筒83の全長を調整するとともに、角度調整ネジ82によって、内角筒81及び外角筒83の角度を調整する。そして、
図14に示されるように、上下スライダー51の位置を調整して引き出し箇所の真横にする。そして、ベルト130の先端のフック20をワッシャー30に接続して作業する。突張アーム80の外角筒83の先端が自動車下部のフランジに突き当たっており、また上下スライダー51がチェーン15によって地面に繋がれているので、引き出し作業中に自動車ボデー修復装置10が自動車に近づいてしまったり、浮き上がることが無く、凹み箇所を綺麗に引き出すことができる。
【0090】
(第
7実施形態)
図15は、本発明による自動車ボデー修復装置の第
7実施形態の要部(保護カバー90)を説明する平面図である。
図15(A)は保護カバー90を外した状態を示し、
図15(B)は保護カバー90を装着した状態を示す。
【0091】
外部からの何らかの衝撃や、自動車ボデーの修復場所(自動車整備工場)の粉塵から、電動ウィンチ13や電源60を保護するために、
図15(B)に示すように、保護カバー90を装着してもよい。なお電動ウィンチ13のベルト巻き取り部分13aは露出して本体部分を覆うように、保護カバー90を取り付けるとよい。
【0092】
このように保護カバー90を取り付けることで、外部からの何らかの衝撃や、自動車ボデーの修復場所(自動車整備工場)の粉塵から、電動ウィンチ13や電源60を保護できる。
【0093】
(第
8実施形態)
図16は、本発明による自動車ボデー修復装置の第
8実施形態を示す斜視図である。
【0094】
この第
8実施形態の自動車ボデー修復装置10は、ベルト130を引く牽引機としてラチェット荷締機13を使用する。このラチェット荷締機13は、図に示されているように、レールバー11の後端(後方に位置する桟柱111)に直接固定されている。直接固定するには、溶接又はボルトで締結すればよい。
【0095】
また、レールバー11の後端(後方に位置する桟柱111)を貫通するシャフト111cが設けられている。シャフト111cの、レールバー11の右側に突出する部分及び左側に突出する部分に、突張アーム80が設けられている。突張アーム80は、元アーム81と、先アーム83とを備える。
【0096】
元アーム81の一端が環状に形成されてシャフト111cに外嵌される。このため、元アーム81は、シャフト111cを中心として回動可能である。先アーム83は、後端が内向きフランジ状に形成されており、この部分が元アーム81を嵌合する。先アーム83は、元アーム81に対してスライド移動可能である。また先アーム83には、位置決め孔83aが形成されている。元アーム81にも不図示のひとつの孔が穿孔されており、その孔と位置決め孔83aとが合わされて、位置決めピン84が挿入される。なお位置決めピン84は、ボルト締めするタイプでもよい。このようにして、元アーム81及び先アーム83の全長が調整される。さらに先アーム83の先には、自動車ボデーに当接させるための先端アタッチメント830が形成されている。この先端アタッチメント830の先端は、自動車の下部(たとえばロッカーパネル)の曲面に沿った形状に形成されており、ラバー831が取り付けられている。先端アタッチメント830は、先アーム83にボルト832で締結されており、交換可能である。そこで、自動車の大きさに応じて用意された複数の先端アタッチメント830を適宜交換可能である。
【0097】
(自動車ボデー修復方法)
次に自動車ボデーの修復方法について説明する。
【0098】
自動車ボデー100の修復対象箇所に溶着されているワッシャー30にフック20を接続する(接続工程)。そして突張アーム80の先端アタッチメント830が自動車ボデーに当接するように突張アーム80の長さ及び角度を調節して、位置決めピン84を挿入するとともに、ネジ811を締める(突張アームセット工程)。またレールバー11の上部と自動車ボデー100の下部との隙間に合うように、ジャッキ14の高さを調整する(高さ調整工程)。
【0099】
以上の工程を経て
図17に示される状態になる。
【0100】
そして、ラチェット荷締機13のハンドルレバー133を、矢印に示すように左方向に倒すと、ベルト130が右方向に引かれる(牽引工程)。ハンドルレバー133を起こして再び左方向に倒すということを繰り返すことで、自動車ボデーの修復対象箇所が下方に引っ張られて、凹みが引き出される。
【0101】
本実施形態によっても、自動車をリフトアップすることなく、自動車の下部(たとえばロッカーパネル)の凹みを引き出して修復することが可能である。
【0102】
また本実施形態で用いられるラチェット荷締機13は、軽量であるので、自動車ボデー修復装置10の全体としての重量も非常に軽量であり、持ち運び容易である。
【0103】
さらに、突張アーム80を自動車ボデーに当接させるので、自動車ボデーの修復作業中に、自動車ボデー修復装置が前方(自動車ボデー側)に移動することを防ぐことができる。また地面に凹状のレールが形成されていない場所でも、自動車ボデー100の修復作業を行うことが可能である。
【0104】
なお自動車ボデー100の凹みは、凹んだときの入力と同じ方向に引き出すことが望ましい。そこで、斜め下に引き出すこともある。そのような場合には、丸棒112の位置を調整して、
図18に示されるようにすればよい。そして、ラチェット荷締機13のハンドルレバー133を操作することで、自動車ボデー100の修復対象箇所が引っ張られて、凹みが引き出される。
【0105】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0106】
たとえば、後側ガイドとしての補強棒124が台座の脚に形成されていたが、レールバー11に形成されていてもよい。
【0107】
また前側ガイドや後側ガイドとして、棒に限らずローラーを用いてもよい。
【0108】
また上記実施形態では、ベルト130を引く牽引機として、手動タイプ及び電動タイプを例示したが、これには限られない。シリンダーに供給された油圧によって作動するピストンでベルト130を引くような油圧を利用するタイプ(たとえばポートパワーを用いるもの)であってもよい。
【0109】
上記実施形態は、適宜組み合わせ可能である。
【解決手段】一対のレールバー11と、レールバー11の前側に設けられ、平面視において軸線が一対のレールバー11に交叉する前側ガイド112と、レールバー11の前側に設けられ、自動車ボデー修復作業時に、レールバー11と自動車との隙間に合わせて高さが調整されるジャッキ14と、レールバー11の後側に設けられる牽引機13と、一端にフック20が設けられ、前側ガイド112の下を通されて他端が牽引機13に接続されて、その牽引機13で引かれる被牽引部材130と、を備える。